(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブレーキ制御手段は、前記ブレーキ予圧出力手段が前記ブレーキ予圧を発生させる駆動信号を出力しており、且つ前記ブレーキ検出手段がブレーキペダルの踏込みを検出後に該ブレーキペダルの開放を検出したとき、設定ディレー時間経過後に前記ブレーキ予圧を解除する信号を前記ブレーキ駆動手段に出力するブレーキ予圧解除制御手段を有する
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の車両用ブレーキ圧制御装置。
前記ブレーキ予圧解除制御手段は、前記設定ディレー時間内に前記アクセル開度検出手段でアクセルペダルの踏込みを検出した場合は、前記ブレーキ予圧を解除する信号を前記ブレーキ駆動手段に出力する
ことを特徴とする請求項3或いは4記載の車両用ブレーキ圧制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1に示すように、車両(自車両)1の4輪には、ブレーキ手段としてのディスクブレーキ2がそれぞれ設けられている。この各ディスクブレーキ2は、各車軸のハブに固定されて一体回転する回転部材としてのディスクロータ2a、車体に固定されてディスクロータ2aを挟持可能なキャリパ3を有している。
【0014】
図2に示すように、本実施形態で採用するディスクブレーキ2は対向ピストン式であり、キャリパ3のディスクロータ2aに対向する面に、シリンダ3aが各々形成され、このシリンダ3aにピストン3bが装着されている。更に、このピストン3bの前面に、ブレーキパッド4の裏金4aが固設され、この裏金4aに摩擦部材としてのパッド本体4bが固設されている。
【0015】
シリンダ3aとピストン3bとで閉塞されたブレーキシリンダ室3cに後述するブレーキ駆動部17からブレーキ液圧が供給されると、ピストン3bが押し出され、パッド本体4bにてディスクロータ2aを押圧挟持してブレーキ力が印加される。この両ブレーキパッド4は、リターンスプリング5にて互いに離間する方向へ付勢されており、ブレーキシリンダ室3cに供給されているブレーキ液圧を開放すると、ブレーキパッド4はリターンスプリング5の付勢力で互いに離間する方向へ後退し、パッド本体4bはディスクロータ2aに対して所定のブレーキクリアランスSを開けて対峙される。
【0016】
ディスクブレーキ2に印加されるブレーキ液圧は、基本的にはマスタシリンダ10から供給される。マスタシリンダ10は、ブレーキペダル10aの踏込み量や踏力に応じて、ブレーキ液を加圧するものである。尚、このマスタシリンダ10はエンジンの吸気管負圧を利用した真空倍力装置が設けられている。
【0017】
ところで、運転者がブレーキペダル10aを踏み込むと、マスタシリンダ10のブレーキ液が加圧され、ブレーキ駆動部17を介して4輪に設けられているディスクブレーキ2にブレーキ液圧が印加される。その際、ブレーキクリアランスSが狭小されて、パッド本体4bがディスクロータ2aを押圧するまでは、ブレーキ力が発生しない空時間となる。
【0018】
従って、パッド本体4bをディスクロータ2aに軽く接触させ、或いは近接させれば、ブレーキクリアランスSが0、或いは微小となり、ブレーキ応答性を向上させることができる。しかし、パッド本体4bを、常時、ディスクロータ2aに軽く接触させ、或いは近接させた状態は、ブレーキ引き摺りの発生を起因するので好ましくない。
【0019】
そのため、本実施形態では、運転者のブレーキペダル10aを踏み込むタイミング(ブレーキタイミング)を事前に感知し、ブレーキ操作が行われる直前に、リターンスプリング5の付勢力に抗して、ブレーキクリアランスSを0、或いは微小にすべく、パッド本体4bをディスクロータ2aに軽く接触させ、或いは近接させるブレーキ予圧をディスクブレーキ2のブレーキシリンダ室3cに供給し、運転者がブレーキペダル10aを踏み込む際の無効ストローク(空時間)が0、或いは僅少となるようにしている。
【0020】
このブレーキ予圧制御は、
図1に示すブレーキ制御手段としてのブレーキ用電子制御装置(BRK_ECU)11で実行される。このBRK_ECU11は、マイクロコンピュータを主体に構成され、周知のCPU、ROM、RAM、EEPROM等の不揮発メモリを有しており、CPUはROMに記憶されている制御プログラムに従い、ディスクブレーキ2にブレーキ予圧を供給し、或いは供給したブレーキ予圧を解除するタイミングを設定すると共に、後述するブレーキ予圧Pprを学習補正する学習補正係数Kprの更新を行う。尚、ROMには、制御プログラム以外に、テーブル、マップ等の各種固定データが格納されている。更に、不揮発メモリには、後述する学習補正テーブルが格納されている。
【0021】
又、車両1のフロントガラス内側上部には、車載カメラ12が設置されている。この車載カメラ12はメインカメラ12aとサブカメラ12bとを有するステレオカメラであり、この両カメラ12a,12bで、自車両1の走行方向前方の走行環境を撮影して監視する。そして、両カメラ12a,12bで撮影した画像が画像処理ユニット(IPU)13で所定に画像処理されて出力される。尚、この車載カメラ12とIPU13とで、本発明の走行環境認識手段が構成されている。
【0022】
上述したBRK_ECU11の入力ポートには、IPU13で処理した画像信号、車速センサ14で検出した自車両1の車速(自車速)Vsp、アクセル開度検出手段としてのアクセル開度センサ15で検出したアクセル開度θacc、及びブレーキペダル10aの踏込みでON動作するブレーキ検出手段としてのブレーキスイッチ16から出力されるON/OFF信号等が入力される。
【0023】
又、このBRK_ECU11の出力ポートには、ブレーキ駆動手段としてのブレーキ駆動部17が接続されている。このブレーキ駆動部17は、マスタシリンダ10と各ディスクブレーキ2との間に介装されて、各ディスクブレーキ2に供給されるブレーキ液圧を増減するハイドロリックコントロールユニット(HCU)を備えている。このHCUは、ブレーキ液を加圧するポンプ、蓄圧手段及びブレーキ液圧を調節するソレノイドバルブ等を備えている。
【0024】
ブレーキ駆動部17は、BRK_ECU11からブレーキ予圧信号を受信した場合、各ディスクブレーキ2に対して、予め設定されているブレーキ予圧Pprを供給し、ピストン3bを作動させて、ブレーキクリアランスSを0、或いは微小にする。換言すれば、パッド本体4bをディスクロータ2aに軽く摺接させ、或いは近接させる。尚、このブレーキ予圧Pprは車両毎に最適な値に調整されている。
【0025】
更に、ブレーキ駆動部17は、BRK_ECU11からブレーキ予圧解除信号を受信した場合、各ディスクブレーキ2に供給しているブレーキ予圧Pprを開放する。
【0026】
BRK_ECU11で実行されるブレーキ予圧Pprの供給制御は、具体的には、
図3に示すブレーキ予圧制御ルーチンに従って実行され、又、ブレーキ予圧Pprの解除制御は、
図4に示すブレーキ予圧解除制御ルーチンに従って実行され、学習補正係数Kprの更新は、
図5に示すブレーキ予圧学習補正係数更新ルーチンに従って設定される。
【0027】
図3に示すルーチンは、設定演算周期毎に実行され、先ず、ステップS1でIPU13から出力される画像信号を読込み、自車両1前方の走行環境を認識し、ブレーキ作動対象物を、周知のパターンマッチング法等を用いて所定に識別すると共に、自車両1とブレーキ作動対象物との間の実距離Lbrを求める。
【0028】
ここで、ブレーキ作動対象物とは、自車両1の進行方向前方において、運転者が感知した場合にブレーキ操作を行うであろう立体物を意味する。このブレーキ作動対象物を、
図7〜
図10に例示する。
図7は先行車、
図8は道路形状の例示であり、(a)はカーブ入り口、(b)は狭路入り口、
図9は白線の例示であり、(a)は赤色点灯している信号機手前の路上に描かれている停止線、(b)は優先道路に面する路面上に描かれている停止線、
図10は自車両1の進行方向前方の阻害物の例示であり、(a)は停止車両、(b)は路上を横切ろうとしている歩行者(猫等の動物も含む)である。尚、各図に一点鎖線で示す車両は、自車両1の所定時間経過後に移動した位置である。
【0029】
次いで、ステップS2へ進み、ブレーキ作動対象物が検出されたか否かを調べ、ブレーキ作動対象物が検出されている場合は、ステップS3へ進み、検出されていない場合は、ステップS11へジャンプする。尚、このステップS1,S2での処理が、本発明のブレーキ作動対象物検出手段に対応している。
【0030】
そして、ステップS3へ進むと、ブレーキ作動対象物と自車両1との相対車速Vreを求めて、ステップS4へ進む。ブレーキ作動対象物が停止線等の白線やカーブ等の固定物、路上を横断しようとする歩行者等の場合、相対車速Vre=自車速Vspとなる。尚、この相対車速Vreは、自車両1とブレーキ作動対象物との距離を時間微分して求める。
【0031】
その後、ステップS4へ進むと、相対車速Vreに基づき基本ブレーキ予圧作動距離Lbをテーブル参照により設定して、ステップS5へ進む。この基本ブレーキ予圧作動距離Lbは、一般的な運転者がブレーキペダル10aを踏み込むであろうタイミングを相対車速Vreに基づいて予め実験等から求め、このブレーキペダル10aを踏み込むタイミングに、予め設定した余裕距離m(例えば5〜10[m])を加算して、テーブル化したものである。
【0032】
ステップS5へ進むと、車速センサ14で検出した自車速Vspに基づいて、不揮発メモリに格納されている学習補正テーブルを参照して学習補正係数Kprを設定し、ステップS6へ進む。この学習補正係数Kprは、ブレーキ予圧作動タイミングを、自車両1を実際に運転している運転者に適応させるためのもので、学習補正テーブルに自車速Vsp毎に格納されている。尚、この学習補正係数Kprは、後述するブレーキ予圧学習補正係数更新ルーチンで順次更新される。
【0033】
そして、ステップS6へ進むと、基本ブレーキ予圧作動距離Lbを学習補正係数Kprで補正して、目標ブレーキ予圧作動距離Lprを設定し(Lpr←Kpr・Lb)、ステップS7へ進む。尚、ステップS3〜S6での処理が本発明の目標ブレーキ予圧作動距離設定手段に対応している。
【0034】
ステップS7では、自車両1とブレーキ作動対象物との間の実距離Lbrと目標ブレーキ予圧作動距離Lprとを比較し、目標ブレーキ予圧作動距離Lprが実距離Lbrに達したか否かを調べる。達していない場合は(Lbr>Lpr)、ステップS11へジャンプする。又、達した場合は(Lbr≦Lpr)、ステップS8へ進む。
【0035】
ステップS8では、アクセル開度センサ15で検出したアクセル開度θaccを読込み、アクセルペダル開放時のアクセル開度(開放時アクセル開度)θacoと比較する。そして、θacc>θacoの場合は、アクセルペダル(図示せず)が踏み込まれていると判定し、ステップS11へジャンプする。一方、θacc≦θacoの場合は、アクセルペダルが開放されている、すなわち、運転者がブレーキペダル10aを踏み込む直前であると判定し、ステップS9へ進む。
【0036】
ステップS9へ進むと、ブレーキ駆動部17に対してブレーキ予圧Pprを発生させる駆動信号を出力し、ステップS10へ進む。尚、ステップS7〜S9での処理が、本発明のブレーキ予圧出力手段に対応している。
【0037】
そして、ステップS10で、ブレーキ予圧フラグFbrをセットして(Fbr←1)、ルーチンを抜ける。すると、ブレーキ駆動部17から各ディスクブレーキ2のブレーキシリンダ室3cにブレーキ予圧Pprが供給され、この圧力にてピストン3bがリターンスプリング5の付勢力に抗して突出する。このブレーキ予圧Pprは、リターンスプリング5の付勢力に抗して、ブレーキクリアランスSが0、或いは微小となる値に設定されているため、パッド本体4bがディスクロータ2aに近接し、或いは軽く摺接される。
【0038】
パッド本体4bがディスクロータ2aに近接或いは軽く摺接しているため、運転者がブレーキペダル10aを踏み込んだ際の無効ストロークが0、或いは僅少となり、ブレーキフィーリングが向上する。
【0039】
一方、ステップS2、ステップS7、或いはステップS8からステップS11へ進むと、ブレーキ予圧フラグFbrをクリアして(Fbr←0)、ルーチンを抜ける。
【0040】
このブレーキ予圧フラグFbrは、
図4に示すブレーキ予圧解除制御ルーチンで読込まれる。尚、
図4に示すルーチンでの処理が、本発明のブレーキ予圧解除制御手段に対応している。
【0041】
このルーチンは、設定演算周期毎に実行され、先ず、ステップS21でブレーキ予圧フラグFbrの値を参照し、セットされている場合、すなわち、各ディスクブレーキ2にブレーキ予圧Pprが供給されている場合は(Fbr=1)、ステップS22へ進み、クリアされている場合は(Fbr=0)、ステップS30へジャンプする。
【0042】
ステップS22へ進むと、ブレーキスイッチ16の信号を読込み、OFFの場合、ブレーキペダル10aが開放されていると判定し、ステップS23へ分岐する。又、ONの場合、ブレーキペダル10aが踏み込まれていると判定し、ステップS24へ進む。
【0043】
ステップS23へ進むと、アクセル開度θaccと開放時アクセル開度θacoとを比較して、アクセルペダルが踏み込まれているか否かを調べ、開放されている場合(θacc≦θaco)、ルーチンを抜け、ブレーキ予圧Pprの供給を継続させる。一方、アクセルペダルが踏み込まれている場合(θacc>θaco)、ステップS29へジャンプする。
【0044】
又、ステップS24へ進むと、ブレーキスイッチ16の信号を読込み、ONの場合はステップS25へ進み、ディレータイマのカウント値Timの計時をクリアして(Tim←0)、ステップS24へ戻る。従って、ブレーキスイッチ16がOFFするまで、すなわち、運転者がブレーキペダル10aを開放するまでは、実質的に待機状態となる。
【0045】
そして、ブレーキスイッチ16がOFFしたとき、ステップS26へ進み、ディレータイマのカウント値Timをインクリメントし(Tim←Tim+1)し、ステップS27へ進む。ステップS27では、アクセル開度θaccと開放時アクセル開度θacoとを比較して、アクセルペダルが踏み込まれているか否かを調べ、開放されている場合(θacc≦θaco)、ステップS28へ進み、又、アクセルペダルが踏み込まれている場合(θacc>θaco)、ステップS29へジャンプする。
【0046】
ステップS27からステップS28へ進むと、カウント値Timと設定ディレー時間To(例えば、2〜5[sec])とを比較し、設定ディレー時間Toに達していない場合(Tim<To)、ステップS24へ戻る。従って、設定ディレー時間To内に運転者がブレーキペダル10aを踏み込んだ場合、上述したステップS25でディレータイマのカウント値Timがクリアされるため、例えば、運転者がポンピングブレーキ操作を行っても、その都度、ブレーキ予圧Pprが解除されてしまうことはなく、良好なブレーキフィーリングを得ることができる。
【0047】
そして、カウント値Timが設定ディレー時間Toに達したとき(Tim=To)、ステップS28からステップS29へ進む。ステップS23、ステップS27、或いはステップS28からステップS29へ進むと、ブレーキ予圧フラグFbrをクリアし(Fbr←0)、ステップS30へ進む。
【0048】
その後、ステップS21、或いはステップS29からステップS30へ進むと、ブレーキ予圧Pprを解除する信号をブレーキ駆動部17へ出力してルーチンを抜ける。すると、ブレーキ駆動部17は、各ディスクブレーキ2に供給していたブレーキ予圧Pprを開放し、ブレーキ液圧を初期圧まで減圧させる。その結果、パッド本体4bは、リターンスプリング5の付勢力でブレーキクリアランスSだけ後退した初期位置に戻される。
【0049】
従って、設定ディレー時間To内であっても、運転者がアクセルペダルを踏み込むと、上述したステップS27からステップS29を経てステップS30へ進むため、ディスクブレーキ2に供給されているブレーキ予圧Pprは直ちに解除される。その結果、減速後の加速運転においてブレーキ引き摺りが発生せず、動力性能の低下を防止することができる。
【0050】
次に、
図5に示すブレーキ予圧学習補正係数更新ルーチンについて説明する。尚、このブレーキ予圧学習補正係数更新ルーチンでの処理が、本発明のブレーキ予圧学習補正係数更新手段に対応している。
【0051】
このルーチンでは、先ず、ステップS31で、ブレーキ予圧フラグFbrの値を読込み、セットされているか否かを調べる。そして、セットされている場合(Fbr=1)、ステップS32へ進み、クリアされている場合(Fbr=0)、そのままルーチンを抜ける。
【0052】
ステップS32へ進むと、ブレーキスイッチ16の信号を読込み、OFFからONに切り替わったか否かを調べる。そして、切り替わっていない場合は、学習することなく、そのままルーチンを抜ける。一方、ブレーキスイッチ16がOFFからONに切り替わったとき、すなわち、運転者がブレーキペダル10aを踏み込んだときはステップS33へ進む。
【0053】
ステップS33では、
図3のステップS6で設定した最新の目標ブレーキ予圧作動距離Lprと、現在のブレーキ作動対象物までの実距離Lbrとの差分(Lpr−Lbr)が、余裕距離mを中心とする不感帯幅±γ(例えば、γ=2〜3[m])内にあるか否かを調べる。そして、差分(Lpr−Lbr)が、設定範囲(m±γ)内にある場合(Lpr−Lbr=m±γ)は、学習することなく、そのままルーチンを抜ける。外れているときは、ステップS34へ進み、差分(Lpr−Lbr)と設定範囲(m±γ)とを比較し、Lpr−Lbr>m±γの場合は、ステップS35へ進む。一方、Lpr−Lbr<m±γの場合は、ステップS36へ進む。
【0054】
ステップS35では、
図3のステップS5で設定した学習補正係数Kprから設定値β1を減算し、新たな学習補正係数Kprを設定して(Kpr←Kpr−β1)、ステップS37へ進む。又、ステップS36では、
図3のステップS5で設定した学習補正係数Kprに設定値β2を加算し、新たな学習補正係数Kprを設定して(Kpr←Kpr+β2)、ステップS37へ進む。この両設定値β1,β2は、同じ値であっても、異なる値であってもよく、本実施形態では、0.1〜0.2程度に設定されている。尚、学習補正テーブルの車速Vsp毎に格納されている各学習補正係数Kprの初期値は1である。
【0055】
そして、ステップS35、或いはステップS36からステップS37へ進むと、
図3のステップS5で読込んだ自車速Vspに対応するアドレスに格納されている学習補正係数Kprを、今回求めた新たな学習補正係数Kprで更新してルーチンを抜ける。
【0056】
この学習補正係数Kprは、運転者が自車両1を運転するに従い徐々に更新され、最終的には、運転者固有の学習補正係数Kprが車速Vsp毎に設定される。そのため、運転者が自車両1を継続的に運転することで、運転者固有のブレーキタイミングを事前に感知し、最適なタイミングでブレーキ予圧Pprの供給を開始させることができるようになる。
【0057】
次に、
図6に示すタイミングチャートを参照して、ブレーキ予圧制御動作、及びブレーキ予圧解除制御動作の一例を示す。自車両1とブレーキ作動対象物との実距離Lbrが、目標ブレーキ予圧作動距離Lprに達するとブレーキ予圧フラグFbrがセットされると共に、ブレーキ駆動部17から各ディスクブレーキ2に対してブレーキ予圧Pprが供給され、パッド本体4bとディスクロータ2aとの間のブレーキクリアランスSが0、或いは微小にされる。
【0058】
従って、運転者がブレーキペダル10aを踏み込む際には、ブレーキクリアランスSによって生じる無効ストローク(空時間)が殆ど無いため、良好なブレーキフィーリングを得ることができる。又、このブレーキ予圧Pprは、運転者がブレーキペダル10aを踏み込んでいる間は継続して供給されているため、運転者のブレーキ操作に違和感を与えることがない。更に、このブレーキ予圧Pprは、運転者のブレーキ操作を事前に感知して供給するようにしているため、通常は供給されておらず、従って、ブレーキ引き摺りが発生せず、車両1の動力性能の低下や、不要なパッド本体4bの摩耗を回避することができ、燃費を向上させることができる。
【0059】
又、ブレーキ駆動部17から供給するブレーキ液圧によりブレーキクリアランスSを0、或いは微小にするようにしているため、マスタシリンダ10、ディスクブレーキ2、ブレーキ液圧回路等のブレーキ系に特別な部品を装備する必要が無く、部品点数の削減、構造の簡素化により製品コストの低減を図ることができる。
【0060】
一方、運転者がブレーキペダル10aに対する踏力を解除した後も、ブレーキ予圧Pprを直ちに解除せず、設定ディレー時間Toを設定し、この設定ディレー時間To内に運転者が再度ブレーキペダル10aを踏み込んだ場合、ディレータイマのカウント値Timがクリアされるため(Tim←0)、ブレーキ予圧Pprは継続して供給されることとなる。従って、運転者が減速走行中にポンピングブレーキ操作を行っても、ブレーキクリアランスSが0、或いは微小に保持されているので無効ストロークが発生することはなく、良好なブレーキフィーリングを得ることができる。
【0061】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、自車両1の前方の走行環境は、車載カメラ12で撮影した画像に基づいて認識するばかりで無く、ミリ波レーダやレーザレーダによって検出するようにしても良い。更に、ブレーキ予圧Pprは、運転者が好みに応じて設定するようにしても良く、或いは、車速感応型としてもよい。車速感応型にでは、車速が低い場合は低い値のブレーキ予圧Pprを設定し、車速が高くなるに従い、高い値のブレーキ予圧Pprに設定するようにしても良い。同様に、余裕距離mを運転者の好みに応じて可変設定するようにしても良い。
【0062】
又、ブレーキ手段は、液圧式ドラムブレーキであってもよく、この場合、回転部材はブレーキドラム、摩擦部材はブレーキシューがそれぞれ対応し、ブレーキドラムとブレーキシュートの間がブレーキクリアランスとなる。