(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配合が異なる複数のゴム材料を、それぞれ、予備成形室であるプリフォーマの内部に押し出しすることにより、前記複数のゴム材料が前記プリフォーマ内で合流した未加硫のトレッドゴムを連続して押出形成するためのトレッドゴム押出方法であって、
前記トレッドゴムの断面は、配合が異なる前記ゴム材料で各々区画された複数のゴム領域からなり、
前記ゴム領域は、前記トレッドゴムの厚さ方向にのびかつ前記厚さ方向と直交する幅が前記厚さ方向の長さよりも小さい第1のゴム材料からなる線状領域と、該線状領域の左右両側に配された第2のゴム材料からなる側部領域とを含み、
前記第1のゴム材料は、カーボンブラックが配合された導電性ゴムからなり、
前記第2のゴム材料は、シリカが配合された非導電性ゴムからなり、
前記プリフォーマ内において、前記線状領域を形成する前記第1のゴム材料を、前記側部領域を形成する前記第2のゴム材料の間に供給する工程を含み、
前記工程は、前記第1のゴム材料を、前記トレッドゴムの厚さ方向にのびかつ前記厚さ方向と直交する幅が前記厚さ方向の長さよりも小さい線状の開口を含む吐出口から前記プリフォーマ内に押し出すとともに、
前記第1のゴム材料を、前記第2のゴム材料と同じ速度で前記吐出口から吐出し、しかも、前記吐出口の厚さ方向の区間から両端の厚さ方向の距離の12.5%をそれぞれ排除した区間Kにおいて、前記第1のゴム材料の前記トレッドゴムの厚さ方向の速度分布を、最大速度vmaxと最低速度vminとの差(vmax−vmin)が、最大速度vmaxの50%以下として前記吐出口から吐出することを特徴とするトレッドゴム押出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の端子ゴムeは、補強材として導電性に優れるカーボン等の補強材が配合されている。このような端子ゴムeは、シリカが主補強材として配合されたキャップゴムbに比べると摩耗し易く、異なる性能を持つ。従って、タイヤの諸性能への悪影響を最小にするために、端子ゴムeは極力小さい幅wで形成されることが望まれる。
【0007】
しかしながら、キャップゴムbの中に、幅wが小さい線状の端子ゴムeを連続して押出成形すると、
図11に拡大して示されるように、例えば、端子ゴムeの幅がトレッドゴムa2の厚さ方向で安定しない。このため、トレッドゴムa2を貫通しない端子ゴムeが形成される等の不具合があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、トレッドゴム中に、幅が小さい線状領域を好適に形成することができるトレッドゴム押出方法及びトレッドゴム押出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明は、配合が異なる複数のゴム材料を、それぞれ、予備成形室であるプリフォーマの内部に押し出しすることにより、前記複数のゴム材料が前記プリフォーマ内で合流した未加硫のトレッドゴムを連続して押出形成するためのトレッドゴム押出方法であって、
前記トレッドゴムの断面は、配合が異なる前記ゴム材料で各々区画された複数のゴム領域からなり、前記ゴム領域は、前記トレッドゴムの厚さ方向にのびかつ前記厚さ方向と直交する幅が前記厚さ方向の長さよりも小さい
第1のゴム材料からなる線状領域と、該線状領域の左右両側に配された
第2のゴム材料からなる側部領域とを含み、
前記第1のゴム材料は、カーボンブラックが配合された導電性ゴムからなり、前記第2のゴム材料は、シリカが配合された非導電性ゴムからなり、前記プリフォーマ内において、前記線状領域を形成する
前記第1のゴム材料を、前記側部領域を形成する
前記第2のゴム材料の間に供給する工程を含み、前記工程は、前記第1のゴム材料を、前記トレッドゴムの厚さ方向にのびかつ前記厚さ方向と直交する幅が前記厚さ方向の長さよりも小さい線状の開口を含む吐出口から前記プリフォーマ内に押し出すとともに、
前記第1のゴム材料を、前記第2のゴム材料と同じ速度で前記吐出口から吐出し、しかも、前記吐出口の厚さ方向の区間から両端の厚さ方向の距離の12.5%をそれぞれ排除した区間Kにおいて、前記第1のゴム材料の前記トレッドゴムの厚さ方向の速度分布を、最大速度vmaxと最低速度vminとの差(vmax−vmin)が、最大速度vmaxの50%以下として前記吐出口から吐出することを特徴とする。
【0011】
また
請求項2記載の発明は、前記第1のゴム材料が、下流側に向かって断面積が減少する上下方向にのびる上流部と、該上流部に連なりかつ断面積が下流側に向かって漸増する中流部と、該中流部と屈曲して接続されかつ押出方向の流路高さが下流側に向かって漸増する下流部とを含むゴム流路を介して前記吐出口から吐出される
請求項1記載のトレッドゴム押出方法である。
【0012】
また
請求項3記載の発明は、前記線状領域は、前記幅が0.1〜1.0mmである
請求項1又は2に記載のトレッドゴム押出方法である。
【0013】
また
請求項4記載の発明は、前記
請求項1乃至3のいずれかに記載のトレッドゴム押出方法に用いられるトレッドゴム押出装置であって、
前記第1のゴム材料を押し出す押出機と、一端が前記押出機の押出口に接続されかつ他端が前記プリフォーマ内で開口する前記吐出口を具えたゴム流路とを含み、前記ゴム流路は、下流側に向かって断面積が減少する上下方向にのびる上流部と、該上流部に連なりかつ断面積が下流側に向かって漸増する中流部と、該中流部と屈曲して接続されかつ前記トレッドゴムの押出方向に沿って前記吐出口までのびる下流部とを含み、前記吐出口は、前記幅が一定で前記厚さ方向にのびており、かつ、前記下流部は、前記押出方向の流路高さが下流側に向かって漸増することを特徴とするトレッドゴム押出装置である。
【0014】
また
請求項5記載の発明は、前記下流部は、側面視において、上辺が前記押出方向と平行であり、下辺が下流側に向かって下に傾く傾斜を有した略台形状である
請求項4記載のトレッドゴム押出装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プリフォーマ内において、線状領域を形成する第1のゴム材料を、側部領域を形成する第2のゴム材料の間に供給する工程が行われる。この工程では、第1のゴム材料が線状の開口を含む吐出口からプリフォーマ内に押し出される。またこの際、第1のゴム材料は、トレッドゴムの厚さ方向の速度分布を実質的に一定として前記吐出口から吐出される。発明者らの種々の実験の結果、線状の吐出口からプリフォーマ内に、トレッドゴムの厚さ方向の速度分布を実質的に一定として第1のゴム材料を吐出することにより、精度良く略一定幅の線状領域を形成しうることが見出された。このため、本発明によれば、トレッドゴムの断面に、トレッドゴムの厚さ方向にのびる線状領域を安定して形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が、図面に基づき説明される。
図1及びその縦断面図である
図2には、本実施形態のトレッドゴム押出装置1が示されている。該トレッドゴム押出装置1は、配合が異なる複数種類のゴム材料G1乃至G4からなる未加硫のトレッドゴムTGを、連続して押出形成する。トレッドゴム押出装置1に先立って、トレッドゴムTGが説明される。
【0018】
図3には、このトレッドゴム押出装置1によって連続して押し出されたトレッドゴムTGの断面図が示されている。該トレッドゴムTGは、厚さ方向Yに対して幅方向Xが大きい断面略台形状である。
【0019】
トレッドゴムTGの断面は、ゴム材料G1〜G4により各々区画された複数のゴム領域からなる。トレッドゴムTGは、本実施形態では、路面と接する接地面Tsを形成するキャップゴムG1と、このキャップゴムG1の厚さ方向の内方に配されたベースゴムG2と、ベースゴムG2の厚さ方向の内方に配されたアンダーゴムG3と、少なくともキャップゴムG1とベースゴムG2とを貫通して厚さ方向にのびる導電端子ゴムG4とから構成されている。
【0020】
本実施形態において、キャップゴムG1は、例えば、シリカが配合された電気絶縁性が高い非導電性ゴムからなる。キャップゴムG1は、導電端子ゴムG4を除き、トレッドゴムTGの全幅にわたって配されている。
【0021】
また、ベースゴムG2は、例えば、損失係数(tan δ)を低く設定するために、カーボンブラックの配合量が減じられた電気絶縁性が高い非導電性ゴムからなる。ベースゴムG2も、導電端子ゴムG4を除き、トレッドゴムTGの全幅にわたって配されている。
【0022】
アンダーゴムG3は、例えば、通常のカーボンブラックが配合された導電性ゴムからなる。該アンダーゴムG3は、例えば、ベルト層の外側に配され、カーカス(図示せず)を介して、タイヤが装着されるリムと電気的に導通する。
【0023】
本実施形態において、導電端子ゴムG4は、カーボンブラックが配合された導電性ゴムからなる。該導電端子ゴムG4は、トレッドゴムTGの断面において、厚さ方向Yと直交する幅方向Xの長さが、厚さ方向Yの長さよりも小さい線状で形成される。また、導電端子ゴムG4は、一端が接地面Tsに露出し、他端がアンダーゴムG3と接続されるか、アンダーゴムG3を貫通する。
【0024】
なお、本明細書において、「導電性」とは、物質が実質的に電気を通す性質を意味し、具体的には体積固有電気抵抗値が1.0×10
8 (Ω・cm)未満の材料が示す性質とする。逆に、「非導電性」とは、物質が実質的に電気を通さない性質を意味し、具体的には体積固有電気抵抗値が1.0×10
8 (Ω・cm)以上の材料が示す性質とする。
【0025】
以上のようなトレッドゴムTGは、導電端子ゴムG4によって、トレッドゴムTGの厚さ方向Yにのびかつ厚さ方向Yと直交する幅wが前記厚さ方向Yの長さhよりも小さい線状領域Raが形成される。また、この線状領域Raの左右両側には、キャップゴムG1、ベースゴムG2及びアンダーゴムG3からなる側部領域Rb、Rbが形成される。ただし、トレッドゴムTGの断面形状や各ゴムの配置等については、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、ウイングゴムなどが付加されても良い。
【0026】
図1乃至2に示されるように、トレッドゴム押出装置1は、キャップゴムG1、ベースゴムG2、アンダーゴムG3及び導電端子ゴムG4をそれぞれ押し出すゴム押出機M1〜M4と、押し出された各ゴム材料G1乃至G4が供給される予備成形室であるプリフォーマ2と、プリフォーマ2の吐出口Ps側に設けられた押出断面形状を有するダイ3とを具えている。
【0027】
各押出機M1〜M4は、投入された各ゴム材料を、スクリュー軸の回転によって混練、押し出しする周知のものが採用される。また、ゴム使用量に鑑み、アンダーゴムG3及び導電端子ゴムG4を押し出す第3乃至第4のゴム押出機M3又はM4には、キャップゴムG1及びベースゴムG2を押し出す第1乃至第2のゴム押出機M1、M2に比べて、小型のものが使用可能である。
【0028】
第1乃至第4のゴム押出機M1〜M4の各押出口には第1乃至第4の流路8a〜8dの上流側の入り口5a〜5dが接続される。また、該第1乃至第4の流路8a〜8dの下流側の端部には、プリフォーマ2内で開口する第1乃至第4の吐出口7a〜7dが設けられる。
【0029】
プリフォーマ2は、各ゴム材料G1乃至G4を合流させてトレッドゴムTGを予備成形するための空間であって、本実施形態では、第1合流部10、第2合流部11及び第3合流部12を有する。
【0030】
プリフォーマ2の第1合流部10は、最も上流側に設けられ、キャップゴムG1と、ベースゴムG2とを合流させる。即ち、第1合流部10の上部には、第1の押出機M1から第1の流路8aを介してキャップゴムG1が吐出される。また、第1合流部10の下部には、第2の押出機M2から第2の流路8bを介してベースゴムG2が吐出される。これらキャップゴムG1とベースゴムG2とは、プリフォーマ2内を移動して第1合流部10内で合流される。これにより、プリフォーマ2の第1合流部10では、キャップゴムG1とベースゴムG2とが上下に重なる2層のゴム積層体が得られる。
【0031】
プリフォーマ2の第2合流部11は、第1合流部10の下流側に設けられる。第2合流部11では、キャップゴムG1及びベースゴムG2のゴム積層体に、アンダーゴムG3が合流させられる。第2合流部11では、前記ゴム積層体の下方に、第3の押出機M3から第3の流路8cを介してアンダーゴムG3が吐出される。これにより、プリフォーマ2の第2合流部11で、キャップゴムG1、ベースゴムG2及びアンダーゴムG3が上下に重なる3層のゴム積層体が得られる。
【0032】
プリフォーマ2の第3合流部12は、第2合流部11の下流側に設けられる。第3合流部12では、キャップゴムG1、ベースゴムG2及びアンダーゴムG3の積層体に、導電端子ゴムG4が合流させられる。
【0033】
図2、
図4及び
図5に示されるように、プリフォーマ2の第3合流部12には、第4の流路8dが上方から接続されている。即ち、
図4によく示されるように、第4の流路8dは、プリフォーマ2の空間を区画するケースを貫通するように接続されている。
【0034】
第4の流路8dは、第4の押出機M4に接続される入り口5dと、下流側に向かって断面積が減少する上下方向にのびる上流部13と、該上流部13に連なる中流部14と、該中流部14と屈曲して接続されプリフォーマ2内をトレッドゴムTGの押出方向Zに沿ってのびる下流部15と、下流部15の端部に設けられかつプリフォーマ2内で開口する吐出口7dとを含む。
【0035】
本実施形態において、中流部14は、
図6(a)及び(b)に示されるように、断面積が下流側に向かって漸増する傾斜部14aが形成されている。
【0036】
第4の流路8dの吐出口7dは、トレッドゴムTGの厚さ方向Yにのびており、かつ、厚さ方向Yと直交する幅W1が厚さ方向Yの長さh1よりも小さい線状の開口で形成されている。
【0037】
第4の流路8dの下流部15には、その吐出口7dと反対側の外表面(ゴム押出方向Zの上流側の外表面)に、上流側から押し出されたゴムを幅方向Xに2つに分割するためのキール部18が形成されている。このキール部18は、プリフォーマ2内において、厚さ方向Yの全範囲にわたって設けられている。また、キール部18は、好ましくは、ゴム押出方向Zの上流側に向かってテーパー状に形成される。
【0038】
図5に示されるように、第2合流部11で得られたゴム積層体は、プリフォーマ2内をゴム押出方向Zに沿って進み、第4の流路8dの背面側のキール部18に接触する。このキール部18によって、ゴム積層体は、プリフォーマ2内で幅方向Xに2つに分断される。この分断により、左右に分割された側部領域Rb、Rbが形成される。各側部領域Rbは、ゴム押出方向Zの下流側へとさらに押し出される。そして、これらの左右の側部領域Rbの間の空間に位置する吐出口7dから、導電端子ゴムG4が吐出される。
【0039】
本発明では、導電端子ゴムG4のトレッドゴムTGの厚さ方向Yの速度分布を実質的に一定として吐出口7dから吐出することを特徴としている。
【0040】
発明者らの種々の実験の結果、導電端子ゴムG4の厚さ方向Yの速度分布において、吐出速度が速い位置では、線状領域Raの幅が大きくなり、逆に、導電端子ゴムG4の吐出速度が遅い位置では、線状領域Raの幅が小さくなることが判明した。従って、線状をなす吐出口7dからプリフォーマ2内に、トレッドゴムの厚さ方向Yの速度分布を実質的に一定として導電端子ゴムG4(第1のゴム材料)を吐出することにより、精度良く略一定幅の線状領域を安定的に形成することができる。
【0041】
図7(a)には、第4の流路8dの中流部14乃至下流部14の縦断面図が示されている。また、
図7(b)及び(c)には、中流部14である
図7(a)のC−C’部、及び、吐出口7dであるD−D’部の導電端子ゴムG4の速度分布図が示されている。なお、
図7の速度分布図は、コンピュータを用いた流体シミュレーションの結果に基づいている。
【0042】
中流部14を流れる導電端子ゴムG4は、
図7(b)に示される速度分布を持っている。この速度分布は、吐出部7dにおいて、
図7(c)のような速度分布へと変化する。導電端子ゴムG4の速度は、吐出口7dで減速しているが、厚さ方向Yでの速度分布は実質的に一定の状態であることが保持されている。
【0043】
ここで、導電端子ゴムG4は、第4の流路8dの壁面との間では接触摩擦によって速度が減少される。従って、本明細書において、導電端子ゴムG4について、「厚さ方向Yで速度分布が実質的に一定」とは、吐出口7dの厚さ方向Yの区間D−D’において、両端から厚さ方向の距離の12.5%をそれぞれ排除した区間Kにおいて、導電端子ゴムG4の最大速度vmaxと最低速度vminとの差vmax−vminが、最大速度vmaxの50%以下の場合として定義される。好ましくは、前記速度差は、40%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0044】
上述のような速度分布で導電端子ゴムG4を吐出するためには、例えば、導電端子ゴムG4が流れる第4の流路8dの形状を以下のように改善することが望ましい。
【0045】
先ず、第4の流路8dの上流部13については、断面積が下流側に向かって減少するのが望ましい。このような上流部13は、断面積の減少にともなって、導電端子ゴムG4の流れる速度を加速させることができる。
【0046】
また、第4の流路8dの中流部14の下端では、上流部13を上下に流れていた導電端子ゴムG4が、トレッドゴムTGの押出方向に沿って90度向きを変えして押し出される。このとき、中流部14に、少なくとも屈曲の内側となるコーナ部に、下方に向かって幅が広がる向きで傾斜する傾斜部14aを設けるのが望ましい。このような傾斜部14aは、トレッドゴムの押出方向に屈曲する導電端子ゴムG4の内回り側(上部側)の速度を遅らせる。
【0047】
一方、吐出口7dは、
図6に示されるように、幅w1が一定であり、この幅w1で厚さ方向Yにのびている。また、下流部15は、流路高さがゴム押出方向の下流側に向かって漸増している。本実施形態の下流部15の底面側には、下方に向かって下流側に傾斜する傾斜面15aが形成されている。このような下流部15は、導電端子ゴムG4が90度屈曲する際、その外回り側(下部側)の速度を加速させ、下流部15内で導電端子ゴムG4が滞流するのを防ぐ。
【0048】
以上のような第4の流路8dを介して導電端子ゴムG4を吐出口7dから吐出させることにより、
図7(c)に示したように、吐出口7dでの導電端子ゴムG4の速度を、厚さ方向Yにおいて実質的に一定とすることができる。
【0049】
なお、
図3に示したように、トレッドゴムTGの断面における線状領域Raは、本実施形態では、接地面Tsと導電性のアンダーゴムG5との間を連通するものであればよい。しかし、線状領域Raの幅wが大きいと、タイヤのユニフォミティ等へ影響を及ぼすおそれがあり、線状領域Raの幅wが小さいと、摩耗等によって消失し、接地面とアンダーゴムG5の間が通電されなくなるおそれがある。これらの観点から、トレッドゴムTGの断面において、線状領域Raの幅wは、0.1〜1.0mmであるのが望ましい。
【0050】
また、線状領域Raの幅wは、導電端子ゴムG4の吐出速度と、該導電端子ゴムG4が側部領域Rbと合流するときの側部領域Rbの速度の影響を受ける。即ち、側部領域Rbの速度に対して導電端子ゴムG4の吐出速度が大きい場合、幅wが大きくなる傾向がある。逆に、側部領域Rbの速度に対して、導電端子ゴムG4の吐出速度が小さいと、幅wが小さくなる傾向にある。このような観点より、例えば、側部領域Rbの速度vsと、導電端子ゴムG4の吐出速度vとの比v/vsは、好ましくは0.5〜1.0が望ましい。
【0051】
以上、本実施形態について詳述したが、本発明はこのような実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。また、本実施形態では、トレッドゴムTGに一つの線状領域Raが形成される例を示したが、例えば、プリフォーマ2に導電端子ゴムを吐出しうる複数の第4の流路8dを並設し、これら複数の流路により、トレッドゴムTGの断面に複数の線状領域が形成されてもよい。また、側部領域Rbは、複数のゴム材料で構成されているが、1種のゴム材料で構成されても良い。
【実施例】
【0052】
本発明の効果を確認するために、
図1〜4に示した実施形態に記載の形状を基調とする押出装置を使用し、トレッドゴムの連続押出が行われた(実施例)。トレッドゴムは、
図8(a)に示されるように、導電端子ゴムからなる線状領域Raと、その両側の非導電性ゴムからなる側部領域Rb、Rbとからなる断面を具えている。
図8(b)乃至(d)は、第3の流路8dの吐出口7d付近において、
図8(a)のE乃至G断面での各ゴムの押出速度がシミュレーションによって計算され、各ゴムの速度がベクトルで表示されている。
【0053】
図8(b)乃至(d)に示されるように、実施例のものは、厚さ方向の各位置における断面において、線状領域Raのゴムの押出速度の分布が実質的に一定であった。また、線状領域Raと、線状領域Raに隣り合う側部領域Rbとのゴムの押出速度もほぼ等しかった。このため、線状領域Raの幅wが一定となった。
【0054】
また、比較例として、従来の押出装置を使用して、同様のトレッドゴムの連続押出を試み、同様のテストが行われた。その結果、
図9(a)に示されるように、線状領域Ra’の幅は、厚さ方向に大きく変化するものであった。また、
図9(b)乃至(d)には、
図9(a)のE’乃至G’の各位置でのゴムの押出速度がベクトルで表示されている。比較例では、トレッドゴムの厚さ方向の各位置において、線状領域Ra’の速度分布が実質的に一定となっていないことがわかる。