(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763984
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】端子接点構造及びこの端子接点構造を備えた端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/04 20060101AFI20150723BHJP
H01R 13/187 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
H01R13/04 E
H01R13/187 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-137036(P2011-137036)
(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公開番号】特開2013-4440(P2013-4440A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 元
(72)【発明者】
【氏名】安藤 修平
(72)【発明者】
【氏名】松本 輝満
【審査官】
塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−044256(JP,A)
【文献】
米国特許第05667413(US,A)
【文献】
米国特許第06062919(US,A)
【文献】
特開2012−252974(JP,A)
【文献】
特開2010−140829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/04
H01R 13/187
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手端子の導通部が挿入される挿入部と、この挿入部に設けられ前記相手端子の導通部に接触される複数の接触部とを備えた端子接点構造であって、
前記複数の接触部は、前記挿入部と一体に形成され、前記相手端子の導通部の挿入方向に対して複数列配置された接触支持部に設けられ、前記複数の接触部は、前記挿入方向に対して前後にずれて配置されていることを特徴とする端子接点構造。
【請求項2】
請求項1記載の端子接点構造であって、
前記各接触支持部に設けられた前記複数の接触部は、前記挿入方向に対して前後にずれて配置されていることを特徴とする端子接点構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の端子接点構造を備え、相手端子と嵌合される嵌合部と、この嵌合部と一体に設けられ電線と接続される接続部とを備えた端子であって、
前記挿入部は、前記嵌合部に配置されていることを特徴とする端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子接点構造及びこの端子接点構造を備えた端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相手端子との接点が複数設けられた端子接点構造としては、相手端子の導通部としての板状端子が挿入される挿入部としてのフレーム部材と、このフレーム部材に設けられ相手端子の板状端子に接触される複数の接触部としての回動部材とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この端子接点構造では、回動部材がフレーム部材に対して捩られて板状端子に対して付勢されるので、フレーム部材と回動部材との接続部分の幅を変えることで、回動部材の板状端子に対する付勢力を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−250362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような端子接点構造では、回動部材のような複数の接触部が相手端子の導通部の挿入方向に対して1列に配列されているので、導通部と接触部との接点位置が挿入方向の1点に集中してしまい、相手端子の最大挿入力が非常に高くなってしまっていた。
【0006】
そこで、この発明は、相手端子の最大挿入力を低下させることができる端子接点構造及びこの端子接点構造を備えた端子の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、相手端子の導通部が挿入される挿入部と、この挿入部に設けられ前記相手端子の導通部に接触される複数の接触部とを備えた端子接点構造であって、前記複数の接触部は、
前記挿入部と一体に形成され、前記相手端子の導通部の
挿入方向に対して複数列配置された
接触支持部に設けられ、前記複数の接触部は、前記挿入方向に対して前後にずれて配置されていることを特徴とする。
前記各接触支持部に設けられた前記複数の接触部は、前記挿入方向に対して前後にずれて配置されていることが好ましい。
【0008】
この端子接点構造では
、相手端子の導通部と複数の接触部との接点位置を挿入方向と直交する方向において挿入方向に分散させることができ、相手端子の最大挿入力を低下させることができる。
【0009】
また、相手端子の最大挿入力を低下させたとしても、相手端子の導通部と複数の接触部との接点位置が複数箇所あるので、相手端子との導通を確実に保持することができる。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
他の本発明は、上記した端子接点構造を備え、相手端子と嵌合される嵌合部と、この嵌合部と一体に設けられ電線と接続される接続部とを備えた端子であって、前記挿入部は、前記嵌合部に配置されていることを特徴とする端子である。
【0015】
この端子では、相手端子の最大挿入力を低下させることができる端子接点構造を備えているので、相手端子との嵌合を容易に行うことができ、相手端子との嵌合不良を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、相手端子の最大挿入力を低下させることができる端子接点構造及びこの端子接点構造を備えた端子を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の
参考例に係る端子接点構造の正面図である。
【
図2】本発明の
参考例に係る端子接点構造の相手端子の挿入部に対する挿入距離と相手端子の挿入力との関係を示す図である。
【
図3】本発明
の実施形態に係る端子接点構造の正面図である。
【
図4】本発明
の実施形態に係る端子接点構造の相手端子の挿入部に対する挿入距離と相手端子の挿入力との関係を示す図である。
【
図5】本発明
の実施形態に係る端子接点構造の他例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜
図5を用いて本発明の
参考例に係る端子接点構造について説明する。
【0019】
(
参考例)
図1,
図2を用いて
参考例について説明する。
【0020】
参考例に係る端子接点構造1は、相手端子(不図示)の導通部が挿入される挿入部3と、この挿入部3に設けられ相手端子の導通部に接触される複数の接触部5,7とを備えている。
【0021】
そして、複数の接触部5,7は、相手端子の導通部の挿入方向と直交する方向に対して複数列配置された
接触支持部9に設けられ、複数の接触部5,7は、挿入方向に対して前後にずれて配置されている。
【0022】
なお、ここでは、図示しないが、端子は、相手端子と嵌合される嵌合部と、この嵌合部と一体に設けられ電線と接続される接続部とを備えており、嵌合部が筒状に形成された雌端子からなる。このような嵌合部内には、端子接点構造1が配置されている。
【0023】
図1に示すように、端子接点構造1は、挿入部3と複数の接触部5,7とを備えている。挿入部3は、導電性材料からなり、薄板状に形成されている。この挿入部3は、端子の嵌合部内に配置され、相手端子としての雄端子の導通部が
図1の矢印で示す方向から挿入される。なお、相手端子の導通部は丸ピンタイプやタブタイプなどからなり、挿入部3は相手端子の導通部の形状に合わせて成形されている。このような挿入部3の内部には、複数の接触部5,7が設けられている。
【0024】
複数の接触部5,7は、相手端子の導通部の挿入方向と直交する方向に対して複数列(ここでは5列)配置された
接触支持部9に設けられている。この複数の接触部5,7は、それぞれ挿入部3と結合部分11,13で連続する一部材として形成されている。また、複数の接触部5,7は、結合部分11,13が所定のねじり角を有してねじられており、相手端子の導通部と弾性変形可能に接触して導通される。
【0025】
この複数の接触部5,7は、挿入方向に対して前後にずれて配置されている。詳細には、相手端子の導通部の挿入方向の前端側(
図1の右側)に接触部7が3箇所配置され、挿入方向の後端側(
図1の左側)に接触部5が2箇所配置されている。
【0026】
このように構成された端子接点構造1は、
図2に示すように
、挿入方向と直交する方向に1列に配置された複数の接触部による挿入力線15の最大挿入力(1つの最大ピーク部)を、挿入力線17のように2つの挿入力(2つのピーク部)に分散させることができる。このため、相手端子の導通部の挿入部3に対する最大挿入力が低減され、端子同士の嵌合を行い易く、確実に相手端子と端子とを導通させることができる。加えて、従来の端子接点構造では、相手端子の導通部の挿入部3に対する最大挿入力が高いので、作業者が手を傷め易かったが、端子接点構造1では、相手端子の最大挿入力が低減されているので、作業者が手を傷めることを防ぐことができる。
【0027】
このような端子接点構造1では、複数の接触部5,7が相手端子の導通部の挿入方向と直交する方向に対して複数列配置された接触支持部9
に設けられ、複数の接触部5,7が挿入方向に対して前後にずれて配置されているので、相手端子の導通部と複数の接触部5,7との接点位置を挿入方向と直交する方向において挿入方向に分散させることができ、相手端子の最大挿入力を低下させることができる。
【0028】
また、相手端子の最大挿入力を低下させたとしても、相手端子の導通部と複数の接触部5,7との接点位置が複数箇所あるので、相手端子との導通を確実に保持することができる。
【0029】
(
実施形態)
図3〜
図5を用いて
実施形態について説明する。
【0030】
本実施の形態に係る端子接点構造101
では、
接触支持部103は、挿入方向に対して複数列配置されている。
【0031】
また、複数の接触部105,107は、挿入方向と交差する方向に点在されている。なお、
参考例と同一の構成には、同一の記号を記して
参考例を参照するものとして説明を省略するが、
参考例と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0032】
図3に示すように、複数の接触部105,107は、相手端子の導通部の挿入方向と直交する方向に対して複数列(ここでは
4列)配置された
接触支持部103
に設けられている。各接触支持部103は、それぞれ挿入部3との結合部分109及び隣り合う接触部105,107との結合部分111で連続する一部材として形成されている。また、複数の接触部105,107は、結合部分109,111が所定のねじり角を有してねじられており、相手端子の導通部と弾性変形可能に接触して導通される。
【0033】
この複数の接触部105,107を有する
接触支持部103は、相手端子の挿入方向に対して複数列(ここでは4列)配置されている。このため、複数の接触部105,107と相手端子の導通部との接触箇所は、挿入方向に対して複数箇所(ここでは8箇所)となる。
【0034】
なお、同一
構成の接触支持部103を挿入方向に複数列配置させることに限らず、例えば、図
5に示すように、隣り合う
接触支持部103,103’で接触部105,107の前後にずれた位置を千鳥状に交互に配置させてもよい。このように複数の接触部105,107を挿入方向と交差する方向に点在させることにより、相手端子の最大挿入力の分散や相手端子との導通を最適なものとすることができる。
【0035】
このように構成された端子接点構造101は、
図4に示すように
、挿入方向と直交する方向に1列に配置された複数の接触部による挿入力線113の最大挿入力(1つの最大ピーク部)を、挿入力線115のように4つの
接触支持部103によって4つの挿入力(4つのピーク部)に分散させることができる。さらに、1つの
接触支持部103における複数の接触部105,107は、挿入方向に前後にずれた位置に配置されているので、図2で示したように、1つの最大ピーク部を2つのピーク部に分散させることができる。従って、この端子接点構造101では、相手端子の最大挿入力を8つの挿入力に分散させることができ、相手端子の導通部の挿入部3に対する最大挿入力をさらに低減することができる。
【0036】
このような端子接点構造101では、相手端子の最大挿入力が低下された1つの
接触支持部103が挿入方向に対して複数列配置されているので、相手端子の導通部と複数の
接触支持部103との接点位置を挿入方向に分散させることができ、さらに相手端子の最大挿入力を低下させることができる。
【0037】
また、複数の接触部105,107が相手端子の導通部の挿入方向と交差する方向に点在されているので、挿入部3における複数の接触部105,107の配置個所を相手端子の最大挿入力や相手端子との導通を考慮して効果的に選択することができる。
【0038】
さらに、端子接点構造1,101を備えた端子では、端子接点構造1,101によって相手端子の最大挿入力を低下させることができるので、相手端子との嵌合を容易に行うことができ、相手端子との嵌合不良を防止することができる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態に係る端子接点構造を備えた端子では、雌端子の嵌合部内に配置される挿入部に複数の接触部が設けられているが、雄端子のタブなどの嵌合部に挿入部を配置させ、この挿入部に複数の接触部を相手端子(雌端子)の導通部の挿入方向と直交する方向に対して複数列配置した
接触支持部とし、
接触支持部における複数の接触部を、挿入方向に対して前後にずらして配置してもよい。
【0040】
また、
参考例に係る端子接点構造では
、複数の接触部が挿入方向の前端側に3箇所、後端側に2箇所配置されているが、これに限らず、全ての接触部を挿入方向に対して異ならせて配置してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1,101…端子接点構造
3…挿入部
5,7,105,107…接触部
9,103,103’…
接触支持部