【実施例】
【0069】
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
まず、99重量部の水に、カチオン化澱粉(敷島スターチ製のマーメイド350)1重量部を加え、約60分間よく攪拌することにより、カチオン化澱粉を1重量%に希釈した希釈水を調製した。
【0071】
次に、槽に9900重量部の水を張り、上記工程で調製した希釈水を添加し、攪拌した後、生体溶解性ファイバ(ニチアス株式会社製 BIOOL、SiO
2:73重量%、CaO:25重量%、Al
2O
3:2重量%、MgO:1重量%未満、平均繊維径:4.0μm)100重量部を添加し、1分間よく攪拌した。
【0072】
次に、シリカゾル(日産化学工業社製のスノーテックス30(SiO
2濃度:30重量%))を16.7重量部(固形分換算で5.0重量部)加え、再び、1分間よく攪拌した。
【0073】
次に、カチオン性凝集剤(荒川化学工業社製のポリストロン705)を20重量部(固形分換算で2.0重量部)加え、1分間攪拌した後、アニオン性凝集剤(明成化学工業社製のファイレックスM)を3重量部(固形分換算で0.3重量部)加え、1分間攪拌し、その後10分間放置し、凝集体を作製した。
【0074】
続いて、形成された凝集体を含むスラリーを脱水用の型に流し込み、脱水成形を行うことにより水分を含む成形断熱体を作製した。
この後、水分を含む成形断熱体を105℃で乾燥させた後、切削加工を行い断熱材を製造した。添加したカチオン化澱粉等の添加物質の重量(重量部)を表1に示す。
【0075】
また、凝集体を作製した際のスラリーの上澄み液を採取し、上澄み液の透明度を測定して、スラリーの凝集性を評価した。
上澄み液の透明度の測定は、以下のように上澄み液の吸光度を求めることにより行った。
すなわち、まず、脱イオン水を用い、光路長10mmのセルに入れ、650nmの光を当てて透過した光の強度I
0を測定し、それをベースラインとした。
次に、スラリーの上澄み液を光路長10mmのセルに入れ、同様に650nmの光を当てて透過した光の強度Iを測定し、吸光度を求めた。
このときの吸光度A
λは、下記の(1)式で表される。スラリーの上澄み液の吸光度の測定結果を表2に示す。
A
λ=−log
10I/I
0・・・(1)
【0076】
(実施例2及び3)
カチオン化澱粉、生体溶解性ファイバ、シリカゾル、カチオン性凝集剤及びアニオン性凝集剤の量を変えた他は、実施例1と同様に、カチオン化澱粉、シリカゾル、カチオン性凝集剤及びアニオン性凝集剤を使用して、水中に投入した無機繊維を凝集させ、脱水成形することにより断熱材を製造した。
また、実施例1と同様に、スラリーの上澄み液の吸光度を求めることによりスラリーの凝集性を評価した。添加したカチオン化澱粉等の添加物質の重量(重量部)を表1に示し、スラリーの上澄み液の吸光度の測定結果を表2に示す。なお、実施例1〜3では、カチオン化澱粉の添加量を1重量部〜20重量部の範囲で変化させた。
【0077】
(比較例1)
第一工程でカチオン化澱粉を添加しなかったほかは、実施例1と同様にして、シリカゾル、カチオン性凝集剤及びアニオン性凝集剤を使用して、水中に投入した無機繊維を凝集させ、脱水成形することにより断熱材を製造した。
また、実施例1と同様に、スラリーの上澄み液の吸光度を求めることによりスラリーの凝集性を評価した。添加したカチオン化澱粉等の添加物質の重量(重量部)を表1に示し、スラリーの上澄み液の吸光度の測定結果を表2に示す。
【0078】
(凝集体の脱水試験による凝集性の評価)
実施例1〜3及び比較例1における凝集性の評価を凝集体の脱水試験を行うことにより行った。
具体的には、工業用水200mlをビーカーに入れ、無機繊維(生体溶解性ファイバ)を2g用いたほかは実施例1〜3及び比較例1と同様の条件で、シリカゾル、カチオン性凝集剤等の添加物質を添加し、攪拌を行い、凝集体を形成した後、10分間攪拌して凝集の弱いフロックを破壊させた。この状態のスラリーを溶液1とする。
【0079】
アスピレーターの吸引口に濾紙を張り、溶液1を投入した。投入開始を0秒とし、フロックが濾紙上に残り、完全に水を抜け切るまで吸引を続けた。完全に水が抜けて、空気を吸引する音になった時点で、吸引終了とした。吸引中の時間(投入開始から空気を吸引する音になるまでの時間)を、脱水時間として記録した。
脱水時間の測定結果を表2に示す。
【0080】
(断熱材の評価)
(1)断熱材の密度
実施例2及び比較例1で得られた断熱材の体積と重さから断熱材の密度を計算した。その結果を表2に示す。
【0081】
(2)断熱材の曲げ強度の測定
実施例2及び比較例1で得られた断熱材の曲げ強度を以下の方法により測定した。
まず、得られた断熱材を、帯のこにより厚み25mm、幅50mm、長さ200mmにカットし、曲げ強度測定用のサンプルとした。
次に、インストロン5567の測定機を用い、クロスヘッドスピード:10mm/min、スパン:150mm、3点曲げにより、曲げ強度試験を行い、断熱材が折れるまでの最大荷重(N)を測定した。
曲げ強度は下記(2)式で計算する。
曲げ強度(MPa)=3WL/2b×h
2・・・(2)
ただし、Wは、最大荷重(N)であり、Lは、スパン幅(150mm)であり、bは、サンプルの幅(50mm)であり、hは、サンプルの厚さ(25mm)である。
その結果を表2に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表1及び2から明らかなように、実施例1〜3の場合には、カチオン化澱粉を最初に添加しているため、カチオン化澱粉を添加していない比較例1(上澄み液の吸光度0.147)の場合と比べて、実施例1〜3の上澄み液の吸光度は、0.061、0.005、0.077と低く、上澄み液が透明となっている。上澄み液が透明になっているので、実施例1〜3の場合、良好に凝集しているということがわかる。それに伴って脱水時間も、比較例1の1分31秒と比べて、実施例1〜3の脱水時間は、それぞれ19秒、26秒、1分5秒と短く、効率よく脱水作業を行うことができることがわかる。また、実施例2の断熱材の密度は、0.35g/cm
3と比較例1の断熱材の密度0.25g/cm
3と比べて高く、実施例2の曲げ強度は、2.01MPaと比較例1の曲げ強度0.19MPaに比べて高くなっている。そのことから、実施例1〜3の場合には、比較例1の場合と比べて、得られた断熱材の密度が高く、強度も高くなっていると考えられる。
(第二実施形態)
以下、本発明の断熱材の製造方法の一実施形態である第二実施形態について説明する。
図2は、本発明の第二実施形態に係る断熱材の製造方法における各工程を示す説明図である。
【0085】
本発明の第二実施形態に係る断熱材の製造方法では、本発明の第一実施形態に係る断熱材の製造方法の第一工程と第二工程との間に、無機粒子添加工程が挿入されている点が本発明の第一実施形態の場合と異なる。
【0086】
すなわち、本発明の第二実施形態では、カチオン性ポリマーを水中に投入し、分散又は溶解させ、続いて、上記無機繊維を投入し、水中に分散させてスラリーとする第一工程を終えた後、酸化チタン等の無機粒子を添加する。
【0087】
本発明の第二実施形態における第一工程は、本発明の第一実施形態と同様に行うことができる。
次に、カチオン性ポリマーと無機繊維とが投入されたスラリーに、無機粒子を添加し、攪拌する。
【0088】
無機粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベントナイト、酸化チタン、シリカ粉末及びアルミナ粉末からなる群のうち少なくとも1種が挙げられる。
【0089】
ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分としたコロイド質の粘土であり、水分を含むと膨潤するという特性を有する。このため、ベントナイトは、カチオン性ポリマーと無機繊維と含むスラリーに添加されることにより、水溶性無機バインダーとほぼ同様の分散状態となり、スラリー中に分散した微粒子が凝集して無機繊維に付着する。得られた断熱材に、ベントナイトが含まれていると、水溶性無機バンダーを構成する微粒子とともに無機繊維同士をその一部で接着する接着剤としての役割を果たす。従って、ベントナイトを含む断熱材は、機械的強度が向上する。
【0090】
酸化チタンは、熱輻射を散乱させる機能を有するので、断熱材中に含まれると輻射熱が散乱され、断熱性能が向上する。
シリカ粉末は、水溶性無機バインダーとともに断熱材に含まれることにより、断熱材中の気泡が小さくなる。そのため、断熱材が多数の気泡に分割された状態となり、熱の伝導が阻害されるため、断熱材の断熱性能が向上する。
アルミナは耐熱性に優れているので、アルミナ粉末を含む断熱材は、耐熱性能が向上する。
【0091】
無機繊維100重量部に対するベントナイトの添加量は、2〜40重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。
無機繊維100重量部に対するベントナイトの添加量が上記範囲であると、ベントナイトが接着剤として適切に機能して無機繊維同士を少なくともその一部で接着する。従って、高い強度を有する断熱材をとすることができる。ベントナイトの含有量が、無機繊維100重量部に対して2重量部未満であると、接着剤として機能するベントナイトの量が少ないため、断熱材の強度が向上しない。一方、ベントナイトの含有量が、無機繊維100重量部に対して40重量部を超えると、スラリー中のベントナイトの量が多いため、充分に凝集せず、スラリーを脱水する際の濾水性が低下し、生産性が低下する。
【0092】
無機繊維100重量部に対する酸化チタンの添加量は、10〜70重量部が好ましい。
無機繊維100重量部に対する酸化チタンの添加量が上記範囲にあるので、熱輻射を散乱させることができ、断熱材にさらなる高断熱性を付与することができる。酸化チタンの含有量が、無機繊維100重量部に対して10重量部未満であると、熱輻射を散乱させる酸化チタンの量が少ないので、断熱性が向上しない。一方、酸化チタンの含有量が、無機繊維100重量部に対して70重量部を超えると、接着材の役割を果たす微粒子の量が多くなりすぎ、スラリー中の酸化チタンの量が多いため、充分に凝集せず、スラリーを脱水する際の濾水性が低下し、生産性が低下する。
【0093】
無機粒子を投入した後、第二工程で水溶性無機バインダーを添加するまでの攪拌時間は、30秒〜5分が好ましい。攪拌時間が30秒未満の場合には、無機粒子が水中で均一に分散せず、良好な凝集を行うことができない。一方、攪拌時間が5分を超えても、攪拌による無機粒子の均一分散効果は上がらず、経済的でない。
無機粒子添加工程により添加された無機粒子は、スラリーの凝集性に大きな影響を与えることはなく、添加されると、一旦液中に分散するが、カチオン性ポリマーにより無機繊維のマイナス電荷が中和されるため、水溶性無機バインダーを構成する微粒子とともに凝集し、無機繊維に付着する。
【0094】
無機粒子添加工程を経た後、第二工程〜第四工程を行うが、本発明の第二実施形態における第二工程〜第四工程は、本発明の第一実施形態と同様に行うことができる。
【0095】
以下、本発明の第二実施形態の断熱材の製造方法の効果について列挙する。
本実施形態に係る断熱材の製造方法では、本発明の第一実施形態に係る断熱材の製造方法と同様に、第一実施形態に記載した(1)〜(3)の効果を奏するとともに、下記の(4)の効果を奏する。
(4)本実施形態の断熱材の製造方法においては、無機粒子としてベントナイト、酸化チタン、シリカ粉末及びアルミナ粉末からなる群のうち少なくとも1種等が添加されており、これらが得られた断熱材に含有されているので、それぞれの無機粒子の機能に応じた特性を断熱材に付与することができる。
【0096】
(実施例4)
まず、990重量部の水に、カチオン化澱粉(敷島スターチ製のマーメイド350)10重量部を加え、約60分間よく攪拌することにより、カチオン化澱粉を1重量%に希釈した希釈水を調製した。
【0097】
次に、槽に9000重量部の水を張り、上記工程で調製した希釈水を添加し、攪拌した後、ロックウール(太平洋マテリアル株式会社製 太平洋ミネラルファイバ、SiO
2:42.3重量%、CaO:35.5重量%、Al
2O
3:15.5重量%、MgO6.4重量%、Fe
2O
3:0.6重量%、平均繊維径:5.0μm)100重量部を添加し、1分間よく攪拌した。
【0098】
次に、酸化チタン(キンセイマティック社製のルチルフラワーS)を10重量部加え、1分間よく攪拌した。
【0099】
次に、シリカゾル(日産化学工業社製のスノーテックス30(SiO
2濃度:30重量%))を16.7重量部(固形分換算で5.0重量部)加え、再び、1分間よく攪拌した。
【0100】
次に、カチオン性凝集剤(荒川化学工業社製のポリストロン705)を20重量部(固形分換算で2.0重量部)加え、1分間攪拌した後、アニオン性凝集剤(明成化学工業社製のファイレックスM)を3重量部(固形分換算で0.3重量部)加え、1分間攪拌し、その後10分間放置し、凝集体を作製した。
続いて、形成された凝集体を含むスラリーを脱水用の型に流し込み、脱水成形を行うことにより水分を含む成形断熱体を作製した。
この後、水分を含む成形断熱体を105℃で乾燥させた後、切削加工を行い断熱材を製造した。添加したカチオン化澱粉等の添加物質の重量(重量部)を表3に示す。
【0101】
また、実施例1の場合と同様に、凝集体を作製した際のスラリーの上澄み液を採取し、上澄み液の透明度を測定して、スラリーの凝集性を評価した。上澄み液の吸光度の測定結果を表4に示す。
【0102】
さらに、実施例1の場合と同様に、凝集体の脱水試験による凝集性の評価も行った。脱水時間の測定評価結果を表4に示す。
【0103】
(実施例5及び6)
カチオン化澱粉、酸化チタン、生体溶解性ファイバ、シリカゾル、カチオン性凝集剤及びアニオン性凝集剤の量を変えた他は、実施例1と同様にして、カチオン化澱粉、酸化チタン、シリカゾル、カチオン性凝集剤及びアニオン性凝集剤を加え、水中に投入した無機繊維を凝集させ、脱水成形することにより断熱材を製造した。添加したカチオン化澱粉等の添加物質の重量(重量部)を表3に示す。なお、実施例4〜6では、酸価チタンの添加量を10重量部〜70重量部の範囲で変化させている。
【0104】
また、実施例1と同様に、スラリーの上澄み液の吸光度を求めることによりスラリーの凝集性を評価した。スラリーの上澄み液の吸光度の測定結果を表4に示す。
【0105】
さらに、実施例1の場合と同様に、凝集体の脱水試験による凝集性の評価も行った。脱水時間の測定結果を表4に示す。さらに、実施例5で得られた断熱材について、実施例1の場合と同様に、密度及び曲げ強度を測定した。その結果を表4に示す。
【0106】
(比較例2〜4)
カチオン化澱粉、カチオン性凝集剤又はアニオン性凝集剤の添加量を表3に示した重量に変えた(比較例2ではカチオン化澱粉を添加しない、比較例3ではカチオン性凝集剤を添加しない、比較例4ではアニオン性凝集剤を添加しない)ほかは、実施例4と同様にして、カチオン化澱粉、シリカゾル、カチオン性凝集剤及びアニオン性凝集剤を使用して、水中に投入した無機繊維を凝集させ、脱水成形することにより断熱材を製造した。添加したカチオン化澱粉等の添加物質の重量(重量部)を表3に示す。
【0107】
また、実施例1と同様に、スラリーの上澄み液の吸光度を求めることによりスラリーの凝集性を評価した。スラリーの上澄み液の吸光度の測定結果を表4に示す。
【0108】
さらに、実施例1の場合と同様に、凝集体の脱水試験による凝集性の評価も行った。脱水時間の測定結果を表4に示す。さらに、比較例2で得られた断熱材について、実施例1の場合と同様に、密度及び曲げ強度を測定した。その結果を表4に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
表3及び表4から明らかなように、実施例4〜6の場合には、カチオン化澱粉を最初に添加しているため、ロックウールを無機繊維として使用し、酸化チタンを無機粒子として添加した場合にも、カチオン化澱粉を添加していない比較例2の上澄み液の吸光度0.93と比べて、実施例4〜6の上澄み液の吸光度は、0.107、0.122、0.154と低く、上澄み液が透明となっている。そのことから、実施例4〜6では、凝集体が良好に凝集しているということができる。
それに伴って脱水時間も比較例2の40秒と比べて、実施例4〜6の脱水時間は、それぞれ30秒、27秒、29秒と短く、効率よく脱水作業を行うことができることがわかる。また、実施例5の密度は、0.38g/cm
3と比較例2の密度0.32g/cm
3と比べて高く、実施例5の曲げ強度は、1.98MPaと比較例2の曲げ強度0.14MPaに比べて高くなっている。そのことから、実施例4〜6の場合には、比較例2の場合と比べて、得られた断熱材の密度が高く、強度も高くなっていると考えられる。
【0112】
一方、比較例3及び4の場合には、カチオン化澱粉を添加していないか、カチオン凝集剤を添加していないか、アニオン性凝集剤を添加していないので、上澄み液の吸光度はそれぞれ0.323、0.277と実施例4〜6に比べて高く、無機繊維の凝集状態が良好でないことがわかる。それに伴って比較例3及び4の脱水時間もそれぞれ46秒、39秒と長く、効率よく脱水作業を行うことができないことがわかる。従って、比較例3及び4の場合には、得られた断熱材の密度も低く、強度も低い状態に留まっていることがわかる。
【0113】
(実施例7〜9及び比較例5)
実施例7〜9及び比較例5では、無機粒子として酸化チタンに代えてベントナイト(水澤化学工業社製のエードプラス)を使用した。
ベントナイトを含むカチオン化澱粉等の添加物質の重量を変えた他は、実施例4と同様にして、カチオン化澱粉、ベントナイト、シリカゾル、カチオン性凝集剤及びアニオン性凝集剤を加え、水中に投入した無機繊維を凝集させ、脱水成形することにより断熱材を製造した。添加したカチオン化澱粉等の添加物質の重量(重量部)を表5に示す。なお、実施例7〜9では、ベントナイトの添加量を2重量部〜40重量部の範囲で変化させており、比較例5では、カチオン化澱粉を添加していない。
【0114】
また、実施例1と同様に、スラリーの上澄み液の吸光度を求めることによりスラリーの凝集性を評価した。スラリーの上澄み液の吸光度の測定結果を表6に示す。
【0115】
また、実施例1の場合と同様に、凝集体の脱水試験による凝集性の評価も行った。脱水時間の測定結果を表6に示す。
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
表5及び表6から明らかなように、実施例7〜9の場合には、カチオン化澱粉を最初に添加しているため、無機繊維として生体溶解性ファイバを使用し、無機粒子としてベントナイトを使用した場合にも、カチオン化澱粉を添加していない比較例5(上澄み液の吸光度0.222)の場合と比べて、実施例7〜9の上澄み液の吸光度は、0.127、0.101、0.063と低く、上澄み液が透明となっている。上澄み液が透明になっているので、実施例7〜9では、良好に凝集しているということがわかる。
それに伴って脱水時間も、比較例5の2分11秒と比べて、実施例7〜9は、それぞれ1分32秒、40秒、18秒と短く、効率よく脱水作業を行うことができることがわかる。
【0119】
(実施例10〜12及び比較例6)
実施例10〜12及び比較例6では、無機粒子として酸化チタンを使用し、無機繊維として実施例1で使用したものと同様の生体溶解性ファイバを使用した。
酸化チタン及びロックウール等を含む添加物質の重量を変えた他は、実施例4と同様にして、カチオン化澱粉、酸化チタン、シリカゾル、カチオン性凝集剤及びアニオン性凝集剤を加え、水中に投入した無機繊維を凝集させ、脱水成形することにより断熱材を製造した。添加したカチオン化澱粉等の添加物質の重量(重量部)を表7に示す。なお、実施例10〜12では、酸価チタンの添加量を10重量部〜70重量部の範囲で変化させており、比較例6では、カチオン化澱粉を添加していない。
【0120】
また、実施例1と同様に、スラリーの上澄み液の吸光度を求めることによりスラリーの凝集性を評価した。スラリーの上澄み液の吸光度の測定結果を表8に示す。
【0121】
また、実施例1の場合と同様に、凝集体の脱水試験による凝集性の評価も行った。脱水時間の測定結果を表8に示す。
【0122】
【表7】
【0123】
【表8】
【0124】
表7及び表8から明らかなように、実施例10〜12の場合には、カチオン化澱粉を最初に添加しているため、無機繊維として生体溶解性ファイバを使用し、無機粒子として酸価チタンを使用した場合にも、カチオン化澱粉を添加していない比較例6(上澄み液の吸光度1.011)の場合と比べて、実施例10〜12の上澄み液の吸光度は、0.098、0.129、0.146と低く、上澄み液が透明となっている。上澄み液が透明になっているので、実施例10〜12では、良好に凝集しているということがわかる。
それに伴って脱水時間も、比較例6の45秒と比べて、実施例10〜12の脱水時間は、それぞれ25秒、22秒、27秒と短く、効率よく脱水作業を行うことができることがわかる。
以上、表1〜表8から明らかなように、本発明の断熱材の製造方法により、短時間で無機繊維(及び無機粒子)を含む混合物を迅速に凝集させることができ、その後、凝集体を型に投入し、脱水成形することより、生産性よく、断熱材を製造することができることが判る。特に、無機繊維として、生体溶解性ファイバ、ロックウールを使用した場合、極めて効率よく断熱材を製造することができることがわかる。なお、無機繊維として、アルミナファイバ、シリカ−アルミナファイバ、又は、シリカアルミナジルコニアファイバを用いても同様の結果が得られると考えられる。
【0125】
(その他の実施形態)
本発明の第一実施形態及び本発明の第二実施形態では、カチオン性ポリマーを水中に投入し、分散又は溶解させた後、無機繊維を投入したが、カチオン性ポリマーと無機繊維の投入順序は、特に限定されるものはなく、無機繊維を先に投入した後、カチオン性ポリマーを投入してもよい。
【0126】
また、本発明の断熱材の製造方法において、吸引濾過による成形時の成形性を向上させるために、スラリーに有機バインダーを添加してもよい。有機バインダーとしては特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、アクリルゴム等のゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの中では、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
【0127】
本発明の断熱材の製造方法により製造された断熱材は、上記のように、充分な密度、強度を有し、かつ、高温で使用された場合にも充分な強度を保つので、工業炉、ヒータ等の用途に好適に用いることができる。