【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による触媒は、その触媒系が、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、
(2)有機酸素含有チタン化合物、および
(3)ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する少なくとも1種類の化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeR
nX
3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式R
mSiCl
4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR
3を有する有機アルミニウム化合物、
を含むという点で特徴付けられる。
【0008】
化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の好ましい金属は、アルミニウムおよびホウ素である。
【0009】
ハロゲンがClであることが好ましい。
【0010】
前記有機酸素含有マグネシウム化合物、前記有機酸素含有チタン化合物、および前記ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する化合物を含む炭化水素溶液と、前記金属化合物および前記ケイ素化合物を含む特別な混合物との組合せにより、大きいモル質量、大きい粉末嵩密度、狭いスパンおよび250μm未満の平均粒径を示すUHMWPEを提供し、さらに高い触媒活性を示す触媒が得られる。
【0011】
混合物(b)の成分が、別々にまたは連続的に使用される代わりに、炭化水素溶液(a)との反応において混合物として使用されることが必須である。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態によれば、ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する化合物は、有機酸素含有ジルコニウムおよび/またはハフニウム化合物の群から選択される。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態によれば、式MeR
nX
3-nを有する(b)からの金属化合物は、Xがハロゲンであり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式AlR
nX
3-nを有するアルミニウム化合物である。
【0014】
(b)からのアルミニウム:(a)からのチタンのモル比が1:1未満であることが好ましい。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態によれば、I(a)(2)からのチタン対I(a)(3)からの有機酸素含有化合物のモル比が、1:20から10:1の範囲にある。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態によれば、前記触媒系は、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、
(2)有機酸素含有チタン化合物、および
(3)ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する少なくとも1種類の化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeR
nX
3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式R
mSiCl
4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物であり、
(c)得られた固体反応生成物の、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式AlR
nCl
3-nを有するアルミニウム化合物による後処理、
が施された固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR
3を有する有機アルミニウム化合物、
を含む。
【0017】
この触媒により、大きい粉末嵩密度、狭いスパンおよび250μm未満の平均粒径を有する高分子が得られる。さらに、この触媒は高い触媒活性を有する。
【0018】
有機酸素含有マグネシウム化合物は、マグネシウム−炭素結合を含まない。
【0019】
適切な有機酸素含有マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウムメチレート、マグネシウムエチレートおよびマグネシウムイソプロポキシレートなどのアルコキシドおよびアルキルアルコキシド、例えば、マグネシウムエチルエチレートが挙げられる。
【0020】
有機酸素含有マグネシウム化合物がマグネシウムアルコキシドであることが好ましい。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施の形態によれば、マグネシウムアルコキシドがマグネシウムエトキシドである。
【0022】
適切な有機酸素含有チタン化合物およびジルコニウムまたはハフニウム含有化合物は、一般式[MtO
x(OR)
4-2x]
nにより表してよく、ここで、Mtは、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群より選択され、Rは有機ラジカルを表し、xは0と1の間に及び、nは1と6の間に及ぶ。
【0023】
式[TiO
x(OR)
4-2x]
nを有する有機酸素含有チタン化合物、式[ZrO
x(OR)
4-2x]
nを有するジルコニウム化合物、および式[HfO
x(OR)
4-2x]
nを有するハフニウム化合物の適切な例としては、アルコキシド、フェノキシド、オキシアルコキシド、縮合アルコキシド、カルボキシレートおよびエノレートが挙げられる。
【0024】
適切なジルコニウムおよびハフニウム含有化合物としては、式(OR)
yZrCl
4-yおよび(OR)
yHfCl
4-yを有する混合アルコキシ金属塩化物が挙げられ、ここで、1≦y≦3である。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態によれば、有機酸素含有チタン化合物はチタンアルコキシドである。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態によれば、有機酸素含有ジルコニウム化合物はジルコニウムアルコキシドである。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態によれば、有機酸素含有ハフニウム化合物はハフニウムアルコキシドである。
【0028】
適切なアルコキシドの例としては、Ti(OC
2H
5)
4、Ti(OC
3H
7)
4、Ti(OC
4H
9)
4、Ti(OC
8H
17)
4、Zr(OC
3H
7)
4、Zr(OC
4H
9)
4、Zr(OC
8H
17)
4、Hf(OC
3H
7)
4、Hf(OC
4H
9)
4、およびHf(OC
8H
17)
4が挙げられる。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施の形態によれば、チタンアルコキシドはTi(OC
4H
9)
4である。
【0030】
好ましい実施の形態によれば、式MeR
nX
3-nを有する金属化合物は、式AlR
nX
3-nを有するアルミニウム化合物である。
【0031】
式AlR
nX
3-nを有するアルミニウム化合物の適切な例としては、三塩化アルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二塩化プロピルアルミニウム、二塩化−n−ブチルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリ−n−ヘキシルアルミニウムが挙げられる。
【0032】
好ましい実施の形態によれば、I(b)の混合物における有機アルミニウムハロゲン化物は有機アルミニウム塩化物、より好ましくは二塩化エチルアルミニウムである。
【0033】
式AlR
3の有機アルミニウム化合物の適切な例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウムおよびトリオクチルアルミニウムが挙げられる。
【0034】
有機酸素含有マグネシウム化合物および有機酸素含有チタン化合物、ジルコニウムおよびハフニウム化合物の炭化水素溶液は、例えば、米国特許第4178300号および欧州特許公開第876318号の各明細書に開示されている手法にしたがって調製することができる。これらの溶液は、一般に透明な液体である。固体粒子が含まれている場合、これらは、触媒合成にその溶液を使用する前に、濾過により除去することができる。
【0035】
一般に、炭化水素はC
4〜C
12飽和炭化水素である。炭化水素がC
5〜C
7飽和炭化水素であることが好ましい。
【0036】
アルミニウム化合物、特に塩化アルキルアルミニウムは、ポリオレフィンのための触媒の調製によく使用されるが、意外なことに、(b)におけるアルミニウム化合物の量は、予期せぬほど少ない、典型的に、1未満の、(b)からのアルミニウム対(a)からのチタンのモル比より低いべきであることが分かった。
【0037】
本発明の好ましい実施の形態によれば、(b)からのアルミニウム対(a)からのチタンのモル比は1:1未満である。
【0038】
この比が0.8:1未満であることが好ましく、この比が0.6:1未満であることがより好ましい。
【0039】
本発明の好ましい実施の形態によれば、R
mSiCl
4-mからの塩素:炭化水素溶液(a)中に存在する酸素のモル比は、3:1未満、より好ましくは2:1未満である。
【0040】
好ましい実施の形態において、マグネシウム:チタンのモル比は3:1未満である。
【0041】
マグネシウム:チタンのモル比が0.2:1と3:1の間に及ぶことが好ましい。
【0042】
一般に、(b+c)におけるアルミニウム化合物からのAl:Tiのモル比は0.05:1と1:1の間に及ぶ。
【0043】
本発明の好ましい実施の形態によれば、(b+c)におけるアルミニウム化合物からのAl:Tiのモル比は0.05:1と0.8:1の間に及ぶ。
【0044】
一般に、触媒の平均粒径は3μmと30μmの間に及ぶ。この平均粒径が3μmと10μmの間に及ぶことが好ましい。
【0045】
一般に、粒径分布のスパンは3未満である。
【0046】
本発明の触媒は、有機酸素含有マグネシウム化合物、有機酸素含有チタン化合物および有機酸素ハフニウムおよび/またはジルコニウム含有化合物の間の第1の反応、その後の炭化水素溶媒による希釈で可溶性錯体が得られ、その後、この錯体の炭化水素溶液と、式MeR
nX
3-nを有する金属化合物および式R
mSiCl
4-mを有するケイ素化合物を含む混合物との反応が行われることによって、得られるであろう。
【0047】
本発明の好ましい実施の形態によれば、触媒は、マグネシウムアルコキシド、チタンアルコキシドおよびジルコニウムアルコキシドおよび/またはハフニウムアルコキシドの間の第1の反応、その後の炭化水素溶媒による希釈で、マグネシウム、チタンおよびジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する混合アルコキシドからなる可溶性錯体が得られ、その後、この錯体の炭化水素溶液と、式AlR
nX
3-nを有するアルミニウム化合物および式R
mSiCl
4-mを有するケイ素化合物を含む混合物との反応が行われることによって、得られる。
【0048】
式AlR
nX
3-nを有するアルミニウム化合物および式R
mSiCl
4-mを有するケイ素化合物を含む混合物が、炭化水素溶液として使用されることが好ましい。
【0049】
アルキルアルミニウムまたはハロゲン化アルキルアルミニウムの存在下でのその後の後処理工程が可能である。
【0050】
添加の順序は、有機酸素含有マグネシウム化合物と有機酸素含有チタン化合物を含有する炭化水素溶液を、式AlR
nX
3-nを有するアルミニウム化合物と式R
mSiCl
4-mを有するケイ素化合物を含む混合物に添加するもの、またはその逆であっても差し支えない。
【0051】
有機酸素含有マグネシウム化合物と有機酸素含有チタン化合物を含有する炭化水素溶液を、式AlR
nX
3-nを有するアルミニウム化合物と式R
mSiCl
4-mを有するケイ素化合物を含む、撹拌されている混合物に添加することが好ましい。
【0052】
この反応の温度は、使用する炭化水素の沸点未満のどの温度であっても差し支えない。しかしながら、60℃未満、好ましくは50℃未満の温度を使用することが有益である。一般に、添加の期間は、10分より長いことが好ましく、30分より長いことがより好ましい。
【0053】
マグネシウム化合物、好ましくは有機酸素含有マグネシウム化合物、および有機酸素含有チタン、ジルコニウムまたはハフニウム化合物を含む炭化水素溶液の、ハロゲン含有ケイ素化合物およびアルミニウム化合物の混合物との反応において、固体が沈殿し、この沈殿反応後に得られた混合物を加熱して、反応を完了する。この反応後、沈殿物を濾過し、炭化水素で洗浄する。例えば、何回ものデカンテーション工程などの、希釈液から固体を分離する他の手段およびその後の洗浄を適用しても差し支えない。全ての工程は、窒素または別の適切な不活性ガスの不活性雰囲気中で行うべきである。アルミニウム化合物による後処理は、濾過と洗浄工程の前、またはこの手法の後のいずれに行っても差し支えない。
【0054】
本発明による触媒の利点は、触媒の生産性が高く、その結果、高分子中の触媒残留物が非常に少ないことである。この触媒の追加の利点は、触媒を製造するための合成が、容易に入手でき比較的取扱いが容易な化合物に基づいて、比較的単純であり、安価であることである。
【0055】
本発明の別の実施の形態によれば、触媒系は、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、および
(2)有機酸素含有チタン化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeR
nX
3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式R
mSiCl
4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
(c)ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する化合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR
3を有する有機アルミニウム化合物、
を含む。
【0056】
本発明の好ましい実施の形態によれば、この触媒は、エチレンの重合のためのプロセスに使用される。
【0057】
本発明は、ポリエチレンを製造するためのプロセスであって、重合が、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、
(2)有機酸素含有チタン化合物、および
(3)ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する少なくとも1種類の化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeR
nX
3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式R
mSiCl
4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR
3を有する有機アルミニウム化合物、
を含む触媒系の存在下で行われることを特徴とするプロセスにも関する。
【0058】
ジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する化合物が、有機酸素含有ジルコニウムおよび/またはハフニウム化合物の群から選択される化合物であることが好ましい。
【0059】
好ましい実施の形態によれば、金属化合物が、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式AlR
nX
3-nを有するアルミニウム化合物である。
【0060】
本発明のさらに好ましい実施の形態によれば、前記プロセスは、
I.固体反応生成物であって、
(a)(1)有機酸素含有マグネシウム化合物、
(2)有機酸素含有チタン化合物、および
(3)有機酸素含有ジルコニウムおよび/またはハフニウム化合物の群から選択される少なくとも1種類の化合物、
を含む炭化水素溶液と、
(b)Xがハロゲンであり、Meが化学元素のメンデレーエフの周期表のIII族の金属であり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n<3である式MeR
nX
3-nを有する金属化合物、および0≦m≦2、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式R
mSiCl
4-mを有するケイ素化合物の混合物と、
の反応により得られる固体反応生成物であり、(b)からの金属:(a)からのチタンのモル比が1:1未満である固体反応生成物であり、
(c)得られた固体反応生成物の、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0<n≦3である式AlR
nCl
3-nを有するアルミニウム化合物による後処理、
が施された固体反応生成物、および
II.Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである式AlR
3を有する有機アルミニウム化合物、
を含む触媒系の存在下で行われる。好ましい実施の形態によれば、(b)からの金属化合物は、Xがハロゲンであり、Rが1〜10の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルであり、0≦n≦3である式AlR
nX
3-nを有するアルミニウム化合物である。
【0061】
このプロセスにより、要求される特性および高い嵩密度を有するポリエチレンが得られる。このプロセスは、UHMWPEの製造に非常に適している。
【0062】
UHMWPE以外にも、本発明による触媒により、高密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが製造されるであろう。得られる粒子形態は優れており、このことは、全ての粒子形成重合プロセスにとって有益であろう。
【0063】
本発明の好ましい実施の形態によれば、本発明による触媒によりポリエチレンを製造するためのプロセスは、UHMWPEの製造に関する。
【0064】
一般に、UHMWPE粉末の嵩密度は、350kg/m
3と600kg/m
3の間に及び、好ましくは350kg/m
3と550kg/m
3の間に及ぶ。
【0065】
UHMWPEポリマー粉末の疎充填嵩密度は、ASTM D1895/Aに概説された手法にしたがってポリマー粉末の嵩密度を測定することによって決定される。
【0066】
本発明による触媒により得られた超高分子量エチレンホモポリマーおよび/またはコポリマーは、以下の特徴:
・ 280000g/モル超かつ10000000g/モル未満の平均分子量
・ 50マイクロメートルと250マイクロメートルの間の範囲にある平均粒径(D
50)、および
・ 350と600kg/m
3の間の範囲にある嵩密度
を有する粉末である。
【0067】
重合反応は、有機溶媒の不在下での気相またはバルク相で行っても、もしくは有機希釈剤の存在下で液体スラリー中で行ってもよい。重合は、バッチ式にまたは連続様式で行っても差し支えない。これらの反応は、酸素、水、または触媒毒として働くかもしれない任意の他の化合物の不在下で行われる。適切な溶媒の例としては、例えば、プロパン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、およびメチルシクロヘキサンなどのアルカンおよびシクロアルカン、並びに例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルトルエン、n−プロピルベンゼンおよびジエチルベンゼンなどのアルキル芳香族化合物が挙げられる。重合温度は、20℃と200℃の間、好ましくは20℃と120℃の間に及んでよい。重合中のモノマーの圧力は、適切に大気圧、より好ましくは2〜40バール(1バール=100000Pa)である。
【0068】
重合は、所望であれば、触媒性能をさらに修正するために、外部ドナーの存在下で行ってもよい。適切な外部ドナーの例には、触媒成分またはアルキルアルミニウムへの配位に利用できる少なくとも1つの孤立電子対を有するヘテロ原子を含有する有機化合物がある。適切な外部ドナーの例としては、アルコール、エーテル、エステル、シランおよびアミンが挙げられる。重合は、例えば、反応装置の内容物の合計量に対して1ppmと500ppmの間に及ぶ量の静電防止剤または防汚剤の存在下で行っても差し支えない。
【0069】
ポリマーの分子量は、例えば、重合温度の調節または水素やアルキル亜鉛などの分子量調節剤の添加などの、当該技術分野で公知のどのような手段により調節しても差し支えない。UHMWPEの分子量は非常に大きいために、そのモル質量を、例えば、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)やサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、分析することは難しい。それゆえ、例えば、135℃のデカリン中で、UHMWPEの希釈溶液の粘度を測定することが一般的である。この粘度値は、その後、分子量値に変換できる。
【0070】
UHMWPEは、優れた衝撃強さおよび耐磨耗性が要求される非常に様々な分野において適用できる。医療用途において、UHMWPEは、膝関節、肩関節および股関節のインプラントに使用されており、UHMWPEから製造された高強度線維が、防弾織物、釣り糸と網および鉱業に見られる。UHMWPEは、ホッパーまたはバンカー・ライナーとして使用してもよい。
【0071】
欧州特許出願公開第86481A号明細書には、ケイ素化合物と、IVa、VaおよびVIa族の遷移金属の化合物とを反応させて、反応混合物を形成し、得られた反応混合物を、マグネシウム−炭素結合を有するハロゲン含有有機マグネシウム化合物と反応させて、中間生成物を生成し、この中間生成物を有機アルミニウムハロゲン化物と接触させて、炭化水素不溶性生成物を形成することにより得られる炭化水素不溶性生成物を含むオレフィン重合のための触媒が開示されている。欧州特許出願公開第86481A号明細書には、式MeR
nX
3-nを有する金属化合物およびケイ素化合物を含む混合物は開示されていない。欧州特許出願公開第86481A号明細書には、超高分子量ポリエチレンの製造も開示されていない。
【0072】
米国特許第4226964号明細書には、マグネシウム化合物、チタン化合物およびジルコニウム化合物を含有する炭化水素溶液をアルミニウムハロゲン化物で処理することによって調製された炭化水素不溶性固体触媒成分を有機アルミニウム化合物と組み合わせた触媒系の存在下でのオレフィンを重合させるプロセスが開示されている。これらのチタン化合物とジルコニウム化合物は、ハロゲン含有化合物である。米国特許第4226964号明細書には、式MeR
nX
3-nを有する金属化合物およびケイ素化合物を含む混合物は開示されていない。米国特許第4226964号明細書には、超高分子量ポリエチレンの製造も開示されていない。
【0073】
本発明を以下の非限定的実施例によって説明する。