(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764138
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】電気掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/00 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
A47L9/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-542638(P2012-542638)
(86)(22)【出願日】2010年9月21日
(65)【公表番号】特表2013-513407(P2013-513407A)
(43)【公表日】2013年4月22日
(86)【国際出願番号】IB2010054260
(87)【国際公開番号】WO2011070452
(87)【国際公開日】20110616
【審査請求日】2013年9月6日
(31)【優先権主張番号】09178626.9
(32)【優先日】2009年12月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル コーイ ヨハンネス セアルド
(72)【発明者】
【氏名】フォールホルスト フォッケ ロエロフ
(72)【発明者】
【氏名】デ ヴィト バスティアーン ヨハンネス
【審査官】
芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−183816(JP,A)
【文献】
実開昭57−143058(JP,U)
【文献】
英国特許出願公開第01400106(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/00
A47L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのごみ室と、モータと、ファンユニットとを有する、乾いたごみのための電気掃除機であって、前記ファンユニットは、前記モータにより駆動可能に構成され、前記ごみ室は、空気取り入れ口と、ファンユニットと連通する空気排出口とを備え、前記ごみ室は、前記ごみ室を通る空気の流れを制限するための可動体を有する電気掃除機において、使用時に、前記ごみ室が前記モータの動作により振動し、使用時に前記可動体が、異なるサイズの粒子の混合物を含む粒状物質が振り混ぜられると最も大きな粒子が最終的に表面に現れるという事実を示す、前記可動体と乾いたごみとの間の動的な選別により、前記ごみ室に集められた前記乾いたごみの上に位置するようにされることを特徴とする、電気掃除機。
【請求項2】
前記可動体は、前記空気排出口を閉じるための弁を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記ごみ室を振動させるための手段を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記可動体を振動させるための手段を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記可動体は、前記空気取り入れ口と前記空気排出口との間において、前記ごみ室の壁部に枢動可能に接続されたことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記可動体は直線状のガイドによりガイドされることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項7】
前記ごみ室は、前記空気排出口の近くにおいて先細形状の部分を備えたことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項8】
前記電気掃除機は、比較的小さな粒子から比較的大きなごみ粒子を分離するための前分離器を有し、前記前分離器は前記空気取り入れ口と前記ごみ室との間に配置されたことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項9】
前記ファンユニットは、モータと、前記モータにより回転可能な真空ファンと、前記真空ファンに接続された遠心ファンと、を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項10】
前記可動体は、前記遠心ファンへの空気の流れを閉じるための手段を有することを特徴とする、請求項9に記載の電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのごみ室とファンユニットとを有する、乾いたごみのための電気掃除機であって、前記ごみ室は、空気取り入れ口と、ファンユニットと連通する空気排出口とを備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
斯かる電気掃除機は米国特許US5,062,870より知られており、表面からごみを取り除くために利用されている。モータ駆動のファンユニットにより、該電気掃除機を通る空気流が生成される。該既知の電気掃除機は、空気取り入れ口とごみ室との間の一定の差圧で、該空気取り入れ口を閉じるための可動式の弁を備える。空気取り入れ口を閉じることにより、該電気掃除機がごみで一杯になったときに、空気により運ばれるごみが該電気掃除機に入ることが防がれる。
【0003】
乾いたごみを取り除くための電気掃除機においては、モータを駆動するために必要な電流、又はファンユニットを回転させるために必要なモータトルクを検出することも知られている。トルクレベルの電流が所定のレベルに到達すると、このことはごみ室が一杯になった示唆となる。
【0004】
英国特許GB1,400,106は、特に表面から固体及び液体の両方と取り除くための吸引掃除機であって、例えばノズル及び取り入れ口に結合されたホースを介して吸い上げられた物質を吸い入れる容器に装着されたモータファンユニットと、該ユニットの吸気口からは離隔されているものの該吸気口に亘って延在するフィルタ膜と、を有し、該掃除機は、該フィルタ膜の部分的な目詰まりによる該掃除機の操作の間に生じる該吸気口における圧力降下を検出可能であり、及び/又は該容器における液体レベルに応じて移動させられる部材による係合により、該フィルタと該取り入れ口との間に支持された封止パッドが該取り入れ口を閉じるようにさせ、それによって物質の吸い上げを止める吸引掃除機を開示している。該フィルタは、該パッドにより該取り入れ口を閉じるコイルばねの動作に抗して移動させられ、該フィルタの移動は、液体が集められるときには、フロートにより作動される、クランクで動かされる腕部により支援される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ごみ室が一杯になったときに、空気取り入れ口を制限する、好適には閉じるための手段を備えた、乾いたごみのための電気掃除機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的は、前記ごみ室は、前記ごみ室を通る空気の流れを制限するための可動体を有し、使用時に前記可動体が、異なるサイズの粒子の混合物を含む粒状物質が振り混ぜられると最も大きな粒子が最終的に表面に現れるという事実を示す、前記可動体と乾いたごみとの間の動的な選別により、前記ごみ室に集められた前記乾いたごみの上に位置するようにされる、本発明による電気掃除機により達成される。
【0007】
可動体は、ごみ室に集められた乾いたごみ又は埃の比較的小さな粒子よりも大きい。モータ駆動型のファンユニットにより、ごみ室は振動させられる。ごみ室を振動させることにより、乾いたごみ、埃及び可動体が振動させられ、それにより比較的大きな可動体が、比較的軽く小さな乾いたごみ粒子の上に「浮かび」始める。なぜなら、小さな乾いたごみは、可動体の下の空間を満たすであろうからである。ごみ室が乾いたごみで一杯になると、可動体が空気取り入れ口又は空気排出口に到達してこれらを閉じるまで、乾いたごみ粒子により可動体が上方向に移動させられる。可動体が移動させられる間、可動体と空気取り入れ口又は空気排出口との間の流通口が小さくされ、従って、ごみ室を通って空気が流れなくなり、空気の流れが最終的に制限される即ち閉じられるまで、ごみ室を通る空気流が制限される。動的な選別の現象は、異なるサイズの粒子の混合物を含む粒状物質が振り混ぜられると最も大きな粒子が最終的に表面に現れるという事実から、「ブラジルナッツ効果」とも呼ばれる。
【0008】
本発明による電気掃除機の一実施例は、前記可動体は、前記空気排出口を閉じるための弁を有することを特徴とする。
【0009】
好適には、空気排出口は、ごみ室において空気取り入れ口よりも高い位置に配置される。空気排出口を閉じることにより、空気の流れが可動体により制限される前に、より多くのごみがごみ室に集められることができる。
【0010】
本発明による電気掃除機の他の実施例は、前記ごみ室を振動させるための手段を有することを特徴とする。
【0011】
単に振動手段によるごみ室の振動又は可動体の振動により、可動体と乾いたごみ粒子との間の振動が促進され、それ故可動体は乾いたごみ粒子上に容易に配置されるようになる。
【0012】
本発明による電気掃除機の更に他の実施例は、前記可動体は、前記空気取り入れ口と前記空気排出口との間において、前記ごみ室の壁部に枢動可能に接続されることを特徴とする。
【0013】
乾いたごみを運ぶ空気は、空気取り入れ口を介してごみ室に入る。該空気は、枢動可能な可動体に向かうよう向きを変えられ、それにより空気排出口に向かって動くことにより可動体を支持する。
【0014】
本発明による電気掃除機の更に他の実施例は、前記可動体は直線状のガイドによりガイドされることを特徴とする。
【0015】
斯かる直線状のガイドを用いることにより、可動体の制御された動きが得られる。
【0016】
本発明による電気掃除機の更なる実施例は、前記ごみ室は、前記空気排出口の近くにおいて先細形状の部分を備えることを特徴とする。
【0017】
可動体又は可動体の少なくとも一部は、空気排出口に向かって先細形状の部分によりガイドされる。
【0018】
本発明による電気掃除機の更に他の実施例は、前記ファンユニットは、モータと、前記モータにより回転可能な真空ファンと、該ファンに接続されたごみ分離器と、を有することを特徴とする。
【0019】
ごみ室の空気排出口を通過する乾いたごみの非常に小さな粒子は、空気が雰囲気へと放出される前に、ごみ分離器により空気から分離される。該乾いたごみの非常に小さな粒子は、電気掃除機内に残ることとなる。
【0020】
本発明は、図面を参照しながら、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1(A)】空気排出口が開いた、本発明による電気掃除機の第1の実施例の模式的な側面図である。
【
図1(B)】空気排出口が閉じた、本発明による電気掃除機の第1の実施例の模式的な側面図である。
【
図2】本発明による電気掃除機の第2の実施例の模式的な側面図である。
【
図3】本発明による電気掃除機の第3の実施例の模式的な側面図である。
【
図4(A)】空気排出口が開いた、本発明による電気掃除機の第4の実施例の模式的な側面図である。
【
図4(B)】空気排出口が閉じた、本発明による電気掃除機の第4の実施例の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面において、同様の部分は同一の番号により示されている。
【0023】
図1A及び1Bは、本発明による電気掃除機1を示し、該電気掃除機1は、壁部6によりごみ室3とファンユニット5のための室4とに分けられた筺体2を有する。ごみ室3は、空気取り入れ口7と、壁部6に配置された空気排出口8とを有する。可動体9がごみ室3に配置され、枢動軸10のまわりに枢動可能である。枢動軸10は、空気取り入れ口7と空気排出口8との間で筺体2に接続されている。可動体9は、空気排出口8を閉じるために空気排出口8に対して位置決め可能な弁11を備える。
【0024】
ファンユニット5は、モータ12、モータ12により回転可能なファン13、及びファン13に接続されファン13と共に回転可能なごみ分離器14を備える。ごみ分離器14は、フィルタ又はサイクロン型の分離器であっても良い。
【0025】
本発明による電気掃除機1は、以下のように動作する。既知の方法で、空気取り入れ口7に管が接続される。該管は、空気取り入れ口7とは離れた端において、既知の態様でノズルを備えていても良い。モータ12が駆動され、それによりファン13及びごみ分離器14が回転させられ、空気の流れが、空気取り入れ口7から壁部6における空気排出口8を介してファン13に向けて、更にはファン13を通って、矢印P1及びP2により示される方向に生成される。乾いたごみを含む空気は、空気取り入れ口7を通ってごみ室3へと流れ、ごみ室3の底部において乾いたごみが集められる。モータ12の振動により、小さな乾いたごみ粒子15が、より大きな可動体9の下の空間を満たし、それにより可動体9が乾いたごみ粒子15の上に動き始める。可動体9は枢動軸10のまわりに枢動し、可動体9の下の乾いたごみ粒子15の量が大きくなって、弁11が壁部6に位置するようになり、空気排出口8が弁11により閉じられるまで、弁11が上に移動させられる(
図1Bを参照)。空気排出口8が閉じられていると、空気は空気取り入れ口7へと吸い込まれなくなる。ユーザはこのことを認識し、ごみ室3が乾いたごみで一杯になっており空にされる必要があることに気付くこととなる。
【0026】
図2は、ごみ室23を有する本発明による電気掃除機21を示す。ごみ室23は、空気取り入れ口27と、先細形状の壁部26に配置された空気排出口28と、を有する。可動式のボール型弁29がごみ室23に配置され、ワイヤ30により空気出口32の壁部31に接続されている。ファンユニット(図示されていない)が、ごみ室23の空気排出口28とは離れた空気出口の端に備えられている。
【0027】
ごみ室23が小さな乾いたごみ粒子15で一杯になると、ごみ粒子15に対する弁29の振動により、弁29はごみ粒子15の上に留まる。これら振動は、個別の振動手段により実現されても良いし、又はファンユニットのモータの振動により引き起こされても良い。ボール型弁29は、弁29が空気排出口28を閉じるまで、先細形状の壁部26によって空気排出口28へとガイドされる。
【0028】
図3は、本発明による電気掃除機41を示し、該電気掃除機41は、第2のごみ室23とも呼ばれるごみ室23を有する。ごみ室23は、
図2に示されたごみ室と同様のものである。電気掃除機41は更に、第1のごみ室43とも呼ばれるごみ室43を有する。ごみ室43は、空気取り入れ口44、比較的大きなごみ粒子のためのごみフィルタ45、及び空気排出口46を備える。空気排出口46は、ごみ室23の空気取り入れ口27に管47により接続されている。電気掃除機41により、大きなごみ粒子15が第1のごみ室43に集められ、小さなごみ粒子15は第2のごみ室23に集められる。フィルタ45を備えた第1のごみ室43は前分離器として機能し、第2のごみ室23において更なる分離工程が行われる。このようにして、第2のごみ室23に配置された分離装置は、比較的小さなごみ粒子を空気から分離するのに適したものでさえあれば良い。該分離装置は、遠心ファン又はフィルタを有しても良い。ボール型弁29は、動的な選別の効果のため乾いたごみ粒子15の上に留まる。
【0029】
図4A及び4Bは、本発明による電気掃除機の第4の実施例51を示し、該電気掃除機51は、壁部56によってごみ室53とファンユニット55のための室54とに分割された筺体52を有する。ごみ室53は、空気取り入れ口57を有する。可動体59がごみ室53中に配置され、壁部56に垂直な方向にガイド(見えていない)によりガイドされる。可動体59は、壁部56に向かって延在する漏斗状の部分60を有する。
【0030】
ファンユニット55は、モータ62と、モータ62により回転可能な真空ファン63と、真空ファン63に接続されファン63と共に回転可能な遠心ファン64と、を備える。遠心ファン64は、ごみ室53の中に配置される。空気は遠心ファン64を獲ってごみ室53から出て、それにより残りの空気中のごみ粒子は遠心力により空気から取り除かれる。使用時には可動体59は、壁部56に向かって、ごみ室53に集められたごみ粒子15により上へと移動させられる。可動体59の漏斗状の部分60が壁部56に接触するとすぐに、ごみ分離器64に向かう空気の流れが遮断される。
【0031】
本発明は図面及び以上の記述において説明され記載されたが、斯かる説明及び記載は説明するもの又は例示的なものとみなされるべきであり、本発明は開示された実施例に限定されるものではない。
【0032】
例えば、ごみ室に対して可動体自体を振動させることも可能である。
【0033】
また、枢動軸10を室4の中に配置し、可動体9に開口8を通って延在する腕部を備えることも可能である。
【0034】
部分60は、漏斗状ではない他の種類の形状を持っても良い。
【0035】
図面、説明及び添付される請求項を読むことにより、請求される本発明を実施化する当業者によって、開示された実施例に対する他の変形が理解され実行され得る。請求項において、「有する(comprising)」なる語は他の要素又はステップを除外するものではなく、「1つの(a又はan)」なる不定冠詞は複数を除外するものではない。請求項におけるいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0036】
当業者は理解するように、電気掃除機の概念は、空気の流れにより該空気の流れにおいて粒子の輸送を引き起こすことにより床を掃除するのに適した装置として解釈されるべきである。空気の流れは、必ずしも通常の電気掃除機のように真空により引き起こされる必要はなく、例えば、床面に接触し殆どの最先端の電気掃除機におけるような真空の生成ではないプロペラ機構により粒子を含む空気を吸い上げる、1つ以上の回転ブラシにより、引き起こされても良い。電気掃除機の概念は、圧力差が存在してごみを含む空気の輸送を引き起こすことを意味している。