特許第5763786号(P5763786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5763786湿潤分散剤ならびにその製造方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763786
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】湿潤分散剤ならびにその製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/52 20060101AFI20150723BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20150723BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20150723BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150723BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20150723BHJP
   B01F 17/22 20060101ALI20150723BHJP
   C08G 18/60 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   B01F17/52
   C09D17/00
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09D11/00
   B01F17/22
   C08G18/60
【請求項の数】26
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-550870(P2013-550870)
(86)(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公表番号】特表2014-509931(P2014-509931A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2012051155
(87)【国際公開番号】WO2012101180
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2013年8月20日
(31)【優先権主張番号】11152549.9
(32)【優先日】2011年1月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598067245
【氏名又は名称】ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】オマイス ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】プリツチンス ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ピエステルト フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】クローネン マルセル
(72)【発明者】
【氏名】オセア サンドラ
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−505012(JP,A)
【文献】 特開2008−246469(JP,A)
【文献】 特開2003−238836(JP,A)
【文献】 特開2004−051982(JP,A)
【文献】 特開昭61−227830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/52
B01F 17/22
C08G 18/60
C09D 7/12
C09D 11/00
C09D 17/00
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(1)で、
(a)第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を含むアミノ基含有有機ポリマーと、
(b)カルボキシル基のほかに少なくとも2つのヒドロキシ基を有し、そのうちの少なくとも1つが分子の主鎖に結合していない、少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸とを、
縮合反応させてアミド結合を形成し、
工程(2)で、
工程(1)で得られたヒドロキシ官能性反応生成物のヒドロキシ基の少なくとも一部と、少なくとも1つの有機モノイソシアネートとを反応させてウレタン結合を形成することによって調製可能な湿潤分散剤。
【請求項2】
工程(1)で、成分(b)に対する成分(a)の第1級アミノ基および第2級アミノ基のモル比が0.01〜1となるように成分が反応することを特徴とする請求項1に記載の湿潤分散剤。
【請求項3】
工程(1)で、成分(b)に対する成分(a)の第1級アミノ基および第2級アミノ基のモル比が0.1〜1となるように成分が反応することを特徴とする請求項2に記載の湿潤分散剤。
【請求項4】
工程(2)で、工程(1)で得られた前記反応生成物のヒドロキシ基の5mol%超が前記少なくとも1つの有機モノイソシアネートと反応することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の湿潤分散剤。
【請求項5】
工程(2)で、工程(1)で得られた前記反応生成物のヒドロキシ基の40〜80mol%が前記少なくとも1つの有機モノイソシアネートと反応することを特徴とする請求項4に記載の湿潤分散剤。
【請求項6】
前記少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)は、工程(1)による反応の前に、ラクトン、アルキル置換ラクトンおよびモノヒドロキシモノカルボン酸の群から選択されるモノマーと反応させて、エステル結合を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の湿潤分散剤。
【請求項7】
前記少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)に対する前記ラクトン、アルキル置換ラクトンおよびモノヒドロキシモノカルボン酸の群から選択されるモノマーのモル比は、0.01/1〜1000/1であることを特徴とする請求項6に記載の湿潤分散剤。
【請求項8】
前記少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)に対する前記ラクトン、アルキル置換ラクトンおよびモノヒドロキシモノカルボン酸の群から選択されるモノマーのモル比は、1/1〜10/1であることを特徴とする請求項7に記載の湿潤分散剤。
【請求項9】
前記モノマーは、ラクトンおよびアルキル置換ラクトンの群から選択されることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の湿潤分散剤。
【請求項10】
前記ラクトンおよび前記アルキル置換ラクトンは、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンから成る群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の湿潤分散剤。
【請求項11】
前記成分(b)は、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸および/または2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の湿潤分散剤。
【請求項12】
前記アミノ基含有有機ポリマー(a)は、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンおよびこれらのポリマーの共重合体の群から選択されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の湿潤分散剤。
【請求項13】
前記アミノ基含有有機ポリマー(a)は、ポリエチレンイミンの群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の湿潤分散剤。
【請求項14】
前記アミノ基含有有機ポリマー(a)の第1級アミノ基および/または第2級アミノ基の少なくとも一部は、工程(1)の反応の前にラクトン、アルキル置換ラクトン、モノヒドロキシモノカルボン酸およびモノカルボン酸の群から選択されるモノマーと反応して、アミド結合および任意にエステル結合を形成することを特徴とする請求項12または13に記載の湿潤分散剤。
【請求項15】
前記アミノ基含有有機ポリマー(a)の第1級アミノ基および/または第2級アミノ基に対する前記ラクトン、アルキル置換ラクトン、モノヒドロキシモノカルボン酸およびモノカルボン酸の群から選択されるモノマーのモル比は、1/1〜100/1であることを特徴とする請求項14に記載の湿潤分散剤。
【請求項16】
前記アミノ基含有有機ポリマー(a)の第1級アミノ基および/または第2級アミノ基に対する前記ラクトン、アルキル置換ラクトン、モノヒドロキシモノカルボン酸およびモノカルボン酸の群から選択されるモノマーのモル比は、5/1〜20/1であることを特徴とする請求項15に記載の湿潤分散剤。
【請求項17】
前記モノマーは、ラクトンおよびアルキル置換ラクトンの群から選択されることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の湿潤分散剤。
【請求項18】
前記ラクトンおよび前記アルキル置換ラクトンは、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンから成る群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の湿潤分散剤。
【請求項19】
前記有機モノイソシアネートは、任意に他の直鎖基および/または分鎖基を有する直鎖アルキルラジカル、分枝アルキルラジカルまたは環式アルキルラジカルを含むモノイソシアネートの群であって、該ラジカルが、任意に1または複数の二重結合および/または三重結合を含み、炭素数が1〜50であり、アリールイソシアネート、イソシアネート官能性ポリエーテル、イソシアネート官能性ポリエステル、イソシアネート官能性ポリテトラヒドロフラン、イソシアネート官能性ポリエーテルエステルおよび脂肪酸モノイソシアネートを含む群と、そのような化合物の組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の湿潤分散剤。
【請求項20】
前記少なくとも1つの有機モノイソシアネートは、ジイソシアンとモノアルコールとの反応生成物であることを特徴とする請求項19に記載の湿潤分散剤。
【請求項21】
前記少なくとも1つの有機モノイソシアネートは、イソシアネート官能性ポリエーテル、イソシアネート官能性ポリテトラヒドロフラン、イソシアネート官能性ポリエステルおよび/またはイソシアネート官能性ポリエーテルエステルであることを特徴とする請求項19または20に記載の湿潤分散剤。
【請求項22】
工程(1)で、
(a)第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を含むアミノ基含有有機ポリマーと、
(b)カルボキシル基のほかに少なくとも2つのヒドロキシ基を有し、そのうちの少なくとも1つが分子の主鎖に結合していない、少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸とが、
縮合反応してアミド結合を形成し、
工程(2)で、
工程(1)で得られたヒドロキシ官能性反応生成物のヒドロキシ基の少なくとも一部と、少なくとも1つの有機モノイソシアネートとが反応してウレタン結合を形成することを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の湿潤分散剤を製造する方法。
【請求項23】
顔料ペースト、コーティング組成物、シール材、印刷用インク、液体インクおよびプラスチックの群から選択される顔料含有生成物および/または充填剤含有生成物での請求項1〜21のいずれか1項に記載の湿潤分散剤の使用。
【請求項24】
前記湿潤分散剤は、顔料ペーストまたはコーティング組成物に使用されることを特徴とする請求項23に記載の使用。
【請求項25】
顔料ペースト、コーティング組成物、シール材、印刷用インク、液体インクおよびプラスチックの群から選択される顔料含有生成物および/または充填剤含有生成物であって、請求項1〜21のいずれか1項に記載の湿潤分散充填剤を含有する顔料含有生成物および/または充填剤含有生成物。
【請求項26】
前記生成物は、顔料ペーストまたはコーティング組成物であることを特徴とする請求項25に記載の顔料含有生成物および/または充填剤含有生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基含有有機ポリマー、ポリヒドロキシモノカルボン酸およびイソシアネートを反応させることによって調製可能な湿潤分散剤に関する。さらに、本発明は、湿潤分散剤を製造する方法と、たとえば塗料または顔料コンセントレートなどのコーティング組成物での湿潤分散剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば塗料などのコーティング組成物、あるいはシール材およびプラスチックなどの他の生成物に、顔料および/または充填剤を混入する場合、対象とする生成物の粒子安定性をさらに良好にするために湿潤分散剤を含めることはよく知られた実施方法である。利用分野に応じて、湿潤分散剤は化学的性質が異なりうる。
【0003】
湿潤分散剤の理論的原理の概要と作用機序は、Johan H.Bielemanによる「Lackadditive」(J.Bieleman、Lackadditive、Wiley−VCH、1998、ISBN3−527−28819−8)という書籍で確認することができる。
【0004】
国際公開第1999/055763号パンフレットは、アクリル官能性を有し、少なくとも2つの異なるモノマーから成る直鎖ポリエステルとポリアミンまたはポリイミンを反応させることによって調製されるアミン分散剤に関して記載している。これらの分散剤は、有機媒体中で高い溶解性を示す。
【0005】
ポリアミンまたはポリイミンとの直鎖ポリカルボン酸の反応生成物は、たとえば国際公開第2000/24503号パンフレットおよび国際公開第1994/021368号パンフレットに記載されている。これらの化合物は、たとえば塗料またはプラスチックなどの多くのさまざまな媒体に分散剤として使用することができる。
【0006】
水溶液系に疎水性粒子を分散するための分散剤は、国際公開第2000/037542号パンフレットに記載されている。この分散剤は周囲にイオン性基を有する樹枝状ポリマーから成る。
【0007】
国際公開第2008/037612号パンフレットは、ポリアミンまたはポリイミンが主成分の樹枝状分散剤に関して記載している。上記の分散剤は、脂肪酸変性樹枝状ポリエステルのシェルが周囲にあるアミンコアを有する。したがって、得られたポリマーは、特に非極性塗料中の分散剤として使用でき、たとえば顔料コンセントレートの粘度が減少している。さらに、記載されている顔料コンセントレートから成る塗料が使用される塗膜は、たとえば光沢度が高く、黄変傾向が低いなどの有利な特性を示す。これらの樹枝状分散剤に見られる欠点は、場合によっては再現可能に製造することが唯一困難であるということである。別の性能上の問題は、樹枝状分散剤は通常、色がきわめて暗く、時には漆黒色であるという事実である。このため、特に淡色の生成物、たとえば白色顔料を含む顔料コンセントレートおよび/または塗料のほかにも、色がきわめて強く(たとえば赤)、かつ/あるいは色の精度がきわめて高いことが重要となる生成物には分散剤の有用性に厳しい制約が課される。これは特に、対象とする生成物では、十分な分散効果を得るために各分散剤の分率が比較的高い状態で使用されているか、あるいは必要とされている場合である。たとえば各生成物の総量に対して分散剤の分率が5wt%超の場合、上記の影響は特に顕著である。
【0008】
従来の分散剤、たとえば上記のものは通常、特定の生成物に適合し、その結果、有用性が広範囲にわたって制限されている。たとえば、顔料コンセントレートおよび/または着色塗料の粘度を適切に減少させることは、いくつかの種類の顔料に対してのみ実現可能なことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第1999/055763号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2000/24503号パンフレット
【特許文献3】国際公開第1994/021368号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2000/037542号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2008/037612号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.Bieleman、Lackadditive、Wiley−VCH、1998、ISBN3−527−28819−8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、湿潤分散剤を提供することであって、その優れた湿潤分散効果によって、たとえば顔料コンセントレート、塗料などのコーティング組成物またはシール材および/もしくはプラスチックなどのさまざまな顔料含有生成物および/または充填剤を含有する生成物に有利な特性をもたらす。これらの生成物の特性は、従来の湿潤分散剤を用いる生成物と比較してさらに改善する必要がある。その目的はある程度、たとえば顔料コンセントレートおよび塗料などのコーティング組成物、さらにそのような顔料コンセントレートおよびコーティング組成物を使用して生成されるコーティングまたは塗膜のさまざまな特性を改善することである。言及する特性は、たとえば粘度が比較的低く、保存性が良好で、光沢度に優れ、ヘイズが低いことが挙げられる。そのような特性では良好なバランスを得る必要がある。ここで、たとえば、顔料コンセントレート、塗料または塗膜の上記の特性は、湿潤分散剤に正確に適合するある特定の種類の生成物のほかにも、きわめて広範囲なさまざまな系できわめて良好であることに注目した。湿潤分散剤の広範囲な有用性は優れたものである必要がある。同時に、たとえば従来の分散剤に適合する特定の個々の系の特性は、適合する従来の分散剤をそれぞれ使用する際に得られる品質に少なくとも近づける必要がある。ある特定の状況では、実際に改善結果が得られる。従来の特定の分散剤に適合しない別の系または生成物では、優れた特性も得られ、その場合、さらに従来の分散剤をそれぞれ使用する場合よりも過度に良好である必要がある。さらに、湿潤分散剤は、公知の分散剤よりも色彩が中間色である必要がある。湿潤分散剤は、たとえば白色またはほんのわずかに茶色がかった色である必要がある。さらに具体的には、結果として湿潤分散剤の広範囲な有用性も改善するために、湿潤分散剤が漆黒色にならないようにすることが可能である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、
工程(1)で、
(a)第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を含むアミノ基含有有機ポリマーと、
(b)カルボキシル基のほかに少なくとも2つのヒドロキシ基を有し、そのうちの少なくとも1つが分子の主鎖に結合していない、少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸とを、
縮合反応させてアミド結合を形成し、
工程(2)で、
工程(1)で得られたヒドロキシ官能性反応生成物のヒドロキシ基の少なくとも一部と、少なくとも1つの有機モノイソシアネートとを反応させてウレタン結合を形成することによって調製可能な新規の湿潤分散剤が得られることにより、上記の目的が達成されることを見出している。
【0013】
以降、新規の湿潤分散剤は本発明の湿潤分散剤と呼ぶ。その有利な改善は、従属するクレームから明らかである。
【0014】
さらに、本発明は、本発明の湿潤分散剤を製造する方法を提供する。この方法は、
工程(1)で、
(a)第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を含むアミノ基含有有機ポリマーと、
(b)カルボキシル基のほかに少なくとも2つのヒドロキシ基を有し、そのうちの少なくとも1つが分子の主鎖に結合していない、少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸とが、
縮合反応してアミド結合を形成し、
工程(2)で、工程(1)で得られたヒドロキシ官能性反応生成物のヒドロキシ基の少なくとも一部と、少なくとも1つの有機モノイソシアネートとが反応してウレタン結合を形成することを特徴とする。
【0015】
その方法の有利な改善は、従属する方法クレームから明らかである。
【0016】
さらに、顔料ペースト、コーティング組成物、シール材、印刷用インク、液体インクおよびプラスチックの群から選択される顔料含有生成物および/または充填剤含有生成物における、本発明の湿潤分散剤の使用を本発明によって提供する。
【0017】
したがって、本発明の湿潤分散剤は、湿潤分散作用に優れ、さまざまな顔料含有生成物および/または充填剤含有生成物、たとえば顔料コンセントレート、塗料などの着色コーティング組成物と、さらには、そのような顔料コンセントレートおよびコーティング組成物を使用して生成されるコーティングとに有利な特性をもたらす。同時に、たとえば保存安定性が良好で、光沢度が高く、ヘイズが低いなどのさまざまな特性において良好なバランスが得られる。さらに、従来の湿潤分散剤と比較して広範囲な有用性が改善される。さらに、本発明の湿潤分散剤が漆黒色にならないようにすることができる。さらに具体的には、本発明の湿潤分散剤は、白色またはわずかに茶色がかった色である。特に、本発明の湿潤分散剤は、かなり淡い色である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の湿潤分散剤は、アミノ基含有有機ポリマー(a)と、以下に記載する成分とを反応させることによって調製可能である。アミノ基含有有機ポリマー(a)は、複数、特に少なくとも5つの同じまたは異なるモノマー単位から成り、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、特に少なくとも5つのアミノ基を有する。これらのアミノ基は、第1級、第2級および/または第3級であってよい。ただし、アミノ基含有有機ポリマー(a)は、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、さらに好ましくは少なくとも5つの第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を含む。
【0019】
アミノ基含有有機ポリマー(a)は、脂肪族ポリ−(C2−C4)−アルキレンアミンであるのが好ましい。ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンおよびこれらのポリマーの共重合体の群から選択されるのが特に好ましい。第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基を有する分岐脂肪族ポリアミンを使用するのが特に好ましい。アジリジンホモポリマーが特に有利であり、たとえばBASF社製の「Lupasol」(登録商標)生成物または日本触媒社製の「Epomin」(登録商標)生成物などのポリエチレンイミンという名でも知られている。これらの生成物は、公知の方法、たとえばエチレンイミンの重合によって調製される。第1級窒素原子、第2級窒素原子、第3級窒素原子の比は、大きく異なってもよく、対応する市販生成物の場合では通常、たとえば2:2:1が好ましい。対応する市販生成物の場合では通常、これらのポリマー中のアミノ基の総量は、たとえばポリマー1グラム当り20mmolにある。これらの分枝脂肪族ポリアミンのうち、数平均分子量が約200〜200,000g/mol(Mn、沸点上昇を測定)、さらに好ましくは約250〜40,000g/molの生成物を使用するのが好ましい。
【0020】
これらのアミノ基含有有機ポリマー(a)の第1級アミノ基および第2級アミノ基のプロトンは、任意にアルキル基、アリール基および/またはアラルキル基によって適切に置換してもよい。さらにアミノ基は、アルキル基、アリール基および/またはアラルキル基によって適切に四級化してもよい。
【0021】
好ましく使用されるポリエチレンイミン、ポリビニルアミンおよび/またはポリアリルアミン、具体的にはポリエチレンイミンは、特に修飾されるのが好ましい。この修飾は、アミノ基含有有機ポリマー(a)と、ラクトン、アルキル置換ラクトン、モノヒドロキシモノカルボン酸およびモノカルボン酸の群から選択されるモノマーとの反応によって実施される。そのような反応では、アミノ基含有有機ポリマー(a)の第1級アミノ基および/または第2級アミノ基の少なくとも一部が修飾され、上記のモノマーによるラジカルとアミド結合を形成する。この修飾が、本発明に従ってラクトン、アルキル置換ラクトンおよび/またはモノヒドロキシカルボン酸によって好ましく実施される場合、変性アミノ基は、上記の化合物の単一のモノマーによるラジカルを担持してもよい。しかし、変性アミノ基の少なくとも一部が、上記のモノマーの少なくとも2、好ましくは2〜100、特に2〜25のモノマー単位を含む直鎖状のポリエステル鎖であるラジカルの場合が好ましい。そのような修飾は、たとえば、約70〜180℃で、たとえばジブチル錫ジラウレートなどの有機スズ化合物などの対応する従来の触媒を使用する当業者に知られたラクトンの重合法によって、あるいは約50〜200℃で、ある意味当業者に知られているモノヒドロキシモノカルボン酸の重縮合法によって導入してもよい。いずれの場合も、修飾によって導入されるすべてのラジカルが、単一の遊離ヒドロキシ基を担持する。したがって、第1級アミノ基および第2級アミノ基が修飾によってアミド結合に転化されることから、アミノ基含有有機ポリマー(a)は、修飾後に単一の遊離ヒドロキシ基を有することになる。上に記載したように、各アミノ基含有有機ポリマー(a)、特にポリエチレンイミンの第1級アミノ基および/または第2級アミノ基の少なくとも一部は、記載した通りに修飾または反応する。いずれの場合も、第1級アミノ基および/または第2級アミノ基の部分が最大限に修飾または反応するのが好ましい。本願明細書で言及する最大限の部分とは、上記の反応で最大限に修飾可能な第1級アミノ基および/または第2級アミノ基の部分を意味する。理論的にこれらは、各アミノ基含有有機ポリマー(a)が含むすべての第1級アミノ基および/または第2級アミノ基である。しかし、実際の実施では、たとえばポリマー(a)の構成および/または空間配置によって、かつ/あるいはたとえば直鎖状のポリエステル鎖などの修飾によるラジカルがすでに結合していることによって、これらのアミノ基の一部が立体的に保護されて反応しないことから、一般には第1級アミノ基および/または第2級アミノ基のすべてが反応するというわけではない。
【0022】
特に本発明では、上記の反応または修飾は、アミノ基含有有機ポリマー(a)の第1級アミノ基および/または第2級アミノ基の総量に対して化学量論的に過剰量でモノマー(ラクトン、アルキル置換ラクトン、モノヒドロキシモノカルボン酸および/またはモノカルボン酸)を使用することによって実施される。アミノ基含有有機ポリマー(a)の第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を修飾するために用いるモノマーのモル比は、1/1〜100/1、好ましくは1/1〜25/1、さらに好ましくは2/1〜20/1であるのが特に有利である。
【0023】
上記の修飾は、少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸とアミノ基含有有機ポリマー(a)の反応前に実施され、以下に説明する。これは、各アミノ基含有有機ポリマー(a)の修飾が独立した工程で常に行われることを意味する。本発明で特に好ましいのは、ε−カプロラクトンおよび/またはδ−バレロラクトンでアミノ基含有有機ポリマー(a)を修飾し、アミド結合によって結合した直鎖状のポリエステル鎖を形成することである。
【0024】
工程(1)
本発明の湿潤分散剤を調製するためには、第1の工程において、アミノ基含有有機ポリマー(a)と、カルボキシル基のほかに少なくとも2つのヒドロキシ基を有し、そのうちの少なくとも1つが分子の主鎖に結合していない、少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)とを最初に反応させる(工程(1))。「分枝」とは、周知のように、モノマーが、直鎖状の炭素鎖のほかに、直鎖状の炭素鎖に少なくとも1つの分岐点を有するか、あるいは少なくとも1つの側鎖を有していることを意味する。分子の主鎖は、公知のIUPAC命名法に従って命名され、たとえば、対象とする分子の最長炭素鎖であり、この基準が曖昧となる場合は対応する置換炭素鎖である。完全に一致する炭素鎖が2つ存在する場合は、そのいずれも主鎖とみなしてもよく、正式には、そのうち一方を主鎖とし、もう一方を分枝鎖または側鎖とする。したがって、主鎖にない少なくとも1つのヒドロキシ基は、分子の分鎖の一部または側鎖の一部であって、主鎖の一部でない炭素原子に存在する。
【0025】
分岐ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)として好ましく使用されるのは、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸および/または2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸である。2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸が特に好ましい。
【0026】
少なくとも1つの分岐ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)は、いずれの場合も有機ポリマー(a)との縮合反応によってカルボキシル基と結合する。そのような縮合反応は、たとえば約50〜200℃で行われる。反応過程に関する詳細は、以下に示す実施例で確認することができる。この反応によって、アミノ基含有ポリマー(a)の第1級アミノ基または第2級アミノ基と結合し、アミド結合を形成することが可能となる。しかし、アミノ基含有ポリマー(a)は、工程(1)の前に上に説明するように修飾することが可能であり好ましい。上記の見解によれば、本発明では、各アミノ基含有有機ポリマー(a)は、修飾されている場合、立体的に結合可能な第1級アミノ基および/または第2級アミノ基をすでに有していないのが好ましく、場合によっては第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を全く有していないのが好ましいということを考慮に入れる必要がある。これは、工程(1)(アミノ基含有有機ポリマー(a)と少なくとも1つの分岐ポリヒドロキシモノカルボン酸との反応(b))では、第1級アミノ基および/または第2級アミノ基は分岐ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)と反応しないことを意味している。その際には、少なくとも1つの分岐ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)と、アミノ基含有有機ポリマー(a)の修飾によって導入されるヒドロキシ基との反応が発生しても、エステル結合を形成するのみであり、いずれの場合も単一のヒドロキシ基が修飾時に導入されたラジカル、好ましくは直鎖状のポリエステル鎖に存在する。したがって、アミノ基含有有機ポリマー(a)は、修飾後および工程(1)の反応前に立体的に結合可能な第1級アミノ基および第2級アミノ基をすでに有していないことが可能であり、場合によっては第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を全く有していないことも可能である。しかし、修飾しているかどうかにかかわらず、工程(1)に使用されるポリマー(a)は基本的に同じ高分子である。したがって、本発明では、記載するように修飾されるポリマーも常に、アミノ基含有有機ポリマー(a)または第1級アミノ基および/もしくは第2級アミノ基を含むアミノ基含有有機ポリマー(a)と呼ぶ。
【0027】
少なくとも1つの分岐ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)は、特にアミノ基含有有機ポリマー(a)に存在する第1級アミノ基および第2級アミノ基の総数に対して少なくとも等モル、特に化学量論的に過剰量で有利に使用される。具体的には、成分(b)に対する成分(a)の第1級アミノ基および第2級アミノ基のモル比は、0.001〜1、特に0.01〜1、きわめて好ましくは0.1〜1である。上記のモル比は、いずれの場合も成分の実行可能な修飾、たとえば上記のアミノ基含有有機ポリマー(a)の特異的修飾および/または以下に説明する少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)の特異的修飾を実施する前の成分(a)および(b)に対するものである。本発明の特定の実施形態では、アミノ基含有有機ポリマー(a)と少なくとも1つの分岐ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)との上記の縮合反応によってアミド結合を形成するほかに、個々のポリヒドロキシモノカルボン酸分子間で互いに同時に行われる縮合反応によってエステル結合を形成する。これは、たとえば成分(b)に対する成分(a)の第1級アミノ基および第2級アミノ基のモル比を対応して選択することによって実施することができる。さらに具体的には、個々のポリヒドロキシモノカルボン酸分子間の上記の縮合反応によってエステル結合を形成することは、成分(b)に対する成分(a)の第1級アミノ基および第2級アミノ基に好ましいとして上に記載するモル比を使用することによって実施可能である。この場合、1つの分子の1つのカルボキシル基は、いずれの場合も他の1つの分子のヒドロキシ基の1つとエステル化される。したがって、ポリヒドロキシモノカルボン酸分子が互いに結合した結果と、各ポリヒドロキシモノカルボン酸分子が単一のカルボキシル官能基および少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有するという事実とから、アミノ基含有有機ポリマー(a)に結合する第1の分子から分枝状の構成単位がさらに増加した複数の層が構成される。新しい層はそれぞれ新しい世代と呼んでもよい。このような状況では、層に存在するヒドロキシ基の全部またはほんの一部が、他のポリヒドロキシモノカルボン酸分子のカルボキシル基とエステル化することが可能であることから、新しい層、つまり新しい世代がそれぞれ構成される。単一世代のことも分枝単位と呼ぶ必要があるのは言うまでもない。これは、分子の少なくとも2つのヒドロキシ基が上に記載するように互いに分岐している鎖内に存在しているという事実による。しかし、複数の世代が形成されるのが好ましく、これは各ポリヒドロキシモノカルボン酸分子間で互いに行われる上記の縮合反応の前提条件となる。この分枝度または世代数は、たとえば成分(b)に対する成分(a)の第1級アミノ基および第2級アミノ基のモル比などのさまざまな要素に依存しているのは言うまでもない。別の重要な要素は、世代に存在するヒドロキシ基がどの程度立体的に結合可能であるかということである。これは、たとえば高分子、特にアミノ基含有有機ポリマー(a)の空間構造にも依存している。
【0028】
上記の構成単位は、ポリアミンコアまたはアミノ基含有有機ポリマー(a)から外側に延伸する星形構造である。本発明では、ポリエステル単位は、1世代または2世代のみほんわずかに分枝しているものであってよい。しかし、2世代を超えるさらに複雑な構成単位が可能であり好ましく、これをきわめて高度に分枝した構造と呼ぶことができる。本発明の特定の実施形態では、世代数は1〜200、好ましくは1〜50である。このような世代数は、工程(1)で、成分(b)に対する成分(a)の第1級アミノ基および第2級アミノ基の上記のモル比で成分(a)および(b)を使用することによって、具体的に言い換えれば、成分(a)の第1級アミノ基および第2級アミノ基に対して化学量論的に過剰量の成分(b)を使用することによって、本発明で得ることができる。
【0029】
さらに容易に理解するために、以下の式(I)は縮合物の詳細を示し、外側に延伸する星形を示し、(非変性)アミノ基含有有機ポリマー単位と、ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)による複数世代の分枝ポリエステル単位とを含む。式中、選択したポリヒドロキシモノカルボン酸(b)は、好適な化合物である2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸である。
【0030】
【化1】
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、特に、成分(b)は工程(1)に従って反応の前に修飾される。この修飾のためには、少なくとも1つの分岐ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)は、ラクトン、アルキル置換ラクトンおよびモノヒドロキシモノカルボン酸の群から選択されるモノマーと反応してエステル結合を形成する。この一次反応は、ポリヒドロキシモノカルボン酸分子中のヒドロキシ基の少なくとも一部と上記のモノマー化合物との反応である。このヒドロキシ基は、上記のモノマー化合物の単一のモノマーによるラジカルで修飾してもよい。しかし一般には、対象とするラジカルは、上記の化合物の2〜100、好ましくは少なくとも2〜25のモノマー単位を含む直鎖状のポリエステル鎖であることが少なくとも適切である。そのような反応または修飾は、たとえば、約70〜180℃で、たとえばジブチル錫ジラウレートなどの有機スズ化合物などの対応する従来の触媒を使用し、当業者に知られたラクトンの重合法によって実施してもよく、あるいは約50〜200℃で、ある意味当業者に知られているモノヒドロキシモノカルボン酸の重縮合法によって実施してもよい。そのような修飾によって、得られる新しい分子中のヒドロキシ基の空間密度が減少する。いずれの場合も、一次的に行われる上記の修飾によって導入されるラジカルがそれぞれ、単一の遊離ヒドロキシ基を担持することから、この修飾では成分(b)中のヒドロキシ基の総数は変化しない。
【0032】
当業者が認識しているように、ポリヒドロキシモノカルボン酸分子(b)自体は、単なる統計的理由で、成分(b)の上記の反応時または修飾時と、その際に好ましく付随する直鎖状のポリエステル鎖の形成時とに共重合によって、ラジカルとしてポリエステル鎖に組み込んでもよい。これは、成分(b)がカルボキシル基のほかにヒドロキシ基も含むことによる。ポリヒドロキシモノカルボン酸分子(b)の共重合によって分子中に対応するヒドロキシ官能性分枝部位が形成され、このヒドロキシ官能性分枝部位は、対応するラジカル、特に直鎖状のポリエステル鎖が上記の反応過程によって順次に結合することが可能である。共重合した各ポリヒドロキシモノカルボン酸の分子は、そのほかにも単一の分枝部位を形成し、単一のヒドロキシ基によって成分(b)の各修飾分子中のヒドロキシ基の総数を増加させる。このように、分枝または世代において、最終的に形成される構造は工程(1)の説明で記載したものに類似している。したがって、これは実際の工程(1)に先行する分岐反応である。しかし、その違いは上記の直鎖状のポリエステル鎖がスペーサ単位として個々の世代間で挿入されるという事実にある。
【0033】
成分(b)の修飾の場合、少なくとも1つの分岐ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)に対するラクトン、アルキル置換ラクトンおよびモノヒドロキシモノカルボン酸の群から選択される修飾するモノマーのモル比は、たとえば0.01/1〜1000/1、好ましくは1/1〜100/1、特に有利には1/1〜10/1である。好適なモル比によって、一方では、成分(b)のヒドロキシ基は、2つ以上、特に2〜25のモノマー単位を含む直鎖状のポリエステル鎖で少なくとも適切に修飾され、他方では、ポリヒドロキシモノカルボン酸分子(b)の共重合によって上に記載したように、少なくとも適切に予め分枝状であることを確実にすることが特に可能である。
【0034】
上記の成分(b)の修飾は、上に記載したように成分(a)および(b)の反応(工程(1))前に実施される。これは、少なくとも1つの分岐ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)それぞれの修飾が独立した工程で常に行われることを意味する。
【0035】
本発明で特に好ましいのは、ε−カプロラクトンおよび/またはδ−バレロラクトンでポリヒドロキシモノカルボン酸(b)を修飾することである。さらに容易に理解するために、以下の式(II)は外側に延伸する星形の縮合物の詳細を示し、(非変性)アミノ基含有有機ポリマー単位と、変性ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)として、特に上で説明したように修飾された2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸による複数世代の分枝ポリエステル単位とを含む。
【0036】
【化2】
【0037】
式中、R1〜R10は以下の式である。
【0038】
【化3】
【0039】
式中、nは、1以上、好ましくは2〜100、特に2〜25であり、Zは、特定のモノマーに応じてラクトン、アルキル置換ラクトンおよびモノヒドロキシモノカルボン酸の群から選択される同一または異なる脂肪族構成単位であり、R1〜R10は同一または異なり、異なる方が好ましい。
【0040】
上に記載するように主鎖、側鎖または分鎖に応じてヒドロキシ基の位置を決定するためには、変性ポリヒドロキシモノカルボン酸においても非修飾親分子が支配的要因となることに留意する必要がある。本発明では、ヒドロキシ基の位置決めに関しては、主鎖、側鎖および分鎖は修飾によって変化しない。修飾しても、親分子とヒドロキシ基との間にスペーサ単位、好ましくは上で定義するポリエステル鎖が挿入されるのみである。
【0041】
工程(2)
工程(1)からのヒドロキシ官能性反応生成物は、アミノ基含有有機ポリマー単位と、さらには高度に分岐した特性を備えることが可能なポリエステル単位を含み、第2の工程で単一のイソシアナート基を含む少なくとも1つの有機モノイソシアネートと反応(工程(2))し、これによって本発明の湿潤分散剤を製造する。有機モノイソシアネート分子は、工程(1)で得られた反応生成物のヒドロキシ基の少なくとも一部と結合することによってイソシアナート基によって導入され、ウレタン結合を形成し、これにより本発明の湿潤分散剤を形成する。工程(1)で得られた反応生成物のヒドロキシ基の好ましくは5mol%以上、特に5〜95mol%、さらに好ましくは20〜80mol%、きわめて好ましくは30〜75mol%が、少なくとも1つの有機モノイソシアネートと反応する。ヒドロキシ基の転化率は、工程(1)の後に得られる生成物および工程(2)の後に得られる本発明の湿潤分散剤のヒドロキシル価(DIN/ISO 4629による)の測定によって求められる。
【0042】
有機モノイソシアネートは、たとえばアルキレンラジカル、シクロアルキレンラジカル、アルケニルラジカル、アルキニルラジカル、アリーレンラジカル、ポリエーテルラジカル、ポリエステルラジカルおよび/または脂肪酸ラジカルならびにそのようなラジカルの組み合わせなどの有機単位を含むモノイソシアネートの群から選択される化合物である。好ましく使用される有機モノイソシアネートは、任意に他の直鎖基および/または分鎖基を有する直鎖アルキルラジカル、分枝アルキルラジカルまたは環式アルキルラジカルを含み、これらのラジカルは、任意に1または複数の二重結合および/または三重結合を含むことができ、炭素数が1〜50であり、かつ/あるいはアリールイソシアネート、イソシアネート官能性ポリエーテル、イソシアネート官能性ポリエステル、イソシアネート官能性ポリテトラヒドロフラン、イソシアネート官能性ポリエーテルエステルまたは脂肪酸モノイソシアネートおよびそのような化合物の組み合わせが使用される。イソシアネート官能性ポリエーテル、イソシアネート官能性ポリテトラヒドロフラン、イソシアネート官能性ポリエステルおよび/またはイソシアネート官能性ポリエーテルエステルを使用することが好ましい。
【0043】
有機モノイソシアネートは、ジイソシアネートとさまざまなモノアルコールとの反応生成物であるのが好ましい。これは、有機モノイソシアネートが上記の有機単位のほかに少なくとも1つ、特に単一のウレタン基を含むのが好ましく、いずれの場合もジイソシアネートとモノアルコールの反応によって生成されることを意味する。たとえば、この反応は、化学量論的に過剰量(モノアルコールに対してたとえば2〜10当量)のジイソシアネートで、および/または、ジイソシアネートを導入することによって、約20〜80℃でモノアルコールをゆっくり滴加することによって実施してもよい。過剰量のジイソシアネートは、反応終了後に留去することができる。ジイソシアネートとモノアルコールとの反応過程に関する詳細は、以下に示す実施例で確認することができる。
【0044】
使用されるジイソシアネートは、たとえばイソホロンジイソシアネート、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン2,4’−ジイソシアネート、トリメチ
レンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘプタンメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートなどの当業者に知られているジイソシアネートおよびそのようなジイソシアネートの組み合わせを含む。2,4−トリレンジイソシアネートおよび/または2,6−トリレンジイソシアネートを使用するのが好ましい。
【0045】
ジイソシアネートの反応に使用可能なモノアルコールは、たとえばメタノール、エタノール、ブタノール、エチルヘキサノール、デカノール、イソトリデシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、イソボルニルアルコール、ベンジルアルコール、プロパルギルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、オキソアルコール、ネオペンチルアルコールシクロヘキサノール、脂肪アルコール、アルキルフェノール、モノフェニルジグリコール、アルキルナフトール、フェニルエタノールおよび/またはモノヒドロキシモノカルボン酸などの直鎖アルコールまたは分枝アルコールである。好ましく使用されるのは、モノヒドロキシ官能性ポリエステルは、モノヒドロキシ官能性ポリエーテルおよび/またはモノヒドロキシ官能性ポリエーテルエステルである。
【0046】
好適なモノヒドロキシ官能性ポリエステルは、任意に1または複数のアルキル置換ヒドロキシカルボン酸の縮重合によって、かつ/あるいはプロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンおよび/またはε−カプロラクトンなどの対応するラクトンの開環重合によって、たとえばモノヒドロキシ開始成分を用いて得ることができる。好適なモノヒドロキシ官能性ポリエステルは、数平均分子量Mnが150〜5,000g/molであるのが好ましい。開始成分として使用される単官能性アルコールは、炭素数が1〜30、さらに好ましくは4〜14であるのが好ましい。たとえば、n−ブタノール、エチルヘキサノール、デカノール、イソトリデシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールと、プロパルギルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、オキソアルコール、シクロヘキサノール、フェニルエタノール、フッ素化アルコールなどの飽和長鎖アルコールまたは不飽和長鎖アルコールと、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのヒドロキシ官能性ビニル化合物と、たとえば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび/またはヒドロキシ官能性ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートとを使用してもよい。また、上記の種類のアルコールおよび置換フェノールおよび非置換フェノールは、公知の方法によるエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドなどのアルキレンオキシドとのアルコキシ化によって、たとえば、ポリオキシアルキレンモノアルキル、ポリオキシアルキレンモノアリール、ポリオキシアルキレンモノアラルキルおよびポリオキシアルキレンモノシクロアルキルエーテルに変換することが可能であり、これらのヒドロキシポリエーテルは、上記の方法でラクトンの重合開始成分として使用することが可能である。また、いずれの場合も上記の化合物の組み合わせを使用することができる。公知の方法、たとえば、約70〜180℃でp−トルエンスルホン酸またはジブチル錫ジラウレートの添加することによって、ラクトンの重合を触媒する。ポリエステルは、任意にδーバレロラクトンと組み合わせたε−カプロラクトン系であるのが特に好ましい。
【0047】
また、モノヒドロキシポリエーテルを好ましく使用することが可能である。これらのポリエーテルは、たとえば、アルカノール、シクロアルカノールもしくはフェノールなど上記のモノアルコールまたは上記のヒドロキシポリエステルをエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドまたはこれらの組み合わせなどのアルキレンオキシドでアルコキシル化することによって得ることが可能である。混合ポリエーテルの場合、ランダム、グラジエント、ブロックで構成してもよい。これらのポリエーテルは、数平均分子量(Mn)が約100〜10,000、好ましくは150〜5,000、さらに好ましくは200〜3,500g/molであるのが有用である。好適なポリエーテルは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびその組み合わせによる。たとえば、Clariant社製のポリグリコールA 350、ポリグリコールA 500、ポリグリコールA 1100、ポリグリコールA 11−4、ポリグリコールA 20−10もしくはポリグリコールA 20−20またはBASF社製のPluriol A 010 R、Pluriol A 11 RE、Pluriol A 13 R、Pluriol A 22 RもしくはPluriol A 23 R(ここで、「Pluriol」は、登録商標である。以下同様。)などのアリルポリエーテルと、たとえば、Clariant社製のポリグリコールV 500、ポリグリコールV 1100またはポリグリコールV 5500などのビニルポリエーテルと、BASF社製の Pluriol A 350 E、Pluriol A 500 E、Pluriol A 750 E、Pluriol A 1020 E、Pluriol A 2000 EまたはPluriol A 5010 Eなどのメタノールから調製されるポリオキシエチレンモノアルコールと、たとえば、Clariant社製のポリグリコール B01/20、ポリグリコール B01/40、ポリグリコール B01/80、ポリグリコール B01/120もしくはポリグリコール B01/240またはBASF社製のPluriol A 1350 PもしくはPluriol A 2000 Pなどのアルカノールから調製されるポリオキシプロピレンモノアルコールと、BASF社製のLutensol A、Lutensol AT、Lutensol AO、Lutensol TO、Lutensol XP、Lutensol XL、Lutensol AP、and Lutensol ON(ここで、「Lutensol」は、登録商標である)という商品名の当業者に知られている種類のポリオキシアルキレートなどの脂肪族アルコールから調製され、アルコキシ化度がさまざまなモノヒドロキシ官能性ポリオキシアルキレンモノアルコールがさらに好ましい。エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基および/またはブチレンオキシド基を含み、任意にスチレンオキシドで修飾されるポリオキシアルキレンモノアルコールの使用が好ましい。たとえば、Clariant社製のポリグリコールB 11/50、ポリグリコールB 11/70、ポリグリコールB 11/100、ポリグリコールB 11/150、ポリグリコールB 11/300またはポリグリコールB 11/700、BASF社製のPluriol A 1000 PE、Pluriol A 1320 PEもしくはPluriol A 2000 PEまたはDOW Chemicals社製のTerralox WA 110などのポリオキシアルキレンモノアルコールの使用が特に好ましく、これらはブタノールから調製されるポリオキシアルキレンであり、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含み、末端OH基を有する。
【0048】
さらに本発明は、本発明の湿潤分散剤を製造する方法も提供する。この方法では最初に、第1の工程で、上に記載したように任意に修飾されるアミノ基含有有機ポリマー(a)と、上に記載したように任意に修飾される少なくとも1つの分岐ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)を縮合反応させ、アミド結合を形成する(工程(1))。次に工程(2)で、工程(1)で得られ、アミノ基含有有機ポリマー単位と、任意に高度に分岐した特性を備えるポリエステル単位とを含むヒドロキシ官能性反応生成物のヒドロキシ基の少なくとも一部と、少なくとも1つの有機モノイソシアネートとを反応させてウレタン結合を形成し、これによって本発明の湿潤分散剤を調製する。
【0049】
アミノ基含有有機ポリマー(a)は、上に記載したように修飾して使用されるのが好ましい。さらに具体的には、これは、アミノ基含有有機ポリマー(a)またはこのポリマーに存在する第1級アミノ基および/または第2級アミノ基の少なくとも一部が、上に記載したように工程(1)に従って少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)と反応する前にラクトン、アルキル置換ラクトンおよび/またはモノヒドロキシモノカルボン酸と反応することを意味する。
【0050】
さらに、少なくとも1つの分枝ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)は、ラクトン、アルキル置換ラクトンおよびモノヒドロキシモノカルボン酸から選択されるモノマーと反応してエステル結合を形成する場合は、上で説明したように修飾されるポリヒドロキシモノカルボン酸(b)を使用するのが好ましい。
【0051】
対応する反応、たとえば工程(1)および(2)の縮合反応の好適な反応条件は、既に上に記載している。詳細情報は、以下に記載する実施例で確認することができる。さらに具体的には、縮合反応の場合は約50〜200℃、ラクトンの開環重合過程の場合は約70〜200℃が選択される。また、酸などの公知の触媒が任意に用いられる(特に縮合反応の場合)。また、たとえば、特にラクトンの重合の場合にジブチル錫ジラウレートなどの有機金属化合物も使用される。
【0052】
さらに、本発明は、顔料含有生成物および/または充填剤含有生成物での本発明の湿潤分散剤の使用を提供し、たとえば顔料コンセントレート、コーティング組成物、シール材および/またはプラスチックでの使用、好ましくは塗料などのコーティング組成物での使用、さらには塗料などのコーティング組成物に用いる顔料コンセントレートでの使用である。顔料コンセントレートは、着色塗料を生成するために対応するレットダウン系(letdown system)に混合できることが特に好ましい。
【0053】
さらに本発明は、顔料コンセントレート、コーティング組成物、シール材およびプラスチックの群から選択され、本発明の少なくとも1つの湿潤分散充填剤を含有する顔料含有生成物および/または充填剤含有生成物を提供する。
【0054】
本発明による好適な顔料含有コンセントレートおよび/または充填剤含有コンセントレートは、本発明の少なくとも1つの湿潤分散剤を含み、着色塗料の上記のレットダウン系以外にも使用することができる。これらのコンセントレートは、たとえば、樹脂、油、脂肪、潤滑油、ゴム材料、シール材、印刷用インク、液体インク、接着剤、ワックスまたはコーティング材組成物などのさまざまな製剤および生成物に使用することも可能である。また、コンセントレートは、ボディーケア産業、エレクトロニクス産業での電気的用途、水産業、医学的用途の一部として、建設産業、あるいは自動車産業で生成される製剤に使用することができる。例として、化粧品、電子書籍を表示するなどの電子ペーパー、超小型電子チップのカプセル化、防汚コーティングなどの潜水艦船体コーティング、シリコーンチューブ、あるいはブレーキ部品用の潤滑添加剤が挙げられる。コンセントレートの使用例として、NIP(ノンインパクト印刷)、インクジェット(紙、フィルム、セラミックおよび合成繊維および天然繊維に)、セラミック(水溶媒または無水溶媒へ)の分散、及び、エポキシ鋳造化合物への分散に関する利用分野を挙げることもできる。また、本発明の湿潤分散剤は、上記の製剤および分野で、それ自体、すなわち対応するコンセントレートに予め混入しないで使用してもよい。
【0055】
発明の少なくとも1つの湿潤分散充填剤を含有する顔料含有生成物および/または充填剤含有生成物は、コーティング組成物、たとえば塗料または塗料などのコーティング組成物のための顔料コンセントレートであるのが好ましい。しかし最終的には、あらゆる所望の顔料含有生成物および/または充填剤含有生成物での使用が可能である。
【0056】
さらに具体的には、顔料コンセントレートは、本発明の湿潤分散剤のほかに、たとえば有機溶媒および少なくとも1つの顔料を含む組成物である。さらに具体的には、顔料コンセントレートは、バインダーとしての有機ポリマーを全く含まないか、わずかに含む。そのようなバインダーは当業者に知られており、対応するレットダウン系に有利に存在し、以下に説明する。
【0057】
使用される有機溶媒は、塗料工業分野で使用され、当業者に知られている典型的な有機溶媒、たとえば脂肪族溶媒、脂環族溶媒、トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族溶媒、たとえばブチルグリコール、ブチルジグリコール、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの典型的なエーテル、エステルおよび/もしくはケトンならびに/または酢酸メトキシプロピルおよびジアセトンアルコールなどの溶媒であるが、これに限定されない。
【0058】
使用される顔料は、当業者に知られている顔料である。顔料の例は、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、トリアゾ顔料およびポリアゾ顔料、オキサジン顔料、ジオキサジン顔料、チアジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、ウルトラマリン顔料および他の金属錯体顔料、インジゴイド顔料、ジフェニルメタン顔料、トリアリールメタン顔料、キサンテン顔料、アクリジン顔料、キナクリドン顔料およびメチン顔料、アントラキノン顔料、ピラントロン顔料およびペリレン顔料ならびに他の多環式カルボニル顔料、カーボンブラック顔料などの無機顔料ならびに/またはカーボンブラック、グラファイト、亜鉛、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸バリウム、リトポン、酸化鉄、ウルトラマリン、リン酸マンガン、アルミン酸コバルト、スズ酸コバルト、亜鉛酸コバルト、酸化アンチモン、硫化アンチモン、酸化クロム、クロム酸亜鉛、ニッケル系、ビスマス系、バナジウム系、モリブデン系、カドミウム系、チタニウム系、亜鉛系、マンガン系、コバルト系、鉄系、クロム系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系の複合金属酸化物(たとえばニッケルチタニウムイエロー、バナジン酸/モリブデン酸ビスマスイエローまたはクロムチタニウムイエロー)系の顔料、純鉄、酸化鉄および酸化クロムまたは混合酸化物系の磁性顔料、アルミニウム、亜鉛、銅または黄銅を含む金属効果顔料、さらに真珠光沢顔料、蛍光顔料および燐光顔料である。他の例は、特定のカーボンブラック生成物などの粒径が100nm未満のナノ単位の有機固体または無機固体、あるいはswCNT、mwCNTおよびグラフェンなどの他のカーボン同素体である。粒径は、たとえば透過電子顕微鏡法、分析超遠心法または光散乱法によって測定される。金属酸化物もしくは半金属酸化物もしくは金属水酸化物もしくは半金属水酸化物から成る粒子、さらには混合金属酸化物および/または混合半金属酸化物または混合金属水酸化物および混合半金属水酸化物から成る粒子も顕著な例である。この種類の超微粉固体は、たとえば、アルミニウム、シリコン、亜鉛、チタニウムなどの酸化物および/または水酸化酸化物によって調製してもよい。これらの酸化物粒子または水酸化物粒子または酸化物水酸化物粒子を生成する方法は、たとえばイオン交換法、プラズマ法、ゾル−ゲル法、沈殿法、粉砕法(たとえば製粉による)または火炎加水分解法などのさまざまな方法のいずれかを利用してもよい。
【0059】
各生成物、特にコーティング組成物は充填剤を含み、対象とする充填剤は、たとえば当業者に知られているものである。粉末状または繊維状の充填剤の例は、たとえば酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、珪藻土、珪質土、石英、シリカゲル、タルク、カオリン、マイカ、パーライト、長石、頁岩粉末、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カルサイト、ドロマイト、ガラスまたはカーボンの粉末状または繊維状の粒子で形成されるものである。顔料または充填剤の他の例は、欧州特許出願公開第0270126号明細書に記載されている。また、難燃剤、たとえば水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムと、艶消剤、たとえばシリカは、本発明の湿潤分散剤によってきわめて良好に分散し、安定することが可能である。
【0060】
利用分野に応じて、本発明の湿潤分散剤は、長期での適用を対象とする生成物中の本発明の湿潤分散剤の分率が対象とする生成物の総量に対して0.01〜10wt%が有利となるような量で使用される。しかし、この分率はさらに大きくてもよい。たとえば、長期での適用を対象とする生成物は、着色コーティング組成物または着色塗料であり、本発明の湿潤分散剤は顔料コンセントレートで使用され、次いで顔料コンセントレートは塗料を生成するために使用され、コンセントレート中の本発明の湿潤分散剤の分率は、生成される着色コーティング組成物に応じて、より多くなる。このような状況では、たとえば、顔料コンセントレートとレットダウン系が混合する割合が重要となる。
【0061】
被分散固体、たとえば顔料に対して、本発明の湿潤分散剤は、0.5〜100wt%で使用されるのが好ましい。難分散性固体が使用される場合、使用される本発明の湿潤分散剤の量はさらに多くなると考えられる。一般に、分散剤の量は、被分散物質の比表面積に依存している。このため、たとえばどの顔料が含まれているかが重要であると考えられる。一般に、有機顔料は通常、比表面積が大きく、このため、多量の分散剤が必要となるため、無機顔料を分散するために必要な分散剤は通常、有機顔料より少ない。添加する湿潤分散剤の典型的な量は、いずれの場合も被分散固体、特に顔料に対して、無機顔料の場合はたとえば1〜20wt%、有機顔料の場合は10〜50wt%である。また、超微細顔料(たとえば特定のカーボンブラック)の場合、30〜90%以上の添加量が必要である。十分な顔料安定性に関する使用可能な基準には、たとえば、コーティング組成物の光沢度および透明度または流動度が挙げられる。固体の分散は、2つ以上の顔料を単一分散、あるいは同時に混合分散してもよく、最良の結果は一般に、単一分散処理の場合に得ることが可能である。さまざまな固体の混合物が使用される場合、固体表面の逆帯電によって液相での凝集が進む可能性がある。
【0062】
生成物、特にコーティング組成物または塗料は、結果的には本発明の湿潤分散剤によって活性が増大するが、バインダーとして有機ポリマーをさらに含んでもよい。そのようなバインダーは、当業者に知られており、Roempp Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart New York、1998、73〜74ページにとりわけ非包括的に記載されている。この少なくとも1つのバインダーは、たとえばレットダウン系によって導入してもよく、たとえば本発明の湿潤分散充填剤を含有する顔料コンセントレートと混合することによって、対象とする生成物は着色塗料を構成する。しかし、他の顔料含有生成物および/または充填剤含有生成物も可能であり、例としてプラスチック、シール材、さらには当業者に知られており、有機ポリマーマトリックスによる他の生成物が挙げられる。本発明のための生成物は、バインダーとしてポリマー樹脂または有機ポリマーを含む系であり、これにより適切な硬化条件下で固体の有機ポリマーマトリクス(たとえばコーティング組成物)を生成することが可能である。生成物は、バインダーを含む成分と単に混合する系とも呼ばれ、その1つの有機ポリマーマトリックス(たとえば顔料コンセントレート)を生成することが可能である。当業者に知られているアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂および/またはエポキシ樹脂が一例として使用されるが、これに限定されない。1成分系および2成分系が可能であり、一般に2成分系の場合、第2の成分は当業者に知られている典型的な架橋剤として、たとえばポリイソシアネート、メラミン樹脂および/またはポリアミド樹脂を含む。本発明では、生成物系、特にコーティング組成物が好ましく、バインダーとしてアクリル樹脂を含む。本発明の別の実施形態では、生成物系は、2成分(以下、「2K」という)コーティング組成物または2K塗料であり、バインダー成分にエポキシ樹脂および架橋剤成分にポリアミド樹脂を含む。
【0063】
生成物として好ましいコーティング組成物は、水系でも溶媒系でもよく、溶媒系が好ましい。本発明のための水系は、コーティング組成物の溶媒が主に水分を含むということを意味する。更に具体的には、水系コーティング組成物の場合、溶媒の総量に対してコーティング組成物中に10wt%以下の有機溶媒が存在している。本発明のための溶媒系コーティング組成物は、溶媒の総量に対して5wt%以下、好ましくは2wt%以下の水分を含む。また、水系または溶媒系の上記の割合と比較して、コーティング組成物は、バランスのとれた割合または比で有機溶媒および水を含んでもよいことは言うまでもない。
【0064】
また、生成物、特に本発明の少なくとも1つの湿潤分散充填剤を含有する顔料コンセントレートおよびコーティング組成物は、当業者に知られている他の典型的な添加剤を含んでもよいことは言うまでもない。好適なコーティング組成物では、そのような添加剤は、たとえば光開始剤、消泡剤、湿潤剤、セルロース誘導体(たとえば硝酸セルロース、酢酸セルロース、セルロースアセトブチレート)などの薄膜形成助剤、反応性希釈剤、流動性調整剤、分散剤および/またはレオロジー制御添加剤である。
【0065】
生成物として好適なコーティング組成物および顔料コンセントレートの調製は、当業者に知られている方法によって実施され、特徴に特異性はない。たとえば、撹拌タンクまたは溶解槽などの従来かつ公知の混合アセンブリで、コーティング組成物の成分を撹拌および混合しながら徐々に添加するなどの公知の方法が使用される。好適な顔料コンセントレートおよびコーティング組成物を使用して、コーティングまたは塗膜を生成することが可能であることは言うまでもない。コーティングは、基板に塗布して硬化する当業者に知られている技術によって生成される。
【0066】
たとえば、塗布は、公知の噴射法、スプレー法、ブラッシング法、ローリング法、注入法、含浸法および/またはディッピング法によって実施される。基材にコーティング組成物を塗布した後に、一般に知られている方法によって硬化または乾燥する。たとえば、塗布したコーティング組成物は、物理的に乾燥させ、熱硬化し、かつ/あるいは化学線(放射線硬化)、好ましくは紫外線、さらには電子線を使用して硬化してもよい。熱硬化は、コーティング組成物および/または基板の種類に応じて、たとえば約10〜約400℃で行なってもよい。また、硬化時間は、たとえば硬化法(熱硬化または化学硬化)の種類、使用されるコーティング組成物および/または基板の種類に応じて個々に依存している。たとえば、硬化は1分から数時間あるいは何日でも行なってもよい。この段階の基板は、動作していても静止していてもよい。硬化条件は、当業者によってその当業者の技術知識に基づいて問題とならないようにこの事例に適合することができる。
【0067】
以下の実施例は、本発明の湿潤分散剤が着色コーティング系または塗料に優れた分散活性をもたらし、結果的には保存安定性が良好で、光沢度が高く、かつ/あるいはヘイズが最小限に抑えられるなどの有利な特性をもたらすことを示すために用いられる。これらの特性のバランスは良好に得られる。従来の湿潤分散剤と比較して、さまざまなコーティング系に使用するために広範囲な適用可能性が改善されている。
【実施例】
【0068】
注釈物質が分子不均一性の場合、以下に報告する分子量は上の記載と同じように数平均分子量の平均値で表す。ヒドロキシ基、NCO基、アミノ基または酸基などの定量可能な官能性末端基が存在する場合、OH価、NCO価、アミン価または酸価の滴定により末端基を定量することによって分子量または数平均分子量Mnを求める。末端基の定量が適用できない化合物の場合、数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーによってポリスチレン基準で求める。ポリアミンの場合に報告する分子量は、沸点上昇法によって求められる数平均分子量Mnである。
【0069】
特に明記しない場合、部で示す数字は重量部であり、百分率で示す数字は重量パーセントである。
【0070】
使用するポリイソシアネートの遊離NCO量およびNCO添加量の反応プロフィールは、EN ISO 9369に従ってブチルアミンと反応させ、次いで過剰量のアミンを滴定することによって求める。また、これらの方法は、Saul Pataiによる「The Chemistry of Cyanates and their Thioderivatives」、第1部、第5章、1977に記載されている。
【0071】
変性ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)の合成
以下の一般に用いられる合成手順に従って、有機ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)1〜7を調製する。非変性ポリヒドロキシモノカルボン酸、ε−カプロラクトンおよび任意にδ−バレロラクトンをジブチル錫ジラウレート(200ppm)と混合し、不揮発成分(2.0±0.1gの試験物質、二重反復測定、10分、150℃、EN ISO 3251)の分率が98%超となるまで不活性ガス雰囲気下の170℃で撹拌する。使用した具体的な化合物およびその量を表1に表す。無色または薄く黄色がかった液体で生成物を得た。その一部は、保存時にワックス状に固体化する可能性がある。
【0072】
【表1】
【0073】
変性アミノ基含有有機ポリマー(a)の合成
以下の一般に用いられる合成手順に従って、変性アミノ基含有有機ポリマー(a)1〜4を調製する。非変性アミノ基含有有機ポリマー(a)、ε−カプロラクトンおよび任意にδ−バレロラクトンをジブチル錫ジラウレート(200ppm)と混合し、不揮発成分(2.0±0.1gの試験物質、二重反復測定、10分、150℃、EN ISO 3251)の分率が98%超となるまで窒素雰囲気下の170℃で撹拌する。黄色または薄茶色液体で生成物を得た。その多くは、保存時にワックス状に固体化する可能性がある。
【0074】
使用した具体的な化合物およびその量を表2に表す。
【0075】
【表2】
【0076】
1 Epomin:アジリジンホモポリマー(ポリエチレンイミンポリマー(日本触媒社製)
【0077】
1つのイソシアナート基を含む有機モノイソシアネートの合成
以下の一般に用いられる合成手順に従って、有機モノイソシアネート(R−NCO)1〜9をジイソシアネートおよびモノアルコールから調製した。窒素雰囲気下でジイソシアネート(少なくとも1.0mol、通常2.0〜10.0mol、表3を参照)を導入し、反応温度が60℃を超えないように無水(Karl Fischer水分滴定により0.1%未満)モノアルコール(1.0mol)をゆっくり滴加する。滴加終了後、生成物のNCO価が30分間大きく変化しなくなるまで60℃で撹拌し続ける。過剰量のジイソシアネートを使用する場合、反応終了後に残留する過剰量のジイソシアネートを薄膜蒸発器または短路蒸発器を使用して留去する。
【0078】
使用した具体的なジイソシアネートおよびモノアルコールならびにそのモル比を表3に表す。
【0079】
【表3】
【0080】
Desmodur T 100:2,4−トリレンジイソシアネート(Bayer社製)。
Desmodur T 80:2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネート(比80:20)(Bayer社製)
MPEG 350/500:メトキシポリエチレングリコール、Mn:350/500
ポリグリコール B01/40:ブタノールから調製されるPOポリエーテル、Mn=1,100、Clariant社製
ポリグリコール B01/120:ブタノールから調製されるPOポリエーテル、Mn=2,000、Clariant社製
ポリグリコール B11/50:ブタノールから調製されるEO/POポリエーテル(1:1)、Mn=1,700、Clariant社製
ポリグリコール B11/70:ブタノールから調製されるEO/POポリエーテル(1:1)、Mn=2,000、Clariant社製
DCPE1100:デカノールから調製されるモノヒドロキシ官能性ε−カプロラクトンポリエステル、Mn=1,100
MCVPE1500:メトキシポリエチレングリコールのモノヒドロキシ官能性ポリエステル Mn=500、ε−カプロラクトンおよびδ−バレロラクトン(モル比1:7:2)、Mn=1,500
【0081】
本発明の湿潤分散剤の合成
次の工程で、以下の一般に使用される実施手順に従ってアミノ基含有有機ポリマー(a)、ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)および有機モノイソシアネートを反応させて湿潤分散剤を得た。
【0082】
任意に修飾したポリアミン物質(a)を窒素雰囲気下で180℃に加熱し、任意に修飾した各ポリヒドロキシモノカルボン酸(b)を回分添加した。反応物を酸価(DIN 53402によるAN)が10mg KOH/g未満の固体になるまで同じ温度で撹拌した。反応時には、生成した反応水を選択した反応温度で留去して水分離器に収集した。
【0083】
次に、得られた生成物のヒドロキシル価(DIN ISO 4629による)を求め、窒素雰囲気下でヒドロキシ基を各モノイソシアネートと60℃で適切に反応させた。本発明の湿潤分散剤を薄茶色の高粘度油として得た。
【0084】
使用した具体的な化合物およびその量を表4に表す。
【0085】
【表4】
【0086】
1 Lupasol WF:アジリジンホモポリマー(ポリエチレンイミンポリマー)(BASF社製)
【0087】
さらに、国際公開第2008/037612号パンフレットに記載されている比較例の化合物(比較例の湿潤分散剤)を生成し、以下に記載するように性能評価を実施した。濃黒色の固体の比較例の湿潤分散剤を調製した。国際公開第2008/037612号パンフレットに記載されている実施例の化合物58として特定される物質は、性能評価の結果が最良であることが明らかであった。したがって、この化合物を本発明の湿潤分散剤の試験に関する評価に対照物質として含めた。
【0088】
以下の実施手順に従って対照物質を調製した。0.9gのEpomin SP 200を180℃に加熱し、59.0gの中間体(b)4を回分添加した。生成物の酸価が9.9の値になるまで混合物を180℃で撹拌した。生成した反応水を留去した。次に、16.0gのライウリン酸を添加し、水が留去できなくなるまで混合物を180℃で30時間撹拌した。これにより、濃黒色のワックス状の固体を得た。
【0089】
さらに、以下の実施手順に従って本発明の湿潤分散剤18を調製した。0.9gのEpomin SP 200を180℃に加熱し、59.0gの中間体(b)4を回分添加した。生成物の酸価が9.9の値になるまで混合物を180℃で撹拌した。生成した反応水を留去した。次に、反応物を70℃に冷却し、16.88gのラウリルイソシアネートを添加した。遊離イソシアネートが見えなくなるまで反応物質を3時間撹拌した。これにより、薄茶色のワックス状の固体を得た。
【0090】
比較的長い反応時間経過後に濃黒色の生成物として比較例の化合物58を得るが、淡色の化合物18は簡単かつ素早く合成することができる。
【0091】
表5は、対照物質および本発明の湿潤分散剤18の概要を示す。
【0092】
【表5】
【0093】
性能評価
湿潤分散剤1〜17の一部に対して性能評価を実施した。このために、さまざまな顔料ペーストまたは着色コーティング組成物/塗料を、以下に記載するように湿潤分散剤を使用して調製した。その後、当業者に知られている方法に従って、コーティング組成物または塗料をポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、紙カードおよび/またはガラス板に塗布し、硬化または乾燥した。
【0094】
ラビング試験
ラビング試験調製後、試験塗料を傾斜板(60〜70°)上の薄膜に塗布し、その塗膜を室温で一晩乾燥した。次に、塗膜の顔料の浮き色または色分かれをラビング試験で評価した。この試験ではラビングの結果としてΔE値を評価した(ラビング:擦った領域と擦
っていない領域の色差(ΔE)が最大値となり、一定の状態となるまで非硬化塗装面を指
で擦り、この色差を定量測定する)。この値が高くなると浮き色は顕著となる。
【0095】
他の性能評価
塗膜を視覚的評価した。視覚的評価は、各塗布した塗料を硬化または乾燥させることによって行った。乾燥した塗膜のドローダウン、すなわち仕上げた塗膜の透明度を評価した(評価基準は1〜6段階あり、1はきわめて良好、6は不十分)。また、光沢度(20°の角度の光沢度、値が高いと光沢度は高くなる)、ヘイズ(値が低いとヘイズは低くなる)およびゲル斑点形成を評価した。
【0096】
最初に、バインダー非含有顔料コンセントレートを、湿潤分散剤1〜16のいくつかと、国際公開第2008/037612号パンフレットの化合物58として特定される物質とを使用し、さらに、ヘリオゲンブルー L7101、カーボンブラック FW 200およびBayferrox 120Mの顔料と、有機溶媒とを使用して調製した。
【0097】
(分散条件:Dispermat CV:40℃で1mmのガラスビーズを使用、ガラスビーズ:顔料コンセントレートの重量比=1:1、テフロン(登録商標)ディスク直径=40mm、Bayferrox 120M:17m/s(8,000rpm)で40分、ヘリオゲンブルー L7101 F:21m/s(10,000rpm)で40分、カーボンブラック FW 200:21m/s(10,000rpm))で90分)
【0098】
バインダー非含有顔料コンセントレートの組成は以下の通りであった。
【0099】
ヘリオゲンブルー L7101Fで着色したバインダー非含有顔料コンセントレート
【0100】
【表6】
【0101】
1 BASF社製
【0102】
カーボンブラック FW 200で着色したバインダー非含有顔料コンセントレート
【0103】
【表7】
【0104】
1 Evonik社製
【0105】
Bayferrox 120Mで着色したバインダー非含有顔料コンセントレート
【0106】
【表8】
【0107】
1 Lanxess社製
【0108】
さまざまなレットダウン系を用いてバインダー非含有顔料コンセントレートを製剤化し、着色塗料を得た。以下に記載する成分を混合することによって、レットダウン系および塗料をそれぞれ得た。
【0109】
アクリレートレットダウン系(レットダウン系1)の製剤
【0110】
【表9】
【0111】
1 アクリレートバインダー(Rohm and Haas社製)
【0112】
アクリレート/セルロースアセトブチレート(CAB)レットダウン系(レットダウン系2)の製剤
【0113】
【表10】
【0114】
1 セルロースアセトブチレート(Eastman Chemicals社製)
* 溶媒混合液:キシレン30%、酢酸ブチル30%、イソプロパノール20%、ブチルグリコール20%
【0115】
着色アクリレート/アクリレート−CAB塗料の製剤
【0116】
【表11】
【0117】
【表12】
【0118】
性能評価および特性
以下の各表は、使用した各顔料コンセントレートおよび顔料(上記の顔料コンセントレートの組成物も参照)、さらには使用した塗料系に用いた湿潤分散剤を示す。対応する性能特性の測定値も示す。
【0119】
カーボンブラック FW 200/アクリレート塗料の結果
【0120】
【表13】
【0121】
* 評価基準:1=きわめて良好、6=不良
【0122】
ヘリオゲンブルー L7101 F/アクリレート塗料の結果
【0123】
【表14】
【0124】
* 評価基準:1=きわめて良好、6=不良
【0125】
Bayferrox 120M/アクリレート塗料の結果
【0126】
【表15】
【0127】
カーボンブラック FW 200/アクリレート−CAB塗料の結果
【0128】
【表16】
【0129】
* 評価基準:1=きわめて良好、6=不良
【0130】
ヘリオゲンブルー L7101 F/アクリレート−CAB塗料の結果
【0131】
【表17】
【0132】
* 評価基準:1=きわめて良好、6=不良
【0133】
Bayferrox 120M/アクリレート−CAB塗料の結果
【0134】
【表18】
【0135】
さらに、着色塗料の保存安定性を評価した。このために、2成分(以下「2K」という)エポキシ塗料系のエポキシ成分(成分A)をカーボンブラック FW 200(割合:1.5wt%)を含むバインダー非含有顔料コンセントレートと混合し、50℃で12週間保存した。以下の表は、使用した2成分塗料系、さらに評価した着色エポキシ成分(成分A)の保存安定性の概要を示す。
【0136】
2K塗料の製剤
【0137】
【表19】
【0138】
1 エポキシバインダー(Hexion社製)
【0139】
【表20】
【0140】
1 ポリアミドアミン(Huntsman社製)
【0141】
保存安定性の評価
【0142】
【表21】
【0143】
保存期間中、製剤にゲル化は見られなかった。
【0144】
さらに、2K着色塗料の光沢度、ヘイズ、透明度、浮き色およびゲル斑点に関する性能特性を評価した。
【0145】
対象とする2K塗料は以下のとおりであり、上記成分AおよびBならびに顔料コンセントレートによるものであった。
【0146】
【表22】
【0147】
カーボンブラック FW 200/2K塗料の結果
【0148】
【表23】
【0149】
* 評価基準:1=きわめて良好、6=不良
【0150】
ヘリオゲンブルー L7101 F/2K塗料の結果
【0151】
【表24】
【0152】
* 評価基準:1=きわめて良好、6=不良
【0153】
Bayferrox 120M/2K塗料の結果
【0154】
【表25】
【0155】
本発明の湿潤分散剤は、有機顔料および無機顔料を含むさまざまな着色コーティング組成物および塗料に良好な湿潤分散性をもたらす(Bayferrox 120M、ヘリオゲンブルーL 7101 Fおよびカーボンブラック FW 200)。これらの良好な湿潤分散性は、光沢度、ヘイズ、透明度およびゲル斑点などを評価した性能特性において明確に示す。特定の塗料系では、これらの特性は、従来の湿潤分散剤を使用した場合に得られる特性に匹敵しているか、わずかに良好である。他の特定の塗料系では、特性プロフィールが大幅に改善されている。さらに、本発明の湿潤分散剤は比較的淡い色を示す。さらに具体的には、濃黒色の色彩を避けることが可能である。本発明の湿潤分散剤の広範囲な適用可能性が優れており、先行技術に対して改善している。