(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プラットホームオーガ及びフィーダハウスを設ける刈取装置と、扱胴及び穀粒選別機構を有する脱穀装置と、走行部及びエンジンを設ける走行機体を備え、前記刈取装置から前記脱穀装置に穀稈を供給するコンバインにおいて、
前記エンジンの出力軸に脱穀クラッチを介して連結する唐箕軸と、前記刈取装置と扱胴を駆動するカウンタ軸を設ける構造であって、
前記唐箕軸の回転駆動力を入力する正逆転切換ケースを設け、前記正逆転切換ケースに設けた正逆転伝達軸に前記カウンタ軸を連結したことを特徴とするコンバイン。
前記正逆転切換ケースに正転用ベベルギヤと逆転用ベベルギヤを内設すると共に、前記カウンタ軸の軸心線上に前記正逆転切換ケースと前記正逆転伝達軸を配置し、前記正転用ベベルギヤまたは逆転用ベベルギヤと前記正逆転伝達軸を介して前記カウンタ軸に前記唐箕軸を連結したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
運転座席が設けられた運転台の側方に前記フィーダハウスを並設する構造であって、前記脱穀装置の側面のうち運転座席から離れた側面に、前記脱穀装置の選別駆動ベルトと前記正逆転切換ケースと刈取クラッチを配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
前記正逆転切換ケースに正転用ベベルギヤと逆転用ベベルギヤを内設すると共に、前記唐箕軸の軸心線上に前記正逆転切換ケースと前記正逆転伝達軸を配置し、前記正転用ベベルギヤまたは逆転用ベベルギヤと前記正逆転伝達軸を介して前記カウンタ軸に前記唐箕軸を連結したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
前記脱穀装置の前部にフロントロータを配置する構造であって、前記フロントロータに刈取クラッチを介して前記正逆転伝達軸を連結したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された従来技術では、エンジンの回転駆動力を利用して脱穀装置の扱胴を逆転させることができないから、脱粒ロータの穀稈投入口側から残留藁または詰り藁を簡単に除去できない。また、刈取装置(フィーダハウス)の左右両側に、正転用駆動ベルト(正転クラッチ)などの正転駆動機構と、逆転用駆動ベルト(逆転クラッチ)などの逆転駆動機構を振分けて配設するから、刈取装置の左右両側に刈取駆動機構の取付けスペースをそれぞれ確保する必要がある。即ち、刈取装置に対して運転台または脱穀装置などの配置構造が互いに制約される。例えば、正転用駆動ベルトまたは逆転用駆動ベルト等を簡単に交換できない等の構造上の問題がある。また、刈取装置と脱穀装置間に設ける駆動構造のメンテナンス作業性などを向上できない等の問題もある。なお、正回転伝達機構の入切操作機構と逆回転伝達機構の入切操作機構をそれぞれ設けて、前記各入切操作機構と刈取クラッチ操作機構を兼用した場合、収穫作業時、オペレータの誤操作によって刈取装置が逆転される不具合もある。
【0005】
そこで、本願発明は、これらの現状を検討して改善を施した普通型コンバインを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、プラットホームオーガ及びフィーダハウスを設ける刈取装置と、扱胴及び穀粒選別機構を有する脱穀装置と、走行部及びエンジンを設ける走行機体を備え、前記刈取装置から前記脱穀装置に穀稈を供給するコンバインにおいて、前記エンジンの出力軸に脱穀クラッチを介して連結する唐箕軸と、前記刈取装置と扱胴を駆動するカウンタ軸を設ける構造であって、前記唐箕軸の回転駆動力を入力する正逆転切換ケースを設け、前記正逆転切換ケースに設けた正逆転伝達軸に前記カウンタ軸を連結したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記正逆転切換ケースに正転用ベベルギヤと逆転用ベベルギヤを内設すると共に、前記カウンタ軸の軸心線上に前記正逆転切換ケースと前記正逆転伝達軸を配置し、前記正転用ベベルギヤまたは逆転用ベベルギヤと前記正逆転伝達軸を介して前記カウンタ軸に前記唐箕軸を連結したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、運転座席が設けられた運転台の側方にフィーダハウスを並設する構造であって、前記脱穀装置の側面のうち運転座席から離れた側面に、前記脱穀装置の選別駆動ベルトと前記正逆転切換ケースと刈取クラッチを配置したものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記正逆転切換ケースに正転用ベベルギヤと逆転用ベベルギヤを内設すると共に、前記唐箕軸の軸心線上に前記正逆転切換ケースと前記正逆転伝達軸を配置し、前記正転用ベベルギヤまたは逆転用ベベルギヤと前記正逆転伝達軸を介して前記カウンタ軸に前記唐箕軸を連結したものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記脱穀装置の前部にフロントロータを配置する構造であって、前記フロントロータに刈取クラッチを介して前記正逆転伝達軸を連結したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、プラットホームオーガ及びフィーダハウスを設ける刈取装置と、扱胴及び穀粒選別機構を有する脱穀装置と、走行部及びエンジンを設ける走行機体を備え、前記刈取装置から前記脱穀装置に穀稈を供給するコンバインにおいて、前記エンジンの出力軸に脱穀クラッチを介して連結する唐箕軸と、前記刈取装置と扱胴を駆動するカウンタ軸を設ける構造であって、前記唐箕軸の回転駆動力を入力する正逆転切換ケースを設け、前記正逆転切換ケースに設けた正逆転伝達軸に前記カウンタ軸を連結したものであるから、前記扱胴の入力側に前記正逆転出力軸を設けることによって、前記刈取装置と前記扱胴の両方を逆転できる共に、前記刈取装置を停止した状態で、前記扱胴だけを逆転させることもできる。前記扱胴の穀稈投入口側から残留藁を簡単に排除できる。また、刈取クラッチ操作と正逆転切換操作をそれぞれ各別に実行可能に構成でき、収穫作業時、オペレータの誤操作によって刈取装置が逆転するのを防止できる。前記刈取装置と扱胴を正転または逆転させる正逆転操作機構も簡略化できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、前記正逆転切換ケースに正転用ベベルギヤと逆転用ベベルギヤを内設すると共に、前記カウンタ軸の軸心線上に前記正逆転切換ケースと前記正逆転伝達軸を配置し、前記正転用ベベルギヤまたは逆転用ベベルギヤと前記正逆転伝達軸を介して前記カウンタ軸に前記唐箕軸を連結したものであるから、前記刈取装置と前記扱胴の両方を逆転できるものでありながら、前記刈取装置と前記脱穀装置にエンジンの出力を簡単に分岐でき、前記刈取装置と前記脱穀装置に動力を伝達する駆動構造を、前記正逆転切換ケースに集約して、コンパクトに構成できる。また、前記カウンタ軸の軸受機構として前記正逆転切換ケースを活用でき、前記カウンタ軸の支持剛性を簡単に向上できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、運転座席が設けられた運転台の側方に前記フィーダハウスを並設する構造であって、前記脱穀装置の側面のうち運転座席から離れた側面に、前記脱穀装置の選別駆動ベルトと前記正逆転切換ケースと刈取クラッチを配置したものであるから、前記運転座席から離れた脱穀装置の機外側部で、前記正逆転クラッチケースを着脱できる。前記選別駆動ベルトと正逆転クラッチケースと刈取クラッチを略同一場所で点検でき、前記刈取装置及び脱穀装置の駆動伝達部のメンテナンス作業性を向上できる。また、前記運転台の側部にフィーダハウスを接近させて設置でき、前記刈取装置の後部のうち左右幅の中央寄りにフィーダハウスの入り口側を連通させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記正逆転切換ケースに正転用ベベルギヤと逆転用ベベルギヤを内設すると共に、前記唐箕軸の軸心線上に前記正逆転切換ケースと前記正逆転伝達軸を配置し、前記正転用ベベルギヤまたは逆転用ベベルギヤと前記正逆転伝達軸を介して前記カウンタ軸に前記唐箕軸を連結したものであるから、前記刈取装置と前記扱胴の両方を逆転できるものでありながら、前記刈取装置と前記脱穀装置にエンジンの出力を簡単に分岐でき、前記刈取装置と前記脱穀装置に動力を伝達する駆動構造を、前記正逆転切換ケースに集約して、コンパクトに構成できる。また、前記唐箕軸の軸受機構として前記正逆転切換ケースを活用でき、前記唐箕軸の支持剛性を簡単に向上できる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、前記脱穀装置の前部にフロントロータを配置する構造であって、前記フロントロータに刈取クラッチを介して前記正逆転伝達軸を連結したものであるから、前記刈取装置と前記フロントロータを停止させた状態下で、前記扱胴だけを逆転でき、前記扱胴前部(穀稈投入口)の残留藁を前記フロントロータに向けて簡単に排除できる。また、前記扱胴を連続的に逆転させながら、前記刈取装置と前記フロントロータを断続的に逆転でき、前記フィーダハウスまたは前記フロントロータから残留藁を簡単に除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、普通型コンバインに適用した図面(
図1〜
図5)に基づいて説明する。
図1はコンバインの左側面図、
図2は同右側面図、
図3は同平面図、
図4は同左側斜視図、
図5は同背面図である。まず、
図1〜
図5を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0018】
図1〜
図5に示す如く、実施形態における普通型コンバインは、走行部としてのゴムクローラ製の左右一対の履帯2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、稲(又は麦又は大豆又はトーモロコシ)等の未刈り穀稈を刈取りながら取込む刈取装置3が単動式の昇降用油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
【0019】
走行機体1の左側には、刈取装置3から供給された刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀装置9を搭載する。脱穀装置9の下部には、揺動選別及び風選別を行うための穀粒選別機構10を配置する。走行機体1の前部右側には、オペレータが搭乗する運転台5を搭載する。動力源としてのエンジン7を、運転台5(運転座席42の下方)に配置する。運転台5の後方(走行機体1の右側)には、脱穀装置9から穀粒を取出すグレンタンク6と、トラック荷台200(またはコンテナなど)に向けてグレンタンク6内の穀粒を排出する穀粒排出コンベヤ8を配置する。穀粒排出コンベヤ8を機外側方に傾倒させて、グレンタンク6内の穀粒を穀粒排出コンベヤ8にて搬出するように構成している。
【0020】
刈取装置3は、脱穀装置9前部の扱口9aに連通したフィーダハウス11と、フィーダハウス11の前端に連設された横長バケット状の穀物ヘッダー12とを備える。穀物ヘッダー12内に掻込みオーガ13(プラットホームオーガ)を回転可能に軸支する。掻込みオーガ13の前部上方にタインバー付き掻込みリール14を配置する。穀物ヘッダー12の前部にバリカン状刈刃15を配置する。穀物ヘッダー12前部の左右両側に左右の分草体16を突設する。また、フィーダハウス11に供給コンベヤ17を内設する。供給コンベヤ17の送り終端側(扱口9a)に刈取り穀稈投入用ビータ18(フロントロータ)を設ける。なお、フィーダハウス11の下面部と走行機体1の前端部とが昇降用油圧シリンダ4を介して連結され、後述する刈取入力軸89(フィーダハウスコンベヤ軸)を昇降支点として、刈取装置3が昇降用油圧シリンダ4にて昇降動する。
【0021】
上記の構成により、左右の分草体16間の未刈り穀稈の穂先側が掻込みリール14にて掻込まれ、未刈り穀稈の稈側が刈刃15にて刈取られ、掻込みオーガ13の回転駆動によって、穀物ヘッダー12の左右幅の中央部寄りのフィーダハウス11入口付近に刈取穀稈が集められる。穀物ヘッダー12の刈取穀稈の全量は、供給コンベヤ17によって搬送され、ビータ18によって脱穀装置9の扱口9aに投入されるように構成している。なお、穀物ヘッダー12を水平制御支点軸回りに回動させる水平制御用油圧シリンダ(図示省略)を備え、穀物ヘッダー12の左右方向の傾斜を前記水平制御用油圧シリンダにて調節して、穀物ヘッダー12、及び刈刃15、及び掻込みリール14を圃場面に対して水平に支持することも可能である。
【0022】
また、
図1、
図3に示す如く、脱穀装置9の扱室内に扱胴21を回転可能に設ける。走行機体1の前後方向に延長させた扱胴軸20に扱胴21を軸支する。扱胴21の下方側には、穀粒を漏下させる受網24を張設する。なお、扱胴21前部の外周面には、螺旋状のスクリュー羽根状の取込み羽根25が半径方向外向きに突設されている。
【0023】
上記の構成により、ビータ18によって扱口9aから投入された刈取穀稈は、扱胴21の回転によって走行機体1の後方に向けて搬送されながら、扱胴21と受網24との間などにて混練されて脱穀される。受網24の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は受網24から漏下する。受網24から漏下しない藁屑等は、扱胴21の搬送作用によって、脱穀装置9後部の排塵口23から圃場に排出される。
【0024】
なお、扱胴21の上方側には、扱室内の脱穀物の搬送速度を調節する複数の送塵弁(図示省略)を回動可能に枢着する。前記送塵弁の角度調整によって、扱室内の脱穀物の搬送速度(滞留時間)を、刈取穀稈の品種や性状に応じて調節できる。一方、脱穀装置9の下方に配置された穀粒選別機構10として、グレンパン及びチャフシーブ及びグレンシーブ及びストローラック等を有する比重選別用の揺動選別盤26を備える。
【0025】
また、穀粒選別機構10として、揺動選別盤26に選別風を供給する唐箕ファン29等を備える。扱胴21にて脱穀されて受網24から漏下した脱穀物は、揺動選別盤26の比重選別作用と唐箕ファン29の風選別作用とにより、穀粒(精粒等の一番物)、穀粒と藁の混合物(枝梗付き穀粒等の二番物)、及び藁屑等に選別されて取出されるように構成する。
【0026】
揺動選別盤26の下側方には、穀粒選別機構10として、一番コンベヤ機構30及び二番コンベヤ機構31を備える。揺動選別盤26及び唐箕ファン29の選別によって、揺動選別盤26から落下した穀粒(一番物)は、一番コンベヤ機構30及び揚穀コンベヤ32によってグレンタンク6に収集される。穀粒と藁の混合物(二番物)は、二番コンベヤ機構31及び二番還元コンベヤ33等を介して揺動選別盤26の選別始端側に戻され、揺動選別盤26によって再選別される。藁屑等は、走行機体1後部の排塵口23から圃場に排出されるように構成する。
【0027】
さらに、
図1〜
図4に示す如く、運転台5には、操縦コラム41と、オペレータが座乗する運転座席42とを配置している。操縦コラム41には、走行機体1の進路を変更する操縦レバー43と、走行機体1の移動速度を切換える主変速レバー44及び副変速レバー45と、刈取装置3を駆動または停止操作する刈取クラッチレバー46と、脱穀装置9を駆動または停止操作する脱穀クラッチレバー47が配置されている。また、運転台5の上方側にサンバイザー支柱48を介して日除け用の屋根体49を取付けている。
【0028】
図1、
図2に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム50を配置している。トラックフレーム50には、履帯2にエンジン7の動力を伝える駆動スプロケット51と、履帯2のテンションを維持するテンションローラ52と、履帯2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ53と、履帯2の非接地側を保持する中間ローラ54とを設けている。前記駆動スプロケット51によって履帯2の前側を支持させ、テンションローラ23によって履帯2の後側を支持させ、トラックローラ53によって履帯2の接地側を支持させ、中間ローラ54によって履帯2の非接地側を支持させるように構成する。
【0029】
次に、
図6〜
図7を参照してコンバインの駆動構造を説明する。
図6に示す如く、図示しない走行油圧ポンプ及び油圧モータを有する走行変速用の油圧無段変速機64をミッションケース63に設ける。走行機体1前部の右側上面にエンジン7を搭載し、エンジン7左側の走行機体1前部にミッションケース63を配置している。また、エンジン7から左側方に突出させた出力軸65と、ミッションケース63から左側方に突出させた入力軸66を、エンジン出力ベルト67を介して連結する。なお、昇降用油圧シリンダ4等を駆動するチャージポンプ68と、冷却ファン69をエンジン7に配置し、チャージポンプ68及び冷却ファン69をエンジン7にて駆動するように構成している。
【0030】
図6、
図7に示す如く、扱胴軸20の前端側を軸支する扱胴駆動ケース71を備えている。脱穀装置9の前面壁体に扱胴駆動ケース71を設ける。また、前記刈取装置3と扱胴21を駆動するためのカウンタ軸72を扱胴駆動ケース71に軸支する。唐箕ファン29を軸支した唐箕軸76の右側端部に、唐箕入力プーリ83を設けている。エンジン7の出力軸65に、テンションローラを兼用した脱穀クラッチ84と脱穀駆動ベルト85を介して、唐箕軸76右側端部の唐箕入力プーリ83を連結する。即ち、エンジン7の出力軸65に脱穀駆動ベルト85を介して唐箕軸76を連結している。そして、エンジン7から離れた側の唐箕軸76の左側端部に扱胴駆動プーリ86を設ける。
【0031】
また、
図6、
図7に示す如く、エンジン7から離れた側のカウンタ軸72の左側端部に正逆転切換ケース121を設ける。正逆転切換ケース121に正逆転伝達軸122を軸支する。カウンタ軸72の軸心線上に正逆転切換ケース121と正逆転伝達軸122を配置する。また、正逆転伝達軸122にカウンタ入力プーリ88を設ける。扱胴駆動プーリ86に、常張り状の扱胴駆動ベルト87を介して、正逆転伝達軸122左側端部のカウンタ入力プーリ88を連結する。左右方向に延設したカウンタ軸72の右側端部に、ベベルギヤ機構75を介して扱胴軸20の前端側を連結する。唐箕軸76から正逆転伝達軸122及びカウンタ軸72を介して扱胴軸20の前端側にエンジン7の動力を伝達させ、扱胴21を回転駆動させるように構成している。
【0032】
即ち、オペレータの脱穀クラッチレバー47操作によって、脱穀クラッチ84が入り切り制御される。脱穀クラッチ84の入り操作によって、カウンタ軸72を介して扱胴21が駆動されて、ビータ18から投入された穀稈が扱胴21によって連続的に脱穀されるように構成している。
【0033】
さらに、一番コンベヤ機構30の一番コンベヤ軸77の左側端部と、二番コンベヤ機構31の二番コンベヤ軸78の左側端部とに、選別駆動ベルトとしてのコンベヤ駆動ベルト111を介して唐箕軸76の左側端部を連結している。揺動選別盤26後部を軸支したクランク状の揺動駆動軸79の左側端部に揺動選別ベルト112を介して二番コンベヤ軸78の左側端部を連結している。なお、一番コンベヤ軸77を介して揚穀コンベヤ32が駆動されて、一番コンベヤ機構30の一番選別穀粒がグレンタンク6に収集される。また、二番コンベヤ軸78を介して二番還元コンベヤ33が駆動されて、二番コンベヤ機構31の藁屑が混在した二番選別穀粒(二番物)が揺動選別盤26の上面側に戻される。
【0034】
一方、ビータ18を軸支するビータ軸82を備える。カウンタ軸72とビータ軸82の間に、刈取プーリ108,109とテンションローラ形刈取クラッチ115を介して刈取り駆動ベルト114を張設する。刈取り駆動ベルト114を介してカウンタ軸72の左側端部にビータ軸82の左側端部を連結する。また、供給コンベヤ17の送り終端側を軸支するためのコンベヤ入力軸としての刈取入力軸89を備える。刈取り駆動チェン116及びスプロケット117,118を介して、ビータ軸82に刈取入力軸89を連結する。なお、刈取入力軸89に刈取装置3全体を昇降動可能に支持している。
【0035】
前記刈取装置の穀物ヘッダー12にヘッダー駆動軸91を設ける。ヘッダー駆動軸91に、ヘッダー駆動チェン90を介して刈取入力軸89の右側端部を連結する。掻込みオーガ13を軸支する掻込み軸93を備える。掻込み軸93に、掻込み駆動チェン92を介してヘッダー駆動軸91を連結する。
【0036】
また、掻込みリール14を軸支するリール軸94を備える。リール軸94に、中間軸95及びリール駆動チェン96,97を介してヘッダー駆動軸91を連結する。ヘッダー駆動軸91の右側端部には、刈刃駆動クランク機構98を介して刈刃15が連結されている。刈取クラッチ115の入り切り操作によって、供給コンベヤ17と、掻込みオーガ13と、掻込みリール14と、刈刃15が駆動制御されて、圃場の未刈り穀稈の穂先側を連続的に刈取るように構成している。
【0037】
次いで、
図4、
図6、
図7を参照して、前記刈取装置3の正逆転切換構造を説明する。
図6、
図7に示す如く、正逆転伝達軸122に一体形成する正転用ベベルギヤ124と、刈取入力軸89に回転自在に軸支する逆転用ベベルギヤ125と、正逆転切換軸123に回転自在に被嵌する中間ベベルギヤ126を、正逆転切換ケース121に内設する。正転用ベベルギヤ124と逆転用ベベルギヤ125に中間ベベルギヤ126を常に歯合させる。一方、カウンタ軸72にスライダ127をスライド自在にスプライン係合軸支する。爪クラッチ形状の正転クラッチ128を介して正転用ベベルギヤ124にスライダ127を係脱可能に係合可能に構成すると共に、爪クラッチ形状の逆転クラッチ129を介して逆転用ベベルギヤ125にスライダ127を係脱可能に係合可能に構成している。
【0038】
また、正逆転切換軸123に正逆転切換アーム130を設け、正逆転切換アーム130を揺動させて、正逆転切換軸123を回動し、正転用ベベルギヤ124または逆転用ベベルギヤ125にスライダ127を接離させ、正転クラッチ128または逆転クラッチ129を介して正転用ベベルギヤ124または逆転用ベベルギヤ125にスライダ127を択一的に係止し、正逆転伝達軸122にカウンタ軸72を正転連結または逆転連結させるように構成している。
【0039】
さらに、
図4、
図7に示す如く、脱穀装置9前方の走行機体1に正逆転切換ケース121をボルトにて締結する。また、前記スライダ127を切換える正逆転切換アーム130に、操作ロッド131を介して正逆転切換操作具としての正逆転切換レバー132を連結している。脱穀装置9右側面部にレバー支持用のブラケット体133を固着し、ブラケット体133に正逆転切換レバー132の中間部を回動可能に支持する。脱穀装置9前部と運転台5の間に正逆転切換レバー132を配置する。
【0040】
上記の構成により、オペレータが正逆転切換レバー132を操作して、正転用ベベルギヤ124に正転クラッチ128を介してスライダ127を係合させ、正逆転伝達軸122にカウンタ軸72を正転連結させた状態で、オペレータが脱穀クラッチ84を入り操作して脱穀装置9を作動させると共に、刈取クラッチ115を入り操作して刈取装置3を作動させ、圃場の穀稈を連続的に刈取りながら脱穀し、グレンタンク6に穀粒を収集する。
【0041】
一方、前記収穫作業中、フィーダハウス11またはビータ18または扱胴12などに刈取穀稈が詰って停滞した場合、先ず、オペレータが正逆転切換レバー132を操作して、逆転用ベベルギヤ125に逆転クラッチ129を介してスライダ127を係合させ、正逆転伝達軸122にカウンタ軸72を逆転連結させた状態で、脱穀クラッチ84と刈取クラッチ115を入り操作して、扱胴12及びビータ18及び供給コンベヤ17(刈取装置3)を逆転作動させ、扱胴12前部またはビータ18またはフィーダハウス11内などに詰った穀稈を穀物ヘッダー12側に逆戻り移動させ、扱胴12前部またはビータ18またはフィーダハウス11内などに詰った穀稈を穀物ヘッダー12側から外部に取出す。
【0042】
なお、刈取クラッチ115を切り操作して、ビータ18及び供給コンベヤ17(刈取装置3)を停止した状態下で、扱胴12だけを逆転作動させ、扱胴12前部に溜まった穀稈をビータ18側に逆戻り移動させ、外部に取出すことも行える。
【0043】
次に、
図8を参照して、第2実施形態のコンバインの駆動構造を説明する。
図8に示す如く、唐箕軸76の左側端部に正逆転切換ケース121を配置し、唐箕軸76と同一軸心線上に正逆転伝達軸122を設け、カウンタ軸72に扱胴駆動ベルト87を介して正逆転伝達軸122を連結している。スライダ127の正転クラッチ128または逆転クラッチ129と、正転用ベベルギヤ124または逆転用ベベルギヤ125を介して、カウンタ軸72に正逆転伝達軸122を連結している。上記の実施形態と同様に、正転用ベベルギヤ124を介して刈取装置3と扱胴12とビータ18を正転作動させ、収穫作業を実行する。一方、逆転用ベベルギヤ125を介して刈取装置3を逆転作動させ、扱胴12と供給コンベヤ17とビータ18を逆転作動させ、扱胴12部に詰った穀稈をビータ18側に逆戻り移動させ、ビータ18部に詰った穀稈をフィーダハウス11側に逆戻り移動させ、フィーダハウス11内に詰った穀稈を穀物ヘッダー12側に逆戻り移動させて機外に取出す。扱胴12とビータ18の逆転によって、扱口9aなどに詰った穀稈を簡単に除去できる。
【0044】
さらに、
図6、
図8に示す如く、エンジン7の出力軸65にテンションプーリ状のオーガクラッチ56及びオーガ駆動ベルト57を介してオーガ駆動軸58の右側端部を連結する。オーガ駆動軸58の左側端部にベベルギヤ機構59を介してグレンタンク6底部の横送りオーガ60前端側を連結する。横送りオーガ60の後端側にベベルギヤ機構59を介して穀粒排出コンベヤ8の縦送りオーガ61を連結している。
【0045】
また、前記オーガクラッチ56を入り切り操作する穀粒排出レバー62を備える。グレンタンク6前面の右外側方に穀粒排出レバー62の操作部を突出し、運転座席42側またはグレンタンク6の右側外面の圃場からオペレータが穀粒排出レバー62を操作可能に構成している。
【0046】
図2、
図4に示す如く、グレンタンク6前部の上面にロックフレーム体137の基端側を起伏可能に設け、左右のサンバイザー支柱48間の横フレーム138にロックフレーム体137の先端側を係脱可能に係止し、横フレーム138にロックフレーム体137の先端側を着脱可能なノブボルト139にて連結する。一方、
図2、
図5に示す如く、走行機体1の後部右側にタンク回動台140を介してタンク回動支点軸141を回動可能に軸支する。走行機体1の上面側に突出させるタンク回動支点軸141の上端部にタンク回動ブラケット体142を固着し、グレンタンク6の底部後側にタンク回動ブラケット体142の前部を固着する。
【0047】
また、横送りオーガ60の送り終端部に縦送りオーガ61(穀粒排出コンベヤ8)の送り始端側を連結するコンベヤ受継ぎケース143を設けると共に、横送りオーガ60軸心線の後方延長上にコンベヤ傾動支点軸144を配置する。タンク回動ブラケット体142の後端側にコンベヤ傾動支点軸144を介してコンベヤ受継ぎケース143の後面側を連結する。
【0048】
図2、
図5に示す如く、走行機体1の上面と、前記脱穀装置9後部の右側面とに固着する支持枠体145(走行機体1)を設ける。穀粒排出コンベヤ8に設ける傾動操作体147を支持枠体145にコンベヤロックレバー体148にて係脱可能に係止する。穀粒排出コンベヤ8に設ける傾動操作体147と、支持枠体145の間に、穀粒排出コンベヤ8の中間部を挟持固定する。また、支持枠体145にグレンタンク6後部の上面側をタンクロックレバー体149にて係脱可能に係止する。
【0049】
上記の構成により、ノブボルト139を外して、横フレーム138からロックフレーム体137を離脱させ、タンクロックレバー体149を外し、タンク回動支点軸141回りにグレンタンク6を回動させ、グレンタンク6設置部を開放し、エンジン7のメンテナンスなどを実行する。また、グレンタンク6を走行機体1上の設置場所に固着した状態で、コンベヤロックレバー体148を外し、作業者が傾動操作体147を握って、コンベヤ傾動支点軸144回りに穀粒排出コンベヤ8を回動させ、穀粒排出コンベヤ8(縦送りオーガ61)の送り終端側をトラック荷台200上に移動させ、穀粒排出レバー62にてオーガクラッチ56を入り操作して、横送りオーガ60及び縦送りオーガ61を駆動し、グレンタンク6内からトラック荷台200に向けて穀粒を搬出させる。
【0050】
また、穀粒排出コンベヤ8に傾動支持フック体150を設け、支持枠体145に設けた傾動支持チェン151を傾動支持フック体150に係止し、機外側方に傾動した姿勢で穀粒排出コンベヤ8を傾動支持チェン151にて支持する。支持枠体145に穀粒排出コンベヤ8を固定した垂直支持姿勢、または傾動支持チェン151に穀粒排出コンベヤ8を固定した傾動支持姿勢のいずれでも、圃場の穀稈を刈取る収穫作業が実行できる。
【0051】
図1、
図4、
図6、
図7、
図8に示す如く、プラットホームオーガとしての掻込みオーガ13及びフィーダハウス11を設ける刈取装置3と、扱胴21及び穀粒選別機構10を有する脱穀装置9と、走行部としての履帯2及びエンジン7を設ける走行機体1を備え、刈取装置3から脱穀装置9に穀稈を供給するコンバインにおいて、エンジン7の出力軸65に脱穀クラッチ84を介して連結する唐箕軸76と、刈取装置3と扱胴21を駆動するカウンタ軸72を設ける構造であって、唐箕軸76の回転駆動力を入力する正逆転切換ケース121を設け、正逆転切換ケース121に設けた正逆転伝達軸122にカウンタ軸72を連結している。したがって、扱胴21の入力側に正逆転出力軸122を設けることによって、刈取装置3と扱胴21の両方を逆転できる共に、刈取装置3を停止した状態で、扱胴21だけを逆転させることもできる。扱胴21の穀稈投入口側から残留藁を簡単に排除できる。また、刈取クラッチ115操作と正逆転切換操作をそれぞれ各別に実行可能に構成でき、収穫作業時、オペレータの誤操作によって刈取装置3が逆転するのを防止できる。刈取装置3と扱胴21を正転または逆転させる正逆転操作機構も簡略化できる。
【0052】
図6、
図7に示す如く、正逆転切換ケース121に正転用ベベルギヤ124と逆転用ベベルギヤ125を内設すると共に、カウンタ軸72の軸心線上に正逆転切換ケース121と正逆転伝達軸122を配置し、正転用ベベルギヤ124または逆転用ベベルギヤ125と正逆転伝達軸122を介してカウンタ軸72に唐箕軸76を連結している。したがって、刈取装置3と扱胴21の両方を逆転できるものでありながら、刈取装置3と脱穀装置9にエンジン7の出力を簡単に分岐でき、刈取装置3と脱穀装置9に動力を伝達する駆動構造を、正逆転切換ケース121に集約して、コンパクトに構成できる。また、カウンタ軸72の軸受機構として正逆転切換ケース121を活用でき、カウンタ軸72の支持剛性を簡単に向上できる。
【0053】
図4、
図6、
図8に示す如く、運転座席42が設けられた運転台5の側方にフィーダハウス11を並設する構造であって、脱穀装置9の側面のうち運転座席42から離れた側面に、脱穀装置9の選別駆動ベルトとしてのコンベヤ駆動ベルト111と正逆転切換ケース121と刈取クラッチ115を配置している。したがって、運転座席42から離れた脱穀装置9の機外側部で、正逆転切換ケース121を着脱できる。コンベヤ駆動ベルト111と正逆転切換ケース121と刈取クラッチ115を略同一場所で点検でき、刈取装置3及び脱穀装置9の駆動伝達部のメンテナンス作業性を向上できる。また、運転台5の側部にフィーダハウス11を接近させて設置でき、刈取装置3の後部のうち左右幅の中央寄りにフィーダハウス11の入り口側を連通させることができる。
【0054】
図8に示す如く、正逆転切換ケース121に正転用ベベルギヤ124と逆転用ベベルギヤ125を内設すると共に、唐箕軸76の軸心線上に正逆転切換ケース121と正逆転伝達軸122を配置し、正転用ベベルギヤ124または逆転用ベベルギヤ125と正逆転伝達軸122を介してカウンタ軸72に唐箕軸76を連結している。したがって、刈取装置3と扱胴21の両方を逆転できるものでありながら、刈取装置3と脱穀装置9にエンジン7の出力を簡単に分岐でき、刈取装置3と脱穀装置9に動力を伝達する駆動構造を、正逆転切換ケース121に集約して、コンパクトに構成できる。また、唐箕軸76の軸受機構として正逆転切換ケース121を活用でき、唐箕軸76の支持剛性を簡単に向上できる。
【0055】
図6、
図8に示す如く、脱穀装置9の前部にフロントロータとしてのビータ18を配置する構造であって、ビータ18に刈取クラッチ115を介して正逆転伝達軸122を連結している。したがって、刈取装置3とビータ18を停止させた状態下で、扱胴21だけを逆転でき、扱胴21前部(穀稈投入口9a)の残留藁をビータ18に向けて簡単に排除できる。また、扱胴21を連続的に逆転させながら、刈取装置3とビータ18を断続的に逆転でき、フィーダハウス11またはビータ18から残留藁を簡単に除去できる。