特許第5764120号(P5764120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764120
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20150723BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20150723BHJP
   B01J 23/656 20060101ALI20150723BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20150723BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20150723BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20150723BHJP
   F01N 3/02 20060101ALI20150723BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20150723BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   B01D39/20 DZAB
   B01D46/00 302
   B01J23/656 A
   B01J35/04 301C
   B01D53/86 100
   F01N3/02 301C
   F01N3/02 301E
   F01N3/02 321A
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-509530(P2012-509530)
(86)(22)【出願日】2011年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2011058078
(87)【国際公開番号】WO2011125768
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2013年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-81900(P2010-81900)
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 貴志
(72)【発明者】
【氏名】永田 晃士
(72)【発明者】
【氏名】宮入 由紀夫
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−154223(JP,A)
【文献】 特開2002−188435(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/078799(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20、46/00、53/86
B01J 23/656、35/04
F01N 3/02−035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体に含まれる固体成分を捕集・除去するハニカムフィルタであって、
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部の平均細孔径よりも小さい平均粒径で構成された粒子群により前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集・除去する層である捕集層と、を備え、
前記隔壁部の上流領域には、入口側の前記セルである入口セルの長さの割合で5%以上30%以下の少なくとも前記捕集層が形成されていない領域である未製膜領域が存在する、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記隔壁部の上流領域には、前記流体の流通方向に垂直な断面における前記セルの面積の割合で10%以上の前記未製膜領域が存在する、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記捕集層は、気体を搬送媒体とし該捕集層の原料である無機材料を前記セルへ供給することにより形成されている、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記隔壁部は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記捕集層は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記ハニカムフィルタは、前記隔壁部及び前記捕集層を有する2以上のハニカムセグメントが接合層によって接合されて形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記隔壁部及び前記捕集層のうち少なくとも一方には、触媒が担持されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハニカムフィルタとしては、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセルと、一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口するセルとが交互に配設されるよう形成された多孔質の隔壁部と、この隔壁部上に形成された排ガスに含まれる粒子状物質(以下PMとも称する)を捕集・除去する層が形成されているものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。このハニカムフィルタでは、捕集層によりPMを捕集することにより、圧力損失を低減させつつPMの捕集を行うことができる。
【0003】
また、隔壁部上に捕集層を形成したものにおいて、排ガスの流れ方向におけるハニカムフィルタの中央領域の膜厚が薄くなるように捕集層を形成したものが提案されている(例えば、特許文献4参照)。このハニカムフィルタでは、通常排ガスが透過しにくい中央領域の隔壁の透過抵抗を下げることにより、中央領域の排ガスの透過性を高めてこの領域でのPM堆積量を多くすることができ、例えばPMの燃焼除去時の下流側での温度上昇などをより低減することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−216226号公報
【特許文献2】特開平6−33734号公報
【特許文献3】特開平1−304022号公報
【特許文献4】WO2008/136232号公報
【発明の開示】
【0005】
ところで、このようなハニカムフィルタにおいて、例えば、未燃焼ガスを燃焼可能な触媒を隔壁部などに備える場合がある。このような場合、ハニカムフィルタの温度を上昇させて未燃焼ガスの浄化を行うことがある。あるいは、ハニカムフィルタの温度を上昇させて捕集したPMを燃焼除去することがある。このような場合に、特許文献1〜3のハニカムフィルタでは、捕集層を隔壁上に形成することによってPMの捕集性能が向上されているが、隔壁の透過抵抗がより高まることから、より下流側に排ガスが流通しやすく、ハニカムフィルタの全体の温度を上昇させにくかった。また、特許文献4では、中央領域で排ガスが流れやすく、下流側での温度上昇をより抑制することはできるが、上流側の捕集層の膜厚が厚く、ベンチュリ効果などにより、例えば高流量条件化などにおいては排ガスがより下流側へ流れるようになり、まだ十分でなく、ハニカムフィルタの昇温性を高めることが望まれていた。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、昇温性をより高めることができるハニカムフィルタを提供することを主目的とする。
【0007】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
即ち、本発明のハニカムフィルタは、
流体に含まれる固体成分を捕集・除去するハニカムフィルタであって、
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部の平均細孔径よりも小さい平均粒径で構成された粒子群により前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集・除去する層である捕集層と、を備え、
前記隔壁部の上流領域には、入口側の前記セルである入口セルの長さの割合で5%以上30%以下の少なくとも前記捕集層が形成されていない領域である未製膜領域が存在するものである。
【0009】
このハニカムフィルタでは、ハニカムフィルタの昇温性をより高めることができる。この理由は、以下のように推察される。例えば、隔壁部の上流領域には、入口セルの長さの割合で5%以上30%以下の少なくとも捕集層が形成されていない領域である未製膜領域が存在している。このように捕集層が形成されていない部分が上流領域にあることから、上流領域の隔壁部での透過抵抗がより低く、上流領域で流体が隔壁部を通過しやすい。このため、上流領域の隔壁部の熱が下流側へ伝達されるから、ハニカムフィルタの全体をより容易に昇温することができる。入口セル長さの割合が5%以上では、上流領域の隔壁部での流体の流通をより確保することができ、30%以下では、捕集層が十分存在し、捕集層の効果である圧力損失の低減をより行うことができる。ここで、「入口セル長さの割合」とは、入口セルの一端側であるハニカムフィルタ入口側端面部から入口セルの他端側である入口セルの出口端部の目封止部までの入口セルを「線」としてみたときに、未成膜領域が存在する領域の長さの積算値を入口セル全体の長さの積算値で除算し、100を乗算した値をいう。この「未製膜領域の長さ」は、入口セル内において捕集層の形成されていない領域を未成膜領域としてその長さを積算するものとする。
【0010】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部の上流領域には、前記流体の流通方向に垂直な断面における前記セルの面積の割合で10%以上の前記未製膜領域が存在するものとしてもよい。未製膜領域がセルの面積の割合で10%以上あると、透過抵抗の低さにより上流領域に流体が流通しやすく、隔壁部により多くの固体成分が捕集され、更に加熱された流体も通過しやすく、この固体成分が燃焼して下流に熱を伝えるため、ハニカムフィルタの昇温性を更に高めることができる。
【0011】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記捕集層は、気体を搬送媒体とし該捕集層の原料である無機材料を前記セルへ供給することにより形成されているものとしてもよい。こうすれば、気体による搬送を利用して、比較的容易に捕集層の厚さを制御することができる。
【0012】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。また、前記捕集層は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。
【0013】
本発明のハニカムフィルタは、前記隔壁部及び前記捕集層を有する2以上のハニカムセグメントが接合層によって接合されて形成されているものとしてもよい。
【0014】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部及び前記捕集層のうち少なくとも一方には、触媒が担持されているものとしてもよい。こうすれば、捕集した固体成分の燃焼除去など、流体に含まれる成分の浄化をより効率よく行うことができる。このとき、前記触媒は、前記流体に含まれる、炭素を含有した未燃焼成分を燃焼するものとしてもよい。こうすれば、流体をより浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。
図2】SEM観察による捕集層の厚さの算出方法の説明図である。
図3】捕集層24の形成厚の測定位置の説明図である。
図4】ハニカムフィルタ20のPM堆積及び再生処理時の概念図である。
図5】ハニカムフィルタ40の構成の概略の一例を示す説明図である。
図6】未製膜領域長さ割合に対する浄化効率の測定結果である。
図7】未製膜領域長さ割合に対するPM堆積時の圧力損失の測定結果である。
図8】断面内未製膜領域面積割合に対する浄化効率の測定結果である。
図9】断面内未製膜領域面積割合に対するPM堆積時の圧力損失の測定結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のハニカムフィルタの一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。図2は、SEM観察による捕集層の厚さの算出方法の説明図であり、図3は、捕集層24の形成厚の測定位置の説明図である。本実施形態のハニカムフィルタ20は、図1に示すように、隔壁部22を有する2以上のハニカムセグメント21が接合層27によって接合された形状を有し、その外周に外周保護部28が形成されている。なお、図1には、ハニカムフィルタ20の外形が円柱状に形成され、ハニカムセグメント21の外形が矩形柱状に形成され、セル23が矩形状に形成されているものを一例として示す。このハニカムフィルタ20は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止部26により目封止され、流体としての排ガスの流路となる複数のセル23を形成する隔壁部22と、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径で構成された粒子群により隔壁部22上に形成され排ガスに含まれる固体成分(PMとも称する)を捕集・除去する層である捕集層24と、を備えている。このハニカムフィルタ20では、隔壁部22は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセル23と一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口したセル23とが交互に配置されるよう形成されている。このハニカムフィルタ20では、流体としての排ガスの入口側のセル23の内壁に捕集層24が形成されている。ハニカムフィルタ20では、入口側のセル23へ入った排ガスが捕集層24及び隔壁部22を介して出口側のセル23を通過して排出され、このとき、排ガスに含まれるPMが捕集層24上に捕集される。なお、捕集層24の粒子群の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で捕集層24を観察し、撮影した画像に含まれる捕集層24の各粒子を計測して求めた平均値をいうものとする。また、原料粒子における平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として原料粒子を測定したメディアン径(D50)をいうものとする。
【0017】
ハニカムフィルタ20は、隔壁部22の厚さである隔壁厚さtpが150μm以上460μm以下で形成されているものとしてもよい。隔壁厚さtpが150μm以上では、フィルタとしての熱容量が大きくなるため、ハニカムフィルタ20の再生時に許容されるPMの堆積量である再生限界をより高めることができる。また、隔壁厚さtpが460μm以下では、隔壁の透過抵抗をより抑えられ、圧力損失の上昇をより抑制することができる。なお、再生限界とは、堆積したPMの燃焼除去時(再生処理時)に、ハニカムフィルタ内部の最高温度が所定の許容温度(例えば1000℃)に到達するPM堆積量とすることができる。この隔壁厚さtpは、200μm以上400μm以下であることがより好ましく、280μm以上350μm以下であることが更に好ましい。この隔壁部22は、多孔質であり、例えば、コージェライト、Si結合SiC、再結晶SiC、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このうち、コージェライトやSi結合SiC、再結晶SiCなどが好ましい。隔壁部22は、その気孔率が30体積%以上85体積%以下であることが好ましく、35体積%以上65体積%以下であることがより好ましい。この隔壁部22は、その平均細孔径が10μm以上60μm以下の範囲であることが好ましい。この隔壁部22の気孔率や平均細孔径は、水銀圧入法により測定した結果をいうものとする。このような気孔率、平均細孔径、厚さで隔壁部22を形成すると、排ガスが通過しやすく、PMを捕集・除去しやすい。
【0018】
ハニカムフィルタ20は、捕集層24が形成されている捕集層形成領域において、捕集層24の粒子群の厚さの平均値である平均厚さが5μm以上80μm以下で形成されていることが好ましい。平均厚さが5μm以上では、捕集層24にてPMを十分に捕集することができ、PMの堆積していない初期状態で十分な捕集効率を得ることができる。また、平均厚さが80μm以下では、堆積したPM層が厚くなりすぎず、また捕集層自体の透過抵抗も大きくならず、圧力損失の増加を抑制でき好ましい。平均厚さは、20μm以上60μm以下がより好ましく、30μm以上50μm以下がより好ましい。捕集層24は、無機材料の粒子群から形成されており、隔壁部22の表面に均一な層として形成されていてもよいし、隔壁部22の表面に部分的な層として形成されていてもよい。
【0019】
ハニカムフィルタ20には、隔壁部22の上流領域には、入口セル23の長さの割合で5%以上30%以下の少なくとも捕集層24が形成されていない領域である未製膜領域32が存在する。このように捕集層24が形成されていない部分が上流領域にあることから、上流領域の隔壁部22での透過抵抗がより低く、上流領域において熱を有する排ガスが隔壁部22を通過しやすい。このため、上流領域の隔壁部22の熱が下流側へ伝達されやすいから、より容易にハニカムフィルタ20の全体を昇温することができる。入口セル長さの割合が5%以上では、上流領域での排ガスの隔壁部22の流通をより確保することができ、30%以下では、捕集層24が十分存在し、捕集層24の効果である圧力損失の低減をより行うことができる。ここで、「入口セル長さの割合」とは、入口セルの一端側であるハニカムフィルタ入口側端面部から入口セルの他端側である入口セルの出口端部の目封止部までの入口セルを「線」としてみたときに、未成膜領域32が存在する領域の長さの積算値を入口セル全体の長さの積算値で除算し、100を乗算した値をいう。この「未製膜領域の長さ」は、入口セル内において捕集層の形成されていない領域を未成膜領域としてその長さを積算するものとする。また、「捕集層の形成されていない領域」とは、捕集層が全く形成されていない領域であるものとしてもよい。
【0020】
ハニカムフィルタ20において、隔壁部22の上流領域には、排ガスの流通方向に垂直な断面におけるセル23の面積の割合で10%以上の未製膜領域32が存在するものとしてもよい。未製膜領域32がセル23の面積の割合で10%以上あると、透過抵抗の低さにより上流領域の隔壁部22で排ガスが流通しやすく、隔壁部22により多くのPMが捕集され、更に加熱された排ガスも通過しやすく、このPMが燃焼して下流に熱を伝えるため、ハニカムフィルタの昇温性を更に高めることができる。この未製膜領域32におけるセル23の面積の割合は、30%以上であることがより好ましい。こうすれば、より顕著に昇温速度を向上させることができ、例えば未燃焼ガス成分(HC(Hydro Carbon)やCOなど)の浄化性能や捕集したPMの燃焼除去性能が向上する。未成膜領域32は、断面内のどの部分であっても燃焼による高温が伝播していくが、重心点近傍にあるとその伝播がより効率的に行えるため好ましい。
【0021】
ここで、捕集層24の厚さや、ハニカムフィルタ20の上流、中流、下流領域などについて説明する。まず、捕集層24の厚さの測定方法について図2を用いて説明する。捕集層24の厚さ、換言すると捕集層を構成する粒子群の厚さは、以下のようにして求めるものとする。ここでは、ハニカムフィルタ20の隔壁基材を樹脂埋めした後に研磨した観察用試料を用意し、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い得られた画像を解析することによって捕集層の厚さを求める。まず、流体の流通方向に垂直な断面を観察面とするように切断・研磨した観察用試料を用意する。次に、SEMの倍率を100倍〜500倍に設定し、後述する測定位置において、視野をおよそ500μm×500μmの範囲として用意した観察用試料の観察面を撮影する。次に、撮影した画像において、隔壁の最外輪郭線を仮想的に描画する。この隔壁の最外輪郭線とは、隔壁の輪郭を示す線であって、隔壁表面(照射面、図2上段参照)に対して垂直の方向からこの隔壁表面に仮想平行光を照射したものとしたときに得られる投影線をいうものとする(図2中段参照)。即ち、隔壁の最外輪郭線は、光が当たっているものとする高さの異なる複数の隔壁上面の線分と、隣り合う高さの異なる隔壁上面の線分の各々をつなぐ垂線とにより形成される。この隔壁上面の線分は、例えば、100μmの長さの線分に対して5μmの長さ以下の凹凸については無視する「5%解像度」により描画するものとし、水平方向の線分が細かくなりすぎないようにするものとする。また、隔壁の最外輪郭線を描画する際には、捕集層の存在については無視するものとする。続いて、隔壁の最外輪郭線と同様に、捕集層を形成する粒子群の最外輪郭線を仮想的に描画する。この粒子群の最外輪郭線とは、捕集層の輪郭を示す線であって、捕集層表面(照射面、図2上段参照)に対して垂直の方向からこの捕集層表面に仮想平行光を照射したものとしたときに得られる投影線をいうものとする(図2中段参照)。即ち、粒子群の最外輪郭線は、光が当たっているものとする高さの異なる複数の粒子群上面の線分と、隣り合う高さの異なる粒子群上面の線分の各々をつなぐ垂線とにより形成される。この粒子群上面の線分は、例えば、上記隔壁と同じ「解像度」により描画するものとする。多孔性の高い捕集層では、樹脂埋めして研磨して観察用試料を作製すると、空中に浮いているように観察される粒子群もあることから、このように仮想光の照射による投影線を用いて最外輪郭線を描画するのである。続いて、描画した隔壁の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて隔壁の最外輪郭線の平均線である隔壁の標準基準線を求める(図2下段参照)。また、隔壁の標準基準線と同様に、描画した粒子群の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて粒子群の最外輪郭線の平均線である粒子群の平均高さを求める(図2下段参照)。そして、得られた粒子群の平均高さと隔壁の標準基準線との差をとり、この差(長さ)を、この撮影画像における捕集層の厚さ(粒子群の厚さ)とする。このようにして、捕集層の厚さを求めることができる。
【0022】
また、ハニカムフィルタ20の上流、中流、下流領域とは、図3に示すように、ハニカムフィルタ20の流路方向に対して上流側、中央側及び下流側に3分割した領域をいうものとする。このとき、例えば、矩形のハニカムセグメント21において、捕集層の厚さは、ハニカムフィルタ20の入口側の端面から排ガスの流通方向に1mmピッチごとの断面を観察して捕集層があるか否かを判定し、捕集層が形成されているとされた位置から、排ガスの流通方向に10mmピッチごとの断面において捕集層の厚さを測定し、測定された値の平均値を捕集層の厚さとする。このとき、ハニカムセグメント21の入口側の端面から排ガスの流通方向に複数の断面を観察して捕集層があるか否かを判定し、捕集層が形成されていないと判定した範囲をそのセルの未製膜領域の長さとする。観察した断面において複数の未製膜領域の長さを測定し、平均した値をこのハニカムセグメント21の未製膜領域の長さとし、ハニカムセグメント21の未製膜領域の長さの平均をハニカムフィルタ20の未製膜領域の長さとする。そして、セルの長さに対する未製膜領域の平均長さを算出し、未製膜領域のセルの長さ割合とする。具体的には、例えば、10cmの長さのセルが3本有り、各セルの未製膜領域の長さがそれぞれ、2cm,3cm,4cmであるときには、未製膜領域の平均長さは(2+3+4)/3=3cmであり、未製膜領域の長さ割合は(2+3+4)/(10×3)×100=30%のように計算する。また、観察した断面方向に対して、ハニカムセグメント21の重心から最外周セルまでの全領域のセルについて捕集層の有無を測定し、全領域のセル面積に対する捕集層があるセル面積の割合を算出するものとする。
【0023】
捕集層24は、平均細孔径が、0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、気孔率が40体積%以上95体積%以下であることが好ましく、捕集層を構成する粒子の平均粒径が0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。平均細孔径が0.2μm以上であればPMが堆積していない初期の圧力損失が過大になるのを抑制することができ、10μm以下であれば捕集効率が良好なものとなり、捕集層24を通り抜け細孔内部にPMが到達するのを抑制可能であり、PM堆積時の圧力損失低減効果の低下を抑制することができる。また、気孔率が40体積%以上であると、PMが堆積していない初期の圧力損失が過大となるのを抑制することができ、95体積%以下では耐久性のある捕集層24としての表層を作製することができる。また、捕集層を構成する粒子の平均粒径が0.5μm以上であれば捕集層を構成する粒子の粒子間の空間のサイズを十分に確保可能であるため捕集層の透過性を維持でき急激な圧力損失の上昇を抑制することができ、15μm以下であれば粒子同士の接触点が十分に存在するから粒子間の結合強度を十分に確保可能であり捕集層の剥離強度を確保することができる。このように、良好なPM捕集効率の維持、PM捕集開始直後の急激な圧力損失上昇防止、PM堆積時の圧力損失低減、捕集層の耐久性を実現することができる。この捕集層24は、排ガスの入口側セル及び出口側セルの隔壁部22に形成されているものとしてもよいが、図1に示すように、入口側セルの隔壁部22上に形成されており、出口側セルには形成されていないものとするのが好ましい。こうすれば、より圧力損失を低減して流体に含まれているPMをより効率よく除去することができる。また、ハニカムフィルタ20の作製が容易となる。この捕集層24は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、捕集層24は、隔壁部22と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。この捕集層24は、セラミック又は金属の無機繊維を70重量%以上含有しているものとするのがより好ましい。こうすれば、繊維質によりPMを捕集しやすい。また、捕集層24は、無機繊維がアルミノシリケート、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びムライトから選択される1以上の材料を含んで形成されているものとすることができる。
【0024】
ここで、捕集層24の平均細孔径及び気孔率は、SEM観察による画像解析によって求めるものとする。上述した捕集層の厚さと同様に、図2に示すように、ハニカムフィルタ20の断面をSEM撮影して画像を得る。次に、隔壁の最外輪郭線と粒子群の最外輪郭線との間に形成される領域を捕集層の占める領域(捕集層領域)とし、この捕集層領域のうち、粒子群の存在する領域を「粒子群領域」とすると共に、粒子群の存在しない領域を「捕集層の気孔領域」とする。そして、この捕集層領域の面積(捕集層面積)と、粒子群領域の面積(粒子群面積)とを求める。そして、粒子群面積を捕集層面積で除算し100を乗算することにより、得られた値を捕集層の気孔率とする。また、「捕集層の気孔領域」において、粒子群及び隔壁の最外輪郭線と粒子群の外周とに内接する内接円を直径が最大になるように描く処理を行う。このとき、例えばアスペクト比の大きい長方形の気孔領域など、1つの「捕集層の気孔領域」に複数の内接円を描くことができるときには、気孔領域が十分に埋められるように、できるだけ大きい内接円を複数描くものとする。そして、観察した画像範囲において、描いた内接円の直径の平均値を捕集層の平均細孔径とするものとする。このようにして、捕集層24の平均細孔径及び気孔率を求めることができる。
【0025】
捕集層24の形成方法は、気体(空気)を捕集層の原料の搬送媒体とし、捕集層の原料を含む気体を入口セルへ供給するものとしてもよい。こうすれば、捕集層を構成する粒子群がより粗に形成されるため、極めて高い気孔率の捕集層を作製することができ、好ましい。捕集層の原料は、例えば、無機繊維や無機粒子を用いてもよい。あるいは、無機繊維は上述したものを用いることができ、例えば平均粒径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であるものが好ましい。無機粒子としては、上述した無機材料の粒子を用いることができる。例えば、平均粒径が0.5μm以上15μm以下のSiC粒子やコージェライト粒子を用いることができる。このとき、隔壁部22と捕集層24との無機材料を同じ材質とすることが好ましい。また、捕集層24の形成において、無機繊維や無機粒子と共に結合材も供給してもよい。結合材としてはゾル材料、コロイド材料から選択でき特にコロイダルシリカを用いることが好ましい。無機粒子はシリカにより被覆されており且つ無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とがシリカにより結合されていることが好ましい。例えば、コージェライトやチタン酸アルミニウムなどの酸化物材料の場合には、無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とが焼結により結合されているのが好ましい。捕集層24は、隔壁部22上に原料の層を形成したあと、熱処理を行い結合することが好ましい。熱処理での温度としては、例えば650℃以上1350℃以下の温度とするのが好ましい。熱処理温度が650℃以上では十分な結合力を確保することができ、1350℃以下であると過度な粒子の酸化による細孔の閉塞を抑制することができる。なお、捕集層24の形成方法は、例えば、捕集層24の原料になる無機粒子を含むスラリーを用いてセル23の表面に形成するものとしてもよい。
【0026】
また、捕集層24の形成では、気体の流通を阻害する成分を上流領域の隔壁部22に含ませて、気体により捕集層24の原料粒子をセル23へ供給するものとしてもよい。こうすると、阻害成分により上流領域での捕集層24の原料粒子の堆積が阻害されるから、上流領域で捕集層24が形成されにくくなる。このように、阻害成分を用いて上流領域に捕集層24が形成されないハニカムフィルタ20をより容易に形成することができる。なお、この阻害成分は、のちの熱処理工程で焼失するような有機成分とするのが好ましい。阻害成分としては、例えば、樹脂などが挙げられる。このようにして上流領域に未製膜領域32が存在する捕集層24を形成することができる。
【0027】
接合層27は、ハニカムセグメント21を接合する層であり、無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。無機粒子は、上述した無機材料の粒子とすることができ、その平均粒径は0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。無機繊維は、上述したものとしてもよく、例えば平均粒径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であることが好ましい。結合材としてはコロイダルシリカや粘土などとすることができる。接合層27は、0.5mm以上2mm以下の範囲で形成されていることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)をいうものとする。外周保護部28は、ハニカムフィルタ20の外周を保護する層であり、上述した無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。
【0028】
ハニカムフィルタ20において、40℃〜800℃におけるセル23の通過孔方向の熱膨張係数は、6.0×10-6/℃以下であることが好ましく、1.0×10-6/℃以下であることがより好ましく、0.8×10-6/℃以下であることが更に好ましい。この熱膨張係数が6.0×10-6/℃以下であると、高温の排気に晒された際に発生する熱応力を許容範囲内に抑えることができる。
【0029】
このハニカムフィルタ20の外形は、特に限定されないが、円柱状、四角柱状、楕円柱状、六角柱状などの形状とすることができる。ハニカムセグメント21の外形は、特に限定されないが、接合しやすい平面を有していることが好ましく、断面が多角形の角柱状(四角柱状、六角柱状など)の形状とすることができる。セルは、その断面の形状として3角形、4角形、6角形、8角形などの多角形の形状や円形、楕円形などの流線形状、及びそれらの組み合わせとすることができる。例えば、セル23は排ガスの流通方向に垂直な断面が4角形に形成されているものとしてもよい。
【0030】
ハニカムフィルタ20において、セルピッチは、1.0mm以上2.5mm以下とするのが好ましい。PM堆積時の圧力損失は、濾過面積が大きいほど小さい値を示す。一方、初期の圧力損失は、セル直径が小さいほど大きい値を示す。したがって、初期圧力損失、PM堆積時の圧力損失、PMの捕集効率のトレードオフを考慮して、セルピッチ、セル密度や隔壁部22の厚さを設定するものとすればよい。
【0031】
ハニカムフィルタ20において、隔壁部22や捕集層24は、触媒を含むものとしてもよい。この触媒は、排ガスに含まれる未燃焼ガス(HCやCOなど)を酸化する触媒、捕集されたPMの燃焼を促進する触媒及びNOXを吸蔵/吸着/分解する触媒のうち少なくとも1種以上としてもよい。こうすれば、未燃焼ガスを効率よく酸化することやPMを効率よく除去することやNOXを効率よく分解することなどができる。この触媒としては、例えば、貴金属元素、遷移金属元素を1種以上含むものとするのがより好ましい。また、ハニカムフィルタ20では、他の触媒や浄化材が担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)などを含むNOx吸蔵触媒、少なくとも1種の希土類金属、遷移金属、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が挙げられる。具体的には、貴金属としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)や、金(Au)及び銀(Ag)などが挙げられる。触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sc,Ti,V,Cr等が挙げられる。また、希土類金属としては、例えば、Sm,Gd,Nd,Y,La,Pr等が挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg,Ca,Sr,Ba等が挙げられる。このうち、白金及びパラジウムがより好ましい。また、貴金属及び遷移金属、助触媒などは、比表面積の大きな担体に担持してもよい。担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトなどを用いることができる。PMの燃焼を促進する触媒を有するものとすれば、捕集層24上に捕集されたPMをより容易に除去することができるし、未燃焼ガスを酸化する触媒やNOXを分解する触媒を有するものとすれば、排ガスをより浄化することができる。
【0032】
以上説明した実施形態のハニカムフィルタ20によれば、捕集層24が形成されていない未製膜領域32が隔壁部22の上流領域にあり、上流領域の隔壁部での透過抵抗がより低く、上流領域で排ガスが隔壁部22を通過しやすい。このため、上流領域の隔壁部の熱が下流側へ伝達されやすいため、ハニカムフィルタ20の全体での昇温性をより高めることができる。このため、捕集したPMの再生処理をより効率よく行うことができる。あるいは、酸化触媒を備えたものにおいては、排ガスに含まれる未燃焼ガスをより浄化しやすい。
【0033】
ここで、ハニカムフィルタ20の利用方法などについて考察する。図4は、ハニカムフィルタ20のPM堆積及び再生処理時の概念図であり、上段がPM堆積前のセル23の説明図、中段がPM堆積後のセル23の説明図、下段がPM再生処理時の各位置(A,B,C)における時間に対する温度変化を表す図である。なお、図4下段は未製膜領域がない場合の温度変化を点線で表し、未製膜領域32がある場合の温度変化を実線で表している。例えば、エンジン直下にディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)を配置し、その直下にハニカムフィルタ(DPF:Diesel particulate filter)を搭載することがある。この場合、搭載スペースの制約からDPFの上流に搭載するDOCの容量が小さくなり、未燃焼ガス(HC/CO)の酸化処理を考慮して、DPFへも未燃焼ガスの酸化機能が求められることが考えられる。DPFに捕集させたPMを燃焼除去する再生処理を行う際には、エンジンでの燃焼制御により燃焼室内での燃料燃焼により温度を上げる方法と、未燃焼ガスを意図的に発生させてDOCもしくはDPFにコートした酸化触媒にて酸化させることで熱を発生させる方法との組み合わせにて行うことができる。その際、捕集層が全体に均一に設けられた従来のDPFではDPFの熱容量がDOCに比べ非常に大きく、DPF自体の昇温性が十分でないため、コートされた触媒が早期に活性化せず、十分な未燃焼ガス浄化性能が得られないことがあった。これに対して、本実施形態のハニカムフィルタ20では、図4に示すように、上流領域に未製膜領域を形成することにより、上流領域での隔壁部の透過抵抗を下げ、PMをより多く上流領域へ堆積させ(図4中段参照)、且つ、排ガス透過流量が大きくなるようにした。これより、再生処理時に上流域でのPM堆積量が多いこと、排ガス透過流量が多いことの2つが相乗効果となって、ハニカムフィルタ20が早期に温度上昇し(図4下段参照)、ハニカムフィルタ20にコートされた触媒が早く活性化する。このため、ハニカムフィルタ20の未燃焼ガスの浄化性能が向上する。また、一般的に床下にDPFが搭載されている場合に流入してくるPMの平均粒径は200〜250nm程度といわれている。PMの捕集メカニズムによると、拡散によるPM捕集が低くなり、さえぎりによる捕集がまだ十分でない領域である200〜300nm程度の粒径を持ったPMが、最も捕集されにくいPMサイズである事が知られている。一方、エンジン直下に搭載されている場合、エンジンから排出されて排気管内を流れる最中に起きるPMの凝集が十分に発達しておらず、DPF隔壁を透過するPMの平均粒径は150〜200nm程度と床下搭載の場合に比べ粒径が小さい。このため、拡散による捕集が十分に機能する事から、捕集層の形成されていない上流領域の排ガス透過流速が高くなってもPMの捕集自体は隔壁部の細孔によって行われるため、DPFの捕集効率としては十分に高い性能を得ることができる。また、DPFをエンジン直下に配置する場合のみならず、床下へ配置する場合においても、エンジンの性能が向上し、PM凝集が起きにくくPMの平均粒径が大きくならない環境となる場合などにおいても、上流領域に未製膜領域を形成したハニカムフィルタ20は有用であると推察される。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、ハニカムセグメント21を接合層27により接合したハニカムフィルタ20としたが、図5に示すように、一体成形されたハニカムフィルタ40としてもよい。ハニカムフィルタ40において、隔壁部42、セル43、捕集層44、目封止部46、外周保護部48及び未製膜領域52などは、ハニカムフィルタ20の隔壁部22、セル23、捕集層24、目封止部26、外周保護部28及び未製膜領域32と同様の構成とすることができる。こうしても、再生処理でのPMの残留をより抑制すると共に、PMの再生処理の時間をより低減することができる。
【0036】
上述した実施形態では、ハニカムフィルタ20には触媒が含まれるものとしたが、流通する流体に含まれる除去対象物質を浄化処理可能なものであれば特にこれに限定されない。あるいは、ハニカムフィルタ20は、触媒を含まないものとしてもよい。また、排ガスに含まれるPMを捕集するハニカムフィルタ20として説明したが、流体に含まれる固体成分を捕集・除去するものであれば特にこれに限定されず、建設機器の動力エンジン用のハニカムフィルタとしてもよいし、工場や発電所用のハニカムフィルタとしてもよい。
【実施例】
【0037】
以下には、ハニカムフィルタを具体的に製造した例を実施例として説明する。
【0038】
[ハニカムフィルタ(DPF)の作製]
SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得て、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形した。ここでは、ハニカムセグメントは、排ガス流通方向に垂直な断面のセル形状が4角形であり、隔壁部の厚さが300μm、セルピッチが1.47mm、断面が35mm×35mm、長さが152mmの形状に成形した。次に、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波により乾燥させ、更に熱風にて乾燥させた後、目封止をして、酸化雰囲気において550℃、3時間で仮焼きした後に、不活性雰囲気下にて1400℃、2時間の条件で本焼成を行った。目封止部の形成は、セグメント成形体の一方の端面のセル開口部に交互にマスクを施し、マスクした端面をSiC原料を含有する目封止スラリーに浸漬し、開口部と目封止部とが交互に配設されるように行った。また、他方の端面にも同様にマスクを施し、一方が開口し他方が目封止されたセルと一方が目封止され他方が開口したセルとが交互に配設されるように目封止部を形成した。得られたハニカムセグメント焼成体の排ガス流入側の開口端部より、隔壁の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有するSiC粒子を含む空気を流入させ、且つハニカムセグメントの流出側より吸引しながら、排ガス流入側の隔壁の表層に堆積させた。このとき、後述する捕集層の形成厚分布処理を行い、未製膜領域が隔壁部の上流領域に存在するよう適宜制御して捕集層を隔壁部に形成した。次に、大気雰囲気下にて1300℃、2時間の条件の熱処理により、隔壁の表層に堆積させたSiC粒子同士、及び堆積させたSiC粒子と隔壁を構成するSiC及びSi粒子と結合させた。このように、隔壁部上に捕集層を形成したハニカムセグメントを作製した。このようにして得られたハニカムセグメントの側面に、アルミナシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、炭化珪素、および水を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着したあと、加熱乾燥して、全体形状が四角形状のハニカムセグメント接合体を得た。さらに、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周囲を、接合用スラリーと同等の材料からなる外周コート用スラリーで被覆し、乾燥により硬化させることにより所望の形状、セグメント形状、セル構造を有する円柱形状のハニカムフィルタを得た。ここでは、ハニカムフィルタは、断面の直径が144mm、長さが152mmの形状とした。後述する実施例1〜14及び比較例1〜5の隔壁部の気孔率は40体積%であり、平均細孔径は15μmであり、捕集層を形成する粒子の平均粒径は2.0μmであった。なお、隔壁部の気孔率及び平均細孔径は水銀ポロシメータ(Micromeritics社製Auto PoreIII型式9405)を用いて測定した。また、捕集層の原料粒子の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−910)を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)である。
【0039】
[捕集層の形成厚分布処理]
作製したハニカムセグメントの入口側の端面から所定範囲に亘って樹脂をコートし、上流領域の隔壁部の細孔を埋めた。次に、捕集層の原料である微粒子を混入した気体をハニカムセグメントの入口から流通させ、隔壁部上に捕集層の原料微粒子を堆積させ、捕集層を形成した。次に、ハニカムセグメントを熱処理し、隔壁部上に堆積した原料微粒子を結合させた。このとき、上流領域にコートされている樹脂が焼失した。このように、隔壁部の上流領域に未製膜領域が存在する捕集層を隔壁部上に形成した。
【0040】
[触媒担持]
まず、重量比でアルミナ:白金:セリア系材料=7:0.5:2.5とし、セリア系材料を重量比でCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5とした原料を混合し、溶媒を水とした触媒のスラリーを調製した。次に、ハニカム構造体の出口端面(排ガスが流出する側)を所定の高さまで浸漬させ、入口端面(排ガスが流入する側)より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定時間にわたって吸引し、隔壁に触媒を担持し、120℃2時間で乾燥させた後、550℃1時間で焼付けを行った。ハニカムフィルタの単位体積当たりの触媒量は、30g/Lとなるようにした。
【0041】
[SEM観察による捕集層の厚さ、未製膜領域の検出及び測定]
実施例1〜14及び比較例1〜6の断面のSEM撮影を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製S−3200N)を用いて行い、辺部捕集層厚さX及び角部捕集層厚さYを測定した。まず、ハニカムフィルタの隔壁基材を樹脂埋めした後に流体の流通方向に垂直な断面を観察面とするように切断・研磨した観察用試料を用意し、SEMの倍率を100倍〜500倍に設定し、後述する測定位置において、視野をおよそ500μm×500μmの範囲として用意した観察用試料の観察面を撮影した。ここでは、ハニカムフィルタ20の入口側の端面から排ガスの流通方向に1mmピッチごとの断面を観察して捕集層があるか否かを判定し、捕集層が形成されているとされた位置から、排ガスの流通方向に10mmピッチごとの断面において捕集層の厚さを測定し、測定された値の平均値を捕集層の厚さとした。また、ハニカムセグメント21の入口側の端面から排ガスの流通方向に複数の断面を観察して捕集層があるか否かを判定し、捕集層が形成されていないと判定した範囲をそのセルの未製膜領域の長さとした。観察した断面において複数の未製膜領域の長さを測定し、平均した値をこのハニカムセグメント21の未製膜領域の長さとし、ハニカムセグメント21の未製膜領域の長さの平均をハニカムフィルタ20の未製膜領域の長さとした。そして、入口セルの長さに対する未製膜領域の平均長さを算出し、これを未製膜領域の入口セルの長さ割合とした。更に、観察した断面方向に対して、ハニカムセグメント21の重心から最外周入口セルまでの全領域の入口セルについて捕集層の有無を測定し、全領域の入口セル面積に対する捕集層がある入口セル面積の割合を算出した。捕集層の厚さは、以下の手順で算出した。まず、撮影した画像において、隔壁表面に対して垂直の方向からこの隔壁表面に仮想光を照射したものとしたときに得られる投影線を隔壁の最外輪郭線として仮想的に描画した。また、同様に、捕集層表面に対して垂直の方向からこの捕集層を形成する粒子群の表面に仮想光を照射したものとしたときに得られる投影線を粒子群の最外輪郭線として仮想的に描画した。続いて、描画した隔壁の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて隔壁の最外輪郭線の平均線である隔壁の標準基準線を求めた。また、隔壁の標準基準線と同様に、描画した粒子群の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて粒子群の最外輪郭線の平均線である粒子群の平均高さを求めた。そして、得られた粒子群の平均高さと隔壁の標準基準線との差をとり、この差(長さ)を、この撮影画像における捕集層の厚さ(粒子群の厚さ)とした。
【0042】
[ディーゼル酸化触媒(DOC)の作製]
コージェライト原料として、アルミナ(平均粒径2.5μm)、カオリン(平均粒径2.6μm)、タルク(平均粒径3μm)及びシリカ(平均粒径3.6μm)を使用した。このコージェライト原料を100重量部、造孔材を13重量部、分散媒を35重量部、有機バインダーを6重量部、分散剤を0.5重量部、それぞれ添加し、坏土を調製した。分散媒として水を使用し、造孔材としては、平均粒径10μmのコークスを使用し、有機バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてエチレングリコールを使用した。次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形した。ここでは、セル形状が4角形であり、隔壁部の厚さが102μm、セルピッチが1.27mm、断面が直径144mm、長さが60mmの形状に成形した。この成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥し、更に1410℃〜1440℃で5時間焼成することによりコージェライトを主成分とするハニカム構造体を得た。このハニカム構造体に、上述したアルミナ:白金:セリア系材料の触媒を、単位体積当たりの触媒量が80g/Lとなるようにコートした。
【0043】
(実施例1〜6)
上記ハニカムフィルタの作製条件において、隔壁部の厚さが304.8μm、セル幅が1.16μm角であるセル形状にハニカムセグメントを成形した。また、未製膜領域の長さ割合が5%、断面内未製膜領域面積割合が100%、捕集層の平均膜厚が40μmとなるように捕集層の形成厚分布処理を行い得られたハニカムフィルタを実施例1とした。また、未製膜領域の長さ割合を10%、15%、20%、25%、30%とした以外は実施例1と同様の工程を経て得られたハニカムフィルタをそれぞれ実施例2〜6とした。
【0044】
(比較例1〜5)
未製膜領域の長さ割合をそれぞれ0%、3%、4%、32%、35%とした以外は実施例1と同様の工程を経て得られたハニカムフィルタを比較例1〜5とした。
【0045】
(実施例7〜14)
上記ハニカムフィルタの作製条件において、未製膜領域の長さ割合を15%、捕集層の平均膜厚を40μmとすると共に、断面内未製膜領域面積割合がそれぞれ6%,8%,10%,15%,20%,30%,50%,80%となるように捕集層の形成厚分布処理を行い得られたハニカムフィルタをそれぞれ実施例7〜14とした。
【0046】
[浄化効率測定]
上記作製したDOC及びDPFをエージング処理した。ここでは、20万km程度の走行後の状態を模擬することとし、DOC及びDPFを大気雰囲気下で850℃10時間、エージング処理を行った。このエージング処理を行ったものに対して以下の浄化効率、PM堆積圧力損失、PM捕集効率などの測定を行った。浄化効率は、2.2Lのディーゼルエンジンの直下にDOC及びDPFを配置し、2500rpm、60Nmの一定条件でPMを8g/L堆積させたあと、堆積させたPMを燃焼除去するため、ポストインジェクションによる再生処理を行った。ポストインジェクションのキープ時間は、10分間で、再生処理中にDPF前後でのHC/CO濃度を堀場製作所製MEXA−7000を用いて計測し、浄化効率を算出した。ここでは、再生処理開始1分後では、どの試料においても十分昇温し高い浄化性能を示したことから、再生処理開始1分以内の値を性能比較指標として用いた。
【0047】
[PM付圧力損失測定]
上述の浄化効率測定において、2500rpm、60Nmの一定条件でPMを8g/L堆積させたあと、再生処理直前の圧力損失をPM付圧力損失の値として、各サンプルの評価を行った。
【0048】
(実験結果)
実施例1〜14及び比較例1〜5の未製膜領域長さ割合(%)、断面内未製膜領域面積割合(%)、平均膜厚(μm)、HC/COの浄化効率(%)、PM堆積時の圧力損失(kPa)などをまとめて表1に示す。図6は、実施例1〜6及び比較例1〜5における、未製膜領域長さ割合に対する浄化効率の測定結果である。図7は、実施例1〜6及び比較例1〜5における、未製膜領域長さ割合に対するPM堆積時の圧力損失の測定結果である。図8は、実施例7〜14における、断面内未製膜領域面積割合に対する浄化効率の測定結果である。図9は、実施例7〜14における、断面内未製膜領域面積割合に対するPM堆積時の圧力損失の測定結果である。表1及び図6に示すように、浄化効率は、未製膜領域長さ割合が5%以上で向上することがわかった。これは、上流領域に未製膜領域が所定領域以上あるとハニカムフィルタ20の昇温特性が向上し、浄化効率が向上したものと推察された。また、表1及び図7に示すように、PM堆積時の圧力損失は、未製膜領域長さ割合が30%以下で低下することがわかった。これは、所定領域以上あると圧力損失の上昇をより抑えることができる捕集層の効果が顕著に表れていると推察された。したがって、未製膜領域長さ割合は5%以上30%以下が好ましいことが明らかとなった。また、表1及び図8に示すように、浄化効率は、断面内未製膜領域面積割合が10%以上で向上することがわかった。これは、上流領域に未製膜領域が所定領域以上あるとハニカムフィルタ20の昇温特性が向上し、浄化効率が向上したものと推察された。また、表1及び図9に示すように、PM堆積時の圧力損失は、断面内未製膜領域面積割合に依存しないことが明らかとなった。
【0049】
【表1】
【0050】
本出願は、2010年3月31日に出願された日本国特許出願第2010−81900号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、自動車用、建設機械用及び産業用の定置エンジン並びに燃焼機器等から排出される排ガスを浄化するためのフィルターとして好適に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9