(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」、あるいは「部材Aが、部材Bとカップリングされた状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
(第1の実施の形態)
(ワイヤレス給電装置)
図2は、第1の実施の形態に係るワイヤレス給電装置2の構成を示す回路図である。ワイヤレス給電装置2は、ワイヤレス受電装置(不図示)に対して電力信号S1を送出する。電力信号S1は、電波になっていない電磁波の近傍界(電界、磁界、あるいは電磁界)が利用される。
【0023】
ワイヤレス給電装置2は、電源10、送信アンテナ20、自動チューニング補助回路30、第1制御部40を備える。
【0024】
送信アンテナ20は、その第1端21とその第2端22の間に設けられた送信コイルL
TXを含む。共振用キャパシタC
TXは、送信コイルL
TXと直列に設けられる。共振用キャパシタC
TXと送信コイルL
TXは入れかえてもよい。
【0025】
自動チューニング補助回路30は、送信アンテナ20と直列にカップリングされる。電源10は、送信アンテナ20および自動チューニング補助回路30の両端間に、所定の送信周波数f
TXを有する交流の駆動電圧V
DRVを印加する。駆動電圧V
DRVは、矩形波、台形波、正弦波をはじめとする任意の交流波形であって構わない。本実施の形態では、駆動電圧V
DRVは、第1電圧レベル(電源電圧V
DD)と第2電圧レベル(接地電圧V
GND=0V)でスイングする矩形波であるものとする。
【0026】
電源10は、直流電源12、第1ハイサイドスイッチSWH1、第1ローサイドスイッチSWL1を含む。直流電源12は、直流の電源電圧V
DDを生成する。第1ハイサイドスイッチSWH1および第1ローサイドスイッチSWL1は、直流電源12の出力端子と固定電圧端子(接地端子)の間に順に直列に設けられる。第1制御部40は、第1ハイサイドスイッチSWH1および第1ローサイドスイッチSWL1を、送信周波数f
TXで相補的にスイッチングする。
【0027】
自動チューニング補助回路30は、第1端子31、第2端子32、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第1補助キャパシタC
A1を備える。
【0028】
第1スイッチSW1および第1補助キャパシタC
A1は、第1端子31および第2端子32の間に直列に設けられる。第1スイッチSW1と第1補助キャパシタC
A1は入れかえてもよい。第2スイッチSW2は、第1端子31と第2端子32の間に、第1スイッチSW1および第1補助キャパシタC
A1に対して並列に設けられる。第1補助キャパシタC
A1の容量値は、共振用キャパシタC
TXに比べて十分に大きいことが望ましい。
【0029】
第1制御部40は、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を、駆動電圧V
DRVと同じ周波数f
TXで、かつ駆動電圧V
DRVに対してある位相差θ
TXで相補的にスイッチングする。好ましくは位相差θ
TXは、+90°もしくは−90°(270°)付近であってもよい。すなわち第1制御部40の一部は、自動チューニング補助回路30を構成する。
【0030】
第1スイッチSW1、第2スイッチSW2は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタ等を用いて構成できる。
図3(a)、(b)は、MOSFETを用いたスイッチの構成例を示す図である。
【0031】
図3(a)は、Nチャンネル、
図3(b)は、PチャンネルのMOSFETを用いた構成を示す。MOSFETのバックゲートをソースと接続すると、バックゲートとドレイン間のボディダイオードがゲート電圧によらずに導通状態となる。したがって、MOSFETを単体で用いたスイッチでは、片方向に対する電流を阻止することができない。本明細書においてこのようなスイッチを片方向スイッチという。
【0032】
図3(c)〜(f)のスイッチは、2つのNチャンネルMOSFET、もしくは2つのPチャンネルMOSFETが、それらのボディダイオードが逆向きとなるように接続される(バックトゥバック接続)。
図3(c)〜(f)では、オフ状態において、いずれの方向にも電流が流れない。本明細書においてこのようなスイッチを、双方向スイッチという。
【0033】
本実施の形態において、各スイッチSW1、SW2は、片方向スイッチ、両方向スイッチのいずれでも構成することができる。なお、片方向スイッチを用いる場合、それらのスイッチングの位相に注意を払う必要がある。これについては後述する。
【0034】
以上がワイヤレス給電装置2の構成である。続いてその動作を説明する。
【0035】
スイッチSW1、SW2はそれぞれ、オフ状態においていずれの方向にも電流を流さない双方向スイッチであるものとする。
【0036】
図4は、
図2のワイヤレス給電装置2の動作を示す波形図である。
図4は、上から順に、第1ハイサイドスイッチSWH1、第1ローサイドスイッチSWL1、駆動電圧V
DRV、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第1補助キャパシタC
A1の電圧V
CA1、第1端子31の電圧V
A、送信アンテナ20に流れる共振電流I
TX、送信コイルL
TXと共振用キャパシタC
TXの両端間の共振電圧V
TXを示す。スイッチを示す波形は、ハイレベルがオン状態を、ローレベルがオフ状態を示す。また共振電流I
TXおよび共振電圧V
TXは、自動チューニング補助回路30を動作させてから十分な時間が経過した後の定常状態における波形を示す。
【0037】
図4に示すように、第1ハイサイドスイッチSWH1、第1ローサイドスイッチSWL1を相補的にスイッチングすることにより、矩形波の駆動電圧V
DRVが生成され、送信アンテナ20および自動チューニング補助回路30の両端間に印加される。第1制御部40は、駆動電圧V
DRVと同じ周波数で、かつ駆動電圧V
DRVに対してθ
TX(=90°)遅れた位相で、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を相補的にスイッチングする。共振電流I
TXは、第1スイッチSW1のオン時間T
ON1において第1補助キャパシタC
A1に流れ、第2スイッチSW2のオン時間T
ON2において、第2スイッチSW2を介して接地に流れる。つまり、第1補助キャパシタC
A1は、共振電流I
TXによって充放電され、その結果、第1補助キャパシタC
A1には、キャパシタ電圧V
CA1が発生する。
【0038】
自動チューニング補助回路30は、送信アンテナ20の第2端22に補正電圧V
Aを印加する。補正電圧V
Aは、第1スイッチSW1がオンの期間T
ON1において、第1補助キャパシタ電圧V
CA1をとり、第2スイッチSW2がオンの期間T
ON2において、接地電圧V
GNDをとる。自動チューニング補助回路30は、補正電圧V
Aを送信アンテナ20に印加する補正電源と把握することができる。
図5は、
図2のワイヤレス給電装置2の等価回路図である。
【0039】
図6(a)は、自動チューニング補助回路30を動作させない状態、
図6(b)は、自動チューニング補助回路30を動作させたときの波形図である。
はじめに
図6(a)を参照し、自動チューニング補助回路30を動作させない状態、すなわち第1スイッチSW1をオフで固定し、第2スイッチSW2をオンで固定した状態について説明する。これは、補正電圧V
Aが接地電圧V
GNDに固定される状態を示す。
送信アンテナ20のインピーダンスZは式(1)で与えられ、その共振周波数f
cは式(2)で与えられる。なお、ここでは抵抗成分を無視しているが、実際の回路には直列抵抗が寄与することは言うまでもない。
Z=jωL
TX+1/(jωC
TX) …(1)
f
C=1/(2π√(L
TX・C
TX)) …(2)
【0040】
送信アンテナ20は、駆動電圧V
DRVの周波数f
TXが共振周波数f
cより高い(f
TX>f
c)とき誘導性となり、送信アンテナ20に流れる共振電流I
TXの位相は、駆動電圧V
DRVの位相に対して遅れる。反対に、周波数f
TXが共振周波数f
cより低い(f
TX<f
c)とき容量性となり、共振電流I
TXの位相は、駆動電圧V
DRVに対して進む。
【0041】
図6(a)は、f
c>f
TXの状態を示しており、共振電流I
TXの位相は、駆動電圧V
DRVに対して位相差φ進んでいる。φが90°でないのは、共振回路に直列の抵抗成分(不図示)が存在するためである。非共振状態ではインピーダンスZが高くなるため、共振電流I
TXの振幅が小さくなる。この状態では大きな電力を伝送することはできない。
【0042】
続いて、
図6(b)を参照し、自動チューニング補助回路30を動作させたときの動作を説明する。
【0043】
自動チューニング補助回路30を動作させると、送信アンテナ20には駆動電圧V
DRVに対してθ
TX=90°遅れた位相の補正電圧V
Aが印加される。その結果、共振電流I
TXの位相が駆動電圧V
DRVの位相と一致し、擬似的な共振状態となる。これにより、共振電流I
TXの振幅は、非共振状態よりも大きくなる。
【0044】
図7は、f
c<f
TXの場合の、自動チューニング補助回路30による疑似共振状態を説明するフェーザ図(ベクトル図)である。
駆動電圧V
DRVの位相は0°、補正電圧V
Aの位相はθ
TX=90°である。f
c<f
TXにおいて、電流の位相は、電圧に対して位相差φ遅れる。したがって駆動電圧V
DRVと電流成分I
DRVの位相差はφであり、補正電圧V
Aと電流成分I
Aの位相差もφである。
【0045】
「重ねの理」によって、共振電流I
TXは、駆動電圧V
DRVによって誘起される電流成分I
DRVと、補正電圧V
Aによって誘起される電流成分I
Aの和で与えられる。駆動電圧V
DRVと補正電圧V
Aは位相差θ
TX(=90°)を有するため、電流成分I
DRVとI
Aの位相差も90°となる。補正電圧V
Aの振幅、言い換えれば電流成分I
Aの振幅を最適化すれば、2つの電流成分I
DRVとI
Aの合成電流、すなわち共振電流I
TXの位相を、駆動電圧V
DRVの位相(0°)と一致させることができ、疑似共振状態が実現できることが分かる。
【0046】
実施の形態に係るワイヤレス給電装置2の優れた利点のひとつは、疑似共振状態を満足する補正電圧V
Aを自動的に生成できる点である。
図8は、非共振状態および共振状態における共振電流I
TXを示す図である。波形(I)は、非共振状態における共振電流I
TXを示す。スイッチSW1がオンの期間T
ON1において、第1補助キャパシタC
A1は、共振電流I
TXによって充放電される。具体的には、第1補助キャパシタC
A1は、共振電流I
TXが正の期間に充電され、負の期間に放電される。その結果、正の期間が長ければキャパシタ電圧V
CA1は増大し、負の期間が長ければキャパシタ電圧V
CA1は低下する。
【0047】
あるサイクルのオン時間T
ON1において、キャパシタ電圧V
CA1が増大する。そして、増大したキャパシタ電圧V
CA1に応じた補正電圧V
Aが送信アンテナ20に印加される。そうすると、次のサイクルでは、共振電流I
TXの位相が前のサイクルより進む。これを繰り返すと、キャパシタ電圧V
CA1がサイクル毎に増加しながら、共振電流I
TXの位相が徐々に進んでいき、駆動電圧V
DRVの位相と一致するポイント(共振点)までシフトしていく。共振電流I
TXの位相が進みすぎると、反対に第1補助キャパシタC
A1の放電電流の方が大きくなり、キャパシタ電圧VC
A1が低下する方向にフィードバックがかかり、共振点に引き戻される。共振点では1サイクルでの第1補助キャパシタC
A1の充電電流と放電電流がバランスし、キャパシタ電圧V
CA1が平衡状態となり、擬似的な共振状態が持続する。このように、
図2のワイヤレス給電装置2によれば、疑似共振状態を生ずるために必要な補正電圧V
Aを自動的に生成できる。
【0048】
以上がワイヤレス給電装置2の動作である。
このようにワイヤレス給電装置2によれば、送信アンテナ20の共振周波数f
cを調節することなく、疑似共振状態を実現するように回路の状態を自動的にチューニングすることができる。ワイヤレス送電では、ワイヤレス給電装置2とワイヤレス受電装置4の位置関係によって、共振周波数が時々刻々と変化するが、ワイヤレス給電装置2によれば、その変化に高速に追従することができ、高効率な電力伝送が可能となる。
【0049】
またワイヤレス給電で大電力を伝送しようとすると、共振用キャパシタC
TXの両端間の電圧は非常に大きくなるため、バリコン(バリキャップ)の利用は制約される。ワイヤレス給電装置2によれば共振用キャパシタC
TXの容量値を調節する必要がないため、バリコン等を使用する必要がないという利点もある。
【0050】
ここでは、第1スイッチSW1を、第1ハイサイドスイッチSWH1の位相に対してθ
TX=90°遅れた位相でスイッチングさせる場合を説明したが、位相差θ
TXは90°である必要はなく、270°(−90°)であってもよい。この場合、キャパシタ電圧V
CA1が負電圧となるように自動的に調節されるからである。
【0051】
すなわち、f
c<f
TXの場合、θ
TX=90°または270°とすることにより、疑似共振状態を実現できる。
位相差θ
TXは、90°もしくは270°から外れていてもよい。この場合、
図7に示すベクトル図において、電流成分I
DRVとI
Aの位相差θ
TXが90°ではなくなるが、この場合でも、それらを合成した共振電流I
TXの位相が0°となるように、キャパシタ電圧V
CA1が自動的に調節される。ただし、位相差θ
TXが90°もしくは270°に近いほど、電流成分I
Aの振幅、言い換えればキャパシタ電圧V
CA1の絶対値が小さくできるという利点がある。
【0052】
なお、f
c<f
TXの場合にθ
TX=270°とできるのは、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2を双方向スイッチを用いて構成した場合に限られる。第1スイッチSW1、第2スイッチSW2が片方向スイッチである場合には、θ
TX=270°とすることはできない。この場合、ボディダイオードに電流が流れてしまうからである。片方向スイッチを用いる場合、逆導通素子であるボディダイオードに電流が流れないような位相で、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2をスイッチングさせる必要がある。
【0053】
ワイヤレス給電装置2は、f
c<f
TXの場合のみでなく、f
c>f
TXの場合においても、自動的に疑似共振状態を実現できる。この場合、θ
TX=270°(−90°)とすることが好ましい。
【0054】
図9は、f
c>f
TXの場合の、自動チューニング補助回路30による疑似共振状態を説明するフェーザ図である。駆動電圧V
DRVの位相を0°、補正電圧V
Aの位相をθ
TX=270°(−90°)としている。f
c>f
TXにおいて、電流の位相は電圧に対して進むが、この場合であっても、疑似共振状態が実現できる。
【0055】
なおf
c>f
TXにおいて、位相差θ
TXを90°付近としてもよい。この場合、疑似共振状態が得られるように、自動的にキャパシタ電圧V
CA1が負電圧となる。
【0056】
ただし、f
c<f
TXの場合にθ
TX=90°とできるのは、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2を双方向スイッチを用いて構成した場合に限られる。第1スイッチSW1、第2スイッチSW2が片方向スイッチである場合には、θ
TX=90°とすることはできない。上述したように、ボディダイオードに電流が流れてしまうからである。
【0057】
続いて、ワイヤレス給電装置2の変形例を説明する。各変形例は、任意の他の変形例と組み合わせることができ、このような組み合わせも本発明の範囲に含まれる。
【0058】
図10は、第1の変形例に係るワイヤレス給電装置2aの構成を示す回路図である。自動チューニング補助回路30aは、第1端子31と第2端子32の間に、第2スイッチSW2と直列に設けられた第2補助キャパシタC
A2を備える。
【0059】
この変形例において、補正電圧V
Aは、第1スイッチSW1のオン時間T
ON1においてキャパシタ電圧V
CA1と等しくなり、第2スイッチSW2のオン時間T
ON2においてキャパシタ電圧V
CA2と等しくなる。
【0060】
ワイヤレス給電装置2aによれば、キャパシタ電圧V
CA1、V
CA2を最適化されることにより、f
TX>f
c、f
TX<f
cいずれの場合も疑似共振状態を実現できる。
【0061】
図11は、第2の変形例に係るワイヤレス給電装置2bの構成を示す回路図である。自動チューニング補助回路30bは、充電回路34および検出抵抗Rsを備える。検出電流Rsは、共振電流I
TXの経路上に設けられる。検出抵抗Rsには、共振電流I
TXに比例した検出電圧Vsが発生する。充電回路34は、検出電圧Vsにもとづき、第1補助キャパシタC
A1を、疑似共振状態となるようなレベルに充電する。上述のように、キャパシタ電圧V
CA1は自動的に最適なレベルとなるが、充電回路34を設けることにより、より短い時間で、疑似共振状態とすることができる。
【0062】
図12は、第3の変形例に係るワイヤレス給電装置2cの構成を示す回路図である。
これまでは電源がハーフブリッジ回路の場合を説明したが、
図12の電源10cはHブリッジ回路で構成される。第2ハイサイドスイッチSWH2および第2ローサイドスイッチSWL2は、直流電源12の出力端子と固定電圧端子(接地端子)の間に順に直列に設けられる。
【0063】
第1制御部40cは、第1ハイサイドスイッチSWH1と第2ローサイドスイッチSWL2のペアがオンの状態と、第2ハイサイドスイッチSWH2と第1ローサイドスイッチSWL1のペアがオンの状態を、交互に繰り返す。
第1ハイサイドスイッチSWH1と第1ローサイドスイッチSWL1の接続点(第1出力端子)OUT1と、第2ハイサイドスイッチSWH2と第2ローサイドスイッチSWL2の接続点(第2出力端子)OUT2には、互いに逆相の駆動電圧V
DRV、#V
DRVが発生する。送信アンテナ20および自動チューニング補助回路30cは、第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2の間に直列にカップリングされる。
【0064】
図12のワイヤレス給電装置2cによっても、これまで説明したワイヤレス給電装置と同様の効果を得ることができる。
【0065】
図13(a)、(b)は、それぞれ第4、第5の変形例に係るワイヤレス給電装置2d、2eの構成を示す回路図である。第1制御部40は省略される。
図13(a)のワイヤレス給電装置2dにおいて、自動チューニング補助回路30dは、第1トランスT1を介して送信アンテナ20と直列にカップリングされる。具体的には、第1トランスT1の2次巻線W2は第1端子31と第2端子32の間に設けられ、その1次巻線W1は、送信アンテナ20と直列に設けられる。電源10は、送信アンテナ20と1次巻線W1の両端間に駆動電圧を印加する。
【0066】
このワイヤレス給電装置2dでは、第1トランスT1を介して送信アンテナ20と自動チューニング補助回路30dの間のエネルギーの授受が行われる。この構成によっても、これまで説明したワイヤレス給電装置と同様の効果を得ることができる。
【0067】
図13(b)では、電源10が第2トランスT2を介して送信アンテナ20および自動チューニング補助回路30dの両端間に駆動電圧V
DRVを印加する。具体的には第2トランスT2の2次巻線W2は、送信アンテナ20と直列に設けられる。電源10は、第2トランスT2の1次巻線W1の両端に駆動電圧V
DRVを印加する。
【0068】
このワイヤレス給電装置2eでは、駆動電圧V
DRVは、第2トランスT2を介して送信アンテナ20と自動チューニング補助回路30dの両端間に印加される。この構成によっても、これまで説明したワイヤレス給電装置と同様の効果を得ることができる。ワイヤレス給電装置2eにおいて、第1トランスT1を省略してもよい。
図13(a)、(b)における電源10は、Hブリッジ回路、ハーフブリッジ回路、その他の電源のいずれであってもよい。
【0069】
(ワイヤレス受電装置)
上述した自動チューニング補助回路は、ワイヤレス受電装置にも利用することができる。以下では、ワイヤレス受電装置について説明する。
【0070】
図14は、第1の実施の形態に係るワイヤレス受電装置4の構成を示す回路図である。ワイヤレス受電装置4は、上述の、あるいは全く別構成のワイヤレス給電装置から送信される電力信号S1を受ける。電力信号S1は、電波になっていない電磁波の近傍界(電界、磁界、あるいは電磁界)が利用される。
【0071】
ワイヤレス受電装置4は、受信アンテナ50、自動チューニング補助回路60および電力を供給すべき負荷70を備える。負荷70には、図示しない整流回路、検波回路などが内蔵されてもよい。
【0072】
受信アンテナ50は、第1端51と第2端52の間に直列に設けられた受信コイルL
RXおよび共振用キャパシタC
RXを含む。
【0073】
自動チューニング補助回路60は、上述の自動チューニング補助回路30と同様に構成される。具体的には、第3スイッチSW3および第3補助キャパシタC
A3は、第1端子61と第2端子62の間に直列に設けられる。第4スイッチSW4は、第1端子61と第2端子62の間に、第3スイッチSW3および第3補助キャパシタC
A3と並列に設けられる。
【0074】
第2制御部64は、第3スイッチSW3および第4スイッチSW4を、電力信号S1と同じ周波数で、かつ送信側においてアンテナに印加される駆動電圧(V
DRV)に対してある位相差θ
RXで相補的にスイッチングする。たとえばθ
RX=180°または0°であることが好ましい。
【0075】
自動チューニング補助回路60は、受信アンテナ50と直列にカップリングされる。また電力を供給すべき負荷70は、第3補助キャパシタC
A3に接続される。
【0076】
以上がワイヤレス受電装置4の構成である。続いてその動作を説明する。
図15は、
図14のワイヤレス受電装置4の等価回路図である。ワイヤレス給電装置2における自動チューニング補助回路30と同様に、自動チューニング補助回路60は、補正電圧V
Aを受信アンテナ50に印加する補正電源と把握することができる。補正電圧V
Aは、第3スイッチSW3のオン時間T
ON3において、第3補助キャパシタC
A3の電圧V
CA3となり、第4スイッチSW4のオン時間T
ON4において接地電圧となる。
【0077】
図16は、
図14のワイヤレス受電装置4の動作を示す波形図である。
図16は上から順に、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4、補正電圧V
A、受信アンテナ50に流れる共振電流I
RX、受信コイルL
RXと共振用キャパシタC
RXの両端間の共振電圧V
RXを示す。スイッチを示す波形は、ハイレベルがオン状態を、ローレベルがオフ状態を示す。共振電流I
RXおよび共振電圧V
RXは、実線が自動チューニング補助回路60を動作させてから十分な時間が経過した後の定常状態(疑似共振状態)における波形を、破線が自動チューニング補助回路60を動作させない非共振状態における波形を示す。
【0078】
第3スイッチSW3および第4スイッチSW4を、ワイヤレス給電装置側の駆動電圧V
DRVに対して180°または0°シフトした位相θ
RXで相補的にスイッチングさせることにより、第3補助キャパシタC
A3が充電、または放電される。そして補正電圧V
Aが受信アンテナ50に印加されることにより、共振電流I
Aの位相が、送信側の駆動電圧V
DRVの位相と一致し、疑似共振状態が実現できる。
【0079】
疑似共振状態を実現するためには、第3スイッチSW3および第4スイッチSW4を適切な周波数f
TXおよび位相θ
RXでスイッチングさせる必要がある。そこでワイヤレス給電装置2からワイヤレス受電装置4に対して、周波数f
TXおよび位相θ
RXを示すデータを送信してもよい。あるいはワイヤレス受電装置4は、位相θ
RXをスイープし、最適な位相θ
RXを検出してもよい。
【0080】
以上がワイヤレス受電装置4の動作である。
このように
図14のワイヤレス受電装置4によれば、共振用キャパシタC
RXの容量値を調節することなく、自動的に共振状態を実現することができる。
【0081】
続いてワイヤレス受電装置4の変形例を説明する。
【0082】
図14では、負荷70が第3補助キャパシタC
A3と接続される場合を説明したが、負荷70は別の位置に設けられてもよい。
図17(a)、(b)は、第1、第2の変形例に係るワイヤレス受電装置の構成を示す回路図である。
図17(a)のワイヤレス受電装置4aにおいて、負荷70aは、受信アンテナ50および自動チューニング補助回路60と直列に設けられる。具体的には負荷70aは受信アンテナ50の第1端51に接続される。
【0083】
図17(b)のワイヤレス受電装置4bは、第3トランスT3を備え、受信アンテナ50と負荷70bは、第3トランスT3によって絶縁される。第3トランスT3の1次巻線W1は、受信アンテナ50と直列に設けられ、2次巻線W2に負荷70bが接続される。
【0084】
図17(a)、(b)に示すように、受信アンテナ50と直列に負荷を接続した場合、負荷のインピーダンスが低い場合には、自動チューニング補助回路60による調整をしなくても、ある程度の電力を取り出すことができるという利点がある。一方で、負荷の抵抗成分によって受信アンテナ50のQ値が低下するため、大電力が取り出しにくくなる。
【0085】
反対に
図4のように自動チューニング補助回路60から電力を取り出す場合、負荷70によって受信アンテナ50のQ値が低下しないため、負荷70のインピーダンスが高い場合でも、大電力を取り出すことができる。一方、負荷70のインピーダンスが低すぎる場合、自動チューニング補助回路60の動作が阻害されるという問題がある。
【0086】
したがって、負荷をいずれの位置に配置するかは、送電すべき電力や、負荷のインピーダンス等を考慮して決定すればよい。
【0087】
図18は、第3の変形例に係るワイヤレス受電装置4cの構成を示す回路図である。自動チューニング補助回路60cは、第1端子61と第2端子62の間に第4スイッチSW4と直列に設けられた第4補助キャパシタC
A4をさらに備える。負荷70の位置は限定されない。
【0088】
この変形例において、補正電圧V
Aは、第3スイッチSW3のオン時間T
ON3においてキャパシタ電圧V
CA3と等しくなり、第4スイッチSW4のオン時間T
ON4においてキャパシタ電圧V
CA4と等しくなる。このワイヤレス受電装置4cによれば、f
TX>f
c、f
TX<f
cそれぞれの状態において疑似共振状態となるように、キャパシタ電圧V
CA1、V
CA2を最適化することができる。
【0089】
ワイヤレス受電装置において、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4は、片方向スイッチ、双方向スイッチのいずれで構成してもよい。片方向スイッチで構成する場合、それぞれの逆導通素子に電流が流れない位相で、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4をスイッチングする必要がある。
【0090】
図19(a)、(b)はそれぞれ、第4、第5の変形例に係るワイヤレス受電装置の構成を示す回路図である。第2制御部64は省略される。
図19(a)のワイヤレス受電装置4dにおいて、自動チューニング補助回路60dは、第4トランスT4を介して受信アンテナ50と直列にカップリングされる。具体的には、第4トランスT4の2次巻線W2は第1端子61と第2端子62の間に設けられ、その1次巻線W1は、受信アンテナ50と直列に設けられる。
【0091】
このワイヤレス受電装置4dでは、第4トランスT4を介して受信アンテナ50と自動チューニング補助回路60dの間のエネルギーの授受が行われる。この構成によっても、これまで説明したワイヤレス受電装置と同様の効果を得ることができる。
【0092】
図19(b)では、負荷70が第5トランスT5を介して受信アンテナ50および自動チューニング補助回路60dとカップリングされる。具体的には第5トランスT5の1次巻線W1は、受信アンテナ50と直列に接続される。負荷70は、第5トランスT5の2次巻線W2の両端に接続される。
【0093】
この構成によっても、これまで説明したワイヤレス受電装置と同様の効果を得ることができる。ワイヤレス受電装置4eにおいて、第4トランスT4を省略してもよい。
図19(a)において負荷70を第3補助キャパシタC
A3とカップリングしてもよい。あるいは
図19(b)において負荷70を第3補助キャパシタC
A3と第5トランスT5を介してカップリングしてもよい。
【0094】
(ワイヤレス送電システム)
上述のワイヤレス給電装置とワイヤレス受電装置を組み合わせることにより、ワイヤレス送電システムを実現できる。
【0095】
図20は、第1の実施の形態に係るワイヤレス送電システムの構成例を示す回路図である。ワイヤレス送電システム1は、ワイヤレス給電装置2とワイヤレス受電装置4を備える。
【0096】
負荷70は、負荷回路76に加えて、整流回路72およびスイッチングレギュレータ74を備える。整流回路72は同期検波回路であり、平滑用キャパシタC3、第3ハイサイドスイッチSWH3、第3ローサイドスイッチSWL3を備える。
【0097】
スイッチングレギュレータ74は、昇降圧コンバータであり、負荷回路76に対して最大電力を供給できるように制御される。スイッチングレギュレータ74の構成および動作は公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0098】
以上がワイヤレス送電システム1の構成である。
図21は、
図20のワイヤレス送電システム1の動作を示す波形図である。
【0099】
ワイヤレス給電装置2において、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2は、駆動電圧V
DRVに対してθ
TX=90°遅れた位相で駆動される。その結果、ワイヤレス給電装置2において疑似共振状態が成立する。
【0100】
ワイヤレス受電装置4においては、ワイヤレス給電装置2側の駆動電圧V
DRVに対してθ
RX=180°遅れた位相で、第3スイッチSW3および第4スイッチSW4が駆動される。また第3スイッチSW3は、第1スイッチSW1に対して90°遅れた位相で駆動される。その結果、ワイヤレス受電装置4においても疑似共振状態が成立する。
【0101】
整流回路72の第3ハイサイドスイッチSWH3および第3ローサイドスイッチSWL3は、第3スイッチSW3および第4スイッチSW4に対して90°遅れた位相で駆動される。その結果、平滑用キャパシタC3に直流電圧が発生する。この直流電圧は、スイッチングレギュレータ74によって負荷回路76に最適な電圧レベルに変換される。
【0102】
以上がワイヤレス送電システム1の動作である。このようにワイヤレス送電システム1によれば、ワイヤレス給電装置2、ワイヤレス受電装置4それぞれに自動チューニング補助回路を設けることにより、負荷70に対して最大電力を送信することが可能となる。
【0103】
当然ながら、変形例を含めた任意のワイヤレス給電装置2と、任意のワイヤレス受電装置4が組み合わせ可能であることは言うまでもない。
【0104】
図20では、ワイヤレス給電装置2、ワイヤレス受電装置4の両方に自動チューニング補助回路を実装する場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。
ワイヤレス給電装置2にのみ自動チューニング補助回路を設け、ワイヤレス受電装置は、従来のように共振用キャパシタC
RXの調節を行ってもよい。
反対にワイヤレス受電装置4にのみ自動チューニング補助回路を設け、ワイヤレス給電装置2は、従来のように共振用キャパシタC
TXの調節を行ってもよい。
【0105】
さらには、ワイヤレス給電装置2にのみ自動チューニング補助回路を設け、ワイヤレス受電装置4は、一切の調節機構を有さなくてもよい。あるいはワイヤレス受電装置4にのみ自動チューニング補助回路を設け、ワイヤレス給電装置2は、一切の調節機構を有さなくてもよい。
これらの場合、単一の自動チューニング補助回路によって、電源10と負荷70の間のインピーダンスマッチングがとれるようにチューニングされ、高効率な電力伝送が可能となる。この場合に、自動チューニング補助回路のスイッチングの位相θ
TX(θ
RX)の最適値は90°もしくは270°(180°もしくは0°)から外れることに留意すべきである。
【0106】
以上、本発明について、第1の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0107】
自動チューニング補助回路30を備えるワイヤレス給電装置2においては、共振用キャパシタC
TXを省略しても疑似共振状態が実現できる場合がある。この場合、共振用キャパシタC
TXを省略してもよい。同様に自動チューニング補助回路60を備えるワイヤレス受電装置4において、共振用キャパシタC
RXを省略してもよい。
【0108】
ワイヤレス給電装置2は、所定の規則(暗号コード)に従い、駆動電圧V
DRVの周波数f
TXおよび位相の少なくとも一方を変化させ、電力信号S1を暗号化する。暗号コードを知っているワイヤレス受電装置4は、その暗号コードにもとづき、自動チューニング補助回路60のスイッチング周波数、位相を制御する。その結果、電力信号S1が暗号化されている場合でも、それを復号して電力供給を受けることができる。暗号コードを知らないワイヤレス受電装置は、自動チューニング補助回路60のスイッチを適切に制御できないため、電力を受信することができなくなる。ワイヤレス電力伝送では、悪意の利用者による盗電が問題となりうるが、自動チューニング補助回路を利用することにより、この問題を解決することができる。
あるいは、単一のワイヤレス給電装置2が複数のワイヤレス受電装置4に給電する際に、自動チューニング補助回路を利用することにより端末毎の給電量を制御できる。
【0109】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、2つのスイッチSW1、SW2を含む自動チューニング補助回路を説明した。第2の実施の形態における自動チューニング補助回路は、4つのスイッチを含んで構成される。自動チューニング補助回路80を除くブロックの構成については、第1の実施の形態と同様である。また、第1の実施の形態で説明したさまざまな変形例は、第2の実施の形態においても有効である。
【0110】
(ワイヤレス給電装置)
図22は、第2の実施の形態に係るワイヤレス給電装置2の構成を示す回路図である。ワイヤレス給電装置2は、ワイヤレス受電装置(不図示)に対して電力信号S1を送出する。電力信号S1は、電波になっていない電磁波の近傍界(電界、磁界、あるいは電磁界)が利用される。
【0111】
ワイヤレス給電装置6は、電源10、送信アンテナ20、自動チューニング補助回路80、第1制御部40を備える。
【0112】
送信アンテナ20は、その第1端21とその第2端22の間に設けられた送信コイルL
TXを含む。共振用キャパシタC
TXは、送信コイルL
TXと直列に設けられる。共振用キャパシタC
TXと送信コイルL
TXは入れかえてもよい。
【0113】
自動チューニング補助回路80は、送信アンテナ20と直列にカップリングされる。電源10は、
図2と同様にハーフブリッジ回路で構成され、送信アンテナ20および自動チューニング補助回路80の両端間に、所定の送信周波数f
TXを有する交流の駆動電圧V
DRVを印加する。駆動電圧V
DRVは、矩形波、台形波、正弦波をはじめとする任意の交流波形であって構わない。本実施の形態では、駆動電圧V
DRVは、第1電圧レベル(電源電圧V
DD)と第2電圧レベル(接地電圧V
GND=0V)でスイングする矩形波であるものとする。
【0114】
電源10は、
図2の電源10と同様にハーフブリッジ回路で構成される。第1制御部40は、第1ハイサイドスイッチSWH1および第1ローサイドスイッチSWL1を、送信周波数f
TXで相補的にスイッチングする。
【0115】
第2の実施の形態において、自動チューニング補助回路80は、第1端子81、第2端子82、第1スイッチSWc1〜第4スイッチSWc4、第1補助キャパシタC
A5を備える。
【0116】
第1スイッチSWc1および第2スイッチSWc2は、第1端子81と第2端子82の間に順に直列に設けられる。第3スイッチSWc3および第4スイッチSWc4は、第1端子81と第2端子82の間に順に直列に、かつ第1スイッチSWc1および第2スイッチSWc2に対して並列に設けられる。第1補助キャパシタC
A5は、第1スイッチSWc1と第2スイッチSWc2の接続点N1と、第3スイッチSWc3と第4スイッチSWc4の接続点N2の間に設けられる。第1補助キャパシタC
A5の容量値は、共振用キャパシタC
TXに比べて十分に大きいことが望ましい。
【0117】
第1制御部40は、第1スイッチSWc1〜第4スイッチSWc4を、駆動電圧V
DRVと同じ周波数f
TXで、かつ駆動電圧V
DRVに対してある位相差θ
TXでスイッチングする。好ましくは位相差θ
TXは、+90°もしくは−90°(270°)付近であってもよい。すなわち第1制御部40の一部は、自動チューニング補助回路80を構成する。
【0118】
第1の実施の形態と同様に、第1スイッチSWc1〜第4スイッチSWc4は、双方向スイッチ、あるいは片方向スイッチのいずれかでも構成できる。片方向スイッチを用いる場合、それらのスイッチングの位相に注意を払う必要があることも、すでに説明した通りである。
【0119】
以上がワイヤレス給電装置6の構成である。続いてその動作を説明する。
【0120】
図23は、
図22のワイヤレス給電装置6の動作を示す波形図である。
図23は、上から順に、第1ハイサイドスイッチSWH1、第1ローサイドスイッチSWL1、駆動電圧V
DRV、第1スイッチSWc1、第2スイッチSWc2、第3スイッチSWc3、第4スイッチSWc4、第1端子81に生ずる補正電圧V
A、送信アンテナ20に流れる共振電流I
TX、送信コイルL
TXと共振用キャパシタC
TXの両端間の共振電圧V
TXを示す。スイッチを示す波形は、ハイレベルがオン状態を、ローレベルがオフ状態を示す。また共振電流I
TXおよび共振電圧V
TXは、自動チューニング補助回路30を動作させてから十分な時間が経過した後の定常状態における波形を示す。
【0121】
図23に示すように、第1ハイサイドスイッチSWH1、第1ローサイドスイッチSWL1を相補的にスイッチングすることにより、矩形波の駆動電圧V
DRVが送信アンテナ20および自動チューニング補助回路30の両端間に印加される。第1制御部40は、駆動電圧V
DRVと同じ周波数で、かつ駆動電圧V
DRVに対してθ
TX(=90°)遅れた位相で、第1スイッチSWc1および第4スイッチSWc4を含む第1のペアP1を駆動し、第1のペアP1と相補的に、すなわち180°ずれた位相で、第2スイッチSWc2および第3スイッチSWc3を含む第2のペアP2を駆動する。
【0122】
共振電流I
TXは、第1のペアP1のオン時間T
ON1において、第1スイッチSWc1、第1補助キャパシタC
A5、第4スイッチSWc4を含む経路に流れ、第2のペアP2のオン時間T
ON2において、第3スイッチSWc3、第1補助キャパシタC
A5、第2スイッチSWc2を含む経路に流れる。
【0123】
つまり、第1補助キャパシタC
A5は、共振電流I
TXによって充放電され、その結果、第1補助キャパシタC
A5には、キャパシタ電圧V
CA5が発生する。
【0124】
自動チューニング補助回路80は、送信アンテナ20の第2端22に補正電圧V
Aを印加する。補正電圧V
Aは、第1のペアP1がオンの期間T
ON1において第1の極性をとり、第2のペアP2がオンの期間T
ON2において第2の極性をとる。自動チューニング補助回路80は、補正電圧V
Aを送信アンテナ20に印加する補正電源と把握することができる。すなわち、ワイヤレス給電装置6の等価回路は、
図5の等価回路と同等とみなすことができ、その動作原理も同様であることがわかる。
【0125】
すなわち自動チューニング補助回路80を動作させると、送信アンテナ20に対して、駆動電圧V
DRVに対してθ
TX=90°遅れた位相の補正電圧V
Aが印加される。その結果、共振電流I
TXの位相が駆動電圧V
DRVの位相と一致し、擬似的な共振状態となる。これにより、共振電流I
TXの振幅は、非共振状態よりも大きくなる。これは、
図7、
図9のフェーザ図に示される通りである。
【0126】
第2の実施の形態における自動チューニング補助回路80の動作は、第1の実施の形態において
図8を参照して説明した通りであり、疑似共振状態を満足する補正電圧V
Aを自動的に生成することができる。
【0127】
以上がワイヤレス給電装置6の動作である。
このようにワイヤレス給電装置6によれば、送信アンテナ20の共振周波数f
cを調節することなく、疑似共振状態を実現するように回路の状態を自動的にチューニングすることができる。ワイヤレス送電では、ワイヤレス給電装置とワイヤレス受電装置の位置関係によって、共振周波数が時々刻々と変化するが、ワイヤレス給電装置6によれば、その変化に高速に追従することができ、高効率な電力伝送が可能となる。
【0128】
またワイヤレス給電で大電力を伝送しようとすると、共振用キャパシタC
TXの両端間の電圧は非常に大きくなるため、バリコン(バリキャップ)の利用は制約される。ワイヤレス給電装置6によれば共振用キャパシタC
TXの容量値を調節する必要がないため、バリコン等を使用する必要がないという利点もある。
【0129】
ここでは、第1スイッチSWc1、第4スイッチSWc4を含む第1ペアを、第1ハイサイドスイッチSWH1(駆動電圧V
DRV)の位相に対してθ
TX=90°遅れた位相でスイッチングさせる場合を説明したが、位相差θ
TXは90°である必要はなく、270°(−90°)であってもよい。この場合、キャパシタ電圧V
CA1が逆極性となるように自動的に調節されるからである。ただし、第1スイッチSWc1〜第4スイッチSWc4を片方向スイッチを用いて構成する場合には、逆導通素子に電流が流れない位相でスイッチングする必要がある。具体的には、
f
c<f
TXのときにθ
TX=90°
f
c>f
TXのときにθ
TX=270°
とすることが望ましい。
【0130】
また第1の実施の形態で説明したように、位相差θ
TXは、90°もしくは270°から外れていてもよい。
【0131】
続いて、ワイヤレス給電装置6の変形例を説明する。各変形例は、任意の他の変形例と組み合わせることができ、このような組み合わせも本発明の範囲に含まれる。
【0132】
図24は、第1の変形例に係るワイヤレス給電装置6aの構成を示す回路図である。
図24の電源10cはHブリッジ回路で構成される。送信アンテナ20および自動チューニング補助回路80aは、電源10cの第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2の間に直列に設けられる。さらに直流阻止用のキャパシタC2が、送信アンテナ20と自動チューニング補助回路80aと直列に設けられる。自動チューニング補助回路80aにおいて、第1補助キャパシタC
A5の一端(N2)は接地される。
【0133】
図24のワイヤレス給電装置6aによっても、これまで説明したワイヤレス給電装置と同様の効果を得ることができる。
【0134】
第1の実施の形態で説明したように、電源、自動チューニング補助回路、その両方は、トランスを介して送信アンテナ20とカップリングされてもよい。
図25(a)〜(c)は、それぞれ第2〜第4の変形例に係るワイヤレス給電装置6b〜6dの構成を示す回路図である。第1制御部40は省略される。
【0135】
図25(a)のワイヤレス給電装置6bでは、自動チューニング補助回路80aは、第6トランスT6を介して送信アンテナ20と直列にカップリングされる。具体的には、第6トランスT6の1次巻線W1が、送信アンテナ20と直列に設けられ、その2次巻線W2は、自動チューニング補助回路80aの第1端子61と第2端子62の間に設けられる。電源10cは、送信アンテナ20と第6トランスT6の1次巻線W1の両端間に駆動電圧を印加する。
【0136】
図25(b)のワイヤレス給電装置6cでは、電源10cは、第7トランスT7を介して、送信アンテナ20および自動チューニング補助回路80aとカップリングされる。電源10cは、第7トランスT7の1次巻線W1の両端に駆動電圧を印加する。送信アンテナ20および自動チューニング補助回路80aは、2次巻線W2と直列に設けられる。
【0137】
図25(c)のワイヤレス給電装置6dでは、ハーフブリッジ構成の電源10が、第7トランスT7を介して送信アンテナ20および自動チューニング補助回路80aとカップリングされる。電源10の出力端子と第7トランスT7の第1巻線W1の間には、直流阻止用のキャパシタC3が設けられる。
【0138】
さらに
図25(a)〜(c)の変形例を組み合わせて、電源、自動チューニング補助回路の両方を、送信アンテナに対してトランスで結合してもよい。
【0139】
これらの変形例によっても、これまで説明したワイヤレス給電装置と同様の効果を得ることができる。
【0140】
(ワイヤレス受電装置)
上述した第2の実施の形態に係る自動チューニング補助回路は、ワイヤレス受電装置にも利用することができる。以下では、ワイヤレス受電装置について説明する。
【0141】
図26は、第2の実施の形態に係るワイヤレス受電装置8の構成を示す回路図である。ワイヤレス受電装置8は、上述の、あるいは全く別構成のワイヤレス給電装置から送信される電力信号S1を受ける。電力信号S1は、電波になっていない電磁波の近傍界(電界、磁界、あるいは電磁界)が利用される。
【0142】
ワイヤレス受電装置8は、受信アンテナ50、自動チューニング補助回路90および電力を供給すべき負荷70を備える。負荷70には、図示しない整流回路、検波回路などが内蔵されてもよい。
【0143】
受信アンテナ50は、第1端51と第2端52の間に直列に設けられた受信コイルL
RXおよび共振用キャパシタC
RXを含む。
【0144】
自動チューニング補助回路90は、
図22の自動チューニング補助回路80と同様に構成される。具体的には、自動チューニング補助回路90、第1端子91、第5スイッチSWc5〜第8スイッチSWc8、第2補助キャパシタC
A6を備える。
【0145】
第5スイッチSWc5および第6スイッチSWc6は、第1端子91と第2端子92の間に直列に設けられる。第7スイッチSWc7および第8スイッチSWc8は、第1端子91と第2端子92の間に順に直列に、かつ第5スイッチSWc5および第6スイッチSWc6に対して並列に設けられる。第2補助キャパシタC
A6は、第5スイッチSWc5と第6スイッチSWc6の接続点N3と、第7スイッチSWc7と第8スイッチSWc8の接続点N4の間に設けられる。第2補助キャパシタC
A6の容量値は、共振用キャパシタC
RXに比べて十分に大きいことが望ましい。
【0146】
第2制御部94は、第5スイッチSWc5〜第8スイッチSWc8を、電力信号S1と同じ周波数で、かつ送信側においてアンテナに印加される駆動電圧(V
DRV)に対してある位相差θ
RXでスイッチングする。たとえばθ
RX=180°または0°であることが好ましい。
【0147】
自動チューニング補助回路90は、受信アンテナ50と直列にカップリングされる。また電力を供給すべき負荷70は、受信アンテナ50および自動チューニング補助回路90と直接に設けられる。
【0148】
以上がワイヤレス受電装置8の構成である。続いてその動作を説明する。ワイヤレス受電装置8の等価回路図は、
図15のワイヤレス受電装置4と同等である。ワイヤレス給電装置6における自動チューニング補助回路80と同様に、自動チューニング補助回路90は、補正電圧V
Aを受信アンテナ50に印加する補正電源と把握することができる。
【0149】
図27は、
図26のワイヤレス受電装置8の動作を示す波形図である。
図27は上から順に、第5スイッチSWc5〜第8スイッチSWc8、補正電圧V
A、受信アンテナ50に流れる共振電流I
RX、受信コイルL
RXと共振用キャパシタC
RXの両端間の共振電圧V
RXを示す。スイッチを示す波形は、ハイレベルがオン状態を、ローレベルがオフ状態を示す。
【0150】
第5スイッチSWc5および第8スイッチSWc8を含む第1のペアは、ワイヤレス給電装置側の駆動電圧V
DRVに対して180°または0°シフトした位相θ
RXで相補的にスイッチングされる。第6スイッチSWc6および第7スイッチSWc7を含む第2のペアは、第1のペアと相補的にスイッチングされる。共振電流I
RXは、第1のペアのオン時間T
ON1において、第5スイッチSWc5、第2補助キャパシタC
A6、第8スイッチSWc8を含む経路に流れ、第2のペアのオン時間T
ON2において、第6スイッチSWc6、第2補助キャパシタC
A6、第7スイッチSWc7を含む経路に流れる。
【0151】
第2補助キャパシタC
A6は、共振電流I
RXによって充放電され、その結果、第2補助キャパシタC
A6には、キャパシタ電圧V
CA6が発生する。そしてキャパシタ電圧V
CA6に応じた補正電圧V
Aが受信アンテナ50に印加されることにより、共振電流I
Aの位相が、送信側の駆動電圧V
DRVの位相と一致し、疑似共振状態が実現できる。
【0152】
疑似共振状態を実現するためには、第5スイッチSWc5および第8スイッチSWc8を適切な周波数f
TXおよび位相θ
RXでスイッチングさせる必要がある。そこでワイヤレス給電装置からワイヤレス受電装置8に対して、周波数f
TXおよび位相θ
RXを示すデータを送信してもよい。あるいはワイヤレス受電装置8は、位相θ
RXをスイープし、最適な位相θ
RXを検出してもよい。
【0153】
以上がワイヤレス受電装置8の動作である。
このように
図26のワイヤレス受電装置8によれば、共振用キャパシタC
RXの容量値を調節することなく、自動的に共振状態を実現することができる。
【0154】
続いてワイヤレス受電装置8の変形例を説明する。
【0155】
図26では、負荷70の一端を接地して基準電位としているが、負荷70の一端を接地する代わりに、自動チューニング補助回路90の第2補助キャパシタC
A6の一端、すなわち接続点N3またはN4の一方を接地してもよい。
【0156】
図28(a)、(b)は、第2、第3の変形例に係るワイヤレス受電装置の構成を示す回路図である。
【0157】
図26では、負荷70が受信アンテナ50と直列に接続される場合を説明したが、負荷70は別の位置に設けられてもよい。
図28(a)に示す第1の変形例に係るワイヤレス受電装置8aでは、自動チューニング補助回路90aの接続点N4が接地される。負荷70aは、第2補助キャパシタC
A6と並列に設けられる。すなわち負荷70aには、第2補助キャパシタC
A6に生ずるキャパシタ電圧V
CA6が供給される。
【0158】
図28(b)に示す第2の変形例に係るワイヤレス受電装置8bでは、負荷70bは、受信アンテナ50および自動チューニング補助回路90aと直列な経路に、第8トランスT8を介してカップリングされる。
【0159】
図28(c)、(d)は、負荷の構成例を示す回路図である。
図28(c)の負荷70cは、ダイオード整流回路72cと、負荷回路76を含む。
図28(d)の負荷70dは、同期検波回路72dと負荷回路76を含む。負荷回路は、
図20に示すようにさらにスイッチングレギュレータ74を備えてもよい。
【0160】
自動チューニング補助回路90は、受信アンテナ50に対してトランスを介して直列に結合されてもよい。
図29は、第3の変形例に係るワイヤレス受電装置8cの構成を示す回路図である。自動チューニング補助回路90aは、第9トランスT9を介して、受信アンテナ50と直列にカップリングされる。負荷は、受信アンテナ50および1次巻線W1と直列に設けられてもよいし、第2補助キャパシタC
A6と並列に設けられてもよい。
【0161】
これらの変形例によっても、
図26のワイヤレス受電装置8と同様の効果を得ることができる。
【0162】
図26のように受信アンテナ50と直列に負荷を接続した場合、負荷のインピーダンスが低い場合には、自動チューニング補助回路90による調整をしなくても、ある程度の電力を取り出すことができるという利点がある。一方で、負荷の抵抗成分によって受信アンテナ50のQ値が低下するため、大電力が取り出しにくくなる。
【0163】
反対に
図28(a)のように自動チューニング補助回路90aから電力を取り出す場合、負荷70によって受信アンテナ50のQ値が低下しないため、負荷70aのインピーダンスが高い場合でも、大電力を取り出すことができる。一方、負荷70aのインピーダンスが低すぎる場合、自動チューニング補助回路60の動作が阻害されるという問題がある。
【0164】
したがって、負荷をいずれの位置に配置するかは、送電すべき電力や、負荷のインピーダンス等を考慮して決定すればよい。
【0165】
第5スイッチSWc5〜第8スイッチSWc8は、双方向スイッチ、あるいは片方向スイッチのいずれかでも構成できる。片方向スイッチを用いる場合、それらのスイッチングの位相に注意を払う必要があることも、すでに説明した通りである。
【0166】
(ワイヤレス送電システム)
第2の実施の形態で説明したワイヤレス給電装置6とワイヤレス受電装置8を組み合わせることにより、ワイヤレス送電システムを実現できる。
【0167】
また、ワイヤレス給電装置6、ワイヤレス受電装置8の両方に自動チューニング補助回路を実装する場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。
ワイヤレス給電装置6にのみ自動チューニング補助回路を設け、ワイヤレス受電装置は、従来のように共振用キャパシタC
RXの調節を行ってもよい。反対にワイヤレス受電装置8にのみ自動チューニング補助回路を設け、ワイヤレス給電装置6は、従来のように共振用キャパシタC
TXの調節を行ってもよい。
【0168】
さらには、ワイヤレス給電装置6にのみ自動チューニング補助回路を設け、ワイヤレス受電装置8は、一切の調節機構を有さなくてもよい。あるいはワイヤレス受電装置8にのみ自動チューニング補助回路を設け、ワイヤレス給電装置6は、一切の調節機構を有さなくてもよい。
これらの場合、単一の自動チューニング補助回路によって、電源10と負荷70の間のインピーダンスマッチングがとれるようにチューニングされ、高効率な電力伝送が可能となる。この場合に、自動チューニング補助回路のスイッチングの位相θ
TX(θ
RX)の最適値は90°もしくは270°(180°もしくは0°)から外れることに留意すべきである。
【0169】
あるいは、第1の実施の形態に係るワイヤレス給電装置2を、第2の実施の形態に係るワイヤレス受電装置8と組み合わせてもよいし、ワイヤレス受電装置4をワイヤレス給電装置6と組み合わせてもよい。
【0170】
以上、本発明について、第2の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0171】
自動チューニング補助回路80を備えるワイヤレス給電装置6においては、共振用キャパシタC
TXを省略しても疑似共振状態が実現できる場合がある。この場合、共振用キャパシタC
TXを省略してもよい。同様に自動チューニング補助回路90を備えるワイヤレス受電装置8において、共振用キャパシタC
RXを省略してもよい。
【0172】
ワイヤレス給電装置6は、所定の規則(暗号コード)に従い、駆動電圧V
DRVの周波数f
TXおよび位相の少なくとも一方を変化させ、電力信号S1を暗号化する。暗号コードを知っているワイヤレス受電装置8は、その暗号コードにもとづき、自動チューニング補助回路90のスイッチング周波数、位相を制御する。その結果、電力信号S1が暗号化されている場合でも、それを復号して電力供給を受けることができる。暗号コードを知らないワイヤレス受電装置は、自動チューニング補助回路90のスイッチを適切に制御できないため、電力を受信することができなくなる。ワイヤレス電力伝送では、悪意の利用者による盗電が問題となりうるが、自動チューニング補助回路を利用することにより、この問題を解決することができる。
あるいは、単一のワイヤレス給電装置6が複数のワイヤレス受電装置8に給電する際に、自動チューニング補助回路を利用することにより端末毎の給電量を制御できる。
【0173】
自動チューニング補助回路30の用途は、ワイヤレス電力電送には限定されず、チューニングが必要なさまざまな用途に利用できる。
【0174】
(第3の実施の形態)
第1あるいは第2の実施の形態およびその変形例で説明したワイヤレス給電装置2あるいはワイヤレス受電装置4が共振状態にあるときに、送信コイルL
TXと受信コイルL
RXの間に金属片などの異物が挿入されると、共振条件が変化し、共振状態が乱される。また、ワイヤレス受電装置4rの移動にともない、送信コイルL
TXと受信コイルL
RXの結合係数が変化すると、共振条件が変化し、共振状態が乱される。あるいは、悪意のユーザが盗電を行う場合にも、共振状態が乱される。第3の実施の形態では、ワイヤレス送電システム1rにおいて、共振状態の乱れを検出する技術について説明する。
【0175】
(ワイヤレス給電装置)
図30は、第3の実施の形態に係るワイヤレス給電装置2fの構成を示すブロック図である。ワイヤレス給電装置2fの基本的な構成は、
図2のそれと同様である。
図30の自動チューニング補助回路30fは、複数のスイッチSW1、SW2、第1補助キャパシタC
A1に加えて、電圧監視部36を備える。
【0176】
上述のように、共振回路の共振条件の変動に追従して、第1補助キャパシタC
A1の電圧V
CAは変化する。電圧監視部36は、第1補助キャパシタC
A1に生ずるキャパシタ電圧V
CA1を監視する。第1制御部40は、電圧監視部36による監視結果を受け、所定の処理を行う。以下、電圧監視部36による監視および第1制御部40による処理の具体例を説明する。
【0177】
(第1の監視方式)
電圧監視部36は、キャパシタ電圧V
CA1が所定の範囲(V
MIN〜V
MAX)に含まれるか否かを判定し、所定の範囲から逸脱したときにアサート(たとえばハイレベル)される第1検出信号DET1を生成する。
【0178】
図31は、第1の監視方式を示す波形図である。時刻t0より前において、ワイヤレス給電装置2およびワイヤレス受電装置は安定した共振状態にあり、キャパシタ電圧V
CA1は、所定の範囲(V
MIN〜V
MAX)内で変動している。時刻t0に、送信コイルL
TXの近傍に金属片などの異物が挿入されたり、ワイヤレス受電装置の位置が急激に変化したり、盗電を意図する受電端末が近接するなど、共振状態を乱す事象が発生すると、キャパシタ電圧V
CA1が所定の範囲(V
MIN〜V
MAX)から逸脱し、第1検出信号DET1がアサートされる。
【0179】
このように、ワイヤレス給電装置2fによれば、キャパシタ電圧VC
A1を監視することにより、共振状態を乱す事象を検出できる。
【0180】
第1制御部40は、第1検出信号DET1に応じて、さまざまな処理を行うことができる。たとえば第1制御部40は、第1検出信号DET1がアサートされると、電源10を停止し、ワイヤレス受電装置への給電を一旦停止する。そして、第1検出信号DET1に加えて、第1検出信号DET1以外の情報、たとえばワイヤレス給電装置2fが給電している電力を示すデータ、給電先のワイヤレス受電装置が受電している電力を示すデータなどを参照することにより、検出した事象が許容すべき事象か、許容されない事象かを判定する。許容すべき事象とは、単にワイヤレス受電装置が移動したことによる共振状態の乱れなどである。許容すべきでない事象とは、悪意のユーザによる盗電、あるいは異物の混入などである。
【0181】
第1検出信号DET1が示す事象が許容すべきものであるとき、第1制御部40は、時刻t1に給電を再開する。このとき、電圧監視部36は、所定の範囲(V
MIN〜V
MAX)を、新たな共振状態に対応した電圧範囲V
MIN’〜V
MAX’に変更する。
【0182】
第1検出信号DET1が示す事象が許容すべきものでないとき、第1制御部40は、ただちに給電を再開せず、その事象に応じた処理を行う。たとえばワイヤレス受電装置4が不適切な位置にあるために、正常に給電できない可能性がある場合、図示しない通信ユニットを用いて、ワイヤレス受電装置に対して、移動を促すデータを送信してもよい。あるいは盗電の可能性がある場合には、送信周波数f
TXを変更し、あるいはワイヤレス受電装置との間で再認証を行ってもよい。
【0183】
電圧監視部36は、キャパシタ電圧V
CA1と比較する所定の範囲を、キャパシタ電圧V
CA1に応じて変化させてもよい。
図32は、キャパシタ電圧V
CA1と所定の範囲の関係を示す図である。たとえば電圧監視部36は、キャパシタ電圧V
CA1の移動平均(実線)を基準として所定の範囲を設定してもよい。これにより、共振条件が緩やかに変化したときには第1検出信号DET1はアサートされず、急激に変化した場合のみ、第1検出信号DET1をアサートできる。つまり移動平均の平均期間に応じて、検出する事象を選別することができる。たとえば異物の混入にともなうキャパシタ電圧V
CA1の変動は急峻であるため、移動平均の平均期間を短くすれば、このような事象を選択的に検出できる。
【0184】
(第2の監視方法)
電圧監視部36は、キャパシタ電圧V
CA1に加えて、あるいはそれに代えて、キャパシタ電圧V
CA1のその時間微分波形を監視する。たとえば電圧監視部36は、時間微分が所定の範囲(SMIN〜S
MAX)から逸脱すると第2検出信号DET2をアサートする。
【0185】
キャパシタ電圧V
CA1は、自動チューニング補助回路30fによる通常時のチューニングにともなって変動するところ、このときの変動は比較的長い時間スケールで発生する。一方、異物の混入、盗電を目的とした端末の近接などの事象は、非常に短い時間スケールで発生する。そこでキャパシタ電圧V
CA1を時間微分した波形を監視することにより、通常のチューニングにともなう変動と、異物の混入、盗電を目的とした端末の近接などの事象に起因する変動を区別できる。
【0186】
図33は、第2の監視方法を示す波形図である。キャパシタ電圧V
CA1は所定の電圧範囲(V
MIN〜V
MAX)内で変動する。時刻t0より前においてキャパシタ電圧V
CA1は緩やかに変動するため、時間微分は所定の範囲に収まっている。時刻t0に、キャパシタ電圧V
CA1が、所定の範囲(V
MIN〜V
MAX)内で急峻に変動したとする。この場合、第1検出信号DET1はアサートされないが、第2検出信号DET2がアサートされる。この場合、第1制御部40は、短い時間スケールで共振状態を乱す事象が発生したものと推定し、それに応じた処理を行う。
【0187】
このように、キャパシタ電圧V
CA1に加えて、その時間微分波形を監視することにより、2つの検出信号DET1、DET2の組み合わせに応じて、第1制御部40の処理を分岐させることができる。
【0188】
送信コイルL
TX、共振用キャパシタC
TXに生ずる共振電圧は数百V〜数kVの振幅を有する交流電圧である。したがってこれらを直接監視することで共振状態の乱れを検出するためには高耐圧な回路が必要とされ、また交流電圧の振幅を検出するための回路(たとえば整流回路)が必要となる。これに対して、本実施の形態において電圧監視部36が監視するキャパシタ電圧は、送信コイルL
TX、共振用キャパシタC
TXに生ずる共振電圧に比べて振幅が小さいため、電圧監視部36を低耐圧素子で構成でき、また、キャパシタ電圧V
CAを監視する場合、共振電圧のように振幅を測定する必要がないため、回路を簡素化できる。
【0189】
以上が第3の実施の形態に係るワイヤレス給電装置2fの説明である。なお、自動チューニング補助回路およびワイヤレス給電装置の構成は、
図30のそれには限定されない。すなわち電圧監視部36は、第1、第2の実施の形態で説明した様々な回路、具体的には、
図10、
図11、
図12、
図13(a)、(b)の自動チューニング補助回路30、あるいは
図22、
図24、
図25の自動チューニング補助回路80、それらの変形例に設けてもよい。補助キャパシタが複数設けられる場合には、電圧監視部36はその中のひとつを監視してもよいし、複数を同時に監視してもよい。
【0190】
(ワイヤレス受電装置)
電圧監視部36は、ワイヤレス受電装置4の自動チューニング補助回路60に設けてもよい。
図34は、第3の実施の形態に係るワイヤレス受電装置4fの構成を示すブロック図である。ワイヤレス受電装置4fの基本的な構成は、
図14のワイヤレス受電装置4と同様である。
図34の自動チューニング補助回路60fは、複数のスイッチSW3、SW4、第3補助キャパシタC
A3に加えて、電圧監視部36を備える。
【0191】
電圧監視部36の動作は、ワイヤレス給電装置2fに設けた場合と同様であるため説明を省略する。
【0192】
ワイヤレス受電装置においても、自動チューニング補助回路60fの補助キャパシタC
A3に生ずる電圧V
CA3は、共振条件の変動に追従して変化する。したがってキャパシタ電圧V
CA3を監視することにより、共振状態を乱す事象を検出することができる。
【0193】
以上が第3の実施の形態に係るワイヤレス受電装置4fの説明である。なお、自動チューニング補助回路およびワイヤレス受電装置の構成は、
図34のそれには限定されない。すなわち電圧監視部36は、第1、第2の実施の形態で説明した様々な回路、具体的には、
図17(a)、(b)、
図18、
図19(a)、(b)、
図20の自動チューニング補助回路60、あるいは
図26、
図28(a)〜(d)、
図29の自動チューニング補助回路90、それらの変形例に設けてもよい。補助キャパシタが複数設けられる場合には、電圧監視部36はその中のひとつを監視してもよいし、複数を同時に監視してもよい。
【0194】
以上、本発明について、第3の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0195】
実施の形態では、電圧監視部36は、補助キャパシタに生ずる電圧にもとづいて、共振状態を乱す事象を検出したが、それに代えて、自動チューニング補助回路30の第1端子31に生ずる補正電圧V
A、自動チューニング補助回路60の第1端子61に生ずる補正電圧V
A、自動チューニング補助回路80の第1端子81に生ずる補正電圧V
A、自動チューニング補助回路90の第1端子91に生ずる補正電圧V
Aを監視してもよく、この場合も本発明の範囲に含まれる。
【0196】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。