特許第5764151号(P5764151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5764151(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸又はそのエステルの酵素的合成の方法、ならびにイバブラジン及びその塩の合成における適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764151
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸又はそのエステルの酵素的合成の方法、ならびにイバブラジン及びその塩の合成における適用
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/40 20060101AFI20150723BHJP
   C12P 7/62 20060101ALI20150723BHJP
   C07D 223/16 20060101ALI20150723BHJP
   C12P 41/00 20060101ALI20150723BHJP
   C07C 62/34 20060101ALI20150723BHJP
   C07C 51/09 20060101ALI20150723BHJP
   C07C 217/58 20060101ALI20150723BHJP
   C07C 213/08 20060101ALI20150723BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   C12P7/40
   C12P7/62
   C07D223/16 Z
   C12P41/00 F
   C07C62/34
   C07C51/09
   C07C217/58
   C07C213/08
   !C07B61/00 300
【請求項の数】24
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-21114(P2013-21114)
(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公開番号】特開2013-162788(P2013-162788A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2013年4月8日
(31)【優先権主張番号】1251195
(32)【優先日】2012年2月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500287019
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100122736
【弁理士】
【氏名又は名称】小國 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100132540
【弁理士】
【氏名又は名称】生川 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(72)【発明者】
【氏名】サンドリーヌ・ペドラゴサ・モロー
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・ルフロン
【審査官】 菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/138625(WO,A1)
【文献】 特開2010−047563(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01598333(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02166004(EP,A1)
【文献】 Paravidino M. et al.,Resolution of Carboxylates with a non-functionalized stereogenic center at the alpha-position,Enzyme Catalysis in Organic Synthesis,2012年 2月 1日,Vol.1,pp.266-270
【文献】 Pietruszka J. et al.,European Journal of Organic Chemistry,2009年,No.35,pp.6217-6224
【文献】 Fazlena H. et al.,Bioprocess and Biosystems Engineering,2006年,Vol.28, No.4,pp.227-233
【文献】 Lin H-Y. et al.,Journal of Molecular Catalysis B,2003年,Vol.24-25,pp.111-120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/62
C12P 41/00
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia):
【化20】

で示される光学的に純粋な化合物の合成方法であって、
式(X):
【化21】

で示される、ラセミ酸又は他の光学的に純粋でない酸の、
アルコールROH[ここで、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C−Cアルキル基を表す]と有機共溶媒との混合物中、
溶媒混合物の1リットルあたり式(X)の化合物の5〜500g/Lの濃度で、
10/1〜1/100のE/S比で、
25℃〜40℃の温度で、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)又はシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)のリパーゼを用いる、
エナンチオ選択的酵素エステル化による、合成方法。
【請求項2】
E/S比が、1/5〜1/10である、請求項1記載の合成方法。
【請求項3】
アルコールROHがメタノールであり、そして共溶媒がアセトニトリルである、請求項1又は2記載の合成方法。
【請求項4】
アセトニトリル/メタノールの比が、8/2〜9/1である、請求項記載の合成方法。
【請求項5】
酵素的エステル化方法中にリサイクルするために、下記:
【化22】

で示される反応の二次生成物である、配置(R)のエステルを、塩基の作用によって加水分解して、式(X)のラセミ酸を形成する、請求項1〜のいずれか一項記載の合成方法。
【請求項6】
塩基がKOHである、請求項記載の合成方法。
【請求項7】
加水分解/ラセミ化工程が、インサイチューで実施される、請求項5又は6記載の合成方法。
【請求項8】
式(Ia)の酸が、酵素的エステル化の1回以上のサイクルの後で単離される、請求項1〜のいずれか一項記載の合成方法。
【請求項9】
式(Ib):
【化23】

[式中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C−Cアルキル基を表す]で示される光学的に純粋な化合物の合成方法であって、
式(XI):
【化24】

[式中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C−Cアルキル基を表す]で示される、ラセミエステル又は他の光学的に純粋でないエステルの、
水中、pH=5〜8の緩衝液中、又は有機溶媒と水もしくはpH=5〜8の緩衝液との混合物中、
溶媒又は溶媒混合物の1リットルあたり式(XI)の化合物の1〜200g/Lの濃度で、
10/1〜1/100のE/S比で、
25℃〜40℃の温度で、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)又はシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)のリパーゼを用いる、
エナンチオ選択的酵素加水分解により、そして
続く、式(Ib)のエステルの単離による、合成方法。
【請求項10】
E/S比が、1/5〜1/10である、請求項9記載の合成方法。
【請求項11】
Rが、メチル基である、請求項9又は10記載の合成方法。
【請求項12】
反応が、アセトニトリルとpH=7の緩衝液との混合物中で実施される、請求項9又は10記載の合成方法。
【請求項13】
アセトニトリル/緩衝液(pH=7)の比率が、8/2〜9/1である、請求項12記載の合成方法。
【請求項14】
酵素加水分解方法中にリサイクルするために、下記:
【化25】

で示される反応の二次生成物である、配置(R)の酸を、
塩基の作用によりラセミ化し、そして次にそれにより得たラセミ酸をアルキル化して、式(XI)のラセミエステルを形成する、請求項9〜13のいずれか一項記載の合成方法。
【請求項15】
配置(R)の酸を、高温状態でのKOHの作用によりラセミ化する、請求項14記載の合成方法。
【請求項16】
酵素加水分解方法中にリサイクルするために、下記:
【化26】

で示される反応の二次生成物である、配置(R)の酸を、
最初にアルキル化し、そして次にそれにより得た配置(R)のエステルを塩基の作用によりラセミ化する、請求項9〜15のいずれか一項記載の合成方法。
【請求項17】
配置(R)のエステルを、高温状態でのDBUの作用によるか、又は周囲温度でのKOHの作用により、ラセミ化する、請求項16記載の合成方法。
【請求項18】
式(III):
【化27】

で示される化合物の合成方法であって、式(IV):
【化28】

で示されるニトリルから出発し、これを加水分解して、式(X):
【化29】

で示されるラセミ酸を形成し、
これの請求項1〜のいずれか一項による酵素的エステル化により、式(Ia):
【化30】

で示される光学的に純粋な酸を生成し、次にこれを、式(XII):
【化31】

で示される光学的に純粋なアミドに変換し、これの還元により、式(III)で示される化合物を得る、合成方法。
【請求項19】
式(III):
【化32】

で示される化合物の合成方法であって、式(IV):
【化33】

で示されるニトリルから出発し、これを加水分解して、式(X):
【化34】

で示されるラセミ酸を形成し、そして次にアルキル化して、式(XI):
【化35】

[式中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C−Cアルキル基を表す]で示されるラセミエステルを形成し、
これの請求項9〜17のいずれか一項による酵素加水分解により、式(Ib):
【化36】

[式中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C−Cアルキル基を表す]で示される光学的に純粋なエステルを生成し、これを、式(XII):
【化37】

で示される光学的に純粋なアミドに変換し、これの還元により、式(III)で示される化合物を得る、合成方法。
【請求項20】
式(III)の化合物を形成するための式(XII)の化合物の還元を、BH、NaBH又はLiAlHにより実施する、請求項18又は19記載の合成方法。
【請求項21】
式(III)の化合物をその次に、
式(XIII):
【化38】

[式中、Xは、ハロゲン原子を表す]で示される化合物とカップリングするか、或いは、
式(XIV):
【化39】

[式中、Rは、CHO及びCHRより選択される基を表し、ここで、R及びRは、各々、直鎖状もしく分岐鎖状(C−C)アルコキシ基を表すか、又はそれらを担持する炭素原子と一緒になって、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソランもしくは1,3−ジオキセパン環を形成する]で示される化合物と、還元剤の存在下、還元的アミノ化反応に供するかのいずれかにより、
イバブラジンを生成し、次にこれを薬学的に許容しうる酸との付加塩(該塩は、無水又は水和物の形態である)に変換する、
請求項18〜請求項20のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項22】
Xがヨウ素原子である、請求項21記載の合成方法。
【請求項23】
式(III)の化合物を、還元的アミノ化反応において、その塩酸塩の形態で使用して、イバブラジンを塩酸塩の形態で得る、請求項21記載の合成方法。
【請求項24】
式(XIV)の化合物との還元的アミノ化反応を、パラジウム担持炭素によって触媒される二水素の存在下で実施する、請求項21又は23記載の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】

[式中、Rは、水素原子又はC−Cアルキル基、好ましくはメチルを表す]で示される化合物の酵素的合成の方法に関し、そしてまた、式(II):
【化2】

で示されるイバブラジン、すなわち3−{3−[{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}(メチル)アミノ]−プロピル}−7,8−ジメトキシ−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン、薬学的に許容しうる酸とのその付加塩及びそれらの水和物の合成におけるその適用に関する。
【0002】
イバブラジン、及び薬学的に許容しうる酸とのその付加塩、ならびにより特別にはその塩酸塩は、非常に有益な薬理学的及び治療的特性、特に徐脈特性を有しており、これらの特性により、それらの化合物は、狭心症、心筋梗塞及び関連する律動障害のような心筋虚血の種々の臨床症状の治療又は予防において、ならびに律動障害、特に上室性律動障害が関与する種々の病理学において、及び心不全において有用となっている。
【0003】
イバブラジン及び薬学的に許容しうる酸とのその付加塩、ならびにより特別にはその塩酸塩の調製及び治療的使用は、欧州特許明細書 EP 0 534 859に記載されている。
【0004】
前記特許明細書は、式(III):
【化3】

で示される化合物、すなわち(7S)−1−(3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル)N−メチルメタンアミンから出発する、イバブラジン塩酸塩の合成について記載している。
【0005】
式(III)の化合物は、イバブラジン及びその薬学的に許容しうる塩の合成において重要な中間体である。
【0006】
従来技術は、式(III)の化合物を得るための幾つかの方法を開示している。
【0007】
特許明細書 EP 0 534 859は、式(III)の化合物の合成であって、
式(IV):
【化4】

で示されるラセミニトリルのテトラヒドロフラン中のBHによる還元、
続く、塩酸の付加により、式(V):
【化5】

で示されるラセミアミンの塩酸塩を生成し、
これを、クロロギ酸エチルと反応させて、式(VI):
【化6】

で示されるカルバメートを生成し、
これのLiAlHによる還元により、式(VII):
【化7】

で示されるラセミメチル化アミンを生成し、
これのカンファースルホン酸を使用する分割により、式(III)の化合物を得る、
式(III)の化合物の合成について記載している。
【0008】
この方法は、式(IV)のラセミニトリルから出発して、式(III)の化合物を2〜3%のわずかな低収率でしか得られない欠点を有している。この非常な低収率は、式(VII)の第二級アミンの分割工程の低収率(4〜5%)が原因である。
【0009】
特許明細書 EP 1 598 333は、式(III)の化合物を得ることであって、
式(V)のラセミ第一級アミンを、式(VIII):
【化8】

で示される光学的に活性なアミンに、
N−アセチル−L−グルタミン酸を使用する分割により、
続く、上記と同じ反応順序(カルバメートへの変換、続く還元)を使用するメチル化により、式(III)の化合物を得ることについて記載している。分割工程の収率は、39%である。
【0010】
特許明細書 EP 2 166 004は、式(III)の化合物を得ることであって、
キラルクロマトグラフィーでの式(IV)のラセミニトリルの光学分割により、式(IX):
【化9】

で示される光学的に純粋なニトリルを生成し、
これをNaBHで還元して、式(VIII)の第一級アミンを生成して、次にこれを、上記と同じ反応順序(カルバメートへの変換、続く還元)を使用するメチル化により、式(III)の化合物を得ることについて記載している。分割工程の収率は、45%である。
【0011】
本発明の課題は、特に良好な収率を、より特別には分割工程のために有する、効果的な方法を使用し、式(III)の化合物を得ることであった。
【0012】
キラル分子を得ることを可能にする生体触媒の使用は、従来の有機合成に代わるものとしてますます有益なものになってきたようである。実際、化学−、位置−及び立体−選択性のような固有の自然特性を有する酵素の使用は、環境を尊重するグリーンケミストリー(環境に優しい化学)における試薬として酵素が使用されることを可能にしている。
【0013】
本明細書に記載される事例において、リパーゼ(酵素の国際分類番号:EC 3.1.1.3)又はエステラーゼ(EC 3.1.1.1)のように補助因子なしで機能する加水分解酵素(ヒドロラーゼ)の使用は、キラル化合物(薬学的活性成分の合成における重要な中間体)を高い鏡像体過剰率及び良好な収率で得ることを可能にする。
【0014】
より具体的には、本発明は、式(Ia):
【化10】

で示される光学的に純粋な化合物の合成方法であって、
式(X):
【化11】

で示される、ラセミ酸又は他の光学的に純粋でない酸の、
アルコールROH[ここで、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C−Cアルキル基を表す]と有機共溶媒との混合物中、
5〜500g/L、好ましくは溶媒混合物の1リットルあたり式(X)の化合物の100g〜200gの濃度で、
10/1〜1/100、好ましくは1/5〜1/10のE/S比で、
25℃〜40℃の温度で、リパーゼ又はエステラーゼを用いる、
エナンチオ選択的酵素エステル化による、合成方法に関する。
【0015】
本発明による酵素的エステル化方法において使用し得るリパーゼ及びエステラーゼには、いかなる限定もするわけではないが、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ムコ−ル・ジャバニカス(Mucor javanicus)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)及びペニシリウム・カメンベルティ(Penicillium camemberti)のリパーゼ、及びリゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、ムコ−ル・ミエヘイ(Mucor miehei)及びリゾプス・ニヴェウス(Rhizopus niveus)のエステラーゼを挙げることができる。
【0016】
本発明による好ましいリパーゼは、カンジダ・アンタークティカのリパーゼ及びシュードモナス・フルオレッセンスのリパーゼである。
【0017】
カンジダ・アンタークティカのリパーゼには、例として、ポリマー・マトリクス、特にアクリル樹脂に固定化したリパーゼ、例えばNovozym(登録商標)435(Novozymes社製)又はSPRIN adsorbed CALB(登録商標)(Sprin Technologies社製);又はポリスチレン樹脂に固定化したリパーゼ、例えばSPRIN actiplus CALB(登録商標)、SPRIN acti CALB(登録商標)又はSPRIN lipo CALB(登録商標)(Sprin Technologies社製);或いは、アクリルエポキシ樹脂に固定化したリパーゼ、例えばSPRIN epobond CALB(登録商標)(Sprin Technologies社製)を挙げることができる。
【0018】
アルコールROHは、好ましくはメタノール又はエタノールである。共溶媒は、好ましくはアセトニトリル、トルエン、MTBEまたはn-ヘプタンである。好ましい共溶媒/ルコールの比は、8/2〜9/1である。本発明による酵素的エステル化スキームは、下記のとおりである:
【化12】
【0019】
有利には、反応の二次生成物である、配置(R)のエステルは、酵素的エステル化方法中にリサイクルするために、塩基、好ましくはKOH、DBU、トリエチルアミン、DABCO、TBD、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド又はKCOの作用によって加水分解して、式(X)のラセミ酸を形成することができる。加水分解/ラセミ化工程をインサイチューで実施する場合、本発明による方法は、動的速度論的分割(DKR)方法であり、これにより、式(Ia)のS酸をee≧98%及び収率≧65%で得ることを可能にする。
【0020】
式(Ia)の酸は、好ましくは、酵素的エステル化の1回以上のサイクルの後で反応混合物から単離する。
【0021】
本発明の別の態様は、式(Ib):
【化13】

[式中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C−Cアルキル基、好ましくはメチル又はエチルを表す]で示される光学的に純粋な化合物の合成方法であって、
式(XI):
【化14】

[式中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C−Cアルキル基を表す]で示される、ラセミエステル又は他の光学的に純粋でないエステルの、
水中、pH=5〜8の緩衝液中、又は有機溶媒と水もしくはpH5〜8の緩衝液との混合物中、
1〜200g/L、好ましくは溶媒又は溶媒混合物の1リットルあたり式(XI)の化合物約100gの濃度で、
10/1〜1/100、好ましくは1/5〜1/10のE/S比で、
25℃〜40℃の温度で、リパーゼ又はエステラーゼを用いる、
エナンチオ選択的酵素加水分解により、そして
続く、式(Ib)のエステルの単離による、合成方法に関する。
【0022】
本発明による酵素加水分解方法において使用し得るリパーゼ及びエステラーゼには、いかなる限定もするわけではないが、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ムコ−ル・ジャバニカス(Mucor javanicus)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)及びペニシリウム・カメンベルティ(Penicillium camemberti)のリパーゼ、及びリゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、ムコ−ル・ミエヘイ(Mucor miehei)及びリゾプス・ニヴェウス(Rhizopus niveus)のエステラーゼを挙げることができる。
【0023】
本発明のこの態様による好ましいリパーゼは、カンジダ・アンタークティカのリパーゼ及びシュードモナス・フルオレッセンスのリパーゼである。
【0024】
カンジダ・アンタークティカのリパーゼには、例として、ポリマー・マトリクス、特にアクリル樹脂に固定化したリパーゼ、例えばNovozym(登録商標)435(Novozymes社製)又はSPRIN adsorbed CALB(登録商標)(Sprin Technologies社製);又はポリスチレン樹脂に固定化したリパーゼ、例えばSPRIN actiplus CALB(登録商標)、SPRIN acti CALB(登録商標)又はSPRIN lipo CALB(登録商標)(Sprin Technologies社製);或いは、アクリルエポキシ樹脂に固定化したリパーゼ、例えばSPRIN epobond CALB(登録商標)(Sprin Technologies社製)を挙げることができる。
【0025】
反応が有機溶媒の存在下で実施される場合、後者は、好ましくはアセトニトリル、トルエン、MTBE又はn−ヘプタンである。好ましい有機溶媒/水又は緩衝液の比率の範囲は、8/2〜9/1である。
【0026】
本発明による酵素加水分解スキームは、下記のとおりである:
【化15】
【0027】
有利には、反応の二次生成物である、配置(R)の酸は、酵素加水分解方法中にリサイクルするために、塩基の作用により、好ましくは高温状態でKOHの作用により、ラセミ化することができ、そして次にそれにより得たラセミ酸をアルキル化して、式(XI)のラセミエステルを形成することができる。
或いは、反応の二次生成物である、配置(R)の酸は、酵素加水分解方法中にリサイクルするために、最初にアルキル化することができ、そして次にそれにより得た配置(R)のエステルを、塩基の作用により、好ましくはDBU、KOH、トリエチルアミン、DABCO、TBD、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド又はKCOの作用により、ラセミ化することができる。
【0028】
ラセミ化を高温状態で実施する場合、温度は、好ましくは50〜80℃である。
【0029】
定義
光学的に純粋な化合物とは、90%より大きい又は等しい鏡像体過剰率を有する化合物であると理解される。
【0030】
光学的に純粋ではない酸又はエステルは、90%未満の鏡像体過剰率を有する酸又はエステルであると理解される。
【0031】
ラセミ酸又はラセミエステルは、55:45〜45:55の比率の2つの鏡像異性体の混合物の形態の酸又はエステルであると理解される。
【0032】
ラセミ酸、又は他の光学的に純粋でない酸のエナンチオ選択的エステル化は、混合物の鏡像異性体のうちの1つの優先的エステル化であると理解される。
【0033】
ラセミエステル、又は他の光学的に純粋でないエステルのエナンチオ選択的加水分解は、混合物の鏡像異性体のうちの1つの優先的加水分解であると理解される。
【0034】
本発明の別の態様は、式(III)の化合物の合成方法であって、式(IV)のニトリルから出発し、これを加水分解して、式(X)のラセミ酸を形成し、本発明によるこれの酵素的エステル化により、式(Ia)の光学的に純粋な酸を生成し、次にこれを、式(XII):
【化16】

で示される光学的に純粋なアミドに変換し、これの、好ましくはBH、NaBH又はLiAlHによる還元により、式(III)の化合物を得る、合成方法に関する。
【0035】
本発明の別の態様は、式(III)の化合物の合成方法であって、式(IV)のニトリルから出発し、これを加水分解して、式(X)のラセミ酸を形成し、そして次にアルキル化して、式(XI)のラセミエステルを形成し、本発明によるこれの酵素加水分解により、式(Ib)の光学的に純粋なエステルを生成し、これを、式(XII):
【化17】

で示される光学的に純粋なアミドに変換し、これの、好ましくはBH、NaBH又はLiAlHによる還元により、式(III)の化合物を得る、合成方法に関する。
【0036】
式(III)の化合物をその次に、
式(XIII):
【化18】

[式中、Xは、ハロゲン原子、好ましくはヨウ素原子を表す]で示される化合物とカップリングするか、或いは、
式(XIV):
【化19】

[式中、Rは、CHO及びCHRより選択される基を表し、ここで、R及びRは、各々、直鎖状もしく分岐鎖状(C−C)アルコキシ基を表すか、又はそれらを担持する炭素原子と一緒になって、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソランもしくは1,3−ジオキセパン環を形成する]で示される化合物と、還元剤の存在下、還元的アミノ化反応に供するかのいずれかにより、
イバブラジンを生成し、次にこれを薬学的に許容しうる酸との付加塩(該塩は、無水又は水和物の形態である)に変換する。
【0037】
式(III)の化合物はまた、還元的アミノ化反応において、薬学的に許容しうる酸とのその付加塩、好ましくはその塩酸塩の形態で使用し得る。その場合、イバブラジンは、塩酸塩の形態で直接得る。
【0038】
薬学的に許容しうる酸としては、いかなる限定もするわけではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びカンファー酸を挙げることができる。
【0039】
式(III)の化合物と式(XIV)の化合物との間の還元的アミノ化反応に使用し得る還元剤には、いかなる限定もするわけではないが、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムもしくはシアノ水素化ホウ素ナトリウムのような水素化ドナー化合物、及び特に担体形態又は酸化物形態の、パラジウム、白金、ニッケル、ルテニウム、ロジウム又はその化合物のような触媒の存在下での二水素を挙げることができる。式(III)の化合物と式(XIV)の化合物との還元的アミノ化反応に好ましい還元剤は、パラジウム担持炭素によって触媒される二水素である。
【0040】
本明細書に下記の実施例は本発明を例証する。
【0041】
略語
TFA トリフルオロ酢酸
TLC 薄層クロマトグラフィー
DABCO 1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DBU ジアザビシクロウンデセン
DKR 動的速度論的分割
E エナンチオ選択的係数
ee 鏡像体過剰率
eq モル当量
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
MeOH メタノール
MTBE メチルtert−ブチルエーテル
op 光学純度又はエナンチオマー純度
E/S比 酵素/基質の比(g/g)
NMR 核磁気共鳴(分光分析)
MS 質量分析
TBD 1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン
THF テトラヒドロフラン
TMS テトラメチルシラン
【実施例】
【0042】
実施例1: 3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸
3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボニトリル(11g、58.1mmol)を、1N 水酸化ナトリウム溶液(70mL)に懸濁し、反応混合物を2時間還流(110℃)した。周囲温度に戻し、次に濃塩酸を用いて混合物を酸性化した。沈殿が観察された。生成物をジクロロメタン200mLに溶解し、次に水相を抽出した。MgSOで乾燥させ、蒸発させて、標記生成物(11.6g)を収率95.9%で得た。
【0043】
実施例2: (7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸
実施例1で得たラセミ酸0.5g(c(濃度)=200g/L)を、アセトニトリル/メタノールの8/2の混合物2.5mLに溶解した。次にカンジダ・アンタークティカのリパーゼ NOVOZYM 435(登録商標)(Novozymes Denmark)0.1g(c=40g/L)を混合物(E/S比 1/5)に加えた。反応混合物を30℃で、220rpmで回転撹拌しながら48時間保持した。エステル及び酸の両方の鏡像体過剰率を測定できる条件下で、反応をキラル相HPLCによりモニタリングした:
Chiralpak(登録商標) IC 250*4.6 カラム
30%無水エタノール+0.1%TFA+70%ヘプタン+0.1%TFA
1mL/分、25℃、288nm
【0044】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】ラセミ化合物のキラル相HPLCクロマトグラムを示す。
図2】48時間後の生成物のキラル相HPLCクロマトグラムを示す。
【0046】
48時間後、50/50に近い酸/エステルの最適な比率で光学的に純粋なエステル及び酸の存在が確認された。反応混合物を濾過し、酵素をメタノール5mLで洗浄し、次に濾液を減圧下で蒸発させた。光学的に純粋なS酸及びRエステルを、シリカカラムのクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール 98/1)により分離した。
(S)酸:0.22g(44%);光学純度>96%;589nmで[α]20:+57.1°(MeOH中5mg/mL)
(R)エステル:0.24g;光学純度>96%;589nmで[α]20:−62.7°(MeOH中5mg/mL)
総収率(S+R):92%。
【0047】
実施例3: 3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸メチル
イソプロパノール(2.5mL)に(7R)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸メチル(445mg)(ee>96%)を懸濁し、ジアザビシクロウンデセン(58μL、1.5当量)を加えた。反応混合物を65℃で2時間加熱した。エステルの反応の2時間の終わりに、ラセミ化の完了が観察された。
分析条件:
Chiralpak(登録商標)IC 250*4.6 カラム
30%無水エタノール+0.1%TFA+70%ヘプタン+0.1%TFA
1mL/分、25℃、288nm
【0048】
実施例4: 3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸
(7R)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸メチル(50mg)(ee>96%)をメタノール(1mL)に懸濁し、水酸化カリウム(56.1)(25mg、2当量)を加えた。反応混合物を65℃で6時間加熱した。ラセミ酸へのエステルの加水分解が観察された。
分析条件:
Chiralpak(登録商標)IC 250*4.6 カラム
30%無水エタノール+0.1%TFA+70%ヘプタン+0.1%TFA
1mL/分、25℃、288nm
【0049】
実施例5: (7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸
ラセミ 3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸2g(c=200g/L)を、アセトニトリル/メタノールの混合物(9/1)20mLに溶解した。次にカンジダ・アンタークティカのリパーゼ SPRIN actiplus CALB(登録商標)(Sprin Technologies)0.4g(c=20g/L)を混合物に加えた。反応混合物を、220rpmで24時間、回転撹拌しながら30℃で保持した。酵素を濾別し、次にメタノールで洗浄した。次にKOH(2当量)0.5gを混合物(濾液)に加え、撹拌を30℃で6時間保持した。次に混合物を減圧下で蒸発させた。これにより、S酸をラセミ化することなく、Rエステルのラセミ化及び加水分解を完了することができた。残留物を酢酸エチルに取り、次に10%クエン酸溶液で洗浄した。酢酸エチルでの抽出が十分ではなかったので、水溶性酸をブタン−1−オール溶液で再抽出した。抽出物をMgSOで乾燥させて、蒸発の後、75:25(S:R)の比率を有する酸1.9gを得た。この鏡像異性体富化酸を、リパーゼ0.2gの存在下、第2酵素反応で使用した。30℃で24時間後、酵素を濾別し、次にメタノールで洗浄した。蒸発後、残留物をシリカカラムのクロマトグラフィー(溶離剤:CHCl/MeOH 99/1〜99/2)に付して、以下の生成物を得た:
(S)酸:1.33g;op>96%;酸の収率(理論的75%):67%
(R)エステル:0.42g;op>96%;エステルの収率(理論的25%):21%
反応の総収率は、約88%であった。
【0050】
酸のNMR及びMSの特徴付け
1H NMR (DMSO-d6, ppm / TMS): 3.17 (dd; 1H; 13.6Hz; 2.4Hz); 3.27 (dd; 1H; 13.6Hz; 5.3Hz); 4.13 (dd; 1H); 3.71 (s;3H); 6.78 (s; 1H); 6.80 (s; 1H); 12.40 (s; 1H).
MS(EI+)分子イオンM+、m/z 208
【0051】
エステルのNMR及びMSの特徴付け
1H NMR (DMSO-d6, ppm / TMS) = 3.19 (dd; 1H; 13.6Hz; 2.4 Hz); 3.33 (dd; 1H; 13.6Hz; 5.5Hz); 3.65 (s; 3H); 3.71 (s; 6H); 4.23 (dd; 1H); 6.79 (s; 1H); 6.82 (s;1H).
MS(EI+)分子イオンM+、m/z 222
【0052】
反応の進行を、エステル及び酸の両方の鏡像体過剰率が測定できる条件下で、キラル相HPLCによりモニタリングした:
Chiralpak(登録商標)IC 250*4.6 カラム
30%無水エタノール+0.1%TFA+70%ヘプタン+0.1%TFA
1mL/分、25℃、288nm
【0053】
実施例6: 3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸メチル
メタノールに3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸(3g、14.4mmol)を溶解し、アセチルクロリド(1.65g、21.1mmol)を加えた。反応混合物を2時間還流した。TLC(溶離剤:ジクロロメタン)による分析は、ラセミ酸の出発物質の非存在を示した。反応混合物を蒸発させ、残留物を酢酸エチルに取り、有機相をNaHCOで洗浄した。蒸発乾固して、標記生成物を収率97%で得た。
【0054】
実施例7: (7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸メチル
ラセミ3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸メチル2g(c=100g/L)を、アセトニトリル/緩衝液(pH=7)の80/20の混合物20mLに溶解した。次にカンジダ・アンタークティカのリパーゼNOVOZYM 435(登録商標)(Novozymes Denmark)0.4g(c=20g/L)を、混合物(E/S比 1/5)に加えた。反応混合物を、230rpmで回転撹拌しながら30℃に保持した。4時間の反応(pH=5.8)の後、pHを7.2に調整した。24時間後、酵素を濾別し、メタノール中で撹拌により洗浄した。すべての濾液を回収し、蒸発させ、凍結乾燥させた。凍結乾燥物を酢酸エチルに取り、撹拌を一晩保持し、次に反応混合物を濾過し、濾液を蒸発させた。残留物をシリカカラム(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール)で精製して、標記生成物(7S)のエステル0.81gを、すなわち収率41%で得た。
589nmで[α]20:+64.7°(MeOH中5mg/mL)
【0055】
酸を含有している画分を酢酸エチルに取って、(7R)酸0.72gを、すなわち収率36%で得た。
589nmで[α]20:−58.8°(MeOH中5mg/mL)
【0056】
実施例8: (7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸メチル
ラセミ3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸メチル(1mg;c=1g/L)を、リン酸緩衝液(pH=7)/トルエンの90/10の混合物1mLに溶解した。次にシュードモナス・フルオレッセンスのリパーゼ5mg(c=5g/L)を、混合物(E/S比 5/1)に加えた。反応混合物を220rpmで48時間、回転撹拌しながら28℃に保持した。反応混合物を逆相HPLCにより分析し、残留エステルのエナンチオ選択性(ee)を、下記の方法に従ってキラル相HPLCによりモニタリングした。
【0057】
逆相HPLCによる反応混合物の分析条件:
Kinetex(登録商標) 2.6μm C18 50*2.1、40℃、0.6mL/分
5分間かけて100%A→100%B。
A(1000 水+25 ACN+1 TFA)
B(1000 ACN+25 水+1 TFA)
【0058】
キラル相HPLCによるエナンチオ選択性の分析条件:
Chiralpak(登録商標)IC 250*4.6 カラム
100%無水エタノール
1mL/分、25℃、288nm
【表2】

反応混合物の分析は、良好な加水分解活性を示した(残留エステルのパーセンテージ:25%)。
エナンチオ選択性の分析は、エステル(7S)に対して90%のeeを示した。
【0059】
実施例9: 3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸
(7R)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸(50mg、ee>95%)を、メタノール(1mL)に懸濁し、水酸化カリウム(20mg)を加えた。反応混合物を65℃で24時間加熱した。酸のラセミ化の完了が観察された。
分析条件:
Chiralpak(登録商標)IC 250*4.6 カラム
30%無水エタノール+0.1%TFA+70%ヘプタン+0.1%TFA
1mL/分、25℃、288nm
【0060】
実施例10: (7S)−3,4−ジメトキシ−N−メチルビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボキサミド
実施例5で得た(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸(300mg)を、THF(3mL)に周囲温度で懸濁し、次にトリエチルアミン(200μL)を加えた。クロロギ酸エチル(150μL)を混合物にゆっくりと加えた。反応混合物が沈殿した(混合物I)。別のフラスコ中で、メチルアミン(THF中の2M 溶液(2.25mL)として)を水(1mL)及びトリエチルアミン(300μL)と一緒に撹拌した。撹拌を20分間保持し、得られた混合物を次に混合物Iに加え、周囲温度で一晩撹拌した。次に反応混合物を蒸発させ、分取HPLCにより精製した。(7S)−3,4−ジメトキシ−N−メチルビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボキサミドを、収率60%で得た。
1H NMR (DMSO-d6, ppm / TMS) = 2.61 (m; 3H); 3.16 (m; 2H); 3.71 (s; 6H); 4.05 (m; 1H); 6.78 (s; 1H); 6.81 (s; 1H); 7.78 (s; 1H).
【0061】
実施例11: (7S)−3,4−ジメトキシ−N−メチルビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボキサミド
(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸メチル(500mg)を水に懸濁し、次に無水エタノール中の33%メチルアミン溶液20mLを周囲温度でゆっくり加えた。3時間の撹拌の後、反応混合物を蒸発させた。得られた残留物を分取HPLC(溶離剤:水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸 98/2/0.2〜20/80/0.2)により30分間かけて精製して、標記生成物を収率70%で得た。
【0062】
実施例12:(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]−N−メチル−メタンアミン
(7S)−3,4−ジメトキシ−N−メチルビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボキサミド(450mg)をテトラヒドロフラン(20mL)に懸濁し、次にテトラヒドロフラン中の2M LiAlH溶液1.6mLを反応混合物に周囲温度でゆっくりと加えた。著しいガスの発生が観察され、反応混合物は清澄になった。反応混合物を還流温度で30分間加熱した。周囲温度に戻した後、加水分解し、次に酢酸エチルで抽出した。MgSOで乾燥させ、次に蒸発させた。得られた残留物を、分取HPLC(溶離剤:水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸 98/2/0.2〜20/80/0.2)により30分間かけて精製して、標記生成物を収率46%で得た。
1H NMR (DMSO-d6, ppm / TMS) = 2.60 (m; 3H); 2.85 (m; 1H); 3.15 (m; 1H); 3.25 (dd; 1H); 3.30 (m; 1H); 3.62 (m; 1H); 3.70 (s; 6H); 6.82 (s; 1H); 6.89 (s; 1H); 8.48 (s; 1H).
【0063】
実施例13: (7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]−N−メチル−メタンアミン塩酸塩
テトラヒドロフラン中のBHのモル規定液20mLを、テトラヒドロフラン45mL中の(7S)−3,4−ジメトキシ−N−メチルビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボキサミド2.2g(10mmol)の混合物に周囲温度で加えた。1時間の撹拌の後、テトラヒドロフラン中のBHの溶液10mLを加えた。周囲温度で一晩撹拌した後、エタノール20mLを滴下し、ガスの発生がなくなるまで混合物を撹拌した(約1時間)。次にエタノール中の塩酸溶液20mLを滴下した。4時間の撹拌の後、得られた沈殿物(標記生成物の1.2g)を濾別した。濾液を濃縮し、濾液を酢酸エチル/エタノールの80/20の混合物中で固体にすることによって、更なる標記生成物0.65gを得た。2つの沈殿物を合わせて、標記生成物1.85g(収率:77%)を得た。
【0064】
実施例14: イバブラジン塩酸塩
3−[2−(1,3−ジオキソラン−2−イル)エチル]−7,8−ジメトキシ−1,3−ジヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン5.5kg、エタノール27.5リットル及びパラジウム担持炭素550gをオートクレーブに入れた。窒素で、次に水素でパージし、55℃に加熱し、次に水素の理論量が吸収されるまで、その温度で水素圧5bars下、水素化した。次に周囲温度に戻した後、オートクレーブを減圧した。次に(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]−N−メチルメタンアミン塩酸塩4kg、エタノール11リットル、水5.5リットル及びパラジウム担持炭素1kgを加えた。窒素で、そして次に水素でパージし、85℃に加熱し、次に水素の理論量が吸収されるまで、その温度で水素圧30bars下、水素化した。次に周囲温度に戻し、オートクレーブの圧力を開放し、次に反応混合物を濾過した;溶媒を留去し、次にトルエン/1−メチル−2−ピロリジノンの混合物から結晶化により、イバブラジン塩酸塩を単離した。それにより、イバブラジン塩酸塩を、収率85%及び化学純度99%超で得た。
【0065】
比較実施例: 3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸メチルの酵素加水分解に対するリパーゼ及びエステラーゼのスクリーニング
ラセミ3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボン酸メチル(1mg;c=1g/L)を、リン酸緩衝液(pH=7)/トルエンの90/10の混合物1mLに溶解した。次に被試験リパーゼ又はエステラーゼ5mg(c=5g/L)を媒体(E/S比 5/1)に加えた。反応混合物を220rpmで48時間、回転撹拌しながら、28℃に保持した。反応混合物を逆相HPLCにより分析し、残留エステルのエナンチオ選択性(ee)を、本明細書の下記の方法に従って、キラル相HPLCによりモニタリングした。
【0066】
逆相HPLCによる反応混合物の分析の条件:
Kinetex(登録商標)2.6μm C18 50*2.1、40℃、0.6mL/分
5分間かけて100%A→100%B
A(1000 水+25 ACN+1 TFA)
B(1000 ACN+25 水+1 TFA)
【0067】
キラル相HPLCによるエナンチオ選択性の分析の条件:
Chiralpak(登録商標) IC 250*4.6 カラム、
100%無水エタノール、
1mL/分、25℃、288nm
【表3】
【0068】
結果を以下の表にまとめた。
【表4】

鏡像体過剰率ee(%表示)=%エナンチオE2−%エナンチオE1/%エナンチオE2+%エナンチオE1(エナンチオE2は、優勢な鏡像異性体)
エナンチオ選択的係数E=ln[(1−c)(1−ee(S)]/ln[(1−c)(1+ee(S)];c=変換のレベル=ee(エステル)/ee(エステル)+ee(酸)
図1
図2