特許第5764136号(P5764136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5764136機械的に駆動される共振駆動型電動歯ブラシ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764136
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】機械的に駆動される共振駆動型電動歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/34 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   A61C17/34 A
【請求項の数】12
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-538441(P2012-538441)
(86)(22)【出願日】2010年10月15日
(65)【公表番号】特表2013-510624(P2013-510624A)
(43)【公表日】2013年3月28日
(86)【国際出願番号】IB2010054693
(87)【国際公開番号】WO2011058466
(87)【国際公開日】20110519
【審査請求日】2013年10月9日
(31)【優先権主張番号】61/261,402
(32)【優先日】2009年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163810
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 広和
(72)【発明者】
【氏名】クロスター タイラー ジー
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/001302(WO,A2)
【文献】 特表2005−525067(JP,A)
【文献】 特開昭57−086307(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/026383(WO,A1)
【文献】 特表2008−539882(JP,A)
【文献】 米国特許第05378153(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルと、
端部にブラシヘッドを備えたワークピースアセンブリと、
前記ワークピースアセンブリを駆動させるための駆動アセンブリとを有し、
前記駆動アセンブリは、回転出力シャフトをもつモータと、前記モータのためのマウントアセンブリと、トーションスプリング部材と、偏心部材と、前記モータの前記回転出力シャフト及び前記偏心部材の後端部を接続するための結合部材と、ハブ部材とを含み、
前記偏心部材の他端部は、前記ハブ部材まで延在するとともに前記ハブ部材に取り付けられ、前記トーションスプリング部材は、モータマウントと前記ハブ部材との間に延在し、動作中、特定の周波数で、回転する偏心部材が、前記スプリング部材において所望の共振モードを励起し、前記ワークピースアセンブリ及び前記ブラシヘッドに対してスイープ前後動作を与える、電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記モータは、0.5〜1.5mNewton−meterにより12,000〜16,000rpmで動作する、DCモータである、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記トーションスプリング部材は、50〜120°の含められた角度、20〜60mmの範囲内の長さ、及び、0.5〜2Newton−meterの範囲内のばね定数をもつ、V字スプリングである、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項4】
動作の前記周波数は、200〜280Hzであり、前記ブラシヘッドの振幅は、7〜20°の範囲内にある、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項5】
前記偏心部材は、固体半円柱である、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項6】
前記偏心部材は、前記ハブ部材に取り付けられるブッシングに緩く取り付けられる、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項7】
前記モータマウントと前記ハンドルとの間に配置され、これらの間にフレキシブルなエネルギ吸収接続を与える弾性部材を含む、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項8】
前記偏心部材の軸とブラシアームの長手軸との間のモーメントアームは、5〜11mmの範囲内にある、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項9】
ハンドルと、
端部にブラシヘッドを備えたワークピースアセンブリと、
駆動アセンブリとを有し、
前記駆動アセンブリは、モータアセンブリと、前記ワークピースアセンブリを駆動させるためのトーションスプリング部材と、所望の共振モードで前記トーションスプリングを機械的に励起させるための、前記モータアセンブリとは別個のアセンブリとを含み、前記ブラシヘッドのスイープ前後動作を与える、電動歯ブラシにおいて、
前記モータアセンブリは、回転出力シャフトをもつDCモータであり、前記のスプリングを励起させるアセンブリは、前記DCモータの動作により回転する偏心部材を含み、回転偏心軸とブラシアームの長手軸との間のモーメントムーブメントアーム、及び、回転する偏心部材からの力は、所望のモードにおいて前記トーションスプリングを励起させるのに十分なトルクをもたらす、電動歯ブラシ。
【請求項10】
前記モータアセンブリは、0.5〜1.5Newton−meterのトルクにより12,000〜16,800rpmで動作する、DCモータである、請求項9に記載の電動歯ブラシ。
【請求項11】
動作の周波数は、200〜280Hzであり、前記ブラシヘッドの振幅は、7〜20°の範囲内にある、請求項9に記載の電動歯ブラシ。
【請求項12】
前記モータアセンブリは、モータマウントに取り付けられ、前記駆動アセンブリは、前記モータマウントと前記ハンドルとの間に配置され、これらの間にフレキシブルなエネルギ吸収接続を与える弾性部材を更に含む、請求項9に記載の電動歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、概して、電動歯ブラシに関し、より詳細には、クリーニング動作を生成するために所望の共振モードで又はその近くで励起されるトーションスプリング系を用いた駆動系に関する。
【背景技術】
【0002】
トーションスプリングアセンブリは、幾つかの電動歯ブラシのブラシアセンブリに対して駆動動作を提供するために用いられている。一の構成において、トーションスプリングは、所望のブラシヘッド動作を達成するために、振動する磁界により励起される。しかしながら、斯様な磁気的に作動される駆動系は、要求される振動磁界を生成するための正弦信号を順次必要とするカスタムアクチュエータを必要とする。正弦信号を生成するために必要な電子装置及びアクチュエータは、高価であり、歯ブラシの製造に対する複雑性を追加し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故、磁気作動装置と比較して安価であり、動作的に信頼でき、製造するのに便利であるトーションスプリング駆動系を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、電動歯ブラシは、ハンドルと、ブラシアーム及びその端部にあるブラシヘッドを含むワークピースアセンブリと、駆動アセンブリとを有し、駆動アセンブリは、モータアセンブリと、前記ワークピースアセンブリを駆動させるためのトーションスプリング部材と、所望の共振モードで前記トーションスプリングを機械的に励起し、前記ブラシヘッドのスイープ前後動作を与えるアセンブリとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】ここに開示された駆動系を備えた電動歯ブラシの部分的な分解図である。
図2図1に示された駆動系の分解図である。
図3】駆動系の斜視図である。
図4】電動歯ブラシ内の駆動系の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、電動歯ブラシを10で示している。電動歯ブラシ10は、概して、ハンドル12と、バッテリ16により給電される駆動系アセンブリ14と、端部にブラシヘッド20を備えたブラシアームアセンブリ18とを含む。電動歯ブラシ10は、オン/オフスイッチ(図示省略)により作動される。マクロプロセッサ22は、歯ブラシ10の動作を制御する。
【0007】
図2は、駆動系アセンブリ14の分解図である一方で、図3は、組み立てられた駆動系を示している。駆動系14は、DCモータ26を含む。示された実施形態において、モータ26は、0.5〜1.5mNewton−meterの範囲内のトルクを伴う、適度な低トルクを伴う比較的高速(12,000rpm〜16,800rpm)である。DCモータの利点は、その低コスト及び比較的小さなサイズであり、これらの双方は、歯ブラシにおいて重要である。しかしながら、モータの速度及びトルクは変えられ得る。
【0008】
モータ26は、概ね28で示されるモータマウントに固定され、より詳細には、ネジ31により、モータマウントの端部/フランジ30に接続され、ネジ31は、フランジ30を通ってモータの前端に延在する。モータマウントは、ハンドル12に対するグラウンドとして機能するが、これは、以下で詳細に述べられるように、ハンドルに強く固定されない。示された実施形態において、モータマウント28はプラスチックであるが、金属のような他の材料からも同様に作られ得る。モータマウント28は、半円柱壁32を含む。これは、追加される強度のために、隙間をもつリブ部材をその長さに沿って含み得る。モータマウントアセンブリ28の後部には、2つの対向するウイング部材36,36がある。Oリング38が各ウイング部材の周囲の周りに延在し、このOリング38は、ハンドルの内面と接触する。Oリングは、可塑性のプラスチック、即ち、モータマウントとハンドルとの間の非剛体の接続を与える一方で、依然としてモータマウント及びモータをハンドルに置く。この構成は、駆動系の動作のために必要ではない、駆動系のスプリング部分の動作からのエネルギの一部の吸収をもたらす。
【0009】
DCモータ26は、出力シャフト42を含む。弾性結合部材44は、出力シャフト42に固定され、ここから延在している。結合部材44は、約5mmの直径及び6mmの長さの概ね円柱である、後部又はベース部分46を含む。これに、より小さな直径(約1.5mm)の部分48が続く。偏心部材52に接続された取り付け部分50が、より小さな直径の部分48の前端部から延在している。偏心部材は、固体半円柱中央部分58の両端から延在するロッド状部分54,56を含む。偏心52の質量中心は、モータシャフト42の回転軸からずらされる。偏心52は、種々の形状をとることができるが、以下で述べられるように、これが駆動系のスプリング部分を励起するように回転するのに十分な力を生じなければならない。
【0010】
前方ロッド状部分56は、ブラシハブ部材62のブッシング部分60に延在する。示された実施形態において、ブラシハブ62は、亜鉛のような軟質金属で作られるが、プラスチックであってもよい。偏心は、緩いフィットを伴ってブッシング60に延在する。ぴったりしたフィットは、適切な動作のために望ましくない。緩いフィットは、偏心のより容易な回転をもたらす。
【0011】
また、トーションスプリング64は、モータマウント28から延在している。示された実施形態において、トーションスプリング64は、V字形状であり、示された実施形態においては約90°であるが、これは、50〜120°であってもよい。トーションバー又はコイルスプリングのような他のトーションスプリング部材が用いられてもよいが、これらは、典型的には、ユーザ負荷及び偏心からの不所望な上/下の力に耐えるための追加のベアリングサポートを必要とするだろう。トーションスプリング64は、モータマウントからブラシハブ62の下端部まで延在する。トーションスプリング64の後端部は、スプリングマウントフィッティング63を含むサポートアセンブリによりモータマウント28の前端部に接続される。ネジ66は、V字スプリングをスプリングマウントフィッティング63に取り付ける。スプリングマウントフィッティング63は、亜鉛で作られ、ネジ65によりモータマウントに取り付けられる。しかしながら、フィッティング63は、射出成形されたプラスチックモータマウントの部分であってもよい。トーションスプリング64の他端部は、類似のフィッティング67及び関連するネジ78によりブラシハブ62の下端部に捕獲される。
【0012】
V字スプリング64の前端部は、偏心52の前端部の下に配置される。これは、図3,4において最もはっきりと示されている。示された実施形態において、V字スプリング64は、20〜60mmの長さであり、0.6〜2Newton−meter/radianの間で変化し得るばね定数を有する。V字スプリングは、示された実施形態においては約0.3mmの厚さのばね鋼で作られるが、この厚さは、0.2〜0.8mmの範囲内にあってもよい。各上縁部に沿ったV字スプリングは、その前端部及び後端部に2つの小さな耳状の突起部72,73をもつ切り欠き部分70を有する。切り欠き部分は、約3mmの深さである。切り欠きは、V字スプリングの変形部分からその両端部の固いクランプまでの段階的剛性遷移を与える。これは、スプリングにおけるより段階的でより低い応力勾配をもたらす。
【0013】
ブラシヘッド駆動シャフト82は、ブラシハブ62(図4)の下端部付近のブラシハブ62の前面80から延在している。ブラシアームアセンブリ18は、除去可能な態様でブラシヘッド駆動シャフト82に取り付けられる。
【0014】
偏心52の回転軸とブラシアームアセンブリ及びV字スプリングの軸との間の距離は、駆動系のモーメントアームと呼ばれる。モーメントアームが大きくなると、偏心が回転するのでこの偏心によりより多くのトルクが生成される。一般に、モーメントアームは、便利なサイズの歯ブラシのためにできるだけ小さくすべきであるが、効果的なクリーニング動作をもたらすようにスプリング30を励起するために必要とされるトルクを生成するのに十分大きくなければならない。4〜11mmのモーメントアームは、典型的には、必要なトルクを与えるのに十分である。
【0015】
動作中、正確な周波数でのDCモータ26の動作による偏心部材52のスプリングは、所望の共振モードにおいてV字スプリング64を励起し、ブラシアームアセンブリ及びブラシヘッドのための所望の動作を順次生成する。示された実施形態において、ブラシヘッド動作の生ずる周波数は、200〜280Hzである。V字スプリングは、スイープ交互(双方向)動作に対する偏心52の動作を含む。これは、V字スプリングがねじれについて柔軟、即ち柔らかく、曲げについて固いためである。即ち、これは、長さに沿ったねじれ動作に対して従順である一方で、曲げ動作に耐える。スプリングの剛性に依存して、ブラシアームアセンブリの交互(前後)動作の共振周波数が変えられ得る。前記の構成によれば、ブラシヘッド20の振幅は、全体で10°、中間の両側で±5°になるが、全体の振幅は最大で20°であり得る。
【0016】
振幅は、スプリング部材の剛性、偏心の質量及び離心率の量(偏心質量の中心から外れた距離)、物品の動作の頻度、V字スプリング回転軸と回転の偏心中心並びに系の回転部分の回転慣性、により制御され得る。前述したように、スイープ動作をもたらすV字スプリングは、DCモータ及び偏心により所望の共振モードで機械的に励起される。この構成は、比較的低コストでの信頼性があり効果的な動作を伴う電動歯ブラシを提供する。
【0017】
好ましい実施形態が例示の目的で開示されたが、特許請求の範囲により規定された本発明の精神から逸脱することなく、種々の変更、修正及び置換が好ましい実施形態において行われ得ることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4