特許第5764079号(P5764079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5764079-吊上げ装置 図000002
  • 特許5764079-吊上げ装置 図000003
  • 特許5764079-吊上げ装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764079
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】吊上げ装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   E04G21/18 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-35034(P2012-35034)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-170389(P2013-170389A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】木村 利秀
(72)【発明者】
【氏名】松井 剛志
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 修一
(72)【発明者】
【氏名】市波 克洋
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−109880(JP,A)
【文献】 実開昭57−062770(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14 − 21/18
B66C 1/42 − 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦材を吊り上げるための吊上げ装置であって、
前記縦材の上部と中間部に巻きつけられる吊りロープと、
前記吊りロープに連結されて前記縦材の下端に係止される係止部と、
前記吊りロープが掛け回された滑車と、
前記滑車に取り付けられた留具と、を備えており、
前記留具に前記係止部が取り付けられていることを特徴とする吊上げ装置。
【請求項2】
前記吊りロープが、前記縦材の上部と中間部とに巻きつけられる上側吊りロープと、
前記滑車に掛け回された下側吊りロープと、前記上側吊りロープと前記下側吊りロープとを連結する連結具と、を備えていることを特徴とする、請求項に記載の吊上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を構築する場合において、縦材をクレーン等の揚重機械を利用して、吊り上げて、所定の位置に建て込む場合がある。
【0003】
縦材の建て込み方法としては、例えば特許文献1に示すように、縦材の上端部と下端部に吊りロープを固定し、この吊りロープを、クレーン等の揚重機により吊りあげて、所定の位置に縦材を建て込む方法がある。
【0004】
ところが、前記建て込み方法は、縦材自体が剛性を備えている必要がある。
そのため、PC鋼棒や鉄筋等の建て込みには採用することができなかった。
【0005】
また、特許文献2には、縦材の上端部に吊り具を設け、この吊り具から延びるロープを介してクレーン等の揚重機により吊り上げる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2987374号公報
【特許文献2】特許第4339487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の方法は、上端部に固定された治具に作業員の手が届くように、足場を組む必要がある。そのため、足場工に手間と費用がかかってしまう。
また、各縦材への治具の設置および取り外しに手間がかかるため、縦材を多数建て込む場合には、工期短縮化の妨げとなっていた。
【0008】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、縦材の建て込み時の作業効率を高めることを可能とし、かつ、工事費の低減化も可能とした吊上げ装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明の吊上げ装置は、前記縦材の上部と中間部に巻きつけられる吊りロープと、前記吊りロープに連結されて前記縦材の下端に係止される係止部と、前記吊りロープが掛け回された滑車と、前記滑車に取り付けられた留具とを備えており、前記留具に前記係止部が取り付けられていることを特徴としている。
【0013】
かかる吊上げ装置によれば、縦材への取り付けおよび取り外しを簡易に行うことができるため、作業効率を高めることが可能である。
【0014】
前記吊上げ装置は、前記吊りロープが掛け回された滑車と、前記滑車に取り付けられた留具とを備えており、前記留具に前記係止部が取り付けられているため、滑車を利用して吊りロープをより強く緊結させることが可能となる。
【0015】
また、前記吊りロープが、前記縦材の上部と中間部とに巻きつけられる上側吊りロープと、前記滑車に掛け回された下側吊りロープと、前記上側吊りロープと前記下側吊りロープとを連結する連結具とを備えていれば、吊上げ装置を着脱する際に、上側吊りロープと下側吊りロープとを分割することが可能となるので、吊上げ装置を簡易に着脱することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吊上げ装置によれば、縦材の建て込み作業の作業効率を高めることを可能とし、かつ、工事費の低減化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る縦材が設置された地上タンクを示す図であって、(a)は書面図、(b)は部分拡大断面図である。
図2】縦材の吊り上げ状況を示す斜視図である。
図3】本実施形態の吊上げ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態では、地上タンク1の構築時に縦材10を建て込む場合について説明する。
地上タンク1は、図1に示すように、底版11と、側壁12と、縦材10と、横材13と、屋根14とを備えている。
【0019】
地上タンク1の内部空間(底版11、側壁12および屋根14により囲まれた空間)には、液体等が収容される。なお、地上タンク1の収容物は限定されるものではなく、例えばLNG、LPG、工業用水等を収容することができる。
【0020】
本実施形態の地上タンク1は、底版11、側壁12および屋根14の内側に内槽板15が設けられた二重構造により構成する。底版11、側壁12および屋根14と内槽板15との間には、保冷材16が充填されている。なお、地上タンク1は、必ずしも二重構造である必要はない。
【0021】
底版11は、地盤上に形成された鉄筋コンクリート製の版状部材であって、直接基礎を兼ねている。
なお、底版11は、必ずしも基礎を兼ねるものである必要はなく、底版11とは別に基礎構造を構築してもよい。また、地上タンク1の基礎構造として、杭基礎やパイルドラフト基礎を適用してもよい。
【0022】
側壁12は、防液堤を構成する鉄筋コンクリート製部材であって、底版11の上面に立設されている。側壁12の下端は底版11に剛結合されている。本実施形態の側壁12は、円筒状に形成されている。なお、側壁12の形状は、円筒状に限定されるものではなく、適宜形成すればよい。
【0023】
側壁12には、周方向で所定のピッチで配筋された縦筋(図示せず)と、上下方向で所定のピッチで配筋された横筋(図示せず)とを備えている。
なお、必要に応じて、せん断補強筋を配筋してもよい。
【0024】
側壁12の内部には、図1に示すように、緊張材(縦材10および横材13)が埋設されている。
縦材10は、縦方向(鉛直方向)の緊張材であって、側壁12の厚さ方向の中央付近において上下方向に連続して配設されている。縦材10の下端は、底版11に定着している。側壁12には、側壁12の周方向に間隔をあけて複数本の縦材10,10,…が配設されている。
【0025】
本実施形態では、縦材10としてPC鋼棒を使用するが、縦材10を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、PC鋼線やPC鋼より線を使用してもよい。
縦材10には、緊張力が導入されていて、側壁12に対して鉛直方向の圧縮力を付与している。こうすることで、側壁12の曲げ耐力が高められる。
【0026】
横材13は、周方向(横方向)の緊張材であって、側壁12内において縦材10の外側に配設されている。
本実施形態では、横材13としてPC鋼より線を使用するが、横材13を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、PC鋼線やPC鋼棒を使用してもよい。
【0027】
横材13には、緊張力が導入されており、側壁12に周方向の圧縮力を付与している。こうすることにより、地上タンク1内の液圧等により側壁12の周方向に生じ得る引張力を解消、あるいは、低減することが可能となる。
【0028】
屋根14は、図1に示すように、側壁12の上部で支持されるドーム状のコンクリート製もしくは鋼製の部材である。屋根14を構成する材料は限定するものではない。また、屋根14の形状も限定されるものではなく、例えば平板状に形成する等、側壁12の形状や収容物等に応じて適宜形成すればよい。
【0029】
縦材10の建て込み作業は、図2に示すように、吊上げ装置2により縦材10を縦向きに吊上げた状態で行う。
本実施形態では、縦材10の下端を既設の縦材10の上端に連結するが、縦材10の設置箇所は限定されるものではない。
【0030】
吊上げ装置2は、縦材10を吊り上げるためのものであって、図3に示すように、吊りロープ21と、係止部22と、滑車23と、留具24とを備えている。
【0031】
吊りロープ21は、縦材10の上部と中間部に巻きつけられる。
本実施形態の吊りロープ21は、縦材10の上部と中間部とに巻きつけられる上側吊りロープ25と、滑車23に掛け回された下側吊りロープ26と、上側吊りロープ25と下側吊りロープ26とを連結する連結具27とを備えている。
【0032】
係止部22は、縦材10の下端に係止されるものであり、吊りロープ21に連結されている。本実施形態の係止部22は、有底の筒状部材により構成されていて、縦材10の下端部を抱持する。係止部22には、縦材10の下端部が挿入され、係止部22の底面が縦材10の下端に係止される。なお、係止部22の構成は限定されるものではない。
【0033】
滑車23には、吊りロープ21(下側吊りロープ26)が掛けまわされている。また、滑車23には、留具24が取り付けられている。
留具24は、係止部22に取り付けられている。
つまり、係止部22は、滑車23および留具24を介して吊りロープ21に連結されている。
【0034】
以下、吊上げ装置2を利用した縦材の建て込み方法について説明する。
縦材の建て込み方法は、準備工程と、取付工程と、吊上げ工程と、配置工程と、固定工程と、取外し工程とを備えている。
【0035】
準備工程は、吊上げ装置2を用意する工程である。
準備工程では、係止部22と滑車23とを留具24を介して連結しておくとともに、下側吊りロープ26を滑車23に掛けまわしておく。
【0036】
取付工程は、係止部22を縦材10の下端に係止させるとともに、縦材10の上部と中間部に吊りロープ21を巻き付ける工程である。
【0037】
係止部22は、縦材10の下端に被せ、縦材10の下端に係止させる。縦材10の下端は、係止部22の底部に当接させておく。
【0038】
上側吊りロープ25は、縦材10の上端部と中間部との2箇所に巻き付ける。縦材10の上端部では上側吊りロープ25を1回巻き付け、縦材10の中間部では上側吊りロープ25を2回巻き付けておくものとする。なお、吊りロープ21の巻き付け回数は限定されない。
【0039】
上側吊りロープ25は、縦材10の周囲を一周させて交差させた状態で縦材10に巻き付ける。つまり、上側吊りロープ25は、縦材10に螺旋状に巻き付けるものでもなく、縦材10を1周した後、十字状に交差させ、一端側が上方向に延び、他端側が下方向に延びるように巻き付ける。
【0040】
上側吊りロープ25を縦材10に巻き付けたら、下側吊りロープ26の下端側(上側吊りロープ25と反対側)を引張り、係止部22と、吊りロープ21の縦材10への巻き付け部分との間を張った状態にする。
【0041】
なお、上側吊りロープ25と下側吊りロープ26の連結は、準備工程において連結しておいてもよいし、上側吊りロープ25を縦材10に巻き付けてから連結してもよい。
【0042】
吊上げ工程は、吊りロープ21を揚重機のフック30に掛けるとともに、縦材10が縦向きとなるように吊り上げ、吊りロープ21の巻き付け部分を緊結させる工程である(図2参照)。
縦材10の周囲を一周して交差させた吊りロープ21を吊上げると、吊りロープ21は縦材10に緊結されるため、縦材10は抜け落ちることなく吊り上げられる。
【0043】
配置工程は、揚重機を利用して縦材10を所定の位置に移動させる工程である。
縦材10は、縦向きの状態を維持したまま、移動する(図2参照)。
【0044】
固定工程は、配置工程において移動させた縦材10を固定する工程である。
縦材10の固定は、係止部22を取り外し、縦材10の下端部を露出させた状態で、縦材10を所定の位置(既存の縦材10の上端)に立設させる。なお、係止部22の取り外しは、滑車23を介して下側吊りロープ26を緩めることにより行う。このとき、上側吊りロープ25は縦材10の周囲に緊結された状態が維持されているため、縦材10が落下する(抜け落ちる)ことはない。
【0045】
取外し工程は、吊上げ装置2を縦材10から取り外す工程である。
吊上げ装置2は、揚重機のフック30を下降させることにより行う。フック30を下降させると、吊りロープ21の巻き付け部分が緩まるため、吊上げ装置2は、縦材10に沿って下方に降下する。そして、縦材10の下端部において、吊りロープ21をほどくことで、吊上げ装置2を撤去する。
【0046】
本実施形態の縦材の建て込み方法および吊上げ装置によれば、縦材10の建て込みを効率的に行うことができる。
つまり、吊上げ装置2は、縦材10を建て込んだ後、フック30を下降させることで、下方に降下するため、縦材10の下端部において撤去作業を行うことができる。そのため、縦材10の上端部において作業を行うための足場を省略することが可能となる。
【0047】
また、縦材10は、上端部と中間部において巻き付けられた吊りロープ21により吊上げるため、縦材10自体の剛性の有無に関わらず、縦向きの状態で移動させることができる。このように縦材10が縦向きで移動されるため、縦材10を所定の位置に取り付ける際に、縦材10を立設させる作業を省略することができるため、作業性に優れている。
【0048】
縦材10は、上端部と中間部において、緊結されているため、安全に移動させることができる。さらに、縦材10の下端部が係止部22に係止されているため、より安全に作業を行うことができる。
【0049】
以上、本発明に係る実施の形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0050】
前記実施形態では、地上タンクの縦材を建て込む場合について説明したが、本実施形態の縦材の建て込み方法により施工される構造物は地上タンクに限定されるものではなく、あらゆる縦材を有した構造物に適用可能である。
【0051】
前記実施形態では、本発明の吊上げ装置を利用して緊張材(PC鋼材)を吊上げる場合について説明したが、縦材は緊張材に限定されるものではなく、例えば、鉄筋や鉄骨材等であってもよい。
【0052】
前記実施形態では、吊りロープが上側吊りロープと下側吊りロープとを組み合わせて構成する場合について説明したが、吊りロープは1本のロープにより構成されていてもよいし、3本以上のロープで構成されていてもよい。
【0053】
前記実施形態では、滑車が吊りロープの下端部に配設されている場合について説明したが、滑車は必要に応じて配設すればよく、省略してもよい。吊りロープと係止部とが直接連結されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 地上タンク
10 縦材
2 吊上げ装置
21 吊りロープ
22 係止部
23 滑車
24 留具
25 上側吊りロープ
26 下側吊りロープ
27 連結具
30 フック
図1
図2
図3