【文献】
Atsushi Ueda and Tsutomu Ohzuku,Solid-State Redix Reactions of LiNi1/2Co1/2O2(R3m) for 4 Volt Secondary Lithium Cells,J. Electrochem. Soc.,米国,The Electrochemical Society, Inc.,1994年 8月31日,Vol.141(No.8),Page 2010-2014
【文献】
小槻 勉・吉森 秀樹・永山 雅敏・沢井 圭二郎・平井 竹次,4ボルト級リチウム二次電池用正極材料LiMeO2(Me=Ni,Ni/Co,Co)の合成とキャラクタリゼーション,Journal of the Ceramic Society of Japan,日本,日本セラミックス協会,1992年 3月31日,Vol.100(No.3),page 346-349
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非水電解質が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γブチルラクトン、γバレロラクトン、メチルジグライム、スルフォラン、トリメチルホスフェイト、トリエチルホスフェイト、メトキシメチルエチルカーボネート及びフッ素化エチレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1記載の非水電解質二次電池の充放電方法。
前記イオン性液体のカチオンが、イミダゾリウム、ピリジニウム、フォスフォニウム、アンモニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム及びイソウロニウムよりなる群から選択される請求項3記載の非水電解質二次電池の充放電方法。
前記イオン性液体のアニオンが、ハロゲン、サルフェイト、サルフォネイト、アミド、イミド、メタン、ボレイト、フォスフェイト、アンチモネイト、デカネイト及びコバルトテトラカルボニルよりなる群から選択される請求項3または4記載の非水電解質二次電池の充放電方法。
前記セパレータがポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、アラミド樹脂及びポリブチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1種で構成されている請求項6記載の非水電解質二次電池の充放電方法。
【背景技術】
【0002】
自動車用のスタータには鉛蓄電池が使用されている。また、鉛蓄電池は、各種の産業用
・業務用のバックアップ電源として広く使用されている。現在、このバックアップ電源に
用いられている鉛蓄電池を、ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池に置き換えよう
とする動きが盛んである。この主な理由は、鉛蓄電池より高エネルギー密度の電池に置き
換えることによって電源を小型化したいという要望や、環境負荷の観点から、鉛を使用し
ている電池に替えてクリーンな電池を用いたいという要望が存在する点にある。
自動車に使用されている鉛蓄電池に関しては、大きな代替への動きはない。しかし、環
境負荷の観点からは、クリーンな電池に代替することが望ましい。また、自動車での使用
を考えると、ニッケル水素電池より軽量化で優位なリチウムイオン電池に代替させること
も望ましいと考えられる。以上のことから、現在鉛蓄電池が使用されている自動車やバッ
クアップ電源の分野において、リチウムイオン電池に代替させることが将来必要になって
くる。
【0003】
移動体通信機器や携帯電子機器の主電源として利用されているリチウムイオン電池は、
高い起電力及び高エネルギー密度を有するという特長をもつ。ここで用いられる正極活物
質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)
、マンガンスピネル(LiMn
2O
4)、及びこれらの混合物等がある。これらの正極活物
質は、リチウムに対し4V以上の電圧を有している。
また、負極には一般的にカーボン材料が使用され、前述の正極と組み合わせることで4
V級のリチウムイオン電池が構成されている。鉛蓄電池の代替を考慮すると、同じ電圧を
有するリチウムイオン電池や、複数個を直列につないだ場合に6の倍数の電圧を有するリ
チウムイオン電池が望まれる。この意味からは4V級の電池は適さない。2Vか3Vの電
圧を持ったリチウムイオン電池が代替としては都合が良いことになる。電圧を低下させる
手段としては様々考えられるが、本発明はチタン酸化物を負極に使用することを特徴とす
るため、この系に絞って従来の技術を説明する。
【0004】
特許文献1には、スピネル型構造のリチウム−チタン酸化物(Li
4/3Ti
5/3O
4)を
活物質として含む負極と、Li
2MnO
3またはLiMnO
2を活物質として含む正極と、
非水電解液とからなる非水電解液リチウム二次電池が開示されている。しかし、実質の放
電電圧が1.6V付近であり、2V電池としては低い。
また、特許文献2には、スピネル型構造のリチウム−チタン酸化物を負極の活物質とし
て用い、スピネル型構造のリチウム−マンガン酸化物Li
4/3Mn
5/3O
4を含有する活物
質を正極に用いる非水電解液二次電池が開示されている。この電池系は、2.5V付近の
電圧を有し、2V電池としては少し高い電圧を有するが、好ましい電圧であるかもしれな
い。しかし、スピネル型のリチウムマンガン酸化物からはMnが溶出し、保存による劣化
やサイクル寿命が低いという問題は本質的に解決されていない。
【0005】
特許文献3には、正極活物質にコバルト酸リチウム(LiCoO
2)を用い、負極活物
質にLi
4/3Ti
5/3O
4のチタン酸リチウムを用いた電池が開示されている。この電池系
も電池電圧は好ましいが、Co金属を多く使用するのでコストアップになる。また、後述
するが、LiCoO
2は充放電に伴って体積膨張・収縮を繰り返すため、結晶格子の破壊
が進みやすく長期の信頼性の面で問題が生じることが予想される。
特許文献4には、正極活物質としてLiA
xB
1-xO
2(AおよびBは金属元素Co、N
i、Mn、Fe、V、AlまたはTi)で表現されるリチウム遷移金属酸化物を用い、負
極活物質としてLi
4/3Ti
5/3O
4で表されるリチウムチタン酸化物を用い、リチウム遷
移金属酸化物の実容量に対する前記リチウムチタン酸化物の実容量の比率を0.5以下と
したリチウム二次電池が開示されている。特許文献4記載の発明は、主に正負極の容量バ
ランスに着目した電池設計に関わるもので、後述するような個々の材料の特徴を生かした
組み合わせの必要性に関して記述はない。
【0006】
特許文献5には、負極にスピネル型リチウムチタン酸化物であるチタンイオン欠損型の
Li
4/3Ti
5/3O
4を用いる電池系において、カーボン、黒鉛、WO
2、Fe
2O
3、LiF
e
5O
8、SiO
2、SnOを添加することが開示されている。この発明は、耐過放電特性
や耐過充電特性を向上させることを目的としたもので、本発明とは構成も目的も異なる。
特許文献6には、Li
1+xM
yMn
2-x-yO
4-z(MはTi、V、Cr、Fe、Co、Ni
、Zn、Cu、W、Mg、Alのうち1種以上、0≦x≦0.2、0≦y<0.5、0≦
z<0.2)で表され、CuKα線を用いた粉末X線回折法による(400)回折ピーク
の半値幅が0.02θ以上0.1θ以下(θは回折角)であり、一次粒子の形状が八面体
をなすリチウムマンガン複合酸化物が正極活物質として開示されている。そして、この正
極活物質を含む正極と、Li
aTi
bO
4(0.5≦a≦3、1≦b≦2.5)で表される
リチウムチタン複合酸化物を負極活物質として含む負極とを備える電池が提案されている
。この電池系は3V以上の放電電圧を示し、本発明とに係る電池の電圧とは少し異なる。
【0007】
特許文献7には、Li
1-xA
xNi
1-yM
yO
2(Aは、Liを除くアルカリ金属、アルカ
リ土類金属から選ばれる1種以上;MはCo、Mn、Al、Cr、Fe、V、Ti、Ga
のうちから選ばれる1種以上;0≦x≦0.2;0.05≦y≦0.5)で表され、平均
粒径が0.5μm以上の一次粒子が凝集して二次粒子を形成しているリチウムニッケル複
合酸化物が正極活物質として開示されている。そして、この正極活物質を含む正極と、L
i
aTi
bO
4(0.5≦a≦3、1≦b≦2.5)で表されるリチウムチタン複合酸化物
を負極活物質として含む負極とを具備する電池が開示されている。この発明の目的は、安
価で、サイクル特性、特に高温保存化におけるサイクル特性、および高温保存特性の良好
なリチウム二次電池を提供することにある。
この目的のために、特許文献7記載の発明では、以下の2点に着目している。第1に、
この発明においては、正極活物質の一次粒子の平均粒径が0.5μ以上である必要がある
としている。この発想の根底に関しては、本文中にも、一次粒子は単結晶に近い粒子であ
り、繰り返される充放電に伴うリチウムの吸蔵・脱離による膨張・収縮、つまり体積変化
は避けることが困難であると記載されているように、本質的に避けられない体積変化があ
る。これを緩和するために一次粒子の粒径を大きくすることが提案されている。
【0008】
遷移金属種等の組成に関しては、結晶構造の六方晶系から単斜晶系への相変化を抑止す
る目的で、Co、MnやAl等を添加することが記載されているが、当時としては公知で
あり特別の技術ではない。さらに、Alを添加することで酸素の放出を伴う活物質の分解
反応を抑え、熱安定性の向上と同時に電子伝導性の向上を図るとの記載があるが、これも
同様に当時としては公知である。例えば、非特許文献1や、特許文献8には、LiNiO
2のNiの一部をCoに置換して結晶相の変化を抑制させることが記載されている。また
、非特許文献2や特許文献9には、Alを添加することで熱安定性を向上させることが記
載されている。
第2に、負極活物質にLi
aTi
bO
4(0.5≦a≦3、1≦b≦2.5)で示される
リチウムチタン酸化物を用いることが提案されている。これにより、還元電位がLi/L
i+に対して1.5Vであり、一般的に用いられている炭素材料に比べて高いために、非
水電解液の分解を抑制することができ、また、それに伴う反応性生物の負極表面への析出
・付着を抑制し、サイクル寿命を向上させると記載されている。しかし、電位が高いこと
は、前述したチタン酸化物の先行技術において明らかに示されており、この発明が新たに
提供するものではない。
【0009】
最後に、電池における正極と負極の組み合わせに関しても、特許文献7記載の組み合わ
せによって新たな効果が生み出されるとの記述は全くなく、正極および負極それぞれ単独
の効果が記載され、単なる効果の組み合わせが記載されているに過ぎず、従来技術から容
易に推測される事項である。また、負極の芯材としては、実施例で示されているように銅
が使用され、セパレータとしては薄い微多孔膜が使用され、電解液としては現在使用され
ている溶媒や溶質が開示されている。これらはすべて現在市販されているリチウム二次電
池に使用されているものや公知のものである。また、それらを特異的に選んで新たな効果
が発揮されるとの記述も全くない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1)本発明における活物質の合成
負極活物質として好適に用いることのできるスピネル構造を有するチタン酸化物は、L
i
4Ti
5O
12であれば、現在はすでに市販電池に搭載されているため、高品質のものを購
入することができる。また、リチウム化合物である炭酸リチウムまたは水酸化リチウム等
と、チタン源となる酸化チタンとを目的の材料組成になるように混合し、大気中または酸
素気流中等の酸化雰囲気で800℃〜1100℃ぐらいの温度で焼成することによって、
容易に合成することも可能である。
【0025】
正極活物質の合成に関して以下に記述する。Li
1±α[Me]O
2(0≦α<0.2、
MeはNiと、Mn、Fe、Co、Ti及びCuよりなる群から選択される少なくとも1
種とを含む遷移金属)の合成に関しては、所望する正極活物質を構成する元素を含む酸化
物、水酸化物および/または炭酸塩等を、所定の組成になるように混合し、焼成すること
で合成することが可能である。しかし、この場合は、各材料の粒径を同じに揃えること、
反応を均一にするために十分に混合することが必要になり、合成には高度な粉体技術を要
する。
【0026】
本発明においては、ニッケル、コバルトおよびマンガン等の遷移金属を、水溶液中で水
酸化物または炭酸塩として共沈させることで合成した正極活物質も用いることができる。
この場合、分散されにくいニッケルおよびマンガンが、あらかじめ均一に粒子内に分散さ
れるため、合成に関しては比較的容易である。後述する合成に関する例では、水酸化物と
して共晶させた材料を用いた。また、リチウム源としては水酸化リチウムを用いた。これ
らの材料を十分に混合した後に焼成するが、ペレット状に成型することでより確実に反応
をさせることもできる。
【0027】
ここで、αの値に関して説明する。αの値は粒子成長を制御するために変動させる要素
である。量論組成の1に対してαの値を小さくすると、合成時の粒子成長を抑制すること
ができ、表面積は増加傾向になる。逆にαの値を大きくすると、粒子成長を助長すること
ができる。したがって、通常、電池として求められる要求特性に応じて粒子を設計するが
、リチウムの組成比を変えることによって粒子の設計を制御することができる。αの値の
変動範囲は実質的には±0.2程度であり、これより変動幅が大きくなると本来の活物質
の機能に障害を与えることになる。
【0028】
正極活物質の電気化学測定をモデル的に行う場合には、以下のようにして電気化学測定
用のセルを作製して行った。すなわち、正極活物質80重量部、導電剤であるアセチレン
ブラック10重量部、及び結着剤であるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)10重量部を
混合し、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)で希釈し、得られた混合物をアルミフォ
イル製の集電体上に塗布した。塗布後の集電体を、真空中、60℃で30分間乾燥させた
後、15×20mm
2に切断し、さらに、真空中で150℃、14時間乾燥し、電極を得
た。得られた電極の厚みは120μm〜190μmにした。対極は、ステンレス鋼板上に
リチウム金属シートを圧着して得た。セパレータはポリエチレン製のポーラスフィルム、
電解液としてはEC(エチレンカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)を3対
7の体積比率で混合した溶媒に、1.0MでLiPF
6を溶解したものを用いた。このよ
うにして得た試験用の単セルの充放電を、0.17mA/cm
2の電流密度で所定の電圧
領域の間で繰り返した。
【0029】
(2)本発明に係る電池における電極の体積変化
充放電に伴う正極及び負極の膨張・収縮を抑えることが、電池の長寿命化という課題を
解決にとって大きな要素である。本発明の目的の1つは、充放電に伴う電極の体積膨張を
理論的にほぼゼロに抑えることができる電池系を提供することにある。
まず、負極活物質であるチタン酸化物の体積変化に関して記述する。
図1にLi
4Ti
5
O
12の充放電カーブを示した。
図1より、この材料はリチウム金属に対して1.55Vの
電位でほぼ完全に平坦な充放電カーブを示すことがわかる。充放電に伴うX線回折パター
ンの変化を
図2に示した。X線回折パターンのピークが、結晶系Fd3mで、全領域でa
=8.370±0.005の範囲に収まり、充放電領域において負極が理論的に全く体積
変化をしないことがわかる。
【0030】
図3及び4に、それぞれ正極活物質であるLi
1±xNi
1/2Co
1/2O
2(x≦0.1)
及びLi
1±xNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2(x≦0.1)の充放電カーブを示した。これら
材料は、よく知られたリチウムニッケル酸化物とほぼ同様の電位領域で充放電をし、リチ
ウム金属基準で約3.6Vの平均電圧を示す。したがって、
図1、3及び4から、チタン
酸化物とこれらニッケルリチウム酸化物との組み合わせによる電池系は、2Vの充放電電
位を有することが明らかにわかる。
また、
図5及び6に、同様にX線回折法から算出される充放電に伴う正極活物質の体積
変化を示した。この
図5及び6から、これら2種の正極活物質を用いた場合、前記単セル
は0〜200mAh/gの実使用領域で全く体積変化を起こさないことがわかる。
【0031】
我々は、このような種々の酸化物系における充放電での正極活物質の体積膨張を調べた
結果、正極活物質にニッケルとコバルト原子とが同比率で含まれている場合において、単
セルの体積変化がほぼゼロになることを突き止めた。また、Li
1±xNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2(x≦0.1)のように、ニッケル及びコバルト以外の元素が加わっても、同様に
体積膨張がゼロである。したがって、本発明における正極活物質において重要なことは、
少なくともニッケル原子とコバルト原子とが同比率で含まれることである。
【0032】
(3)粒子サイズ及び形態
図7及び8に正極活物質の粒子のSEM写真を示した。正極活物質はパウダー(粉体)
状であり、おおよそ0.1〜8μmの粒径を有する(一次)結晶粒子と、2〜30μmの
粒径を有する結晶粒子の二次粒子とで構成されていることがわかった。同様に、Li
4T
i
5O
12をSEMによってその粒子の形態を観察した結果、ほぼ0.6μm以下の一次粒
子が集合して平均粒系1μm程度の二次粒子を形成していることがわかった。本発明にお
いては前述した粉体物性の材料を用いた。
【0033】
(4)充電制御
本発明に係る電池は、自動車のアイドリングストップ用に使用する場合において、充電
制御の面で優位な特徴を備えている。このような用途の場合、通常、電池は満充電状態で
はなく約60%〜70%程度の充電状態に保っておく。この理由は、自動車の制動によっ
て回生充電を行うため、電池が満充電状態にあると過充電され易く不適であるからである
。一方、放電の場合は、定圧電源として機能することが望ましい。したがって、電池の充
放電圧は、充放電カーブにおいて、容量の60%程度までは2Vの平坦な電位を示し、そ
れより充電側の領域においては容量に応じて直線的に電圧が変化することが望ましい。充
電の制御は、電池の電圧によって行うのが一般的でかつ容易であるため、前記領域で直線
的に電圧が変化することで正確に電池の充電状態を把握できることになる。
【0034】
図9にLi
1±xNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2(x≦0.1)を用いた正極とLi
4Ti
5O
12を用いた負極の充放電カーブb及びaを示した。また、
図10に電池の充放電カーブを
示した。負極の充放電カーブaの形状は、全領域で完全に平坦であるため、正極の充放電
カーブbの形状がそのまま電池の電圧に相当する。
図9の充放電カーブbからわかるよう
に、上記正極を用いた場合の充放電カーブは全領域の約60%までは平坦な形状を示し、
それより充電が深くなるとほぼ直線的に電位が上昇していることがわかる。Li
1±xNi
1/2Co
1/2O
2を用いた場合にも、Li
1±xNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2を用いた場合ほど
顕著でないにしろ、同様の傾向が認められる。
【0035】
以上のことより、本発明に係る電池は、自動車のアイドリングストップ用等前述のよう
に充電制御して使用する用途において最適の電池系であることがわかる。このような用途
における正極活物質及び負極活物質の組み合わせは、本発明者らによる鋭意研究の成果見
出されたものであり、同様の観点からの研究について記述された先行特許や先行技術文献
は見当たらない。
【0036】
(5)正極及び負極の容量設計
電池の容量負荷設計を行う場合、正極または負極いずれかの容量を規制する。このよう
な正極または負極の容量規制は、使用される機器の用途や活物質材料の特徴等から、意図
的に設計されるものである。本発明の2V級の電池系としては、負極の容量を規制するこ
とがより好ましい。具体的には、正極活物質に対する負極活物質の割合を0.5以上1.
2未満とする。1.2とするのは、負極のグラムあたりの理論充放電容量が正極の理論充
放電容量を超えていることから、この容量差の部分を補正するためであり、実質的には負
極規制の電池系であると言える。
【0037】
負極規制の電池系がより好ましい理由は以下の点にある。正極の電位はリチウムに対し
て4V以上である。使用する電解液によっては耐酸化性に乏しい正極もあるため、正極の
電位をより高くすることで充電終了を行うことは電解液の安定性から不利である。また、
正極活物質からリチウム原子が完全に抜ききると、徐々に酸素を放出し、材料の劣化及び
電解液の酸化が引き起こされ、サイクル寿命や電池特性の劣化に繋がることが予想される
。
【0038】
(6)正極及び負極の集電体
現在市販されているリチウムイオン二次電池では、通常正極の集電体としてアルミニウ
ムが用いられ、負極の集電体として銅が用いられている。各極の電位を考慮し、耐食性に
優れた金属材料が使用されているのである。負極活物質としてリチウム含有チタン酸化物
を用いる技術に関する上記特許文献6及び7には、正極及び負極の集電体としてそれぞれ
アルミニウム及び銅を使用することが明記されている。
【0039】
本発明では、正極及び負極ともに、集電体の材料としてアルミニウムまたはアルミニウ
ム合金を用いることが好ましい。この理由を以下に説明する。まず、銅に対してアルミニ
ウムを使用することで、電池の軽量化を図ることができる同時にコストダウンも図ること
ができる。現在市販されている黒鉛を負極に用いた電池系では、電位がリチウム金属に対
して0.2V以下と低く、アルミニウムを集電体に使用することは不可能であった。これ
は、負極の黒鉛が充放電する電位よりも高い電位でアルミニウムがリチウムイオンと反応
を開始するためである。
【0040】
しかし、本発明の電池系では、負極の充放電電位が1.5Vと高いため、その電位以下
にならないと反応しないアルミニウムを使用することができることになる。また、銅を使
用する場合、深い放電等で負極の電位が上昇すると電解液中に銅イオンが溶出する。この
銅イオンが再充電によってリチウムの挿入反応よりも先に負極上に析出し、リチウムの挿
入反応を阻害する。この結果、リチウムは金属として負極表面上に針状結晶の形態で析出
する。これによって電池の安全性の低下や、サイクル寿命の低下が引き起こされる。一方
、アルミニウムを使用する場合は、金属イオンの溶出および再析出は起こらない。
【0041】
また、負極律速の電池を充電器に接続している際に当該充電器が故障した場合等は、前
記電池が過充電され、負極に過剰のリチウムが供給されることになる。このとき、負極の
集電体が銅であると、過剰のリチウム金属が針状結晶として負極上に析出することになる
。このような針状結晶のリチウム金属は電池の過充電安全性を低下させることになる。し
かし、アルミニウムはリチウムを十分に吸蔵する能力を有している。したがって、負極の
集電体にアルミニウムを使用した場合、過充電時にリチウム金属が負極上に析出すること
はなく、集電体にリチウムを吸蔵させることが可能である。このことは、集電体に一種の
安全機構の役割を担わせることで、結果として、電池の過充電安全性を低下させることは
ない。
【0042】
(7)セパレータ
一般的なLiCoO
2/炭素材料の組合せを用いた電池では、ほとんどポリエチレンま
たはプロピレンからなるポーラスフィルムがセパレータとして使用されている。このセパ
レータは、ポリマー材料を溶融押出しで成形し、2軸方向に延伸して薄型ポーラスフィル
ムとすることによって作製されるため、かなり高価である。このフィルムを必要とする主
な理由は以下のように考えられる。前記電池では負極に黒鉛を使用するため、電池の電位
が、ほぼリチウム金属が析出する電位に近いところまで下がる。このため、種々の不都合
が起こる。急激な充電や低温での充電によって黒鉛表面の一部にリチウムが微小に析出す
る場合がある。過度のフローティング充電等でコバルトや不純物金属が溶出し、これらが
負極上に析出する場合もあり、内部短絡の要因となる。このような現象を極力抑える目的
で、強度を有し孔径の小さなオレフィン系の微多孔膜が使用されている。
【0043】
また、充電器の故障等を想定した過充電時の安全性を確保するため、過充電時の電池温
度の上昇を抑えるシャットダウン機能をセパレータに持たせている。このシャットダウン
機能とは、一定温度(約135℃)になるとセパレータの微細孔が収縮しつぶれることで
、電極間に流れる電流を止める機能のことをいう。
以上の点から、従来のLiCoO
2/炭素材料の組合せを用いた電池では、セパレータ
として高価なポーラスフィルムが使用されてきた。ただし、前記セパレータの孔径が小さ
いため、前記セパレータはイオンの移動に対して抵抗となり、ハイレート特性が犠牲にな
っているという問題もあった。
【0044】
一方、本発明の電池系では、負極の電位が1.55Vと、リチウムが析出する電位とは
大きな差があるので、上述したような問題はほとんど起こらない。負極の集電体としてア
ルミニウムを用いると、リチウムが吸蔵されるため、過充電の場合等金属析出の問題は起
こらないのである。つまり、ポーラスフィルムが持っているような高精度のシャットダウ
ン機能は必要とされない。これらの理由から、本発明に係る電池においては、好ましくは
負極の集電体にアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることで、不織布のような細
孔径の大きなものを使用することが可能である。不織布は、比較的大きい孔径を有してお
り、さらに液保持量が多いため、得られる電池のレート特性、特にパルス特性を飛躍的に
改善することが可能になる。また、ポーラスフィルムのような高度で複雑な製造工程を必
要としないため、セパレータの選択の幅が広がると同時に安価である。0.1μm以上の
平均細孔径を有する不織布を用いるのが好ましい。
【0045】
本発明に係る電池への適用を考慮すると、セパレータを構成する材料としては、ポリエ
チレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらの混合物が好ましい
。ポリエチレン及びポリプロピレンは電解液に安定である。また、高温での強度が要求さ
れる場合はポリブチレンテレフタレート等を用いるのが好ましい。不織布を構成するこれ
ら材料の繊維の径は1〜3μm程度であるのが好ましく、加温したカレンダーロール処理
により繊維同士が部分的に融着させたもの等は、薄型化及び強度向上に効果的である。
【0046】
(8)非水電解液に関して
本発明に係る2V級の非水電解質二次電池における好ましい電解液について説明する。
電解液に使用される有機溶媒は電位窓を持っている。電位窓は耐酸化性及び還元性の尺度
であり、電位窓が広いほど安定な有機溶媒であることがいえる。一般的なLiCoO
2/
炭素材料の組合せを用いた非水二次電池においては、コバルトの充放電電位である4.5
V近傍までに対する耐酸化性と、黒鉛の充放電電位である0V近傍までに対する耐還元性
とが必要となる。なお、電位はリチウム金属基準である(以下、同様。)。
【0047】
したがって、これらの電位窓を満足できない有機溶媒は選択から除外されてきた。特に
負極に黒鉛を使用する際の耐還元性に関する問題から、ラクトン系の有機溶媒を使用する
ことは困難であった。また、プロピレンカーボネートも黒鉛の充放電時に同時に分解され
る等の理由で使用が困難であった。これらの溶媒は、安価である上に誘電率が大きいため
、電解質(溶質、塩)を十分に溶解させる能力を有し、さらに耐酸化性にも優れた有用な
溶媒である。同様の理由で、トリメチルフォスフェイト及びトリエチルフォスフェイトを
使用することも困難である。これらの溶媒は消火作用をもち安全性に優れた溶媒である。
【0048】
本発明に係る電池においては、上述のような材料を用いることによりこれらの有用な特
徴を持った溶媒をすべて使用することが可能である。本発明においては負極に黒鉛ではな
くLi
4Ti
5O
12(Li[Li
1/3Ti
5/3]O
4)を用いる。このことから、負極側の電
位は1.55Vに上がるため、溶媒に求められる耐還元性は飛躍的に緩和される。また、
黒鉛特有の充放電により、負極表面上で分解されてしまうようなプロピレンカーボネート
等の溶媒も、本発明においては極めて有効な溶媒として使用可能となる。
【0049】
一方、正極の電位は4.7V以上まで上がるが、これらの溶媒の耐酸化性は5V以上あ
ることからその使用に問題はない。また、耐酸化性に優れたスルフォラン、メチルジグラ
イム及びフッ素化エチレンカーボネート等も、本発明に係る電池には適した溶媒であると
考えられる。また、従来から使用されているDEC(ジメチルカーボネート)、MEC(
メチルエチルカーボネート)及びDMC(ジメチルカーボネート)等の溶媒も、粘性の高
い溶媒の希釈剤として使用することができる。
【0050】
特に、本発明ではエチレンカーボネート(EC)を必ずしも必要としないが、ECは誘
電率の大きい溶媒で液の安定性を考慮すると有用である。そこで、ECの水素をフッ素化
することで耐酸化性を向上させることができる。電池の高温保存時に、正極上でのEC分
解からと思われるCO
2ガスの抑制にフッ素化が有用であると考えられるが、負極に炭素
材を使用する場合にはこのフッ素化ECは還元分解され使用が困難であった。しかし、本
発明ではこれらの有用な溶媒を使用することができる。つまり、黒鉛を使用しないことで
、飛躍的に電解液の選択範囲を広げることができるのである。
なお、溶質は特に制約されるものはなく、従来から使用されているLiPF
6及びLi
BF
4をはじめ、有機アニオンのリチウム塩等も用いることができる。
【0051】
従来の電池においては、同様に炭素材料を負極に使用しているがために、単独で使用が
可能であれば非常に有益なイオン性液体を選定することが制限されたり、イオン性液体を
使用することが困難となっていた。本発明者らでは、これらイオン性液体の使用可能性に
ついても具体的に検討した。イオン性液体は単独で使用するのが安全性等の観点からは好
ましいが、粘性が高いものや、そのままでは固体のものもあり、従来の生産設備を用いて
電池を製造することを考慮した場合等は、前述した溶媒と混合して使用してもよい。混合
して使用する場合もその優位性はある程度確保することができる。
【0052】
イオン性液体としては、以下のものが挙げられる。カチオン種としては、1,2、及び
3置換されたイミダゾリウム、ピリジニウム、フォスフォニウム、アンモニウム、ピロリ
ジニウム、グアニジニウム及びイソウロニウム等が挙げられる。また、アニオン種として
は、ハロゲン、サルフェイト、アミド、イミド、メタン種、ボレイト、フォスフェイト、
アンチモネイト、デカネイト及びコバルトテトラカルボニル等が挙げられる。カチオン種
の構造を
図11及び12に示し、アニオン種の構造を
図13に示した。
【0053】
本発明では、特にトリメチルプロピルアンモニウムカチオンとトリフルオロメチルスル
フォニルイミドアニオンとの組み合わせによるイオン性液体と、1−エチル−3−メチル
イミダゾリウムカチオンとトリフルオロメチルイミドアニオンの組み合わせによるイオン
性液体とについて詳細に検討した。特に後者のイミダゾリウム系は、1V付近で還元分解
を起こし、炭素材料を使用する場合には使用が極めて困難なものである。さらに、これら
のイオン性液体と、エチレンカーボネート等を使用した従来の非水電解質とを混合して用
いた場合に関しても、得られる電池が同様に作動し、優位性を有することを確認した。
【0054】
(9)その他の構成部材
本発明に係る非水電解質二次電池を作製する場合に使用可能な他の構成材料に関して説
明する。
本発明における正極を作製するために用いる正極合剤中の導電剤は、構成された電池に
おいて化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛
(鱗片状黒鉛等)および人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェン
ブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラッ
ク等のカーボンブラック類、炭素繊維および金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン
、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等
の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、ならびにポリフェニレン誘導
体等の有機導電性材料等を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、または本発
明の効果を損なわない範囲で任意に混合して用いることができる。
これらのなかでも、人造黒鉛、アセチレンブラック、ニッケル粉末が特に好ましい。導
電剤の添加量は、特に限定されないが、正極合剤の1〜50重量%が好ましく、特に1〜
30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜15重量%が特に好ましい。
【0055】
本発明における正極合剤中の好ましい結着剤は、分解温度が300℃以上のポリマーで
ある。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE
)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチ
レン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)
、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリ
フルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂
)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオ
ロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロ
ロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプ
ロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体およびフッ化ビニリデン−パーフルオロメチ
ルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
これらは、それぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に混合して用
いることができる。特に、このなかで最も好ましいのはポリフッ化ビニリデン(PVDF
)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0056】
正極の集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であ
れば特に制限はない。集電体を構成する材料としては、例えばステンレス鋼、ニッケル、
アルミニウム、チタン、種々の合金および炭素等の他、アルミニウムやステンレス鋼の表
面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させた複合体等も用いることができる
。特に、上述のように、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。これらの材料
の表面を酸化しておくこともできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けても
よい。形状としては、電池の分野において採用されているものであってよく、例えば箔、
フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群およ
び不織布等が挙げられる。厚さは、特に限定されないが、1〜500μmのものが好まし
く用いられる。
【0057】
負極合剤中の導電剤は、正極合剤中の導電剤と同様に、構成された電池において、化学
変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に制限はない。負極の結着剤としては、正極
に使用できるもので記載した材料の加え、スチレンブタジエンゴム等のゴム系の結着剤も
使用することができる。
負極の集電体としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることが前述の理
由から特に好ましい。その他、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体
であれば特に制限はない。例えばステンレス鋼、ニッケル、銅、チタンおよび炭素等の他
、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンまたは銀で処理したもの、Al
−Cd合金等が用いられる。これらの材料の表面を酸化、あるいは表面処理により集電体
表面に凹凸を付けてもよい。形状は、上記正極の場合と同様に、例えば箔、フィルム、シ
ート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体および繊維群の成形体等が
用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが好ましく用いられる
。
【0058】
本発明における正極および負極は、正極活物質または負極材料を含む合剤層の他に、集
電体と合剤層の密着性、導電性、サイクル特性および充放電効率の改良等の目的で導入す
る下塗り層や合剤層の機械的保護や化学的保護の目的で導入する保護層等を有してもよい
。この下塗り層や保護層は、結着剤、導電剤粒子及び導電性を持たない粒子等を含むこと
ができる。
【0059】
非水電解質については前述のように選択範囲が広がることを述べたが、以下のような従
来よく知られた電解液を使用または混合することも当然に可能である。溶媒とその溶媒に
溶解したリチウム塩とから非水電解質は構成される。好ましい溶媒は、エステル単独、ま
たは混合したエステルである。なかでも、環状カーボネート、環状カルボン酸エステル、
非環状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル等が好ましい。さらには、環状カーボネ
ートと非環状カーボネートとを含む混合溶媒、環状カルボン酸エステルを含む混合溶媒、
環状カルボン酸エステルと環状カーボネートとを含む混合溶媒が好ましい。エステルには
、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレン
カーボネート(BC)およびビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート、ジメ
チルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネ
ート(EMC)およびジプロピルカーボネート(DPC)等の非環状カーボネート、ギ酸
メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、プロピオン酸メチル(MP)およびプロピオン酸
エチル(MA)等の脂肪族カルボン酸エステル、γ−ブチロラクトン(GBL)等の環状
カルボン酸エステル等が挙げられる。また、必要に応じて、脂肪族カルボン酸エステルを
含むものも好ましい。脂肪族カルボン酸エステルは溶媒重量全体の30%以下、より好ま
しくは20%以下の範囲で含むことが好ましい。
【0060】
これらの溶媒に溶解するリチウム塩としては、例えばLiClO
4、LiBF
4、LiP
F
6、LiAlCl
4、LiSbF
6、LiSCN、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、L
i(CF
3SO
2)
2、LiAsF
6、LiN(CF
3SO
2)
2、LiB
10Cl
10、低級脂肪
族カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiN(C
F
3SO
2)(C
2F
5SO
2)、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN
(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)等のイミド類を挙げることができる。これらは、使用す
る電解液等に、それぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わ
せて使用することができる。なかでも、特にLiPF
6を含ませることがより好ましい。
これら電解液を電池内に添加する量は、特に限定されないが、正極活物質や負極材料の量
や電池のサイズによって必要量用いればよい。リチウム塩の非水溶媒に対する溶解量は、
特に限定されないが、0.2〜2mol/リットルが好ましい。
【0061】
また、電解質は液体でなくとも次のような固体電解質も用いることができる。固体電解
質としては、無機固体電解質と有機固体電解質に分けられる。無機固体電解質には、Li
の窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩等がよく知られている。なかでも、80Li
2S−2
0P
2O
5、非晶質の物質としてLi
3PO
4−63Li
2S−36SiS
2、44LiI−3
8Li
2S−18P
2S
5等の硫化物、Li
2.9PO
3.3N
0.46の酸化物や結晶質の物質とし
てLi
3.25Ge
0.25P
0.75S
4の硫化物、La
0.56Li
0.33TiO
3、Li
1.4Al
0.3Ti
1.6(PO
4)
3の酸化物等が有望である。さらに、LiF、LiBO
2の混合焼結材を使用
することで各材料の焼結を図ると同時に接合界面に固体電解質層を形成させる方法等も有
望である。本発明の電池系においては正極及び負極の体積膨張が全く無いため、従来から
固体電解質を使用する上で問題となっている膨張・収縮による界面の脱離が飛躍的に改善
されることが期待できる。
【0062】
有機固体電解質では、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、
ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、
ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等やこれらの誘導体、混合物、複
合体等のポリマー材料が有効である。また、有機固体電解質に上記非水電解液を含有させ
たゲル電解質を用いることもできる。上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレ
ンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエ
チレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロ
プロピレン等やこれらの誘導体、混合物、複合体等の高分子マトリックス材料が有効であ
る。特に、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体やポリフッ化ビニリ
デンとポリエチレンオキサイドの混合物が好ましい。
【0063】
電池の形状としては、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、偏平型、角型等いずれ
にも適用できる。電池の形状がコイン型やボタン型のときは、正極活物質や負極材料の合
剤は主としてペレットの形状に圧縮されて用いられる。そのペレットの厚みや直径は電池
の大きさにより決定すればよい。なお、本発明における電極の巻回体は、必ずしも真円筒
形である必要はなく、その断面が楕円である長円筒形または長方形等の角柱状の形状であ
っても構わない。
【0064】
図16に、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施の形態である円筒型電池の一部を
断面にした側面図を示す。
図16に示す円筒形電池においては、正極および負極がセパレ
ータを介して複数回渦巻状に巻回されて得られた極板群4が、電池ケース1内に収納され
ている。そして、正極からは正極リード5が引き出されて封口板2に接続され、負極から
は負極リード6が引き出されて電池ケース1の底部に接続されている。電池ケースやリー
ド板は、耐有機電解液性の電子伝導性をもつ金属や合金を用いることができる。例えば、
鉄、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、銅、アルミニウム等の金属またはそれらの
合金が用いられる。特に、電池ケースはステンレス鋼板、Al−Mn合金板を加工したも
の、正極リードはアルミニウムが好ましい。負極リードはニッケルあるいはアルミニウム
が好ましい。また、電池ケースには、軽量化を図るため各種エンジニアリングプラスチッ
クスおよびこれと金属の併用したものを用いることも可能である。
【0065】
極板群4の上下部にはそれぞれ絶縁リング7が設けられている。そして、電解液を注入
し、封口板を用いて電池ケースを密封する。このとき、安全弁を封口板に設けることがで
きる。安全弁の他、従来から知られている種々の安全素子を備えつけてもよい。例えば、
過電流防止素子として、ヒューズ、バイメタル、PTC素子等が用いられる。また、安全
弁のほかに電池ケースの内圧上昇の対策として、電池ケースに切込を入れる方法、ガスケ
ット亀裂方法、封口板亀裂方法またはリード板との切断方法を利用することができる。ま
た、充電器に過充電や過放電対策を組み込んだ保護回路を具備させるか、または、独立に
接続させてもよい。キャップ、電池ケース、シート、リード板の溶接法については、公知
の方法(例えば、直流もしくは交流の電気溶接、レーザー溶接または超音波溶接等)を用
いることができる。また、封口用シール剤としては、アスファルト等の従来から知られて
いる化合物や混合物を用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例に代表させて本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるも
のではない。
《実施例1》
まず、以下の条件で2種類の正極活物質を作製した。共沈法で得られた[Ni
1/2Co
1
/2](OH)
2または[Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3](OH)
2をLiOH・H
2Oと充分に混
合した後、混合物をペレットに成形し、焼成した。焼成温度を900℃にしてLi
1±xN
i
1/2Co
1/2O
2(x≦0.1)を得、焼成温度を1000℃にしてLi
1±xNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2(x≦0.1)を得た。
次に、以下のようにして電気化学測定用の単セルを作製した。上記正極活物質80重量
部、導電剤であるアセチレンブラックを10重量部、及び結着剤であるPVdF(ポリフ
ッ化ビニリデン)10重量部を混合し、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)で希釈し
、得られた混合物をアルミフォイルからなる集電体上に塗布した。塗布後の集電体を、真
空中60℃で30分乾燥した後、15×20mm
2に切断した。さらに、切断後の集電体
を真空中で150℃、14時間乾燥し、電極を得た。電極の厚みは120μm〜190μ
mの間とした。
セパレータとしては、ポリエチレン製のポーラスフィルムを用い、電解液としてはEC
(エチレンカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)を3対7の体積比率で混合
した溶媒に、1.0MでLiPF
6を溶解したものを用いた。得られた単セルの充放電は
0.17mA/cm
2の電流密度で所定の電圧領域の間で繰り返した。
【0067】
正極活物質としてLi
1±xNi
1/2Co
1/2O
2(x≦
0.1)を用い、負極活物質として
スピネル構造を有するLi
4Ti
5O
12を用いた電池の、正極と負極の厚みの合計(電極トータルの厚み)を、高精度伸縮計(ダイレートメーター)による測定結果を
図14に示した。充放電に伴って厚み変化は波打つように変化しており、高精度に測定ができていることが確認できる。さらに、
図14からわかるように、電極トータルの厚み変化は約0.1μmであり、初期の変化を加味しても0.5μm程度に収まっている。作製直後の電極トータルの厚みが300μm程度あることを考えると、実質的な電極の膨張・収縮はゼロであるといえる。このことから、前述したように体積変化のない正極及び負極を組み合わせることで、電池として体積変化ゼロを実現できることが証明された。正極にLi
1±xNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2(x≦0.1)を用いた場合にもダイレートメーターの厚み変化は約0.1μmと同等の値を示した(
図15参照)。
【0068】
同様にして、炭素材料の負極を使用して同様の測定をすると、初期の変化だけでも電極
の厚みに対して約20%近い膨張が観測され、充放電によっても10%以上の膨張・収縮
が観測された。本発明における電池系において、充放電に伴うこの極めて小さい膨張・収
縮が、サイクルの長寿命の要因となる。特に、ハイレートで充放電を行った場合のサイク
ル寿命は従来の電池系に比較し飛躍的に改善される。
【0069】
《実施例2》
本実施例においては、
図16に示す円筒型電池を作製した。
電池ケース1、正極リード5及び負極リード6は、それぞれニッケルメッキされた鉄、アルミニウム及びステンレス鋼で構成した。
正極(板)は以下のようにして作製した。すなわち、粉末状の正極活物質(Li
1±xNi
1/2Co
1/2O
2(x≦0.1)またはLi
1±xNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2(x≦0.1))85重量部に対し、導電剤である炭素粉末10重量部及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン樹脂5重量部を混合した。得られた混合物を脱水N−メチルピロリジノンに分散させてスラリーを得、このスラリーをアルミニウム箔からなる正極用の集電体上に塗布し、乾燥・圧延した後、塗布後の集電体を所定の大きさに切断して正極を得た。
また、負極(板)は、正極活物質に替えて負極活物質である
スピネル構造を有するLi
4Ti
5O
12(Li[Li
1/3Ti
5/3]O
4)を用い
た以外は、正極と同様にして作製した。
【0070】
本発明では、セパレータとしてはポリプロピレン製の不織布を用いた。また、有機電解
液としては、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との体積
比1:1の混合溶媒に、LiPF
6を1.0モル/リットル溶解したものを使用した。ま
た、作製した円筒型電池の寸法は直径14.1mm、高さ50.0mmとした。
【0071】
このようにして作製した円筒型電池の定電圧充電を2.5Vで行い、放電を100mA
の定電流で1Vまで行った。このとき得られた放電容量は550mAhであった。本実施
例では、上記2種の正極活物質を用いた場合に電池の容量がほぼ同じになるように、電池
設計した。同じ電池を再度充電する際には1.9V〜2.35Vの間で定電圧充電を行っ
た。このとき充電された容量を表1に示した。
【0072】
【表1】
【0073】
表1より、
図9に示した充放電カーブbにしたがって、Li
1±xNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2を用い
た場合には2.2Vから上の領域において電圧幅に対する容量の上昇率が低下しており、Li
1±xNi
1/2Co
1/2O
2を用い
た場合には2.0V以上の領域において電圧幅に対する容量の上昇率が低下していることがわかる。このことは、前記電圧の領域において容量に対する電圧制御の精度が上がっていることを示している。
【0074】
《実施例3》
本実施例においては、本発明における好ましい正極及び負極の容量設計について検討した。正極板の単位面積当たりの正極活物質量と負極板の単位面積当たりの負極活物質量との重量比を、種々変化させた以外は、実施例2と同様にして円筒型電池を作製し、そのサイクル寿命を測定した。結果を表2に示した。
なお、重量比0.3、1.2および1.5の円筒型電池は比較例である。充放電サイクル条件については、充電を2.5Vの定電圧で最大電流1Cの定電流で行った。また、充電の終了条件は、充電開始から2時間の時間カットとした。一方、放電は2Cの定電流で行い、1.0Vカットとした。表2には、維持容量が初期容量の98%に低下したときのサイクル数を示した。
【0075】
【表2】
【0076】
表2より、重量比が1.2以上になるとサイクル寿命が低下することがわかる。したがって、正極及び負極のバランスとしては、実質的に負極律速(負極容量規制)となるように電池を設計することが好ましい。しかし、必要以上に正極活物質を増加させると電池容量が低下するため、実質的には0.5
以上1.2
未満とすることが好ましい。
【0077】
《実施例4》
本実施例においては、正極及び負極の集電体について検討した。
正極および負極の集電体を表3に示す材料で構成した以外は、実施例2と同様にして円
筒型電池を作製し、過充電試験を行った。表3にそれぞれの円筒型電池の過充電試験時に
おける電池表面温度を示した。この電池表面温度は過充電時の最高電池温度とした。なお
、電流値は1.5Cで定電流過充電を行った。
【0078】
【表3】
【0079】
表3より、アルミニウムからなる集電体を使用することで、過充電時の電池の発熱を抑
制できることがわかる。以上より、本発明の電池系においてアルミニウムからなる集電体
を用いることで、2V級の電池を作製することができ、軽量化、低コスト化さらに高安全
性の電池を得ることができる。
【0080】
《実施例5》
本実施例においては、好ましい電解液について検討を行った。
表4に示した組成の溶媒及び溶質を用いた以外は、実施例2と同様にして円筒形電池を
作製した。そして、従来の電解液系を用いた電池によって得られる容量を100とし、電
解液を種々変更させた電池によって得られた容量を、指数として評価した。この指数を表
4に示した。また、比較のため、正極活物質としてコバルト酸リチウムを用い、負極活物
質として黒鉛材料を使用し、同様の方法で円筒型電池を作製して評価した結果を示した。
EC/DEC(3/7)の表示は、ECとDECの混合溶媒で重量比が3:7であること
を表す。この電解液を用いて得られた電池の容量をそれぞれの電池系で100とした。
【0081】
【表4】
【0082】
表4より、黒鉛を使用する従来の電池系ではほとんど満足のいく容量が得られず、使用
できなかった電解液系を、本発明に係る電池においては問題なく使用でき、安価でより安
全性の高い電池を得ることが可能であることがわかる。また、これらの溶媒の混合溶媒や
従来から使用されている溶媒種の組合せ等も使用可能である。
【0083】
《実施例6》
本発明では、表5に示す溶媒及び溶質を用いた以外は、実施例2と同様の方法で円筒型電池を作製し、評価を行った。特にトリメチルプロピルアンモニウムカチオン(TMPA)とトリフルオロメチルスルフォニルイミドアニオン(TFSI)のイオン性液体(A)、または1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとトリフルオロメチルイミドアニオンのイオン性液体(B)を用いる場合について詳細に検討した。さらに、これらのイオン性液体とエチレンカーボネート等を使用した従来の非水電解質との混合物を使用した電池の作動と優位性も同様の評価で確認した。また、イオン性液体の安全に対する効果を確認するために2.5V満充電状態の円筒型電池で150℃のホットボックス試験を行った。満充電の電池を入れたホットボックスを30℃から150℃まで5℃/分の速度で加熱した後、3時間150℃で保持した。このときの電池表面温度を測定
した。電気特性とホットボックス試験の結果を表5に示した。
【0084】
【表5】
【0085】
表5より、従来は全く使用できなかったイオン性液体が単独で使用可能となることがわ
かる。また、イオン性液体を使用することで、ホットボックス試験での電池異常加熱がほ
とんど観測されず、安全性を飛躍的に改善できることがわかる。多くのイオン性液体を図
9〜11に例示したが、粘性等の問題は残るが、従来溶媒との混合、特にECとの混合で
使用可能性は向上し、安全性や信頼性の改良に効果が期待できる。
【0086】
《実施例7》
本実施例においては、好ましいセパレータに関して検討した。
表6に示す材料をセパレータ(厚み25μm)に用いた以外は、実施例2と同様にして
円筒型電池を作製し、評価を行った。表6には、パルス放電特性と過充電時の電池表面温
度の最大値を示した。パルス放電は、1Aの5秒オン、5秒オフの単純なパルスを用いて
行い、従来のPEポーラスフィルムを使用したときに得られたパルス放電時間を100と
したとき、その他のセパレータを用いた電池のパルス放電時間を指数で示した。過充電は
1.5Cの定電流過充電とした。
【0087】
【表6】
【0088】
表6より、本電池系においては、不織布を使用することで、過充電の安全性はほぼ一定
に保ちつつパルス放電時間を大幅に改良できることがわかる。また、パルス電流による電
圧の落ち込みも、不織布を使用することによって改良できることがわかる。