(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回動操作されるメインスイッチ(33)と、単一の操作子(54A,54B)によって複数のロック機構(31;29,30)をアンロック状態とすることを可能とするとともに前記メインスイッチ(33)が所定の回動操作位置にあるときには前記操作子(54A,54B)の操作が規制されるようにした操作部(34A,34B)とを備える車両用ロック機構の集中解錠装置において、
前記メインスイッチ(33)の両側に、操作子(54A,54B)をそれぞれ備える一対の前記操作部(34A,34B)が配設され、
前記メインスイッチ(33)の回動操作に応じて回動するカム部材(50)と、一対の前記操作部(34A,34B)との間に、前記カム部材(50)の回動位置に応じて前記操作子(54)の操作を許容する操作許容位置ならびに前記操作子(54)に係合して該操作子(54)の操作を規制する操作規制位置間で変位することを可能とした一対の規制部材(70A,70B)が、前記カム部材(50)の外周にそれらの規制部材(70A,70B)の一端を当接させるようにして設けられ、
前記カム部材(50)の外周には、一方の前記規制部材(70A)の一端を当接させるカム部(73A)と、他方の前記規制部材(70B)の一端を当接させるカム部(73B)とが軸方向に分かれて形成されることを特徴とする車両用ロック機構の集中解錠操作装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1および2で開示されたものでは、メインスイッチの一側にのみ操作部が配置されており、操作対象となるロック機構の数に限界がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、アンロック状態に操作することを可能としたロック機構の数を増やすことができるようにした車両用ロック機構の集中解錠操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、回動操作されるメインスイッチと、単一の操作子によって複数のロック機構をアンロック状態とすることを可能とするとともに前記メインスイッチが所定の回動操作位置にあるときには前記操作子の操作が規制されるようにした操作部とを備える車両用ロック機構の集中解錠装置において、前記メインスイッチの両側に、操作子をそれぞれ備える一対の前記操作部が配設さ
れ、前記メインスイッチの回動操作に応じて回動するカム部材と、一対の前記操作部との間に、前記カム部材の回動位置に応じて前記操作子の操作を許容する操作許容位置ならびに前記操作子に係合して該操作子の操作を規制する操作規制位置間で変位することを可能とした一対の規制部材が、前記カム部材の外周にそれらの規制部材の一端を当接させるようにして設けら
れ、前記カム部材の外周に、一方の前記規制部材の一端を当接させるカム部と、他方の前記規制部材の一端を当接させるカム部とが軸方向に分かれて形成されること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明
の特徴によれば、複数のロック機構をアンロック状態とすることを可能とした一対の操作部がメインスイッチの両側に配置されるので、アンロック状態に操作することを可能としたロック機構の数を増やすことができる。
【0008】
ま
た、メインスイッチの回動操作に応じて回動するカム部材の回動位置に応じて操作許容位置および操作規制位置間で変位する一対の規制部材が、前記カム部材および一対の操作部間に設けられるようにした簡単な構成で、メインスイッチの回動操作位置に応じて一対の操作部の操作を規制することが可能となる。
【0009】
さら
に、一方の規制部材の一端を当接させるカム部と、他方の規制部材の一端を当接させるカム部とが、軸方向に分かれてカム部材の外周に形成されるので、一対の操作部の操作規制を行うメインスイッチの回動操作位置が相互に異なっても、両操作部の操作規制を相互に独立して設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明すると、先ず
図1において、このスクータ型自動二輪車の車体フレームFが前端に備えるヘッドパイプ11に操向可能に支承されるフロントフォーク12の下端部に前輪WFが軸支され、車体フレームFの中間部に前端部が揺動可能に支承されるユニットスイングエンジンUEの後部に後輪WRが軸支され、車体フレームFの後部およびユニットスイングエンジンUE間にはリヤクッション13が設けられる。また前記ユニットスイングエンジンUEの前方で車体フレームFには燃料タンク14が搭載される。また前記ユニットスイングエンジンUEの上方には、側方に開くことを可能として前記車体フレームFの後部に開閉可能に支持されるタンデム型の乗車用シート15が配置される。
【0012】
前記ユニットスイングエンジンUEの一部、前記車体フレームFおよび前記燃料タンク14は、合成樹脂から成る車体カバー16で覆われており、この車体カバー16は、車体フレームFの前端のヘッドパイプ11を前方から覆うフロントカウル17と、そのフロントカウル17の左右両側に接続される左右一対のフロントサイドカバー18…と、ヘッドパイプ11を後方側から覆うようにしてフロントサイドカバー18…に連なるインナーカバー19と、前記乗車用シート15に座ったライダーの脚部前方を覆うようにして前記両フロントサイドカバー18…および前記インナーカバー19に接合されるレッグシールド20…と、該レッグシールド20…に連なって後方に延びるとともにライダーが足を載せる足置き部21…を下端部で形成する左右一対のフロアセンターカバー22…と、前記足置き部21…の外縁から下方にそれぞれ垂下される左右一対のフロアサイドカバー23…と、乗車用シート15の両側下方に配置されるとともに前記フロアサイドカバー23…に連設されて後方に延びる左右一対のボディサイドカバー24…と、ボディサイドカバー24…の後ろ側下部に連設されるリヤロアカバー25とを備え、レッグシールド20…の一部およびフロアセンターカバー22…により、両足置き部21…間で上方に隆起するとともに燃料タンク14を収納するフロアトンネル部26が、ヘッドパイプ11の後方から乗車用シート15の前端下方にかけて形成される。
【0013】
前記フロアトンネル部26の上部には、該フロアトンネル部26に収容された前記燃料タンク14に燃料を給油するためのフュエルリッド27が開閉可能に配設され、前記インナーカバー19には収納ボックス28が開閉可能に配設される。而して前記フュエルリッド27、前記乗車用シート15および前記収納ボックス28の閉じ状態は、それらに個別に対応したロック機構29,30,31によって維持される。
【0014】
図2において、前記収納ボックス28に隣接した位置で前記車体カバー16のインナーカバー19の車幅方向中央部には、本発明に従う集中解錠操作装置32が配設され、該集中解錠操作装置32は、メインスイッチ33と、該メインスイッチ33の両側に配置される操作部34A,34Bとで構成される。
【0015】
図3および
図4を併せて参照して、前記メインスイッチ33は、メカニカルキーで操作されるシリンダ錠36と、該シリンダ錠36の操作によってスイッチング態様を切換えるようにして前記シリンダ錠36の一端部に連設されるイグニッションスイッチ37と、前記シリンダ錠36へのメカニカルキーの挿入を許容する状態ならびに挿入を禁止する状態を切換えるようにして前記シリンダ錠36の他端部に連設されるシャッター機構38とを備えており、前記シリンダ錠36は、前記イグニッションスイッチ37のスイッチング態様の切換だけでなく、ステアリングのロック状態およびアンロック状態を切り換える。
【0016】
前記シャッター機構38は、前記インナーカバー19の車幅方向中央部に固定配置されるカバー板40と、該カバー板40に結合される支持板41との間に、前記カバー板40に設けられる挿入孔42を開閉可能なシャッター板43が回動可能に収容されて成るものであり、前記挿入孔42は、前記シリンダ錠36にメカニカルキーを挿入することを可能として前記カバー板40に設けられる。また前記カバー板40の外面には、前記シャッター板43の回動操作を許可するか否かを定めるマグネットキーを嵌合するための嵌合凹部44が設けられ、前記嵌合凹部44に前記マグネットキーを嵌合して回動することで前記シャッター板43が前記挿入孔42を開くように回動する。また前記シャッター板43を閉じるときは、前記カバー板40から突出する摘まみ部45を摘んで回動操作すればよく、この摘まみ部45をガイドするガイド孔46が、前記嵌合凹部44に連なって前記カバー板40に設けられる。
【0017】
図5を併せて参照して、前記シリンダ錠36におけるシリンダボディ47は前記支持板41に連設されており、前記挿入孔42に対応して前記支持板41に設けられた円形の開口部48には、前記シリンダ錠3
6におけるロータ49の前記シャッター機構38側の端部が挿入され、該ロータ49に相対回動不能に連結されるカム部材50が、前記シャッター機構38および前記シリンダ錠36間に配置されるようにして前記カバー板40および前記支持板41間に収容され、前記ロータ49および前記カム部材50にはメカニカルキーを挿入するためのキー孔51が設けられる。
【0018】
ところで、前記メインスイッチ33のシリンダ錠36は、
図3で明示するように、ロック位置P1、オフ位置P2、オープン位置P3およびオン位置P4を順次占めるように回動することが可能である。
【0019】
図6を併せて参照して、前記メインスイッチ33の左側に配置される前記操作部34Aは、前記支持板41に固定される支持ケース52Aと、該支持ケース52Aに第1の支軸53Aを介して回動可能に支持される操作子54Aとを備える。
【0020】
前記支持ケース52Aは、前記メインスイッチ33のシャッター機構38側に配置される第1ケース部材55Aと、第1ケース部材55Aを前記シャッター機構38との間に挟んで第1ケース部材55Aに係合される第2ケース部材56Aと、第1および第2ケース部材55A,56Aに係合される第3ケース部材57Aとで構成され、第2ケース部材56Aが前記支持板41に締結される。
【0021】
第1の支軸53Aは、第1および第2ケース部材55A,56A間に設けられる。前記操作子54Aは、略U字状の横断面形状を有するとともに第1の支軸53Aが挿通される支持部54aと、前記支軸53
Aの上下両側に配置されるようにして前記支持部54aから内方に延出される一対の押圧部54b,54cとを備え、前記支持部54aには、第1および第2ケース部材55A,56A間に配置されるキャップ58Aが外部から前記操作子54Aを回動操作することを可能として装着される。
【0022】
一方、前記操作子54Aの内方には、第1の支軸53Aと平行な軸線を有して第1および第2ケース部材55A,56A間に設けられる第2の支軸59Aで回動可能に支承される一対のレバー61A,62Aが配置されており、それらのレバー61A,62Aには、前記操作子54Aの押圧部54b,54cを個別に当接させ得る受圧部61a,62aが設けられるとともにワイヤ連結部61b,62bが個別に設けられる。
【0023】
而して操作子54Aは、
図7(a)で示すように、前記両押圧部54b,54cの両方が前記レバー61A,62Aの受圧部61a,62aに当接していない中立位置と、
図7(b)で示すように前記キャップ58Aの下部を押すことで操作子54Aの押圧部54bがレバー61
Aの受圧部61aを押して該レバー61Aを回動させる回動位置と、
図7(c)で示すように前記キャップ58Aの上部を押すことで操作子54Aの押圧部54cがレバー62
Aの受圧部62aを押して該レバー62Aを回動させる回動位置との間で回動可能であり、レバー61A,62Aのワイヤ連結部61b,62bにワイヤを連結することで、前記操作子54Aを
図7(b)および
図7(c)の回動位置とすることによってワイヤを牽引することが可能であるが、この実施の形態では、レバー62A側のワイヤ連結部62bは予備としてワイヤが連結されておらず、レバー61Aのワイヤ連結部61bに、収容ボックス28のロック機構31にアンロック状態とするための操作力を伝達するためのワイヤ63が連結される。
【0024】
前記操作子54Aにおける支持部54aの中央部には三角形状に凹んだボール受け部64Aが設けられており、該ボール受け部64Aに接触するボール65Aの一部を収容する収容筒67Aが前記支持ケース52Aの第2ケース部材56Aに設けられており、第2ケース部材56Aおよび前記ボール65A間に設けられるコイル状のばね66Aが、前記ボール65Aを前記ボール受け部64Aに押しつけるように付勢するばね力を発揮して前記収容筒部67Aに収容される。このボール65Aおよびばね66Aによって前記操作子54Aは、
図7(a)で示す中立位置側に付勢されることになる。
【0025】
前記メインスイッチ33の右側に配置される前記操作部34Bは、前記メインスイッチ33の左側に配置される前記操作部34Aと左右対称に構成されるものであり、前記操作部34Aに対応する部品に符号「B」を付して図示することにして、詳細な説明は省略する。
【0026】
この操作部34Bでは、キャップ58Bの下部を押すことで回動するレバー61Bには、前記乗車用シート15のロック機構30にアンロック状態とするための操作力を伝達するワイヤ68(
図1参照)が連結され、前記キャップ58Bの上部を押すことで回動するレバー62Bには、前記フュエルリッド27のロック機構29にアンロック状態とするための操作力を伝達するワイヤ69(
図1参照)が連結される。
【0027】
前記メインスイッチ33の回動操作に応じて回動するカム部材50と、一対の前記操作部34A,34
Bとの間には、前記カム部材50の回動位置に応じて前記操作子54A,54Bの操作を許容する操作許容位置ならびに前記操作子54A,54Bに係合して該操作子54A,54Bの操作を規制する操作規制位置間で変位することを可能とした一対の規制部材70A,70Bが、カム部材50の外周にそれらの規制部材70A,70Bの一端を当接させるようにして設けられる。
【0028】
前記操作部34A,34Bの操作子54A,54Bには、前記規制部材70A,70Bの前記カム部材50と反対側の端部を挿通、係合される係合孔71A,71Bが設けられており、前記支持ケース52A,52Bの第1ケース部材55A,55Bには、前記規制部材70A,70Bを挿通させる挿通孔72A,72Bが設けられる。
【0029】
一方、前記カム部材50の外周には、一方の操作部34Aとの間に配設される規制部材70Aの一端を当接させるカム部73Aと、他方の操作部34Bとの間に配設される規制部材70Bの一端を当接させるカム部73Bとが軸方向に分かれて
別々に形成されており、両規制部材70A,70Bは、前記支持板41との間に縮設されるばね74A,74Bで前記カム部73A,73Bに当接するように付勢される。
【0030】
図8で示すように、一方の規制部材70Aを当接させるカム部73Aは、前記メインスイッチ33が、オフ位置およびロック位置にあるときに前記規制部材70Aを操作子54Aの係合孔71Aに挿通、係合して該操作子54Aの回動操作を規制するように形成され、他方の規制部材70Bを当接させるカム部73Bは、前記メインスイッチ33が、オン位置、オフ位置およびロック位置にあるときに前記規制部材70Bを操作子54Bの係合孔71Bに挿通、係合して該操作子54Bの回動操作を規制するように形成される。すなわち収容ボックス28のロック機構31は、前記メインスイッチ33が、オン位置およびオープン位置にあるときに操作部34Aを操作してアンロック状態とすることが可能であり、またフュエルリッド27のロック機構29および乗車用シート15のロック機構30は、前記メインスイッチ33が、オープン位置にあるときに操作部34Bを操作してアンロック状態とすることが可能である。
【0031】
次にこの実施の形態に作用について説明すると、メインスイッチ33の両側に、単一の操作子54A,54Bによって複数のロック機構31;29,30をアンロック状態とすることを可能とするとともに前記メインスイッチ33が所定の回動操作位置にあるときには操作子54A,54Bの操作が規制されるようにした一対の操作部34A,34Bが配設されるので、アンロック状態に操作することを可能としたロック機構29〜31の数を増やすことができる。
【0032】
またメインスイッチ33の回動操作に応じて回動するカム部材50と、一対の前記操作部34A,34Bとの間に、カム部材50の回動位置に応じて前記操作子54A,54Bの操作を許容する操作許容位置ならびに前記操作子54A,54Bに係合して該操作子54A,54Bの操作を規制する操作規制位置間で変位することを可能とした一対の規制部材70A,70Bが、カム部材50の外周にそれらの規制部材70A,70Bの一端を当接させるようにして設けられるので、簡単な構成で、メインスイッチ33の回動操作位置に応じて一対の操作部34A,34Bの操作を規制することが可能となる。
【0033】
さらにカム部材50の外周に、一方の規制部材70Aの一端を当接させるカム部73Aと、他方の規制部材70Bの一端を当接させるカム部73Bとが軸方向に分かれて
別々に形成されるので、一対の操作部
34A,
34Bの操作規制を行うメインスイッチ3
3の回動操作位置が相互に異なっても、前記メインスイッチ33の回動操作位置に応じた両操作部34A,34Bの操作規制を相互に独立して設定することができる。すなわち、一方の操作部43Aでは前記メインスイッチ33がオフ位置およびロック位置にあるときには収容ボックス28のロック機構31をアンロック状態とするように操作することが規制され、他方の操作部43Bでは前記メインスイッチ33がオン位置、オフ位置およびロック位置にあるときにはフュエルリッド27のロック機構29および乗車用シート15のロック機構30をアンロック状態とするように操作することが規制されており、両操作部
34A,
34Bの操作規制を行うメインスイッチ3
3の回動操作位置が相互に異なるのであるが、両操作部34A,34Bの操作規制を相互に独立して設定することが可能となる。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0035】
たとえば上記実施の形態では、メインスイッチ33をメカニカルキーで回動操作するものとしたが、車両ユーザが正規の携帯器を携帯しているときにノブの回動によってイグニッションスイッチのスイッチング態様を変化させるようにしたスマートシステムに本発明を適用することも可能である。