特許第5764058号(P5764058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764058
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】心臓の同時性及び生存能力の超音波評価
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   A61B8/08
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-517282(P2011-517282)
(86)(22)【出願日】2009年6月30日
(65)【公表番号】特表2011-527586(P2011-527586A)
(43)【公表日】2011年11月4日
(86)【国際出願番号】IB2009052841
(87)【国際公開番号】WO2010004479
(87)【国際公開日】20100114
【審査請求日】2012年6月26日
(31)【優先権主張番号】61/079,663
(32)【優先日】2008年7月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】サルゴ アイヴァン
(72)【発明者】
【氏名】セトルマイアー スコット
(72)【発明者】
【氏名】チャン ペーター
【審査官】 宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−175235(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/107926(WO,A1)
【文献】 特開2008−073423(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/046074(WO,A1)
【文献】 特開2001−070303(JP,A)
【文献】 特開平09−313485(JP,A)
【文献】 特開平11−290325(JP,A)
【文献】 特開2004−313545(JP,A)
【文献】 特開2005−000664(JP,A)
【文献】 特開2006−026079(JP,A)
【文献】 特開2006−110190(JP,A)
【文献】 特開2007−117611(JP,A)
【文献】 特表2004−514527(JP,A)
【文献】 特表2004−529719(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/138522(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心筋運動を診断する超音波診断撮像システムにおいて、
心臓内に超音波を送信し、これに応答してエコーを受信するプローブと、
前記エコーに応答して、心臓サイクルの少なくとも一部にわたり心筋の画像のシーケンスを生成する画像プロセッサと、
前記画像のシーケンスに応答して、前記心筋の複数のセグメントの運動を決定する心筋運動分析器と、
前記セグメントの運動に応答して、前記心臓サイクル中の前記複数のセグメントのうち、前記運動の変位が所定の基準を達成するセグメントの割合、及び前記心臓サイクル中のそれぞれのセグメントが前記所定の基準を達成する時を示すインジケータを生成するリクルートメントプロセッサと、
前記リクルートメントプロセッサに結合され、前記インジケータを表示するディスプレイと、
を有する超音波診断撮像システム。
【請求項2】
前記所定の基準は、それぞれのセグメントの変位の最大変位に対する割合の閾値である、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項3】
前記インジケータが、心臓収縮における前記心筋のセグメントが前記所定の基準を達成する時間を示すグラフィカルリクルートメントインジケータである、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項4】
前記インジケータが、生体構造に基づく前記心筋のセグメントが前記所定の基準を達成する時間を示すパラメトリック表示である、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項5】
前記セグメントが、前記心筋の超音波画像の画素に対応する、請求項4に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項6】
前記運動分析器が、前記変位として歪値を生成する、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項7】
前記運動分析器が、前記変位として歪率値を生成する、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項8】
前記運動分析器が、前記変位として組織変位の値を生成する、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項9】
前記歪値が、初期長さに対する長さの変化として計算される、請求項6に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項10】
前記歪値が、半径方向の歪値を有する、請求項6に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項11】
前記歪値が、円周方向の歪値を有する、請求項6に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項12】
前記歪値が、長手方向の歪値を有する、請求項6に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項13】
前記運動分析器が、スペックルトラッキングにより前記心筋の運動を追跡する、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項14】
前記運動分析器が、境界検出により前記心筋の運動を追跡する、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項15】
前記リクルートメントプロセッサが、前記心筋の異なるセグメントに対して心臓収縮中の歪値のプロットを生成する、請求項6に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項16】
前記リクルートメントプロセッサが、前記歪値プロットに応答して、前記心臓収縮に対するリクルートメント曲線を生成する、請求項15に記載の超音波診断撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断超音波システム、特に、心機能(cardiac performance)の同時性(synchronicity)及び生存能力(viability)の評価を実行する超音波システムに関する。
【背景技術】
【0002】
心室機能を評価及び数量化する多くの超音波方法が存在する。心筋梗塞及び駆出率を示す心室壁運動は、心エコー検査技師に対する基本的な診断ツールである。これらの診断ツールは、輪郭を描かれた心筋及び心室の測定が行われることができるように、心室が規定され、心周期にわたる一連の画像に対して追跡されることを必要とする。超音波画像において心臓壁の輪郭を描く技術は、例えば、血液組織界面の自動境界追跡及び特に収縮の速度を数量化する心臓壁運動の組織ドップラ撮像を含む。心筋運動の輪郭を描き、追跡する能力は、心臓の電気刺激の同時性を診断するのに重要であり、また、虚血、冬眠又は気絶のような状況により引き起こされることができる心臓の運動不能領域を評価するのにも重要である。心臓は、心筋の筋肉細胞内のナトリウム及びカリウムチャネルを通過する電気化学信号により収縮するように命令される。心筋全体に行きわたるように分散されるこれらの信号は、同じ時刻に収縮するように心筋細胞に命令すべきである。これが起こる場合、心臓は、緩和した最大体積から収縮した最小体積まで収縮し、これにより各心拍で最大体積の血液を送り出す。これは、健康な心臓の特性である。しかしながら、この収縮を刺激する信号が、心臓の異なる領域に異なる時間において収縮させる場合、異常収縮は、最大体積より少ない血液を送り出し、減少された効率を生じ、時間とともに心臓に負担をかける。必要な治療計画、一般的には同時収縮を強制するように配置されたリードを持つペースメーカの埋め込みが、必要であれば実行されることができるように、この状況を診断することができることが望ましい。この診断及び治療は、心臓再同期療法、又はCRTと称される。
【0003】
心臓の電気機械変換に影響を与える可能性がある病状は、左脚ブロックである。左脚ブロックは、心臓電気インパルスの伝達が遅延される又は主な左脚枝の若しくは左脚前枝及び左脚後枝の両方における速く伝導する繊維に沿って伝導するのに失敗する場合に生じる。これは、右心室から左心室に広がる細胞間伝導により左心室にゆっくりと脱分極させることができる。この状況は、心室収縮の同時性の喪失及び結果として生じる心室からの血液体積の非効率的な駆出に帰着する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、この同時性の喪失の指標及び影響を効果的に及び正確に識別及び数量化することができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の原理によると、心筋の運動又は変位は、心臓サイクルの収縮期及び/又は拡張期の一部又は全てにわたり追跡及び測定される。好適な測定は、歪として知られる距離測定である。前記測定は、心筋の異なる領域において行われ、曲線族が、前記異なる領域における変位測定に対して生成される。心臓サイクル中の心臓収縮に対する前記異なる領域の漸進的な寄与は、本発明者により"リクルートメント(recruitment)"と称される心臓評価においてグラフで、数値で又は両方で数量化される。評価されるリクルートメントの度合は、左脚ブロック及び拡張型心筋症の状況と相関することがわかっている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の原理によって構成された超音波システムをブロック図形式で示す。
図2図1の超音波システムのQLabプロセッサ部分をより詳細に示す。
図3a】心筋の超音波画像内の変位又は歪を測定する3つの技術を示す。
図3b】心筋の超音波画像内の変位又は歪を測定する3つの技術を示す。
図3c】心筋の超音波画像内の変位又は歪を測定する3つの技術を示す。
図4】左心室のセグメント化された心筋壁の概略図である。
図5】本発明の原理によるリクルートメント曲線の生成を示す。
図6】リクルートメント分析のパラメータに対する数値データエントリ表示を示す。
図7】リクルートメントのパラメトリック画像を示す。
図8a】本発明の原理によるリクルートメント基準の動的達成を示すパラメトリック画像のシーケンスを示す。
図8b】本発明の原理によるリクルートメント基準の動的達成を示すパラメトリック画像のシーケンスを示す。
図8c】本発明の原理によるリクルートメント基準の動的達成を示すパラメトリック画像のシーケンスを示す。
図8d】本発明の原理によるリクルートメント基準の動的達成を示すパラメトリック画像のシーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
第一に図1を参照すると、本発明の原理によって構成された超音波診断撮像システムが、ブロック図形式で示される。超音波プローブ112は、超音波パルスを送信及び受信する超音波トランスデューサのアレイ114を含む。前記アレイは、2次元撮像に対する1次元線形又は湾曲アレイであってもよく、又は3次元における電子ビームステアリングに対するトランスデューサ素子の2次元マトリクスであってもよい。以下に記載される3次元データセット及び画像は、好ましくは、2次元アレイプローブを使用して取得される。これらは、機械的にスイープされる1次元アレイプローブを用いて取得されることもできる。アレイ114内の前記超音波トランスデューサは、超音波エネルギを送信し、この送信に応答して戻されるエコーを受信する。送信周波数制御回路20は、アレイ114内の前記超音波トランスデューサに結合された送信/受信(T/R)スイッチ22により超音波エネルギの送信を所望の周波数又は周波数帯域に制御する。前記トランスデューサアレイが信号を送信するように作動される時間は、内部システムクロック(図示されない)に同期されることができるか、又は心臓サイクルのような身体機能に同期されることができ、前記心臓サイクルに対して、心臓サイクル波形がECG装置26により提供される。心拍が、ECG装置26により提供される前記波形により決定されるサイクルの所望の位相にある場合に、前記プローブは、超音波画像を取得するように命令される。送信周波数制御回路20により生成される超音波エネルギの周波数及び帯域幅は、中央コントローラ28により生成される制御信号ftrにより制御される。
【0008】
前記送信される超音波エネルギからのエコーは、アレイ114内の前記トランスデューサにより受信され、T/Rスイッチ22を介して結合され、前記システムがデジタルビームフォーマを使用する場合にはアナログ−デジタル(A/D)コンバータ30によりデジタル化されるエコー信号を生成する。アナログビームフォーマが使用されることもできる。A/Dコンバータ30は、中央コントローラ28により生成される信号fsにより制御されるサンプリング周波数で前記受信されたエコー信号をサンプリングする。サンプリング理論によって決まる所望のサンプリングレートは、受信された通過帯域の最高周波数の少なくとも2倍であり、少なくとも30−40MHzのオーダでありうる。最小の必要条件より高いサンプリングレートも望ましい。
【0009】
アレイ114内の個別のトランスデューサからのエコー信号サンプルは、ビームフォーマ32により遅延及び合計され、コヒーレントエコー信号を形成する。2次元アレイを用いる3次元撮像に対して、米国特許6013032(Savord)及び米国特許6375617(Fraser)に記載されるようにシステムメインフレーム内の主ビームフォーマと前記プローブ内に配置されたマイクロビームフォーマとの間で前記ビームフォーマを分割することが好ましい。デジタルコヒーレントエコー信号は、この場合、デジタルフィルタ34によりフィルタリングされる。この実施例において、送信周波数及び受信周波数は、ビームフォーマ32が、調和周波数帯域のような送信帯域のものとは異なる周波数帯域を自由に受信することができるように、個別に制御される。デジタルフィルタ34は、信号を帯域通過フィルタリングし、前記周波数帯域をより低い又はベースバンド周波数範囲にシフトすることもできる。前記デジタルフィルタは、例えば、米国特許5833613に開示されるタイプのフィルタであることができる。組織からのフィルタリングされたエコー信号は、デジタルフィルタ34から従来のBモード処理に対するBモードプロセッサ36に結合される。
【0010】
マイクロバブルのような造影剤のフィルタリングされたエコー信号は、コントラスト信号プロセッサ38に結合される。造影剤は、しばしば、心室の血液プール内の造影剤に関して心内膜壁の輪郭をより明確に描くのに、又は例えば米国特許6692438に記載されるように心筋の微小血管系の血流検査を実行するのに使用される。コントラスト信号プロセッサ38は、好ましくは、パルス反転技術により調和造影剤から戻されたエコーを分離し、画像位置に対する複数のパルスの送信に起因するエコーは、基本信号成分を相殺し、調和成分を強化するように結合される。好適なパルス反転技術は、例えば、米国特許6186950に記載されている。
【0011】
デジタルフィルタ34からのフィルタリングされたエコー信号は、速度及びパワードップラ信号を生成するように従来のドップラ処理に対するドップラプロセッサ40にも結合される。これらのプロセッサからの出力信号は、平面画像として表示されることができ、3次元画像メモリ44に記憶される3次元画像をレンダリングする3次元画像プロセッサ42にも結合される。3次元レンダリングは、参照によりここに組み込まれる米国特許5720291、並びに米国特許5474073及び5485842に記載されるように実行されることができる。
【0012】
コントラスト信号プロセッサ38、Bモードプロセッサ36及びドップラプロセッサ40からの信号、並びに3次元画像メモリ44からの3次元画像信号は、多数の超音波画像の各々に対する画像データを記憶するシネループ(登録商標)メモリ48に結合される。前記画像データは、好ましくは、セットでシネループメモリ48に記憶され、前記画像データの各セットは、それぞれの時間に取得された画像に対応する。データセット内の画像データは、心拍中のそれぞれの時間における組織血流を示すパラメトリック画像を表示するのに使用されることができる。シネループメモリ48に記憶された画像データのセットは、後の分析に対してデジタルビデオレコーダ又はディスクドライブのような永久メモリ装置に記憶されることもできる。この実施例において、前記画像は、以下に記載されるように前記画像がリクルートメント特性に対して分析されるQLABプロセッサ50にも結合される。前記QLABプロセッサは、前記画像内の生体構造の様々な外観の数量化された測定を行い、米国特許公開番号US2005-74467及びPCT公開番号2005/054898に記載されるような自動境界トレースにより組織境界及び縁を描く。これは、米国特許6491636に記載されるような完全に自動化された手段により、又は前述の米国特許公開番号US20050075567に記載されるような支援される自動境界検出により行われることができる。前記QLABプロセッサにより生成されるデータ及び画像は、ディスプレイ52に表示される。
【0013】
図2は、本発明によって動作する場合の図1のQLabプロセッサ50の一部の詳細なブロック図である。前記QLabプロセッサは、図1のシネループメモリ48に先行するもののような画像プロセッサ440から画像を受信する。画像プロセッサ440は、画像データメモリ140に記憶される画像のスキャンラインデータを生成する。第一に、心臓画像のシーケンスの開始点画像は、PCT公開番号2007/138522に記載されるようなABDプロセッサ144による前記画像内の心室の境界検出により分析される。前記境界がこの第1の画像において規定される場合、前記境界の位置は、輪郭を描かされた組織境界上の又は近くの繰り返しスペックルパターンにしたがうスペックルトラッカ142により後続する画像を通して追跡される。最初に規定された境界及び後続する画像内の境界は、グラフィックプロセッサ148により描かれる又はトレースされる。前記シーケンスの超音波画像は、前記超音波画像内の規定された境界位置上にグラフィカルに生成された境界を表示するスキャンコンバータ450により所望の表示フォーマット(例えば、セクタ、リニア、3D等)に変換される。グラフィック境界オーバレイを持つ画像は、下で詳細に論じられるように心臓画像上で動作するリクルートメントメトリックプロセッサ120により生成されるリクルートメント特性とともにシネループメモリ460に記憶される。前記画像及びリクルートメント情報は、ディスプレイ52に結合される。
【0014】
連続した画像の識別される境界上の特定の点は、前記点の画像位置における局所的な組織により生成されるスペックルパターンにより前記点の開始解剖学的位置を追跡するスペックルトラッカ142により追跡される。スペックルトラッカ142は、隣接した心筋における基準点の周りの画素の領域を識別する。これらの画素のスペックルパターンは、保存され、米国特許6442289(Olsson他)に記載されるように、ブロックマッチングによりマッチされたスペックルパターン及び連続する画像の同じ領域におけるスペックルパターンと比較される。前記マッチングの困難性及び精度は、前記マッチングに対する最大相関を確立することにより決定される。前記画像内の基準点位置は、したがって、前記点の周りのスペックルパターンを追うことにより画像間で追跡される。スペックルトラッカ142が、新しい画像内の基準点を位置特定する場合、前記基準点位置は、グラフィックプロセッサ148に結合され、前記境界が、新しく識別された点位置を使用して再描画され、グラフィックオーバレイが、前記新しい画像に対して生成される。前記新しい画像及びグラフィックオーバレイは、スキャンコンバートされ、ディスプレイ52に表示される。ABDプロセッサ144は、画像内の心筋の心外膜境界を識別又はトレースするのに同じ技術を使用することができる。心内膜及び心外膜境界の識別の更なる詳細は、前述のPCT公開番号2007/138522に見つけられることができる。
【0015】
前記基準点を囲む、内在する又は隣接する心筋組織のスペックルパターンを追跡する代わりに、前記基準点位置が、スペックル追跡以外の手段により、すなわち、サイズが波長より大きい画像特性を追跡することにより追跡されることができることが理解されることができる。例えば、僧帽弁平面角のような特定の解剖学的フィーチャの運動が、追跡されることができる。他の例として、組織テクスチャが追跡されることができる。標的となる特性がスキャンコンバート前又はスキャンコンバート後の画像データのいずれかにおいて追跡されることができることも理解される。
【0016】
最後のステップとして、ユーザは、内在する心筋の境界を正確に描くように識別された境界点又はトレースを手動で調節したいと望みうる。図3aの例における各識別された心筋境界上に配置されるのは、図面に示されるように複数の小さな制御点14、16である。これら小さな制御点の数及び間隔は、システム設計選択であるか、又はユーザが設定することができる変数であってもよい。ユーザインタフェース又は制御パネル150上の制御を使用して、前記ユーザは、これらの制御点を又は近くを指し、前記画像内の心筋境界として前記ユーザに見えるものをより正確に輪郭を描くように前記点をクリック及びドラッグすることができる。前記境界を引き延ばす又は引っ張るこのプロセスは、"ラバーバンディング"として既知であり、特に図9を参照して前述の6491636特許により詳しく記載されている。ラバーバンド調節の代替として、より複雑な実施例において、近似される境界が、近似される組織境界における及び周りの画素の強度情報を使用する画像処理により画像境界を自動的に調節することができる。このプロセスが終了する場合、前記制御点又は境界トレーシングは、前記画像内の心筋の境界を正確に描くことができる。
【0017】
図3aは、本発明の原理によって構成された超音波システムにより生成された短軸像心臓画像を示す。心室10は、前記短軸画像の中心に示され、心筋12により囲まれる。心内膜及び心外膜境界は、上に記載された技術又は例えば米国特許5797396(Geiser他)に記載される技術を使用して規定される。複数の制御点が、心内膜及び心外膜境界の両方において規定される。心内膜及び心外膜制御点14、16の各対は、この例において、前記短軸像の別の半径に位置する2つの点を有する。制御点の各対は、前記点を接続するグラフィックプロセッサ148により生成されるグラフィカルに描かれたコードライン18により結ばれる。放射状のコードラインは、全て、おおよそ心室10の中心に向いていることが見られることができる。心筋が心収縮期中に各心拍で収縮するので、心筋は、心室の中心に向かって前記コードラインの方向に動く。対応して、心筋が心拡張期中に緩和する場合、心筋は、反対方向に戻る。心筋境界とともに動き続ける制御点14、16を用いて、制御点14、16間の距離、すなわち、コードライン18の長さは、心臓の収縮とともに短くなり、長くなる。
【0018】
この例において、境界トレーシンググラフィックスは、表示されず、心内膜及び心外膜制御点14、16並びにこれらを接続するコード18のみが表示される。この例において、7つの線に対する制御点が、心筋の周りに位置し、7つのコードラインが描かれるが、所定の実施例において、より多数又は少数のコードが、ユーザインタフェース150を用いてユーザ定義される又は使用されることができる。
【0019】
前記画像のシーケンスが、心臓サイクルを通してフレーム間で移動するので、心内膜及び心外膜境界は、心筋が心収縮期中に収縮し、心拡張期中に緩和するので、画像間で互いに対して変化する。超音波で組織のこの運動又は変位を数量化する1つの方法は、ラグランジュ歪(初期長さに対する長さのわずかな変化)又は米国特許6537221(Criton他)に記載される歪率として既知の測定である。歪は、組織の変形の尺度であり、筋肉組織の機械的効果の指標である。歪は、通常、このパラメータの分子として長さの変化及び分母として初期長さを持つ、無次元パラメータ又は割合として描かれる。したがって、心臓が収縮又は緩和するときの開始長さからの図3aのコード長さ18の変化は、境界制御点14、16の関連した対及び各コードライン18に対する歪尺度を計算するのに使用されることができる。図3aのコードライン18は、おおよそ心室の中心からの半径上にあるので、図3aのこれらの測定値は、半径方向歪と称される。
【0020】
図3bは、心室の壁に沿って行われた長手方向歪の測定を示す。この超音波画像、心内膜境界トレーシング15を持つ左心室の長手方向断面図において、制御点14、14'は、心室の心内膜境界の周りに配置される。コードライン18は、心室に沿って配置された制御点14、14'を接続する。心筋が収縮すると、制御点14、14'は、互いに近づき、これらの間のコードライン18は、短くなる。これに対応して、心筋が緩和する場合、隣接する制御点は、遠ざかり、コードライン18は長くなる。したがって、これらの長さ及び長さの変化は、各コードラインに対して歪測定を行うのに使用されることができる。
【0021】
図3cは、円周歪として知られる歪測定を行う他の方法を示す。ABDプロセッサ144が、心室のこの短軸像内の心臓壁の円周に沿って引っ張られる心内膜トレーシング15を引っ張っていることが見られる。複数の制御点14、14'は、境界トレーシング15に沿って配置される。心筋が収縮すると、隣接する点14、14'のようなこれらの制御点の間の円周距離は減少する。心筋が緩和する場合、これらの点の間の距離は、再び長くなる。これらの変位は、心内膜境界の周りの位置における円周歪の測定を行うのに使用されることができる。
【0022】
本発明の原理によると、心筋運動又は変位の歪測定は、本発明が"リクルートメント"と称する特性を計算するのに使用される。前記特性は、心臓の異なる領域による心臓変位又は運動におけるリクルートメント又は参加を示すので、そう命名された。リクルートメントは、図4、5a及び5bを参照して理解されることができる。図4は、上部に心室の心尖及び底部に僧帽弁面を持つ左心室(LV)の概略図である。この例において、LVの心筋は、1、2、3及び4として識別される4つの領域に分割される。歪測定は、これらの心筋セグメントの各々に対して完全な心臓サイクルにわたり行われ、それぞれ歪曲線101、102、103及び104として図5aにプロットされる。各曲線は、対応するセグメントが心筋収縮中に最大距離に移動する場合に最低拡張に到達し、前記曲線は、心臓が再び緩和する場合に前記プロットの上部に戻る。前記4つの曲線がこの例において一致して動いていないことが見られることができる。すなわち、前記4つのセグメントは、これらの運動において同期していない。また、様々なセグメントが異なる歪最大値を持つことが見られることができる。すなわち、収縮中の前記4つのセグメントの変位は異なる。これらの特性の両方が、本発明のリクルートメント測定により示される。
【0023】
図5bは、本発明によって生成されたリクルートメント曲線を示す。この例において、前記ユーザは、第一に、セグメントが心臓収縮に効果的に参加する、又はリクルートされるために達成しなければならない閾値歪であるリクルートメント基準を規定する。この場合、前記ユーザは、図5aにおける水平な破線により示される10%リクルートメント基準を規定した。心筋セグメント2の曲線102が、この閾値基準を達成していないことが見られる。前記セグメントの変位は、この基準に対してセグメント2がリクルートされるのに不十分である。他の3つの曲線は、全て、この基準と交差し、3つ全てが、この例において効果的な心臓収縮に対してリクルートされる。
【0024】
前記ユーザは、心臓壁セグメントの最大歪の割合であるリクルートメントマイルストーンレベルを設定する。前記マイルストーンは、セグメントの最大変位の100%、又は最大歪測定の一部に設定されることができる。この例において、前記マイルストーンレベルは、最大歪の85%に設定される。これらのパラメータが規定されると、QLabプロセッサ50は、図5bに示されるようにリクルートメント曲線110をプロットすることができる。曲線110は、心臓収縮の前にゼロ開始レベルを持ち、全てのリクルートされるセグメントが前記マイルストーンを達成した場合に最終的な水平レベル118を持つと見なされる。曲線110における段は、いつ曲線101により表されるセグメント1、3及び4がマイルストーンレベルを達成したかを示す。前記マイルストーンレベルは、116により示され、縦の破線が、図5aにおけるこれらのマイルストーンから下におろされる。図5bにおける水平な破線は、25%、50%及び75%のリクルートメント段レベル、10%基準の上でリクルートされる3つの心臓壁セグメントの3つの段を示す。曲線110が開始レベル116から最終的な水平レベル118まで上昇するのにかかる時間は、矢印130により示される時間期間である。図5aと5bとの間の縦の破線は、歪曲線101−104が85%マイルストーンレベルに到達するそれぞれの時間をマークし、前記破線は、前記それぞれの時間を前記リクルートメント曲線まで下に平行移動する。したがって、前記リクルートメント曲線の上昇時間期間130は、心臓の電気的タイミングの同時性の尺度である。
【0025】
セグメント曲線101−104の全てが同時にマイルストーンレベルに到達した場合、理想的に健康な心臓に対する場合、前記セグメントは完全な同時性で動くので、リクルートメント曲線110は、複数の段を持たないが、ベースライン開始レベルから最終的なレベル118までの単一の段である。矢印130により示される持続期間特性は、この場合、ゼロである。したがって、より大きな持続期間は、より貧しい同時性を示す。健康な心臓のリクルートメント曲線110は、セグメント曲線の数に等しい段の数を持つ。すなわち、心臓の全てのセグメントは、収縮に対してリクルートされる。セグメントがリクルートされず、リクルート基準、この場合には10%、より下である場合、梗塞心臓壁セグメントの可能性が示される。したがって、前記リクルートメント曲線は、最終的にリクルートされる組織の範囲に対して感受性を持ち、虚血インジケータであり、どれだけ速く組織が最終的にリクルートされるかに対して感受性を持ち、これは、同時性インジケータである。したがって、リクルートメントは、生存能力及び同時性を同時に示すことができる。これは、生存能力のない組織をペーシングすることが、CRT処置が失敗する理由の1つであるから、重要である。
【0026】
先行する例では心筋を4つのセグメントのみに分割したが、より多数又は少数のセグメントが代替的には使用されてもよく、各画素に対して歪を計算することを含むと理解される。多数のセグメントは、前記リクルートメント曲線において多数の段を生成し、全体的な心臓運動及び有効性に対する心筋の各点の漸進的リクルートメントを示す。心筋内の点、歪曲線、及び前記リクルートメント曲線の段を色符号化することにより、心臓運動に対する心筋の各点の最大参加の時間が、評価されることができる。
【0027】
図6は、ユーザがリクルートメント曲線パラメータ、基準及びマイルストーンレベルを設定することができるデータエントリ表示ボックスを示す。この例において、前記ユーザは、リクルートメント歪基準を10%に、及びリクルートメント歪マイルストーンを最大の85%に設定した。これらのエントリ点の下の円は、前記リクルートメント分析に対する半径方向、長手方向、又は円周方向歪測定の使用を示すように設定されることができる。
【0028】
図5bに示されるような前記リクルートメント分析のグラフィカル表示の代替又は補助として、解剖学的パラメトリック表示が、図7に示されるようにリクルートメントを示すのに使用されることができる。この例において、円形パラメトリック表示バンド200が、超音波画像に示される心筋上に重ねられる。前記表示の底部におけるECG波形210上のカーソルは、心臓画像が取得された心臓サイクル内の点を示す。パラメトリック表示バンド200内の点は、心筋の基本的な点のリクルートメントを示すように色付けされる。歪曲線に沿った漸進的リクルートメントは、前記心臓画像の右側にカラーバー212により示されるように色又は陰影の連続するスペクトルにより示されることができ、この例においては、暗い及び明るい色のみが、基本的な心筋点が前記リクルートメント基準又は前記リクルートメントマイルストーンのいずれかを超過したか又は超過していないかを示すのに使用される。暗い陰影は、前記基本的な心筋が心臓サイクルのこの位相までにリクルートされたことを示し、明るい陰影は、前記基本的な心筋がまだリクルートされていないことを示す。この例における前記パラメトリック表示バンドの下半分の暗い領域202は、下壁の心筋領域が最初にリクルートされたことを示し、心臓の前壁の心筋の領域、基本的な明るい表示バンド領域204は、心臓サイクルのこの位相の時間までにまだリクルートされていない。
【0029】
図8a−8dは、心臓サイクル中に取得された一連の心臓画像を示し、前記サイクル中の心筋の領域の漸進的なリクルートメントを示す。図8aにおけるパラメトリック表示バンド200の暗い領域は、心臓収縮の初期運動が、この例において心臓の左上(前壁中隔)領域において生じることを示す。図8bは、心筋の左側(中隔部分)が、ここで心臓サイクルのこの位相までに仮想的に全体的にリクルートされ、一部の運動が心臓の右(横)側で開始することを示す。図8cの心臓サイクルの時間において、心内膜全体及び心臓の右側のほとんど全体が、ここで収縮に参加し、図8dの時間において、画像リクルートメントが、心室の円周全体の周りで強力に明確である。図8a−8dの画像のような一連の画像は、心臓収縮の同時性及び収縮における心臓の異なる領域の参加の時間の良好な間隔を臨床医に与える。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7
図8a-8d】