(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763923
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】体の音の非侵襲的分析
(51)【国際特許分類】
A61B 7/04 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
A61B7/04 V
A61B7/04 U
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-549238(P2010-549238)
(86)(22)【出願日】2009年3月3日
(65)【公表番号】特表2011-514199(P2011-514199A)
(43)【公表日】2011年5月6日
(86)【国際出願番号】IB2009050860
(87)【国際公開番号】WO2009109917
(87)【国際公開日】20090911
【審査請求日】2012年3月1日
(31)【優先権主張番号】08305047.6
(32)【優先日】2008年3月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ラジャマニ クマール ティ
(72)【発明者】
【氏名】ブッサ ナガラジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェパ ジテンドゥラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン アブヒシェク
【審査官】
門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05844997(US,A)
【文献】
米国特許第06409684(US,B1)
【文献】
米国特許第05871446(US,A)
【文献】
特表2006−526452(JP,A)
【文献】
特表2007−532207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 7/00 − 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液流の音を分析する装置の作動方法において、前記方法は、前記装置の入力ユニットが、体の様々な位置からの音を同時に取得するステップ及び前記装置の分析ユニットが、前記体液流の特性を決定するステップを有し、前記特性を決定するステップが、
各取得時刻に対して前記取得された音の最大音強度の位置を識別するステップと、
前記取得された音の音源位置を決定するステップと、
前記取得された音の音広がりパターンを決定するステップと、
を有し、
前記取得された音の音源位置を決定するステップが、複数の取得時刻を分析し、複数の最大音強度の位置の中で音強度が最大である位置を音源位置として決定するステップを有し、
前記音広がりパターンを決定するステップが、
各取得時刻に対して前記最大音強度の位置のデジタル画像を作成するステップと、
前記音広がりパターンを得るために複数の連続した画像にわたり前記最大音強度の位置を追跡するステップと、
を有する、
方法。
【請求項2】
前記分析ユニットが、前記最大音強度の位置の周期性及び分布に基づいて音取得サイクル及び/又は領域を規定するステップを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大音強度の位置を追跡するステップが、基準音広がりパターンの使用により前記音広がりパターンを改良するステップを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分析ユニットが、前記取得された音及び前記決定された音広がりパターンを既存の基準と比較するステップと、前記分析ユニットが、前記取得された音及び前記決定された音広がりパターンが前記既存の基準とマッチする見込みを提供するステップとを更に有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記体液流が人間の心臓血流である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
体液流の音を分析する装置において、前記装置が、体の様々な位置から同時に取得された音に対応するデータを受信する入力ユニット及び体液流特性を決定する分析ユニットを有し、前記分析ユニットが、
各取得時刻に対して最大音強度の位置を識別する手段と、
前記取得された音の音源位置を決定する手段と、
前記取得された音の音広がりパターンを決定する手段と、
を有し、
前記取得された音の音源位置を決定する手段が、複数の取得時刻を分析し、複数の最大音強度の位置の中で音強度が最大である位置を音源位置として決定する手段を有し、
前記音広がりパターンを決定する手段が、
各取得時刻に対して前記最大音強度の位置のデジタル画像を作成する手段と、
前記音広がりパターンを得るために複数の連続した画像にわたり前記最大音強度の位置を追跡する手段と、
を有する、する、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置と、体の様々な位置において音を同時に取得するセンサアセンブリとを有する体液流の音を分析するシステム。
【請求項8】
前記センサアセンブリが、人体用の空気注入式ウェアラブルベスト上に取り付けられた音センサを有し、前記センサが、各センサに同じ圧力を加える圧力調節手段に接続される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
体液流の音を分析する装置のメモリにロードされる場合に、前記装置に請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させる命令のセットを有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液流の音を分析する方法、装置及びシステムに関する。
【0002】
人体のような体の幾つかの器官において、流体の流れは、独特の音特性を持ち、これらの音特性の情報は、診断を確立する医師に対して重要な情報を提供する。
【0003】
例えば、心雑音又は異常心音は、狭い又は機能異常を示す弁を通る血液の乱流により引き起こされる。
【背景技術】
【0004】
幾つかの既存の技術は、体の様々な位置から音を取得し、これらの分析することを可能にする。この事例は、例えば、特許文献US6699204-B1である。
【0005】
しかしながら、前記既存の技術は、音の発生の位置を識別することに集中するが、他の重要な独特の特性を分析することができない。
【0006】
より正確には、重要な音特性は、音の広がりである。説明するために、大動脈弁狭窄症の心雑音は、胸骨の右側の第2肋間腔において生じ、頸動脈に広がりうる。僧帽弁逸脱の心雑音は、左腋窩内に広がりうる。
【0007】
今日、医師は、聴診器を使用する手動聴診により音の広がり(radiation)を識別しなくてはならない。音の広がりを識別するのは、時間がかかり、医療記録を残さず、本質的に医師の能力及びスキルに依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、体液流の音のより良い分析を可能にする技術に対する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題を解決するために、本発明は、体液流の音を分析する請求項1に記載の方法に関し、前記方法は、体の様々な位置からの音を同時に取得するステップと、前記体液流の特性を決定するステップとを有し、前記特性を決定するステップは、各取得時刻に対して前記取得された音の最大音強度の点を識別するステップ、前記取得された音の音源位置を決定するステップ、及び前記取得された音の音広がりパターンを決定するステップを有する。
【0010】
本発明は、体液流の音を分析する請求項8に記載の装置にも関し、前記装置は、体の様々な位置から同時に取得された音に対応するデータを受信する入力ユニットと、体液流特性を決定する分析ユニットとを有し、前記分析ユニットは、各取得時刻に対して最大音強度の点を識別する手段、前記取得された音の音源位置を決定する手段、及び前記取得された音の音広がりパターンを決定する手段を有する。
【0011】
本発明は、前記方法を実行するコンピュータプログラム及び前記装置を含むシステムにも関する。
【0012】
本発明は、既存の解決法より詳細に体液流の特性、特に音広がりパターンを分析する非侵襲的解決法を提供する。
【0013】
本発明のこれら及び他のフィーチャ及び利点は、付属の図面を参照して提供され、非限定的な例としてのみ与えられる以下の記載を読むと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のプロセスの一般的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施例は、人体の胸部領域全体からの音響心臓信号の取得、換言すると胸部音の分析に関する。
【0016】
本発明の方法は、ここで
図1を参照して説明される。
【0017】
前記方法は、体の特定のモニタリングされる領域にセットされたセンサの適合されたアレイによる体液流の音の同時取得2により開始する。各取得時刻に対して、各センサに対する音レベルが記録される。
【0018】
前記取得の後に、前記取得された音に対応するデジタル信号を提供するために前記取得された信号が変換される処理ステップ4が続く。上記の例において、前記処理ステップの出力は、各センサ及び各取得時刻に対する前記取得された音の特性を参照する表である。
【0019】
体液流に対する音響信号の取得及び処理は、十分に立証された技術であり、詳細には説明されない。
【0020】
前記方法は、次いで、各取得時刻に対して最大音強度の位置を識別するステップ6を有する。したがって、前記センサのアレイにより、最大強度の点(PMI)の位置のマッピングが、各取得時刻に対して得られる。
【0021】
有利には、前記方法は、広がり流れサイクル及び体領域が規定される較正8を有する。
【0022】
より正確には、血流に対するような特定の場合に、体液流は、周期的パターンを示す。これは、複数の取得時刻を分析し、前記サイクルを識別することにより前記較正中に検出される。
【0023】
同様に、体領域は、前記PMIの再分割を考慮することにより複数の取得時刻の分析により規定されることができる。心音モニタリングの上記の例において、取得の4つの主要な領域、すなわち大動脈領域、肺領域、僧帽弁領域及び三尖弁領域が規定される。
【0024】
前記方法は、次いで、音源の位置を決定するステップ10を有する。この音源位置決定は、複数の取得時刻を処理することにより実行され、複数のPMIの最大の位置が、音源位置として決定される。
【0025】
有利には、音源位置は、各体領域に対して決定される。
【0026】
実際的な観点から、上記の実施例において、前記較正及び前記音源位置の決定は、前記PMIに適用され、複数の取得時刻に対して収束させるループ分類アルゴリズムの使用により同時に実行される。
【0027】
このプロセスは、次いで、前記音源位置及び前記最大強度の点を持つ瞬間的音記録を作成するステップ12を有する。
【0028】
上記の実施例において、この記録は、前記音の音源位置及び前記最大強度の点をグラフィカルに表すデジタル画像として形成され、スナップショット又はフレームとも称される。有利には、周波数、振幅又は持続時間等のような他の音特性も、この画像の一部である。
【0029】
前記方法は、次いで、前記取得された音に対する広がりパターンを決定するステップ14を有する。上記の実施例において、これは、連続した画像の間で追跡アルゴリズムを使用することにより実行される。各画像は前記音の強度の分布を含み、プロセッサは、どのように及びどこで各音源の音が広がるのかを、前記音源に関連付けられたPMIに適用される画像追跡アルゴリズムを使用して計算する。
【0030】
有利には、前記音響信号が通常は特定のパターンで広がるという経験則が、前記取得された音の前記広がりパターンを決定する前記追跡システムを洗練及びガイドするのに使用される。基準広がりパターンは、前記決定を改良するのに使用される。
【0031】
この段階において、本発明のプロセスは、前記音源位置及び最大音強度の点の瞬間的ビューと、複数の連続した画像にわたり追跡された広がりパターンとの両方を提供することができる。上記の実施例において、これらの要素は、表示画面により医師にグラフィカルに提供される。
【0032】
上記の実施例において、本発明の方法は、前記取得された音及び広がりパターンを既存の状態にマッチさせる試みで、前記取得された音及び決定された広がりパターンを基準と比較するステップ16をも有する。例えば、比較システムの出力は、前記取得された音の特性と前記基準との間のマッチを識別する相関割合である。
【0033】
前記比較は、位置、タイミング、持続時間及び他の特性を既存の基準と比較することにより広がりの病因のカテゴリ化を可能にする。
【0034】
この比較は、診断に対する有用な洞察を医師に提供し、決定プロセスにおいて前記医師又はオペレータを援助する。更に、得られた情報は、前記オペレータ又は医師のスキル又は能力に依存せず、後の使用のために記録されることができる。
【0035】
したがって、本発明は、体液流の広がりパターンを分析し、医療的状態の診断に対する助けを提供する非侵襲的方法を記載する。
【0036】
図2を参照して、本発明の一実施例によるシステムがここで説明される。
【0037】
前記システムは、まず、本例においては空気注入式ウェアラブルベスト上にセットされる、音センサのアレイを有するセンサアセンブリ18を有する。前記空気注入式ベストは、表示されていない圧力手段をも有する。この圧力手段は、前記空気注入式ベストを介して、各センサに同様の圧力を加え、人体の胸部に向けて前記センサを押しつけるのに使用される。
【0038】
例えば、前記センサは、マイクロフォン又は圧電センサである。前記センサの分布は、胸部領域全体が最適にカバーされるように配置される。
【0039】
センサアセンブリ18は、
図1を参照して以前に記載されたように体液流からの音の同時取得2を実行する。センサアセンブリ18は、本例においては専用装置である、分析装置20に接続される。他の実施例において、この分析装置は、例えばコンピュータのような他の電子装置におけるソフトウェア及びハードウェアの融合体として実施されることができる。
【0040】
分析装置20は、まず、適切な増幅器を持つ入力段22、バンドパスフィルタ、及びアナログデジタルコンバータを有する。もちろん、入力段22は、センサアセンブリ18において使用される実際のセンサに適合される。入力段22は、
図1を参照して記載されたように処理ステップ4を実行する。
【0041】
前記取得された音に対応するデジタル信号は、プロセッサ24により分析される。
【0042】
プロセッサ24は、まず、
図1のステップ6を参照して記載されたように、最大音強度の点又はPMIを決定するユニット26を有する。プロセッサ24は、前記取得された音の音源の位置を決定するユニット28をも有する。
図1を参照して示されるように、上記の実施例において、較正8は、前記音源位置の収束する決定10により実行される。したがって、ユニット28は、
図1を参照して記載されたステップ8及び10の両方を実行する。
【0043】
ユニット28及び26の出力は、画像決定ユニット30に提供される。ステップ12を参照して記載されたように、この画像決定ユニット30は、前記音の音源位置及び前記最大音強度の点を特徴とするデジタル画像を広がりパターン決定ユニット32に提供する。広がりパターン決定ユニット32は、複数のフレームにわたり各音源位置に対する前記最大音強度の点を追跡することにより決定ステップ14を実行する。
【0044】
有利には、プロセッサ24は、
図1を参照して記載された比較ステップ16を実行するパターン比較ユニット34をも有する。
【0045】
最後に、上記の例において、プロセッサ24は、表示画面40を制御し、前記フレーム、前記広がりパターン及び前記比較ユニットの結果を医師又はオペレータに対して表示する表示インタフェース36をも有する。
【0046】
一般に、プロセッサ24は、前記取得された音、前記画像データ、前記広がりパターン及び他の最終又は中間結果を記憶するメモリユニット42にも接続される。
【0047】
もちろん、このシステムの他の多くの実施例が実現されることができ、前記センサ、入力段、処理ユニット、メモリ及びディスプレイは、複数の装置にわたり分散される又は結合されることができる。
【0048】
一実施例において、前記センサは、ソフトウェアプログラムを実行し、コンピュータ画面及びメモリユニットを使用する無線コンピュータに接続されたデジタル無線センサである。
【0049】
このような実施例において、上記の方法は、コンピュータのプロセッサにより実行される命令を有するコンピュータプログラムにより実行される。このプログラムは、コンピュータソフトウェア媒体上に形成される。
【0050】
他の実施例において、前記センサは、遠隔モニタリングを可能にするためにインターネットのような電気通信ネットワークを介して前記センサのデータを前記プロセッサに送信する。
【0051】
もちろん、本発明は、人体以外の体及び血流以外の流体の流れに対して使用されることができる。