特許第5764131号(P5764131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5764131一過性プラズマを用いて連続爆轟波を維持するための燃焼システムおよびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764131
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】一過性プラズマを用いて連続爆轟波を維持するための燃焼システムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/26 20060101AFI20150723BHJP
   F02C 9/00 20060101ALI20150723BHJP
   F02K 9/44 20060101ALI20150723BHJP
   F02K 9/52 20060101ALI20150723BHJP
   F02K 9/56 20060101ALI20150723BHJP
   F02K 9/66 20060101ALI20150723BHJP
   F02K 9/95 20060101ALI20150723BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20150723BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20150723BHJP
   F23R 7/00 20060101ALI20150723BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   F02C7/26 E
   F02C9/00 Z
   F02K9/44
   F02K9/52
   F02K9/56
   F02K9/66
   F02K9/95
   F23R3/00 D
   F23R3/28 A
   F23R7/00
   H05H1/24
【請求項の数】15
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-530855(P2012-530855)
(86)(22)【出願日】2009年12月18日
(65)【公表番号】特表2013-505399(P2013-505399A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】US2009068630
(87)【国際公開番号】WO2011037597
(87)【国際公開日】20110331
【審査請求日】2012年4月20日
【審判番号】不服2014-6622(P2014-6622/J1)
【審判請求日】2014年4月10日
(31)【優先権主張番号】61/245,034
(32)【優先日】2009年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507180364
【氏名又は名称】エアロジェット ロケットダイン オブ ディーイー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】クラフリン,スコット
【合議体】
【審判長】 加藤 友也
【審判官】 中村 達之
【審判官】 松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−261621(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0119827(US,A1)
【文献】 D.M.Davidenko,外6名,Continuous detonation wave engine studies for space application,Progress in Propulsion Physics,フランス,EDP SCIENCES,2009年 7月 9日,Vol1,p.353−366,EUCASS 2009で発表された論文を掲載,URL,http://www.eucass−proceedings.eu/articles/eucass/pdf/2009/01/eucass1p353.pdf
【文献】 Manabu Hishida,外2名,Fundamentals of rorating detonations,Shock Waves,ドイツ,Springer,2009年4月16日,2009 April/Vol.19/No.1,p.1−10
【文献】 F.WANG,外3名,TRANSIENT PLASMA IGNITION OF HYDROCARBON−AIR MIXTURES IN PULSE DETONATION ENGINES,42nd AIAA AEROSPACE SCIENCES MEETING AND EXHBIT,米国,American Institute of Aeronautics and Astronautics,2004年1月 1日,P1−8,AIAA−2004−0834
【文献】 笠原次郎、外2名,パルスデトネーションエンジン研究とその現状,日本流体力学会誌「ながれ」,日本,社団法人日本流体力学会,2007年6月25日,第26巻/第3号(第129号),p.205−213
【文献】 山本伸一、外5名,イニシエータを用いた液体燃料PDEの連続作動実験,第35回流体力学講演会講演集,日本,社団法人日本航空宇宙学会,2003年 9月29日,p291−p294
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C1/00-9/58
F23R3/00-7/00
F02K1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状燃焼室と、
少なくとも2つの推進剤を深く混合するように選択された外形を有した噴射部と、
前記推進剤の一部を混合する混合室、前記推進剤の一部に着火する点火プラグおよび前記環状燃焼室へと接線方向に爆轟波を噴射するチューブを有してなる点火システムと、
前記環状燃焼室に対して配置された一過性プラズマシステムと、
を備える、回転する連続爆轟波を維持するシステム。
【請求項2】
前記環状燃焼室の少なくとも一部が、外周壁構造体および内周壁構造体によって画定されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記一過性プラズマシステムは、前記外周壁構造体および前記内周壁構造体の一方に陽極を備え、前記外周壁構造体および前記内周壁構造体の他方に陰極を備えることを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記一過性プラズマシステムは、前記環状燃焼室内において低エネルギかつ高電圧のパルスを発生させることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記低エネルギかつ高電圧のパルスは、10〜100キロボルトで20ナノ秒であることを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記一過性プラズマシステムは、前記低エネルギかつ高電圧のパルスを発生させるパルス発生装置を備えることを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項7】
反応混合物を形成するために、推進剤システムから前記環状燃焼室へと推進剤を通流させる噴射システムをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記一過性プラズマシステムは、前記反応混合物と連通する低エネルギかつ高電圧のパルスを発生させることを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記推進剤システムは、酸化剤を備えることを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記環状燃焼室は、連続爆轟波エンジン内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記環状燃焼室は、空気吸入エンジン内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
環状燃焼室と、一過性プラズマシステムと、混合室、点火プラグおよびチューブを有した点火システムと、を備えてなる爆轟波エンジンで用いられる燃焼方法であって、
前記一過性プラズマシステムを用いて前記環状燃焼室内において低エネルギかつ高電圧のパルスを発生させることにより回転する爆轟波を維持し、
前記点火システムのチューブを用いて、前記環状燃焼室へと接線方向に爆轟波を噴射し、
前記点火システムを用いて前記回転する爆轟波に点火することを含む燃焼方法。
【請求項13】
動作全体にわたって前記低エネルギかつ高電圧のパルスを連続的に発生させることをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の燃焼方法。
【請求項14】
前記回転する爆轟波が点火されたときに前記点火システムを停止することをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の燃焼方法。
【請求項15】
動作全体にわたって、前記低エネルギかつ高電圧のパルスを連続的に発生させることをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続爆轟波エンジンに関し、特に、該連続爆轟波エンジンの回転する爆轟波の維持に関する。
【0002】
なお、本発明は、2009年9月23日に出願された米国仮特許出願第61/245034号の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
連続爆轟波エンジンは、環状燃焼室において、回転する爆轟波を発生させる。種々の要因により、回転する爆轟波が弱まるとともに放散するので、回転する爆轟波を維持することが困難となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】連続爆轟波エンジンの概略図である。
図2】回転する爆轟波を示す、連続爆轟波エンジンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1には、連続爆轟波エンジン(CDWE)20が概略的に示されている。連続爆轟波エンジン20は、小型かつ効率的なシステムを提供し、該システムは、比較的低い供給圧力および比較的高い燃焼効率を可能とする。連続爆轟波エンジンにより、エネルギの利用率が高くなる。
【0006】
連続爆轟波エンジン20は、一般に、外周壁構造体24および内周壁構造体26によって画定された環状燃焼室22を備えている。環状燃焼室22は、推進剤システム30と連通した噴射システム28によって一方の端部が閉じられており、推進剤システム30は、推進剤、例えば、反応混合物を生成する燃料および酸化剤を供給する。反応混合物は、噴射システム28によって推進剤を深く混合することにより生成される。ある噴射システム28は、混合の程度に基づいて選択される外形を有することができる。例えば、噴射システム28の外形は、衝突ジェットと、渦巻構成要素と、予混合室と、推進剤を深く混合するための他の特徴部とを備えることができる。これに限定されない一実施例においては、燃料は、エチレンを備えており、酸化剤は、酸素を備えている。また、環状燃焼室22は、噴射システム28とは反対側において、ノズル32を画定するように開いている。
【0007】
点火システム34が、回転する爆轟波に着火するように用いられる。一実施例では、点火システム34は、混合室36、点火プラグ38および接線爆轟チューブ40を備えることができる。図示されていない他の実施例においては、点火システム34は、点火プラグ38に代わりに、またはこれに加えて、パイロット点火装置、グロープラグ、自燃性燃料、自燃性流体等を有する、燃焼物に着火するための装置を用いることができる。他の実施例においては、点火システム34は、爆轟コード、イクスプロウディングワイヤ、および/または噴射部に隣接して配置された局所点火システムを備えることができる。
【0008】
図1においては、比較的少量の推進剤が混合室36内で予め混合され、点火プラグ38は、推進剤に着火し、そして、燃焼混合物(爆燃)が、接線爆轟チューブ40内において爆轟波へと遷移する。接線爆轟チューブ40は、回転する爆轟波に点火するために、環状燃焼室22へと接線方向に爆轟波を噴射する。点火システムと共に代替的または付加的な構成要素を用いることができることを理解されたい。一旦、プロセスが開始されると、一般に、付加的な点火エネルギは必要ではなく、点火システム34は停止され得る。
【0009】
推進剤は、一般に理解されるように、環状燃焼室22内の軸方向に噴射される推進剤から方位方向に通常は伝播する少なくとも1つの横断するまたは回転する爆轟波を形成するように燃焼する(図2)。回転する爆轟波は、回転爆轟前面に沿って伝播し、衝撃圧縮された混合物を燃焼させる。環状燃焼室22内の回転する爆轟波は、通常の一定圧力の燃焼のときよりも化学エネルギの利用率を増加させる。
【0010】
より効率的な熱力学特性に部分的に起因して、連続爆轟波エンジン20は、一定圧力の燃焼プロセスに依存するより通常の推進システムよりも高い性能レベルを示す。回転する爆轟波を維持することは比較的困難であり、動作環境にさらされ易い。種々の要因により、回転する爆轟波が弱まるとともに放散し、これにより、推進剤の混合が不十分となり、推進剤が反応しなくなり、さらに、噴射速度、化学反応速度、壁の伝熱や境界層の増強(build−up)等が不適当なものとなる。
【0011】
ナノ秒パルスプラズマシステムとしても知られている一過性プラズマシステム42が、回転する爆轟波を維持するために、連続爆轟波エンジン20内に配置されている。一過性プラズマシステム42は、電位が環状燃焼室22内の外周壁構造体24と内周壁構造体26との間にあるように、外周壁構造体24の陰極44および内周壁構造体26の陽極46を備えるか、または外周壁構造体24の陽極46および内周壁構造体26の陰極44を備える。パルス発生装置48が、強力でかつ高電圧であるが低エネルギのパルスを発生し、一過性プラズマPを供給するように動作する。ここで、高速の電子が環状燃焼室22を通して移動する。1つの例では、パルスは、10〜100キロボルトで20ナノ秒である。一過性プラズマPにより、高速の電子およびストリーマが生成される。高速の電子およびストリーマは、基と、イオンと、振動により励起される化学種を生成し、これにより、反応率が増加する。また、一過性プラズマPは、基の形成およびイオン化によって、化学種の反応性が大いに増加し、したがって、回転する爆轟波上の化学反応の減衰効果が最小化される。化学反応率の増加により、爆轟プロセスが増大されるとともに維持される。
【0012】
界磁電圧の非常に迅速なパルス化に基づいて、アーク放電が防止される。ここで、電子速度の損失が実質的に防止される。この構成により、連続爆轟波エンジン20は、設計や動作環境の変化にさらされなくなり、これにより、一定圧力構成のエンジンよりも向上したエネルギ解放性を備えて機能することができる。1つの例では、一過性プラズマシステム42により、通常の一定圧力のエンジンおよびバーナよりもエネルギの利用率が約37%だけ高いエンジンおよびバーナを実現することができる。これにより、反応推進システムの特定の推進力が約17%だけ増加する。
【0013】
さらに、空気吸入の用途においては、一過性プラズマシステム42は、酸素の補充を必要とすることなく、回転する爆轟波の維持を容易にすることになる。
【0014】
種々の図の全体について、同様の参照番号が、対応するまたは同様の構成要素を示すことを理解されたい。特定の構成要素の配置が図示した実施例において開示されているが、他の構成も本発明から恩恵を受けることになることを理解されたい。
【0015】
特定のステップの順序が示され、説明され、特許請求されているが、これらのステップは、他の指示が無ければ、任意の順序で実施され、分離され、または組み合わされ得るものであり、本発明から恩恵を受けたままであることを理解されたい。
【0016】
上記の説明は、例示的なものであって、限定的なものではない。本明細書では、これらに限定されない種々の実施例が説明されているが、当業者であれば、上記の教示に照らして、種々の修正および変更が、付記の特許請求の範囲内でなされることになることを理解されたい。したがって、付記の特許請求の範囲内において、本発明は、詳細に説明されたものとは異なる方法で実施され得ることを理解されたい。このため本発明の真の範囲および意義を画定するために付記の特許請求の範囲を検討するべきである。
図1
図2