(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業者自らの手で測定器を把持する方法や、把持用工具で把持する方法を採用した場合、作業者の負担が高く、疲労の原因にもなる。また、この疲労のために作業者に手の震えやブレが生じ、この振動が測定器に伝達されて、測定精度に影響を与えるおそれもある。また、前述の吸盤等の取付補助具を用いる場合において、取付対象物が取付相手から外れてしまったときの落下を防止しなければならない。
【0006】
よって、測定器などの取付対象物を取付相手に取り付けようとする際に確実に取付対象物を保持することができ、取付後においては作業者等からの外力が取付対象物に伝達されにくいことが望まれる。また、取付補助具を用いているにもかかわらず取付対象物が取付相手から外れてしまった場合には、取付対象物が落下しないようにすることが望まれる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、取付対象物を取付相手に取り付けようとする際に確実に取付対象物を保持することができ、取付後においては作業者等からの外力が取付対象物に伝達されにくいようにすることができる一方、取付対象物が取付相手から外れてしまった場合には、取付対象物が落下しないようにする取付対象物取付治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するため、本発明は、取付対象物取付治具であって、一端側に取付対象物が保持される棒状部材と、前記棒状部材の他端側を軸方向に挿入可能な筒状部材と、を備え、前記棒状部材の前記他端の前記筒状部材に挿入される部分には、前記棒状部材の軸に交差する方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記筒状部材の前記棒状部材が挿入される側の端部には、前記貫通孔を挿通する挿通部材が設けられ、前記貫通孔は、前記挿通部材の太さよりも広い開口を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の取付対象物取付治具によれば、取付対象物を取付相手に取り付ける際には、棒状部材を筒状部材に挿入した状態とすることで、筒状部材に対する棒状部材の移動が拘束される。これにより、筒状部材を把持する作業者により確実に取付対象物を取付相手に接触させることができる。また、取付対象物を取付相手に取り付けた後においては、棒状部材から筒状部材を引き抜くことで、棒状部材に対する筒状部材の拘束を解除することができる。このとき、貫通孔は挿通部材の太さよりも広い開口を有することから、被挿入部材の変位を棒状部材に伝達しにくくすることができる。また、このような状況下で、仮に、取付対象物が取付相手から外れた場合であっても、挿通部材が貫通孔に挿通していることから、棒状部材は被挿入部材に連結されたままである。よって、棒状部材に固定された取付対象物が落下するのを防止することができる。
【0010】
すなわち、取付対象物を取付相手に取り付けようとする際に確実に取付対象物を保持することができ、取付後においては作業者等からの外力が取付対象物に伝達されにくくすることができる一方、取付対象物が取付相手から外れてしまった場合には、取付対象物が落下しないようにする取付対象物取付治具を提供することができる。
【0011】
前述の取付対象物取付治具において、前記筒状部材の前記棒状部材が挿入される側の端部には、前記筒状部材の軸方向に突出する少なくとも2つの突出部を有し、前記挿通部材は、前記突出部間に掛け渡され、前記貫通孔を挿通することが好ましい。
【0012】
このようにすることで、挿通部材は突出部により筒状部材から突出することになるので、貫通孔に対する挿通部材の移動の自由度を高めることができる。また、より大きく棒状部材から筒状部材を引き抜いた状態でも両者の連結状態を維持することができる。そして、作業者が筒状部材の位置をより大きく変位させてしまう場合であっても棒状部材にその変位による外力を伝達しにくくすることができる。
【0013】
前述の取付対象物取付治具において、前記貫通孔は、前記棒状部材の軸に交差する方向に貫通する第1貫通孔であって、前記棒状部材の軸方向に長い第1貫通孔と、前記棒状部材の軸に交差する方向に貫通し、前記棒状部材の前記他端側から前記第1貫通孔に接続する第2貫通孔であって、前記第1貫通孔の孔幅よりも広い孔幅を有する第2貫通孔と、を備え、前記棒状部材を前記筒状部材に挿入するときにおいて、前記第1貫通孔は前記挿通部材を前記棒状部材の軸方向に案内することが好ましい。
【0014】
このようにすることで、棒状部材を筒状部材に挿入するときにおいて、第1貫通孔に挿通部材が通りその移動経路を案内することにより、棒状部材をより容易に筒状部材に挿入することができる。また、第2貫通孔は第1貫通孔よりも広い孔幅を有することから、筒状部材が棒状部材から引き抜かれているときにおいて、第2貫通孔において挿通部材を接触しにくくすることができる。そして、作業者が被挿入部材の位置をより大きく変位させてしまう場合であっても棒状部材にその変位による外力を伝達しにくくすることができる。
【0015】
前述の取付対象物取付治具において、前記貫通孔において、前記第1貫通孔の孔幅から前記第2貫通孔の孔幅に遷移するための傾斜部を有することが好ましい。
【0016】
このようにすることで、挿通部材が第2貫通孔から第1貫通孔に移動する際に、傾斜部を摺動することができるので、挿通部材の移動を行いやすくすることができる。これにより、第1貫通孔に挿通部材が通りやすくなるため、棒状部材をより容易に被挿入部材に挿入することができる。
【0017】
前述の取付対象物取付治具において、前記棒状部材の前記他端の外形形状は半球形状を有することが好ましい。
【0018】
このように、端部の外形形状が半球形状であるので、棒状部材が外筒部材に対して挿通部材を軸として回転する場合において、棒状部材の挿入される側の端部が筒状部材の端部に掛かりにくくすることができる。そのため、作業者が筒状部材の位置について挿通部材を軸として回転させるような変位を生じさせた場合であっても、棒状部材にその変位による外力を伝達しにくくすることができる。
【0019】
前述の取付対象物取付治具において、前記棒状部材の前記他端の外周形状及び前記筒状部材の前記棒状部材が挿入される端部の外周形状は、ともに円筒形状を有することが好ましい。
【0020】
このようにすることで、円筒形状の棒状部材が円筒形状の筒状部材に挿入されることになるので、挿入の際において長手方向を軸とした回転を若干ながら許容することができる。そして、挿入をより容易にし、作業性を向上させることができる。
【0021】
前述の取付対象物取付治具において、前記棒状部材の前記一端側に自在継手が取り付けられ、前記棒状部材は前記自在継手を介して前記取付対象物を保持することが好ましい。
【0022】
このようにすることで、自在継手によって棒状部材と取付対象物との間の角度を可変にすることができるので、取付対象物を所定の角度に傾けた状態で取付相手に取り付けることができる。
【0023】
前述の取付対象物取付治具において、前記被挿入部材にグリップを設けることが好ましい。
【0024】
このようにすることで、作業者は被挿入部材を把持しやすくなるため、作業性を向上させることができる。
【0025】
前述の取付対象物取付治具において、前記筒状部材に当該筒状部材の長手方向に長さを延長する棒状工具を設けることを特徴とすることとしてもよい。
【0026】
このようにすることで、作業者から取付相手が離れている場合においても、取付対象物を取付相手に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、取付対象物を取付相手に取り付ける際には、棒状部材を被挿入部材に挿入した状態とすることで、被挿入部材に対する棒状部材の移動が拘束される。これにより、被挿入部材を把持する作業者により確実に取付対象物を取付相手に接触させることができる。また、取付対象物を取付相手に取り付けた後においては、棒状部材から被挿入部材を引き抜くことで、棒状部材に対する被挿入部材の拘束を解除することができる。このとき、貫通孔は挿通部材の太さよりも広い開口を有することから、被挿入部材の変位を棒状部材に伝達しにくくすることができる。また、このような状況下で、仮に、取付対象物が取付相手から外れた場合であっても、挿通部材が貫通孔に挿通していることから、棒状部材は被挿入部材に連結されたままである。よって、棒状部材に固定された取付対象物が落下するのを防止することができる。すなわち、取付対象物を取付相手に取り付けようとする際に確実に取付対象物を保持することができ、取付後においては作業者等からの外力が取付対象物に伝達されにくくすることができる一方、取付対象物が取付相手から外れてしまった場合には、取付対象物が落下しないようにする取付対象物取付治具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、心棒11が外筒12に挿入された状態における測定器取付治具1の正面図である。
図2は、心棒11が外筒12から引き出された状態における測定器取付治具1の正面図である。以下、これらの図を参照しつつ、測定器取付治具1(取付対象物取付治具に相当)の構成について説明する。
【0030】
測定器取付治具1は、心棒11(棒状部材に相当)と、外筒12(筒状部材に相当)と、心棒側継手部材13と、グリップ15と、連結ピン121(挿通部材に相当)を備える。
【0031】
心棒11は、円筒形状の部材である。心棒11は、外筒12に挿入する挿入端11aと、後述する測定器200が取り付けられる非挿入端11bを有する。心棒11の非挿入端11b側には、測定器200を固定するための心棒側継手部材13が設けられる。また、心棒11の挿入端11a側は、その先端外形が半球形状を有するように形成される。心棒11と心棒側継手部材13は、一体として射出成形することができる。
【0032】
また、心棒11には、直径方向に貫通する貫通孔111が設けられる。貫通孔111は、連結ピン摺動溝111aと遊び空間111bを有する。連結ピン摺動溝111aは、心棒11の軸方向に長い貫通孔であって、連結ピン121の直径よりもわずかに大きい程度の孔幅(すなわち、連結ピン121が摺動移動可能な程度の孔幅)を有する貫通孔である。また、遊び空間111bは、連結ピン摺動溝111aの幅よりも広い孔幅を有し、心棒11の挿入端11a側から連結ピン摺動溝111aに接続する貫通孔である。遊び空間111bは、連結ピン121の直径よりも十分に広い開口を有する。
【0033】
連結ピン摺動溝111aと遊び空間111bは、互いにその孔幅が異なることから、連結ピン摺動溝111aの孔幅から遊び空間111bの孔幅に遷移するための傾斜部113を有する。そして、心棒11を外筒12に挿入するときにおいて、連結ピン摺動溝111aは、連結ピン121を心棒11の軸方向に案内する。
【0034】
外筒12は、その内部を中空とした円筒形状の部材である。外筒12は、心棒11が挿入される被挿入端12aと、グリップ15が取り付けられるグリップ端12bを有する。外筒12の被挿入端12aには、外筒12の軸方向に突出する突出部124が対向して2つ設けられる。
【0035】
突出部124は、略三角形状を有しており、その三角形状のほぼ中心に貫通孔を有する。そして、これらの突出部124に掛け渡されるように連結ピン121としてのボルトが貫通孔と座金123を挿通し、ナット122に螺合される。連結ピン121は、心棒11における貫通孔111を挿通する。なお、本実施形態において突出部124は略三角形状としたが、形状はこれに限られず、半円形状であったり台形形状であってもよい。
【0036】
また、心棒11において、挿入端11aの先端から遊び空間111bの縁までの距離が短く構成されている。また、突出部124により連結ピン121を外筒12の被挿入端12aよりも突出した位置に設けることを可能としている。このため、心棒11から外筒12が引き抜かれた状態において、心棒11の挿入端11aが外筒12の被挿入端12aに接触しにくい構成となっている。
【0037】
外筒12は、外筒側継手部材14を備える。外筒12と外筒側継手部材14は、一体として射出成形することができる。また、グリップ15は、グリップ側継手部材151を備える。グリップ側継手部材151は、外筒側継手部材14の凹形状部分に嵌合する。グリップ側継手部材151及び外筒側継手部材14は、図の左右方向に貫通する不図示の貫通孔を有し、この貫通孔を連結ボルト141が挿通する。そして、連結ボルト141が座金143にも挿通し、ナット142に螺合されることにより、グリップ15は外筒12に固定される。このようにグリップ15を有することにより、作業者は測定器取付治具1を把持しやすくなるため、作業性を向上させることができる。
【0038】
図3は、測定器取付治具1における遊び空間111bの第1説明図である。
図4は、測定器取付治具1における遊び空間111bの第2説明図である。
図5は、測定器取付治具1における遊び空間111bの第3説明図である。
【0039】
図3から
図5には、心棒11と、外筒12の一部と、連結ピン121と、ナット122と、心棒側継手部材13が示されている。また、心棒11においては、連結ピン摺動溝111aと遊び空間111bが示されている。また、
図3から
図5は、いずれも心棒11から外筒12が引き抜かれた状態を示している。
【0040】
遊び空間111bは、
図3から
図5に示されるように、連結ピン121に対して十分に広い開口を有している。このため、
図3に示されるように連結ピン121が遊び空間111bの中央部よりも若干下側を挿通している状態においては当然に連結ピン121が遊び空間111bの縁には接触しにくい。
【0041】
また、前述のように、心棒の挿入端11aの先端から遊び空間111bの縁までの距離が短く、かつ、前述のように突出部124により連結ピン121が外筒12の被挿入端12aよりも突出した位置に設けられている。また、心棒11に遊び空間111bがあるため外筒12の力が伝わりにくい。そして、連結ピン121を軸として外筒12を回転させるような変位を生じさせた場合であっても、心棒11にその変位による外力を伝達しにくくすることができる。
【0042】
また、
図4及び
図5に示されるように、外筒12が心棒11の軸回りに若干の回転角を有した状態でも、遊び空間111b内で連結ピン121が移動できるので、連結ピン121が遊び空間111bの縁に接触することなく、外筒12は心棒11に対して比較的自由に軸回りに回転することができる。そして、外筒12からの外力を心棒11に伝達しにくくすることができる。
【0043】
図6は、遊び空間が設けられていない参考例の心棒の説明図である。
図6には、参考例における心棒1011と外筒1012が示されている。また、外筒1012に掛け渡された連結ピン1121と、連結ピン1121を外筒1012に固定するナット1122が示されている。
【0044】
参考例の心棒1011は、本実施形態における遊び空間のような広い開口を有しておらず、貫通孔111の縁で必ず連結ピン1121が接触してしまう。すなわち、作業者が把持する外筒1012の位置がブレた場合に、連結ピン1121が心棒1011の内側に接触し、作業者からの外力が心棒1011に伝わってしまう。
【0045】
これに対し、本実施形態における測定器取付治具1であれば、上述の通り、大きな遊び空間111bを有するので、心棒11から外筒12を引き抜いた状態において、連結ピン121は遊び空間111bの縁に接触しないようにすることができる。すなわち、作業者からの外力が心棒11に伝わりにくくすることができる。
【0046】
図7は、測定器200を測定器取付治具1に固定する様子の説明図である。なお、同図に示す状態では、心棒11は外筒12に挿入されている。本実施形態における測定器200は、測定器取付治具1を用いて気中開閉器300(
図8を参照。取付相手に相当)に取り付けられる。気中開閉器300は、電柱等に固定される開閉器であるが、外面の腐食等によりその内部に雨水の浸水が発生する場合がある。そのため、測定器200は、気中開閉器300内の浸水量を推定するためデータを取得することに用いられる。
【0047】
前述のように、気中開閉器300は主に電柱に取り付けられ、また仮に浸水している場合に底部に水が溜まることから、測定器200は気中開閉器300の底面に取り付けられることになる。そのため、本実施形態における測定器200は、その上面側に温度を測定するための温度センサー220と、加熱するためのヒーター230を備える。また、測定器200は、その上面側に気中開閉器300に吸着するための真空ポンプ付吸盤210を備える。そして、ヒーター230により気中開閉器300を加熱し、そのときの温度上昇を測定する。そして、その測定値に基づいて浸水量が推定される。
【0048】
測定器200は、その底面側に本実施形態における測定器取付治具1に固定されるための測定器側継手部材201を備える。
図7に示されるように、測定器側継手部材201の嵌合部201aの形状は、心棒側継手部材13の嵌合部13aの形状と一致している。このため、
図7の図中奥側から図中手前側に向かって測定器側継手部材201を心棒側継手部材13を摺動移動させることにより、測定器側継手部材201の嵌合部201aが心棒側継手部材13の嵌合部13aに嵌合した状態となり、図中左右方向における移動を拘束する。
【0049】
また、測定器側継手部材101及び心棒側継手部材13には、
図7の図中左右方向にそれぞれの中心軸が一致する貫通孔201b、13bが形成されている。そのため、連結ボルト131を貫通孔201b、13b及び座金133に挿通し、ナット132と螺合することにより、確実に、測定器側継手部材101を心棒側継手部材13に固定することができる。そして、測定器200と心棒11を確実に固定することができる。
【0050】
図8は、測定器200を気中開閉器300に接触させる様子の説明図である。上記のようにして測定器200が測定器取付治具1に固定されると、作業者はグリップ15を把持して上方に移動させることにより測定器200を測定対象300に接触させることができる。
【0051】
このとき、心棒11は自重及び測定器200の重量により外筒12内に挿入される。そして、心棒11の半径方向の移動は外筒12により拘束される。そのため、外筒12を単に上方に移動させることで測定器200を安全に上方に移動させることができる。そして、測定器200の上面を確実に気中開閉器300の下面に接触させることができる。
【0052】
測定器200が気中開閉器300に接触させられると、真空ポンプ付吸盤210において真空ポンプが作動される。すると真空ポンプ付吸盤210が気中開閉器300の底面に吸着するため、測定器200は気中開閉器300の底面に固定される。また、このとき、温度センサー220とヒーター230も気中開閉器300の底面に接触する。このようにすることにより、ヒーター230により気中開閉器300の底面を加熱して、このときの温度変化を温度センサー220で測定することができる。
【0053】
図9は、測定器200の取付後の説明図である。上記のようにして、測定器200が気中開閉器300の底面に固定されると、外筒12を下方に引き下ろして心棒11が外筒12から引き出された状態とすることができる。このように、測定器200が気中開閉器に吸着してしまえば、測定器200を支える必要がないため作業者の負担が軽減される。
【0054】
また、外筒12を引き下げて心棒11が外筒12から引き出された状態とすることで、心棒11に対する外筒12の拘束を解除することができる。前述のように、心棒11の遊び空間111bは、連結ピン121よりも広い開口を有することから、遊び空間111bの縁に連結ピン121が接触しにくいため、外筒12の変位を心棒11に伝達しにくくすることができる。そのため、作業者が外筒12を多少動かした場合であっても、測定装置200には外筒の変位に伴う力はほとんど作用しない。
【0055】
図10は、測定器200の取付後における外筒12の自由度の説明図である。前述の
図9のように外筒12を引き抜いた後において、
図10に示すように外筒12を心棒11に対して傾けるようにその位置を変更することができる。
【0056】
このような動きが可能なのは、前述のように、心棒の挿入端11aの先端から遊び空間111bの縁までの距離が短く、かつ、前述のように突出部124により連結ピン121が外筒12の被挿入端12aよりも突出した位置に設けられているためである。このように構成することにより、心棒11から外筒12が引き抜かれた状態において、心棒11の挿入端11aを外筒12の被挿入端12aに接触しにくくすることができる。
【0057】
このように、外筒12を心棒11に対して傾けることが可能であるので、グリップ15を介して外筒12を把持する作業者は、測定器200の取付後において比較的自由に外筒12の位置を移動させることができる。そのため、作業者は同じ位置でグリップ15を把持し続けなくてもよいため、その負担を軽減することができる。
【0058】
また、心棒11の挿入端11aの先端部が半球形状を有するので、心棒11が外筒12に対して連結ピン121を軸として回転する場合において、心棒11の挿入端11aが外筒12の被挿入端12aに引っかかりにくい。そのため、連結ピン121を軸として作業者が外筒12を回転させるような変位を生じさせた場合であっても、心棒11にその変位による外力を伝達しにくくすることができる。
【0059】
以上のように測定器200を気中開閉器300に取り付けた後、測定が終了すると、測定器200の取り外しを行う。取り外しを行うに際には、外筒12に心棒11を挿入するように外筒12を持ち上げる。そして、心棒11の半径方向の動きを拘束する。
【0060】
このとき、心棒11は連結ピン摺動溝111aを備えるので、連結ピン摺動溝111aに連結ピン121が通り、その移動経路を案内することにより、心棒11をより容易に外筒12に挿入することができる。さらに、心棒11は傾斜部113を備えるので、連結ピン121が遊び空間111bから連結ピン摺動溝111aに移動する際に傾斜部113を摺動することができる。これにより、連結ピン摺動溝111aに連結ピン121を案内しやすくなるため、心棒11をより容易に外筒12に挿入することができる。
【0061】
また、遊び空間111bは連結ピン121よりも広い開口を有しているので、心棒11の挿入を行う際において、心棒11と外筒12は互いに中心軸回りに若干の回転を許容することができる。そして、心棒11の挿入をより容易にし、作業性を向上させることができる。
【0062】
図11は、測定器200が気中開閉器300から外れてしまったときの説明図である。前述の
図10の状態において、吸盤210の劣化等を原因として吸着力が低下し、測定器200が気中開閉器300の底面から外れてしまう場合が考えられる。このような場合であっても、連結ピン121が貫通孔111に挿通されているので、心棒11は外筒12に連結されたままである。よって、作業者がグリップ15を把持している限り、心棒11に固定された測定器200が落下するのを防止することができる。
【0063】
以上のように、本実施形態における測定器取付治具1によれば、測定器200のような取付対象物を気中開閉器300のような取付相手に取り付ける際には、心棒11が外筒12に挿入されることで、外筒12に対して心棒11の半径方向の移動が拘束される。これにより、外筒12を把持する作業者により確実に取付対象物を取付相手に接触させることができる。
【0064】
また、取付対象物を取付相手に取り付けた後においては、外筒12を下方に引き下ろして心棒11が外筒12から引き出された状態とすることで、心棒11に対する外筒12の拘束を解除することができる。このとき、遊び空間111bは、連結ピン121の直径よりも広い開口を有することから、遊び空間111bの縁に連結ピン121が接触しにくい。そのため、外筒12の変位を心棒11に伝達しにくくすることができる。
【0065】
また、このような状況下で、仮に、取付対象物が取付相手から外れた場合であっても、連結ピン121が遊び空間111bに挿通していることから、心棒11は外筒12に連結されたままである。よって、心棒11に固定された取付対象物が落下するのを防止することができる。
【0066】
図12は、自在継手20を用いて測定器200を上方の気中開閉器300に接触させるときの説明図である。前述の実施形態では、測定器200と心棒11は、心棒側継手部材13と測定器側継手部材201によってその位置を固定されていた。この場合、測定器200の取付方向に向かうように作業者がグリップ15を把持しなければならず、例えば、狭い場所などの作業性の悪い環境においては、測定器200の取り付けを行いにくい場合もある。
【0067】
これに対し、
図12に示すように、心棒11の非挿入端11b側に自在継手20を取り付け、この自在継手20を介して測定器200と連結することもできる。自在継手20は、測定器200と心棒11の接合する角度を自由に変化させることができる。このため、例えば
図12に示すように、心棒11の軸方向と測定器200の取付方向が一致しない場合であっても、測定器200を気中開閉器300に取り付けることができる。そして、作業者の作業性を高めることができる。
【0068】
図13は、自在継手20を用いて測定器200を斜めに接触させるときの説明図である。前述のように、自在継手20によって、心棒11と外筒12との間の角度を可変とすることができるので、心棒の軸方向が上方を向いた状態で測定器取付治具1を把持して、斜めの壁面に測定器200を取り付けることができる。
【0069】
図14は、自在継手20を用いて測定器200を横方向に接触させるときの説明図である。前述のように、自在継手20によって、心棒11と外筒12との間の角度を可変とすることができるので、測定器取付治具1を斜めに把持した状態で、側壁に測定器200を取り付けることもできる。
【0070】
以上のように、本実施形態における測定器取付治具1を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、測定器200において加速度センサーを設けることとして、測定対象物の振動を測定することとしてもよい。このように、加速度センサーを用いて振動を測定する場合においても、本実施形態における測定器取付治具1であれば、作業者の振動を測定器200に伝達しにくいので、精度の高い測定を行うことができる。
【0071】
図15は、継手16の説明図である。前述の実施形態では、心棒側継手部材13を介して心棒11と測定器200とが固定されていたが、継手16を用いてこれらを固定することもできる。また、前述の実施形態では、外筒側継手部材14を外筒12とグリップ15との間に挟んで両者が固定されていたが、継手16のみを介してこれらを固定することもできる。
【0072】
図15には、心棒11と外筒12と継手16が示されている。継手16は、継手凸部材161と継手凹部材162と締め付け部材163を備える。継手凸部材161及び締め付け部材163は、心棒11及びグリップ15に設けられる。一方、継手凹部材162は、測定器200及び外筒12に設けられる。
【0073】
継手凸部材161は、円筒状の部材であって、その側面には突起161aが設けられる。継手凸部材161の根本側には締め付け部材163が設けられる。継手凸部材161の根本側外周と締め付け部材163の内周はともに螺刻されており、締め付け部材163を回転させることによって、締め付け部材163は継手凸部材161の長手方向に移動可能である。
【0074】
継手凹部材162は、その内部が中空の円筒状の部材であって、継手凸部材161を長手方向に挿入可能である。また、継手凹部材162には、継手凸部材161が継手凹部材162に挿入されると突起161が通過可能な溝部162aが設けられている。溝部162は、突起161が継手凹部材162の長手方向に進入し、その経路がJ字状に折り返すことが可能な形状となっている。
【0075】
図16は、継手16の固定方法の説明図である。固定過程において、最初に継手凸部材161が継手凹部材162の中空部に挿入される。このとき、突起161aも溝部162aを通る(
図16B)。次に、継手凸部材161が軸回りに回転される(
図16C)。そして、突起161aが溝部162aのJ字状溝端に嵌め込まれる。その後、締め付け部材163を回転させて、継手凸部材161と継手凹部材162とが固定される。
【0076】
また、真空ポンプ付吸盤210により取付相手に吸着することとして説明を行ったが、取付相手に吸着する方法としてはこれに限られず、磁石の磁力を利用して吸着することとしてもよい。
【0077】
また、本実施形態において、取付対象物取付治具の一形態として測定器取付治具1を説明したが、取付対象物は測定器200に限られず、測定器200以外のものについても取付相手に取付対象物を取り付ける際に用いることができる。
【0078】
また、心棒11と外筒12をともにその外周形状を円筒状形状として説明したが、心棒11を外筒12内に挿入可能であって、外筒12によって心棒11の幅方向の移動を拘束することができれば、多角柱形状を有するものとしてもよい。
【0079】
また、貫通孔111が連結ピン摺動溝111aと遊び空間111bを有するものとして説明したが、貫通孔111の形状はこれに限られず、遊び空間111bのような広い開口を1つ有することとしてもよい。
【0080】
また、心棒側継手部材13を用いて測定器200と心棒11とを連結することとしたが、連結方法はこれに限られない。アタッチメントを用いて取付対象物を容易に交換可能な機構としてもよい。
【0081】
また、本実施形態では円筒状のグリップ15を外筒12の下部に両者の中心軸をほぼ同一にして設けることとしたが、外筒12下部においてその中心軸と直交するようなグリップを設けるなどとしてもよい。また、グリップ15をより長い棒状工具とすることもできる。そして、作業者から取付相手が離れている場合においても、取付対象物を取付対象に取り付けることができる。
【0082】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。