【文献】
ST JOHN L S et al.,Endogenous p53 gene status predicts the response of human squamous cell carcinomas to wild-type p53,CANCER GENE THERAPY,2000年 5月,Vol.7,No.5,P.749-756
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
I.本発明
本明細書で考察するように、臨床レベルでの遺伝子療法は、多数の癌療法治験を含めて10年以上にわたって試験中である。総合すると、このアプローチの成功は、従来の治療アプローチを用いて見られる利益より増加した利益を生じるため前途有望と見られてきた。しかし、大多数の抗癌治療を用いた場合と同様に、遺伝子療法または他の治療の有効性から最良の利益を得ることができる患者集団の同定を改良しなければならないという実質的な必要が依然として残っている。
【0031】
p53バイオマーカープロファイルについての以前の評価は、治療応答または予後を十分に予測するには不適切であるが、それは予測および予後決定にとって重要である、機能的に正常なp53タンパク質を有する全ての場合を同定することができないからである。以前の適用の教示は、典型的には異常に増加したp53タンパク質もしくはp53遺伝子突然変異のいずれかの検出を考察するが、機能的に正常なp53タンパク質を予測もしくは予後マーカーとして含有しない点で本発明とは相違している。本発明者らは、予想外にも、p53遺伝子療法への治療応答を予測するための正常な機能的p53タンパク質の存在を同定するためにp53発現量および遺伝子突然変異状態の正確な組み合わせおよび適用が必要とされることを見出した。この予想外の結果は、p53免疫組織学検査もしくはシーケンシング分析を利用するための以前の試みが治療応答および予後をルーチン的に予測するためのこれらのp53バイオマーカープロファイルの能力に関して矛盾する結果をもたらしたことを示している。
【0032】
そこで、本発明者らは、癌療法からの患者への応答もしくは有益度を予測するためにp53バイオマーカープロファイルの組み合わせを使用する方法を提供する。特定の態様では、癌療法は、遺伝子療法、例えばAdvexin(登録商標)療法などのアデノウイルスp53遺伝子療法である。
【0033】
A.p53遺伝子療法への応答を予測するp53腫瘍バイオマーカープロファイル
本発明者らは、以下の腫瘍バイオマーカーの組み合わせが典型的には好適な有効性および予後転帰を予測することを見出した:(1)高レベルの正常p53タンパク質(例えば、野生型p53配列を備える免疫組織学的陽性);(2)一つの異常p53遺伝子配列を備える少なくとも一つの正常対立遺伝子の検出を伴う低レベルのp53タンパク質(免疫組織学的陰性)(免疫組織学的陰性は、Trkova et al.(2003)によって記載されたように、一つの正常p53対立遺伝子および一つの異常対立遺伝子が存在する場合に観察されることがある);または(3)低レベルの正常p53タンパク質(例えば、野生型p53配列を備える免疫組織学的陰性)。これらのバイオマーカープロファイル各々は、典型的には正常p53遺伝子が活性であると思われる場合の状態を規定している。これに関連して、正常p53遺伝子の増加した発現を生じさせるp53遺伝子療法は、以下で考察するように、治療有効性に寄与し、MDM2、MDM4のような阻害剤によって媒介されるp53不活性化またはドミナント・ネガティブp53変異タンパク質の低レベル発現を克服する。複製欠損性アデノウイルスベクター単独を用いた細胞の形質導入は、野生型p53遺伝子を含有する細胞内で野生型p53発現もまた誘導することができた(Mcpake et al., 1999)。
【0034】
正常p53遺伝子構造は、p53発現非腫瘍正常細胞内と同一であるp53遺伝子構造であると規定されている。野生型p53対立遺伝子は、p53非腫瘍正常細胞内と同一のDNA配列を有している。p53タンパク質の増加したレベルもしくはp53の過剰発現は、正常p53発現非腫瘍細胞内で発現するより高いレベルであると規定されている。p53タンパク質の正常レベルは、正常p53非腫瘍細胞内で発現するより高くないレベルであると規定されている。
【0035】
1.増加したp53レベルおよび正常p53遺伝子は好適な応答を予測する
正常p53遺伝子型(野生型p53対立遺伝子からなる)と結合したp53発現の高レベルは、高レベルの正常p53の存在を示している。これらの腫瘍の多数は、p53活性を阻害するMDM2またはMDM4の増加したレベルを有することが公知である(Valentin-Vega et al., 2007)。しかし、Valenitn-Vega et al.(2007)は、この状況が本発明においてのみ教示される任意の好適な予後効果と相関することは教示していない。本発明は、これらの腫瘍がさらなるp53発現のアップレギュレーションを伴うストレス応答を誘導する、またはAdvexin(登録商標)のような追加の野生型p53を送達する、またはnutlinのようなp53阻害剤をダウンレギュレートする治療薬に曝露させられると、この抑制が克服され、腫瘍サプレッサー経路は次に活性化され、治療有効性および治療応答、例えば腫瘍サイズの減少などを生じさせることを示している。
【0036】
2.低p53レベルおよび正常p53遺伝子は好適な応答を予測する
類似の状況は、p53の免疫組織学的評価が正常p53遺伝子配列(野生型p53対立遺伝子からなる)を伴う低レベルの発現を明らかにした場合に発生する。これらの腫瘍のいずれかはp53欠損を有していない、またはそれらはMDM2もしくはMDM4のようなアップレギュレートしたp53阻害剤またはもしかするとp53を遮断する他の方法を有している可能性がある(Valentin-Vega et al., 2007)。しかし、Valenitn-Vega et al.(2007)は、この状況が本発明においてのみ教示される任意の好適な予後効果と相関することは教示していない。低レベルの正常p53タンパク質発現プロファイルを備える患者では、ストレス応答のp53アップレギュレーションを生じさせる、またはnutlinのようなp53阻害剤をダウンレギュレートする野生型p53および/またはp53遺伝子療法の投与は、そのサプレッサーに比較して正常p53の発現を増加させ、結果として生じる治療的腫瘍サプレッサー作用によりp53阻害剤を克服する。
【0037】
3.低p53レベルおよび異常p53遺伝子は好適な応答を予測する
Poeta(2007)、Olivier(2006)およびSoussi(2006)は、正常p53の作用を阻害できる変異p53遺伝子の存在が不良な臨床転帰を予測する状況であることを教示している。これらの場合は一般に、正常p53に結合して不活性化する変異p53の能力を生じさせる、無傷四量体化ドメインを備えるDNA結合ドメイン内でのp53の突然変異を有している。そのような突然変異は、ドミナント・ネガティブp53突然変異または不活性化もしくはブロック化突然変異と呼ばれる。しかしこれらの存在単独(遺伝子シーケンシング法によって検出される)は、Poeta(2007)、Olivier(2006)およびSoussi(2006)によって記載されたように転帰を正確に予測するためには不十分であるが、それは存在する場合に第2正常p53対立遺伝子を不活性化する能力に作用を及ぼすような阻害性タンパク質のレベルを考察できないためである。そのような不活性化またはドミナント・ネガティブ突然変異の存在に加えて、その発現のレベルは、正常p53に及ぼす作用を決定するために重要である。本発明は、低レベルのp53タンパク質発現が存在する場合には、不活性化p53突然変異の存在がp53治療への不良な応答とは相関しないことを開示している。
【0038】
Trkova et al.(2003)は、免疫組織学的評価による変異p53配列および低p53レベルを備える患者は第2正常p53遺伝子を有することが多いと記載している。しかし、Trkova et al.(2003)は、この状況が本発明によってしか開示されない任意の好適な予後効果と相関することは教示していない。
【0039】
4.高p53レベルおよび異常p53遺伝子
上述したように、変異p53遺伝子単独の存在は、癌療法に対する不良な臨床応答について予測するためには不十分である。本発明は、正常p53の機能を許容または防止する状態は、p53の量および遺伝子シーケンシング分析の組み合わせによるp53バイオマーカープロファイルの予測および予後適用のための重要な因子であることを開示している。これらのp53の突然変異が高レベルで発現し、野生型p53遺伝子が存在する場合でさえ正常p53の機能を阻害できる突然変異、例えば変異p53を正常p53に結合させて正常なp53を不活性化させる能力を生じさせる無傷四量体化ドメインを備えるDNA結合ドメイン内でのドミナント・ネガティブ突然変異をブロック化する場合は、これらの場合はp53遺伝子療法への不良な応答と関連している可能性が高い。これはこの療法によって導入もしくは誘導された正常p53機能が高レベルの破壊的p53突然変異体によって遮断されるからである。これらのタイプの突然変異は、約80%のp53突然変異(無傷四量体化能力を備えるDNA結合ドメイン内でのミスセンス突然変異)を含んでおり、それらはそのような変異p53遺伝子によってコードされるp53タンパク質が腫瘍細胞内において高レベルで発現する場合は治療への不良な応答と関連している。
【0040】
しかし、高p53および変異p53を発現する腫瘍細胞内では、これらの突然変異が野生型p53の機能を阻害しない突然変異、例えば生じた変異p53が正常p53に結合して不活性化することのできない切断四量体化ドメインを備える突然変異である場合は、これらの腫瘍細胞はp53遺伝子療法へ好適に応答することができる。
【0041】
これらをまとめると、上記のp53バイオマーカープロファイル分析と比較すると、p53バイオマーカー評価の以前の全ての方法(Kyzas et al., 2005;George et al., 2007;Olivier et al., 2006;Geisler et al., 2002;Poeta et al., 2007;Soussi et al., 2006)は、治療転帰を一様および具体的に予測するために必要とされる極めて重要な要素の部分的認識しか教示していない。免疫組織化学検査のみに(Geisler et al., 2002)または遺伝子シーケンシング分析のみに(Poeta et al., 2007;Soussi et al., 2006;Olivier et al., 2006)依拠する全ての方法には、正確な予後/予測的決定のために極めて重要である正常もしくは異常p53タンパク質の存在またはレベルいずれかに関する重要な情報が欠けている。p53免疫組織学検査および遺伝子シーケンシング評価(Kyzas et al., 2005;George et al., 2007)を結合する試験は、これらの評価の予測能力に関して間違った結論につながる情報を不適正に、不完全に、または不正確のいずれかで結合している。
【0042】
例えば、George et al.(2007)は、p53免疫組織学検査およびp53シーケンシング分析の適用における機能的p53遺伝子/タンパク質の存在の重要性を教示できていない。彼らは、最善予後カテゴリー内にエクソン5 p53タンパク質突然変異の高レベルおよび低レベル発現を備える両方の患者を含んでいる。彼らは、変異エクソン5 p53タンパク質の発現レベルの重要性を無視しており、エクソン5 p53突然変異を備える患者が正常p53遺伝子構成を備える患者と同様に挙動すると主張している。変異エクソン5 p53タンパク質の高レベル発現を備える患者の不良な予後は、全てのエクソン5変異症例がp53の発現レベルとは無関係に良好な予後を有すると見なしているGeorge et al.(2007)の教示によっては予想も予測もされない。p53臨床試験では、これらの高レベルのエクソン5 p53変異タンパク質を発現する患者はいずれも治療への応答を有さず、彼らのメジアン生存期間は、他のDNA結合ドメインエクソン内のトランスドミナント・ネガティブp53突然変異を備える他の患者のメジアン生存期間と類似であった。George et al.(2007)試験におけるエクソン5突然変異を伴う症例の大多数は、低レベルの異常p53変異タンパク質を反映する場合に彼らが不正確に野生型と称するp53タンパク質の低レベル発現を有していた。彼らの試験では、これらの症例は、分類のためにより少数の高度に発現する変異エクソン5 p53タンパク質症例と結合されたが、これはこれらの症例全部を正常レベルの正常p53タンパク質を有するもっと多数の患者と結合することによって彼らが規定した好適予後群のメジアン生存期間を有意には変化させなかった。そこでGeorge et al.(2007)は、存在する場合は正常p53を不活性化する可能性があるエクソン5突然変異からの高レベルの不活性化p53トランスドミナント・ネガティブp53タンパク質の重要性を教示することに失敗したことによって、正常p53が機能的にはならない場合のプロファイルを認識することの重要性を教示していない。
【0043】
これらの結論は、先行する試験が正確な組み合わせを利用もしくは規定することの失敗により証明されたように、現行の文献の結果を結び付けることからは知ることも推測することもできなかった。本発明は、p53バイオマーカープロファイルの予測的および予後的適用のための主要因子としての本明細書に記載した正常p53の機能を許容または防止するいずれかである条件に基づいて好適および不適なp53プロファイルを同定するための、正確で適正なタンパク質発現および遺伝子シーケンシングの組み合わせを解明した。
【0044】
B.p53遺伝子構造と発現レベルの組み合わせ解析によるp53バイオマーカープロファイルの評価
1.p53遺伝子構造の決定
最善の公知の腫瘍サプレッサーの一つであるp53は、5つのドメイン:転写因子を活性化するN末端転写活性化ドメイン(TAD);p53のアポトーシス活性のために重要なプロリンリッチドメイン;一つの亜鉛原子および幾つかのアルギニンアミノ酸(エクソン5〜8によってコードされる)を含有する中心DNA結合コアドメイン(DBD);ホモ-オリゴマー化(四量体化)ドメイン(OD)-四量体化はp53のインビボ活性のために必須である;中心ドメインのDNA結合のダウンレギュレーションに関係するC末端、に分割できる約390アミノ酸のリンタンパク質である。
【0045】
p53は、細胞の核内に局在し、極めて不安定である。DNAを損傷させる作用物質は、p53が翻訳後メカニズムによって極めて安定性になることを誘導し、核内での濃度が劇的に増加することを可能にする。p53は、DNA損傷に応答して細胞周期を通しての進行を抑制し、それによりゲノムを複製する前にDNA修復が発生するのを可能にする。そこで、p53は、細胞への損傷が重度である場合はアポトーシスを開始することによって一つの細胞世代から次世代への損傷した遺伝情報の伝達を防止する。
【0046】
上記で考察したように、p53における突然変異は細胞が発癌性に形質転換することを誘発できるので、トランスフェクション試験は、p53が、インビトロでの癌性細胞へのあるレベルの正常増殖を回復させることのできる腫瘍サプレッサーとして作用することを証明している。p53は転写因子であり、いったん活性化されると、細胞周期制御に関係している他の遺伝子の発現を刺激しながら、細胞増殖を刺激することに関係している幾つかの遺伝子の転写を抑制する。
【0047】
癌においてp53を無力化する突然変異は、通常はDNA結合ドメイン内で発生する。これらのDNA結合突然変異の大多数は、野生型p53分子とともに四量体化して異種四量体がその標的DNA配列に結合する能力を阻害できる四量体化ドメインを無傷で残すので、したがって下流遺伝子の転写活性化における正常p53の機能を遮断する。このため、正常p53とともにオリゴマー化できるDNA結合ドメイン突然変異を備えるp53は、p53の機能にドミナント・ネガティブ作用を及ぼす。ドミナント・ネガティブ作用を備える突然変異は、以下に記載するように機能的アッセイを用いてさらに確証することができる。
【0048】
所定の局面では、増加したレベルのp53を有する細胞は、そこでp53の過剰発現もしくは減少した分解を引き起こすp53ミスセンス突然変異、トランスドミナント突然変異および機能的突然変異の利得(例えば、de Vries et al., 2002)を有する細胞である。本発明者らは、詳細には例えば無傷四量体化ドメインを備えるエクソン5〜8 DNA結合コアドメイン内にミスセンス突然変異もしくはトランスドミナント突然変異を備えるp53などの、野生型p53機能を阻害する変異p53タンパク質の高レベルの発現を備える患者においては、所定のp53を過剰発現する細胞は、アデノウイルスp53を用いて形質導入された場合は、機能的もしくはトランスドミナント対立遺伝子の内因性p53利得を過剰発現する作用を圧倒するために十分な野生型p53を生成する可能性は低いため、患者はP53遺伝子療法に対して不適な応答者である可能性が高くなると企図している。不適な応答についての類似の予測は、野生型p53対立遺伝子を含有していない、または2つの変異p53対立遺伝子を含有している腫瘍細胞に当てはまる。p53遺伝子療法への不適な応答を有すると予測された患者については、本発明は、例えばメトトレキセートなどのp53療法以外の療法を患者に投与する工程を含む方法を提供できる。
【0049】
一部の他の局面では、少なくとも野生型p53対立遺伝子を有する細胞および/または高レベルのブロック化もしくは阻害化変異p53を有していない細胞は、p53バイオマーカープロファイルによって予測されるようにp53遺伝子療法へおそらく好適に応答する。内因性野生型p53の誘導にアデノウイルスベクターが及ぼす作用と結合した外因性野生型p53を導入するためのp53遺伝子療法は、細胞内の野生型p53産生を増加させ、それらの症例における欠損を克服する。
【0050】
腫瘍組織内でp53遺伝子構造を検出するために、これらの組織内で存在する可能性がある正常細胞の存在を説明するために腫瘍サンプルを単離および評価することが有用である。腫瘍細胞のための組織標本を濃縮するための手段は、当技術分野において公知である。例えば、組織は、染色してパラフィン包埋またはクリオスタット切片から単離し、腫瘍細胞の優勢を決定するために顕微鏡によって評価することができる。癌細胞は、フローサイトメトリーによって正常細胞から分離することもできる。腫瘍を正常細胞から分離するためのこれらやその他の技術は、当技術分野において周知である。
【0051】
腫瘍組織が正常細胞で高度に不純にされていても、突然変異の検出は、サンプル核酸配列のPCR増幅を利用するシーケンシング技術およびチップアレイによって依然として容易に達成される。サンプル中の正常細胞の存在は、腫瘍細胞内の正常p53対立遺伝子の検出を識別するのをより困難にする可能性がある。レーザー技術に基づく顕微解剖システムの最近の開発は、この重要な問題を大きく解決してきた。レーザー顕微解剖は特定細胞集団(もしくは単細胞)をホルマリン固定、パラフィン包埋および冷凍組織両方の染色切片から、細胞培養および中期細胞内の単一染色体さえから単離するための強力なツールである。結果として生じる物質は、例えばLOH(異型接合性の消失)試験、mRNAレベルでの遺伝子発現分析などの広範囲の下流アッセイならびに例えば2Dゲル分析、逆相タンパク質アレイおよびSELDIタンパク質プロファイリングなどの様々なプロテオームアプローチのために適合する。単細胞PCRの適用は、正常組織汚染を回避するためにも企図されている。
【0052】
蛍光インサイチュー・ハイブリダイゼーション(FISH)および一塩基多型アレイは、腫瘍細胞と正常細胞の混合物を含有するサンプル中でさえ腫瘍細胞中の正常p53対立遺伝子の存在を検出できる追加の方法である(Yamamoto et al., 2007;Ross, et al., 2007, George et al., 2007;Flotho et al., 2007;Fitzgibbon et al., 2007;Melcher et al., 2007;Purdie et al., 2007;Kawamata et al., 2008;Lindbjerg et al., 2007;van Beers et al., 2006)。
【0053】
点変異の検出は、腫瘍組織中に存在するp53対立遺伝子の分子クローニングおよび当技術分野において周知の技術を用いてその対立遺伝子をシーケンシングすることによって実施することができる。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応を使用すると、腫瘍組織由来のゲノムDNA調製物からp53遺伝子配列を直接的に増幅させることができる。増幅させた配列のDNA配列はその後に決定することができる。ポリメラーゼ連鎖反応自体は、当技術分野において周知である。例えば、Saiki et al.(1988);米国特許第4,683,202号および第4,683,195号を参照されたい。
【0054】
p53遺伝子の特定の欠失または切断もまた検出することができる。例えば、p53遺伝子または周囲マーカー遺伝子のための制限フラグメント長多形(RFLP)プローブを使用すると、p53対立遺伝子の消失または部分的消失をスコア付けすることができる。欠失または切断を検出するための他の技術は、当技術分野において公知であるように使用することができる。
【0055】
あるいは、ミスマッチ検出を使用すると、p53遺伝子もしくはそのmRNA産物中の点変異を検出することができる。これらの技術はシーケンシングほど感受性ではないが、多数の腫瘍に実施するにはより単純である。ミスマッチ開裂技術の一つの例は、Winter et al.(1985);Meyers et al.(1985)に詳細に記載されているRNase保護法である。
【0056】
同様の方法で、DNAプローブを使用すると、酵素的または化学的開裂を通して、ミスマッチを検出することができる。例えば、Cotton et al.(1988);Shenk et al.(1975)を参照されたい。あるいは、ミスマッチは、マッチ二本鎖に比較したミスマッチ二本鎖の電気泳動度における変化によって検出できる。例えば、Cariello(1988)を参照されたい。リボプローブもしくはDNAプローブのいずれかを用いると、突然変異を含有している可能性がある細胞mRNAもしくはDNAはハイブリダイゼーションの前にPCRを用いて増幅させることができる。
【0057】
ポリメラーゼ連鎖反応の使用によって増幅させられている腫瘍組織由来のp53遺伝子のDNA配列は、対立遺伝子特異的プローブを用いてスクリーニングすることもできる。これらのプローブは、各々が公知の突然変異を有するp53遺伝子配列の領域を含有している核酸オリゴマーである。例えば、一つのオリゴマーは、p53遺伝子配列の一部分に対応して、長さが約30ヌクレオチドであってよい。p53遺伝子の第175コドンをコードする位置では、このオリゴマーは野生型コドンであるバリンではなくむしろアラニンをコードする。一連のそのような対立遺伝子特異的プローブの使用によって、PCR増幅産物は、p53遺伝子内で以前に同定された突然変異の存在を同定するためにスクリーニングすることができる。増幅したp53配列を備える対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーションは、例えば、ナイロンフィルター上で実施することができる。特定プローブへのハイブリダイゼーションは、腫瘍組織内に対立遺伝子特異的プローブ内と同一の突然変異が存在することを示す。
【0058】
腫瘍細胞内のp53遺伝子構造的変化の同定は、様々なシリーズの高分解能、高スループットのマイクロアレイプラットフォームの開発および応用を通して促進されてきた。本質的には、2つのタイプのアレイ;クローン化核酸由来のPCR産物(例えば、cDNA、BAC、コスミド)を有するアレイおよびオリゴヌクレオチドを使用するアレイが存在する。各々は利点および不利点を有するが、現在ではゲノム規模でのDNAコピー数異常および同一サンプル中で過剰および過小発現する遺伝子を備える腫瘍細胞内での消失、利得および増幅間の相関を可能にするための発現レベルを調査することが可能である。腫瘍内でのmRNAレベルの推定値を提供する遺伝子発現アレイは、両方の遺伝子発現レベルである、代替スプライシング事象およびmRNAプロセッシング変化を同定できるエクソン特異的アレイを生じさせてきた。オリゴヌクレオチドアレイは、さらにまた連鎖解析および関連試験のためのゲノム全体の一塩基多型(SNP)をインテロゲートするためにも使用されているが、これらはコピー数異常および異型接合性事象の消失を定量するために適応されてきた。最後に、DNAシーケンシングアレイは、染色体領域および全ゲノムの再シーケンシングを許容する。
【0059】
本発明では、SNPをベースとするアレイまたは他の遺伝子アレイもしくはチップは、野生型p53対立遺伝子の存在および突然変異の構造を決定することが企図されている。DNA内の単一部位での変化である一塩基多型(SNP)は、ゲノム内の変化の最も頻回なタイプである。例えば、ヒトゲノム内には推定5〜1,000万個のSNPが存在する。SNPは進化を通して、および集団内で高度に保存されており、SNPのマップは研究のためのすばらしい遺伝子型マーカーとして機能する。SNPアレイは、全ゲノムを試験するための有用なツールである。
【0060】
さらに、SNPアレイは、異型接合性の消失(LOH)を試験するために使用できる。LOHは、他に比較した、一つの対立遺伝子の完全消失または一つの対立遺伝子のコピー数の増加の結果として生じる可能性のある対立遺伝子不均衡の1形態である。その他のチップをベースとする方法(例えば、比較ゲノムハイブリダイゼーション)はゲノム利得または欠失しか検出できないが、SNPアレイは、片方の親ダイソミー(UPD)に起因するコピー数中立LOHを検出する追加の利点を有する。UPDでは、1人の親由来の一つの対立遺伝子もしくは全染色体が欠けていて、他の親の対立遺伝子の重複をもたらす(片方の親=1人の親に由来する、ダイソミー=重複している)。疾患状況では、この発生は野生型対立遺伝子(例えば、母親由来)が欠けていて、その代りに異型対立遺伝子(例えば、父親由来)の2つのコピーが存在する場合には病理的な可能性がある。SNPアレイのこの使用は、LOHが大多数のヒト癌に顕著な特徴であるので、癌診断学において膨大な可能性を有する。SNPアレイ技術に基づく最近の試験は、充実性腫瘍(例えば、胃癌、肝臓癌など)だけではなく血液学的悪性腫瘍(ALL、MDS、CMLなど)もまたゲノム欠失またはUPDおよびゲノム獲得に起因する高率のLOHを有することを証明している。本発明では、LOHを検出するために高密度SNPアレイを使用すると、野生型p53対立遺伝子の存在を決定するための対立遺伝子不均衡のパターンの同定を可能にする(Lips et al., 2005;Lai et al., 2007)。
【0061】
現行p53遺伝子配列および一塩基多型アレイについての例には、p53遺伝子チップ(Affymetrix社、カリフォルニア州サンタクララ)、Roche p53増幅チップ(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州プレザントン)、GeneChipマッピングアレイ(Affymetrix社、カリフォルニア州サンタクララ)、SNPアレイ6.0(Affymetrix社、カリフォルニア州サンタクララ)、BeadArrays(Illumina社、カリフォルニア州サンディエゴ)などが含まれる。
【0062】
野生型p53遺伝子の突然変異は、p53遺伝子内の野生型発現産物の突然変異に基づいて検出することもできる。そのような発現産物には、mRNAならびにp53タンパク質産物自体の両方が含まれる。点変異は、mRNAを直接的にシーケンシングすることによって、またはmRNAから作製されたcDNAの分子クローニングによって検出することができる。クローン化cDNAの配列は、当技術分野において周知であるDNAシーケンシング技術を用いて決定することができる。cDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってシーケンシングすることもできる。
【0063】
p53機能に関係するエピトープの各々がモノクローナル抗体によって提示される、一団のモノクローナル抗体を使用できる。上記パネル内のモノクローナル抗体の結合の消失または摂動は、p53タンパク質およびp53遺伝子自体の突然変異変化を示す。変異p53遺伝子または遺伝子産物は、例えば血清、大便、または例えば尿や痰などの他の体液の身体サンプル中で検出することもできる。組織中の変異p53遺伝子または遺伝子産物を検出するための上記で考察した同一技術は、他の身体サンプルに適用することができる。
【0064】
2.p53タンパク質レベルの評価
患者/疾患履歴/特性ならびに分子特性(例えば、遺伝子構造分析と結合した癌性腫瘍中でのp53の過剰発現)を含む様々な患者パラメータは、本発明において教示されるように、患者が癌療法(例えば、アデノウイルスp53遺伝子療法)から得られる応答または利益度を予測するための予後因子として使用できる。
【0065】
増加したp53タンパク質レベルの評価は、定量的免疫組織化学検査(IHC)もしくは他の抗体をベースとするアッセイ(ウエスタンブロット、FIA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、RIP、ELISA、イムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、イムノアッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイ、ゲル電気泳動法)の使用におけるように直接的であってよい、またはこれらの遺伝子について転写産物を定量すること(インサイチュー・ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンブロットもしくはRT-PCRを含むPCR)によって間接的であってよい。
【0066】
免疫組織学検査に関しては、正常細胞は、光線顕微鏡によって視認した場合に小さなパーセンテージの細胞におけるかすかな染色しか示さない非存在を提供する低レベルでp53を発現する。より大きな比率の腫瘍細胞内での視認できる核染色の検出は、増加した、過剰発現している、または高レベルのp53タンパク質の状態を示している。
【0067】
何ら特定の理論によって縛ることは意図していないが、本発明者らは、腫瘍細胞が正常体細胞中のレベルに比較して増加したレベルのp53タンパク質を示す場合は、そのような増加したレベルは、遺伝子突然変異への細胞アポトーシス応答を調節する主要経路であるp53腫瘍サプレッサー経路内の機能不全の指標であると提案する。本発明者らは、この経路内の一部の連結点に欠損が存在する場合は、そのような欠損は増加したp53レベルに自然に現れると想定している。例えば、p53タンパク質自体内に、詳細にはDNA結合ドメイン内に欠損があり(すなわち「変異」p53を生じさせる)、そしてそのような欠損が正常p53タンパク質と四量体化できるがDNAには結合できない機能不全p53タンパク質を生じさせる場合は、正常p53の機能が遮断されていることは公知である。細胞は、「正常」レベルのp53タンパク質機能を達成しようとするむなしい試みで、正常細胞内で見られるタンパク質に比較して機能不全タンパク質を過剰発現する。さらに、正常p53の機能を遮断できる高レベルの変異p53を備える腫瘍細胞は、腫瘍増殖を抑制する機能的レベルの正常p53を発現できる細胞に比較して選択的利点もまた有する。さらに、一部の場合には、変異p53タンパク質は、細胞の明白に増加したp53含量に寄与する、野生型p53よりも細胞からの分解もしくはクリアランスに従順ではない可能性がある。
【0068】
p53の増加したレベルは、p53腫瘍サプレッサー経路の異常の表れであることは公知であり、SCCHN癌における不良な予後と関連付けられている(Geisler et al., 2002);しかし、本発明は、増加したp53タンパク質レベル単独では癌療法に対する応答を予測するには不十分であることを開示している。特定の態様では、正常野生型p53の機能を遮断できる高レベルの変異タンパク質に起因する、正常p53発現非腫瘍組織に比較して増加したレベルのp53の免疫組織化学的検出は、p53遺伝子療法へのより可能性の高い不適な応答の統合された予測を提供する。実際に、そのような相関は、遺伝子療法またはp53媒介性ストレス応答を誘導することが多い他の医薬品の場合と同様に明白であることが企図される。
【0069】
本発明者らは、増加したp53タンパク質を備える腫瘍の小集団は好適な応答者である可能性が高いことも提案する。経路内のどこかで(例えば、経路内のp53タンパク質の上流または下流の遺伝子もしくは遺伝要素内で)欠損が発生する場合は、そのような欠損は経路の崩壊もまた生じさせることがあり、そこで同様におそらくは適正なp53経路活性の消失もしくは減少を補償しようとする細胞の試みに起因する、p53タンパク質増加をもたらす可能性がある。実際に、実質的に全部の正常体細胞はほぼ検出不能なレベル(例えば、RT-PCRなどの極めて感受性の技術によってのみ検出可能である)ではp53タンパク質を発現するが、規定可能な小集団の腫瘍は、野生型p53対立遺伝子もしくは正常p53遺伝子構造が存在する場合でさえ増加したp53タンパク質を有することが見出されている。この場合には、p53機能は、分子MDM2およびMDM4のようなp53阻害剤の増加した発現によって抑制されることが多い。増加した正常p53タンパク質を備えるそのような腫瘍細胞では、p53ストレス応答を刺激する治療は正常p53対p53阻害剤レベルの比率を好適に変化させ、正常p53活性の回復および療法への好適な応答を生じさせることができる。本発明に記載したように正常p53を伴わない、または変異p53がトランスドミナント作用を遮断している腫瘍では、正常p53機能は影響を受けず、これらの腫瘍は、p53依存性経路の活性化(p53依存性アポトーシス、老化もしくは細胞周期停止)を通して作用を発揮するp53遺伝子療法へ好適に応答する可能性は低い。
【0070】
好適な応答者のまた別のケースは、切断四量体化ドメインを備える増加したp53タンパク質を備える腫瘍細胞によって例示される。それらの変異タンパク質は、野生型p53タンパク質と四量体化してそれらのDNA結合を妨害することができないので、これらの突然変異は野生型p53タンパク質の機能を阻害しない。これらの腫瘍は、第2正常p53対立遺伝子が存在する場合、または外部から投与された正常p53が腫瘍に送達される場合には、p53治療へ好適な応答を有する。
【0071】
p53などの腫瘍サプレッサーのそのような「増加したレベル」を検出する最も一般的で便宜的な方法は、癌細胞において一般に見られるタンパク質レベルを反映もしくは検出するために十分感受性であるが、それでも正常体細胞に一般的なそれらのレベルを検出するほど高感受性ではない技術を選択することである。免疫組織化学的(「IHC」)技術には、p53の「増加したレベル」を検出するために使用できるので、本発明に特に適合する一連の例示的な検出技術が含まれる(例えば、Ladner et al., 2000参照)。便宜的にも、IHC技術は一般に、例えば正常体細胞中で生成される小量のp53タンパク質を検出できるほど高感受性ではないので、その理由から、現在はp53タンパク質の増加したレベルを検出するために典型的に使用されている。本発明と結び付けて実施するための特定の利点は、p53タンパク質のIHC検出が野生型と変異もしくは異常p53タンパク質とを(特に本発明の場合には、突然変異であろうと正常であろうとほとんどのp53タンパク質を検出するための基礎的抗体を選択できるので)一般には識別しないことにある。これらの場合には、p53遺伝子配列とコピー数の同時検出が結合されて、患者がp53遺伝子療法への応答のために好適または不適なp53プロファイルを有するかどうかが決定される。
【0072】
さらにその上、本発明は、当然ながら、本発明がp53の正常および異常な発現を示す細胞間を識別する任意の技術の使用を企図しているので、増加したレベルのp53タンパク質を備える腫瘍、またはp53経路における他の測定可能な欠損を有する患者を同定して選択するためのIHC技術の使用には決して限定されない。例には、正常および異常レベルのp53 mRNA発現および/またはp53タンパク質翻訳レベルの間を識別するために適正に較正されている検出技術が含まれる。そのような方法には、p53タンパク質の免疫学的検出に加えて、mRNAレベルにおける相違を検出するために使用される、そこでp53 mRNAレベルを識別するために使用できる遺伝子アレイおよびチップなどの核酸ハイブリダイゼーション技術が含まれる。典型的には正常および増加したレベルのp53タンパク質を有することが公知である例示的な正常および腫瘍細胞(細胞系の形状にある)には、例えばWI-38、CCD 16およびMRC-9などの細胞、ならびに例えばATCCおよびその他などの一般的供給者から入手可能な例えばSCC61、SCC 173およびSCC 179などの細胞系が含まれる。
【0073】
本発明は、上記で述べたように、p53療法、および詳細にはアデノウイルスp53療法は、増加した野生型p53レベルおよび遮断活性を備えるp53突然変異の高レベル発現の非存在を備える癌患者のサブグループにおいて好適に機能できることを開示している。これとは対照的に、野生型p53タンパク質を遮断する増加したp53タンパク質を備える腫瘍細胞は、p53遺伝子療法へ不良に応答する。タンパク質レベル、遺伝子配列および遺伝子コピー数についての考察を結び付けるこの分類は、増加したタンパク質レベルもしくは突然変異分析単独に依存する不完全な予後診断単独よりも増加したタンパク質の存在下にある治療応答者についての正確な予測を提供する。
【0074】
3.変異p53機能の特性解析
野生型p53遺伝子の機能を阻害できる突然変異は、野生型p53タンパク質機能の消失についてスクリーニングすることによって検出できる。p53タンパク質が明白に有する機能の全部は未だ解明されていないが、少なくともDNA結合機能は公知である。例えば、タンパク質p53はSV40大T抗原ならびにアデノウイルスE1B抗原もしくは他の公知の標的DNA配列に結合する。当業者であれば、従来法を使用して、野生型p53タンパク質の存在下でさえ、p53タンパク質がこれらの抗原または他の標的DNAの一方もしくは両方へ結合する能力の消失を検出することができるが、これはおそらくは野生型p53との四量体化を通して野生型p53の機能を遮断して標的DNAとの結合を妨害することができた遺伝子自体の突然変異変化を反映するタンパク質内での突然変異変化を示している。
【0075】
過去10年間において、実験的機能的アッセイは、当業者には公知である酵母およびヒト細胞において、変異タンパク質がp53応答エレメントの制御下に置かれたレポーター遺伝子に及ぼす転写活性化活性;野生型タンパク質へのドミナント・ネガティブ作用;細胞周期停止もしくはアポトーシスの誘導;温度感受性;野生型タンパク質からは独立していて非関連性である変異タンパク質の活性、を含むp53変異タンパク質の様々な特性を測定するために実施されてきた。最近、これらの機能的アッセイからの結果は、ワールドワイドウェブのp53.iarc.fr/のアドレスを通して国際癌研究機関(IARC)TP53データベースの中に統合されてきた。このデータベースは、p53突然変異パターンを試験するための構造的データおよび分析ツールを提供する(Peitjean et al., 2007;Resnick and Inga, 2003)。これらの方法を使用すると、正常p53機能を阻害するドミナント・ネガティブ遮断作用を発揮する能力を有しているそれらのp53突然変異を同定することができる。そのようなトランスドミナント・ネガティブp53突然変異が高レベルで発現する場合、または細胞が正常p53を発現する能力がない、例えば正常p53対立遺伝子が存在しない場合は、そのような症例はp53遺伝子療法へ不適な転帰を有する。
【0076】
II.癌療法
本発明の所定の態様によると、本出願人らは、治療的癌治療への好適な応答を予測するため、および上述したようなp53バイオマーカープロファイルに基づいて療法を投与するための方法もまた提供する。より詳細には、本発明は、例えばp53遺伝子療法などの抗腫瘍療法を投与することによって過剰増殖性疾患を治療する方法に関する。
【0077】
A.過剰増殖性疾患
過剰増殖性疾患は、細胞の異常な増殖または増加に関連する疾患である。過剰増殖性疾患は、例えば腫瘍などの被検体における病変として現れる疾患であってよい。腫瘍は、良性の腫瘍増殖または癌であってよい。
【0078】
本発明においてそれに対して治療が企図される例示的な腫瘍には、以下の:扁平上皮癌、基底細胞癌、腺腫、腺癌、形成性胃線維炎、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、ビポーマ、胆管癌、肝細胞癌、腺様嚢胞癌、カルチノイド腫瘍、プロラクチノーマ、膨大細胞腫、ヒュルトレ細胞腺腫、腎細胞癌、類子宮内膜腺腫、嚢胞腺腫、腹膜偽粘液腫、Warthin(ウォーシン)腫瘍、胸腺腫、莢膜細胞腫、顆粒膜細胞腫、卵巣男性化細胞腫、セルトリ・ライディッヒ(Sertoli-Leydig)細胞腫、パラガングリオーマ、クロム親和性細胞腫、グロムス腫瘍、黒色腫、軟組織肉腫、線維形成性小円形細胞腫、線維腫、線維肉腫、粘液腫、脂肪腫、脂肪肉腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、筋腫、筋肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、多形腺腫、腎芽細胞腫、ブレンナ-腫瘍、滑膜肉腫、中皮腫、未分化胚細胞腫、胚細胞腫瘍、胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、奇形腫、皮様嚢腫、絨毛癌、中腎腫、血管腫、脈管腫、血管内皮腫、血管肉腫、悪性血管内皮腫、悪性血管内皮腫、カポジ(Kaposi)肉腫、血管周囲細胞腫、リンパ管腫、嚢胞性リンパ管腫、骨腫、骨肉腫、骨軟骨腫、軟骨性外骨腫、軟骨腫、軟骨肉腫、巨細胞腫、ユーイング(Ewing)肉腫、歯原性細胞腫、セメント芽細胞腫、エナメル上皮腫、頭蓋咽頭腫神経膠腫混合型乏突起星細胞腫、上衣腫、星状細胞腫、膠芽細胞腫、乏突起細胞腫、神経上皮腫性腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、髄膜腫、神経線維腫、神経線維腫症、神経鞘腫、ノイリノーマ、神経腫、顆粒細胞腫、蜂窩性軟部肉腫、リンパ腫、非ホジキン(non-Hodgkin)リンパ腫、リンパ肉腫、ホジキン病、小リンパ球性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞リンパ腫、び漫性大B細胞リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、バーキット(Burkitt)リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯B細胞リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、菌状息肉腫、セザリー(Sezary)症候群、末梢T細胞リンパ腫、血管性免疫芽球性T細胞リンパ腫、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、皮膚原発未分化大細胞リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、形質細胞腫、多発性骨髄腫、肥満細胞腫、肥満細胞肉腫、肥満細胞症、肥満細胞性白血病、ランゲルハンス細胞組織球症、組織球肉腫、ランゲルハンス細胞肉腫、樹状細胞肉腫、濾胞樹状細胞肉腫、ワルデンシュトレーム(Waldenstrom)マクログロブリン血症、リンパ腫様肉芽腫症、急性白血病、リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、形質細胞白血病、T細胞大顆粒球リンパ球性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、T細胞前リンパ球性白血病、前駆Bリンパ芽球性白血病、前駆Tリンパ芽球性白血病、急性赤白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、骨髄様性白血病、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄性単球性白血病、好塩基球性白血病、好酸球性白血病、急性好塩基球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、単球性白血病、急性単芽球性および単球性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群、緑色腫もしくは骨髄肉腫、骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症、毛様細胞性白血病、若年性骨髄単球性白血病、進行性NK細胞白血病、真性赤血球増加症、骨髄増殖性疾患、慢性特発性骨髄線維症、本態性血小板血症、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病/好酸球増加症候群、移植後リンパ増殖性疾患、慢性骨髄増殖性疾患、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄単球性白血病および骨髄異形成症候群が含まれる。
【0079】
過剰増殖性疾患もしくは癌は、その初期診断後に、または引き続いて、治療的核酸もしくはその他の療法または2つ以上の療法の組み合わせによって治療することができる。過剰増殖性疾患もしくは癌の再発は、手術、放射線療法または化学療法の一つまたは複数を含む任意の治療後に任意の過剰増殖性疾患もしくは癌を有するという患者の再出現もしくは再診断であると規定できる。再発性疾患を備える患者は疾患を有していないと報告されていた必要はなく、単に一次療法によるある程度の臨床応答に続く再発した過剰増殖性疾患もしくは癌増殖を示したものである。臨床応答は、安定状態、腫瘍緩解、腫瘍壊死、証明可能な癌の非存在、腫瘍サイズもしくは腫瘍組織量の減少、腫瘍増殖の遮断、腫瘍関連痛の減少、腫瘍関連病理の減少、腫瘍関連症状の減少、腫瘍の非進行、無病期間の増加、無増悪期間の増加、寛解の誘導、転移の減少、または患者生存期間の増加であってよいが、それらに限定されない。
【0080】
B.扁平上皮癌
詳細には、腫瘍は、扁平上皮癌(SCCHN)、より詳細には再発性SCCHNであってよい。再発性SCCHNは、最も恐ろしい癌の一つである。これらの腫瘍は極めて高い死亡率を有しており、重篤な苦痛を引き起こす。再発性SCCHN腫瘍および標準療法は、結果として患者の外観を損なわせ、摂食、嚥下および呼吸のような基本的な機能を妨害する重大な病的状態を生じさせる。患者は、栄養摂取および呼吸をサポートするための栄養チューブおよび気管切開術のような侵襲性手段を必要することが多い。残念なことに、この疾患のための現行療法は非常に不適切であり、腫瘍の病的状態を増悪させることが多い相当に大きな毒性を生じさせる。患者の大多数は、標準療法には応答せず、メジアン生存期間は4〜6カ月間に過ぎない。治療に利用される化学療法薬の全部(メトトレキセート、シスプラチン、5FU、およびタキサン類)は、腫瘍の病的状態を増悪させる可能性がある口腔粘膜炎を生じさせることがある。モノクローナル抗体であるErbitux(登録商標)は口内炎を誘発しないが、皮膚発疹を引き起こし、放射線壊死の副作用を増加させる可能性がある。
【0081】
従来治療の不良な安全性プロファイルに加えて、応答は、典型的には持続期間が短く、追加の療法に対する必要はほぼ一般的である。そこで、再発性SCCHNは明らかに、おそらく腫瘍の病的状態を悪化させる毒性を生成しない作用物質を用いた追加の療法を必要とする、悲惨な満たされていない必要を伴う医学的状態を表している。
【0082】
C.p53遺伝子療法
一つの態様では、p53遺伝子療法が企図されている。ヒトp53遺伝子療法は、1990年代半ば以降から文献に記載されてきた。Roth et al.(1996)はレトロウイルスをベースとする療法について報告しており、Clayman et al.(1998)はアデノウイルス送達について記載した。米国特許第5,747,469号;第6,017,524号;第6,143,290号;第6,410,010号;および第6,511,847号、米国特許出願第2002/0077313号および第2002/0006914号は、各々が患者をp53で治療する方法について記載しており、参照により本明細書に組み入れられる。
【0083】
患者への発現構築物の局所、限局性(局所領域)または全身性送達が企図されている。このアプローチは以下の:原発腫瘍サイズを減少させる、転移の発生もしくはサイズを減少させる、腫瘍増殖を減少もしくは停止させる、寛解を誘導する、再発前の期間を増加させる、腫瘍関連疼痛を減少させる、腫瘍細胞分割を阻害する、腫瘍細胞を殺滅する、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する、腫瘍再発を減少もしくは排除する、および/または患者の生存期間を増加させることのいずれかであると広汎に規定された臨床的有益性を提供すると提案されている。
【0084】
詳細には、p53遺伝子療法はAdvexin(登録商標)である。Advexin(登録商標)は単剤として有効であり、その抗腫瘍活性はAdvexin(登録商標)が送達したp53タンパク質の発現と相関しており、結果としてp53応答遺伝子の発現における変化を生じさせる。これらの遺伝子およびそれらの遺伝子産物は、広範囲の細胞プロセスに影響を及ぼして抗腫瘍作用をもたらす。これらのプロセスの性質について理解することは、Advexin(登録商標)治療後に観察される臨床応答のタイプを解釈するために極めて重要である。
【0085】
Advexin(登録商標)は、主要作用機序として細胞老化を誘導する最初の抗癌薬の一つである。細胞老化の誘導は「永続的細胞周期停止」を生じさせ、不活性化p53を備える腫瘍におけるp53活性の一過性回復後に観察される。臨床的には、永続的細胞周期停止の誘導は、腫瘍サイズの減少よりむしろ腫瘍増殖の安定化と関連付けられる。動物腫瘍モデルおよびヒト臨床試験は、Advexin(登録商標)療法後の細胞周期停止/老化の活性化を明白に確証してきた。p53もさらにまた、同様に腫瘍サイズにおける減少ではなくむしろ腫瘍増殖の安定化と関連付けられる抗血管新生メカニズムを活性化する。または、アポトーシスもしくは「プログラムされた細胞死」は、p53回復によって活性化されるまた別の重要な経路である。臨床的腫瘍応答に関して、アポトーシスの誘導は、Advexin(登録商標)療法後の腫瘍サイズの減少を生じさせると予想される。これらの重要なp53腫瘍抑制メカニズムおよびそれらの分子メディエータは、
図1に図示した。
【0086】
典型的には、これら3つの治療経路(細胞周期停止-アポトーシス-抗血管新生)は、p53活性の回復後に腫瘍内で誘導される。個別腫瘍細胞は、細胞周期停止/老化もしくはアポトーシス経路のいずれかを活性化することができ、どの経路が特定細胞に対して始動させられるのかを決定する因子は、現時点では明確ではない。これらのメカニズムのうちのいずれが主として腫瘍細胞内に誘導されるのかに依存して、Advexin(登録商標)療法後に観察される臨床応答の性質が決定される。
図2に図示したように、抗腫瘍応答の範囲は、細胞老化またはアポトーシス経路のいずれかを活性化する細胞の相対比率に依存して、老化/安定状態(
図3)およびアポトーシス/腫瘍減少(
図4)を含む腫瘍増殖の安定化から完全腫瘍根絶までの範囲に及ぶと予想される。
【0087】
治療メカニズムに関するこれらの考察に一致して、完全(CR)およびサイズの≧50%の部分(PR)減少に基づく従来型の腫瘍応答基準は、増加した生存期間と関連付けられる臨床的に重要な応答を最適には同定しないことを示すデータが増加しつつある(Lara et al., 2008)。Lara et al.(2008)は最近、CR、PRまたは安定状態によって規定される腫瘍増殖制御(TGC)は生存期間を予測することに従来型のCR+PR定義より有意に優れていることを示している、肺癌患者984例を対象としたSouthwest Oncology Groupの3件の無作為化割付け対照臨床試験の結果を報告した。同様に、Choiおよび同僚ら(2007)は、コンピュータ断層撮影法(CT)による腫瘍サイズの≧10%減少がポジトロン放出断層撮影法(PET)による腫瘍応答と高度に相関しており、イマチニブで治療された消化器間質腫瘍における標準応答基準より高感受性の延命効果の予測因子であることを証明した(Choi, 2007;Benjamin, 2007)。
【0088】
そこで、重要な作用機序として細胞周期停止/老化を誘導することが公知であるAdvexin(登録商標)のような物質については、腫瘍増殖制御(TGC=CR+PR+SD)または腫瘍サイズの≧10%の減少に基づく腫瘍応答の定義は、治療後の増加した生存期間を予測する腫瘍応答を規定するためにより適切である。
【0089】
III.治療用遺伝子
本発明の所定の態様では、患者のp53バイオマーカープロファイルに基づいてp53遺伝子療法、p53遺伝子療法以外の療法または二次抗腫瘍療法を患者に投与する方法が提供される。本方法は、所定の局面では治療用核酸、およびp53遺伝子療法における特定p53遺伝子を使用することができる。
【0090】
A.治療用核酸
「治療用核酸」は、本明細書では疾患を治療または予防するために、被検体に投与できる核酸を意味すると規定されている。本明細書の核酸は、過剰増殖性疾患の治療において有益であることが公知である、または有益であると思われる核酸である。治療有益性は、例えば、核酸による特定遺伝子の発現の変化の結果として生じる可能性がある。特定遺伝子の発現の変化は、特定遺伝子の発現の阻害または強化であってよい。本発明の所定の態様は、治療用核酸の投与に関係する。
【0091】
本明細書で使用する「核酸」は、DNA、RNA、またはヌクレオチド塩基を含むそれらの誘導体もしくはアナログの1分子(すなわち、ストランド)を一般には意味する。ヌクレオチド塩基には、例えば、DNA(例えば、アデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」またはシトシン「C」)内またはRNA(例えば、A、G、ウラシル「U」またはC)内で見出される天然のプリンもしくはピリミジン塩基が含まれる。用語「核酸」は、各々が用語「核酸」の亜属である用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」を含んでいる。用語「オリゴヌクレオチド」は、長さが約8〜約100ヌクレオチド塩基の分子を意味する。用語「ポリヌクレオチド」は、長さが約100ヌクレオチド塩基より長い少なくとも一つの分子を意味する。
【0092】
所定の態様では、「遺伝子」は、転写される核酸を意味する。所定の局面では、遺伝子は、転写またはメッセージ産生に関係する調節配列を含んでいる。特定の態様では、遺伝子は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする転写された配列を含んでいる。当業者には理解されるように、この機能的用語「遺伝子」には、ゲノム配列、RNAもしくはcDNA配列または遺伝子の非転写プロモーターもしくはエンハンサー領域を含むがそれらに限定されない遺伝子の非転写部の核酸セグメントを含む小さな遺伝子組換え核酸セグメントが含まれる。小さな遺伝子組換え核酸セグメントは、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドドメイン、ペプチド、融合タンパク質、変異ポリペプチドなどを発現できる、または発現するように適応させることができる。
【0093】
「他のコーディング配列から実質的に単離された」は、当該の遺伝子が核酸セグメントのコーディング領域の一部を形成すること、およびセグメントが例えば大きな染色体フラグメントもしくは他の機能的遺伝子もしくはcDNAコーディング領域などの天然のコーディング核酸の大きな部分を含有しないことを意味する。当然ながら、これは、核酸が最初から単離されていることを意味しており、ヒトの手によって核酸へ後に加えられた遺伝子またはコーディング領域を排除しない。
【0094】
特定の態様では、治療用核酸は、核酸「発現構築物」の形態にある。本出願を通して、用語「発現構築物」は、核酸の全部または一部が転写され得るあらゆるタイプの核酸を含むことが意味されている。転写された部分は、例えばタンパク質などの治療用遺伝子産物に翻訳することのできる治療用遺伝子をコードすることができるが、そうする必要はない。他の態様では、転写された部分は、特定遺伝子の発現を阻害または増強するために単純に作用できる。
【0095】
本発明の所定の態様では、治療用核酸は「治療用遺伝子」をコードする。当業者には理解されるように、用語「治療用遺伝子」には、それらの全部が過剰増殖性疾患に苦しむ患者へ臨床的有益性を提供できる、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質、および変異体を発現する、または発現するように適応させることができるゲノム配列、cDNA配列、および小さな遺伝子組換え遺伝子セグメントが含まれる。治療用遺伝子をコードする治療用核酸は、約5〜約20,000個以上のヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基対の連続核酸配列を含むことができる。
【0096】
切除不能な腫瘍を備える患者は、本発明によって治療することができる。結果として、腫瘍のサイズが減少する可能性がある、または腫瘍血管構造は腫瘍が切除可能になるように変化する可能性がある。そうであれば、標準外科的切除が可能になる。手術と結び付けて使用できるまた別の特定投与様式は、手術による腫瘍床の治療である。そこで、一次遺伝子療法治療、またはその後の治療のいずれかで、手術中に、および術後に任意で手術部位にカテーテルを挿入することによって、切除された腫瘍床にベクターを潅流させることができる。
【0097】
B.核酸の精製および発現
核酸は、ポリアクリルアミドゲル上で、塩化セシウム密度勾配遠心法、カラムクロマトグラフィまたは当業者には公知の任意の他の手段によって精製することができる(例えば、参照により本明細書に組み入れられるSambrook et al., 2001を参照)。所定の局面では、本発明は、単離核酸である核酸に関する。本明細書で使用する用語「単離核酸」は、大部分の細胞成分もしくはインビトロ反応成分、および/または1個以上の細胞の全ゲノム核酸および転写核酸の大部分がない状態に単離されている、さもなければそれらがない状態である核酸分子(例えば、RNAもしくはDNA分子)を意味する。核酸を単離するための方法(例えば、平衡密度遠心法、電気泳動分離法、カラムクロマトグラフィ)は、当業者には周知である。
【0098】
本発明によると、標的細胞中で治療用タンパク質を生成することが望ましい。発現は、適切なシグナルがベクター内もしくは、宿主細胞内の当該遺伝子の発現を駆動するウイルスおよび/または哺乳動物起源由来のエンハンサー/プロモーターなどの様々な調節エレメントを含む発現カセット内で提供されることを典型的には必要とする。宿主細胞内でのメッセンジャーRNAの安定性および翻訳可能性を最適化するためのエレメントもまた含まれてよい。永続的で安定性の細胞クローンを確立するためには、薬物選択マーカーを組み入れることができる。
【0099】
ウイルスベクターは、選択された真核細胞発現系である。これに含まれるのは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルスを含むポックスウイルス、およびSV40を含むパピローマウイルスである。ウイルスベクターは、複製欠損性、条件欠損性、または複製可能であってよい。同様に企図されるのは、脂質をベースとするビヒクルを含む非ウイルス送達系である。
【0100】
C.ベクターおよび発現構築物
用語「ベクター」は、そこで複製および/または発現できる細胞内に導入するためにその中に核酸配列を挿入できる担体核酸分子を意味する。核酸配列は、その中にベクターが導入される細胞にとって異種である、またはその配列が細胞内の配列とは同種であるが宿主細胞核酸内のその配列がもともとは見出されない位置にあることを意味する「外因性」または「異種」であってよい。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。当業者であれば、標準組み換え技術を通してベクターを構築する備えができている(例えば、どちらも参照により本明細書に組み入れられるSambrook et al., 2001およびAusubel et al., 1996を参照)。
【0101】
用語「発現ベクター」は、転写されることが可能なRNAをコードする核酸を含む任意のタイプの遺伝子構築物を意味する。一部の場合には、RNA分子は次にタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。発現ベクターは、特定宿主細胞内の機能的に連結されたコーディング配列の転写および場合により翻訳のために必要な核酸配列を意味する、様々な「制御配列」を含むことができる。転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、他の機能、ならびに以下に記載する機能に役立つ核酸配列を含有することができる。
【0102】
p53またはp53以外の治療用遺伝子を発現させるためには、発現ベクターを用意することが不可欠である。適切な核酸は、標準サブクローニング技術によって発現ベクター内に挿入することができる。これらのベクターの操作は、当技術分野において周知である。融合タンパク質発現系の例は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ系(Pharmacia社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、マルトース結合タンパク質系(NEB社、マサチューセッツ州ベバリー)、FLAG系(IBI社、コネチカット州ニューヘブン)、および6xHis系(Qiagen社、カリフォルニア州キャッツワース)である。
【0103】
さらにまた別の態様では、使用される発現系は、バキュロウイルス・ポリへドロンプロモーターによって駆動される発現系である。タンパク質をコードする遺伝子は、バキュロウイルスベクター内へのクローニングを促進するために標準技術によって操作することができる。特定のバキュロウイルスベクターは、pBlueBacベクター(Invitrogen社、カリフォルニア州ソレント)である。当該の遺伝子を運ぶベクターは、標準プロトコルによってヨウトガ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)細胞内にトランスフェクトされ、この細胞は組換えタンパク質を生成するために培養および処理される。バキュロウイルスに曝露させられた哺乳動物細胞は感染させられ、異種遺伝子だけを発現することができる。このようにして、用量依存性方法で全細胞を形質転換させ、この遺伝子を発現させることができる。
【0104】
その中で組換えポリペプチドを生成できる適切なビヒクルを提供する様々な真核細胞ベクターもまた存在する。HSVは、組織培養中で極めて多数の外来遺伝子を発現させるため、ならびにその内在性遺伝子の高レベル発現のために使用されてきた。例えば、ニワトリオブアルブミン遺伝子は、αプロモーターを用いてHSVから発現させられてきた(Herz and Roizman(1983))。lacZ遺伝子はさらにまた、様々なHSVプロモーター下で発現させられてきた。
【0105】
本出願を通して、用語「発現構築物」は、核酸コーディング配列の一部または全部が転写され得る遺伝子産物をコードする核酸を含有するあらゆるタイプの遺伝子構築物を含むことを意味している。転写産物は、タンパク質に翻訳することができるが、そうする必要はない。そこで所定の態様では、発現は遺伝子の転写および遺伝子産物へのRNAの翻訳の両方を含んでいる。他の態様では、発現は、核酸の転写だけを含んでいる。
【0106】
特定の態様では、核酸は、プロモーターの転写制御下にある。「プロモーター」が遺伝子の特異的転写を開始するために必要とされる、細胞の合成機構によって認識される、または合成機構に導入されるDNA配列を意味する。語句「転写制御下」は、プロモーターは、遺伝子のRNAポリメラーゼの開始および発現を制御するために核酸に関連する正確な場所および方向付けにあることを意味する。
【0107】
用語プロモーターは、本明細書では、RNAポリメラーゼIIのための開始部位の周囲で集団になっている一群の転写制御モジュールを意味する。プロモーターが組織化される方法についての考察の多くは、HSVチミジンキナーゼ(tk)およびSV40初期転写単位のためのウイルスプロモーターを含む数種のウイルスプロモーターの分析から引き出される。より最近の研究によって増強されるこれらの試験は、各々が約7〜20bpのDNAからなり、転写活性化因子もしくはレプレッサータンパク質のための一つまたは複数の認識部位を含有する離散的機能モジュールからプロモーターが構成されることを示す。
【0108】
各プロモーター内の少なくとも一つのモジュールは、RNA合成のための開始位置をポジショニングするために機能する。これの最も公知の例はTATAボックスであるが、例えば哺乳動物末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のためのプロモーターおよびSV40後期遺伝子のためのプロモーターなどのTATAボックスが欠如している一部のプロモーターでは、開始部位の上にある離散エレメント自体が開始の場所を固定するために役立つ。
【0109】
追加のプロモーターエレメントは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは開始部位の30〜110bp上流の領域に局在するが、多数のプロモーターは、最近、同様に開始部位の下流に機能的エレメントを含有することが証明されている。プロモーターエレメント間の間隔は柔軟性であることが多いので、プロモーター機能はエレメントが相互に対して反転または移動させられている場合でも保存されている。tkプロモーターでは、プロモーターエレメント間の間隔は活性が低下し始める前に50bp離れるように増加させることができる。プロモーターに依存して、個別エレメントは、転写を活性化するために協働して、または独立してのいずれかで機能できると思われる。
【0110】
核酸の発現を制御するために使用される特定プロモーターは、標的細胞内で上記核酸を発現することができる限り、重要であるとは考えられない。そこで、ヒト細胞が標的とされる場合は、特別にはヒト細胞内で発現させることのできるプロモーターに隣接させて、およびプロモーターの制御下に核酸コーディング領域をポジショニングするためである。一般に言うと、そのようなプロモーターは、ヒトまたはウイルスプロモーターのいずれかを含むことができる。
【0111】
様々な他の態様では、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーターおよびルース(Rous)肉腫のウイルス長い末端反復を使用すると、導入遺伝子の高レベル発現を得ることができる。導入遺伝子の発現を達成するために当技術分野において周知である他のウイルスもしくは哺乳動物細胞もしくは細菌ファージプロモーターの使用は、発現レベルが所定の目的に十分であることを前提に、同様に企図されている。
【0112】
エンハンサーは、DNAの同一分子上の遠く離れた位置に局在するプロモーターからの転写を増加させた遺伝子エレメントとして最初に検出された。大きな距離にわたって作用するこの能力は、原核細胞転写調節の伝統的試験においてはほとんど前例がなかった。その後の研究は、エンハンサー活性を備えるDNAの領域が多数の同様のプロモーターから組織されることを証明した。つまり、それらは、各々が一つまたは複数の転写タンパク質に結合する多数の個別エレメントから構成される。
【0113】
エンハンサーとプロモーターとの間の基本的識別は操作可能である。全体としてのエンハンサー領域は、ある間隔をあけて転写を刺激することができなければならない。これはプロモーター領域またはその構成エレメントについて当てはまる必要はない。他方では、プロモーターは特定部位、および特定方向付けでRNA合成の開始を支持する一つまたは複数のエレメントを有していなければならないが、他方エンハンサーはこれらの特異性に欠けている。プロモーターおよびエンハンサーは、重複および連続していることが多く、極めて類似のモジュール構造化を有するように見えることが多い。
【0114】
さらに、任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(Eukaryotic Promoter Data Base:EPDBによる)は、さらにまた導入遺伝子の発現を駆動するためにも使用できる。T3、T7またはSP6細胞質発現系は、また別の可能性のある態様である。真核細胞は、適切な細菌ポリメラーゼが、送達複合体の一部または追加の遺伝子発現構築物のいずれかとして提供される場合は、所定の細菌プロモーターからの細胞質転写を支持することができる。
【0115】
当業者は、転写産物の適正なポリアデニル化を実施するために典型的にはポリアデニル化シグナルを含める。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実施に成功するために重要であるとは考えられず、任意のそのような配列が使用されてよい。特定の態様には、便宜的で様々な標的細胞内で良好に機能することが公知であるSV40ポリアデニル化シグナルおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含んでいる。発現カセットの1エレメントとして同様に企図されるのは、ターミネーターである。これらのエレメントは、メッセージレベルを増強し、カセットから他の配列内への読過し(read through)を最小限に抑えるために機能できる。
【0116】
特異的な開始シグナルは、コーディング配列の十分な翻訳のためにもまた必要とされることがある。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルは、提供される必要がある。当業者であれば、これを容易に決定して、必要なシグナルを提供することができる。開始コドンが、全インサートの翻訳を保証するために所望のコーディング配列のリーディングフレームと「インフレーム」でなければならないことは周知である。外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然または合成のいずれかであってよい。発現の有効性は、適切な転写エンハンサーエレメントの包含によって増強することができる(Bittner et al., 1987)。
【0117】
本発明の様々な態様では、発現構築物は、ウイルスゲノムに由来するウイルスまたは遺伝子組換え構築物を含むことができる。所定のウイルスがレポーター媒介性エンドサイトーシスを介して細胞内に浸入し、宿主細胞ゲノム内に統合されてウイルス遺伝子を安定性および効率的に発現する能力は、それらを哺乳動物細胞内へ外来遺伝子を導入するための魅力的候補にしてきた(Ridgeway, 1988;Nicolas and Rubenstein, 1988;Baichwal and Sugden, 1986;Temin, 1986)。ベクターとして使用される第1ウイルスは、パポバウイルス(シミアンウイルス40、ウシパピローマウイルス、およびポリオーマ)(Ridgeway, 1988;Baichwal and Sugden, 1986)およびアデノウイルス(Ridgeway, 1988;Baichwal and Sugden, 1986)およびアデノ関連ウイルスを含むDNAウイルスであった。レトロウイルスもまた、ワクシニアウイルス(Ridgeway, 1988)およびアデノ関連ウイルス(Ridgeway, 1988)と同様に、魅力的な遺伝子導入ビヒクル(Nicolas and Rubenstein, 1988;Temin, 1986)である。そのようなベクターは、(i)当該のタンパク質を発現させるためにインビトロで細胞系を形質転換させるため、または(ii)遺伝子療法シナリオにおいて治療用ポリペプチドを提供するためにインビトロもしくはインビボで細胞を形質転換させるために使用できる。
【0118】
a.ウイルスベクター
ウイルスベクターは、核酸および場合によりタンパク質を細胞内に導入するためにウイルス配列を利用する1種の発現構築物である。所定のウイルスがレポーター媒介性エンドサイトーシスを介して細胞を感染させる、もしくは細胞内に浸入する、およびウイルス遺伝子を安定性および効率的に発現する能力は、それらを細胞(例えば、哺乳動物細胞)内へ外来核酸を導入するための魅力的な候補にしてきた。本発明のベクター成分は、一つまたは複数の候補物質または例えば免疫調節剤もしくは候補物質のためのアジュバントなどの他の成分をコードするウイルスベクターであってよい。以下では、本発明の核酸を引き出すために使用できるウイルスベクターの非限定的な例について記載する。
【0119】
アデノウイルスは、非エンベロープ二本鎖DNAウイルスである。ビリオンは、タンパク質カプシド内のDNA-タンパク質コアからなる。ビリオンが特定の細胞レポーターに結合して取り込まれる(エンドサイトーシスされる)と、ゲノムがエンドソームから押し出され、核へ輸送される。ゲノムは、約36遺伝子をコードする、36kbである。核内では「前初期」E1Aタンパク質が最初に発現され、これらのタンパク質はE1B、E2、E3、およびE4転写単位によってコードされる「遅延初期」タンパク質の発現を誘導する。ビリオンは感染後(p.i.)約1日に核内で集合し、2〜3日後に細胞は溶解し、子孫ウイルスを放出する。細胞溶解は、「アデノウイルス死タンパク質"adenovirus death protein"」(ADP)と改名されているE3 11.6Kタンパク質によって媒介される。
【0120】
アデノウイルスは、その中サイズのゲノム、操作の容易さ、高力価、広い標的細胞範囲および高感染性のために遺伝子導入ベクターとして使用するために特に適合する。ウイルスゲノムの両端はウイルスDNA複製およびパッケージングのために必要なシスエレメントである、100〜200塩基対の逆方向反復(ITR)を含有している。ゲノムの初期(E)および後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の開始によって分割される相違する転写単位を含有している。E1領域(E1AおよびE1B)は、ウイルスゲノムおよび少数の細胞遺伝子の転写調節の責任を負うタンパク質をコードする。E2領域(E2AおよびE2B)の発現は、ウイルスDNA複製のためのタンパク質の合成を生じさせる。これらのタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現および宿主細胞遮断に関係している(Renan, 1990)。ウイルスカプシドタンパク質の大多数を含む後期遺伝子の産物は、主要後期プロモーター(MLP)によって出される単一の一次転写産物の有意なプロセッシング後にのみ発現させられる。MLP(16.8 m.u.に所在する)は、感染の後期中に特に効率的であり、このプロモーターに由来する全mRNAは、それらを翻訳のために特定mRNAにさせる5'-トリパータイトリーダー(TPL)配列を有する。
【0121】
アデノウイルスは、51種の公知の血清型またはサブグループA〜Fのいずれかであってよい。サブグループCのアデノウイルス5型は、それについてほとんどの生化学的および遺伝的情報が公知であるヒトアデノウイルスであり、これは従来ベクターとしてアデノウイルスを使用する大多数の構築のために使用されてきた。組換えアデノウイルスは、シャトルベクターとプロウイルスベクターとの間の相同組換えから生成されることが多い。2つのプロウイルスベクター間の可能性のある組換えに起因して、このプロセスから野生型アデノウイルスを生成することができる。このため、個別プラーク由来のウイルスの単一クローンを単離してそのゲノム構造を試験することが極めて重要である。
【0122】
遺伝子療法に使用されるウイルスは、複製可能または複製欠損のいずれであってもよい。複製欠損性であるアデノウイルスベクターの生成および繁殖は、Ad5 DNAフラグメントを用いてヒト胚腎細胞によって調製される293細胞になるプロトタイプであるヘルパー細胞系に依存する;この細胞系は、E1タンパク質を構成的に発現する(Graham et al., 1977)。しかし、ヘルパー細胞系は、例えばヒト胚腎細胞、筋細胞、造血細胞またはヒト胚間葉もしくは上皮細胞などのヒト細胞由来であってよい。または、ヘルパー細胞は、ヒトアデノウイルスのために許容状態にある他の哺乳動物細胞腫の細胞に由来してよい。そのような細胞には、例えば、ベロ細胞または他のサル胚間葉もしくは上皮細胞が含まれる。上述したように、特定のヘルパー細胞系は、293である。
【0123】
Racher et al.(1995)は、293細胞を培養してアデノウイルスを繁殖させるための改良された方法を開示している。一つのフォーマットでは、天然細胞凝集体は、100〜200mLの培地を含有する1リットルのシリコン処理スピナーフラスコ(Techne社、英国ケンブリッジ)内に個別細胞を接種することによって成長させられる。40rpmで攪拌した後、トリパンブルーを用いて細胞生存性を推定する。また別のフォーマットでは、以下のようにFibra-Celマイクロキャリア(Bibby Sterlin社、英国ストーン)(5g/L)を使用する。5mLの培地中に再懸濁させた細胞接種材料を250mLのエルレンマイヤーフラスコ内のキャリア(50mL)に加え、1〜4時間にわたり、時たま攪拌しながら静止させて放置した。この培地を次に50mLの新鮮培地と取り替え、振とうを開始した。ウイルス産生のため、細胞は約80%コンフルエンスまで増殖させ、その時間の経過後に培地を(最終量の25%まで)取り替え、0.05のMOIでアデノウイルスを加えた。培養を一晩は静止させて放置し、その後に容量を100%へ増加させ、さらに72時間にわたり振とうを開始した。
【0124】
アデノウイルスの増殖および操作は当業者には公知であり、インビトロおよびインビボの広汎な宿主範囲を示す。このウイルス群は、10
9〜10
13pfu(プラーク形成単位)/mLの高力価で入手することができ、それらは高度に感染性である。アデノウイルスの生活環は、宿主細胞ゲノム内への統合を必要としない。アデノウイルスベクター由来の外来遺伝子はエピソーム性であり、このため、宿主細胞には低遺伝毒性を有する。野生型アデノウイルスを用いたワクチン接種に関する試験では副作用は報告されておらず(Couch et al., 1963;Top et al., 1971)、インビボ遺伝子導入ベクターとしてのそれらの安全性および治療可能性を証明している。
【0125】
アデノウイルスベクターは、真核細胞遺伝子発現(Levrero et al., 1991;Gomez-Foix et al., 1992)およびワクチン開発(Grunhaus and Horwitz, 1992;Graham and Prevec, 1992)において使用されてきた。動物試験は、組換えアデノウイルスを遺伝子療法のために使用できることを示唆してきた(Stratford-Perricaudet and Perricaudet, 1991;Stratford-Perricaudet et al., 1990;Rich et al., 1993)。様々な組織へ組換えアデノウイルスを投与する試験には、気管点滴(Rosenfeld et al., 1991;Rosenfeld et al., 1992)、筋肉注射(Ragot et al., 1993)、末梢静脈注射(Herz and Gerard, 1993)および脳内への定位接種(Le Gal La Salle et al., 1993)が含まれる。
【0126】
上述したように、アデノウイルスベクターは、複製欠損または複製可能のいずれかである組換えアデノウイルスをベースとしている。典型的な複製欠損アデノウイルスベクターはE1AおよびE1B遺伝子(集合的にE1として公知である)が欠如しており、それらの場所に外来遺伝子の発現を駆動するプロモーターおよびプレ-mRNAプロセッシングシグナルからなる発現カセットを含有している。これらのベクターは、Ad遺伝子発現およびDNA複製を誘導するために必要とされるE1A遺伝子が欠如するために、複製することができない。さらに、E3遺伝子は、それらが培養細胞内でのウイルス複製のために必須ではないために欠失していてよい。当技術分野においては、複製欠損アデノウイルスベクターが療法に使用するためにそれらを準最適にさせる幾つかの特性を有することは認識されている。例えば、複製欠損アデノウイルスベクターの産生は、それらがE1Aタンパク質をトランスで提供する相補的細胞系上で増殖させることを必要とする。
【0127】
幾つかのグループは、治療使用するために複製可能アデノウイルスベクターを使用することもまた提案している。複製可能ベクターは複製のために必須のアデノウイルス遺伝子を保持しているので、このため複製のために相補的細胞系を必要としない。複製可能アデノウイルスベクターは、ベクターの生活環の自然な一部として細胞を溶解する。複製可能アデノウイルスベクターの一つの利点は、上記ベクターが外来タンパク質をコードして発現するように組換えられている場合に発生する。そのようなベクターは、ベクターが複製するにつれてコードされたタンパク質の合成を大きく増幅させると予測される。抗癌剤として使用するためには、複製可能ウイルスベクターは、理論的には、それらが複製欠損ベクターを用いた場合と同様に初期感染細胞においてだけではなく、腫瘍全体を通して複製して広がる点で有益である。
【0128】
さらに別のアプローチは、条件により複製可能であるウイルスを作製することである。Onyx Pharmaceuticals社は最近、非腫瘍性細胞内で複製欠損性であるが、機能的p53および/または網膜芽細胞腫(pRB)腫瘍サプレッサータンパク質が欠如している腫瘍細胞内での複製表現型を示すアデノウイルスをベースとする抗癌ベクターについて報告した(米国特許第5,677,178号)。この表現型は、報告によれば、E1B-55Kタンパク質をp53に結合することを不可能にさせるE1B領域内での突然変異および/またはコードされたE1Aタンパク質(p289Rまたはp243R)をpRBおよび/またはp300および/またはp107へ結合することを不可能にさせるE1A領域内での突然変異を含有する組換えアデノウイルスを用いることによって実施される。E1B-55Kは、少なくとも2つの独立した機能を有している;E1B-55Kは、腫瘍サプレッサータンパク質p53に結合して不活性化し、核からのAd mRNAの効率的輸送のために必要とされる。これらのE1BおよびE1Aウイルスタンパク質は、アデノウイルスDNAの複製のために必要とされるS期に細胞を推し進めることに関係しているために、そしてp53およびpRBタンパク質は細胞周期進行を遮断するので、Onyx社によって記載された組換えアデノウイルスベクターは、多数の癌細胞については該当するp53および/またはpRBが欠損性の細胞内では複製するはずであるが、野生型p53および/またはpRBを備える細胞内では複製しない。
【0129】
また別の複製可能アデノウイルスベクターは、単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ遺伝子と置換されたE1B-55Kに対する遺伝子を有している(Wilder et al., 1999a)。このベクターを構築したグループは、ベクターとガンシクロビルとの組み合わせがヌードマウスモデルにおいてヒト大腸癌に及ぼす治療作用を示すと報告した(Wilder et al., 1999b)。しかし、このベクターにはADPに対する遺伝子が欠如しているので、したがって、このベクターは、ADPを発現する同等のベクターより非効率的に、細胞を溶解させて細胞から細胞に広がる。
【0130】
また、p53を過剰発現するアデノウイルスベクターを作製するために様々なプロモーター系を利用することができる。ベクターはまた、複製可能または条件により複製性であってよい。遺伝子組換えアデノウイルスの他のバージョンには、p300および/またはRbファミリーメンバーのメンバーにE1Aが結合する能力を崩壊させること、または6.7K、gp19K、RIDα(10.4Kとしても公知である);RIDβ(14.5Kとしても公知である)および14.7Kからなる群より選択される少なくとも一つのE3タンパク質の発現が欠如するアデノウイルスベクターが含まれる。野生型E3タンパク質は免疫媒介性炎症および/またはアデノウイルス感染細胞のアポトーシスを阻害するので、これらのE3タンパク質の一つまたは複数が欠如する組換えアデノウイルスは、アデノウイルスで治療された腫瘍内への炎症および免疫細胞の浸潤を刺激することができ、この宿主免疫応答は腫瘍ならびに転移している腫瘍の破壊に役立つ。E3領域内での突然変異はその野生型機能を損傷させ、ウイルス感染細胞を宿主の免疫系による攻撃に感受性にさせる。これらのウイルスは、米国特許第6,627,190号に記載されている。
【0131】
その他のアデノウイルスベクターは、米国特許第5,670,488号;第5,747,869号;第5,932,210号;第5,981,225号;第6,069,134号;第6,136,594号;第6,143,290号;第6,210,939号;第6,296,845号;第6,410,010号;および第6,511,184号;米国特許出願公開第2002/0028785号に記載されている。
【0132】
腫瘍崩壊性ウイルスもまた、本発明におけるベクターとして企図されている。腫瘍崩壊性ウイルスは、本明細書ではそれらが正常細胞を殺滅するよりはるかに頻回に腫瘍または癌細胞を殺滅するウイルスを一般に意味すると規定されている。例示的な腫瘍崩壊性ウイルスには、ADPを過剰発現するアデノウイルスが含まれる。これらのウイルスは、各々が本出願のこのセクションおよび本出願の全ての他のセクションに全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20040213764号、米国特許出願公開第20020028785号、および米国特許出願第09/351,778号の中で詳細に考察されている。例示的な腫瘍崩壊性ウイルスは、本明細書のどこかの場所で考察されている。当業者であれば、本発明の薬学的組成物および方法において適用できる他の腫瘍崩壊性ウイルスについて精通している。
【0133】
アデノ関連ウイルス(AAV)は、高い統合回数を有し、非分裂細胞を感染させることができ、そこで例えば組織培養中(Muzyczka, 1992)またはインビボで哺乳動物細胞内への遺伝子送達のために有用であるので、本発明の方法において使用するために魅力的なベクター系である。AAVは、感染性について広汎な宿主範囲を有する(Tratschin et al., 1984;Laughlin et al., 1986;Lebkowski et al., 1988;McLaughlin et al., 1988)。rAAVベクターの生成および使用に関する詳細は、各々が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,139,941号および第4,797,368号に記載されている。
【0134】
レトロウイルスは、それらの遺伝子を宿主ゲノム内に統合し、大量の外来遺伝子材料を移動させ、広域スペクトルの種および細胞タイプに感染させ、特殊細胞系内にパッケージングされるそれらの能力に起因して治療用ベクターとしての前途を有している(Miller, 1992)。
【0135】
レトロウイルスベクターを構築するために、核酸は、複製欠損であるウイルスを生成するために所定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノム内に挿入される。ビリオンを生成するために、gag、pol、およびenv遺伝子を含有するが、LTRおよびパッケージング成分を伴わないパッケージング細胞系が構築される(Mann et al., 1983)。レトロウイルスLTRおよびパッケージング配列と一緒にcDNAを含有する組換えプラスミドが特殊細胞系内に(例えば、リン酸カルシウム沈降法によって)導入されると、パッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写産物がウイルス粒子内にパッケージングされることを可能にし、それらは次に培養培地中へ分泌される(Nicolas and Rubenstein, 1988;Temin, 1986;Mann et al., 1983)。次に組換えレトロウイルスを含有する培地が収集され、任意で濃縮させられ、遺伝子導入のために使用される。レトロウイルスベクターは、極めて様々な細胞タイプを感染させることができる。しかし、統合および安定性発現は、宿主細胞の分裂を必要とする(Paskind et al., 1975)。
【0136】
レンチウイルスは、一般的レトロウイルス遺伝子であるgag、pol、およびenvに加えて調節もしくは構造機能を備える他の遺伝子を含有している複合レトロウイルスである。レンチウイルスベクターは、当技術分野において周知である(例えば、Naldini et al., 1996;Zufferey et al., 1997;Blomer et al., 1997;米国特許第6,013,516号および第5,994,136号参照)。
【0137】
組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞を感染させることができ、インビボおよびエックスビボ遺伝子導入ならびに核酸配列の発現の両方のために使用できる。例えば、非分裂細胞を感染させることができる組換えレンチウイルスであって、適切な宿主細胞がパッケージング機能を有する2つ以上のベクター、つまりgag、polおよびenv、ならびにrevおよびtatを用いてトランスフェクトされる組換えレンチウイルスについては、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,994,136号に記載されている。組換えウイルスは、特定細胞タイプの受容体へターゲティングするために、エンベロープタンパク質と抗体または特定リガンドとの連結によって標的とすることができる。当該の配列(調節領域を含む)を、例えば特定標的細胞上の受容体のためのリガンドをコードするまた別の遺伝子と一緒に、ウイルスベクター内に挿入することによって、これでベクターは標的特異的である。
【0138】
単純ヘルペスウイルス(HSV)はニューロン細胞に対する向性に起因する神経系障害を治療することに相当に大きな関心を生み出したが、このベクターはその広い宿主範囲を前提にすると他の組織に対して利用することもできる。HSVを魅力的なベクターにさせるまた別の因子は、ゲノムのサイズおよび組織である。HSVは大きいので、同義遺伝子または発現カセットの組み込みは、他の小さなウイルス系より問題が少ない。さらに、様々な性能(時間的、強度など)を備える様々なウイルス制御配列の利用可能性は、他の系におけるより大きな程度まで発現を制御することを可能にする。ウイルスがほとんどスプライスされていないメッセージを有しており、遺伝子操作をさらに容易にすることもまた一つの利点である。
【0139】
HSVもまた操作が相当に容易であり、高力価へ増殖させることができる。そこで、送達は十分なMOIを達成するために必要とされる容量および反復投与に対する必要の縮小の両方に関して問題が少ない。遺伝子療法ベクターとしてのHSVのレビューに関しては、Glorioso et al.(1995)を参照されたい。
【0140】
サブタイプ1および2を付けて指名されるHSVは、世界中で数百万人のヒト被検体を感染させる、人が遭遇する最も一般的な感染物質であるエンベロープウイルスである。大きな複合二本鎖DNAゲノムは、それらの一部はスプライスされた転写産物に由来する、たくさんの相違する遺伝子産物をコードする。ビリオンおよびエンベロープ構造成分に加えて、ウイルスはプロテアーゼ、リボヌクレオチドレダクターゼ、DNAポリメラーゼ、ssDNA結合タンパク質、ヘリカーゼ/プリマーゼ、DNA依存性ATPase、dUTPaseなどを含む極めて多数の他のタンパク質をコードする。
【0141】
HSV遺伝子は、それらの発現が協調的に調節され、カスケード法で連続的に順序付けられる幾つかのグループを形成する(Honess and Roizman, 1974;Honess and Roizman 1975)。感染後に発現させられる第1セットの遺伝子であるα遺伝子の発現は、ビリオンタンパク質16番、またはαトランス誘導因子によって増強される(Post et al., 1981;Batterson and Roizman, 1983)。β遺伝子の発現は、機能的α遺伝子産物、最も著明にはα4遺伝子によってコードされるICP4を必要とする(DeLuca et al., 1985)。ビリオン構造タンパク質の大部分をコードする遺伝子の混成群であるγ遺伝子は、最適な発現のためにはウイルスDNA合成の開始を必要とする(Holland et al., 1980)。
【0142】
ゲノムの複雑さと一致して、HSVの生活環が極めて関係している。ウイルス粒子の合成、および最終的には細胞死を生じさせる溶菌サイクルに加えて、ウイルスは、現時点には未だ規定されていないシグナルの一部が溶菌サイクルの再発を誘発するまでゲノムが神経節内で維持される潜伏状態に入る能力を有している。HSVの非病原性変異体が開発されており、遺伝子療法の状況において使用するために容易に利用することができる(米国特許第5,672,344号)。
【0143】
ワクシニアウイルスベクターは、それらの構築の容易さ、入手される相当に高レベルの発現、広い宿主範囲およびDNAを運搬する大きな能力のために広範囲に使用されてきた。ワクシニアは、顕著な「A-T」優先傾向を示す約186kbの直鎖状二本鎖DNAゲノムを含有している。約10.5kbの逆方向末端反復はゲノムをフランキングする。必須遺伝子の大多数は、ポックスウイルス間でも最も高度に保存されている中央領域内に位置すると思われる。ワクシニアウイルスにおける推定オープンリーディングフレームの数は、150〜200に達する。どちらの鎖もコーディングではあるが、リーディングフレームの広汎な重複は一般的ではない。
【0144】
ワクシニアウイルスゲノム内には、少なくとも25kbを挿入することができる(Smith and Moss, 1983)。プロトタイプのワクシニアベクターは、同種組換えを介してウイルス・チミジンキナーゼ遺伝子内に挿入された導入遺伝子を含有している。ベクターは、tk-表現型に基づいて選択される。脳心筋炎ウイルスの未翻訳リーダー配列を包含すると、発現レベルは従来型ベクターの発現レベルより高く、24時間で感染細胞のタンパク質の10%以上に導入遺伝子が蓄積する(Elroy-Stein et al., 1989)。
【0145】
送達すべき核酸は、特異的結合リガンドを発現するように遺伝子組み換えされている感染性ウイルス内に収容することができる。そこでウイルス粒子は、標的細胞の同種受容体へ特異的に結合して細胞へ内容物を送達する。レトロウイルスベクターの特異的ターゲティングを可能にするように設計された新規なアプローチは、ウイルスエンベロープへラクトース残基の化学的添加によるレトロウイルスの化学修飾に基づいて開発された。この修飾は、シアロ糖タンパク質受容体を介しての肝細胞の特異的感染を可能にできる。
【0146】
レトロウイルス・エンベロープタンパク質および特異的細胞受容体に対するビオチン化抗体が使用される、組換えレトロウイルスをターゲティングするためのまた別のアプローチが設計された。抗体は、ストレプトアビジンを用いることによるビオチン成分を介して結合された(Roux et al., 1989)。主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原に対する抗体を用いて、彼らは、インビトロでエコトロピックウイルスを用いてそれらの表面抗原を穿通する様々なヒト細胞の感染を証明した(Roux et al., 1989)。
【0147】
b.非ウイルス送達
脂質をベースとする非ウイルス調製物は、ウイルス遺伝子療法の代替法を提供する。多数の細胞培養試験は脂質をベースとする非ウイルス遺伝子導入を証明してきたが、脂質をベースとする調製物を介した全身性遺伝子療法は限定されてきた。非ウイルス性脂質をベースとする遺伝子送達の主要な限界は、非ウイルス送達ビヒクルを含むカチオン性脂質の毒性である。リポソームのインビボ毒性は、インビトロおよびインビボ遺伝子導入結果間の矛盾を部分的には説明する。この矛盾するデータの原因となるまた別の因子は、血清タンパク質の存在および非存在下でのリポソーム安定性における相違である。リポソームと血清タンパク質との間の相互作用は、リポソームの安定性特性に劇的な衝撃を及ぼす(Yang and Huang, 1997)。カチオン性リポソームは、負荷電血清タンパク質を誘引して結合する。血清タンパク質により被覆されたリポソームは、マクロファージによって溶解されるか取り込まれるかして、循環中からのリポソームの除去が導かれる。現在のインビボリポソーム送達法は、循環中のカチオン性脂質に関連する毒性および安全性の問題を回避するために、エアロゾル化、皮下、皮内、腫瘍内、または頭蓋内注射を使用する。リポソームと血漿タンパク質との相互作用は、インビトロ(Felgner et al., 1987)およびインビボ遺伝子導入(Zhu et al., 1993;Philip et al., 1993;Solodin et al., 1995;Thierry et al., 1995;Tsukamoto et al., 1995;Aksentijevich et al., 1996)との間の相違に大きく責任を担っている。
【0148】
リポソーム調製物における最近の進歩は、インビボでの遺伝子導入の効率を向上させた(参照により本明細書に組み入れられるTempleton et al. 1997;国際公開公報第98/07408号参照)。等モル比の1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)およびコレステロールから構成される新規なリポソーム調製物は、全身性インビボ遺伝子導入を有意に、約150倍増強する。DOTAP:コレステロール脂質調製物は、「サンドイッチリポソーム」と呼ばれる固有の構造を形成すると言われている。この調製物は、陥入二重層または「花瓶(vase)」構造間にDNAを「サンドイッチする」と報告されている。これらのリポソームの有益な特性には、正から負荷電もしくはρ、コレステロールによるコロイド安定化、二次元DNAパッキングおよび増加した血清安定性が含まれる。
【0149】
脂質調製物の製造は、(I)逆相蒸発、(II)脱水-再水和、(III)界面活性剤透析、および(IV)薄膜水和後のリポソーム混合物の超音波処理または連続抽出によって実施されることが多い。製造されると、脂質構造は、循環中にあるときは毒性(化学療法薬)または不安定(核酸)である化合物を封入するために使用できる。リポソームによる封入は、そのような化合物のための低毒性およびより長い血清半減期を生じさせた(Gabizon et al., 1990)。多数の疾患の治療は、特別には過剰増殖性疾患を治療するための療法である従来型もしく療法を増強または新規療法を確立するために、脂質をベースとする遺伝子導入戦略を使用している。
【0150】
リポソームは、脂質二重層および内部水性媒体を特徴とする多孔質構造である。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有している。それらは、脂質が過剰の水溶液中に懸濁させられた場合に自然に形成される。脂質成分は、脂質二重層間に水および溶解溶質を取り込んでいる構造の形成前に、自己再配列を経験する(Ghosh and Bachhawat, 1991)。脂肪親和性分子または脂肪親和性領域を備える分子は、脂質二重層内に溶解する、または脂質二重層と連結することもできる。
【0151】
リポソームは、核酸が完全に隔離されるように、生物活性核酸を運搬することができる。リポソームは、一つまたは複数の核酸を含有することができ、標的細胞へその内容物を効率的に送達するために哺乳動物宿主に投与される。リポソームは、DOTAPおよびコレステロールもしくはコレステロール誘導体を含むことができる。所定の態様では、DOTAP対コレステロール、コレステロール誘導体もしくはコレステロール混合物の比率は、約10:1〜約1:10、約9:1〜約1:9、約8:1〜約1:8、約7:1〜約1:7、約6:1〜約1:6、約5:1〜約1:5、約4:1〜約1:4、約3:1〜1:3、2:1〜1:2、および1:1である。別の態様では、DOTAPおよび/またはコレステロール濃度は、約1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、または30mMである。DOTAPおよび/またはコレステロール濃度は、約1mM〜約20mM、1mM〜約18mM、1mM〜約16mM、約1mM〜約14mM、約1mM〜約12mM、約1mM〜約10mM、1〜8mM、2〜7mM、3〜6mMおよび4〜5mMであってよい。コレステロール誘導体は、本発明においては、コレステロールと容易に置換することができる、またはコレステロールと混合することができる。多数のコレステロール誘導体は、当業者には公知である。例には、酢酸コレステロールおよびオレイン酸コレステロールが含まれるが、それには限定されない。コレステロール混合物は、少なくとも一つのコレステロールもしくはコレステロール誘導体を含有する組成物を意味する。
【0152】
本調製物は、膜もしくはフィルターを用いて押し出すこともでき、これは複数回実施することができる。そのような技術は、当業者には周知であり、例えばMartin(1990)に記載されている。押出は、本調製物を均質化する、またはそのサイズを制限するために実施できる。所定の態様においてリポソームを調製するための企図された方法は、それにより小さな安定性リポソーム構造の形成を生じさせる、孔径が減少するフィルターを通して脂質を加熱する、超音波処理する、および連続押出する工程である。この調製は、構造的に安定性で最大活性を生成する、適切で一様なサイズのみのリポソーム複合体もしくはリポソームを製造する。
【0153】
例えば、本発明の所定の態様では、DOTAP:コレステロールリポソームがTempletonら(1997;参照により本明細書に組み入れられる)の方法によって調製されることが企図されている。そこで、一つの態様では、DOTAP(カチオン性脂質)は等モル濃度でコレステロール(中性脂質)と混合される。粉末状脂質のこの混合物は次にクロロホルムを用いて溶解させられ、その溶液は薄膜へ乾燥され、そのフィルムは20mM DOTAPおよび20mMコレステロールの最終濃度を得るために5(w/v)%デキストロースを含有する水溶液中で水和させられる。水和した脂質フィルムは45分間にわたり50℃、次にさらに10分間にわたり35℃での水浴中で回転させられ、室温で一晩放置される。翌日、この混合物は50℃で5分間にわたり超音波処理される。音波処理混合物は、チューブへ移され、50℃で10分間にわたり加熱される。この混合物は、孔径が減少する(1μm、0.45μm、0.2μm、0.1μm)シリンジフィルターに通して連続的に押し出される。
【0154】
その他のリポソーム調製物および調製方法は、所望のDOTAP:コレステロールリポソーム特性を付与するために結合できることもまた企図されている。核酸送達のための脂質をベースとする調製物を調製するまた別の方法は、Saravolac et al.(国際公開公報第99/18933号)によって記載されている。ここに詳述されているのは、脂質組成物が具体的には核酸を封入するために調製される方法である。また別のリポソーム調製物では、溶媒希釈マイクロキャリア(SDMC)と呼ばれる両親媒性ビヒクルは、脂質ビヒクルの二重層内へ特定の分子を統合することを可能にする(米国特許第5,879,703号)。SDMCは、リポ多糖、ポリペプチド、核酸などを送達するために使用することができる。当然ながら、当業者であれば、本発明の所望のリポソーム調製物を得るために、任意の他のリポソーム調製方法を使用できる。
【0155】
本発明においては、当業者には公知である腫瘍内へ遺伝子を送達するための他の調製物もまた利用できる。本発明は、核酸発現構築物を局所送達するためのナノ粒子リポソーム調製物もまた含んでいる。例えば、リポソーム調製物は、DOTAPおよびコレステロールを含むことができる。以下では、核酸発現構築物を含有するそのような調製物の例を示す。
【0156】
カチオン性脂質(DOTAP)は、等モル濃度で中性脂質コレステロール(Chol)と混合することができる(Avanti Lipids社)。混合した粉末状脂質は、1Lの丸底フラスコ内でHPLC等級クロロホルム(Mallinckrodt社、ミズーリ州チェスターフィールド)中に溶解させることができる。溶解させた後、この溶液は薄膜を作製するために30分間にわたり30℃でBuchiロータリーエバポレーター上で回転させることができる。この脂質薄膜を含有するフラスコは、次に真空下で15分間にわたり乾燥させることができる。乾燥が完了したら、この膜を5%デキストロース水溶液(D5W)中に水和させると、20mM DOTAP:Cholと呼ばれる、20mM DOTAPおよび20mMコレステロールの最終濃度を得ることができる。水和させた脂質膜は、45分間にわたり50℃で、および次に10分間にわたり35℃で回転させることができる。この混合液は次に室温で一晩、パラフィン被覆フラスコ内に放置し、その後に50℃で5分間にわたり低周波数での超音波処理(Lab-Line社、TranSonic 820/H)を実施することができる。超音波処理後、この混合物は試験管に移し、50℃で10分間にわたり加熱し、その後にシリンジを用いて減少するサイズ:1.0、0.45、0.2および0.1μmのWhatman(英国ケント州)フィルターに通した連続押出しを行うことができる。Whatman Anotopフィルターの0.2μmおよび0.1μmを使用できる。押出し後、リポソームは4℃のアルゴン気体下に貯蔵することができる。
【0157】
例えば150μgのプラスミドDNAの形態にある核酸発現構築物は、D5W中で希釈することができる。貯蔵されたリポソームは、D5Wの別個の溶液中に希釈することもできる。等量のDNA溶液およびリポソーム溶液の両方を混合すると、例えば150μg DNA/300μL容量(2.5μg/5μL)の最終濃度を得ることができる。希釈および混合は、室温で実施できる。DNA溶液は、次にPipetmanピペットチップを用いることによってリポソーム溶液の表面に迅速に加えることができる。DNA:リポソーム混合物を次にピペットチップ内で2回迅速に上下に混合すると、DOTAP:コレステロール核酸発現構築物複合体を形成することができる。
【0158】
本明細書の教示および当業者の知識を使用すれば、DOTAP:Chol-核酸発現複合体の粒径を決定するための試験を実施することができる。例えば、DOTAP:Chol-核酸発現構築物複合体の粒径は、N4-Coulter粒径分析装置(Beckman-Coulter社)を用いて決定することができる。この決定のためには、新鮮に調製した複合体5μLを粒径決定の前に1mLの水に希釈しなければならない。さらに、光学密度400nmでの複合体の分光学的読取りもまた分析において使用できる。この分析のためには、5μLのサンプルを95μLのD5W中に希釈して最終量100μLとすることができる。サイズ分析とともに上記の調製技術を適用すると、374〜400nmの複合体のサイズを証明するはずである。
【0159】
ナノカプセルは、一般に安定性および再現可能な方法で化合物を取り込むことができる。細胞内ポリマー過負荷に起因する副作用を回避するためには、そのような超微粒子(サイズが約0.1μm)はインビボで分解できるポリマーを用いて設計しなければならない。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレート・ナノ粒子は、本発明において使用するために企図されており、そのような粒子は容易に作成できる。本発明の方法および組成物とともに使用できるナノ粒子の使用に関する方法には、その各々が全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,555,376号、米国特許第6,797,704号、米国特許出願第20050143336号、米国特許出願第20050196343号および米国特許出願第20050260276号が含まれる。例えば米国特許出願公開第20050143336号は、例えばDOTAPなどのカチオン性脂質もしくはリポソームを形成するDOPEなどの中性脂質と複合体形成される核酸形にあるp53およびFUS-1などの腫瘍サプレッサー遺伝子を含有するナノ粒子調製物の例を提供する。
【0160】
2.ベクターの送達および細胞形質転換
本発明とともに使用するために、オルガネラ、細胞、組織もしくは微生物を形質転換させるための適切な核酸送達方法は、それにより核酸(例えば、DNA)を本明細書に記載したような、または当業者であれば周知であるような、オルガネラ、細胞、組織もしくは微生物内に導入できる実質的に任意の方法を含むと考えられる。そのような方法には、例えばエックスビボ・トランスフェクション(Wilson et al., 1989;Nabel et al., 1989)による、マイクロインジェクション(参照により本明細書に組み入れられるHarland and Weintraub, 1985;米国特許第5,789,215号)を含むインジェクション(各々が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,994,624号、第5,981,274号、第5,945,100号、第5,780,448号、第5,736,524号、第5,702,932号、第5,656,610号、第5,589,466号および第5,580,859号)による;エレクトロポレーション(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,384,253号;Tur-Kaspa et al., 1986;Potter et al., 1984)による;リン酸カルシウム沈降法(Graham and Van Der Eb, 1973;Chen and Okayama, 1987;Rippe et al., 1990)による;DEAE-デキストラン、その後にポリエチレングリコール(Gopal, 1985)による;直接音響負荷(Fechheimer et al., 1987)による;リポソーム媒介性トランスフェクション(Nicolau and Sene, 1982;Fraley et al., 1979;Nicolau et al., 1987;Wong et al., 1980;Kaneda et al., 1989;Kato et al., 1991)および受容体媒介性トランスフェクション(Wu and Wu, 1987;Wu and Wu, 1988)による;マイクロプロジェクタイル・ボンバードメント(各々が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第94/09699号および国際公開公報第95/06128号;米国特許第5,610,042号;第5,322,783号、第5,563,055号、第5,550,318号、第5,538,877号および第5,538,880号)による;炭化ケイ素繊維との攪拌(各々が参照により本明細書に組み入れられるKaeppler et al., 1990;米国特許第5,302,523号および第5,464,765号)による方法よる、およびそのような方法の任意の組み合わせなどの、DNAの直接送達が含まれるが、それらに限定されない。
【0161】
3.発現系
上記で考察した組成物の少なくとも一部または全部を含む数多くの発現系が存在する。原核細胞および/または真核細胞をベースとする系は、核酸配列、またはそれらの同種ポリペプチド、タンパク質およびペプチドを生成するために、本発明とともに使用することができる。多数のそのような系は、市販されており、広汎に入手可能である。
【0162】
昆虫細胞/バキュロウイルス系は、どちらも参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,871,986号、第4,879,236号に記載されており、例えばINVITROGEN(登録商標)社からのMAXBAC(登録商標)2.0およびCLONTECH(登録商標)社からのBACPACK(商標)バキュロウイルス発現系の商標名を付けて購入できる異種核酸セグメントの高レベルのタンパク質発現を生成することができる。
【0163】
その他の発現系の例には、合成エクジソン誘導性受容体、またはそのpET発現系である大腸菌発現系を含むSTRATAGENE(登録商標)社のCOMPLETE CONTROL(商標)誘導性哺乳動物発現系が含まれる。誘導性発現系のまた別の例は、全長CMVプロモーターを使用する誘導性哺乳動物発現系であるT-REX(商標)(テトラサイクリン調節発現)系を有する、INVITROGEN(登録商標)社から入手できる。INVITROGEN(登録商標)社は、メチロトローフ酵母であるピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)内での組換えタンパク質の高レベル産生のために設計されているピチア・メタノリカ発現系と呼ばれる酵母発現系もまた提供している。当業者には、核酸配列またはその同種ポリペプチド、タンパク質、もしくはペプチドを生成するための、例えば発現構築物などのベクターを発現させる方法は公知である。
【0164】
治療用遺伝子は「過剰発現させる」ことができる、すなわち細胞中で自然な発現に比較して増加したレベルで発現させることができる。そのような過剰発現は、放射標識および/またはタンパク質精製を含む様々な方法によって評価できる。しかし、例えば、SDS/PAGEおよびタンパク質染色もしくはウエスタンブロッティングを行い、その後に生じたゲルもしくはブロットのデンシトメトリー走査などの定量的分析を実施することを含む単純で直接的な方法が企図されている。自然細胞内のレベルに比較して組換えタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドのレベルにおける特異的増加は、例えばゲル上で視認できる、宿主細胞によって生成される他のタンパク質に比較した特異的タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドの相対存在量と同様に、過剰発現を示す。
【0165】
一部の態様では、発現したタンパク様配列は宿主細胞内で封入体を形成し、宿主細胞は、例えば細胞ホモジナイザー内での崩壊によって溶解され、可溶性細胞成分から高密度封入体および細胞膜を分離するために洗浄および/または遠心分離される。この遠心分離は、それにより高密度封入体がバッファー内への例えばスクロースなどの糖の取込みによって選択的に濃縮され、選択的速度で遠心分離される条件下で実施できる。封入体は、高濃度の尿素(例えば、8M)または塩酸グアニジンなどのカオトロピック剤を含有する溶液中に例えばβ-メルカプトエタノールもしくはDTT(ジチオトレイトール)などの還元剤の存在下で溶解させ、当業者には公知であるように、より望ましい立体配座にリフォールディングすることができる。
【0166】
治療遺伝子のためのヌクレオチドおよびタンパク質配列は以前より開示されており、当業者には公知の電子化データベースに見出すことができる。一つのそのようなデータベースは、全米バイオテクノロジー情報センターのGenbankおよびGenPeptデータベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/)である。これらの公知の遺伝子のためのコーディング領域は、本明細書に開示した技術を用いて、または当業者には公知である任意の技術によって増幅および/または発現させることができる。さらに、ペプチド配列は、例えばApplied Biosystems社(カリフォルニア州フォスターシティ)から入手できる装置などの自動ペプチド合成装置を用いたペプチド合成法などの、当業者には公知の方法によって合成することができる。
【0167】
IV.併用腫瘍療法
本発明の所定の局面によると、患者への組み合わせ効果を備える一つまたは複数の療法を適用することができる。そのような療法には、放射線、化学療法、手術、サイトカイン、免疫療法、生物学的療法、毒素、薬物、食事療法、または遺伝子療法が含まれる。以下では、実施例について考察する。
【0168】
癌細胞を殺滅する、それらの増殖を遅延化させる、または上記で考察した臨床的エンドポイントのいずれかを達成するためには、二次抗癌療法と組み合わせて、癌細胞もしくは腫瘍を一次p53遺伝子療法と接触させることができる。これら2つの様式は癌細胞を殺滅する、もしくは増殖を阻害するために、または患者の生存期間を増加させることを含む、所望の臨床的エンドポイントを達成するために有効な結合量で提供される。このプロセスは、癌細胞もしくは腫瘍を同時に両方の様式と接触させる工程を含むことができる。これは、癌細胞もしくは腫瘍を、両方の作用物質を含む単一組成物もしくは薬理学的調製物と接触させる工程によって、または癌細胞もしくは腫瘍を同時に2つの別個の組成物もしくは調製物であって、一つの組成物は一次遺伝子療法を含み、他方は二次療法を含む組成物もしくは調製物と接触させる工程によって達成できる。
【0169】
または、一次p53遺伝子療法は、数分間から数週間の範囲に及ぶ間隔で二次療法に先行して、または二次療法に引き続いて実施されてよい。2つの様式が癌細胞もしくは腫瘍へ別個に適用される態様では、一般には、両方の様式が上記癌細胞もしくは腫瘍に有益な結合作用を発揮できるように、各送達時間の間で有意な期間が過ぎてしまわなことが保証される。そのような場合には、相互から約12〜24時間以内に、およびより詳細には相互から約6〜12時間以内に細胞を両方の様式と接触させることが企図されており、最も詳細には遅延時間は約12時間に過ぎない。しかし一部の状況では、治療のために各投与の間を数日間(2、3、4、5、6、または7日間)から数週間(1、2、3、4、5、6、7もしくは8週間)を有意に延長することが望ましい場合がある。
【0170】
各様式の1回以上の投与が望ましいこともまた考えられる。一次遺伝子療法が「A」であり、二次療法が「B」である様々な組み合わせもまた使用できる:
【0171】
A.治療用遺伝子をコードする治療用核酸
上記で考察したように、本発明の様々な態様内では、過剰増殖性疾患を治療するために患者に治療用遺伝子を提供する必要が生じることがある。本出願の中の用語「遺伝子療法」は、過剰増殖性疾患を治療するため、または未治療で放置されると過剰増殖性疾患を引き起こす可能性がある状態を治療するためにそのような治療を必要とする患者への治療用遺伝子もしくは他の治療用核酸の送達であると規定できる。「治療用遺伝子」の定義に含まれるのは、「生物学的に機能的同等の」治療用遺伝子である。したがって、治療用遺伝子のアミノ酸と同一もしくは機能的同等であるアミノ酸の約70%〜約99%相同性を有する配列は、タンパク質の生物活性が維持されることを前提に生物学的機能的同等物である配列である。治療用遺伝子のクラスには、腫瘍サプレッサー遺伝子、細胞周期調節因子、プロアポトーシス遺伝子、サイトカイン、毒素、抗血管新生因子、ならびに発癌因子、血管新生促進因子、成長因子、アンチセンス転写産物、リボザイムおよびRNAiを阻害する分子が含まれる。
【0172】
治療用遺伝子の例には、Rb、CFTR、p16、p21、p27、p57、p73、C-CAM、APC、CTS-1、zacl、scFV ras、DCC、NF-1、NF-2、WT-1、MEN-I、MEN-II、BRCA1、VHL、MMAC1、FCC、MCC、BRCA2、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、GM-CSF、G-CSF、チミジンキナーゼ、mda7、fus、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、ADP、p53、ABLI、BLC1、BLC6、CBFA1、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、EBRB2、ETS1、ETS2、ETV6、FGR、FOX、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCL1、MYCN、NRAS、PIMl、PML、RET、SRC、TAL1、TCL3、YES、MADH4、RBl、TP53、WT1、TNF、BDNF、CNTF、NGF、IGF、GMF、aFGF、bFGF、NT3、NT5、ApoAI、ApoAIV、ApoE、Rap1A、シトシンデアミナーゼ、Fab、ScFv、BRCA2、zac1、ATM、HIC-1、DPC-4、FHIT、PTEN、ING1、NOEY1、NOEY2、OVCA1、MADR2、53BP2、IRF-1、Rb、zac1、DBCCR-1、rks-3、COX-1、TFPI、PGS、Dp、E2F、ras、myc、neu、raf、erb、fms、trk、ret、gsp、hst、abl、E1A、p300、VEGF、FGF、トロンボスポンジン、BAI-1、GDAIF、またはMCCが含まれるがそれらに限定されない。
【0173】
治療用遺伝子のその他の例には、酵素をコードする遺伝子が含まれる。例には、ACPデサチュラーゼ、ACPヒドロキシラーゼ、ADP-グルコースピロホリラーゼ、ATPase、アルコールデヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デキストリナーゼ、エンテラーゼ、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、ヒアルロンシンターゼ、ガラウトシダーゼ、グルカナーゼ、グルコースオキシダーゼ、GTPase、ヘリカーゼ、ヘミセルラーゼ、ヒアルロニダーゼ、インテグラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポキシゲナーゼ、リアーゼ、リゾチーム、ペクチンエステラーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテイナーゼ、ペプチダーゼ、プラナーゼ、リコンビナーゼ、逆転写酵素、トポイソメラーゼ、キシラナーゼ、レポーター遺伝子、インターロイキン、またはサイトカインが含まれるがそれらに限定されない。
【0174】
治療用遺伝子のまた別の例には、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノスクシネートシンテターゼ、アルギノスクシネートリアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセトアセテートヒドロラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、α-1アンチトリプシン、グルコース-6-ホスファターゼ、低密度リポタンパク質受容体、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ、第VIII因子、第IX因子、シスタチオンβ-シンターゼ、分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル-CoAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、β-グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、Hタンパク質、Tタンパク質、メンケス(Menkes)病銅輸送ATPase、ウィルソン(Wilson)病銅輸送ATPase、シトシンデアミナーゼ、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、ガラクトース-1-ホスフェートウリジルトランスフェラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、グルコセレボロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、α-L-イズロニダーゼ、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、HSVチミジンキナーゼ、またはヒトチミジンキナーゼをコードする遺伝子が含まれる。
【0175】
治療用遺伝子には、ホルモンをコードする遺伝子もまた含まれる。例には、成長ホルモン、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、甲状腺刺激ホルモン、レプチン、アドレノコルチコトロピン、アンジオテンシンI、アンジオテンシンII、β-エンドルフィン、β-メラノサイト刺激ホルモン、コレシストキニン、エンドセリンI、ガラニン、胃抑制ペプチド、グルカゴン、インスリン、リポトロピン、ニューロフィジン、ソマトスタチン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、β-カルシトニン遺伝子関連ペプチド、悪性高カルシウム血症因子、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、グルカゴン様ペプチド、パンクレアスタチン、膵ペプチド、ペプチドYY、PHM、セクレチン、血管作用性腸ペプチド、オキシトシン、バソプレッシン、バソトシン、エンケファリンアミド、メトルフィンアミド(metorphinamide)、αメラニン細胞刺激ホルモン、心房性ナトリウム利尿因子、アミリン、アミロイドP成分、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出因子、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経ペプチドY、サブスタンスK、サブスタンスP、または甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンをコードする遺伝子が含まれるがそれらに限定されない。
【0176】
治療用遺伝子のその他の例には、その組織に対する免疫応答を引き出すために使用できる過剰増殖性組織中に存在する抗原をコードする遺伝子が含まれる。抗癌免疫療法は当技術分野において、例えば詳細にはその各々は具体的に全体として参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第0333029号、第0208436号、第0231168号、および第0285287号において周知である。
【0177】
さらに他の治療用遺伝子は、例えばアンチセンス、リボザイム、siRNAおよび一本鎖抗体などの阻害性分子をコードする遺伝子である。そのような分子は、例えば発癌遺伝子、細胞増殖の誘導因子および血管新生促進因子などの過剰増殖性遺伝子を阻害するために有益に使用できる。
【0178】
1.腫瘍サプレッサーをコードする核酸
「腫瘍サプレッサー」は、細胞内に存在する場合は、細胞の腫瘍原性、悪性腫瘍、または過剰増殖性表現型を減少させるポリペプチドを意味する。腫瘍サプレッサー遺伝子アミノ酸配列をコードする核酸配列には、腫瘍サプレッサー遺伝子の全長核酸配列、ならびに全長配列に由来する任意の長さの非全長配列の両方が含まれる。その配列は、特定宿主細胞において天然配列またはコドン優先傾向を提供するために導入できる配列の縮重コドンを含むことをさらに理解されたい。
【0179】
「腫瘍サプレッサー遺伝子」は、本明細書では細胞の腫瘍原性、悪性、または過剰増殖性表現型を減少させる核酸配列を意味すると概して規定されている。そこで、他の点では健常な細胞内での腫瘍サプレッサー遺伝子の正常発現の非存在、突然変異、または崩壊は、細胞が腫瘍状態に達する可能性を増加させる、または結果として生じさせる。これとは逆に、機能的腫瘍サプレッサー遺伝子もしくはタンパク質が細胞内に存在する場合は、その存在は宿主細胞の腫瘍原性、悪性もしくは過剰増殖性表現型を抑制する。この定義の中に含まれる腫瘍サプレッサー核酸の例には、APC、CYLD、HIN-1、KRAS2b、p16、p19、p21、p27、p27mt、p53、p57、p73、PTEN、Rb、ウテログロビン、Skp2、BRCA-1、BRCA-2、CHK2、CDKN2A、DCC、DPC4、MADR2/JV18、FHIT、MEN1、MEN2、MTS1、NF1、NF2、VHL、WRN、WT1、CFTR、C-CAM、CTS-1、zac1、scFV、ras、MMAC1、FCC、MCC、遺伝子26(CACNA2D2)、PL6、β
*(BLU)、Luca-1(HYALl)、Luca-2(HYAL2)、123F2(RASSF1)、101F6、遺伝子21(NPRL2)、またはSEM A3ポリペプチドおよびFUS1をコードする遺伝子が含まれるがそれらに限定されない。その他の例示的な腫瘍サプレッサー遺伝子は、参照により本明細書に組み入れられる(ワールドワイドウェブのcise.ufl.edu/〜yy1/HTML-TSGDB/Homepage.html)に所在する腫瘍サプレッサー遺伝子データベースに記載されている。このデータベースは、本出願の本セクションおよび他の全てのセクションの中に具体的に参照により組み入れられる。上記で考察した腫瘍サプレッサー遺伝子をコードする核酸には、それらに由来する腫瘍サプレッサー遺伝子、もしくは核酸(例えば、cDNA、cRNA、mRNA、および各腫瘍サプレッサーアミノ酸配列の活性フラグメントをコードするそれらの部分配列)、ならびにこれらの配列を含むベクターが含まれる。当業者であれば、本発明において適用できる腫瘍サプレッサー遺伝子について精通している。
【0180】
2.一本鎖抗体をコードする核酸
本発明の所定の態様では、本明細書に規定した薬学的組成物および器具の核酸は、一本鎖抗体をコードする。一本鎖抗体は、各々が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,946,778号および第5,888,773号に記載されている。
【0181】
3.サイトカインをコードする核酸
用語「サイトカイン」は、細胞内媒介因子として他の細胞に作用する一つの細胞集団によって放出されるタンパク質を意味する一般用語である。「サイトカインアミノ酸配列」は、細胞内に存在する場合は、サイトカインの機能の一部または全部を保持しているポリペプチドを意味する。サイトカインアミノ酸配列をコードする核酸配列には、サイトカインの全長核酸配列、ならびに全長配列に由来する任意の長さの非全長配列の両方が含まれる。その配列は、上記で考察したように、特定宿主細胞において天然配列またはコドン優先傾向を提供するために導入できる配列の縮重コドンを含むことをさらに理解されたい。
【0182】
そのようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、成長因子および伝統的ポリペプチドホルモンである。サイトカインに特に含まれるのは、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝成長因子;プロスタグランジン、線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子αおよびβ;ミュラー管阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-βなどの神経成長因子;血小板成長因子;TGF-αおよびTGF-βなどのトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子IおよびII;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;例えばインターフェロンα、β、およびγなどのインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球マクロファージ-CSF(GM-CSF)および顆粒球-CSF(G-CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-24(MDA-7)などのインターロイキン(IL);LIF、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、EPO、キット・リガンド、またはFLT-3である。
【0183】
4.プロアポトーシス遺伝子/プログラムされた細胞死の調節因子をコードする核酸
アポトーシス、もしくはプログラムされた細胞死は、成人組織におけるホメオスタシスを維持し、発癌性を抑制する、正常な胚発達のための必須プロセスである(Kerr et al., 1972)。Bcl-2ファミリーのタンパク質およびICE様プロテアーゼが他の系におけるアポトーシスの重要な調節因子およびエフェクターであることは証明されている。濾胞性リンパ腫と関連して発見されたBcl-2タンパク質は、多様なアポトーシス性刺激に応答してアポトーシスを制御して細胞生存を増強することに優れた役割を果たす(Bakhshi et al., 1985;Cleary and Sklar, 1985;Cleary et al., 1986;Tsujimoto et al., 1985;Tsujimoto and Croce, 1986)。進化的に保存されたBcl-2タンパク質は、現在では死のアゴニストまたは死のアンタゴニストであると分類できる、1ファミリーの関連タンパク質の1メンバーであると認識されている。
【0184】
その発見に引き続いて、Bcl-2は様々な刺激によって引き起こされる細胞死を抑制するために作用することが証明された。さらに、現在では、共通の構造的および配列相同性を共有する1ファミリーのBcl-2細胞死調節タンパク質が存在することは明白である。これらの様々なファミリーメンバーは、Bcl-2に類似する機能を有する(例えば、Bcl
XL、Bcl
W、Bcl
S、Mcl-1、A1、Bfl-1)またはBcl-2機能を無効にして細胞死を促進するいずれかであることが証明されている。プロアポトーシス遺伝子として公知である後者は、アポトーシスを活性形に誘導または維持するタンパク質をコードする。本発明は、当業者には公知であるあらゆるプロアポトーシス遺伝子アミノ酸配列を包含することを企図している。例示的なプロアポトーシス遺伝子には、CD95、カスパーゼ-3、Bax、Bag-1、CRADD、TSSC3、bax、hid、Bak、MKP-7、PERP、bad、bcl-2、MSTl、bbc3、Sax、BIK、BID、およびmda7が含まれる。当業者であれば、本発明の方法および組成物において適用できる、本明細書では具体的には規定していないプロアポトーシス遺伝子、および他のそのような遺伝子について精通している。
【0185】
プロアポトーシス遺伝子アミノ酸配列をコードする核酸には、それらに由来するプロアポトーシス遺伝子、もしくは核酸(例えば、cDNA、cRNA、mRNA、および各プロアポトーシスアミノ酸配列の活性フラグメントをコードするそれらの部分配列)、ならびにこれらの配列を含むベクターが含まれる。「プロアポトーシスアミノ酸配列」は、細胞内に存在する場合は、アポトーシスを誘導または促進するポリペプチドを意味する。
【0186】
5.血管新生の阻害剤をコードする核酸
血管新生の阻害剤には、アンジオスタチンおよびエンドスタチンが含まれる。アンジオスタチンは、約200アミノ酸のポリペプチドである。アンジオスタチンは、血餅を溶解するために重要である血漿タンパク質であるプラスミノーゲンの開裂によって生成される。アンジオスタチンは、血漿膜中に包埋された細胞の表面に露出したATPシンターゼのサブユニットに結合する(この最近の発見の前には、ATPシンターゼはミトコンドリアタンパク質であるとしか知られていなかった)。エンドスタチンは、184アミノ酸のポリペプチドである。エンドスタチンは、親分子から切り離された、血管内で見出されるコラーゲンであるXVIII型コラーゲンのC末端で見出された球状ドメイン(Mulder et al., 1995)である。
【0187】
血管新生の阻害剤には、本文書のどこかで記載されている、例えばアンチセンス、リボザイム、siRNAおよび一本鎖抗体などの阻害剤または血管新生促進因子もまた含まれる。上皮細胞は、インテグリンと呼ばれるそれらの表面上の膜貫通タンパク質を発現し、それにより上皮細胞は細胞外基質に自らを固定する。腫瘍内の新規血管は、正常組織の古い血管上では見出されないαv/β3と指定された血管インテグリンを発現する。αv/β3血管インテグリンに対して向けられたモノクローナル抗体であるVitaxin(登録商標)は、マウスにおいて傷つけることなく腫瘍を収縮させる。ヒトを対象とした第II相臨床試験において、Vitaxin(登録商標)は、有害な副作用を伴わずに充実性腫瘍を収縮させることにある程度の前途を証明した。
【0188】
6.細胞増殖の誘導因子をコードする核酸
細胞増殖を誘導するタンパク質もまた、機能に依存して様々なカテゴリーに分類される。これらタンパク質全部の共通点は、それらが細胞増殖を調節する能力である。例えば、PDGFの1形態であるシス発癌遺伝子は、分泌された成長因子である。発癌因子は成長因子をコードする遺伝子からまれに発生し、現時点では、sisは唯一の公知の天然型発癌性成長因子である。
【0189】
タンパク質FMS、ErbA、ErbBおよびneuは、成長因子受容体である。これらの受容体への突然変異は、結果として調節可能機能の消失を生じさせる。例えば、Neu受容体タンパク質の膜貫通ドメインに影響を及ぼす点変異は、neu発癌遺伝子を生じさせる。erbA発癌遺伝子は、甲状腺ホルモンに対する細胞内受容体に由来する。修飾された発癌性ErbA受容体は、内因性甲状腺ホルモン受容体と競合して、制御されない成長を引き起こすと考えられる。
【0190】
最大クラスの発癌遺伝子には、シグナル伝達タンパク質(例えば、Src、AblおよびRas)が含まれる。タンパク質Srcは細胞質タンパク質チロシンキナーゼであり、一部の症例でのプロト発癌遺伝子から発癌遺伝子へのその形質転換は、チロシン残基527での突然変異を介して生じる。対照的に、プロト発癌遺伝子から発癌遺伝子へのGTPaseタンパク質rasの形質転換は、一つの実施例では、配列内でのアミノ酸12でのバリンからグリシンへの突然変異を生じさせ、ras GTPase活性を減少させる。
【0191】
タンパク質Jun、FosおよびMycは、転写因子としての核機能にそれらの作用を直接的に発揮するタンパク質である。
【0192】
アンチセンス方法は、核酸には「相補的」配列と塩基対合する傾向があるという事実を利用する。「相補的」は、ポリヌクレオチドが標準的なワトソン・クリック(Watson-Crick)相補性規則によって塩基対合できるポリヌクレオチドであることを意味する。つまり、大きなプリンは小さなピリミジンと塩基対合して、シトシンと塩基対合したグアニン(G:C)およびDNAの場合にはチミンと塩基対合したアデニン(A:T)またはRNAの場合にはウラシルと塩基対合したアデニン(A:U)の組み合わせを形成する。配列をハイブリダイズする際に、例えばイノシン、5-メチルシトシン、6-メチルアデニン、ヒポキサンチンおよびその他などの余り一般的でない塩基の包含は、塩基対合を妨害しない。
【0193】
ポリヌクレオチドを用いて二本鎖(ds)DNAをターゲティングすると三重らせん形成がもたらされる;RNAをターゲティングすると、二重らせん形成がもたらされる。アンチセンスポリヌクレオチドは、標的細胞内に導入されると、それらの標的ポリヌクレオチドへ特異的に結合し、転写、RNAプロセッシング、輸送、翻訳および/または安定性を妨害する。アンチセンスRNA構築物、もしくはそのようなアンチセンスRNAをコードするDNAは、インビトロまたは例えばヒト被検体を含む宿主動物内などのインビボのいずれかでの宿主細胞内の遺伝子の転写もしくは翻訳またはその療法を阻害するために使用できる。本発明の他の態様では、細胞増殖の特定誘導因子に向けられたsiRNA、リボザイムおよび一本鎖抗体療法を使用すると、細胞増殖の誘導因子の発現を防止し、したがって癌患者の臨床的有益性を提供することができる。
【0194】
7.追加の核酸をベースとする療法
アンチセンス構築物は、遺伝子のプロモーターおよびその他の制御領域、エクソン、イントロンまたはエクソン-イントロン境界さえに結合するように設計できる。最も有効なアンチセンス構築物は、イントロン/エクソンスプライス接合部に相補的な領域を含むであることが企図されている。そこで、特定の態様は、イントロ-エクソンスプライス接合部の50〜200塩基内の領域への相補性を備えるアンチセンス構築物を含んでいると提案されている。一部のエクソン配列は、その標的選択性に重大な影響を及ぼさずに構築物内に含められることが観察されている。含まれるエクソン材料の量は、使用される特定のエクソンおよびイントロン配列に依存して変動する。過剰のエクソンDNAが含まれているかどうかは、正常細胞機能が影響を受けるかどうか、または相補的配列を有する関連遺伝子の発現が影響を受けるかどうかを決定するためにインビトロで構築物を単純に試験することによって容易に試験することができる。
【0195】
上述したように、「相補的」または「アンチセンス」は、それらの全長にわたって実質的に相補的であり、極めて少数の塩基ミスマッチしか有していないポリヌクレオチド配列を意味する。例えば、長さが15塩基の配列は、それらが13もしくは14位置で相補的ヌクレオチドを有する場合に相補的と呼ぶことができる。当然ながら、完全に相補的である配列は、それらの全長を通して完全に相補的であり、塩基ミスマッチを有していない配列である。より低い相同度を備える他の配列もまた企図されている。例えば、限定された領域の高相同性を有するが、さらに非相同性領域(例えば、リボザイム;下記参照)もまた含有するアンチセンス構築物を設計できる。これらの分子は、50%未満の相同性を有するが、適切な条件下では標的配列に結合する。
【0196】
特異的構築物を生成するためにゲノムDNAの部分をcDNAまたは合成配列と結合することが有益な場合がある。例えば、イントロンが最終構築物中で所望である場合は、ゲノムクローンを使用することが必要になる。cDNAもしくは合成ポリヌクレオチドは、構築物の残りの部分のためのより便宜的な制限部位を提供することができるので、このため、残りの配列のために使用される。
【0197】
本発明の所定の態様では、本明細書に規定した薬学的組成物および器具の核酸は、リボザイムである。タンパク質は伝統的には核酸の触媒作用のために使用されてきたが、この試みにおいてまた別のクラスの高分子が有用であることが分かってきた。リボザイムは、部位特異的方法で核酸を開裂するRNA-タンパク質複合体である。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を有する特異的触媒ドメインを有する(Kim and Cook, 1987;Gerlach et al., 1987;Forster and Symons, 1987)。例えば、多数のリボザイムは、高度の特異性でリン酸エステル転移反応を促進し、オリゴヌクレオチド基質内の幾つかのリン酸エステルの内一つだけを開裂することが多い(Cook et al., 1981;Michel and Westhof, 1990;Reinhold-Hurek and Shub, 1992)。この特異性は、基質が化学的反応に先行するリボザイムの内部ガイド配列(「IGS」)への特異的塩基対合相互作用を介して結合するという要件に帰せられてきた。
【0198】
リボザイム触媒作用は主として、核酸を含む配列特異的開裂/ライゲーション反応の一部として観察されてきた(Joyce, 1989;Cook et al., 1981)。例えば、米国特許第5,354,855号は、所定のリボザイムが、公知のリボヌクレアーゼの配列特異性より大きく、DNA制限酵素の配列特異性に近い配列特異性を備えるエンドヌクレアーゼとして作用できると報告している。そこで、遺伝子発現の配列特異的リボザイム媒介性阻害は、特別には治療用途に適合する可能性がある(Scanlon et al., 1991;Sarver et al., 1990)。最近、リボザイムはそれらが適用された一部の細胞系において遺伝的変化を誘発すると報告された;変化した遺伝子は発癌遺伝子H-ras、c-fosおよびHIVの遺伝子を含んでいた。この研究の大多数は、特異的リボザイムによって開裂される特異的変異コドンに基づいて、標的mRNAの修飾を含んでいた。
【0199】
本発明の所定の態様では、本明細書に規定した薬学的組成物の核酸は、RNAiである。RNA干渉(「RNA媒介性干渉」もしくはRNAiとも呼ばれる)は、それにより遺伝子発現を減少または排除できるメカニズムである。二本鎖RNA(dsRNA)は、多段階プロセスである、減少を媒介することが観察されている。dsRNAは、ウイルス感染およびトランスポゾン活性から細胞を防御するように機能すると思われる、転写後遺伝子発現サーベイランスメカニズムを活性化する(Fire et al., 1998;Grishok et al., 2000;Ketting et al., 1999;Lin and Avery et al., 1999;Montgomery et al., 1998;Sharp and Zamore, 2000;Tabara et al., 1999)。これらのメカニズムの活性化は、崩壊させるために成熟dsRNA相補性mRNAを標的とする。RNAiは、遺伝子機能を試験するために主要な実験的利点を提供する。これらの利点には、極めて高い特異性、細胞膜を横断する移動の容易さ、および標的とされる遺伝子の長期間のダウンレギュレーションが含まれる(Fire et al., 1998;Grishok et al., 2000;Ketting et al., 1999;Lin and Avery et al., 1999;Montgomery et al., 1998;Sharp et al., 1999;Sharp and Zamore, 2000;Tabara et al., 1999)。さらに、dsRNAは、植物、原生動物、真菌、C.エレガンス(elegans)、トリパナソマ(Trypanasoma)、ドロソフィラ(Drosophila)、および哺乳動物を含む広範囲の系において遺伝子をサイレンシングすることが証明されている(Grishok et al., 2000;Sharp et al., 1999;Sharp and Zamore, 2000;Elbashir et al., 2001)。一般には、RNAiは転写後に機能し、分解のためにRNA転写産物を標的とすると認められている。核および細胞質RNAの両方を標的とすることができると思われる(Bosher and Labouesse, 2000)。
【0200】
エンドリボヌクレアーゼであるDicerは、遺伝子発現を調節する2つのタイプの低分子調節RNA:低分子干渉RNA(siRNA)およびmicroRNA(miRNA)を生成することが公知である(Bernstein et al., 2001;Grishok et al., 2001;Hutvgner et al., 2001;Ketting et al., 2001;Knight and Bass, 2001)。動物では、siRNAはmRNA開裂を直接標的とするが(Elbashir et al., 2001)、他方miRNAは標的mRNA翻訳を遮断する(Lee et al., 1993;Reinhart et al., 2000;Brennecke et al., 2003;Xu et al., 2003)。最近のデータは、siRNAおよびmiRNAの両方が類似の、おそらくは同一さえのタンパク質複合体内に組み込まれること、そしてmRNA破壊対翻訳調節の臨界的決定因子が低分子RNAとそのmRNA標的との間の配列相補性度であることを示唆している(Hutvgner and Zamore, 2002;Mourelatos et al., 2002;Zeng et al., 2002;Doench et al., 2003;Saxena et al., 2003;Zeng et al., 2003)。多数の公知のmiRNA配列およびゲノムもしくは染色体内のそれらの位置は、www.sanger.ac.uk/Software/Rfam/mirna/help/summary.shtmlに見出すことができる。
【0201】
siRNAは、それらが当該遺伝子の発現を抑制することに特異的および効果的であるように設計されなければならない。標的配列、すなわちそれへsiRNAが分解機構を誘導する当該遺伝子内に存在する配列を選択する方法は、上記遺伝子に特異的である配列を含めながらsiRNAの誘導機能を妨害する可能性がある配列を回避することに向けられる。典型的には、長さが約21〜23ヌクレオチドのsiRNA標的配列が最も効果的である。この長さは、上記に記載したようなはるかに長いRNAのプロセッシングの結果として生じる消化産物の長さを反映している(Montgomery et al., 1998)。
【0202】
siRNAの作製は、主として直接化学合成を通して;ドロソフィラ胚溶解物への曝露を通してのより長い二本鎖RNAのプロセッシングを通して;またはS2細胞に由来するインビトロ系を通してであった。細胞溶解物もしくはインビトロプロセッシングの使用は、溶解物からの短い21〜23ヌクレオチドのsiRNAのその後の単離などをさらに含む可能性があり、これはこのプロセスをいくらか厄介で費用を高額にさせる。化学合成は、2つの一本鎖RNA-オリゴマーを作製し、その後に2つの一本鎖オリゴマーを二本鎖RNAにアニーリングする工程によって進行する。化学合成の方法は、多種多様である。非限定的実施例は、参照により本明細書に明示的に組み入れられる米国特許第5,889,136号、第4,415,723号、および第4,458,066号、ならびにWincott et al.(1995)に提供されている。
【0203】
それらの安定性を変化させる、またはそれらの有効性を改良するために、siRNA配列へのまた別の幾つかの修飾が提案されてきた。ジヌクレオチドオーバーハング(すなわち、19相補性ヌクレオチド+3'非相補性ダイマー)を有する合成相補性21mer RNAは、最大レベルの発現を提供できると提案されている。これらのプロトコルは、ジヌクレオチドオーバーハングとして2つの(2'-デオキシ)チミジンヌクレオチドの配列を主として使用する。これらのジヌクレオチドオーバーハングは、RNA内に組み込まれた典型的ヌクレオチドからそれらを識別するためにdTdTとして記載されることが多い。文献は、dTオーバーハングの使用は、化学合成されるRNAの費用を減少させる必要によって主として動機付けられると指摘した。さらに、dTdTオーバーハングは、UUオーバーハングよりはるかに安定性であることも提案されているが、入手できるデータは、UUオーバーハングを備えるsiRNAに比較してdTdTオーバーハングの僅かな(<20%)改良しか示していない。
【0204】
国際公開公報第99/32619号および第01/68836号は、siRNAにおいて使用するためのRNAが化学合成できる、または酵素的に合成できることを提案している。これらの本文はどちらも、全体として参照により本明細書に組み入れられる。これらの参考文献において企図された酵素的合成は、当技術分野において公知であるように発現構築物の使用および生成による細胞RNAポリメラーゼまたはバクテリオファージRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、SP6)によってである。例えば、米国特許第5,795,715号を参照されたい。企図された構築物は、標的遺伝子の一部分と同一であるヌクレオチド配列を含有するRNAを産生する鋳型を提供する。これらの参考文献によって提供される同一配列の長さは、少なくとも25塩基であるが、長さは400塩基以上の長さであってよい。この参考文献の重要な局面は、著者らがインビボで長いdsRNAをsiRNAへ変換させる、内因性ヌクレアーゼ複合体を用いて長いdsRNAを21〜25merの長さへ消化する工程を企図していることである。それらは、インビトロ転写された21〜25merのdsRNAを合成して使用するためのデータを記載していない、または提示していない。RNA干渉におけるその使用において化学合成もしくは酵素的に合成されたdsRNAの予想される特性は区別されていない。
【0205】
同様に、参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第00/44914号は、RNAの一本鎖が酵素的または部部的/完全有機合成によって製造できると提案している。特別には、一本鎖RNAは、DNA鋳型、特別にはクローン化cDNA鋳型のPCR産物から酵素的に合成され、RNA産物は、数百個のヌクレオチドを含む可能性があるcDNAの完全転写産物である。参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第01/36646号は、手動方法および/または自動方法を用いて、RNAをインビトロまたはインビボで合成できることを前提に、siRNAが合成される方法を制限していない。この参考文献は、インビトロ合成が、例えば、内因性DNA(もしくはcDNA)鋳型を転写するためのクローン化RNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、SP6)を用いて化学的または酵素的、または両方の混合であってよいことも提供している。さらに、RNA干渉において使用するために望ましい特性は、化学的もしくは酵素的に合成されたsiRNA間で区別されていない。
【0206】
米国特許第5,795,715号は、単一反応混合物中の2つの相補的DNA配列ストランドの同時転写であって、2つの転写産物が即時にハイブリダイズされる同時転写について報告している。使用された鋳型は、特別には各末端にプロモーター配列が備えられている40〜100塩基対である。鋳型は、特別には固体表面に付着させられる。RNAポリメラーゼを用いた転写後、生じたdsRNAフラグメントは、核酸標的配列を検出および/またはアッセイするために使用できる。
【0207】
米国特許出願第20050203047号は、siRNAもしくはmiRNA配列をトランスファーRNA(tRNA)コーディング配列内に組み入れることによってRNA干渉を通して遺伝子発現を調節する方法について報告している。siRNAもしくはmiRNA配列を含有するtRNAは、この配列が発現したtRNAからスプライシングされるように核酸発現構築物内に組み入れることができる。siRNAもしくはmiRNA配列は、未処理tRNA転写産物と関連するイントロン内にポジショニングすることができる、またはtRNA転写産物のいずれかの末端にポジショニングすることができる。
【0208】
核酸は、例えば、化学合成、酵素的産生または生物学的産生などの、当業者には公知の任意の技術によって作製できる。合成核酸(例えば、合成オリゴヌクレオチド)の非限定的実施例には、ホスホトリエステル、ホスファイトもしくはホスホルアミダイト化学を用いたインビトロ化学合成および例えば参照により本明細書に組み入れられる欧州特許第266 032号に記載されたような固相技術によって、または各々が参照により本明細書に組み入れられるFroehler et al.(1986)および米国特許第5,705,629号によって記載されたデオキシヌクレオシドH-ホスホン酸塩中間体によって作製された核酸が含まれる。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,659,774号;第4,816,571号;第5,141,813号;第5,264,566号;第4,959,463号;第5,428,148号;第5,554,744号;第5,574,146号;第5,602,244号に開示されている方法などの様々なオリゴヌクレオチド合成のメカニズムを使用できる。
【0209】
酵素的に生成された核酸の非限定的実施例には、例えばPCR(商標)例えば、各々が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,683,202号および第4,682,195号を参照されたい)などの増幅反応における酵素によって生成された、または参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,645,897号に記載されたオリゴヌクレオチドの合成によって生成された、核酸が含まれる。生物学的に生成された核酸の非限定的実施例には、例えば細菌中で複製された組換えDNAベクターなどの、生きている細胞内で生成(すなわち、複製)された組換え核酸が含まれる(例えば、参照により本明細書に組み入れられるSambrook et al. 2001を参照されたい)。
【0210】
B.その他の療法
1.手術
癌を備えるヒトの約60%は、予防的、診断的もしくは病期診断的、治癒的および姑息的手術を含む、何らかのタイプの手術を受ける。治癒的手術は、例えば本発明の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または代替療法などの他の療法と併用することができる抗癌治療である。
【0211】
治癒的手術には、癌性組織の全部または一部が物理的に除去される、摘出される、および/または破壊される切除術が含まれる。腫瘍切除は、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を意味する。腫瘍切除に加えて、手術による治療には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡下手術(モース氏(Mohs')手術)が含まれる。さらに、本発明は、表在性癌、前癌状態、または付随的量の正常組織の除去と併用して使用できることが企図されている。
【0212】
癌性細胞、組織、または腫瘍すべての一部の手術に先行して、または切除後に、身体内に空洞を形成することができる。治療は、追加の抗癌療法とともにこれらの領域への潅流、直接注射または局所投与によって遂行できる。そのような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日毎、または1、2、3、4、および5週毎、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12カ月毎に反復することができる。これらの治療は、同様に様々な用量の治療であってよい。
【0213】
2.化学療法
本発明によると、極めて様々な化学療法薬を使用できる。用語「化学療法」は、癌を治療するための薬物の使用を意味する。「化学療法薬」は、癌の治療において投与される化合物もしくは組成物を暗示するために使用される。これらの作用物質または薬物は、例えば、それらが細胞周期に影響を及ぼすかどうか、およびどの段階で影響を及ぼすかなどの、細胞内での活性様式によって分類される。または、作用物質は、核酸合成に影響を及ぼすことによって、DNAに直接的に架橋結合する、DNA内にインターカレートする、または染色体および有糸分裂異常を誘導する能力に基づいて特徴付けることができる。大多数の化学療法薬は以下のカテゴリー:アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、有糸分裂阻害剤、およびニトロソウレアに分類される。
【0214】
a.アルキル化剤
アルキル化剤は、癌細胞が増殖するのを防止するためにゲノムDNAと直接的に相互作用する薬物である。化学療法薬のこのカテゴリーは、細胞周期の全期に影響を及ぼす、すなわち、期特異的ではない作用物質を表す。慢性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、ならびに乳房、肺および卵巣の特定の癌を治療するために実施できる。それらには、ブスルファン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド(Cytoxan)、ダカルバジン、イフォスファミド、メクロレタミン(ムスタルゲン)、およびメルファランが含まれる。トログリタゾンは、癌を治療するために、これらのアルキル化剤の任意の一つまたは複数と組み合わせて使用することができ、これらの一部については以下で考察する。
【0215】
b.代謝拮抗剤
代謝拮抗剤は、DNAおよびRNAの合成を妨害する。アルキル化剤とは相違して、代謝拮抗剤は、S期中に細胞周期へ特異的に影響を及ぼす。代謝拮抗剤は、乳房、卵巣および消化管の腫瘍に加えて、慢性白血病と闘うために使用されてきた。代謝拮抗剤には、5-フルオロウラシル(5-FU)、シタラビン(Ara-C)、フルダラビン、ゲムシタビン、およびメトトレキセートが含まれる。
【0216】
5-フルオロウラシル(5-FU)は、5-フルオロ-2,4(1H,3H)-ピリミジンジオンの化学名を有する。その作用機序は、デオキシウリジル酸からチミジル酸へのメチル化反応を遮断することによると考えられている。そこで、5-FUは、デオキシリボ核酸(DNA)の合成を妨害し、これより低い程度ではあるがリボ核酸(RNA)の形成を阻害する。DNAおよびRNAは細胞の分裂および増殖のために必須であるので、5-FUの作用は細胞死をもたらすチミジン欠乏を作り出すことであると考えられる。そこで、5-FUの作用は、転移癌の特徴である迅速に分裂する細胞内で見出される。
【0217】
c.抗腫瘍抗生物質
抗腫瘍抗生物質は、抗菌活性および細胞毒性活性の両方を有する。これらの薬物は、さらにまた酵素および有糸分裂を化学的に阻害する、または細胞膜を変化させることによってDNAも妨害する。これらの作用物質は、それらが細胞周期の全期において作用するので期特異的ではない。そこで、それらは、様々な癌に対して広汎に使用されている。抗腫瘍抗生物質の例には、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、およびイダルビシンが含まれ、それらの一部については以下でより詳細に考察する。腫瘍を治療するために臨床状況において広汎に使用されるこれらの化合物は、アドリアマイシンの21日間隔での静脈内ボーラス注射による25〜75mg/m
2からエトポシドの静脈内もしくは経口投与による35〜100mg/m
2までの用量範囲で投与される。
【0218】
d.有糸分裂阻害剤
有糸分裂阻害剤には、細胞分裂または有糸分裂のために必要とされるいずれかのタンパク質合成を阻害できる植物アルカロイドおよびその他の天然作用物質が含まれる。有糸分裂阻害剤は、細胞周期中の特定期中に作用する。有糸分裂阻害剤は、ドセタキセル、エトポシド(VP16)、パクリタキセル、タキソール、タキソテール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビンを含んでいる。
【0219】
e.ニトロソウレア
ニトロソウレアは、アルキル化剤と同様に、DNA修復タンパク質を阻害する。ニトロソウレアは、脳腫瘍に加えて、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫を治療するために使用される。例には、カルムスチンおよびロムスチンが含まれる。
【0220】
f.その他の作用物質
使用できるその他の作用物質には、ベバシズマブ(商標名Avastin(登録商標))、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、パニツムバブ(Vectibix(登録商標))、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、およびGleevec(登録商標)が含まれる。さらに、本発明においては、成長因子阻害剤および低分子キナーゼ阻害剤も同様に有用性を有する。Cancer:Principles and Practice of Oncology(7
th Ed.), 2004, and Clinical Oncology(3
rd Ed., 2004)に記載された全ての療法は、参照により本明細書に組み入れられる。以下の追加の療法も同様に含まれている。
【0221】
免疫療法薬は、一般に、癌細胞を標的として破壊するための免疫エフェクター細胞および分子の使用に依存している。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上の一部のマーカーに対して特異的な抗体であってよい。抗体単独は、療法のエフェクターとして機能できる、または実際に細胞殺滅を実施するために他の細胞を動員することができる。抗体は、さらにまた薬物もしくは毒素(化学療法薬、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に共役させて、単にターゲティング剤として機能することができる。または、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的のいずれかで相互作用する表面分子を運ぶリンパ球であってよい。様々なエフェクター細胞には、細胞毒性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0222】
そこで免疫療法は、p53遺伝子療法と結び付けて、併用療法の一部として使用できる。以下では、併用療法のための一般的アプローチについて考察する。一般に、腫瘍細胞は、ターゲティングに従順である、すなわち大多数の他の細胞上には存在しない一部のマーカーを有していなければならない。多数の腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれかは本発明の状況においてターゲティングするために適合する可能性がある。一般的腫瘍マーカーには、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、Sialyl Lewis抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erbBおよびp155が含まれる。さらに、p53自体が免疫療法標的であってよい。参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2005/0171045号を参照されたい。
【0223】
腫瘍壊死因子は、一部の種類の癌細胞を殺滅し、サイトカイン産生を活性化し、マクロファージおよび内皮細胞を活性化し、コラーゲンおよびコラゲナーゼの産生を促進し、炎症メディエータ、さらに敗血症性ショックのメディエータであり、そして異化作用、発熱および活動停止を促進する。一部の感染性物質は、TNF産生の刺激を通して腫瘍寛解を引き起こす。TNFは、単独で有効量で使用された場合は極めて毒性である可能性があるので、最適レジメンは、おそらく他の薬物と併用して低用量でTNFを使用する。その免疫抑制作用は、γインターフェロンによって増強されるので、その併用は潜在的に危険である。TNFとインターフェロン-αとの混成物もまた抗癌活性を有することが見出されている。
【0224】
癌の治療における本明細書に記載した方法による性ホルモンの使用。本明細書に記載した方法は特定の癌の治療に限定されないが、ホルモンのこの使用は、乳房、前立腺、および内膜(子宮の内面)の癌に関して利益を有している。これらのホルモンの例は、エストロゲン、抗エストロゲン、プロゲステロン、およびアンドロゲンである。
【0225】
コルチコステロイドホルモンは、一部のタイプの癌(リンパ腫、白血病および多発性骨髄腫)を治療する際に有用である。コルチコステロイドホルモンは、他の化学療法薬の有効性を増加させることができ、その結果として、併用療法において使用されることが多い。プレドニゾンおよびデキサメタゾンは、コルチコステロイドホルモンの例である。
【0226】
3.放射線療法
放射線治療(radiation therapy)とも呼ばれる放射線療法(radiotherapy)は、電離放射線を用いた癌およびその他の疾患の治療である。電離放射線は、遺伝物質を損傷させることにより治療される領域内で細胞を損傷もしくは破壊するエネルギーを堆積させ、これらの細胞が増殖し続けるのを不可能にする。放射線は癌細胞と正常細胞の両方を損傷させるが、後者は自然に修復して適正に機能することができる。放射線療法は、例えば皮膚、舌、喉頭、脳、乳房、または頸部の癌などの限局性充実性腫瘍を治療するために使用できる。放射線療法は、白血病およびリンパ腫(血液形成細胞およびリンパ系各々の癌)を治療するためにも使用できる。
【0227】
本発明によって使用される放射線療法には、γ線、X線の使用、および/または腫瘍細胞への放射性同位体の指向性送達が含まれるがそれらに限定されない。マイクロ波および紫外線照射などの、DNA損傷因子のその他の形態もまた企図されている。これらの因子の全部がDNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に広範囲の損傷を与える可能性が極めて高い。X線についての線量範囲は、長期間(3〜4週間)にわたる50〜200レントゲンの1日線量から2,000〜6,000レントゲンの1回線量に及ぶ。放射性同位体の線量範囲は広範囲に変動し、同位体の半減期、放出される放射線の強度およびタイプ、ならびに腫瘍細胞による取込みに依存する。
【0228】
放射線療法は、癌の部位へ放射線線量を直接的に送達するための放射標識抗体の使用を含むことができる(放射免疫療法)。抗体は、抗原(免疫系によって異物であると認識される物質)の存在に応答して身体が作成する高度に特異的なタンパク質である。一部の腫瘍細胞は、腫瘍特異的抗体の産生を誘発する特異的抗原を含有している。大量のこれらの抗体は、実験室で作成して放射活性物質に付着させる(放射標識として公知のプロセス)ことができる。身体内に注射されると、抗体は、放射線の細胞殺滅(細胞毒性)作用によって崩壊させられる癌細胞を能動的に探し出す。このアプローチは、健常細胞への放射線損傷を与えるリスクを最小限に抑える。
【0229】
原体照射療法は、通常の放射線治療と同一の放射線療法装置である線形加速器を使用するが、癌の形状に適合させるためにその形状を変化させるためにX線ビームの経路内に金属ブロックが配置される。これは、腫瘍により高い放射線線量が与えられることを保証する。健常な周囲細胞および隣接構造は低線量の放射線を受け取るので、副作用の可能性が減少する。多葉コリメーターと呼ばれる器械が開発されており、金属ブロックの代替物として使用できる。多葉コリメーターは、線形加速器に固定されている多数の金属シートから構成される。各層は、放射線療法ビームが金属ブロックの必要を伴わずに治療領域に合わせて成形できるように調整できる。放射線療法装置の正確なポジショニングは原体照射療法にとって極めて重要であり、特殊走査装置を使用すると、各治療の開始時に内臓の位置をチェックすることができる。
【0230】
高分解能強度調節放射線療法もまた多葉コリメーターを使用する。この治療中には、多葉コリメーターの層は、治療が行われている間に移動させられる。この方法は治療ビームの一層より正確な成形を達成する可能性が高く、全治療領域にわたって放射線療法の線量を一定にすることを可能にする。
【0231】
研究試験は原体照射療法および強度調節放射線療法が放射線療法の副作用を減少させられることを証明してきたが、治療領域を極めて正確に成形することは、破壊される治療領域のちょうど手前で微細癌細胞を停止させることができた可能性がある。これは、これらの特殊放射線療法技術を用いると、将来に癌が再発するリスクが高くなる可能性があることを意味している。定位固定放射線療法は、脳腫瘍を治療するために使用されている。この技術は、放射線療法を多数の様々な角度から方向付けるので、腫瘍に向かう線量は極めて高く、周囲健常組織に影響を及ぼす線量は極めて低い。治療前には、放射線療法が正確にターゲティングされることを保証するために数枚の走査画像がコンピュータによって分析され、放射線療法を受けている間は、患者の頭部は依然として特別に作成されたフレーム内に保持される。数回の放射線量が与えられる。
【0232】
脳およびその他の腫瘍に対する定位固定放射線療法(ガンマナイフ)はナイフを使用しないが、数百種類の角度からの極めて精密にターゲティングされたγ放射線のビームが使用される。約4〜5時間を要する1セッションの放射線療法しか必要とされない。この治療のためには、頭部に特殊作成の金属フレームが取り付けられる。治療が必要とされる正確な領域を見出すために、数回の走査およびX線検査が実施される。脳腫瘍に対する放射線療法中には、患者は、放射線療法ビームが通過できるように数百個の穴が開けられた大きなヘルメットを頭部に被って横たわる。関連アプローチは、身体の他の領域における腫瘍を治療するためのポジショニングを許容する。
【0233】
科学者らは、放射線療法の有効性を増加させるための方法をさらに探し続けている。現在は、2つのタイプの治験薬が放射線療法下の細胞に及ぼす作用について試験中である。放射線増感剤は、腫瘍細胞が損傷される可能性を高め、放射線保護剤は、正常組織を放射線の作用から保護する。熱の使用であるハイパーサーミアもまた、組織を放射線に敏感にさせることにおける有効性について現在試験中である。
【実施例】
【0234】
V. 実施例
以下の実施例は、本発明の様々な局面をさらに例示するために含まれている。当業者であれば、以下の実施例に開示した技術は、本発明の実施において良好に機能するために本発明者が見出した技術および/または組成物を示すものであり、そこでその実施のための好ましい様式を構成すると見なすべきであると理解すべきである。しかし当業者には、本開示を参考にすると、本発明の精神および範囲から逸脱せずに開示された特定の態様には多数の変更を加えられること、そしてそれでも同様もしくは類似の結果を得られると理解すべきである。
【0235】
実施例1 Advexin(登録商標)治療は承認された療法を用いて得られる全生存利益(Overall Survival Benefit)に勝っている
局所領域再発を有するSCCHN患者は、常に実質的な腫瘍関連病的状態を経験する。この患者集団において局所的進行の制御を獲得して機能を保持するための改良された治療の必要は、いくら強調してもし過ぎることはない。以前の放射線療法が不成功に終わり、切除不能であると見なされた患者においては、標準治療アプローチとして化学療法が容認されている。再発性腫瘍の治療の主要な目的は、症状の緩和である。
【0236】
再発性SCCHNの標準ケアには、下記の表でAdvexin(登録商標)と比較して要約した結果を備える数種の化学療法および標的化分子単剤療法レジメンが使用されてきた。Advexin(登録商標)および標準ケア療法についてのメジアン総生存期間は類似(約5〜6カ月間)であり、治療を行わない場合の歴史的メジアン生存期間(約3〜4カ月間)を超えている(Tarceva(登録商標)米国製品ラベル、Erbitux(登録商標)米国製品ラベル、2007)。
【0237】
(表1)SCCHN(ITT集団)を対象とする単剤療法試験におけるメジアン総生存期間
【0238】
重要なことに、Advexin(登録商標)の有効性を予測するp53バイオマーカープロファイルを備えるAdvexin(登録商標)治療患者の8.5カ月間のメジアン生存期間は、従来型治療の総生存期間(約5〜6カ月間)に勝っている。しかし、Advexin(登録商標)の有効性を予測するために予想されるバイオマーカープロファイルは、メトトレキセートの有効性を予測しなかった。さらに、Advexin(登録商標)は、腫瘍の病的状態を複雑化されることが多い標準治療に比較して優れた安全性プロファイルを有する。以下のセクションでは、Advexin(登録商標)のこれらの重要な利点について解明し、より詳細に記載する。
【0239】
実施例2 Advexin(登録商標)は標準療法に比較して優れた安全性プロファイルを有する
400例を超える患者における数千回の投与からまとめられた安全性データは、Advexin(登録商標)が極めて良好に忍容される抗癌治療であり、大多数の有害事象は本質的に局所的、自己限定性および/または対症療法で効果が得られることを証明している。副作用プロファイルは、有害事象は用量限定性であることが多く、潜在的にAdvexin(登録商標)療法を用いて観察される局所的で自己限定性であることが多い事象ではなくむしろ生命を脅かす続発症に発達する可能性がある全身性化学療法およびモノクローナル療法の副作用プロファイルとは相違する。Advexin(登録商標)は、男性と女性のどちらでも、そして広範囲の用量にわたって安全であることが証明された。Advexin(登録商標)有害事象プロファイルにおける臨床的有意差は、性別または年齢について認められなかった。
【0240】
Advexin(登録商標)関連性重篤有害事象率は、極めて低かった。Advexin(登録商標)を用いて治療されたSCCHN患者については、最も頻回に報告された有害事象は発熱であった(全SCCHN患者の2.9%)。第III相SCCHN試験で治療された患者については、Advexin(登録商標)関連性重篤有害事象は、呼吸困難(6.6%)および発熱(4.9%)を含んでいた。Advexin(登録商標)で治療されたSCCHN患者について最も頻回に報告されたグレード3もしくは4の事象は、因果関係とは関係なく、注射部位疼痛および一般的疼痛であった。第III相試験では、Advexin(登録商標)グレード3もしくは4の事象は、一般にAdvexin(登録商標)注射の局所投与に関連しており(注射部位疼痛)、これらの事象は自己限定性であることが多い、および/または注射前の部位内への予防的局所麻酔薬の浸潤、ならびに非ステロイド性抗炎症薬および店頭販売の鎮痛薬の使用で効果を得られる。Advexin(登録商標)治療患者についてのグレード3もしくは4の検査室検査の変化の発生率もまた低かった。全Advexin(登録商標)SCCHN試験で治療された患者の計49例(18.9%)が、ベースライン値からのグレード3もしくは4の検査室検査の変化を報告した。
【0241】
同一試験において、より多くのメトトレキセート患者がグレード3もしくは4の事象を報告したが、これらは全身性メトトレキセート投与と関連していた(口内炎、肺炎、白血球減少症)。メトトレキセート療法に関連する全身性有害事象は、潜在的に生命を脅かす続発症を引き起こす可能性があり、Advexin(登録商標)療法を用いて観察される局所的で自己限定性であることが多い事象より危険である。さらに、第III相SCCHN試験で治療されたメトトレキセート患者について予想されたように、同一試験においてAdvexin(登録商標)治療患者(19.2%)についてより高い発生率のグレード3もしくは4の検査室事象が見られた(39.5%)。これらの事象は、白血球減少症(メトトレキセート患者の12.1%)、好中球減少症(12.1%)およびリンパ球減少症(25.6%)を含んでいた。第III相試験でのメトトレキセート患者については、Advexin(登録商標)に比較して、より高い発生率の口内炎、悪心、肺炎、知覚異常、白血球減少症および好中球減少症が認められた。メトトレキセート療法に関連しているより高い比率の口内炎および悪心は、腫瘍の病的状態を複雑化させ、これらの患者についてのより不良な栄養摂取をもたらす可能性があり、メトトレキセート患者については第III相SCCHN試験で治療されたAdvexin(登録商標)患者についてより多くの体重減少が経時的に認められた。
【0242】
重要なことに、メトトレキセート療法の使用に関連することが公知である全身性有害事象および検査室検査異常は、潜在的にAdvexin(登録商標)療法を用いて観察される局所的で自己限定性であることが多い事象より危険であり、生命を脅かす続発症を引き起こす。これに関連して、Advexin(登録商標)治療に起因して死亡した患者はいなかったが、第III相再発性SCCHN試験では、白血球減少症に起因する1例の死亡原因はメトトレキセートに帰せられた。さらに、この試験のメトトレキセート群の患者は毒性のために用量を減量することが許容されたが、これはおそらくメトトレキセート患者についての個別の重篤有害事象の一層高い発生率を防止した。
【0243】
IT投与されたAdvexin(登録商標)は、局所性進行性乳癌、前立腺癌、結腸大腸癌(CRC)、または全身性非小細胞性肺癌(NSCLC)を含む「他の」腫瘍タイプを治療するために併用して与えられた場合に一般に投与される化学療法薬(ドセタキセル、ドキソルビシンもしくはシスプラチン)または放射線療法の毒性を増悪させなかった。Advexin(登録商標)と同時に放射線療法または化学療法を受けた患者について提供された安全性データは、Advexin(登録商標)が許容できる安全性プロファイルを備えてこれらの治療様式と併用できることを証明した。重要なことに、これらの一般に使用される作用物質の毒性の増悪は、Advexin(登録商標)と併用された場合には観察されなかった。
【0244】
結論として、極めて好適な臨床的安全性プロファイルは、再発性もしくは難治性SCCHNを備える患者にウイルス粒子2×10
12個の用量でIT投与された場合に高度に安全性で良好に忍容される療法であることを示している。Advexin(登録商標)有害事象は自己限定性であることが多い、および/または予防的局所麻酔薬治療ならびに非ステロイド性抗炎症薬および店頭販売の鎮痛薬の使用で効果が得られた。この良好に忍容される安全性プロファイルは、Advexin(登録商標)治療を用いて観察される局所的で自己限定性であることの多い事象よりも生命を脅かす続発症へ潜在的に発達する可能性がある従来型再発性SCCHN全身性療法に関連して公知である全身性有害事象とは対照的である。
【0245】
実施例3 Advexin(登録商標)応答者は承認された治療に難治性である再発性SCCHN患者において統計的有意に増加した生存期間を有する
腫瘍増殖制御応答は、Advexin(登録商標)療法後に、統計的に有意に増加した生存期間と相関している
Lara et al.(2008)の所見と一致して、T301およびT201両方の主試験のITT集団におけるAdvexin(登録商標)療法は、他の療法に難治性であった再発性SCCHN患者における非応答者に比較して腫瘍増殖制御(CR+PR+SD)応答を備える患者について高度に有意に増加した生存期間を生じさせた。
【0246】
Advexin(登録商標)第3相T301主試験では、非応答者に比較してTGC応答を備える患者について生存期間の統計的有意な増加が見られた(メジアン生存期間:TGC応答者の7.6カ月間対非応答者の2.9カ月間;p=0.0002)。これらの結果は、
図5におけるカプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)分析に示した。
【0247】
Advexin(登録商標)T201主試験でも類似の結果が観察され、非応答者に比較してTGC応答を備える患者について生存期間の統計的有意な増加が同様に見られた(メジアン生存期間:TGC応答者の6.7カ月間対非応答者の3.6カ月間;p=0.0269)。これらの結果は、
図6におけるカプラン・マイヤー分析に示した。
【0248】
175例のAdvexin(登録商標)治療患者から構成された結合T301およびT201主臨床試験ITT患者集団における維持の分析は、非応答者に比較してTGC応答者について生存期間の高度に統計的有意な増加を明らかにした(メジアン生存期間:TGC応答者の7.0カ月間対非応答者の3.0カ月間; p<0.0001)。これらの所見は、
図7におけるカプラン・マイヤー分析に示した。
【0249】
表2は、これらの分析の結果を要約したものであり、第3相T301主試験においてメトトレキセートで治療された患者についての対応するデータを提供している。メトトレキセート治療患者はさらに、非応答者(3.8カ月間)に比較してTGC応答者についてのメジアン生存期間の増加(7.5カ月間)も示したが、この差は対数順位分析によると統計的有意ではなかった(p=0.1560)。これらのデータは、Advexin(登録商標)療法後にTGC応答を達成した患者についての統計的有意な延命効果を明白に示している。この重要な有効性の結果は、代替治療選択肢が限られている後期の再発性SCCHN患者におけるAdvexin(登録商標)療法の2件の独立無作為割付け対照試験において高い統計的有意性を伴って証明された。
【0250】
(表2)Advexin(登録商標)を用いて治療された再発性SCCHN-ITT集団における腫瘍増殖制御と生存期間との相関
【0251】
増加した生存期間とChoi基準(2007)によって規定された腫瘍応答(腫瘍サイズの≧10%の減少)との相関についての分析はさらに、175例のAdvexin(登録商標)治療患者から構成される結合T301およびT201主臨床試験ITT患者集団における非応答者と比較した応答者についての高度に統計的有意な生存期間の増加を証明した(メジアン生存期間:≧10%の腫瘍減少を示した応答者の11.2カ月間対非応答者の5.1カ月間、p=0.0010)。これらの所見は、
図8におけるカプラン・マイヤー分析に示した。
【0252】
腫瘍応答の従来型の定義(腫瘍サイズの≧50%の減少)はさらに、結合T301およびT201主臨床試験ITT(N=175)Advexin(登録商標)治療患者において非応答者に比較して応答者については生存期間の高度に有意な増加もまた証明した。>50%の腫瘍減少を備える応答者についてのメジアン生存期間は、非応答者については5.8カ月間であったのに対して41.0カ月間であった(p=0.0049)(
図9)。
【0253】
表3に示したように、>10%および>50%の腫瘍減少によって規定される腫瘍応答間の類似の相関は、さらにまたメトトレキセートを用いて治療されたITT集団についても観察された。TGC応答を示した患者のパーセンテージは、Advexin(登録商標)およびメトトレキセート治療集団の両方について類似であった(Advexin(登録商標)=60.0%対メトトレキセート=53.3%)。それらの公知の作用機序から予測されるように、より高い比率のAdvexin(登録商標)集団におけるTGC応答者が細胞周期停止/老化応答を有したが、メトトレキセート集団は腫瘍サイズの減少を伴うより高い比率のアポトーシス応答を有していた。興味深いことに、腫瘍サイズにおける≧50%の減少を生じさせたアポトーシス性腫瘍応答を示したAdvexin(登録商標)治療患者は、腫瘍サイズの類似の減少を生じたメトトレキセート治療患者についての14.4カ月間に比較して41.0カ月間の顕著なメジアン生存期間を有していた。
【0254】
(表3)再発性SCCHN-ITT集団における腫瘍応答と生存期間との相関
【0255】
これらをまとめると、これらのデータは再発性SCCHNを備える患者においてAdvexin(登録商標)とメトトレキセートの両方についての有効性の実質的証拠を提供している。様々な基準によって規定される両方の薬剤に対する腫瘍応答は、非応答者に比較して応答患者について統計的有意に増加した生存期間を明白に証明している。このため再発性SCCHNにおいては特発性寛解は発生せず、これらの集団において観察された腫瘍サイズにおける減少はこれらの治療薬に起因していた。Lara et al.(2007)およびChoi et al.(2007)によって証明された重要な原理と一致して、腫瘍増殖制御または腫瘍サイズの≧10%の減少によって規定される両方の薬物に対する腫瘍応答は、従来型の≧50%の腫瘍サイズ減少基準に比較して増加した生存期間の高感受性の予測因子であった。
【0256】
再発性SCCHN患者の満たされていない医学的必要に関して、有効性を備える追加の薬剤を同定することは、現行療法を用いた治療の失敗はほぼ普遍的であるので、重要であることに気付くことは重要である。これらの薬剤間の相対有効性の比較は、これらの薬剤が投与される順序に大きな影響を及ぼす可能性がある二次的問題である。療法のための薬剤選択において重要な追加の因子は、潜在的に毒性であり、Advexin(登録商標)の安全性プロファイルは伝統的療法に比較して利点を有することが明白に証明されてきた。再発性SCCHN患者のために最も適切な療法を選択する際のまた別の決定因子は、利用できる治療の治療有効性を予測できるバイオマーカーである。以下で記載するように、Advexin(登録商標)の有効性を予測し、Advexin(登録商標)およびメトトレキセートから利益が得られる患者を示すp53バイオマーカープロファイルは、相違する分子プロファイルを有している。これらの所見は、Advexin(登録商標)およびメトトレキセートを用いた個別患者治療を誘導するために重要な意味を有している。
【0257】
実施例4 Advexin(登録商標)の作用機序に基づくバイオマーカーはAdvexin(登録商標)の有効性を予測し、増加した腫瘍応答および生存期間を伴うAdvexin(登録商標)治療から利益がえられる可能性が最も高い患者を同定するが、他の治療の有効性は予測しない
FDA(米国食品医薬品局)のクリティカル・パス・イニシアチブおよび米国保健社会福祉省の腫瘍学バイオマーカー資格認定イニシアチブは、新規治療の最も適切な適用を誘導して薬物承認を促進するために、治療有効性を予測する新規な臨床的および分子的バイオマーカーの同定を奨励してきた。これらのイニシアチブの追求は、この報告書に記載されている頭頸部の再発性扁平上皮癌においてAdvexin(登録商標)の有効性を予測するp53バイオマーカープロファイルの同定を生じさせた。
【0258】
Advexin(登録商標)の有効性を予測するバイオマーカープロファイルは、配列分析によって評価されるp53遺伝子配置および免疫組織化学的に決定されるそれらのタンパク質発現のレベルに基づいている。これらのp53バイオマーカー評価は、Clayman et al.(1998)によって実施および報告されたSCCHN患者における第1相Advexin(登録商標)臨床試験INT-002の結果に最初に記載され、引き続いて主臨床試験プロトコルおよび統計的分析計画に組み入れられた。Advexin(登録商標)の有効性を予測するp53プロファイルは、以下に記載する腫瘍p53不活性化およびAdvexin(登録商標)についての公知のメカニズムと一致している。
【0259】
図9は、腫瘍p53不活性化およびp53遺伝子シーケンシングの2つの主要なメカニズムならびにこれらの様々なタイプのp53異常と関連している免疫組織化学的プロファイルを図示している。遺伝子突然変異によるp53の不活性化には変異p53遺伝子配列と関連しており、これは免疫組織化学的に決定されるような高レベルまたは低レベルのいずれかで発現する可能性がある異常なp53タンパク質を生じさせる(
図10、左のパネル)。または、p53がp53阻害剤であるmdm-2もしくはmdm-4のアップレギュレーションによって不活性化される場合は(
図10、右のパネル)、p53遺伝子配列は野生型であり、生じる正常p53タンパク質は免疫組織化学的に検出されるように高レベルまたは低レベルのいずれかで発現させることができる。
【0260】
Advexin(登録商標)の有効性に好適なp53バイオマーカープロファイル
野生型p53配列を備える腫瘍では、p53は、典型的にはp53阻害剤であるmdm-2および/またはmdm-4のアップレギュレーションによって不活性化される(Valentin-Vega et al., 2007)。これらの所見は、Advexin(登録商標)主試験における再発性SCCHN患者について、mdm-2および/またはmdm-4いずれかのアップレギュレーションもまた有する93%(27/29例(評価対象患者))が野生型p53遺伝子配列を有することが確証されている。野生型p53配列を備えるp53バイオマーカープロファイルは、Clayman et al.(1998)によってAdvexin(登録商標)の有効性にとって好適であることが見出された。
図11にグラフ表示したように、Advexin(登録商標)によって送達される正常p53と腫瘍によって生成される内因性野生型p53は、mdm-2/mdm-4の阻害を克服するために十分である。
【0261】
腫瘍p53不活性化のまた別の主要なメカニズムは、p53機能の消失を生じさせるp53遺伝子の突然変異を通してである。
図12に示したように、圧倒的大部分のp53突然変異(>80%)は、p53分子のDNA結合ドメイン内で発生する。
【0262】
機能的p53は、それらの四量体化領域を通して結合される4つの正常p53分子の組み合わせを必要とする四量体である。この四量体は、通常はDNAに結合し、引き続いて腫瘍抑制に対して責任を担う他の遺伝子の発現を調節する。以下の
図13に示したように、DNA結合ドメイン内に突然変異を備えるp53は、これらの四量体がDNAに結合できないため機能的ではない。
【0263】
免疫組織化学検査による変異p53配列を備えるp53バイオマーカープロファイルおよび低レベルp53タンパク質発現(≦50%の陽性腫瘍細胞)は、Advexin(登録商標)の有効性にとって好適であることが見出された。以下の
図14に図示したように、腫瘍が変異p53の低レベル発現を有する場合は、Advexin(登録商標)は機能的四量体を形成してp53腫瘍抑制を回復するために十分な正常p53を提供することができる。
【0264】
Advexin(登録商標)の有効性に不適なp53バイオマーカープロファイル
対照的に、免疫組織化学検査(>50%の陽性腫瘍細胞)によって変異p53配列を備えるp53バイオマーカープロファイルおよび高レベルp53タンパク質発現は、Advexin(登録商標)の有効性にとって不適である。この観察は、これらのバイオマーカープロファイルとAdvexin(登録商標)によって送達された正常p53を阻害することが公知であるDNA結合ドメイン突然変異を備えるp53タンパク質の高レベル発現のドミナント・ネガティブ作用との関連と一致している。
図15に示したように、DNA結合ドメイン内に突然変異を備えるp53は、正常および変異p53分子の混合物である非機能的ヘテロ四量体の形成を通して正常p53を阻害できる。これは、それらが高レベルで発現した場合にDNA結合ドメイン内のp53突然変異の「ドミナント・ネガティブ」作用の根拠である(免疫組織化学検査により>50%の陽性腫瘍細胞)。
【0265】
そこで、Advexin(登録商標)によって送達される正常p53は、DNA結合ドメイン内で変異p53タンパク質の高レベル発現を伴って腫瘍内で阻害される。DNA結合ドメインにおけるp53配列突然変異および免疫組織学検査による高p53タンパク質レベルによって特徴付けられる「ドミナント・ネガティブ」p53バイオマーカープロファイルは、Advexin(登録商標)の有効性に対して不適であると予測される。
【0266】
これらをまとめると、野生型p53遺伝子配置の存在およびドミナント・ネガティブp53突然変異の高レベルタンパク質発現の非存在は、Advexin(登録商標)の有効性を予測すると予想される。これらの好適および不適なp53バイオマーカープロファイルは、上記で考察したようなAdvexin(登録商標)作用および腫瘍p53不活性化の公知のメカニズムと一致している。表4は、併用p53シーケンシングおよび免疫組織化学的評価によって規定されたAdvexin(登録商標)の有効性にとって好適および不適なp53バイオマーカープロファイルの特徴を要約している。関連するp53タンパク質の性質ならびにAdvexin(登録商標)の有効性およびp53不活性化のメカニズムについても列挙した。
【0267】
(表4)Advexin(登録商標)の有効性にとって好適および不適なp53バイオマーカープロファイルの特性
【0268】
Advexin(登録商標)の作用機序は、p53機能の回復を標的としており、Advexin(登録商標)の有効性を予測するp53バイオマーカープロファイルは、主試験データ分析において増加した腫瘍応答および生存期間を示す患者を同定することが証明された。Advexin(登録商標)の有効性を予測するバイオマーカープロファイルは、配列分析によって評価されるp53遺伝子配置および免疫組織化学的に決定されるそれらのタンパク質発現のレベルの評価に基づいていた。野生型p53遺伝子配置の存在およびドミナント・ネガティブp53突然変異の高レベルタンパク質発現の非存在は、Advexin(登録商標)の有効性を予測した。
図16は、p53配列および免疫組織化学的評価に基づいてこれらの好適および不適なp53プロファイルを示している。
【0269】
約75%の再発性SCCHN患者は、Advexin(登録商標)の有効性にとって好適なp53バイオマーカープロファイルを有するが、25%は不適なプロファイルを有する。上述したように、Advexin(登録商標)で治療された患者においては腫瘍応答と増加した生存期間との統計的有意な関連が存在する。腫瘍p53不活性化および上述したAdvexin(登録商標)の有効性の公知のメカニズムに基づいて、本発明者らは、好適なp53バイオマーカープロファイルを備える患者は不適なp53プロファイルを備える患者に比較してTGC応答との統計的に有意な関連および増加したメジアン生存期間を示すと予測する。これらは正確に、以下に記載するように極めて高い統計的有意性を備えて観察された結果である。
【0270】
重要なことに、これらのp53バイオマーカープロファイルは、メトトレキセート療法後の転帰を予測しなかったので、これは任意の治療形態にとっての単なる予後マーカーではなかったことを示している。さらに、Advexin(登録商標)およびメトトレキセート療法から利益が得られる患者の分子プロファイルは、相違していて相補的であり、これらの薬剤を用いて再発性SCCHN患者の療法を誘導するために重要な意味を有することが見出された。
【0271】
Advexin(登録商標)の有効性についてのp53バイオマーカープロファイルは再発性SCCHNにおける腫瘍増殖制御を予測する
図5に示したように、Advexin(登録商標)の有効性にとって好適なp53プロファイルとAdvexin(登録商標)治療後のTGC応答との間には高度に統計的有意な相関が見られた。Advexin(登録商標)の有効性にとって好適なp53プロファイルを備える極めて高比率のAdvexin(登録商標)治療患者は、Advexin(登録商標)の有効性にとって不適なプロファイルを備えるたった25%の患者と比較して(79%)のTGC応答を有していた(p=0.004;フィッシャー(Fisher)の精密検定による)。
【0272】
(表5)Advexin(登録商標)の有効性についてのp53バイオマーカープロファイルは再発性SCCHN癌における腫瘍増殖制御を予測する
【0273】
Advexin(登録商標)およびメトトレキセートに対するTGC応答者におけるp53突然変異状態の比較は、相違する集団の再発性SCCHN患者における有益な作用を示すそれらの分子的特徴における差を明らかにした。表6に示したように、メトトレキセートTGC応答者には変異p53に関連していたが、より高率の野生型p53プロファイルを有する傾向を示したAdvexin(登録商標)応答者については反対のことが観察された。
【0274】
(表6)腫瘍増殖制御はAdvexin(登録商標)およびメトトレキセート(MTX)治療後の相違する患者集団において発生する
【0275】
Advexin(登録商標)の有効性にとって好適および不適なp53プロファイルは、再発性SCCHNにおけるAdvexin(登録商標)余命効果を予測するがメトトレキセートの有効性は予測しない
図17に示したように、T301第3相主試験のp53バイオマーカー分析は、不適なプロファイルを備える患者に比較して、Advexin(登録商標)の有効性にとって好適なp53プロファイルを備える患者についてのAdvexin(登録商標)療法後の統計的有意に増加した生存期間を明らかにした(メジアン生存期間;7.2対2.7カ月間;対数順位検定、p<0.0001)。
【0276】
類似の結果は、
図18に示したようにT201およびT301主試験からのバイオマーカー生存期間データを結合した場合に得られた。結合T301およびT201主試験のp53バイオマーカー分析は、不適なプロファイルを備える患者に比較して、Advexin(登録商標)の有効性にとって好適なp53プロファイルを備える患者についてのAdvexin(登録商標)療法後の統計的有意に増加した生存期間を明らかにした(メジアン生存期間;8.5対2.8カ月間;対数順位検定、p<0.0017)。これらの所見は、これらのp53バイオマーカープロファイルはAdvexin(登録商標)療法から利益が得られる可能性が最も高い患者を予測できることを示している。これらの好適および不適なp53バイオマーカープロファイルは、上記で考察したAdvexin(登録商標)作用および腫瘍p53不活性化の公知のメカニズムと一致している。
【0277】
重要なことに、これらのp53バイオマーカープロファイルは、
図19に示したように第3相T301主試験におけるメトトレキセートの有効性を予測しなかった。これらの結果は、Advexin(登録商標)の有効性の予測的p53バイオマーカープロファイルは、任意の療法の転帰を予測する単なる一般的予後プロファイルではなく、むしろAdvexin(登録商標)転帰に対して特異的であったことを示している。この結果は、これらの予測的バイオマーカーがp53不活性化およびAdvexin(登録商標)の有効性の公知のメカニズムに基づいて開発されたので、驚くべきことではない。
【0278】
Advexin(登録商標)およびメトトレキセート療法を用いた再発性SCCHN患者を管理するためのp53バイオマーカープロファイルの意味
これらのp53バイオマーカー分析の結果は、シスプラチンおよびタキサン類に難治性である、Advexin(登録商標)およびメトトレキセートを用いた再発性SCCHN患者の管理にとって重要な意味を有している。
図20に示したように、Advexin(登録商標)の有効性にとって好適または不適であったプロファイルに基づいてAdvexin(登録商標)またはメトトレキセートを用いて治療された患者について対数順位分析(p=0.0003)による生存期間転帰において高度に統計的有意差が見られた。
【0279】
これらの集団についてのメジアン生存期間の範囲はAdvexin(登録商標)で治療されたAdvexin(登録商標)の有効性を予測するプロファイルを備える患者についての7.2カ月間からAdvexin(登録商標)治療を受けたAdvexin(登録商標)の有効性にとって不適なプロファイルを備える患者についてのたった2.7カ月間に及んだ。中間メジアン生存期間は、メトトレキセートを用いて治療されたAdvexin(登録商標)の有効性にとって好適および不適なプロファイルを備える患者について観察された(各々、4.3および6.0カ月間)。上述したように、Advexin(登録商標)の有効性を予測するp53プロファイルに基づくと、メトトレキセート治療患者についてのメジアン生存期間には統計的差は見られなかった。
【0280】
そこで、上記で精査した有効性および安全性データは、シスプラチンおよびタキサン類に難治性である、Advexin(登録商標)の有効性にとって好適であるp53プロファイルを備える再発性SCCHN患者の治療に対するAdvexin(登録商標)の使用を支持している。Advexin(登録商標)治療後にTGC応答を備える再発性SCCHN患者は統計的有意に増加した生存期間を有しており、Advexin(登録商標)を予測するp53バイオマーカープロファイルは高い統計的有意性を備えてTGC応答と関連している。さらに、Advexin(登録商標)に対して好適であるp53バイオマーカープロファイルを備える患者は、Advexin(登録商標)治療に応答して不適なp53プロファイルに比較して統計的有意に増加した生存期間を有している。これらのバイオマーカーはメトトレキセートの有効性を予測せず、Advexin(登録商標)およびメトトレキセートが再発性SCCHNの相補的小集団においてTGCおよび増加した生存期間を提供することを示している。メトトレキセートに比較したAdvexin(登録商標)の優れた安全性プロファイルは、さらにAdvexin(登録商標)の有効性にとって好適なp53プロファイルを備える再発性SCCHN患者を治療するためのAdvexin(登録商標)の選択を支持している。
【0281】
これとは逆に、同一データ分析は、Advexin(登録商標)の有効性にとって不適なp53バイオマーカープロファイルを備える患者がAdvexin(登録商標)治療から利益を得られる可能性は極めて低いこと、そしてこれらの患者には代替療法を検討すべきであることを示している。
図21は、メトトレキセートがAdvexin(登録商標)の有効性にとって不適なp53バイオマーカープロファイルを備える患者においては有効であり、Advexin(登録商標)に対して不適なp53プロファイルを備える患者についてはAdvexin(登録商標)療法に比較してメトトレキセート後には統計的有意に増加した生存期間が得られることを示している(メジアン生存期間:6.0対2.7カ月間;対数順位検定、p=0.0112)。
【0282】
この結果は、メトトレキサート応答者が変異p53プロファイルと関連しており、Advexin(登録商標)応答者が野生型p53表現型と関連していることを示している、上述したAdvexin(登録商標)およびメトトレキセートへのTGC応答者のp53分子プロファイルにおける差と一致している。総合すると、腫瘍応答、生存期間およびp53バイオマーカー分析は、Advexin(登録商標)およびメトトレキセートの両方がシスプラチンおよびタキサン類に難治性である再発性SCCHN患者における有効性の実質的な証拠を証明しており、Advexin(登録商標)もしくはメトトレキセートを用いた適切な治療をAdvexin(登録商標)の有効性にとって好適および不適なp53バイオマーカープロファイルの決定によって誘導できることを示している。
【0283】
本明細書に開示および要求した組成物および/または方法の全部は、本開示に照らすと過度の実験を行わずに作成して実行することができる。本発明の組成物および方法を特定の態様に関して記載してきたが、当業者には、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱せずに本明細書に記載した方法の工程または工程の順序における組成物および/または方法に変更を加えられることは明白である。より具体的には、化学的および生理学的療法に関連する所定の物質は、同一もしくは類似の結果を達成しながら、本明細書に記載した物質と置換できることは明白である。当業者には明白な全てのそのような類似の置換物および修飾は、添付の特許請求の範囲に規定されるように、本発明の精神、範囲および概念の中に含まれると見なされる。
【0284】
VI.参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に記載したものを捕捉する例示的な方法的またはその他の詳細を提供する程度まで、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。