(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764126
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】スクロールポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
F04C18/02 311T
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-524267(P2012-524267)
(86)(22)【出願日】2010年4月9日
(65)【公表番号】特表2013-501885(P2013-501885A)
(43)【公表日】2013年1月17日
(86)【国際出願番号】GB2010000726
(87)【国際公開番号】WO2011018598
(87)【国際公開日】20110217
【審査請求日】2013年4月9日
(31)【優先権主張番号】0914230.8
(32)【優先日】2009年8月14日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】ホックライフ マイルス ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ホルブルック アラン アーネスト キンナード
(72)【発明者】
【氏名】ストーンズ イアン ディヴィッド
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−077181(JP,A)
【文献】
特開平11−280676(JP,A)
【文献】
特開平09−256972(JP,A)
【文献】
特開2005−351111(JP,A)
【文献】
特開2006−307760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのスクロールを有するスクロールポンプであって、前記スクロールは、前記スクロールの相対的周回運動時に流体を入口から出口に圧送するよう協働可能であり、各スクロールは、スクロールベースを有し、螺旋スクロール壁が前記スクロールベースから対向した前記スクロールの前記スクロールベースに向かって全体として軸方向に延び、前記ポンプは、前記スクロール壁の一方又は両方の軸方向端部を含む先端部シール構造体を有し、前記軸方向端部は、前記一方又は両方のスクロール壁と対向する前記スクロールの前記スクロールベースとの間で前記一方又は両方のスクロール壁を横切る圧送流体の通過に抵抗するよう先端部シールを位置決めし、前記先端部シール構造体の前記先端部シールは、前記先端部シール構造体の螺旋広がりに沿う互いに間隔を置いた固定場所のところで前記軸方向端部に対して全体として固定されていて、前記固定場所のところでの前記先端部シールの軸方向運動に抵抗するようになっており、前記先端部シール構造体は、前記固定場所分だけ第2の螺旋領域から離され、高い摩耗の第1の螺旋領域を有し、前記第1の螺旋領域は、対向したスクロール壁のスクロールベースに圧接するよう使用中付勢可能な複数個の別々の先端部シール部分を定め、対向するスクロール壁のスクロールベースに向けた先端シールの軸方向の移動に抵抗する、複数個の固定場所を有し、
前記一方又は両方のスクロールの前記先端部シール構造体の、低い摩耗の前記第2の螺旋領域は、前記一方又は両方のスクロール壁の軸方向端部のところに設けられた能動先端部シールを有し、前記能動先端部シールは、その螺旋広がりに沿って、対向する前記スクロールのスクロールベースに圧接するよう使用中、実質的に付勢されることが可能である、スクロールポンプ。
【請求項2】
前記第1の螺旋領域は、前記出口の近くに位置し、前記第2の螺旋領域は、前記入口の近くに位置する、請求項1記載のスクロールポンプ。
【請求項3】
前記第1の螺旋領域は、前記出口に隣接して位置する前記一方又は両方のスクロールの少なくとも2つの巻き部上に延びている、請求項1又は2記載のスクロールポンプ。
【請求項4】
前記先端部シールは、前記先端部シール構造体の前記第1の螺旋領域に沿って、前記一方又は両方のスクロール壁の前記軸方向端部に沿って形成された溝の中に受け入れられ、前記先端部シールは、前記固定場所での前記溝に対する前記先端部シールの軸方向運動に抵抗するよう前記溝に対する寸法/及び又は形状のものである、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のスクロールポンプ。
【請求項5】
前記先端部シールは、前記固定場所のところでは、少なくとも前記固定場所のところの前記溝の半径方向幅よりも広い半径方向幅を有し、その結果、前記先端部シールが前記溝内に受け入れられると、前記先端部シールは、前記溝の内壁に圧接し、それにより前記固定場所のところでの前記先端部シールの軸方向運動に抵抗する摩擦力を増大するようになっている、請求項4記載のスクロールポンプ。
【請求項6】
前記先端部シールは、前記固定場所のところの前記溝の半径方向幅よりも広い半径方向幅を備えた凸に湾曲した半径方向に向いている側壁を有し、その結果、前記先端部シールは前記溝内に受け入れられると、前記先端部シールは、前記固定場所のところの前記溝の前記内壁に圧接するようになっている、請求項5記載のスクロールポンプ。
【請求項7】
前記先端部シールは、前記固定場所のところの半径方向断面が、前記先端部シールの軸方向運動に抵抗する相補形状の溝と協働するよう形作られている、請求項4記載のスクロールポンプ。
【請求項8】
前記先端部シールは、前記先端部シールの軸方向運動を制限するために前記固定場所のところの前記溝とインターロックするよう形作られている、請求項7記載のスクロールポンプ。
【請求項9】
前記先端部シールは、1つ又は2つ以上の保持部材によって前記固定場所のところで前記一方又は両方のスクロール壁に対して保持されている、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のスクロールポンプ。
【請求項10】
前記先端部シールは、接着剤によって前記固定場所で前記一方又は両方のスクロール壁に対して保持されている、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のスクロールポンプ。
【請求項11】
前記一方又は両方のスクロール壁は、溝壁を有し、1つ又は2つ以上の成形部が前記溝壁から前記固定場所のところで前記溝内に半径方向に延びていて、前記先端部シールが前記先端部シールの軸方向運動を制限する溝内に配置されると、前記先端部シールを加圧するようになっている、請求項1〜10のうちいずれか一に記載のスクロールポンプ。
【請求項12】
前記成形部は、前記溝内に互いに向かって延びる状態で一対ずつ形成されている、請求項11記載のスクロールポンプ。
【請求項13】
前記溝壁の各々に設けられた前記成形部は、互いに対して互い違いに配置されている、請求項11記載のスクロールポンプ。
【請求項14】
前記固定場所相互間の前記別々の先端部シール部分は、前記一方又は両方のスクロール壁を横切る流体の所定量の漏れを可能にするよう撓むことができ、それにより、前記第1の螺旋領域上における流体の圧縮度が減少する、請求項1〜13のうちいずれか一に記載のスクロールポンプ。
【請求項15】
請求項1〜14のうちいずれか一に記載のスクロールポンプのためのスクロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロールポンプに関し、特に、本発明は、スクロールポンプの先端部シール構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロールポンプは、圧縮機と真空ポンプの両方として用いられている。先行技術の先端部シール構造体を有するスクロールポンプが
図18に示されている。ポンプ10は、ポンプハウジング12及び偏心シャフト部分16を備えた駆動シャフト14を有する。シャフト14は、モータ18によって駆動され、偏心シャフト部分は、周回スクロール20に連結されており、その結果、使用中、シャフトの回転により固定スクロール22に対して周回スクロールへの周回又は軌道運動が与えられ、流体が圧縮機のポンプ入口24とポンプ出口26との間で流体流路に沿って圧送されるようになっている。
【0003】
固定スクロール22は、全体として円形のベースプレート30に垂直に延びるスクロール壁28を有する。周回スクロール20は、全体として円形のベースプレート36に垂直に延びるスクロール壁34を有する。周回スクロール壁34は、周回スクロールの周回運動中、固定スクロール壁28と協働し又は噛み合う。スクロールの相対的周回運動により、三日月形状のガスの塊がスクロール相互間に取り込まれて入口から出口に圧送される。
【0004】
スクロール機構体の圧送性能及び圧縮度は、スクロール部材が、これらの間に所与の量のガスを取り込み、そしてガスを漏れがほとんどない状態で又は全くない状態で出口に向かって押す能力で決まる。
図1に示されているように、ガスがスクロール部材相互から漏れるのを阻止するため、乾燥潤滑剤先端部シール101を各スクロール部材100の壁106の軸方向端部105に形成された溝104の中に位置決めすることが慣例である。スクロール端プレート103が示されており、スクロール壁は、このスクロール端プレートから対向したスクロール(図示せず)のスクロールプレートに向かって全体として軸方向に延びる。スクロール型機構体機構体内への先端部シールの使用を記載した幾つかの特許明細書及び特許出願公開明細書が存在する。これについては、1976年11月30日にマッククルー等(McCullough et al.)に付与された米国特許第3,994,636号明細書、1984年7月31日にティーガーデン(Teegarden)に付与された米国特許第4,462,771号明細書、それぞれ1984年3月20日及び1986年12月9日にテラウチ等(Terauchi et al.)に付与された米国特許第4,437,820号明細書及び同第4,627,799号明細書、2007年11月13日にミドリカワ(Midorikawa)に付与された米国特許第7,293,969号明細書、2007年3月29日に公開された米国特許出願公開第2007/0071626(A1)号明細書(発明者:ツチヤ等(Tsuchiya et al.))、2008年3月27日に公開された米国特許出願公開第2008/0075614(A1)号明細書(発明者:フジオカ(Fujioka))、2008年8月28日に公開された米国特許出願公開第2008/0206083(A1)号明細書(発明者:スエフジ等(Suefuji et al.))を参照されたい。
【0005】
図2は、スクロール型機構体内に設けられた先端部シール構造体を詳細に示している。
図2に示されているように、固定スクロール部材202の壁205は、周回スクロール部材203の壁206と交互に配置されている。スクロール部材202,203は、典型的には、金属で作られているので、製造上の公差及び温度変動に起因して、壁205,206の軸方向端部及び対向したスクロール部材203,202相互間には僅かな間隙又は隙間207(即ち、約0.1mm)が生じたままになる場合がある。かくして、
図2に示されているように、壁205,206の軸方向端部に形成された溝204,204a内に挿入された先端部シール201,201aが隙間207を封止する。
【0006】
上述したように、ポンプが作動すると、所与の量のガスが周回スクロール部材203の壁206と固定スクロール202の壁205との間に形成されたポケット208内に取り込まれた状態になる。これらポケット208は、先端部シール201,201aによって封止される。取り込まれたガスがスクロール部材202,203の周囲のところのポンプ入口209aからスクロール部材202,203の中心のところのポンプ出口209bに押されているとき、ポケット208の容積が減少するのでガス圧力が増大する。かくして、2つの隣り合うポケット208相互間にはガス圧力差が存在する。
図2では、スクロール壁の一方の側のポケット208内の圧力は、スクロールの反対側の圧力とは異なっており、それにより圧力勾配が生じる。入口209aは使用中、出口209bよりも低い圧力状態にあるので、スクロール壁の入口側の圧力P
lowは、スクロール壁の出口側の圧力P
highよりも低い。したがって、先端部シール201,201aは、壁の排出又は出口側から入口側への壁と対向したスクロールプレートとの間におけるスクロールの軸方向段部を横切るガスの流れを阻止し又は少なくとも減少させるよう働く。
【0007】
上述の特許明細書及び特許出願公開明細書において記載されているように、スクロール部材相互間の良好な封止をもたらすよう設計された種々の先端部シール及び先端部シール構造体が存在する。先端部シール及び先端部シール構造体の特徴を説明するため、ここで
図2を参照して、2つの形式の先端部シール、即ち、1)浮動型先端部シール201及び2)ばね形先端部シール201aについて説明する。スクロール部材202,203が互いに対して周回又は軌道運動を行なうと、先端部シール201,201aは、使用中、起動化されて対向したスクロールのスクロールベースに圧接することができる。先端部シール201前後のガス圧力差により、溝204,204a内の圧力が増大し、それにより先端部シールを対向したスクロールプレートに押し付けたときに浮動型先端部シール201を付勢することができる。ばね形先端部シールは、柔軟性材料(例えば、ばね又はフォーム)210が先端部シール201aの後ろに設けられた溝内に位置した状態の積層構造を有するのが良い。この柔軟性材料210は、先端部シール201を摺動カウンタフェースに押し付ける力をもたらす。
【0008】
上述の力により、先端部シール201,201aは、スクロール部材202,203相互間に良好なシールをもたらすことができるが、先端部シールは、劣化及び摩耗を生じやすい。この点に関し、先端部シールは、ガス圧力かばねかのいずれかにより対向スクロールに常に圧接されており、このために先端部シールの摩耗がひどくなり、それにより、スクロール型機構内にデブリが生じる。この劣化は又、
図3に示されているようにガスがスクロール部材202,203相互間で漏れることが可能になるようにし、それによりスクロール型機構体の圧送性能を減少させることによって、先端部シール201,201aの封止特性に悪影響を及ぼす。かくして、先端部シール201,201aは、最終的に、もはやスクロール部材202,203相互間の漏れを十分には阻止することができない。その結果、先端部シール201,201aは、典型的には1、2年ごとに取り替えられなければならない。「だめになった」先端部シールの実験結果の示すところによれば、
図4に示されているように、大部分は、ポンプ出口の近く又は換言するとスクロール形態の中心巻き部に向かう第1の螺旋領域内の局所領域409に制限された過度の摩耗を呈した。先端部シールの残部、即ち入口寄りの第2の螺旋領域の摩耗は僅かであり、それにより良好な封止特性が維持されていた。日本国特開平07‐77181号公報から、先端部シール構造体をスクロールポンプの排出部寄りの第1の螺旋領域に固定する一方で入口寄りの第2の螺旋領域をその長さに沿って実質的に付勢することができ、即ち、浮動させることができるようにすることによって先端部シールの摩耗を制限することが知られている。しかしながら、これは、第1の螺旋領域の先端部シールの封止特性にとって有害である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,994,636号明細書
【特許文献2】米国特許第4,462,771号明細書
【特許文献3】米国特許第4,437,820号明細書
【特許文献4】米国特許第4,627,799号明細書
【特許文献5】米国特許第7,293,969号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0071626(A1)号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0075614(A1)号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2008/0206083(A1)号明細書
【特許文献9】日本国特開平07‐77181号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、2つのスクロールを有する改良型スクロールポンプであって、スクロールは、スクロールの相対的周回運動時に流体を入口から出口に圧送するよう協働可能であり、各スクロールは、スクロールベースを有し、螺旋スクロール壁がスクロールベースから対向したスクロールのスクロールベースに向かって全体として軸方向に延び、ポンプは、スクロール壁の一方又は両方の軸方向端部を含む先端部シール構造体を有し、軸方向端部は、一方又は両方のスクロール壁と対向スクロールのスクロールベースとの間で一方又は両方のスクロール壁を横切る圧送流体の通過に抵抗するよう先端部シールを位置決めし、封止構造体の先端部シールは、先端部シール構造体の螺旋広がりに沿う互いに間隔を置いた固定場所のところで軸方向端部に対して全体として固定されていて、固定場所のところでの先端部シールの軸方向運動に抵抗するようになっており、先端部シール構造体は、固定場所分だけ第2の螺旋領域から離された第1の螺旋領域を有し、第1の螺旋領域は、対向したスクロール壁のスクロールベースに圧接するよう使用中付勢可能な複数個の別々の先端部シール部分を定める複数個の固定場所を有することを特徴とする改良型スクロールポンプを提供することにある。
【0011】
複数個の固定場所を第1の螺旋領域に沿って設け、かくしてこの第1の螺旋領域内に先端部シールの多くの別々の付勢部分を形成することによって、先行技術と比較して長さに沿って良好な封止特性を備えた長い先端部シール構造体が実現される。
【0012】
本発明は又、互いに噛み合うスクロールを有するかかるスクロールポンプのためのスクロールを提供する。
本発明を良好に理解することができるようにするために、次に、添付の図面を参照して本発明の種々の実施形態を説明するが、これは例示として与えられているに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】2つのスクロール部材相互間の軸方向力を受ける先端部シールの略図である。
【
図3】先端部シールの高い摩耗領域を示すスクロール部材の側面図である。
【
図4】スクロール部材中の先端部シールの過度の摩耗領域を示すスクロール部材の側面図である。
【
図5a】先端部シール構造体のための拘束領域を示すスクロール部材の側面図である。
【
図5b】軸方向に見た螺旋スクロール壁及び先端部シール構造体を示す図である。
【
図6】先端部シール構造体の一実施形態の部分断面図である。
【
図7】先端部シール構造体の別の実施形態の部分断面図である。
【
図8】先端部シール構造体の別の実施形態の部分断面図である。
【
図9】先端部シール構造体の別の実施形態の部分断面図である。
【
図10】先端部シール構造体の別の実施形態の部分断面図である。
【
図11】先端部シール構造体の一部をなすピンチ箇所の一実施形態を示す図である。
【
図12】先端部シール構造体の一部をなすピンチ箇所の一実施形態を示す図である。
【
図13】先端部シール構造体の一部をなす一連のピンチ箇所の一実施形態を示す図である。
【
図14】先端部シール構造体の一部をなす一連のピンチ箇所の一実施形態を示す図である。
【
図15】先端部シール構造体の一部をなす長いピンチ箇所の一実施形態を示す図である。
【
図16】ピンチ箇所の別の実施形態を示す図である。
【
図17a】先端部シール構造体の実施形態を示す図である。
【
図17b】先端部シール構造体の実施形態を示す図である。
【
図19】実質的に完全に浮動するシール構造体及び本発明の先端部シール構造体に関する先端部シール摩耗と時間の関係を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、スクロールポンプ、例えば
図18に示されたポンプに用いられる先端部シール構造体に関し、この先端部シール構造体は、スクロール壁の一方又は両方の軸方向端部を有し、軸方向端部は、一方又は両方のスクロール壁と対向スクロールのスクロールベースとの間で一方又は両方のスクロール壁を横切る圧送流体の通過に抵抗するよう先端部シールを位置決めする。上述したように、先端部シール構造体は、ポンプ排出部寄りの第1の内側螺旋領域及び入口寄りの第2の外側螺旋領域で互いに異なる温度、圧力状態及び摩耗速度を呈する。特に、内側螺旋領域のところの摩耗速度は、外側螺旋領域のところよりも迅速に生じることが判明している。上述したように、先端部シールを一定の付勢先端部シール摩耗と比較して、先端部シール摩耗を減少させるよう溝204,204a内に固定することができるが、この構成により、封止効率が低下する。加うるに、固定先端部シールは、ポンプの非定常状態における使用中、例えば定期的な多量ガス装填中、増大した熱膨張を生じる場合がある。膨張の増大により、追加の先端部シール摩耗が生じ、その結果、ポンプが定常動作に戻って収縮すると、先端部シールと対向スクロールとの間の隙間が増大する。かくして、先端部シールを横切って生じる漏れが多くなり、封止効率が低下する。
【0015】
図5aを参照すると、スクロール型機構体の螺旋スクロール部材505が示されている。スクロール部材505は、ベースプレート504から軸方向に延びる螺旋壁502を有する。壁の軸方向端面に溝又はチャネル506が形成されており、先端部シール508が溝506内に納められている。ポンプ出口、即ち排出部の近くに位置する第1の螺旋領域507がハッチングを施された状態で示されている。先端部シールは、一般に、複数の互いに間隔を置いた固定場所509のところに固定される。固定箇所510が、
図5bにも示されているように、第1の螺旋領域507を第2の螺旋領域512から隔てている。
【0016】
本明細書において説明する本発明の実施形態によれば、例えば
図5bに示されているように、スクロール壁502の先端部シール構造体は、固定場所514のところにおいて、入口518と出口520との間で一方又は両方のスクロールの第1の螺旋領域507に沿う対向スクロール(図示せず)のスクロールベースに向かう先端部シール516の軸方向運動に抵抗し又はこれを拘束する封止構造体の先端部シールは、一般に、先端部シール構造体の螺旋広がりに沿う互いに間隔を置いた場所514のところでスクロール壁の溝に対して、これら固定場所のところでの先端部シールの軸方向運動に抵抗するよう固定されている。先端部シール構造体は、固定場所510により第2の螺旋領域512から隔てられた第1の螺旋領域507を有し、第1の螺旋領域は、対向したスクロール壁のスクロールベースに圧接するよう使用中付勢可能な複数個の別々の先端部シール部分522を定める複数個の固定場所514を有する。このように、別々の先端部シール部分は、封止効率を増大させるよう対向したスクロール壁に圧接することができる。しかしながら、
図2に示されている先行技術の浮動先端部シールとは異なり、先端部シールは、一般に、固定場所のところに固定されるので、先端部シールの摩耗が減少する。この点に関し、先端部シールを固定場所514のところでは付勢することができず、しかも対向したスクロール壁に圧接するよう軸方向に動かすことができない。したがって、第1の螺旋領域は、浮動先端部シールの封止上の利点をもたらし、他方、更に、固定先端部シールのように先端部シールの摩耗を減少させる。
【0017】
本発明の先端部シール構造体と比較した実質的に浮動する先端部シール構造体に関する定量的先端部シール摩耗測定値と時間との関係を表すグラフ図が
図19に示されている。本発明の先端部シール摩耗は、実質的に浮動する先端部シールとして大幅に減少していることが理解できる。
【0018】
先行技術においては、能動先端部シールに働く付勢力が大きく、かくして、先端部シールの劣化及び摩耗も又大きい場合(
図19参照)に過度の摩耗領域が生じる。第1の螺旋領域が過度の摩耗領域である場合、先端部シールの軸方向運動に抵抗することによる摩耗が減少する。しかしながら、先端部シールが製造又は保守の際、軸方向端部のところに配置された後においては、先端部シールは、最適封止特性を達成するために嵌着を必要とする。嵌着の際、ポンプを作動させると対向したスクロールのスクロールベースにより先端部シールが摩耗する。先行技術においては、付勢力は、能動先端部シールを対向したスクロールベースに押し付け、それにより先端部シールは、絶えず摩耗するようになる。
【0019】
しかしながら、本発明では、シール前後のガス圧力差及びシールの熱膨張に起因した対向スクロールベースに向かう先端部シールの軸方向運動が拘束され、その結果、使用中、先端部シールは、
図17a及び
図17bに示されているように、少なくとも第1の螺旋領域のところでその螺旋広がりに沿って全体として曲がりくねった形状をなす。この第1の螺旋領域では、別々の先端部シール部分1718は、先行技術に関して説明した浮動先端部シールと同様な仕方で挙動し、軸方向と半径方向の両方向に動くことができる。理解されるように、許容移動量は、固定場所1716相互間の間隔及び選択された先端部シールの材料特性で決まるであろう。さらに、別々の先端部シール部分は、運動が固定場所によって拘束されるこれらの端部のところではなく、これらの中心(即ち、固定箇所相互間の中間箇所)が螺旋方向に大幅に動くことができる。先端部シールは、好ましくは、固定場所のところでスクロール壁の頂部の上に突き出る(例えば、
図17a及び
図17bで位置1716のところに示されているように)。
【0020】
したがって、
図17bに示されているように、先端部シールが嵌着プロセスによっていったん摩耗すると、先端部シールを対向スクロールベースに押し付ける力が減少し、他方、最適な封止面1720が維持され、それ故、先端部シールのそれ以上の摩耗が減少する。完全嵌着後、先端部シールと対向スクロールベースとの間に働く力は、ほぼゼロであり、このことは、それ以上の先端部シールの摩耗が実質的に生じないことを意味する。しかしながら、先行技術の先端部シール構造体とは異なり、本発明に従って複数の場所に固定された先端部シールは、これらがポンプ機構体内における温度差に起因した間隙(
図7の符号207参照)の変化に対応することができるようにする幾分かの柔軟性を保持しているので、過渡的圧送条件、例えば追加のガス装填によって同程度に摩耗することはない。
【0021】
代表的には、付勢力及びガス温度が最も高いスクロール構造体の出口のところには高い摩耗領域が生じる。というのは、出口のところの圧力が最も高いからである。
【0022】
一方又は両方のスクロールの第2の螺旋領域に沿って位置する先端部シール構造体は、一方又は両方のスクロール壁の軸方向端部のところに配置された能動先端部シールを含む。先行技術と関連して上述したように、能動先端部シールは、対向したスクロールのスクロールベースに圧接するよう使用中、付勢可能である。したがって、第2の螺旋領域に位置する先端部シールは、嵌着後、摩耗し続ける。しかしながら、第2の螺旋領域が先端部シール付勢力及びガス温度の低い低摩擦領域に位置しているので、封止の向上との妥協策として摩耗の続行が許容可能である。
【0023】
代表的には、
図4に示されているように、第1の螺旋領域407は、出口の近くに位置し、第2の螺旋領域412は、入口の近くに位置する。
【0024】
図6〜
図16は、(本明細書において説明した)は、先端部シールを第1の螺旋領域中の固定場所に固定する種々の実施形態を示している。
【0025】
図6は、本発明の実施形態としての先端部シール構造体600を示しており、この場合、先端部シール構造体は、部分組立て形態で示されている。
図6は、固定場所のところの封止構造体の半径方向断面図である。先端部シール構造体600は、スクロール部材602の溝604内に受け入れられるよう位置決めされた先端部シール601を有する。先端部シール構造体600は、上述したように過度の摩耗領域(例えば、ポンプ出口の近くの最後のほぼ1/2〜約2つの巻き部)に沿う固定場所での先端部シール601の軸方向運動を制限する手段を更に有する。
【0026】
この実施形態では、先端部シール601の運動を拘束する手段610は、
図6に示されているように先端部シール601の凸に湾曲した半径方向に向いている側壁610を含む。それ故、先端部シール601の幅又は半径方向広がりは、固定場所のところの溝604の幅よりも広い。対向したスクロール部材の端プレート612は、先端部シール601に圧接し、それにより湾曲側壁610は、外方に突き出て、かくして、先端部シールは、溝の内壁に圧接する。したがって、先端部シール601は、溝604内にぴったりと嵌まり込み、その結果、軸方向運動は、固定場所では局所的に拘束される。即ち、先端部シールが圧力嵌めによって溝の中に押し込められると、先端部シールは、溝壁の表面と先端部シールとの間の摩擦力を増大させる力を溝の内壁に及ぼす。摩擦力の増大は、軸方向における先端部シールの運動を制限するよう働く。固定場所相互間の別々の先端部シール部分は、溝との摩擦が全体として運動を拘束することがないよう一般に平坦な側部を備えるのが良い。
【0027】
図7は、本発明の別の実施形態としての先端部構造体700の固定場所を示している。この実施形態では、軸方向運動を拘束する手段710は、接着材料である。接着材料710は、
図7を参照して上述したように過度の摩耗領域に沿う互いに間隔を置いて位置する固定場所のところの溝704内に位置決めされる。かくして、接着材料710は、過度の摩耗領域に沿う固定場所での軸方向に先端部シール701の軸方向運動を阻止する。固定場所相互間の別々の先端部シール部分は、一般に接着剤がないままの状態に保たれ、したがって、自由に動くことができる。加うるに、簡単な形態の溝は、構成するのが容易であり、先端部シールは、溝の最適深さに合わせて寸法決めされるのが良い。
【0028】
別の実施形態としての先端部シール構造体800では、接着材料810は、
図8に示されているように軸方向運動を拘束するよう先端部シール801の一方又は両方の側方又は半径方向側部上で固定場所に位置決めされる。接着材料は、固定場所相互間における先端部シールの所望の軸方向運動を可能にするのに十分な近接間隔を置いて配置される。
【0029】
図9は、本発明の別の実施形態としての先端部シール構造体900の固定場所を示している。この実施形態では、先端部シール901の軸方向運動を拘束する手段は、先端部シールの軸方向運動に抵抗し又は少なくとも各固定場所での或る特定の程度を越える先端部シールの軸方向運動に抵抗するよう溝の保持部分と協働する先端部シールの保持部分を含む。
図9では、全体として長方形の保持突出部が先端部シールのベースのところで半径方向に延びている。保持突出部は、溝の底部のところに設けられた相補形状のキャビティ内に受け入れられている。したがって、図示の例では、先端部シール901及び溝904は、固定場所でインターロックすると共に先端部シール901の軸方向運動を制限する半径方向断面がT字形を形成している。固定場所相互間の別々の先端部シール部分は、全体として真っ直ぐな側部を有し、したがって、保持部分、例えば
図9に示されたT字形部分を備えていない。溝それ自体は、製造プロセスを助けるようその螺旋広がりに沿ってT字形形状のものであるのが良い。この実施形態では、先端部シールの摩耗は、先端部シールの形状によって制限される。溝に対する先端部シールの寸法は、固定場所での先端部シールの或る特定の制限された量の浮動を可能にするよう選択されるのが良い。
【0030】
別の実施形態の固定場所が
図10に示されている。先端部シール構造体1000は、1本又は2本以上のピン1014又は他の保持部材により固定場所のところで溝1004のベースに取り付けられた先端部シール1001を有する。一例では、リテーナが所望の固定間撓みをもたらすよう摩耗領域の螺旋広がりに沿って局所付勢力について最適化された間隔で配置されている。
図10に示されているように、先端部シール1001は、2つの側方の軸方向に延びる区分を有し、これら区分相互間にはチャネル、溝又はボアが形成されている。先端部シールをチャネルに固定するためのリテーナを受け入れる孔が先端部シール溝のベースに設けられるのが良い。この実施形態では、先端部シールの摩耗は、固定ピン1014により制限され、これらピンは、軸方向(図示のように)又は半径方向に整列するのが良い。軸方向に整列する場合、ピンは、有利には、先端部シールが或る程度回転することができる中心となる点を提供する。
【0031】
図6〜
図19を参照して説明した実施形態は、有利には、既存のスクロールポンプに取り付け可能である。
【0032】
先端部シールの軸方向運動を拘束する上述の手段に加えて、先端部シールの軸方向運動を制限する他の手段が存在する。溝の側壁は、先端部シールが先端部シールの軸方向運動に抵抗する溝内に配置されると、先端部シールを加圧するために溝内に延びる1つ又は2つ以上の成形部を有するのが良い。
図11は、固定場所のところでの先端部シール1101(図示せず)の軸方向運動を拘束する手段として溝1104に形成されたピンチ又は挟み箇所1110の形態をした成形部を有している。固定場所相互間の別々の先端部シール部分を受け入れる溝1104は、スクロール壁の部分相互間の一定の半径方向広がりを定める。この実施形態では、ピンチ箇所1110は、一方又は両方のスクロール壁部分から半径方向に延び、それによりピンチ箇所での溝の半径方向広がりを減少させている。溝の半径方向広がりの減少により、先端部シールが溝内に納められると、先端部シールに加わる力が増大する。この力の増大により、先端部シールとスクロール壁との間に働く摩擦力が増大し、それにより、ピンチ箇所の場所内での先端部シールの軸方向運動に抵抗する一方で、ピンチ箇所間撓み(付勢)を可能にする。
図11では、ピンチ箇所は、全体として三角形の断面を有し、溝1104の深さに沿って延びている。ピンチ箇所は、溝を切断形成するのと同一の工具を用いて形成でき、それにより組立体の構成が容易になる。ピンチ箇所は、先端部シールに対して局所ピンチ(挟み)効果をもたらし、それにより、ピンチ箇所相互間における先端部シールの浮動が可能になる。ピンチ箇所相互間の先端部シールの浮動により、これら領域における先端部シールの付勢が可能であり、かくしてこれら領域における有利な封止が可能になる。
【0033】
図12は、別のピンチ箇所を示している。この実施形態では、ピンチ箇所1210は、
図11に示されたピンチ箇所と同様全体として三角形の断面を有している。しかしながら、この実施形態では、ピンチ箇所1210は、溝1204の深さの一部分に沿ってしか延びておらず、かくしてピン止め機構体が構成されている(半径方向又は軸方向に整列した別々のピンも又使用できる)。この実施形態では、先端部シールを溝内に配置した後、先端部シールは、ピン形構造体内でピンチ箇所の下で膨張し、かくして、シールをピンチ箇所のところの定所に固定するのに役立つ。ピンチ箇所は、ピンチ箇所相互間における先端部シールの浮動を可能にする局所ピンチ効果をもたらす。ピンチ箇所相互間の先端部シールの浮動により、これら領域における先端部シールの付勢が可能であり、かくして、これら領域での有益な封止が可能になる。
【0034】
一連の互いに間隔を置いて位置するピンチ箇所1110が
図13に示されているように出口の近くの溝1304の過度摩耗領域に設けられている。ピンチ箇所1310は、スクロール壁の螺旋広がりに沿って約10mm〜約100mmの間隔を置いて配置されているのが良い。この実施形態又は上述の他の実施形態における正確な間隔は、例えば先端部シールの固さ、絶対圧力及びスクロール壁前後の圧力差のような要因で決まる。溝の各半径方向側部のピンチ箇所は、好ましくは、挟み力を増大させるよう整列しているが、互い違いに配置されても良い。この実施形態では、ピンチ箇所は、溝を切断形成するのと同一の工具を用いて形成できる。加うるに、ピンチ箇所は、ピンチ箇所相互間における先端部シールの浮動を可能にする局所ピンチ効果をもたらす。ピンチ箇所相互間の先端部シールの浮動により、これら領域における先端部シールの付勢が可能であり、かくしてこれら領域における有益な封止が可能になる。
【0035】
別の実施形態では、ピンチ箇所1410は、固定場所において先端部シール(図示せず)の軸方向運動を拘束する手段として長方形の断面を有する。一連のピンチ箇所1410が
図14に示されているように溝1404に沿って位置決めされている。断面が長方形のピンチ箇所1410を構成することにより、断面が三角形のピンチ箇所と比較して組立ての際に先端部シールを整列させるのが容易である。加うるに、ピンチ箇所は、ピンチ箇所相互間における先端部シールの浮動を可能にする局所ピンチ効果をもたらす。ピンチ箇所相互間の先端部シールの浮動により、これら領域における先端部シールの付勢が可能であり、かくしてこれら領域における有益な封止が可能になる。
【0036】
別の実施形態では、
図15に示されているように、固定場所の長さが延長されている。この例では、ピンチ箇所1510は、上述の実施形態と比較して、螺旋広がりが長くなっている。かかる構成は、先端部シールが固定されているという性質がシールが浮動するという性質よりも選択された圧送要件について適切である場合に望ましいといえる。即ち、先端部シールのうちのより多くの部分が固定され、先端部シールのより少ない部分が自由に浮動することができる。この構成は又、固定場所相互間の間隔を減少させることにより別の手法で達成できる。
【0037】
図16は、先端部シール(図示せず)の軸方向運動を拘束する別の手段を示している。この実施形態では、先端部シールの軸方向運動を拘束する手段1610は、固定場所に溝1604のテーパした側部を含む。溝1604の側部1610は、固定場所においてテーパしており、その結果、溝1604のベースのところでの幅は、壁の端部のところでの溝1604の幅よりも小さい。かくして、先端部シール(図示せず)は、溝1604のベースの近くでぴったりと嵌まり、それにより、この固定場所のところでの先端部シールの軸方向運動が制限される。この実施形態の先端部シール構造体は、先端部シールの下での漏れを阻止し、それにより先端部シールを溝内に常時保持することができる。さらに、溝及び先端部シールの形態が簡単なので、かかる構造体は、組み立てるのが比較的容易である。
【0038】
別の実施形態としての先端部シール構造体1700が
図17aに示されている。この場合、先端部シール1701は、過度の摩耗領域において溝1704に沿って一定間隔で固定又は拘束(1716)されているが、固定場所1716の中間に制限された浮動部1718を有している。先端部シール1701は、軸方向運動を拘束する上述の手段のうちの任意ものによって固定可能である。この実施形態では、一定間隔の中間の先端部シールの別々の区分は、浮動して付勢し、それにより良好な封止をもたらす。浮動の程度は、ピンチ箇所相互間の間隔が増大するにつれて(又、局所付勢力に依存して)増大する。
【0039】
例えば
図17bに示されているように、使用の際、先端部シール1701は、対向したスクロールに圧接し、破線で示されている全体として平らな封止面を形成する。先端部シールの軸方向運動は、説明の目的上、
図17bにおいて誇張されている。封止面1720の長さは、例えば先端部シールの可撓性及び材料特性のような要因で決まる。固定場所のところの先端部シールは、対向したスクロールから軸方向に間隔を置いて位置しているので或る程度の漏れを許容するが、理解されるように、封止構造体の広い半径方向広がりは、効果的に封止するよう付勢可能である。しかしながら、固定場所相互間の別々の先端部シール部分の軸方向運動が制限され又は拘束されるので、これら先端部シール部分は、先行技術の浮動先端部シールよりも摩耗の程度が少ない。したがって、本発明の封止構造体は、点検整備又は保守を必要としないで、長期間にわたり効果的な封止をもたらす。
他の圧送状況では、過剰の圧縮がポンプの排出部寄りで生じる場合がある。即ち、ポンプは、ガスを大気圧を超える圧力まで圧縮する場合がある。一般に、これは、望ましくなく、動力の無駄である。したがって、先端部シールが排出領域において或る程度固定されると、ガスの前方漏れが生じる場合があり、かくして過剰圧縮を減少させることができる。
【0040】
図5〜
図17の実施形態において上述すると共に図示した本発明は、デブリの発生を減少させると共にスクロール型装置における先端部シールの寿命及び保守間隔を延ばす。本発明の他の実施形態及び変形例は、上述の説明及び実施形態に照らして当業者には容易に明らかになることが予想され、かかる実施形態及び変形例は同様に、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に含まれるものである。