(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の送信コイルは、共通のコアの同じ箇所に、それぞれの互いに対応する巻線同士が近接するように巻装されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のワイヤレス給電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、ワイヤレス給電システムの一例を示す図である。ワイヤレス給電システム1100は、ワイヤレス給電装置1200およびワイヤレス受電装置1300を備える。
【0006】
ワイヤレス給電装置1200は、送信コイルL1、共振用キャパシタC1および交流電源10を備える。交流電源10は、送信周波数f
1を有する電気信号S2を発生する。共振用キャパシタC1および送信コイルL1は共振回路を構成しており、その共振周波数は、電気信号S2の周波数にチューニングされている。送信コイルL1からは、電力信号S1が送出される。ワイヤレス給電システム100では、電力信号S1として電波になっていない電磁波の近傍界(電界、磁界、あるいは電磁界)が利用される。
【0007】
ワイヤレス受電装置1300は、受信コイルL2、共振用キャパシタC2および負荷回路20を備える。共振用キャパシタC2、受信コイルL2および負荷回路20は共振回路を構成しており、その共振周波数は、電力信号S1の周波数にチューニングされる。
【0008】
このようなワイヤレス給電システム1100において、大電力を伝送しようとする場合、送信コイルL1と共振用キャパシタC1の両端間に、ときとして1kVにも及ぶ高電圧が発生することになる。したがって従来では、共振用キャパシタC1や共振用キャパシタC2をモータ制御のバリコン(Variable Condenser)で構成し、機械的な制御によって共振周波数やQ値をはじめとする回路特性の調節を行う必要があり、電子部品を用いた電気的手段によって行うことが困難であった。
【0009】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、回路特性を電気的に調節可能なワイヤレス給電装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、電界、磁界、電磁界のいずれかを含む電力信号を送信するワイヤレス給電装置に関する。ワイヤレス給電装置は、複数のコイルと、それぞれが複数のコイルの対応するひとつと直列に設けられた複数のキャパシタと、それぞれが対応するコイルとキャパシタが形成する共振回路の両端に駆動電圧を印加する複数の交流電源と、を備える。
【0011】
本発明の別の態様も、ワイヤレス給電装置に関する。ワイヤレス給電装置は、複数のコイルと、それぞれが、対応するコイルに駆動電圧を印加する、複数の交流電源と、を備える。
【0012】
本発明の別の態様も、ワイヤレス給電装置に関する。ワイヤレス給電装置は、交互に直列に接続された複数のコイルと複数の共振用キャパシタを含む送信アンテナと、送信アンテナの両端間に駆動電圧を印加する交流電源と、を備える。
【0013】
本発明の別の態様も、ワイヤレス給電装置に関する。ワイヤレス給電装置は、複数のコイルと、それぞれが、共振回路を形成するように複数のコイルの対応するひとつと直列に設けられる複数のキャパシタと、複数の共振回路の両端に駆動電圧を印加する交流電源と、を備える。
【0014】
これらの態様によると、単一のコイルと単一のキャパシタにより電力を送信する給電装置に比べて、コイルおよび/またはキャパシタに印加される電圧を低下させることができ、したがって電子回路部品を用いた電気的手段によって、回路パラメータを調節することが可能となり、従来よりも低コストで柔軟な制御が可能となる。
【0015】
本発明の別の態様は、ワイヤレス給電システムである。このワイヤレス給電システムは、上述のいずれかの態様のワイヤレス給電装置と、ワイヤレス給電装置からの電力信号を受信するワイヤレス受電装置と、を備える。
【0016】
本発明の別の態様は、電界、磁界、電磁界のいずれかを含む電力信号を受信するワイヤレス受電装置に関する。ワイヤレス受電装置は、共通の負荷に接続された複数の共振回路を備える。複数の共振回路は並列に設けられ、それぞれが直列に設けられたコイルとキャパシタを含む。
【0017】
本発明の別の態様も、ワイヤレス受電装置に関する。ワイヤレス受電装置は、交互に直列に接続された複数の受信コイルと複数の共振用キャパシタを含む受信アンテナを備える。
【0018】
これらの態様によれば、単一のコイルと単一のキャパシタを備える受電装置に比べて、コイルおよび/またはキャパシタに印加される電圧を低下させることができ、したがって電子回路部品を用いた電気的手段によって、回路パラメータを調節することが可能となり、従来よりも低コストで柔軟な制御が可能となる。
【0019】
本発明の別の態様は、電界、磁界、電磁界のいずれかを含む電力信号を送信するワイヤレス給電装置と、電力信号を受信する上述のワイヤレス受電装置と、を備える。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のある態様によれば、電気的な調節が容易なワイヤレス給電装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係るワイヤレス給電装置200の構成を示す回路図である。
【0026】
ワイヤレス給電装置200は、図示しないワイヤレス受電装置に対して電力信号S1を送出する。電力信号S1は、電波になっていない電磁波の近傍界(電界、磁界、あるいは電磁界)である。
【0027】
ワイヤレス給電装置200は、複数n個(nは2以上の整数)の送信コイルL1
1〜L1
nと、複数の共振用キャパシタC1
1〜C1
nと、複数の交流電源10
1〜10
nを備える。i番目(1≦i≦n)の共振用キャパシタC1
iは、対応する送信コイルL1
iと直列に設けられる。i番目の交流電源10
iは、対応する送信コイルL1と共振用キャパシタC1が形成するLC直列共振回路の両端に駆動電圧V
DRViを印加する。本明細書において、本実施の形態のように、従来ひとつであった送信コイルL1を、複数の送信コイルL1に分割することを、コイル分割と称する。
【0028】
送信コイルL1
1〜L1
nは、共通の磁性体12に巻き付けられており、磁性体12をはじめとする磁気回路を用いて、磁気的に互いに結合されている。
【0029】
以上がワイヤレス給電装置200の構成である。
【0030】
続いて、コイル分割の原理を説明する。
図3(a)は、単一のコイルを有するワイヤレス給電装置1200を、
図3(b)、(c)は、2個に分割されたコイルを有するワイヤレス給電装置を、
図3(d)は、N個に分割されたコイルを有するワイヤレス給電装置200cを示す図である。
【0031】
図3(a)のワイヤレス給電装置は、単一の送信コイルL1と、共振用キャパシタC1を有する。
図3(b)の送信コイルL1
1、L1
2は、
図3(a)の送信コイルL1を2分割したものであり、分割前の送信コイルL1のインダクタンスをLとするとき、分割後のコイルL1
1、L1
2のインダクタンスは、L/2であることが直ちに理解される。また、
図3(b)の共振用キャパシタC1
1、C1
2は、
図3(a)のキャパシタC1を2分割したものであり、キャパシタC1の容量値をCとするとき、共振用キャパシタC1
1、C1
2の容量値が2×Cであることが直ちに理解される。
【0032】
そして、
図3(b)のコイルL1
1、L1
2と、共振用キャパシタC1
1、C1
2の順序を任意に入れ替えたとしても、交流電源10から送信アンテナ(共振回路14)を見たインピーダンスは変わらない。したがって、各送信コイルL1
1、L1
2に流れる電流も変わらず、生成される電力信号S1の強度も同じである。つまり
図3(c)に示すように、分割された送信コイルL1と分割された共振用キャパシタC1が交互に配置されるように並び替えたとしても、
図3(a)と同じ強度の磁界を発生することができる。分割数を2より大きい整数Nに一般化すると、
図3(d)のワイヤレス給電装置200cの構成が導かれる。この場合、分割されたコイルL
1〜L1
nのインダクタンスはL/nであり、分割された共振用キャパシタC1
1〜C1
nの容量値は、n×Cである。
【0033】
図3(a)の送信コイルL1の両端間の電圧の振幅をV
L、共振用キャパシタC1の両端間の電圧の振幅をV
Cとする。共振条件を満たすとき、V
L=V
Cが成り立つ。
図3(d)のワイヤレス給電装置200cにおいては、分割された送信コイルL1
iの両端間の電圧はV
L/nで与えられ、分割された共振用キャパシタC1
iの両端間の電圧はV
C/nで与えられる。
【0034】
図3(c)のワイヤレス給電装置200cの利点は、
図1あるいは
図3(a)のワイヤレス給電装置1200との対比によって明確となる。
図1あるいは
図3(a)のワイヤレス給電装置1200によって大電力を供給するためには、送信コイルL1に大電流を流す必要があり、共振電圧V
C、V
Lは、数百Vあるいはそれ以上となりうる。
【0035】
ワイヤレス給電装置1200の現実的な用途を考慮すると、共振周波数の調整やQ値の変更のために、共振用キャパシタC1の容量値および/または送信コイルL1のインダクタンスは調節可能に構成しておく必要がある。ところが、共振電圧V
C、V
Lが数百Vの場合、耐圧が低いトランジスタ素子やダイオードなどの電子回路部品を用いることは、困難であるため、機械的な手段を用いる必要がある。
【0036】
これに対して
図3(c)のワイヤレス給電装置200cによれば、コイル数nを増やすことにより、分割された送信コイルL1、分割された共振用キャパシタC1それぞれの共振電圧V
Ci、V
Liの振幅を小さくすることができ、これによりトランジスタ素子やダイオードなどの電子回路部品を用いた電気的手段によって、共振周波数やQ値の調節などが可能となる。言い換えれば分割数nは、共振電圧V
C1、V
L1が、電子回路部品が利用可能な程度まで低下するように決めればよい。電気的手段による共振周波数やQ値が調整は、モータ駆動のバリコンなどを用いた機械的な調整に比べて高速であるという利点もある。
【0037】
共振電圧V
C、V
Lを従来よりも小さくすることにより、トランジスタ素子を用いたインプリメントが可能となる。そしてトランジスタ素子に印加される電圧を数V程度まで下げることにより、CMOSプロセスを用いて半導体基板上に形成することができる。つまり複数の交流電源10を単一のICに集積化したり、共振用キャパシタC1や送信コイルL1の定数を変化させるためのスイッチ素子を単一のICに集積化することが可能となる。
【0038】
以下の考察により、
図3(d)のワイヤレス給電装置200cから、
図2のワイヤレス給電装置200が導かれることが明らかになる。
図3(d)のワイヤレス給電装置200cにおいて、隣接する分割された送信コイルL1
iと分割された共振用キャパシタC1
iのペアは、共振回路14
iを形成していると把握できる。そして
図3(d)の交流電源10が生成する電気信号S2の電圧振幅をV
DRVとするとき、共振回路14
1〜14
nそれぞれには、V
DRV/nの電圧が印加されている。なぜなら各共振回路14
1〜14
nそれぞれのインピーダンスは等しいからである。
【0039】
したがって、
図2の交流電源10
1〜10
nが生成する駆動電圧が、
図3(d)の交流電源10が生成する駆動電圧V
DRVの1/n倍であり、
図2の分割された送信コイルL1
1〜L1
nの結合度Kが、
図3(d)の分割された送信コイルL1
1〜L1
nの結合度Kと等しければ、
図2のワイヤレス給電装置200は、
図3(d)のワイヤレス給電装置200cや
図3(a)のワイヤレス給電装置1200と同じ強度の電気信号S2を発生させることができる。
【0040】
図2のワイヤレス給電装置200は、複数の交流電源10
1〜10
nを独立に制御することができるという利点を有する。これにより、動作させる交流電源10の個数制御や、交流電源ごとに独立した位相制御、周波数制御が可能となり、ひいてはワイヤレス受電装置300に供給する電力を制御したり、給電効率を最適化することが可能となる。
【0041】
さらに
図2のように複数の送信コイルL1を磁性体により結合させた場合、共振周波数を変更する際に、複数の送信コイルL1のすべてのインダクタンス値を変更させる必要がないという利点もある。つまり、少なくともひとつの送信コイルL1と共振用キャパシタC1のペアが形成するLC共振回路の共振周波数を変化させることにより、ワイヤレス給電装置200全体としての共振周波数を変化させることができる。
【0042】
また、コイルの個数が増えることにより、コイルひとつが発生する磁束密度を下げることができるため、磁界の空間的な集中を抑制できる。これにより、
図1のワイヤレス給電装置1200に比べて、人体保護の観点からも有利である。
【0043】
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態に係るワイヤレス給電装置200aの構成を示す回路図である。ワイヤレス給電装置200aは、
図2のワイヤレス給電装置200から磁性体12を省略した構成である。つまり複数の送信コイルL1
1〜L1
nは空芯コイルであり、磁性体により結合されておらず、それらの結合度は非常に小さく、あるいは実質的にゼロである。
【0044】
図3(b)は、
図4のワイヤレス給電装置200aにおいて、
図1のワイヤレス給電装置1200と同じ強度の電力信号S1を発生させるために必要なコイルの個数nおよび共振用キャパシタC1の容量値(比)を示した図である。
【0045】
図3(b)に示されるように、n個の送信コイルL1同士が非結合の場合、共振回路同士の相互作用は存在しない。したがって、n分割したときの共振用キャパシタC1の容量値は、分割しない場合のn
2倍となる。
【0046】
つまり
図4のワイヤレス給電装置200aによれば、
図2のワイヤレス給電装置200と同様に、コイル数nを増やすことにより、共振電圧V
C1、V
L1の振幅を小さくすることができる。これにより、上述した
図2のワイヤレス給電装置200と同様のさまざまな効果を得ることができる。
【0047】
(第3の実施の形態)
図5は、第3の実施の形態に係るワイヤレス給電装置200bの構成を示す回路図である。
図5のワイヤレス給電装置200bは、
図4のワイヤレス給電装置200aから、複数の共振用キャパシタC1を省略したものである。たとえばある電力を供給するために生成すべき共振電圧V
L1が
図1のワイヤレス給電装置1200において1kVであるときに、
図5のワイヤレス給電装置200bをn=100で構成すると、ひとつの送信コイルL1の共振電圧V
L1は10Vとなる。これにより、LC共振を利用することなく、磁場共鳴型の電力伝送が可能となる。
【0048】
(第4の実施の形態)
第1〜第3の実施の形態では、ワイヤレス給電装置200について説明した。続く第4の実施の形態では、ワイヤレス受電装置300について説明する。
図6(a)は、第4の実施の形態に係るワイヤレス受電装置300の構成を示す回路図であり、
図6(b)は、
図6(a)のワイヤレス受電装置300を搭載する電子機器の構成例を示す図である。
【0049】
ワイヤレス受電装置300は、共通の負荷回路20に対し接続された複数の共振回路22
1〜22
nを備える。
図6(a)ではn=4の場合を示すが、nは任意の2以上の整数でよい。
【0050】
共振回路22は互いに並列に設けられており、それぞれは、直列に設けられた受信コイルL2と共振用キャパシタC2を含む。
図6(b)に示すように、複数の受信コイルL2
1〜4は、電子機器2の筐体内の、離れた箇所、具体的には筐体の四隅に配置されてもよい。
【0051】
複数の受信コイルL2
1〜L2
nは、
図2のワイヤレス給電装置200と同様に共通の磁性体によって結合されていてもよいし、
図4のワイヤレス給電装置200aと同様に空芯コイルであってもよい。
【0052】
図7は、
図6(a)のワイヤレス受電装置300に生ずる共振電圧V
C2の波形図である。共振電圧V
L2は、V
C2と位相が180度シフトした波形であるため省略する。
図7には、n=1、n=3それぞれの場合の波形が示される。このワイヤレス受電装置300によれば、受信コイルL2の個数nを増やすにしたがい、共振用キャパシタC2、受信コイルL2それぞれに生ずる共振電圧V
C2、V
L2の振幅を小さくでき、これによりトランジスタ素子やダイオードなどの電子回路部品を用いた電気的手段によって、共振周波数やQ値の調節などが可能となる。言い換えればコイル数nは、共振電圧V
L2、V
C2が、電子回路部品が利用可能な程度まで低下するように決めればよい。
【0053】
共振電圧V
L2、V
C2を従来よりも小さくすることにより、ワイヤレス受電装置300をトランジスタ素子を用いてインプリメントすることが可能となる。そしてトランジスタ素子に印加される電圧を数V程度まで下げることにより、CMOSプロセスを用いて半導体基板上に形成することができる。
【0054】
さらに複数の受信コイルL2を磁性体により結合させた場合、共振周波数を変更する際に、複数の受信コイルL2のすべてのインダクタンス値を変更させる必要がないという利点もある。つまり、少なくともひとつの共振回路22において、共振周波数を変化させることにより、ワイヤレス給電装置300全体としての共振周波数を変化させることができる。
【0055】
また、受信コイルL2の個数nが増えることにより、受信コイルL2それぞれに誘起される磁束密度を下げることができるため、受信側において磁界の空間的な集中を抑制できる。これにより、
図1のワイヤレス受電装置1300に比べて、人体保護の観点からも有利である。
【0056】
(第5の実施の形態)
図8は、第5の実施の形態に係るワイヤレス給電装置200cの構成を示す回路図である。ワイヤレス給電装置200cは、複数n個(nは2以上の整数)の送信コイルL1
1〜L1
nと、複数の共振用キャパシタC1
1〜C1
nと、単一の交流電源10を備える。
【0057】
ワイヤレス給電装置200cの構成は、
図3(d)において説明した通りである。
複数の送信コイルL1
1〜L1
nと、共振用キャパシタC1
1〜C1
nは、交互に、直列に接続され、送信アンテナ24を形成する。交流電源10は、送信アンテナ24の両端間に、駆動電圧V
DRVを印加する。
【0058】
図2と同様、複数の送信コイルL1
1〜L1
nは、共通の磁性体(不図示)に巻き付けられ、磁気的に互いに結合されている。あるいは、その変形例において、
図4と同様に、複数の送信コイルL1
1〜L1
nを空芯コイルで形成し、磁性体を省略してもよい。
【0059】
以上がワイヤレス給電装置200cの構成である。
ワイヤレス給電装置200cでは、交流電源10が発生すべき駆動電圧V
DRV(電気信号S2)の振幅は、コイル分割を行わない
図1のワイヤレス給電装置1200と同程度の数百V程度となる。一方、個々の共振回路22
1〜22
nに着目すると、それらの両端間の電圧は、駆動電圧V
DRVの1/n倍となる。したがって、
図2や
図4のワイヤレス給電装置と同様に、共振電圧V
C1、V
L1の振幅を小さくすることができ、これによりトランジスタ素子やダイオードなどの電子回路部品を用いた電気的手段によって、共振周波数やQ値の調節などが可能となる。言い換えればコイル数nは、共振電圧V
C1、V
L1が、電子回路部品が利用可能な程度まで低下するように決めればよい。電気的手段による共振周波数やQ値が調整は、モータ駆動のバリコンなどを用いた機械的な調整に比べて高速であるという利点もある。
【0060】
共振電圧V
C1、V
L1を従来よりも小さくすることにより、トランジスタ素子を用いたインプリメントが可能となる。そしてトランジスタ素子に印加される電圧を数V程度まで下げることにより、CMOSプロセスを用いて半導体基板上に形成することができる。つまり共振用キャパシタC1や送信コイルL1の定数を変化させるためのスイッチ素子を単一のICに集積化することが可能となる。
【0061】
さらに複数の送信コイルL1を磁性体により結合させた場合、共振周波数を変更する際に、複数の送信コイルL1のすべてのインダクタンス値を変更させる必要がないという利点もある。つまり、少なくともひとつの送信コイルL1と共振用キャパシタC1のペアが形成するLC共振回路の共振周波数を変化させることにより、ワイヤレス給電装置200c全体としての共振周波数を変化させることができる。
【0062】
また、コイルの個数が増えることにより、コイルひとつが発生する磁束密度を下げることができるため、磁界の空間的な集中を抑制できる。これにより、
図1のワイヤレス給電装置1200に比べて、人体保護の観点からも有利である。
【0063】
(第6の実施の形態)
図9は、第6の実施の形態に係るワイヤレス受電装置300bの構成を示す回路図である。ワイヤレス受電装置300bは、受信アンテナ26と、負荷回路20を備える。
受信アンテナ26は、交互に直列に接続された複数の受信コイルL2
1〜L2
nと複数の共振用キャパシタC2
1〜C2
nを含む。
【0064】
受信コイルL2
1〜L2
nは、磁気的に結合されていてもよいし、磁気的に独立してもよい。
【0065】
図9のワイヤレス受電装置300bによれば、
図6(a)のワイヤレス受電装置300と同様の効果を得ることができる。
図6(a)のワイヤレス受電装置300は、負荷回路20に対して大電流、低電圧を供給するのに適するのに対して、
図9のワイヤレス受電装置300bは、高電圧、小電流を供給するのに適している。したがって負荷回路20の種類に応じて、複数の共振回路22を直列に接続するのか、並列に接続するのかを選択すればよい。
【0066】
(第7の実施の形態)
図10は、第7の実施の形態に係るワイヤレス給電装置200dの構成を示す回路図である。
図10のワイヤレス給電装置200dでは、複数の共振回路22が、並列に接続され、複数の共振回路22は、単一の交流電源10によって駆動される。ワイヤレス給電装置200dによれば、
図2のワイヤレス給電装置200と同様の効果を得ることができる。
図10のワイヤレス給電装置200dにおいて、磁性体12を省略してもよい。
【0067】
図11(a)、(b)は、
図8の送信アンテナ24あるいは
図9の受信アンテナ26の構成例を示す図である。ここでは、理解の容易化を目的としてコイル数n=3の場合を説明する。
図11(a)と(b)では、磁性体12に対する送信コイル(受信コイル)Lの巻装態様が異なっている。
【0068】
図11(a)では、複数のコイルL
1、L
2、L
3、磁性体12の隣接する異なる箇所に巻装される。送信アンテナ24あるいは受信アンテナ26が動作中、共振用キャパシタC1の両端間には、数十〜数百Vもの大電圧が発生する。したがって、隣接するコイルL
1の一端P1とコイルL
2の一端P2の電位差ΔVも大きくなる。この場合、一方のコイルL
1が発生する磁場の影響が、他方のコイルL
2に及び、近接効果によって損失が大きくなる。
【0069】
図11(b)では、複数のコイルL
1(破線)、コイルL
2(一点鎖線)、コイルL
2(実線)、が、磁性体12の同じ箇所に巻装される。具体的には、
図11(b)に示すように、複数のコイルL
1、L
2、L
3それぞれの互いに対応する巻線同士が近接するように巻装することが好ましい。
図11(b)の構成によれば、対応する巻線における電位が近くなるため、近接効果の影響を低減し、損失を低減できる。
【0070】
図11(b)に示すコイルの巻装方法は、共振回路が並列に接続される回路、具体的には、
図2のワイヤレス給電装置、あるいは
図6(a)、
図10のワイヤレス受電装置にも適用可能である。
図12は、
図2のワイヤレス給電装置、あるいは
図6(a)、
図10のワイヤレス給電装置の構成の一部を示す図である。
【0071】
図2のワイヤレス給電装置200、
図6(a)、
図10のワイヤレス受電装置300において、複数のコイルを
図11(a)に示す形態で磁性体12に換装すると、近接効果の影響により損失が大きくなる。これに対して、
図12に示すように複数のコイルを巻装することにより、損失を低減できる。
【0072】
なお、
図11(b)、
図12の変形例において、磁性体12を省略して、複数のコイルL
1〜L
3を空芯コイルとしてもよい。あるいは、複数のコイルL
1〜L
3を、共通の非磁性体のコアに巻装してもよい。近接効果は、コイルL
1〜L
3がわずかでも結合していれば発生するため、空芯コイル、あるいは非磁性体のコアに換装されるコイルについても、
図11(b)の巻装形態とすることで、近接効果の影響を低減できる。
【0073】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。