(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正券クレジット管理手段を備え、前記正券クレジット管理手段は前記身長計測手段の身長計測結果に基づく前記有償旅客検出手段の有償旅客検出結果に基づいて正券クレジットの消去を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動改札機。
【背景技術】
【0002】
現在の鉄道事業において鉄道旅客は、「乗車券を必要とする大人・小児の旅客(有償旅客)」と「乗車券を必要としない幼児・乳児の旅客(無償旅客)」とに分けられている。旅客営業規則によれば、前者の有償旅客は6歳以上の者、後者の無償旅客は6歳未満の者と定められている。
【0003】
他方、実際の自動改札機では年齢による旅客の識別を行わず、旅客の身長によって有償または無償の旅客の識別を行っている。具体的な構成としては、自動改札機の機械本体の上面部に大人検知用センサとして一定間隔で例えば3個の反射型光学センサを設けており、この反射型光学センサの受光状態に基づいて旅客の身長について124cm未満または124cm以上を推定し、有償または無償の識別を行っていた。
【0004】
しかしながら、実際の問題として、反射型光学センサの死角を利用し、有償旅客のしゃがみ通行によって無賃乗車(「無償旅客成りすまし通行」)等の不正通行問題が存在している。
【0005】
上記の問題を解決する従来の手法として特許文献1に記載されたゲート装置がある。このゲート装置では、幼児でない有償旅客の者が幼児に成りすまし、通行券を持たずに通路を不正を通行するのを検知することができる。具体的に、このゲート装置によれば、3箇所の反射型光学センサおよび透過型光学センサの各々の受光状況により有償旅客を検知するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の従来手法の場合には、有償旅客が3箇所の反射型光学センサが一度も受光しないように通行した場合には無償旅客と誤って識別され、しゃがみ込み位置の影響を受けやすいという問題が残っている。さらに反射型光学センサによれば、瞬間的な身長判定であるため、旅客の荷物や姿勢により誤検知が発生するという問題も存在する。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、有償旅客がしゃがみ通行による不正通行を行うことを高い精度で抑止できる自動改札機を提供することにある。
また本発明の他の目的は、正券クレジット余りを抑止することができる自動改札機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る自動改札機は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0010】
第1の自動改札機(請求項1に対応)は、旅客の通行を許可または禁止する開閉ドアと、開閉ドアの開閉動作を制御する改札機制御手段とを備える自動改札機であり、さらに、改札通路に進入した旅客の身長を計測するための情報を出力する身長計測用センサと、身長計測用センサのセンサ出力に基づき
、旅客の身長を
、一定期間の間連続して計測した身長値に基づき算出された統計的身長値として計測する身長計測手段と、身長計測手段の身長計測結果に基づき有償旅客であるか否かを検出する有償旅客検出手段とを備え、改札機制御手段は、有償旅客検出手段の有償旅客検出結果に基づいて開閉ドアの開閉動作を制御する制御信号を出力し、有償旅客のしゃがみ通行による不正通行を阻止する制御を行うように構成される。
【0011】
上記の自動改札機では、有償旅客の改札機制御で改札通路を通行する有償旅客の高さを身長計測用センサのセンサ出力に基づき身長計測手段で計測した身長により判断するようにしたため、改札通路の通行途中でしゃがみ通行を行ったとしても高い精度で確実に有償旅客であることを検知することができ、しゃがみ通行による不正通行を阻止することができる。
特に、統計的身長決定に基づいて身長値を確定するので外乱に強く、ロバスト制御を行うことができる。
【0012】
第2の自動改札機(請求項2に対応)は、
旅客の通行を許可または禁止する開閉ドアと、開閉ドアの開閉動作を制御する改札機制御手段とを備える自動改札機であり、
改札通路に進入した旅客の身長を計測するための情報を出力する身長計測用センサと、
身長計測用センサのセンサ出力に基づき旅客の身長を計測する身長計測手段と、
身長計測手段の身長計測結果に基づき有償旅客であるか否かを検出する有償旅客検出手段と、
複数の赤外線センサとこれらの赤外線センサのセンサ出力に基づく有償旅客検出手段とを備え、
赤外線センサのセンサ出力に基づく有償旅客検出手段で有償旅客でないと判断されたときに、身長計測手段の身長計測結果に基づく有償旅客検出手段の検知動作を行い、
改札機制御手段は、有償旅客検出手段の有償旅客検出結果に基づいて開閉ドアの開閉動作を制御する制御信号を出力し、有償旅客のしゃがみ通行による不正通行を阻止する制御を行うことを特徴とする。
【0013】
第3の自動改札機(請求項3に対応)は、
上記の第2の構成において、好ましくは、身長計測手段が出力する身長計測結果は、一定期間の間連続して計測した身長値に基づき算出された統計的身長値であることを特徴とする。この構成によれば、統計的身長決定に基づいて身長値を確定するので外乱に強く、ロバスト制御を行うことができる。
【0014】
第4の自動改札機(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、正券クレジット管理手段を備え、正券クレジット管理手段は身長計測手段の身長計測結果に基づく有償旅客検出手段の有償旅客検出結果に基づいて正券クレジットの消去を行うことを特徴とする。この構成によれば、有償旅客の検知を確実に行うことができるため、正券クレジット余りを抑止することができる。
【0015】
第5の自動改札機(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、警告装置を備え、改札機制御手段は開閉ドアの開閉動作と共に警告装置の警告動作を制御することを特徴とする。
【0016】
第6の自動改札機(請求項6に対応)は、上記の構成において、好ましくは、身長計測用センサは、改札機本体または天井部に設置された撮像装置または距離センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る自動改札機によれば、改札機制御において有償旅客であるか否かの検知を、改札通路を通行する旅客の高さを身長計測用センサのセンサ出力に基づき身長計測手段で計測した身長に基づいて判断して行うようにしたため、改札通路の通行途中で有償旅客がしゃがみ通行を行って不正通行しようとしても高い精度で確実に有償旅客であることを検知することができ、しゃがみ通行による不正通行を確実に抑止することができる。
さらに、身長計測用センサのセンサ出力に基づき身長計測手段で計測した身長に基づいて有償旅客であるか否かを判断して有償旅客の検知精度が高くなったため、正券クレジット情報の管理においても正券クレジット余りを抑止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
本発明に係る自動改札機の実施形態を説明する。この実施形態に係る自動改札機では、有償旅客がしゃがみ通行による不正通行を行うことを抑止するための構成を有している。先ず、
図1および
図2を参照して、自動改札機に装備された装置構成を説明する。
【0021】
図1は、自動改札機10において、改札通路11側からみた一方の改札機本体10Aの正面図を示す。
図1において、例えば、11Aは通路入口であり、11Bは通路出口である。改札通路11を通行しようとする旅客は矢印D1で示す方向に移動する。改札機本体10Aにおいて、通路入口11AにはICカードタッチ部(ICカード読取り装置)12と磁気券投入部(磁気券読取り装置)13が設けられ、通路出口11B側には表示部14が設けられている。改札機本体10Aの上面の例えば中央部には2つの身長計測用センサ15が設けられている。身長計測用センサ15には、例えばカメラまたは距離センサが用いられる。2つの身長計測用センサ14の各々の検知領域はそれぞれの破線矢印15−1に示す方向に向けられている。通路入口11Aから進入しかつ改札通路11を通行している旅客は
図1中右側の身長計測用センサ15によって検知される。また改札機本体10Aの内面側において、通路入口11Aおよび通路出口11Bの各々に通行阻止用の開閉ドア16が備えられる。開閉ドア16はドア駆動装置16Aにより駆動される。さらに改札機本体10Aの内面の所定の高さには改札通路11を移動する物体の存在を検知する複数の赤外線センサ17が備えられている。改札機本体10Aの内部には、身長計測用センサ15からのセンサ出力、複数の赤外線センサ17の各々からのセンサ出力を読込み、改札通路11を移動する物体(旅客)を検出し、その身長を計測し、開閉ドア16等の動作を制御する制御装置18が設けられている。また符号19は警告灯を示している。さらに警告音発生器(
図1中図示せず)も設けられている。
【0022】
有償旅客は、改札通路11に進入する時に、改札行為として、ICカードタッチ部12に対して非接触ICカードをタッチするか、または磁気券を磁気券投入部13に投入する。非接触ICカードおよび磁気券は乗車券として機能する。
【0023】
図2は、自動改札機10で、有償旅客がしゃがみ通行による不正通行を行うことを抑止するための構成についての機能ブロック図を示す。
図2において、上記の制御装置18は制御信号を生成する演算処理部21とメモリ22を有している。演算処理部21は、改札制御機能を有する改札機制御部23を備える。改札機制御部23から出力される制御信号はドア部24に与えられる。ドア部24は上記の開閉ドア16とこれを動作させるドア駆動装置16Aとから構成される。複数の赤外線センサ17の各々のセンサ出力は、物体検出部25と、赤外線センサに基づく有償旅客検出部26とに入力される。物体検出部25の物体検出結果と赤外線センサに基づく有償旅客検出部26の有償旅客検出結果とは、改札機制御部23に入力される。身長計測用センサ15のセンサ出力は、演算処理部21の身長計測部27に入力される。身長計測部27は、身長計測用センサ15から与えられるセンサ出力(画像情報、距離情報等)に基づいて、改札通路11を通行する物体(旅客)の身長を計測する。身長計測部27からは求められた身長計測結果が出力され、メモリ22に記憶される。身長計測部27で求められた複数の身長計測結果はメモリ22に保存される。メモリ22に保存された身長計測の履歴データは演算処理部21の身長計測に基づく有償旅客検出部28に与えられる。この有償旅客検出部28では、身長計測のデータ(統計的身長値データ)に基づいて有償旅客検出結果を求める。求めた有償旅客検出結果は改札機制御部23に与えられる。改札機制御部23は、物体検出部25、2つの有償旅客検出部26,28の各々の出力を用いて、有償旅客がしゃがみ通行による不正通行を行うことを検出し、出力される制御信号に反映させる。改札機制御部23からの制御信号は、警告灯19や警告音発生器等の警告装置にも与えられ、その警告動作を制御する。
【0024】
次に
図3を参照して自動改札機10における改札機制御の流れを説明する。
【0025】
最初の判断ステップS11では赤外線センサ17によるセンサ出力に基づいて物体(旅客)が検知された否かが判断される。判断ステップS11でNOのときには判断ステップS11を定期的に繰り返す。判断ステップS11でYESのときには次の処理ステップS12に移行し、この処理ステップS12では赤外線センサ17のセンサ出力に基づく有償旅客検出を行う。次の判断ステップS13では、処理ステップS12で得られた有償旅客検出結果によって有償旅客か否かが判断される。判断ステップS13で、有償旅客である(YES)と判断された場合には次の判断ステップS14で正券クレジットがあるか否かが判断され、有償旅客でない(NO)と判断された場合には身長計測用センサ15のセンサ出力に基づいて身長計測が行われる(処理ステップS15)。すなわち、赤外線センサ17に基づく有償旅客検出により判断ステップS13で有償旅客でないと判断された場合には、身長計測用センサ15のセンサ出力に基づいて身長計測が行われ、さらに次のルーチンステップ(定義済み処理ステップ)S16で身長計測に基づく有償旅客検出が実行される。そしてこの有償旅客検出のルーチンステップS16で得られた有償旅客検出結果に基づいて次の判断ステップS17で有償旅客か否かが判断される。判断ステップS17で、有償旅客である(YES)と判断された場合には上記の判断ステップS14で正券クレジットがあるか否かが判断され、有償旅客でない(NO)と判断された場合には処理を終了する。
【0026】
上記のように、本実施形態に係る自動改札機10によれば、有償旅客がしゃがみ通行による不正通行を行うことを抑止するため、最初には赤外線センサ17に基づいて有償旅客である否かを検出し、さらに赤外線センサ17に基づく有償旅客検出で有償旅客でないと判断された場合には、続いて身長計測用センサ15に基づく有償旅客検出で有償旅客であるか否かを判断するように構成している。
【0027】
判断ステップS14では正券クレジットがあるか否かが判断される。ここで「正券クレジット」とは、要約すれば、自動改札機10を通行しようとする者が正当な権利に基づいて通行することができる旅客である場合に当該旅客に対応して「1」をカウントして記録されるデータである。上記の2つの判断ステップS13,S17の各々において有償旅客である(YES)と判断される場合において、自動改札機10の改札通路11に進入して通過しようとする者が有償旅客であってかつ当該有償旅客が正当に手続(有効な乗車券を用いた改札行為)を行うことにより通過する資格を有するものである場合には「正券クレジット」が自動改札機10の改札機制御部23側のシステムで発生しているはずであるので、当該正券クレジットは存在し、判断ステップS14でYESと判断され、その後、改札通路11を出たことが検出されたときには発生した正券クレジットを消去するという処理を行う(処理ステップS18)。他方、判断ステップS14でNOである場合には、通過阻止処理のルーチンステップS19が実行される。この場合には、正券クレジットが存在しないのであるから、有償旅客であると判断されたにも拘わらず、この者が正当に手続を行わないで通過しようとしていることを意味しており、そのため既知の改札機制御に係るルーチンステップS19に基づいて通過阻止処理が実行される。「通過阻止の処理」では、例えば、改札通路11の通路出口11B側の開閉ドアを閉じて通行を阻止する共に、警告音の発生や警告等の表示、カメラ等による不正旅客の録画等が行われる。処理ステップS18、またはルーチンステップS19の実行が完了すると、処理の流れは終了する。
【0028】
次に、
図4を参照して、上記のルーチンステップS16による身長計測に基づく有償旅客検出の処理内容の一例について説明する。最初のステップでは、身長計測用センサ15から出力されたセンサ出力を用いて身長計測部27等で統計的身長決定のルーチンステップS21が実行される。ルーチンステップS21の具体的な処理内容は
図5に示される。ルーチンステップS21によって決定された統計的身長値に基づいて、次の判断ステップS22で当該統計的身長値が設定された閾値H以上であるか否かが判断される。判断ステップS22でYESである場合には検知された旅客を有償旅客とし(処理ステップS23)、NOである場合には当該旅客を無償旅客とする(処理ステップS24)。
【0029】
上記の有償旅客の検出例では、閾値Hと1回だけ比較することに基づいて有償旅客であるかまたは無償旅客であるかが判断される。
【0030】
次に、
図5を参照して、上記のルーチンステップS21による統計的身長決定の処理内容について説明する。この処理の中では2つの値m(t),aveh(t−n:t)が用いられている。m(t)は「時刻tにおける統計的身長決定結果」を意味し、aveh(t−n:t)は「時刻t−nから時刻tまでの身長の平均値」を意味している。なお身長の平均値を求めるための元となるh(t)は「時刻tにおける身長計測結果」を意味する。最初の判断ステップS31では時刻tが設定値T以上であるか否かが判断される。設定値Tは検知対象の旅客の身長の平均値を求めることが可能な最小の時刻(t−nの時の身長値が存在)である。判断ステップS31でNOである場合には、値m(t)には0を代入し(処理ステップS32)、処理を終了する。判断ステップS31でYESである場合には、aveh(t−n:t)を算出する(処理ステップS33)。そして、その後、算出した身長の平均値 aveh(t−n:t)が前回算出した身長の平均値m(t−1)よりも大きいか否かを判断する(判断ステップS34)。判断ステップS34でYESである場合には、今回算出した身長の平均値 aveh(t−n:t)を値m(t)に代入し(処理ステップS35)、処理を終了する。判断ステップS34でNOである場合には、値m(t)に前回算出した身長の平均値m(t−1)を代入し(処理ステップS36)、処理を終了する。以上によって、時刻tが設定値T以上となる度に一定期間の身長の平均値 aveh(t−n:t)が算出され、最も大きな値となった身長の平均値が更新されて値m(t)として最終的に求められる。この値m(t)が、前述の統計的身長決定のサブルーチンステップS16の決定結果となり、前述の判断ステップS17での「統計的身長」に係る値データとして用いられる。
【0031】
上記の通り、一定期間の身長の平均値を求め、それまでに最も高い値を与えた平均値を統計的身長値として用いるため、判断・検知の精度を高めることができる。
【0032】
なお、ルーチンステップS21による統計的身長決定の処理については、
図6に示すように分散値を用いて統計的身長値を算出することもできる。
図6のフローチャートにおいて、
図5のフローチャートで説明したステップと同じ内容のステップには同一の符号を付している。従って、判断ステップS31、処理ステップS32,S33,判断ステップS34,処理ステップS35,S36は、
図5のフローチャートで説明したものと同じである。
図6の処理の流れの特徴は、処理ステップS33と判断ステップS34との間に、処理ステップS41と判断ステップS42が設けられる点である。処理ステップS41では、時刻t−nから時刻tまでの一定時間における平均身長値の分散値v(t−n:t)を算出する。そして次の判断ステップS42では、算出した平均身長値の分散値v(t−n:t)が閾値V未満であるか否かが判断される。この判断ステップS42でNOであるときには処理ステップS36に移行し、YESであるときには判断ステップS34に移行する。
【0033】
図6に示した分散値を用いた統計的身長値の計算では、算出された分散値v(t−n:t)が閾値Vよりも大きくなる場合には今回算出された身長の平均値は不正確なもの(外乱的なもの)として使用せず、前回算出した身長の平均値で更新処理を行う(処理ステップS36)。これにより、外乱的に生じる不正確な身長の平均値を取り除き、より不自然な通行の場合に対しても対応することができる。
【0034】
さらに前述した
図4に示した有償旅客の検出処理の流れに関しては、
図7に示すような検出処理の流れに変更することもできる。
図7に示す有償旅客の検出処理の流れでは、前述の判断ステップS22では閾値Hとの1回だけの比較に基づいて有償旅客であることを判断したのに対して、この判断ステップS51では、閾値H以上の平均身長値の検出回数が設定された閾値N以上であることを条件にして有償旅客あると判断し、その後有償旅客とする処理を行っている(処理ステップS23)。この場合には統計的身長決定のルーチンステップS21において検出回数をカウントする処理が行われるものとする。これによれば、統計データを用いて判断するため、身長計測に基づく有償旅客の検出についてより精度を高くできる。
【0035】
前述した身長計測に基づく有償旅客検出のルーチンステップS16において(機能要素としては
図2に示した身長計測部27)、身長計測用センサ15のセンサ出力を利用して統計的な身長計測結果(統計的身長値)を求め、これにより有償旅客であるかまたは無償旅客であるかを判断する手法は、
図8に示したグラフ(A),(B),(C),(D)の特性を根拠に置いている。
図8の(A)は有償旅客の通常の通行状態における身長mの時間経過に伴う変化状態を示す。この場合、身長mは閾値の身長124cmよりも高い上側の位置に安定して生じている。
図8の(B)は有償旅客の一部しゃがみ通行による通行状態における身長mの時間経過に伴う変化状態を示す。この場合、身長mは、しゃがみ行為を行う時点から閾値の身長124cmよりも低くなる変化が生じる。
図8の(C)は無償旅客の通常の通行状態における身長mの時間経過に伴う変化状態を示す。この場合、身長mは閾値の身長124cmよりも低い下側の位置に安定して生じている。
図8の(D)は無償旅客の飛び跳ね通行による通行状態における身長mの時間経過に伴う変化状態を示す。この場合、身長mは、飛び跳ね行為を行う時点においてのみ閾値の身長124cmよりも高くなる変化が生じる。
【0036】
改札通路11を通行中の旅客に関して以上の通りの身長の変化パターンが生じるので、身長計測用センサ15のセンサ出力を利用して前述の通り統計的な身長計測結果(統計的身長値)を求めることにより、特に有償旅客であるか否か、そして有償旅客の一部しゃがみ通行であるか否かを、正確に計測し、判断・検知することができる。判断に用いる身長値は統計的に処理された値を用いるため、しゃがみ通行や通行中の不自然な動き(飛び跳ね等)等の外乱的な変化に対して高い正確度で判断・検知することができ、自動改札機10の改札機制御にてロバスト制御を行うことができる。
【0037】
次に
図9を参照して本発明に係る自動改札機の他の実施形態を説明する。この他の実施形態に係る自動改札機10の改札機制御では、統計的身長決定を利用した身長計測に基づく有償旅客検出および判断の構成を含み、さらに、正券クレジット余りを抑止するための構成を有している。
【0038】
ここで「正券クレジット」とは、非接触ICカード等の乗車券がICカードタッチ部12等で読み取られて正券であると判断されたときには改札通路11の通行を許可する1つの通行権が生成されるが、当該通行権に相当するものである。生成された「正券クレジット」は正券クレジット情報としてメモリ(正券カウンタ等)に記憶される。この正券クレジット情報は、当該乗車券の有償旅客が改札通路11から出たことが人間検知用の上記赤外線センサ17によって検知されるまで当該メモリに記憶され、管理される。このように自動改札機10の制御装置18には正券クレジット管理部が設けられている。
【0039】
従って「正券クレジット余り」とは、自動改札機10を通行する正当な有償旅客が通路入口11Aから改札通路11内に入る時の改札行為で正券クレジット情報をメモリに記憶し、かつ有償旅客が通路出口11Bから改札通路11を出たにも拘わらず、何らかの原因でメモリの正券クレジット情報が消去されず、残ることを意味する。「正券クレジット余り」が生じる主な原因は、有償旅客が通路入口11Aで正当な改札行為を行ったにも拘わらず、改札通路11の通行途中に不自然な動作を行ったため、自動改札機11側の改札機制御部23が有償旅客を見失い、通路出口11Bから出たことを確認できず、正券クレジット情報を消去できないことである。しかし、本実施形態による自動改札機10によれば、有償旅客が改札通路11の途中で不自然な動作を行っても、前述した通り身長計測に基づく有償旅客検出(処理ステップS15、ルーチンステップS16)を行うため、確実に当該有償旅客を検出することができ、正券クレジット情報をメモリから消去することができる。
【0040】
図9に従ってその処理の流れを説明する。最初の処理ステップS61では通行阻止用の開閉ドア16の動作状態を初期化する。通常的には開いた状態に維持される。或る旅客(有償旅客か無償旅客かは不明であるとする。)が自動改札機10の改札通路11に進入しようとする。このとき、有償旅客であれば、通常的には、通路入口11Aで正当な改札行為を行う。
図9のフローチャートでは改札行為および改札処理に関係する内容の図示は省略されている。旅客が改札通路11に入ると同時に統計的身長値算出開始のためのルーチンステップS62が実行される。このルーチンステップS62は、前述した身長計測に基づく有償旅客検出(処理ステップS15、ルーチンステップS16)の前段部分に相当する。次に、判断ステップS63で正券クレジットが有るか否かが判断される。判断ステップS63でYESである場合には次の処理ステップS64で開閉ドア16を開状態に保持してさらに次の判断ステップS65に移行し、NOである場合には処理ステップS64を飛ばして判断ステップS65に移行する。判断ステップS65で正券クレジット有りと判断される場合には正当な改札行為が行われたことを意味する。判断ステップS65で正券クレジット無しと判断された場合には改札行為がされなかったことを意味する。
【0041】
判断ステップS65では、旅客の位置が無札判定位置より出口側であるか否かが判断される。判断ステップS65でYESである場合には統計的身長値取得のためのルーチンステップS66に移行し、NOである場合には判断ステップS67に移行する。
【0042】
判断ステップS67では赤外線センサ17のセンサ出力を利用して旅客が自動改札機10の通路入口11Aから出場したか否かが判断される。判断ステップS67でYESの場合には、結局、旅客は自動改札機10を利用しなかったことを意味するので、処理は終了する。判断ステップS67でNOである場合には、旅客は改札通路11内にいることになるので、開閉ドア16を継続して常時開状態に保つか否かを判断する(判断ステップS68)。この判断ステップS68でYESの場合には開閉ドア16を開状態に保持し(処理ステップS69)、判断ステップS63に戻る。判断ステップS68でNOである場合には、開閉ドア16が閉まっており、直接に判断ステップS63に戻る。判断ステップS63では、旅客が再び正当な改札行為を行った否かを判断する。
【0043】
他方、ルーチンステップS66は、前述した身長計測に基づく有償旅客検出(処理ステップS15、ルーチンステップS16)の後段部分に相当する。これにより旅客の統計的身長値に基づき当該旅客が有償旅客か否かが判断され、検出される。ルーチンステップS66を実行した後、判断ステップS70が実行される。この判断ステップS70では、旅客が自動改札機10の通路出口11Bから出場したか否かが判断される。判断ステップS70でYESのときには判断ステップS71が実行され、NOのときには判断ステップS72が実行される。2つの判断ステップS71,S72のいずれにおいても、取得された統計的身長値に基づいて旅客が有償旅客(身長が124cm以上の者)であるか否かが判断される。
【0044】
判断ステップS71でNOである場合には、無償旅客であるから、処理の流れを終了する。判断ステップS71でYESの場合には、次の判断ステップS73で正券クレジットが有るか否かが判断され、正券クレジットがある場合には正券クレジットを消去する処理が行われる(処理ステップS74)。これにより、正券クレジットが存在する場合には当該正券クレジット情報を確実に消去することができる。判断ステップS73で、正券クレジットが無いと判断された場合には、開閉ドア16の状態が開か否かを判断し(判断ステップS75)、判断ステップS75でYESであるときにはしゃがみ通行検知処理のルーチンステップ(処理ステップS76)を実行し、判断ステップS75でNOであるときには強行突破検知処理のルーチンステップ(処理ステップS77)を実行する。しゃがみ通行検知処理のルーチンステップの処理ステップS76では、有償旅客の不正なしゃがみ通行を防止するため開閉ドア16を閉じ警告する処理を行う。強行突破検知処理のルーチンステップの処理ステップS77では、有償旅客の不正な強行突破を警告音、警告表示で警告し、録画等で記録する処理を行う。
【0045】
判断ステップS72でNOである場合には、無償旅客であるから、処理の流れを判断ステップS63まで戻る。この場合には、判断ステップS70でNO(通路出口11Bから出場していない)でありかつ判断ステップS72でNO(無償旅客)であることから、判断ステップS70でYESになるまで、再度、ステップS63,S64,S65,S66,S70等を繰り返す。判断ステップS72でYESの場合には、次の判断ステップS78で正券クレジットが有るか否かが判断され、正券クレジットがある場合(YES)には判断ステップS63に戻る。また判断ステップS78で正券クレジットがない場合(NO)には、開閉ドア16を閉じて(処理ステップS79)、判断ステップS63に戻る。この場合には、判断ステップS70でNO(通路出口11Bから出場していない)でありかつ判断ステップS72でYES(有償旅客)であることから、判断ステップS70でYESになるまで、再度、ステップS63,S64,S65,S66,S70等を繰り返す。
【0046】
以上の処理の流れで明らかなように、統計的身長決定を利用した身長計測に基づく有償旅客検出および判断の構成、すなわち、統計的身長値算出開始のためのルーチンステップS62および統計的身長値取得のためのルーチンステップS66によって、統計的身長値を計測することに基づき有償旅客を判断・検知するようにしたため、判断ステップS73,処理ステップS74によって確実に正券クレジットを消去することができ、正券クレジット余りを抑止することができる。
【0047】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。