特許第5764098号(P5764098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5764098防眩ミラー、車両および防眩ミラーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764098
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】防眩ミラー、車両および防眩ミラーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/04 20060101AFI20150723BHJP
   G02F 1/15 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   B60R1/04 C
   G02F1/15 501
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-158330(P2012-158330)
(22)【出願日】2012年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-19241(P2014-19241A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】株式会社ホンダロック
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】久木田 知之
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−133027(JP,A)
【文献】 特開平04−059455(JP,A)
【文献】 特開2007−101947(JP,A)
【文献】 特開昭50−123716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/02−1/12
G02F 1/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡面となるガラス基板(18)の背面側に、電圧を印加可能としたエレクトロクロミック層(20)が配置される防眩ミラーにおいて、前記ガラス基板(18)の背面に、透明電極膜(19)と、該透明電極膜(19)の一部を臨ませる切欠き部(25A,25B,25C)を有する前記エレクトロクロミック層(20)とが順次積層され、前記切欠き部(25A〜25C)を除く部分で前記エレクトロクロミック層(20)の背面に第1の電極兼反射膜(21A)が積層され、第1の電極兼反射膜(21A)とは隔絶した第2の電極兼反射膜(21B)が、前記切欠き部(25A〜25C)内で前記透明電極膜(19)の背面に積層され、前記第1の電極兼反射膜(21A)に第1の端子(28)が電気的に接続され、第2の端子(29)が前記第2の電極兼反射膜(21B)を介して前記透明電極膜(19)に電気的に接続されることを特徴とする防眩ミラー。
【請求項2】
第1および第2の電極兼反射膜(21A,21B)が前記ガラス基板(18)側からの光を反射するハーフミラーであり、第2の電極兼反射膜(21B)の背面側の前記切欠き部(25A)に光検知センサ(35)が配置されることを特徴とする請求項記載の防眩ミラー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の防眩ミラーを用いる車両であって、前記防眩ミラー(17A)がルームミラー(13)として用いられることを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の防眩ミラーを用いる車両であって、前記防眩ミラー(17B,17C)がドアミラー(14L,14R)として用いられることを特徴とする車両。
【請求項5】
前記防眩ミラー(17B,17C)の車幅方向内方側の端部に前記切欠き部(25B,25C)が配置されることを特徴とする請求項記載の車両。
【請求項6】
鏡面となるガラス基板(18)の背面側に、切欠き部(25A,25B,25C)を有するとともに電圧を印加可能としたエレクトロクロミック層(20)が配置され、このエレクトロクロミック層(20)に、第1,第2の電極兼反射膜(21A,21B)を介して第1,第2の端子(28,29)が電気的に接続される防眩ミラーの製造方法であって、
前記ガラス基板(18)の背面に透明電極膜(19)を形成する第1のステップと、前記切欠き部(25A〜25C)に対応する部分を覆う防着部材(38)を前記ガラス基板(18)および前記透明電極膜(19)に装着した状態で前記透明電極膜(19)の背面の前記防着部材(38)で覆われた部分を除く部分にエレクトロクロミック層(20)を形成する第2のステップと、前記防着部材(38)を取り外した状態で前記エレクトロクロミック層(20)の背面、前記エレクトロクロミック層(20)の前記切欠き部(25A〜25C)に対応する側面および前記透明電極膜(19)の背面に第1および第2の電極兼反射膜(21A,21B)となり得る予成形膜(21)を形成する第3のステップと、第3のステップで形成した前記予成形膜(21)のうち前記切欠き部(25A〜25C)の外縁となる部分にレーザーエッチング処理を施して前記切欠き部(25A〜25C)を形成するとともに前記予成形膜(21)を相互に隔絶した第1および第2の電極兼反射膜(21A,21B)に分離する第4のステップと、第1の電極兼反射膜(21A)に第1の端子(28)を電気的に接続するとともに第2の電極兼反射膜(21B)に第2の端子(29)を電気的に接続する第5のステップとを、順次実行することを特徴とする防眩ミラーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡面となるガラス基板の背面側に、電圧を印加可能としたエレクトロクロミック層が配置される防眩ミラー、その防眩ミラーが用いられる車両および防眩ミラーの製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板の背面に、透明電極膜と、エレクトロクロミック層と、電極兼反射膜とが順次積層され、前記透明電極膜に接続されるクリップ電極と、前記電極兼反射膜に接続されるクリップ電極とがガラス基板の上下両縁部に設けられ、それらのクリップ電極がハウジングで覆われるようにしたものが、特許文献1で既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−282374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示されるものでは、クリップ電極が設けられている箇所一帯またはガラス基板の周縁部が防眩ミラーとして利用不可能であり、利用可能な鏡面が制限されてしまう。またクリップ電極がミラー基板の外縁から外方に突出するためにハウジングを含む防眩ミラー装置全体の大型化を余儀なくされている。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、鏡面を広く使用可能とするとともに小型化を可能とした防眩ミラー、その防眩ミラーが用いられる車両、ならびにミラー面を広く使用可能とするとともに小型化を可能とした防眩ミラーを容易に製造できるようにした防眩ミラーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、鏡面となるガラス基板の背面側に、電圧を印加可能としたエレクトロクロミック層が配置される防眩ミラーにおいて、前記ガラス基板の背面に、透明電極膜と、該透明電極膜の一部を臨ませる切欠き部を有する前記エレクトロクロミック層とが順次積層され、前記切欠き部を除く部分で前記エレクトロクロミック層の背面に第1の電極兼反射膜が積層され、第1の電極兼反射膜とは隔絶した第2の電極兼反射膜が、前記切欠き部内で前記透明電極膜の背面に積層され、前記第1の電極兼反射膜に第1の端子が電気的に接続され、第2の端子が前記第2の電極兼反射膜を介して前記透明電極膜に電気的に接続されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、第1および第2の電極兼反射膜が前記ガラス基板側からの光を反射するハーフミラーであり、第2の電極兼反射膜の背面側の前記切欠き部に光検知センサが配置されることを第の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1またはの特徴の防眩ミラーを用いる車両であって、前記防眩ミラーがルームミラーとして用いられることを第の特徴とする。
【0009】
本発明は、第1またはの特徴の防眩ミラーを用いる車両であって、前記防眩ミラーがドアミラーとして用いられることを第の特徴とする。
【0010】
本発明は、第の特徴の構成に加えて、前記防眩ミラーの車幅方向内方側の端部に前記切欠き部が配置されることを第の特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、鏡面となるガラス基板の背面側に、切欠き部を有するとともに電圧を印加可能としたエレクトロクロミック層が配置され、このエレクトロクロミック層に、第1,第2の電極兼反射膜を介して第1,第2の端子が電気的に接続される防眩ミラーの製造方法であって、前記ガラス基板の背面に透明電極膜を形成する第1のステップと、前記切欠き部に対応する部分を覆う防着部材を前記ガラス基板および前記透明電極膜に装着した状態で前記透明電極膜の背面の前記防着部材で覆われた部分を除く部分にエレクトロクロミック層を形成する第2のステップと、前記防着部材を取り外した状態で前記エレクトロクロミック層の背面、前記エレクトロクロミック層の前記切欠き部に対応する側面および前記透明電極膜の背面に第1および第2の電極兼反射膜となり得る予成形膜を形成する第3のステップと、第3のステップで形成した前記予成形膜のうち前記切欠き部の外縁となる部分にレーザーエッチング処理を施して前記切欠き部を形成するとともに前記予成形膜を相互に隔絶した第1および第2の電極兼反射膜に分離する第4のステップと、第1の電極兼反射膜に第1の端子を電気的に接続するとともに第2の電極兼反射膜に第2の端子を電気的に接続する第5のステップとを、順次実行することを第の特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の特徴によれば、エレクトロクロミック層を電極兼反射膜との間に挟む透明電極の一部を臨ませる切欠き部がエレクトロクロミック層に設けられ、電極兼反射膜に第1の端子が電気的に接続され、切欠き部内で透明電極膜に第2の端子が電気的に接続されるので、防眩ミラーとして使用できないのは切欠き部に対応した部分の少ないスペースですみ、鏡面を広く使用可能であり、第1および第2の端子が鏡面から側方に突出することはないので小型化が可能となる。
【0013】
た、エレクトロクロミック層に積層される第1の電極兼反射膜とは隔絶して切欠き部内で透明電極層に積層される第2の電極兼反射膜を介して第2の端子が透明電極膜に電気的に接続されるので、切欠き部が設けられることによってガラス基板の背後が透けて見えてしまうことを回避することができる。
【0014】
本発明の第の特徴によれば、ガラス基板、透明電極およびハーフミラーである第2の電極兼反射膜を透過して入ってくる光を切欠き部内の光検知センサで検知するので、防眩ミラーの周囲に光検知センサを配置するスペースを確保することが不要となり、光検知センサを含んで小型化を図ることができる。
【0015】
本発明の第の特徴によれば、防眩ミラーとしたルームミラーの鏡面を広く確保しつつ該ルームミラーの小型化を図ることができる。
【0016】
本発明の第の特徴によれば、防眩ミラーとしたドアミラーの鏡面を広く確保しつつ該ドアミラーの小型化を図ることができる。
【0017】
本発明の第の特徴によれば、ドアミラーの車幅方向内方側の端部は自車が映り込む部分であり、防眩機能を必要とはしないので、その部分に切欠き部が配置されることによって防眩ミラーとして使用する位置を効率的に配置することができる。
【0018】
さらに本発明の第の特徴によれば、第1および第2の電極兼反射膜となり得る予成形膜を、エレクトロクロミック層の背面、エレクトロクロミック層の切欠き部に対応する側面および透明電極膜の背面に形成した後にその予成形膜のうち切欠き部の外縁となる部分にレーザーエッチング処理を施して、切欠き部を形成するとともに予成形膜を相互に隔絶した第1および第2の電極兼反射膜に分離するので、鏡面となるガラス基板の背面側に、切欠き部を有するとともに電圧を印加可能としたエレクトロクロミック層が配置され、このエレクトロクロミック層に、第1,第2の電極兼反射膜を介して第1,第2の端子が電気的に接続される防眩ミラーに、切欠き部、第1および第2の電極兼反射膜を容易にかつ効率よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施の形態を示すものであって車室内の前部を後方から見た図である。
図2】ルームミラーの拡大図である。
図3図2の3−3線断面図である。
図4図2の4−4線断面図である。
図5】防眩ミラーの製造過程を順次示す図である。
図6】第2の実施の形態の図3に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
本発明の第1の実施の形態について図1図5を参照しながら説明すると、先ず図1において、乗用車両の車室11内のたとえば前部右側に配置された運転席12に座った車両運転者が車両後方の視界を得るために、車室11内の前部の上部にルームミラー13が配設され、車両の左右の前部サイドドア15L,15Rの外側前部にはドアミラー14L,14Rが配設される。
【0022】
図2図4において、前記ルームミラー13は、後方に向かって開いた椀状に形成されて車体に支持されるハウジング16内に、そのハウジング16の開口部を塞ぐようにして防眩ミラー17Aが設けられて成るものであり、この防眩ミラー17Aは、鏡面となるガラス基板18の背面側に配置されるエレクトロクロミック層20に電圧を印加することで反射率を変化させることが可能である。
【0023】
前記防眩ミラー17Aは、前記ガラス基板18の背面に、透明電極膜19と、該透明電極19の一部を臨ませる切欠き部25Aを有する前記エレクトロクロミック層20とが順次積層され、前記切欠き部25Aを除く部分で前記エレクトロクロミック層20の背面に積層された第1の電極兼反射膜21Aに第1の端子28が電気的に接続され、前記切欠き部25A内で前記透明電極膜19に第2の端子29が電気的に接続されるように構成されるものであり、第1の電極兼反射膜21Aとは隔絶しつつ前記切欠き部25A内で前記透明電極膜19に積層される第2の電極兼反射膜21Bを介して第2の端子29が前記透明電極膜19に電気的に接続される。
【0024】
前記透明電極膜19は、たとえば酸化インジウムスズから成るものであり、前記エレクトロクロミック層20は、前記透明電極膜19側から順に、たとえば酸化ニッケル層22、五酸化タンタル層23および酸化タングステン層24が積層されて成るものである。また第1および第2の電極兼反射膜21A,21Bは、たとえばアルミニウムから成るものであり、前記ガラス基板18側からの光を反射するハーフミラーである。
【0025】
また前記切欠き部25Aは、この第1の実施の形態では、前記透明電極膜19の下部の幅方向中央部を臨ませるようにして前記エレクトロクロミック層20の幅方向中央下部に設けられる。
【0026】
第1の電極兼反射膜21Aには導電性接着剤26を介して第1の端子28が接続され、前記切欠き部25A内で第2の電極兼反射膜21Bには導電性接着剤27を介して第2の端子29が接続される。
【0027】
前記防眩ミラー17Aは、第1および第2の端子28,29を有して第1の電極兼反射膜21Aの背面に貼り付けられる樹脂パネル30を備えるものであり、この樹脂パネル30は、たとえばポリエチレンから成るパネル主部31と、該パネル主部31の一面を覆う膜状のカバー部32とから成る。前記カバー部32は、たとえばポリエチレンテレフタレート−アクリレートから成るものであり、前記パネル主部31の一面に歯止めかしめされた第1および第2端子28,29の先端部を埋没させるようにして前記パネル主部31の一面を覆う。
【0028】
ところで図3および図4では、構造を明確化するために前記透明電極膜19、前記エレクトロクロミック層20、第1および第2の電極兼反射膜21A,21Bの厚みを誇張して描いており、第2の端子29および第2の電極膜兼反射膜21B間の間隔が図3では大きく開いているが、実際の前記エレクトロクロミック層20の厚みは、1mm以下のごく薄いものであり、実際には薄い導電性接着剤27を介して第2の端子29および第2の電極膜兼反射膜21Bは図3の鎖線で示すように電気的に接続される。
【0029】
前記ガラス基板18の背面に、前記透明電極膜19、前記エレクトロクロミック層20および第1の電極兼反射膜21Aが積層され、切欠き部25A内で前記透明電極膜19に第2の電極兼反射膜21Bが積層され、第1の電極兼反射膜21Aに前記樹脂パネル30が貼り付けられた状態にある前記防眩ミラー17Aの外周には、たとえばエポキシ樹脂を硬化させて成るコーティング層33が設けられ、これにより、前記ガラス基板18、前記透明電極膜19、前記エレクトロクロミック層20、第1および第2の電極兼反射膜21A,21Bおよび前記樹脂パネル30が相互に結合される。
【0030】
前記樹脂パネル30の背面には第1および第2の端子28,29が差し込まれる基板34が設けられるものであり、この基板34には、防眩ミラー17Aの反射率を変化させる基準となる光量を検出するための光検知センサ35が取り付けられる。この光検知センサ35は、たとえばフォトダイオードである。
【0031】
図4において、前記樹脂パネル30は、前記切欠き部25Aを覆うことのない形状に形成されており、前記光検知センサ35は、第2の電極兼反射膜21Bの背面側の前記切欠き部25Aに配置されるようにして前記基板34に配設される。
【0032】
このような防眩ミラー17Aの製造方法について図5を参照しながら説明すると、第1のステップでは、図5(a)で示すように、ガラス基板18の背面に透明電極膜19を形成し、次の第2ステップでは、図5(b)で示すように、切欠き部25Aに対応する部分を覆うクリップ状の防着部材38を前記ガラス基板18および前記透明電極膜19に装着した状態で前記透明電極膜19の背面の前記防着部材38で覆われた部分を除く部分にエレクトロクロミック層20を形成する。
【0033】
第3のステップでは、図5(c)で示すように、前記防着部材38を取り外した状態で前記エレクトロクロミック層20の背面、前記エレクトロクロミック層20の前記切欠き部25Aに対応する側面および前記透明電極膜19の背面に第1および第2の電極兼反射膜21A,21Bとなり得る予成形膜21を形成し、第4のステップでは、図5(d)で示すように、第3のステップで形成した予成形膜21のうち前記切欠き部25Aの外縁となる部分にレーザーエッチング処理を施して前記切欠き部25Aを形成するとともに予成形膜21を相互に隔絶した第1および第2の前記電極兼反射膜21A,21Bに分離する。次いで第5のステップでは、図5(e)で示すように、第1の電極兼反射膜21Aに導電性接着剤26を介して第1の端子28を電気的に接続するとともに第2の電極兼反射膜21Bに導電性接着剤27を介して第2の端子29を電気的に接続するようにして樹脂パネル30を第1の電極兼反射膜21Aの背面に貼り付け、これによって防眩ミラー17Aを構成する。次いで第6のステップでは、その防眩ミラー17Aの外周にエポキシ樹脂を塗布してコーティング層33を形成し、前記ガラス基板18、前記透明電極膜19、前記エレクトロクロミック層20、第1および第2の電極兼反射膜21A,21Bおよび前記樹脂パネル30が相互に結合する。
【0034】
図1に注目して、車両の左右の前部サイドドア15L,15Rの外側前部に配設されるドアミラー14L,14Rは、後方に向かって開いた椀状に形成されて車体に支持されるハウジング39L,39R内に、それらのハウジング39L,39Rの開口部を塞ぐようにして防眩ミラー17B,17Cが設けられて成るものであり、防眩ミラー17B,17Cは、前記ルームミラー13の防眩ミラー17Aと基本的に同様に構成されるものの、防眩ミラー17B,17Cの車幅方向内方側の端部に切欠き部25B,25Cが配置される。
【0035】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、防眩ミラー17A〜17Cは、ガラス基板18の背面に、透明電極膜19と、該透明電極膜19の一部を臨ませる切欠き部25A〜25Cを有するエレクトロクロミック層20とが順次積層され、前記切欠き部25A〜25Cを除く部分で前記エレクトロクロミック層20の背面に第1の電極兼反射膜21Aが積層され、第1の電極兼反射膜21Aに第1の端子28が電気的に接続され、切欠き部25A〜25C内で透明電極膜19に第2の端子29が電気的に接続されるように構成されるので、防眩ミラー17A〜17Cとして使用できないのは切欠き部25A〜25Cに対応した部分の少ないスペースですみ、鏡面を広く使用可能であり、第1および第2の端子28,29が鏡面から側方に突出することはないので小型化が可能となる。
【0036】
また第1の電極兼反射膜21Aとは隔絶した第2の電極兼反射膜21Bが前記切欠き部25A〜25C内で前記透明電極膜19の背面に積層され、前記切欠き部25A〜25C内で第2の電極兼反射膜21Bに第2の端子29が接続されるので、切欠き部25A〜25Cが設けられることによってガラス基板18の背後が透けて見えてしまうことを回避することができる。
【0037】
またハーフミラーである第2の電極兼反射膜21Bの背面側の切欠き部25A〜25Cに光検知センサ35が配置されるので、ガラス基板18、透明電極19および第2の電極兼反射膜21Bを透過して入ってくる光を切欠き部25A〜25C内の光検知センサ35で検知するようにして、防眩ミラー17A〜17Cの周囲に光検知センサ35を配置するスペースを確保することを不要とし、光検知センサ35を含んで小型化を図ることができる。
【0038】
また防眩ミラー17Aがルームミラー13として用いられるので、ルームミラー13の鏡面を広く確保しつつ該ルームミラー13の小型化を図ることができ、防眩ミラー17B,17Cがドアミラー14L,14Rとして用いられるので、ドアミラー14L,14Rの鏡面を広く確保しつつ該ドアミラー14L,14Rの小型化を図ることができる。
【0039】
ところでドアミラー14L,14Rの車幅方向内方側の端部は自車が映り込む部分であって防眩機能を必要とはしないものであり、ドアミラー14L,14Rとして用いられる前記防眩ミラー17B,17Cの車幅方向内方側の端部に前記切欠き部25B,25Cが配置されるので、防眩ミラー17B,17Cとして使用する位置を効率的に配置することができる。
【0040】
さらに防眩ミラー17A〜17Cを製造するにあたっては、ガラス基板18の背面に透明電極膜19を形成する第1のステップと、切欠き部25A〜25Cに対応する部分を覆う防着部材38を前記ガラス基板18および前記透明電極膜19に装着した状態で前記透明電極膜19の背面の前記防着部材38で覆われた部分を除く部分にエレクトロクロミック層20を形成する第2のステップと、前記防着部材38を取り外した状態で前記エレクトロクロミック層20の背面、前記エレクトロクロミック層20の前記切欠き部25A〜25Cに対応する側面および前記透明電極膜19の背面に第1および第2の電極兼反射膜21A,21Bとなり得る予成形膜21を形成する第3のステップと、第3のステップで形成した予成形膜21のうち前記切欠き部25A〜25Cの外縁となる部分にレーザーエッチング処理を施して前記切欠き部25A〜25Cを形成するとともに予成形膜21を相互に隔絶した第1および第2の前記電極兼反射膜21A,21Bに分離する第4のステップと、第1の電極兼反射膜21Aに第1の端子28を電気的に接続するとともに第2の電極兼反射膜21Bに第2の端子29を電気的に接続する第5のステップとを、順次実行するので、切欠き部25A〜25C、第1および第2の電極兼反射膜21A,21Bを容易にかつ効率よく形成することができる。
【0041】
本発明の第2の実施の形態として、図6で示すように、ルームミラー13として用いられる防眩ミラー17Aの切欠き部25Aが、透明電極膜19の上部の幅方向中央部を臨ませるようにしてエレクトロクロミック層20の幅方向中央上部に設けられるようにしてもよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0043】
13・・・ルームミラー
14L,14R・・・ドアミラー
17A,17B,17C・・・防眩ミラー
18・・・ガラス基板
19・・・透明電極膜
20・・・エレクトロクロミック層
21・・・予成形膜
21A・・・第1の電極兼反射膜
21B・・・第2の電極兼反射膜
25A,25B,25C・・・切欠き部
35・・・光検知センサ
38・・・防着部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6