特許第5764038号(P5764038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764038
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】電界通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 13/00 20060101AFI20150723BHJP
   H04B 15/02 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   H04B13/00
   H04B15/02
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-233647(P2011-233647)
(22)【出願日】2011年10月25日
(65)【公開番号】特開2013-93688(P2013-93688A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(72)【発明者】
【氏名】矢部 誠司
(72)【発明者】
【氏名】松本 亮一
(72)【発明者】
【氏名】菊地 亮二
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−159480(JP,A)
【文献】 特開2010−074606(JP,A)
【文献】 特開2011−101299(JP,A)
【文献】 特開平07−240652(JP,A)
【文献】 特開2012−244470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 13/00
H04B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号電極から電界を電界伝達媒体に誘起して電界通信を行う電界通信装置において、
信号電極及びグランド電極と、
前記電界伝達媒体にノイズを放射するノイズ放射源に電気的に接続された第1のノイズ印加電極と、
前記第1のノイズ印加電極と前記グランド電極とを電気的に接続するリード線と、
入力側の一方の端子に前記信号電極が接続され、前記入力側の他方の端子に前記グランド電極が接続されたコモンモードチョークコイルと、
信号入力端子に前記コモンモードチョークコイルの出力側の一方の端子が接続され、グランド入力端子に前記出力側の他方の端子が接続された電界通信用の受信回路と、
を有することを特徴とする電界通信装置。
【請求項2】
前記第1のノイズ印加電極は、前記ノイズ放射源との間の第1の結合容量を介して前記ノイズ放射源に接続され、
前記第1の結合容量の値を変えることにより、前記グランド電極に印加されるノイズ量が調整されることを特徴とする請求項1記載の電界通信装置。
【請求項3】
前記グランド電極との間の第2の結合容量を介して前記グランド電極に接続された第2のノイズ印加電極を更に有し、
前記リード線は、前記第1のノイズ印加電極と前記第2のノイズ印加電極とを接続することにより、前記第1のノイズ印加電極と前記グランド電極とを電気的に接続し、
前記第2の結合容量の値を変えることにより、前記グランド電極に印加されるノイズ量が調整されることを特徴とする請求項1又は2記載の電界通信装置。
【請求項4】
前記リード線による経路上に挿入されたアッテネータを更に有し、
前記アッテネータの減衰量を変えることにより、前記グランド電極に印加されるノイズ量が調整されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電界通信装置。
【請求項5】
前記グランド電極に印加されるノイズ量は、
前記電界伝達媒体を介して前記信号電極に伝達された前記ノイズ放射源からのノイズ量と等しくなるように調整されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の電界通信装置。
【請求項6】
前記信号電極と前記グランド電極とは、前記グランド電極を大地側にして対向配置され、
前記第2のノイズ印加電極は、前記グランド電極と前記大地との間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電界通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界通信時におけるノイズを除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によれば、人体等の電界伝達媒体に電界を誘起し、この誘起された電界を用いてデータ通信を行う電界通信装置が開示されている。この電界通信装置の筐体内又は外には信号電極やグランド電極が配置され、その信号電極からデータ信号を電界により送受信する電界通信用の通信回路(送信回路、受信回路)が筐体に内蔵されている。グランド電極は、その通信回路での電界通信時に利用される基準電位の取得に利用される。
【0003】
このような電界通信装置を利用した従来の実施例を図7に示す。本例は、同図(a),(b)共に、電界伝達媒体である人体700により所持される携帯型の電界通信装置(以下、携帯型送受信機)100と、その人体700の足元に信号電極31s及びグランド電極31gが設置された設置型の電界通信装置(以下、設置型送受信機)300とで構成される。
【0004】
設置型送受信機300の信号電極31sは、図7に示すように、人体700により接触又は容量結合される側に配置され、リード線32sを通じて筐体内の受信回路35の信号入出力端子に接続されている。一方、グランド電極31gは、床面側に配置され、別のリード線32gを通じてその受信回路35のグランド入力端子(回路グランド)に接続されている。
【0005】
このような構成下において、上記携帯型送受信機100を所持した人体700が設置型送受信機300の信号電極31sに接触又は容量結合すると、事前記憶された任意情報(例えば、人体700の識別情報など)に基づくデータ信号が携帯型送受信機100の信号電極11sから出力され、人体700を伝達して設置型送受信機300の信号電極31sで受信され、リード線32sを経由して受信回路35に送信される。その後、その受信回路35からデータ信号を受け取った上位のデータ処理装置(不図示)により、所定の処理が実行される(例えば、認証処理など)。
【0006】
なお、データ信号の送受信は、前述したように電界伝達媒体である人体700に誘起された電界を利用して行われる。その具体的な電界通信処理技術については引用文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−352298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのような携帯型送受信機100及び設置型送受信機300は各種用途に応じて利用されるが、その利用時の実環境内には様々なノイズ放射源が存在するため、電界通信時にそのノイズ放射源から放射されたノイズの影響を受けることがある。
【0009】
例えば、図7(a)に示すように、壁500の内側に配線された電力線500aや通信線500bに電流が流れると、それら電線近傍に電磁界が発生して壁面から放射される。そして、その放射された電磁界は、壁面近くに位置する人体700にノイズとして伝わり、データ信号と共に設置型送受信機300の信号電極31sで検出される。
【0010】
すなわち、図8に示すように、壁500の表面から放射されたノイズが、電界通信時におけるデータ信号の伝達経路(人体700)と同じ経路を経由して信号電極31sに伝達されるため、受信回路35の前段にコモンモードチョークコイル33を挿入してもノイズを除去できず、ノイズフィルタ34を挿入したとしても、通過帯域内のデータ信号と同帯域のノイズについては除去することができない。
【0011】
また、例えば、図7(b)に示すように、導電性の壁面を有する金属製パーティション500dが近接する場合であっても、広範囲にノイズが放射されることから同様である。その他、電源に接続された電気機器や鉄筋コンクリート、天井裏や他の部屋にあるノイズ放射源からのノイズの場合も同様に考えられる。
【0012】
以上より、電界通信装置から出力されたデータ信号と実環境内のノイズ放射源から放射されたノイズ信号とが同じ経路(同じ電界伝達媒体)を介して伝達するため、そのデータ信号に重畳されたノイズ信号成分を除去できないという課題があった。
【0013】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、電界通信におけるノイズを除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の電界通信装置は、信号電極から電界を電界伝達媒体に誘起して電界通信を行う電界通信装置において、信号電極及びグランド電極と、前記電界伝達媒体にノイズを放射するノイズ放射源に電気的に接続された第1のノイズ印加電極と、前記第1のノイズ印加電極と前記グランド電極とを電気的に接続するリード線と、入力側の一方の端子に前記信号電極が接続され、前記入力側の他方の端子に前記グランド電極が接続されたコモンモードチョークコイルと、信号入力端子に前記コモンモードチョークコイルの出力側の一方の端子が接続され、グランド入力端子に前記出力側の他方の端子が接続された電界通信用の受信回路と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、電界伝達媒体に対するノイズ放射源に電気的に接続された第1のノイズ印加電極と、その電界伝達媒体に電界を誘起して電界通信を行う信号電極が入力側の一方の端子に接続され、その第1のノイズ印加電極が電気的に接続されたグランド電極が入力側の他方の端子に接続されたコモンモードチョークコイルと、を有するため、電界伝達媒体を介して伝達されたデータ信号に含まれるノイズ信号を、グランド電極に印加されたノイズ信号で除去できる。
【0016】
請求項2記載の電界通信装置は、請求項1記載の電界通信装置において、前記第1のノイズ印加電極は、前記ノイズ放射源との間の第1の結合容量を介して前記ノイズ放射源に接続され、前記第1の結合容量の値を変えることにより、前記グランド電極に印加されるノイズ量が調整されることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、第1のノイズ印加電極は、ノイズ放射源との間の第1の結合容量を介してノイズ放射源に接続され、その第1の結合容量の値を変えることにより、グランド電極に印加されるノイズ量が調整されるため、より確実にノイズを除去できる。
【0018】
請求項3記載の電界通信装置は、請求項1又は2記載の電界通信装置において、前記グランド電極との間の第2の結合容量を介して前記グランド電極に接続された第2のノイズ印加電極を更に有し、前記リード線は、前記第1のノイズ印加電極と前記第2のノイズ印加電極とを接続することにより、前記第1のノイズ印加電極と前記グランド電極とを電気的に接続し、前記第2の結合容量の値を変えることにより、前記グランド電極に印加されるノイズ量が調整されることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、グランド電極との間の第2の結合容量を介してグランド電極に接続された第2のノイズ印加電極を更に有し、リード線は、第1のノイズ印加電極と第2のノイズ印加電極とを接続することにより、第1のノイズ印加電極とグランド電極とを電気的に接続し、第2の結合容量の値を変えることにより、グランド電極に印加されるノイズ量が調整されるため、より確実にノイズを除去できる。
【0020】
請求項4記載の電界通信装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の電界通信装置において、前記リード線による経路上に挿入されたアッテネータを更に有し、前記アッテネータの減衰量を変えることにより、前記グランド電極に印加されるノイズ量が調整されることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、リード線による経路上に挿入されたアッテネータを更に有し、そのアッテネータの減衰量を変えることにより、グランド電極に印加されるノイズ量が調整されるため、より確実にノイズを除去できる。
【0022】
請求項5記載の電界通信装置は、請求項2乃至4のいずれかに記載の電界通信装置において、前記グランド電極に印加されるノイズ量は、前記電界伝達媒体を介して前記信号電極に伝達された前記ノイズ放射源からのノイズ量と等しくなるように調整されることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、グランド電極に印加されるノイズ量は、電界伝達媒体を介して信号電極に伝達されたノイズ放射源からのノイズ量と等しくなるように調整されるため、更に確実にノイズを除去できる。
【0024】
請求項6記載の電界通信装置は、請求項3に記載の電界通信装置において、前記信号電極と前記グランド電極とは、前記グランド電極を大地側にして対向配置され、前記第2のノイズ印加電極は、前記グランド電極と前記大地との間に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、電界通信におけるノイズを除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施の形態に係る電界通信システムの構成及びその使用状態を示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る電界通信システムの効果を説明する図である。
図3】第1の実施の形態に係る電界通信システムの他の構成の一部を示す図である。
図4】第2の実施の形態に係る電界通信システムの構成及びその使用状態を示す図である。
図5】第2の実施の形態に係る電界通信システムの効果を説明する図である。
図6】第2の実施の形態に係る電界通信システムの他の構成の一部を示す図である。
図7】従来の電界通信システムの構成を示す図である。
図8】従来の電界通信システムの課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる様態で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。
【0028】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る電界通信システムの構成及びその使用状態を示す図である。この電界通信システムは、電界伝達媒体である人体700により所持される携帯型の電界通信装置(以下、携帯型送受信機)100と、その人体700により接触又は容量結合可能に信号電極が設置された設置型の電界通信装置(以下、設置型送受信機)300とで主に構成される。以下、それら送受信機100,300の構成について説明する。
【0029】
携帯型送受信機100は、信号電極11sと、グランド電極11gと、異なるリード線(不図示)を介してそれら各電極11s,11gにそれぞれ接続された電界通信用の送信回路(不図示)とで主に構成され、1つの筐体内に具備されている。
【0030】
信号電極11sは、筐体に接触している人体700に容量結合可能となるように、筐体内の一方の内表面に配置されている。グランド電極11gは、信号電極11sとの間に絶縁体を挟んで筐体内の他方の内表面に、信号電極11sに対向して配置されている。そして、信号電極11sが配置されている側の筐体側面が、人体700に向けて所持される。
【0031】
この携帯型送受信機100は、送信回路により信号電極11sから電界を人体700に誘起して、通信相手である設置型送受信機300に対して電界によりデータ信号を送信することができる。更に、電界通信用の受信回路を具備することも可能であり、それら送信回路と受信回路によりデータ信号の送受信を双方向で実現することもできる。
【0032】
なお、このような携帯型送受信機100は、従来の電界通信装置と基本的に同様の構成及び機能を有している。送信回路や受信回路による具体的な電界通信処理技術については、先の特許文献1やそれに関連する公知文献に開示されているため、ここでの説明は省略する。
【0033】
一方、本実施の形態では、背景技術で説明した従来の設置型送受信機300に対して、人体700にノイズを放射しているノイズ放射源に容量結合又は直接接続する第1のノイズ印加電極を新たに設け、人体700へのノイズと同じノイズをその第1のノイズ印加電極で受信してグランド電極に印加し、受信回路の前段に設けたコモンモードチョークコイルにより、人体700を介して信号電極で受信したノイズをグランド電極に印加されたノイズで除去することを特徴としている。
【0034】
以下、電力線500aや通信線500bが内部に配線された壁500をノイズ放射源の例として説明する。なお、そのような壁500に代えて、金属製パーティションや鉄筋コンクリートなどの導電性を有する壁面や、パソコンなどの電気機器や通信機器もノイズ放射源の例であり、以下説明で使用する壁500に何ら限定されない。
【0035】
設置型送受信機300は、図1に示すように、絶縁体を間に挟んで1つの筐体内の内表面に対向配置された信号電極31s及びグランド電極31gと、人体700にノイズを放射する壁500との間の第1の結合容量36n(容量結合による容量)を介してその壁500の壁面の一部又は全部に電気的に接続された第1のノイズ印加電極31nと、第1のノイズ印加電極31nとグランド電極31gとを電気的に直接接続するリード線32nと、リード線32sを介して入力側の一方の端子に信号電極31sが接続され、リード線32gを介してその入力側の他方の端子にグランド電極31gが接続されたコモンモードチョークコイル33と、入力側の一方の端子にコモンモードチョークコイル33の出力側の一方の端子が接続され、その入力側の他方の端子にコモンモードチョークコイル33の出力側の他方の端子が接続されたノイズフィルタ34と、信号入力端子にノイズフィルタ34の出力側の一方の端子が接続され、グランド入力端子(回路グランド)にノイズフィルタ34の出力側の他方の端子が接続された電界通信用の受信回路35とで主に構成されている。
【0036】
信号電極31s及びグランド電極31gは、人体700が通行する床面上の任意の位置に設置できるようにノイズフィルタ34や受信回路35を内蔵した筐体とは異なる筐体内に配置され、人体700に接触又は容量結合するように、信号電極31sを空側にし、グランド電極を大地側(床面側)にして、ノイズ放射源である壁500の近傍に設置される。
【0037】
なお、更に、電界通信用の送信回路を具備することも可能であり、それら受信回路35と送信回路(不図示)により、信号電極31sから電界を人体700に誘起してデータ信号の送受信を双方向で行うことができる。
【0038】
このような構成下において、上記携帯型送受信機100を所持した人体700が設置型送受信機300の信号電極31sに接触又は容量結合すると、事前記憶された任意情報(例えば、人体700の識別情報など)に基づくデータ信号が携帯型送受信機100の信号電極11sから出力され、電界伝達媒体である人体700を伝達して設置型送受信機300の信号電極31sで受信される。
【0039】
このとき、その信号電極31sの近傍に設置された壁500からの放射ノイズが人体700で拾われ、その人体700を伝達するため、信号電極31sで受信されたデータ信号にはノイズ信号が重畳されている。
【0040】
一方、その壁500に容量結合(第1の結合容量36nによる容量結合)された第1のノイズ印加電極31nにより、第1の結合容量36nを介してその壁500から放射されているノイズが収集され、リード線32nを通じてグランド電極31gに印加される。
【0041】
その後、信号電極31sで受信したノイズ信号重畳後のデータ信号が、リード線32sを介してコモンモードチョークコイル33の一方の入力側に入力され、グランド電極31gに印加されたノイズ信号が、リード線32gを介してコモンモードチョークコイル33の他方の入力側に入力される。
【0042】
コモンモードチョークコイル33のそれら2つの入力側には、壁500から放射された同じノイズ信号、すなわち、コモンモード(同相)のノイズ信号が入力されるため、そのコモンモードチョークコイル33により、人体700を介して信号電極31sで受信したノイズ信号がグランド電極31gに印加されたノイズ信号で除去(減衰)されて、データ信号のみがノイズフィルタ34を通過して受信回路35で受信される(図2参照)。
【0043】
なお、ノイズフィルタ34は、データ信号の周波数帯域のみを通過するように設計されており、それ以外の不要な周波数帯域の信号は除去(減衰)される。
【0044】
その後、その受信回路35からデータ信号を受け取った上位のデータ処理装置(不図示)により、所定の処理が実行される(例えば、認証処理など)。
【0045】
なお、信号電極31sで受信したノイズ信号とグランド電極31gに印加されたノイズ信号との大きさは必ずしも一致するとは限らないため、第1の結合容量36nの値を変化させることにより、グランド電極31gに印加されるノイズ信号の大きさ(以下、ノイズ量)を調整する。
【0046】
具体的には、例えば、壁500と第1のノイズ印加電極31nとの間の距離を変化させる手法、第1のノイズ印加電極31nの電極構造を変更する手法(例えば、異なる厚さの電極や、メッシュ構造の電極などを利用する)、複数種類の電極構造を予め壁面近傍に配置しておき、いずれかを選択する手段を設ける手法などを利用できる。
【0047】
また、図3に示すように、リード線32nによる経路上にアッテネータ37(例えば、可変アッテネータ(抵抗器))を挿入し、そのアッテネータ37の減衰量を変化させることにより、グランド電極31gに印加されるノイズ量を調整する。
【0048】
そして、第1の結合容量36nの値,アッテネータ37の減衰量のうちいずれか1以上を制御することにより、グランド電極31gに印加されるノイズ量を、人体700を介して信号電極31sに伝達された壁500からのノイズ量と等しくなるように調整する。
【0049】
なお、第1の結合容量36nの値やアッテネータ37の減衰量を変更して印加ノイズ量を調整する手段・手法・機構・構造などは上記例に限定されることはなく、グランド電極11gに印加されるノイズ量を調整可能であればどのようなものも採用できる。
【0050】
例えば、信号電極31sの上に人が立った状態で、信号無入力時に、受信回路35の入力端でスペクトラムアナライザを使用してノイズ量を測定し、第1のノイズ印加電極31nの面積や壁500との間の距離を調整することにより、その測定されたノイズ量が最小となる条件を探索していく手段などがある。その他、ノイズ測定に使用する測定器としては、レベルメータ、オシロスコープなどが例として挙げられる。
【0051】
以上より、本実施の形態によれば、人体700にノイズを放射している壁500に容量結合された第1のノイズ印加電極31nを新たに設け、人体700へのノイズと同じノイズをその第1のノイズ印加電極31nで受信してグランド電極31gに印加し、受信回路35の前段に設けたコモンモードチョークコイル33により、信号電極31sで受信したノイズ信号とグランド電極31gに印加されたノイズ信号とをコモンモード化することから、壁500から放射された同じノイズ信号成分を除去できる。
【0052】
すなわち、信号電極31sの近傍にノイズ放射源が存在する場合であっても、そのノイズを排除して、電界通信時で必要なデータ信号のみを伝達できる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、第1のノイズ印加電極31nが、壁500との間の第1の結合容量36nを介してその壁500に接続され、その第1の結合容量36nの値を変えることにより、グランド電極31gに印加されるノイズ量が調整されるので、より確実にノイズ信号成分を除去できる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、リード線32nによる経路上に挿入されたアッテネータ37を更に有し、そのアッテネータ37の減衰量を変えることにより、グランド電極31gに印加されるノイズ量が調整されるので、より確実にノイズ信号成分を除去できる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、グランド電極31gに印加されるノイズ量は、人体700を介して信号電極31sに伝達された壁500からのノイズ量と等しくなるように調整されるので、更に確実にノイズ信号成分を除去できる。
【0056】
なお、本実施の形態では、第1のノイズ印加電極31nを壁500に容量結合させた場合を例に説明したが、ノイズ放射源が金属(導電体)である場合には、第1のノイズ印加電極31nと壁500とを電気的に直接接続するようにしてもよい。
【0057】
その場合であっても、リード線32nによる経路上にアッテネータ37を挿入することは可能であり、そのアッテネータ37の減衰量を変化させることにより、グランド電極31gに印加されるノイズ量を、人体700を介して信号電極31sに伝達された壁500からのノイズ量と等しくなるように調整可能である。
【0058】
また、本実施の形態では、ノイズフィルタ34が挿入された場合を例に説明したが、ノイズフィルタ34を挿入することなく、コモンモードチョークコイル33と受信回路35とを電気的に接続するようにしても、同様の効果が得られる。
【0059】
その場合には、受信回路35の信号入力端子にコモンモードチョークコイル33の出力側の一方の端子が接続され、その受信回路35のグランド入力端子にそのコモンモードチョークコイル33の出力側の他方の端子が接続される。
【0060】
〔第2の実施の形態〕
図4は、第2の実施の形態に係る電界通信システムの構成及びその使用状態を示す図である。この電界通信システムは、第1の実施の形態と同様に、携帯型送受信機100と設置型送受信機300とで主に構成される。以下、第1の実施の形態で説明した電界通信システムの構成との違いについて主に説明する。それ以外の構成については、第1の実施の形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0061】
第2の実施の形態に係る設置型送受信機300は、グランド電極31gとの間の第2の結合容量36n2(容量結合による容量)を介してグランド電極31gに電気的に接続された第2のノイズ印加電極31n2を更に有し、その第2のノイズ印加電極31n2は、グランド電極31gの下側、すなわち、グランド電極31gと大地(床面)との間に配置されている。
【0062】
また、リード線32nは、第1の実施の形態においては、第1のノイズ印加電極31nとグランド電極31gとを直接接続していたが、第2の実施の形態においては、その第1のノイズ印加電極31n1(第1のノイズ印加電極31n)と第2のノイズ印加電極31n2とを直接接続することにより、第1のノイズ印加電極31n1とグランド電極31gとを電気的に接続している。
【0063】
このように、グランド電極31gに容量結合された第2のノイズ印加電極31n2を更に具備し、その第2のノイズ印加電極31n2を第1のノイズ印加電極31nに接続した場合であっても、第1のノイズ印加電極31n1とグランド電極31gとが電気的に接続されているため、受信回路35の前段に設けたコモンモードチョークコイル33により、人体700を介して信号電極31sで受信したノイズをグランド電極31gに印加されたノイズで除去できる(図5参照)。
【0064】
すなわち、そのコモンモードチョークコイル33により、信号電極31sで受信したノイズ信号とグランド電極31gに印加されたノイズ信号とをコモンモード化することから、壁500から放射された同じノイズ信号成分を除去でき、データ信号のみを伝達できる。
【0065】
なお、第1の実施の形態で説明したように、信号電極31sで受信したノイズ信号とグランド電極に印加されたノイズ信号との大きさは必ずしも一致するとは限らないため、第1の結合容量36n1の値や第2の結合容量36n2の値を変化させることにより、グランド電極31gに印加されるノイズ量を調整する。
【0066】
また、図6に示すように、リード線32nによる経路上にアッテネータ37を挿入し、そのアッテネータ37の減衰量を変化させることにより、グランド電極31gに印加されるノイズ量を調整する。
【0067】
そして、第1の結合容量36n1の値,第2の結合容量36n2の値,アッテネータ37の減衰量のうちいずれか1以上を制御することにより、グランド電極31gに印加されるノイズ量を、人体700を介して信号電極31sに伝達された壁500からのノイズ量と等しくなるように調整する。
【0068】
以上より、本実施の形態によれば、グランド電極31gとの間の第2の結合容量36n2を介してグランド電極31gに接続された第2のノイズ印加電極31n2を更に有し、その第2の結合容量36n2の値を変えることにより、グランド電極31gに印加されるノイズ量が調整されるので、より確実にノイズ信号成分を除去できる。
【0069】
なお、本実施の形態の場合であっても、第1の実施の形態で説明したように、第1のノイズ印加電極31n1と壁500とを電気的に直接接続することも可能であり、ノイズフィルタ34を挿入することなく、コモンモードチョークコイル33と受信回路35とを電気的に接続することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
100…携帯型の電界通信装置(携帯型送受信機)
11s…携帯型送受信機の信号電極
11g…携帯型送受信機のグランド電極
300…設置型の電界通信装置(設置型送受信機)
31s…設置型送受信機の信号電極
31g…設置型送受信機のグランド電極
31n、31n1…第1のノイズ印加電極
31n2…第2のノイズ印加電極
32s…信号電極に接続されたリード線
32g…グランド電極に接続されたリード線
32n…第1のノイズ印加電極に接続されたリード線
33…コモンモードチョークコイル
34…ノイズフィルタ
35…受信回路
36n、36n1…第1の結合容量
36n2…第2の結合容量
500…壁
500a…電力線
500b…通信線
700…人体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8