特許第5764007号(P5764007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764007
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】燃料電池用液体燃料カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20060101AFI20150723BHJP
   B65D 33/38 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   H01M8/04 N
   H01M8/04 L
   !B65D33/38
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-174287(P2011-174287)
(22)【出願日】2011年8月9日
(65)【公開番号】特開2013-37952(P2013-37952A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】川合 康史
(72)【発明者】
【氏名】福原 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】植平 庄治
(72)【発明者】
【氏名】中村 保昭
(72)【発明者】
【氏名】林 一郎
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−027896(JP,A)
【文献】 特開2009−078848(JP,A)
【文献】 特表2010−536679(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/026439(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0102333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/24
B65D 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池本体に着脱可能に装着されて燃料電池に液体燃料を供給する燃料カートリッジにおいて、
可撓性材料のフィルムにより製袋され、かつフィルムの所定面に形成された貫通孔を有するとともに燃料電池本体に供給される液体燃料が充填されるパウチと、
前記貫通孔に挿入されるとともに、前記パウチの所定面とヒートシールされるフランジ部を有するスパウトと
記パウチを収容する外装ケースであるハードケースと
前記ハードケースの内側に窪むように前記ハードケースの一部に形成された凹状部分と、
その凹状部分の底面部に前記スパウトが挿入されるように開口して形成された開口部と、
記ハードケースと前記スパウトとを一体に連結させ、かつ前記フランジ部との間で、前記ヒートシールされたパウチおよび前記開口部が形成された底部を挟持する締結部材と、
前記スパウトの円筒部分に挿嵌されて連結されるとともに前記ハードケースに固定されて前記パウチを密閉するとともに、前記燃料電池本体が備えるコネクタと接続し当該燃料電池本体と前記パウチとを連通させる流路を形成するコネクタとを有し
前記底面部に対応する前記フランジ部の水平方向の長さは、該フランジ部に対応する前記底面部の水平方向の長さより長い
とを特徴とする燃料カートリッジ。
【請求項2】
前記フランジ部の上面シール部に複数形成された第1凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料カートリッジ。
【請求項3】
前記締結部材には、逆回転防止機構が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料カートリッジ。
【請求項4】
前記スパウトは、前記貫通孔に挿入されて、前記コネクタと連結する首部を更に有し、
前記スパウトの首部の内周面に少なくとも一つの第1凹部を設け、
前記コネクタの外周面に前記スパウトの前記第1凹部に係合する第2凸部を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料カートリッジ。
【請求項5】
前記ハードケースは、長手方向の一端が全面開口する長尺筒状のケース本体と、前記ケース本体の全面開口側の内壁に設けられた第2凹部に嵌合する第3凸部が設けられた底蓋とを有し、前記ケース本体の長手方向の他端に前記凹状部分が形成され、前記凹状部分は側壁部と前記底面部とによって形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の燃料カートリッジ。
【請求項6】
前記凹状部分に挿嵌され、前記コネクタと前記スパウトとの連結を固定させるとともに、当該コネクタを前記ハードケースに固定させる固定部材を更に有し、
前記スパウトは、前記貫通孔に挿入されて、前記コネクタと連結する首部を更に有し、 前記コネクタは、前記スパウトの円筒部分に挿嵌され連結されるとともに、前記固定部材と前記スパウトの開口端縁部分とにより挟持されて前記ハードケースに固定され、
前記ハードケースに係る凹状部分の側壁部に少なくとも一つの第3凹部を設け、
前記固定部材の外側面に、前記側壁部の第3凹部と嵌合する第4凸部を設けたことを特徴とする請求項5に記載の燃料カートリッジ。
【請求項7】
記ケース本体の外面側胴部の一面に長手方向に沿って、第5凸部または第4凹部を設けたことを特徴とする請求項6に記載の燃料カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流動性の内容物を収容する容器に関し、特に、ダイレクトメタノール型燃料電池などの燃料電池に利用することができる燃料カートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体燃料をエネルギー源として使用する機器において、機器の運転や使用に伴って減少する液体燃料を補充する必要がある。この液体燃料を機器側に補充する方法として、機器本体側に設けた燃料貯留容器に、補充用の液体燃料を収容したカートリッジ容器を連結し、液体燃料を移したり、機器本体の燃料貯留容器を別の燃料貯留容器に付け替えたりして、液体燃料を供給することが行われていた。
【0003】
近年、携帯性機器に使用される燃料電池の普及から、小型機器に使用される燃料電池への液体燃料の供給手段が多く開発されている。この小型燃料電池におけるパッシブ型やアクティブ型に対応する供給手段であって、小型かつ効率的な供給を目的とする燃料カートリッジが種々提案されている。
【0004】
このように、機器本体に補充する液体燃料を充填した燃料カートリッジにおいて、その液体燃料を収容する燃料容器および燃料容器を収容するケースなどの形状や材質などを改善し、特に、メタノールを燃料にした燃料電池であるダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)において、液体燃料の供給手段が多く開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、パウチの端縁でスパウトを挟み込み、この当接部分をヒートシールするとともにパウチ端縁どうしの接触部分もヒートシールし、これらヒートシールした部分を挟持する押圧部を有する燃料カートリッジが開示されている。さらに、押圧部で挟持したパウチ及びスパウトをケース本体に挿入し、この押圧部とトップベースとが係止して連結することで、スパウトとカップラとが連結されることが開示されている。
【0006】
特許文献2には、パッシブ型の燃料電池に燃料を供給するための燃料カートリッジであって、ラミネートフィルムに貫通した貫通部を形成し、この貫通部にスパウトを挿入して、このラミネートフィルムとスパウトとを融着させることが開示されている。また、多孔性の直流防止材を外容器に開口した空気置換孔で支持して、解放密閉を制御することや、ラミネートフィルムどうしの接着部を折り返して収容するとともに接着部を外容器内面に押しつけることが開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、流動性の内容物を収容するガゼット袋の構造であって、その容易な成形方法や、角部位置にスパウトを設置することや、燃料供給時のスムースな減容化を可能にするガゼット袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−287422号公報
【特許文献2】特開2009−78848号公報
【特許文献3】特開2008−56326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料カートリッジでは、燃料カートリッジの組み上げ時、押圧部におけるスパウトの挟持を保ちながらケース本体に挿入、すなわち押圧方向に対して鉛直方向に挿入するため作業が困難になるおそれがあった。
【0010】
このように挟持する構成であるため、押圧部による押圧力の変化に伴いスパウトを挟持している押圧部の押圧方向長の変化、またはスパウトを挟持している押圧部の押圧方向長の変化に伴い押圧部による押圧力の変化が起こるおそれがあった。このように、燃料カートリッジ製造時の作業性や、押圧力の変化による膨張時におけるシール部が剥離する可能性など改善の余地があった。
【0011】
特許文献2に記載の燃料カートリッジでは、スパウトが外容器外面から突出した形状であるため、接触によるスパウトの破損や液漏れの危険性があった。また、機器本体との接続時など、スパウトが燃料カートリッジ内に押し込まれる力が作用した場合、この力と相反する液体燃料の内圧によりスパウトと燃料貯蔵袋との融着が剥離するおそれがあった。
【0012】
また、特許文献3に記載の収納容器では、パウチどうしがシールされる部分にスパウトが挟持されているため、揮発性の高い流動性内容物を収容していた場合、気化による膨張によってシール部が剥離するおそれがあった。
【0013】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、燃料カートリッジの製造および燃料カートリッジの取り替え作業の効率化が図れ、かつ充填されている液体燃料の気化に伴う容器の膨張に対して気密性を保持できる燃料カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来技術の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、燃料電池本体に着脱可能に装着されて燃料電池に液体燃料を供給する燃料カートリッジにおいて、可撓性材料のフィルムにより製袋され、かつフィルムの所定面に形成された貫通孔を有するとともに燃料電池本体に供給される液体燃料が充填されるパウチと、前記貫通孔に挿入されるとともに、前記パウチの所定面とヒートシールされるフランジ部を有するスパウトと、前記パウチを収容する外装ケースであるハードケースと、前記ハードケースの内側に窪むように前記ハードケースの一部に形成された凹状部分と、その凹状部分の底面部に前記スパウトが挿入されるように開口して形成された開口部と、前記ハードケースと前記スパウトとを一体に連結させ、かつ前記フランジ部との間で、前記ヒートシールされたパウチおよび前記開口部が形成された底部を挟持する締結部材と、前記スパウトの円筒部分に挿嵌されて連結されるとともに前記ハードケースに固定されて前記パウチを密閉するとともに、前記燃料電池本体が備えるコネクタと接続し当該燃料電池本体と前記パウチとを連通させる流路を形成するコネクタとを有し、前記底面部に対応する前記フランジ部の水平方向の長さは、該フランジ部に対応する前記底面部の水平方向の長さより長いことを特徴とするものである。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、前記フランジ部の上面シール部に複数形成された第1凸部を有することを特徴とするものである。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記締結部材には、逆回転防止機構が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかの構成に加えて、前記スパウトは、前記貫通孔に挿入されて、前記コネクタと連結する首部を更に有し、前記スパウトの首部の内周面に少なくとも一つの第1凹部を設け、前記コネクタの外周面に前記スパウトの前記第1凹部に係合する第2凸部を設けたことを特徴とするものである。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかの構成に加えて、前記ハードケースは、長手方向の一端が全面開口する長尺筒状のケース本体と、前記ケース本体の全面開口側の内壁に設けられた第2凹部に嵌合する第3凸部が設けられた底蓋とを有し、前記ケース本体の長手方向の他端に前記凹状部分が形成され、前記凹状部分は側壁部と前記底面部とによって形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項5の構成に加えて、前記凹状部分に挿嵌され、前記コネクタと前記スパウトとの連結を固定させるとともに、当該コネクタを前記ハードケースに固定させる固定部材を更に有し、前記スパウトは、前記貫通孔に挿入されて、前記コネクタと連結する首部を更に有し、前記コネクタは、前記スパウトの円筒部分に挿嵌され連結されるとともに、前記固定部材と前記スパウトの開口端縁部分とにより挟持されて前記ハードケースに固定され、前記ハードケースに係る凹状部分の側壁部に少なくとも一つの第3凹部を設け、前記固定部材の外側面に、前記側壁部の第3凹部と嵌合する第4凸部を設けたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項7に係る発明は、請求項6の構成に加えて、前記ケース本体の外面側胴部の一面に長手方向に沿って、第5凸部または第4凹部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、収容された燃料が気化して容器本体が膨張しても、容器本体を形成する可撓性材料の破断や、シール部の剥離を防止することが可能であり、容器本体の気密性を保持することができるとともに、作業性の優れた燃料電池用燃料カートリッジを提供することができる。
【0022】
請求項2に係る構成によれば、スパウトとパウチとがヒートシールされる部分におけるハウジングの上面に凹凸が形成されることで、スパウトとパウチとの接着強度が向上する。また、底面部とハウジングとの挟持される力を凸部に集中させることができるので、パウチとスパウトとの接着強度を向上させることができる。
【0023】
請求項3に係る構成によれば、締結部材によるスパウトとハードケースとの固定を維持することができる。また、スパウトに連結された締結部材が、パウチが膨張した場合であっても緩むことを防止できる。したがって、ハードケース内にパウチを安定させて収容することができる。
【0024】
請求項4に係る構成によれば、コネクタとスパウトとを密着固定することができ、機器本体のコネクタとの着脱時などに、燃料カートリッジに係るコネクタが抜け落ちることを防止できる。また、この密着固定により、パウチ内の密閉性を維持することができる。
【0025】
請求項5に係る構成によれば、ハードケースの凹状部分に固定部材が挿嵌されてコネクトを固定するので密着固定を維持することができる。
【0026】
請求項6に係る構成によれば、ハードケースが組み立て解体が自在となる構造となるため、パウチの収容が容易になる。
【0027】
請求項7に係る構成によれば、ハードケースの外面形状が、燃料電池を備える機器本体に装着される形状に対応するため、機器本体の着脱が容易になり、燃料カートリッジの取り替え作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明に係る燃料電池用燃料カートリッジの一実施形態における外観を模式的に示す図である。
図2図1のX−X断面を模式的に示す断面図である。
図3図2のコネクタ取り付け部の部分拡大断面図である。
図4図3のY−Y断面を模式的に示す部分断面図である。
図5】容器本体としてのパウチの一例を示す説明図である。
図6】容器本体としてのパウチの他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明を具体例に基づいて説明する。この発明に係る燃料カートリッジは、ダイレクトメタノール型燃料電池などの燃料電池を備える機器本体に着脱可能に装着されるものであり、燃料カートリッジごとに交換可能であって、液体燃料を燃料電池に補充するカートリッジ式の燃料容器である。この燃料カートリッジは、液体燃料を吸引する補機を備えたアクティブ型の燃料電池の機器本体に装着され、この機器本体が備えるコネクタとこの燃料カートリッジが備えるコネクタとが接続し、非接続時には閉塞されていた弁体が解放されて流路が連通されることにより、ケース本体に収容されたパウチ内に充填されている液体燃料を機器本体の燃料電池に供給するものである。
【0030】
図2は、燃料カートリッジ1の縦断面を模式的に示した図である。燃料カートリッジ1は、液体燃料Mが充填される燃料容器であるパウチ2と、このパウチ2とヒートシールされたスパウト3と、このスパウト3とハードケース7とでパウチ2のヒートシールされた部分を挟み込む締結部材4と、機器本体10と接続して連通する流路を形成するコネクタ5と、このコネクト5とスパウト3とを連結させる固定部材6と、パウチ2を収容するとともに機器本体の形状に応じて外形が成型された外装ケースであるハードケース7とを有する。
【0031】
パウチ2は、液体燃料Mが充填される燃料容器であって、可撓性材料により製袋されている。このパウチ2は、三方シールで製袋された燃料容器であり、液体燃料Mを充填されもしくは吐出させる吐出口であるスパウト3とヒートシールされている。図5(a)などに例示する天面部22が、スパウト3にヒートシールされた状態で、このパウチ2はハードケース7に収容されている。したがって、燃料カートリッジ1から燃料電池に液体燃料Mが供給されることに伴い、可撓性材料から成るパウチ2はその内容積が減少する。また、パウチ2は、平板状のフィルムFを折り曲げて、直方形状の形状に成形され、三方シールされて製袋された燃料容器である。
【0032】
ここでパウチ2の製袋方法について、図5を参照して説明する。図5(a)は、パウチ2の展開図を示した図であって、パウチ2が製袋された際の内側から見た展開図である。パウチ2は長方形平板状のフィルムFを折り曲げて成形されるものであり、折り曲げ線が設けられている。太い破線で示した山折りの折り癖となる山折り線MLと、太い二点鎖線で示した谷折りの折り癖となる谷折り線VLと、細い破線で示した山折りの折り癖となる山折り線2MLと、細い二点鎖線で示した谷折りの折り癖となる谷折り線2VLとを設けている。これら折り線において折り曲げたフィルムFが、製袋の過程で図5(c)に例示するような、前後の側面部A,Aと、左右の側面部B,Bと、天面部22により形成された上面部Cと、開口端である底面部Dとを備えた直方体形状に成形される。
【0033】
また、フィルムFどうしをシールするシール部を斜線で例示し、側面部分に形成されるシール部であるサイドシール部23と、底辺部分に形成させるシール部である開口端シール部24とを設けている。
【0034】
この長方形のフィルムFには、その短辺と平行でかつ長辺と直交する中心線Nが設けられ、スパウト取出孔21がその円中心に中心線Nを通過するように配置されている。このスパウト取出孔21は、フィルムFを貫通させ形成された孔であって、スパウト3の首部32が挿入されるものである。
【0035】
また、中心線Nと平行な折り線である谷折り線VL,VLに挟まれ、かつ中心線Nと直交する谷折り線2VL,2VLに挟まれるフィルムFの領域が天面部22となる。この天面部22は、直方体形状に成形された際の上面部Cを形成する部分である。したがって、平板状のフィルムFにおける天面部22の領域内にスパウト取出孔21が貫通されて設けられる。また、この中心線Nと同一直線上に山折り線MLが設けられている。
【0036】
この谷折り線VL,VLに挟まれ、かつ天面部22を形成しない領域において、ガゼット形状となる折れ線である山折り線2ML,2MLが設けられている。この山折り線2ML,2MLは、天面部22の両端角部分それぞれと、中心線Nとサイドシール部23,23との境界線を形成する谷折り線2VL,2VLとの各交点と、を結ぶ線分に沿って設けられている。また、谷折れ線VLと中心線Nとに挟まれた部分におけるサイドシール部23には端縁部分が、それぞれ円弧状に切除された状態に形成されている。
【0037】
このフィルムFを谷折り線および山折り線で折り曲げた状態を図5(b)に例示する。この図5(b)で例示するパウチ2では、サイドシール部23および開口端シール部24はシールされていない。この状態からサイドシール部23をシールして、製袋過程における直方形形状に成形した状態を図5(c)に例示する。なお、この状態では、パウチ2の底部分をシールする開口端シール部24,24はシールされていないので、底部分は開口端となり図5(c)に例示する略直方体のような底面Dを形成するものとも言える。
【0038】
この開口端シール部24どうしがシールされていない状態において、スパウト3とパウチ2とがヒートシールされる。具体的には、スパウト3をパウチ2の内側から、すなわち開口端側から天面部22に形成されたスパウト取出孔21にスパウト3を挿入する。
【0039】
このスパウト3の挿入後に、スパウト3のフランジ部31の上面シール部31aと、パウチ2の天面部22とを当接させ、この当接部分をヒートシールする。このヒートシール後に、開口端となっている底部分の開口端シール部24,24をシールする。したがって、製袋されたパウチ2は、サイドシール部23,23および開口端シール部24,24がシールされた三方シールに製袋される。なお、スパウト3のフランジ部31が、パウチ2の天面部22を押さえ込みヒートシールすることによって、スパウト3とパウチ2とが一体となるように取り付けられる。
【0040】
次に、燃料カートリッジ1における液体燃料Mの流路を形成する部分と、燃料電池本体と接続する部分とを、図3,4を参照して説明する。図3は、図2で例示したスパウト3と締結部材4とコネクタ5と固定部材6などを含む部分を拡大した図である。図4は、図3におけるY−Y断面を示した図である。なお、図中の左右方向を水平方向とし、上下方向を鉛直方向として説明を行う。燃料カートリッジ1の外装形状を形成するハードケース7は、外装面の一部を凹状に成形された凹状部分を備え、この凹状部分にスパウト3の首部32、締結部材4、コネクタ5、固定部材6などが格納される。
【0041】
スパウト3は、パウチ2とヒートシールされるフランジ部31と、パウチ2のスパウト取出孔21に挿入されるとともに締結部材4によってハードケース7と締結されかつコネクタ5を連結される首部32と、液体燃料Mが流通する流路を形成する開口である注液口33を備えている。
【0042】
スパウト3の首部32は、鉛直方向の両端が開口した円筒形状に形成され、かつ円筒形の外径が、パウチ2のスパウト取出孔21よりも小径に形成されている。また、スパウト3は、このスパウト取出孔21よりも小径な注液口33を一部分に開口して成形され、この注液口33を含む平板形状のフランジ部31を有する。すなわち、このフランジ部31は、スパウト取出孔21より大きく成形された平板状であって、その一部に注液口33が形成されている。このフランジ部31の平面方向を水平方向とすると、鉛直方向に首部32が延設され、フランジ部31と首部32とが一体に形成されている。
【0043】
また、フランジ部31はパウチ2とヒートシールされるものであり、そのフランジ部31の一部分には、パウチ2の天面部22と当接してヒートシールされる上面シール部31aが形成されている。この上面シール部31aには、平面から凸状に突出した凸部31bが形成されている。したがって、ヒートシール部分では、平面状の部分と凸状の部分とが含まれている。
【0044】
さらに、首部32の内周壁を形成する部分には、コネクタ5に形成された凸部56bと係合する凹部32aが形成されている。すなわち、コネクタ5が挿嵌されたスパウト3において、このコネクタ5が抜け落ちない構造が形成されている。
【0045】
したがって、コネクタ5の凸部56bと首部32の凹部32aとは一対の凹凸形状に形成され、スパウト3からコネクタ5が鉛直方向の上側すなわち機器本体との接続方向側に抜け出さないように成形されている。なお、これら凸部56b,凹部32aは、鉛直方向に一つまたは複数形成されているものである。なお、凸部56b,凹部32aは、リング状に形成されていてもよい。
【0046】
このフランジ部31は、締結部材4によりハードケース7に固定された場合における底面部71aの水平方向の長さよりも長い水平方向の長さを有するように成形されている。すなわち、このフランジ部31が底面部71aよりも大きい形状である。したがって、フランジ31は底面部71aの端部分よりも水平方向に突出している。なお、この突出したフランジ部31の端縁部は、パウチ2の側面部に接触するところまで延設されていてもよい。これにより、密閉されたパウチ2内の液体燃料Mが気化してパウチ2が内圧上昇に伴い膨張した際、このフランジ部31が撓むことで、パウチ2の上面に係る力を低減させることができる。
【0047】
また、スパウト3のフランジ部31から注液口33の円中心方向に延設した突出部34が形成されている。言い換えれば、突出部34が、フランジ部31から注水口33中心に向けて突出し、注液口33を形成している。したがって、この突出部34は、首部32の内径よりも注液口33の径を小径形状にさせる。
【0048】
さらに、スパウト3にコネクタ5が挿入された場合、突出部34が、コネクタ5のハウジング51の底部と当接することでコネクタ5を鉛直方向に受け止める部材として機能する部分である。なお、水平方向において、首部32の内周面からスパウト取出孔21の中心方向に延設した突出部34における水平方向長と、これに当接するコネクタ5のハウジング51の壁厚とが同じであるか、もしくは近似であることが好ましい。
【0049】
このスパウト3の首部32の外周壁には締結部材4が連結されている。この締結部材4は、中心が開口したリング状に形成されている。この締結状態では、この締結部材4とフランジ部31とで、ハードケース7における凹状部分の底面部71aおよび上面シール部31aにヒートシールされたパウチ2を挟持するように、締結部材4が鉛直下方向に押圧力を加えるように首部32に連結されている。すなわち、ハードケース7の開口した開口部73を形成するハードケース7の端縁部分を挟持するように、この締結部材4とフランジ部31が配置されている。
【0050】
この締結方法として、首部32と締結部材4とが、嵌合されて係止して連結されている。例えば、首部32の外周壁には、締結部材4と嵌合するための凹状の係止部が形成されている。この凹状係止部に締結部材4を嵌合して、上下方向に固定された状態で、締結部材4の下面とフランジ部31の上面とで、ハードケース7およびパウチ2とを挟み込むように押圧している。
【0051】
または、他の締結方法として、首部32と締結部材4とが、ねじのように螺合して連結されている。具体的には、首部32の外周壁にはねじ山もしくはねじ溝が形成され、かつ締結部材4の内周壁にもねじ溝もしくはねじ山が形成されている。これらが螺合されることで締結部材4がナットとして機能し、締結部材4に対して首部32は鉛直方向の上向きに移動させられ、フランジ部31がボルトの頭として機能する。したがって、締結部材4によってスパウト3を鉛直上向きに移動させる力を生じさせるともに、ハードケース7の凹状底面部71aを鉛直下向きに押圧する力を生じさせる。
【0052】
なお、この締結部材4には、抜け落ち防止構造や、螺合させた締め付け状態が緩まないような逆回転防止機構が設けられてもよい。
【0053】
このスパウト3の開口端である円筒状の首部32には、コネクタ5が挿嵌され、かつこのコネクタ5の外壁部分に形成された凸部56bと、スパウト3の首部32の内壁部分に形成された凹部32aとが係合してコネクタ5とスパウト3とが連結されている。
【0054】
また、中心部分が開口した深皿状の固定部材6が、ハードケース7の凹状部分に挿嵌されて、ハードケース7の凹状部分の側壁部71bに形成された係止部である凹部71cと、固定部材6の側壁61の外周面に形成された係止部である凸部61aとが係合して、ハードケース7に嵌合される。この固定部材6とハードケース7との嵌合により、これらが一体に連結されるとともに、固定部材6の底面62と、コネクタ5のハウジングの外形における突出部56aとが当接することで、コネクタ5がスパウト3と固定部材6とにより挟持されてハードケース7と一体に固定される。すなわち、コネクタ5のハウジングに形成された突出部56aの下面部分が、首部32における開口端の縁部分と当接した状態で、この突出部56aの上面部分が、固定部材6の底面62と当接されて、コネクタが固定される。
【0055】
このコネクタ5における鉛直上方向の先端開口部側が、燃料電池本体に設けられた燃料吸引口に接続され、この接続によりコネクタ5のバルブ機構が開放されて、パウチ2に充填された液体燃料Mの取り出しが可能となる。また、燃料電池本体と非接続状態においては、コネクタ5のバルブ機構が閉塞されて、パウチ2に充填された液体燃料Mが密閉されている。
【0056】
このコネクタ5のバルブ機構として、移動可能な弁体を備えたものがある。コネクタ5は、バルブ機構が閉塞状態において、外力により移動可能な弁体であるピストンバルブ51が金属コイルばね53から弾性力を開口端側に付勢されて、ハウジング56における先端側に一体に設けられたゴムパッキンなどのリングシール材である弁座部54に当接して密着することで、このバルブ機構は閉塞する。
【0057】
また、燃料カートリッジ1が燃料電池本体に装着されると、燃料電池本体の燃料吸引口側に設けられた、図示しないコネクタのピン状の部材がコネクタ5の先端開口部に挿入されるとともに、このピン状部材が金属コイルばね53から付勢されている弾性力に抗する方向にピストンバルブ51を押圧する。これにより、弁座部54とピストンバルブ51との密着が解除されるようにピストンバルブ51は押し下げられることでバルブ機構は開放され、弁座部54とピストンバルブ51との間に液体燃料Mが流通する流路が形成される。したがって、バルブ機構が開放されることで、コネクタ5内の流路が連通するとともに、パウチ2内の液体燃料Mがコネクタ5の先端開口部と連通、すなわち接続した燃料電池本体とパウチ2とが連通する流路が形成される。
【0058】
ハードケース7は、図1,2に例示するような外形形状と断面形状とを有している。このハードケース7は、長手方向の上面部分の一部と下端部分とが開口したケース本体部71と、この開口した下端部分を閉口する底蓋部材72とを有する。このケース本体71上面の一部に形成された凹状部分は、この凹状部分の底面を形成する底面部71aと凹状部分の深さを形成する側壁部71bとを有する。この側壁部71bには固定部材6と係合する係止部である凹部71cが外壁面に、ケース本体71の下端部分の内壁部分には底蓋部材72が挿嵌されて係合する係止部である凹部71dが内壁面に形成されている。これら凹部71c,71dは、少なくとも一つ形成されている。なお、凹部71c,71dは、リング状に形成されていてもよい。
【0059】
また、ケース本体71の外面側胴部の一面に長手方向に沿って、図示しない燃料電池本体の燃料カートリッジ挿入部に設けられた凹状溝または凸状山形状に対する凸状山部71eまたは凹状溝部71eが設けられている。これにより、燃料電池本体の燃料カートリッジ挿入部に設けられた凹状溝または凸状山に合わない燃料カートリッジは使用不能となり、異なる液体燃料を供給することを防ぐことができる。
【0060】
ハードケース7に、スパウト3がヒートシールされたパウチ2を収納するには、まず、パウチ2にシールされたスパウト3をハードケース7の底部開口端側から凹状部分方向に挿入し、この凹状部分の底面部71aに形成された開口にスパウト3を挿入して、密着固定する締結部材4でスパウト3をハードケース7に連結させる。
【0061】
パウチ2は、スパウト3の上面シール部31aが締結部材4で押圧された状態でハードケース7内に収納される。したがって、充填された液体燃料Mが気化するに従ってパウチ2が膨張しても、スパウト3とパウチ2とのシール部分が剥離もしくは部分的なシール不良を起こすことを防止する構造である。この構造により、パウチ2内の気密性が保たれている。
【0062】
この燃料カートリッジ1に液体燃料Mを充填する際、ハードケース7に収納されたパウチ2には、スパウト3の注液口33から液体燃料Mが充填される。この充填工程の後に、コネクタ5をスパウト3に挿嵌し、締結部材4および固定部材6により、このコネクト5とスパウト3とが密着固定される。
【0063】
次に、第2のパウチ2の製袋方法について、図6を参照して説明する。なお、上述した図5を参照したパウチ2の製袋方法と同様の説明は省略するとともに、同様の符号を用いて説明する。
【0064】
図6(a)は、パウチ2の展開図を示した図であって、パウチ2が製袋された際の内側から見た展開図である。パウチ2は長方形状の平板状のフィルムF2を折り曲げて成形されるものであり、図6(a)に例示するように折り曲げ線が設けられている。サイドシール部203は、フィルムF2の端縁よりも内側に形成される。また、サイドシール部203内に、それぞれ円形状の貫通孔が形成されている。
【0065】
また、図6(b)に例示するように背面シール部204においてシールをしてから、図6(c)に例示するようにスパウト取出孔201にスパウト3を挿入して、サイドシール部203をシールする。そして、図6(d)に例示するように、前後の側面部A,Aと、左右の側面部B,Bと、天面部202により形成された上面部Cと、底面である底面部Dとを備えた直方体形状に成形される。したがって、この第2の製袋方法により成形されたパウチ2は、上下面にガゼット部を有し、側面部にシール部が配置された直方体形状に成形されている。
【0066】
このパウチ2を形成するフィルムF,F2は、可撓性材料によって構成されている。このフィルムF,F2には、多層ラミネートシートを使用する。例えば、最外層から順に、厚さ15μmで融点が245℃程の二軸延伸ポリエステルフィルムと、12μmのシリカ蒸着ポリエステルフィルムと、厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムと、最内層に厚さ30μmで融点が熱接着温度140℃よりも低い125℃程のポリエチレンフィルムとを積層した多層ラミネートシートである。なお、カスバリヤー性の向上を図るため、中心層の厚さ12μmのシリカ蒸着ポリエステルフィルムに代えて、厚さ10μmのアルミ箔としてもよい。
【0067】
また、スパウト3,締結部材4,コネクタ5,固定部材6,ハードケース7のそれぞれの構成部材は、熱硬化性樹脂材により作られていてもよい。この熱硬化性樹脂材として、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルーブタェンースチレン樹脂(ABS)などがある。また、これら構成部材が熱硬化性樹脂材により作られる場合に限定されず、必要に応じて、アルミ、鉄、ステンレスなどの金属材料を用いることもできる。
【0068】
以上説明したように、この発明に係る燃料カートリッジ1によれば、ダイレクトメタノール型燃料電池などの燃料電池に用いる換装可能なカートリッジ式の燃料容器として利用することができる。
【0069】
また、この発明に係る燃料カートリッジ1によれば、液体燃料Fが可撓性材料によって製袋されたパウチ2に充填されているため、アクティブ型燃料電池に装着された際に、液体燃料の取り出しが容易になる。
【0070】
なお、この発明に係る燃料カートリッジは上述の実施形態に限定されるものではない。この発明を逸脱しない範囲において、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…燃料カートリッジ、 2…パウチ、 3…スパウト、 4…締結部材、 5…コネクタ、 6…固定部材、7…ハードケース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6