特許第5764154号(P5764154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5764154難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブル
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  • 特許5764154-難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブル 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764154
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブル
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/02 20060101AFI20150723BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20150723BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20150723BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20150723BHJP
   H01B 3/00 20060101ALI20150723BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20150723BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20150723BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20150723BHJP
   H01B 7/17 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C08L23/02
   C08K3/34
   C08L83/04
   C08K5/098
   H01B3/00 A
   H01B3/44 P
   H01B3/44 F
   H01B3/44 G
   H01B7/34 B
   H01B7/02 Z
   H01B7/18 H
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-41996(P2013-41996)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-169387(P2014-169387A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2013年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】岩田 誠之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 知久
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−169918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン化合物であるベース樹脂と、
前記ベース樹脂100質量部に対して10質量部以上120質量部以下の割合で配合さ
れる珪酸塩化合物粒子と、
前記ベース樹脂100質量部に対して1質量部より大きく10質量部以下の割合で配合
されるシリコーン系化合物と、
前記ベース樹脂100質量部に対して1質量部より大きく20質量部以下の割合で配合
される脂肪酸含有化合物とを含み、
前記珪酸塩化合物粒子の平均粒径が0.8μm以上3.3μm以下である難燃性樹脂組
成物。
【請求項2】
前記脂肪酸含有化合物が脂肪酸金属塩である請求項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸金属塩がステアリン酸マグネシウムである請求項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸金属塩がステアリン酸カルシウムである請求項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
導体と、
前記導体を被覆する絶縁層とを有する絶縁電線を備えており、
前記絶縁層が、請求項1〜のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物で構成されるケ
ーブル。
【請求項6】
導体と、
前記導体を被覆する絶縁層と、
前記絶縁層を覆うシースを有する絶縁電線を備えており、
前記絶縁層と前記シースの少なくとも一方が、請求項1〜のいずれか一項に記載の難
燃性樹脂組成物で構成されるケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルの被覆、ケーブルのシース、チューブ、テープ、包装材、建材等にはいわゆるエコマテリアルが広く使用されるようになっている。
【0003】
このようなエコマテリアルとして、ポリオレフィン樹脂に、難燃剤としてタルクを添加するとともに、難燃助剤としてシリコーン油などのシリコーン系化合物やステアリン酸マグネシウムを添加してなる組成物が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−169918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の組成物では、難燃性が十分に確保されているとは言い難かった。ここで、難燃剤の添加量を増加させれば難燃性を向上させることはできる。しかし、この場合、組成物の機械的特性および表面平滑性が低下してしまう。
【0006】
このため、優れた機械的特性および表面平滑性を確保しながら優れた難燃性をも確保できる難燃性樹脂組成物が求められていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた機械的特性および表面平滑性を確保しながら優れた難燃性をも確保できる難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため、難燃剤である珪酸塩化合物粒子に着目して検討した。その結果、通常は難燃性を確保するために、難燃剤粒子の平均粒径を小さくして難燃剤の比表面積を大きくする必要があるところ、意外にも、珪酸塩化合物粒子については、その平均粒径を特定の値以上にすることで、配合量が少なくても、優れた難燃効果を発揮することが判明した。さらに、このような優れた難燃効果を発揮しながら優れた機械的特性および表面平滑性を確保できるのは、珪酸塩化合物粒子の平均粒径が特定の値以下であり、且つ、珪酸塩化合物粒子、シリコーン系化合物及び脂肪酸含有化合物がそれぞれ、ベース樹脂に対して特定の割合で配合された場合であることも判明した。すなわち、本発明者らは、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、ポリオレフィン化合物であるベース樹脂と、前記ベース樹脂100質量部に対して10質量部以上120質量部以下の割合で配合される珪酸塩化合物粒子と、前記ベース樹脂100質量部に対して1質量部より大きく10質量部以下の割合で配合されるシリコーン系化合物と、前記ベース樹脂100質量部に対して1質量部より大きく20質量部以下の割合で配合される脂肪酸含有化合物とを含み、前記珪酸塩化合物粒子の平均粒径が0.8μm以上3.3μm以下である難燃性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の難燃性樹脂組成物によれば、珪酸塩化合物粒子の平均粒径を0.8μm以上3.3μm以下とすることで、珪酸塩化合物粒子の配合量が小さくても珪酸塩化合物粒子が効果的に難燃効果を発揮できるため、優れた機械的特性および表面平滑性を確保しながら、優れた難燃性をも確保することができる。
【0011】
なお、本発明者らは、本発明の難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる理由については以下のように推察している。
【0012】
すなわち、珪酸塩カルシウム粒子とシリコーン系化合物と脂肪酸含有化合物とを用いることで、燃焼時に表面バリア層が形成されることにより、樹脂組成物の難燃効果が高まるのではないかと本発明者らは推察している。
【0015】
また、上記難燃性樹脂組成物においては、前記脂肪酸含有化合物が脂肪酸金属塩であることが好ましい。
【0016】
この場合、特に優れた機械的特性が得られる。
【0017】
前記脂肪酸金属塩はステアリン酸マグネシウムであることが好ましい。
【0018】
この場合、脂肪酸金属塩がステアリン酸マグネシウムでない場合に比べて、より優れた難燃性を有する難燃性樹脂組成物が得られる。
【0019】
また、前記脂肪酸金属塩はステアリン酸カルシウムであってもよい。
【0020】
また本発明は、導体と、前記導体を被覆する絶縁層とを有する絶縁電線を備えており、前記絶縁層が、上述した難燃性樹脂組成物で構成されるケーブルである。
【0021】
さらに本発明は、導体と、前記導体を被覆する絶縁層と、前記絶縁層を覆うシースを有する絶縁電線を備えており、前記絶縁層と前記シースの少なくとも一方が、上述した難燃性樹脂組成物で構成されるケーブルである。
【0022】
なお、本発明において、「平均粒径」とは、複数個の珪酸塩化合物粒子をSEMで観察したときの2次元画像の面積Sをそれぞれ求め、これらの面積Sをそれぞれ円の面積に等しいと考え、これらの面積から下記式:
R=2×(S/π)1/2
に基づいてそれぞれ算出したRの平均値を言うものとする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、優れた機械的特性および表面平滑性を確保しながら、優れた難燃性をも確保できる難燃性樹脂組成物及びこれを用いたケーブルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のケーブルの一実施形態を示す部分側面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図1及び図2を用いて詳細に説明する。
【0026】
[ケーブル]
図1は、本発明に係るケーブルの一実施形態を示す部分側面図であり、丸形ケーブルを示すものである。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2に示すように、丸形ケーブル10は、絶縁電線4と、2本の絶縁電線4を被覆するシース3とを備えている。そして、絶縁電線4は、内部導体1と、内部導体1を被覆する絶縁層2とを有している。
【0027】
ここで、絶縁層2及びシース3は難燃性樹脂組成物で構成されており、この難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂と、ベース樹脂100質量部に対して10質量部以上120質量部以下の割合で配合される珪酸塩化合物粒子と、ベース樹脂100質量部に対して1質量部より大きく10質量部以下の割合で配合されるシリコーン系化合物と、ベース樹脂100質量部に対して1質量部より大きく20質量部以下の割合で配合される脂肪酸含有化合物とを含み、珪酸塩化合物粒子の平均粒径が0.8μm以上3.3μm以下である。
【0028】
上記難燃性樹脂組成物で構成される絶縁層2及びシース3は、優れた機械的特性および表面平滑性を確保しながら、優れた難燃性をも確保することができる。特に、丸形ケーブル10における最も外側の層であるシース3が優れた表面平滑性を確保でき、シース3の表面において凹凸が存在しないか、又は存在したとしても非常に小さい。このため、丸形ケーブル10の表面がより傷つきにくくなる。
【0029】
[ケーブルの製造方法]
次に、上述した丸形ケーブル10の製造方法について説明する。
【0030】
(導体)
まず内部導体1を準備する。内部導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、内部導体1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
【0031】
(難燃性樹脂組成物)
一方、上記難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、上述したように、ベース樹脂と、ベース樹脂100質量部に対して10質量部以上120質量部以下の割合で配合される珪酸塩化合物粒子と、ベース樹脂100質量部に対して1質量部より大きく10質量部以下の割合で配合されるシリコーン系化合物と、ベース樹脂100質量部に対して1質量部より大きく20質量部以下の割合で配合される脂肪酸含有化合物とを含んでいる。
【0032】
(ベース樹脂)
ベース樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)及びエチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)などのポリオレフィン化合物、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。
【0033】
ベース樹脂はポリオレフィン化合物であることが好ましい。この場合、ベース樹脂がポリオレフィン化合物でない場合に比べて、絶縁性やコストパフォーマンスに優れるという利点が得られる。
【0034】
(珪酸塩化合物粒子)
珪酸塩化合物粒子は、珪酸塩化合物からなる粒子である。珪酸塩化合物としては、例えばタルク、クレイなどが挙げられる。ここで、クレイとしては、例えばカオリンクレイ、ろう石クレイ、それらを焼成処理した焼成クレイ、及び、シラン系カップリング剤等で表面改質した改質クレイ等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。中でも、カオリンクレイが好ましい。この場合、不純物の含有が少なく、着色し難いという利点が得られる。
【0035】
珪酸塩化合物粒子の平均粒径は、0.8μm以上3.3μm以下である。この場合、珪酸塩化合物粒子の平均粒径が0.8μm未満である場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0036】
また、珪酸塩化合物粒子の平均粒径が上記範囲内にあると、珪酸塩化合物粒子の平均粒径が3.3μmを超える場合に比べて、より優れた表面平滑性が得られ、シース3の表面がより傷つきにくくなる。
【0037】
珪酸塩化合物粒子の平均粒径は、1μm以上であることが好ましい。この場合、珪酸塩化合物粒子の平均粒径が1μm未満である場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0038】
また、珪酸塩化合物がタルクからなる場合、珪酸塩化合物粒子の平均粒径は2.5μm以下であることが好ましい。この場合、珪酸塩化合物粒子の平均粒径が2.5μmより大きい場合に比べて、より優れた表面平滑性が得られる。
【0039】
また、珪酸塩化合物がクレイからなる場合、珪酸塩化合物粒子の平均粒径は2.2μm以下であることが好ましい。この場合、珪酸塩化合物粒子の平均粒径が2.2μmより大きい場合に比べて、より優れた表面平滑性が得られる。
【0040】
珪酸塩化合物粒子は、ベース樹脂100質量部に対して10質量部以上120質量部以下の割合で配合される。この場合、珪酸塩化合物粒子の割合がベース樹脂100質量部に対して10質量部未満である場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0041】
また、ベース樹脂100質量部に対する珪酸塩化合物粒子の配合割合が上記範囲内にあると、ベース樹脂100質量部に対する珪酸塩化合物粒子の配合割合が120質量部より大きい場合に比べて、難燃性樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
【0042】
また、珪酸塩化合物粒子は80質量部以下の割合で配合されることが好ましく、50質量部以下の割合で配合されることがより好ましく、40質量部以下の割合で配合されることがさらに好ましい。珪酸塩化合物粒子が上記範囲で配合される場合、配合割合が上記各範囲の上限値を超える場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性を十分に確保しつつ、機械的特性をより十分に向上させることができる。
【0043】
(シリコーン系化合物)
シリコーン系化合物は、難燃助剤として機能するものであり、ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。ここで、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とし側鎖に有機基を有するものであり、有機基としては、例えばメチル基、ビニル基、エチル基、プロピル基、フェニル基などが挙げられる。具体的にはポリオルガノシロキサンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。ポリオルガノシロキサンは、シリコーンオイル、シリコーンパウダー、シリコーンガム又はシリコーンレジンの形態で用いられる。中でも、ポリオルガノシロキサンは、シリコーンガムの形態で用いられることが好ましい。この場合、ブルームが起こりにくくなる。
【0044】
シリコーン系化合物は、上述したようにベース樹脂100質量部に対して1質量部より大きく10質量部以下の割合で配合される。この場合、シリコーン系化合物の割合が1質量部以下である場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0045】
また、ベース樹脂100質量部に対するシリコーン系化合物の配合割合が上記範囲内にあると、シリコーン系化合物の配合割合が10質量部より大きい場合に比べて、より優れた表面平滑性が得られる。これはシリコーン系化合物がベース樹脂に均等に混ざりやすくなり、部分的に塊が発生するということが起こりにくくなるためである。
【0046】
シリコーン系化合物は3質量部以下の割合で配合されることが好ましい。この場合、シリコーン系化合物の割合が3質量部より大きい場合に比べて、より優れた機械的特性が得られる。
【0047】
シリコーン系化合物は、珪酸塩化合物粒子の表面に予め付着させておいてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物中においてシリコーン系化合物の偏析が起こりにくくなり、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がより向上する。
【0048】
珪酸塩化合物粒子の表面にシリコーン系化合物を付着させる方法としては、例えば珪酸塩化合物粒子にシリコーン系化合物を添加して混合し、混合物を得た後、この混合物を40〜75℃にて10〜40分乾燥し、乾燥した混合物をヘンシェルミキサ、アトマイザなどにより粉砕することによって得ることができる。
【0049】
(脂肪酸含有化合物)
脂肪酸含有化合物は、難燃助剤として機能するものである。脂肪酸含有化合物とは、脂肪酸又はその金属塩を含有するものを言う。ここで、脂肪酸としては、例えば炭素原子数が12〜28である脂肪酸が用いられる。このような脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸及びモンタン酸が挙げられる。中でも、脂肪酸としては、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。この場合、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸以外の脂肪酸を用いる場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0050】
脂肪族含有化合物は、脂肪酸の金属塩であることが好ましい。この場合、脂肪酸含有化合物が脂肪酸の金属塩ではない場合に比べて、より優れた機械的特性が得られる。
【0051】
脂肪酸の金属塩を構成する金属としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛及び鉛などが挙げられる。脂肪酸の金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウムが好ましい。この場合、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウム以外の脂肪酸金属塩を用いる場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0052】
脂肪酸含有化合物は、上述したようにベース樹脂100質量部に対して1質量部より大きく20質量部以下の割合で配合される。この場合、脂肪酸含有化合物の割合が1質量部以下である場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0053】
また、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸含有化合物の配合割合が上記範囲内にあると、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸含有化合物の配合割合が20質量部より大きい場合に比べて、より優れた表面平滑性が得られる。これは脂肪酸含有化合物がベース樹脂に均等に混ざりやすくなり、部分的に塊が発生するということが起こりにくくなるためである。
【0054】
脂肪酸含有化合物は、10質量部以下の割合で配合されることが好ましい。この場合、脂肪酸含有化合物の割合が10質量部より大きい場合に比べて、より優れた機械的特性が得られる。
【0055】
脂肪酸含有化合物はシリコーン系化合物とともに、珪酸塩化合物粒子の表面に予め付着させておいてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物中においてシリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物の偏析がより起こりにくくなり、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がより向上する。
【0056】
珪酸塩化合物粒子の表面にシリコーン系化合物及び脂肪酸含有化合物を付着させる方法としては、例えば珪酸塩化合物粒子にシリコーン系化合物及び脂肪酸含有化合物を添加して混合し、混合物を得た後、この混合物を40〜75℃にて10〜40分乾燥し、乾燥した混合物をヘンシェルミキサ、アトマイザなどにより粉砕することによって得ることができる。
【0057】
上記難燃性樹脂組成物は、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、加工助剤、着色顔料、滑剤、カーボンブラックなどの充填剤を必要に応じてさらに含んでもよい。
【0058】
上記難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂、珪酸塩化合物粒子、シリコーン系化合物、及び、脂肪酸含有化合物等を混練することにより得ることができる。混練は、例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。このとき、シリコーン系化合物の分散性を向上させる観点からは、ベース樹脂の一部とシリコーン系化合物とを混練し、得られたマスターバッチ(MB)を、残りのベース樹脂、珪酸塩化合物粒子及び脂肪酸含有化合物等と混練してもよい。
【0059】
次に、上記難燃性樹脂組成物で内部導体1を被覆する。具体的には、上記の難燃性樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練し、チューブ状の押出物を形成する。そして、このチューブ状押出物を内部導体1上に連続的に被覆する。こうして絶縁電線4が得られる。
【0060】
(シース)
最後に、上記のようにして得られた絶縁電線4を1本用意し、これら絶縁電線4を、上述した難燃性樹脂組成物を用いて作製したシース3で被覆する。シース3は、絶縁層2を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。
【0061】
以上のようにして丸形ケーブル10が得られる。
【0062】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では丸形ケーブル10は1本の絶縁電線4を有しているが、本発明のケーブルは丸形ケーブルに限定されるものではなく、シース3の内側に絶縁電線4を2本有していてもよく、3本以上有していてもよい。またシース3と絶縁電線4との間には、ポリプロピレン等からなる樹脂部が設けられていてもよい。
【0063】
また上記実施形態では、絶縁電線4の絶縁層2、シース3が上記の難燃性樹脂組成物で構成されているが、絶縁層2が通常の絶縁樹脂で構成され、シース3のみが、絶縁層2を構成する難燃性樹脂組成物で構成されてもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
(実施例1〜22及び比較例1〜17)
ベース樹脂、シリコーンマスターバッチ(シリコーンMB)、脂肪酸含有化合物及び珪酸塩化合物粒子を、表1〜7に示す配合量で配合し、バンバリーミキサによって160℃にて15分間混練し、難燃性樹脂組成物を得た。なお、表1〜7において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。また表1〜7において、ベース樹脂の配合量が100質量部となっていない実施例及び比較例が存在するが、これらの実施例及び比較例では、シリコーンMB中にもベース樹脂としてのPE又はPPが含まれており、ベース樹脂とシリコーンMB中のPE又はPPとを合計すれば100質量部となる。
【0066】
上記ベース樹脂、シリコーンMB、珪酸塩化合物粒子および脂肪酸含有化合物としては具体的には下記のものを用いた。
【0067】
(A)ベース樹脂
(A−1)ポリエチレン(PE)
エクセレンGMH GH030(商品名、住友化学社製)
(A−2)ポリプロピレン(PP)
E−150GK(商品名、プライムポリマー社製)
(A−3)エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)
レクスパールA115(商品名、日本ポリエチレン社製)
(A−4)エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)
LOTRYL 16MA003(商品名、アルケマ社製)
(A−5)スチレン−ブタジエンゴム(SBR)
ダイナロン1320P(商品名、JSR社製)
【0068】
(B−1)シリコーンMB
(B−1−1)X−22−2125H(商品名、信越化学社製)
50質量%シリコーンガム(ジメチルポリシロキサン)と50質量%PEとを含有
(B−1−2)X−22−2101(商品名、信越化学社製)
50質量%シリコーンガム(ジメチルポリシロキサン)と50質量%PPとを含有
【0069】
(B−2)シリコーンオイル
KF−96−350pcs(商品名、信越化学社製)
【0070】
(C)珪酸塩化合物粒子
(C−1)タルク粒子
(C−1−1)NANO ACE D−600(商品名、日本タルク社製)、平均粒径0.6μm
(C−1−2)NANO ACE D−800(商品名、日本タルク社製)、平均粒径0.8μm
(C−1−3)NANO ACE D−1000(商品名、日本タルク社製)、平均粒径1.0μm
(C−1−4)MICRO ACE SG−95(商品名、日本タルク社製)、平均粒径2.5μm
(C−1−5)MICRO ACE P−8(商品名、日本タルク社製)、平均粒径3.3μm
(C−1−6)MICRO ACE P−6(商品名、日本タルク社製)、平均粒径4.0μm
(C−1−7)MICRO ACE K−1(商品名、日本タルク社製)、平均粒径8.0μm
(C−2)クレイ粒子
(C−2−1)RC−1(商品名、竹原化学工業社製)、平均粒径0.4μm
(C−2−2)Satintone No.5(商品名、竹原化学工業社製)、平均粒径0.8μm
(C−2−3)Glomax LL(商品名、竹原化学工業社製)、平均粒径1.5μm
(C−2−4)SPMAクレイ(商品名、白石カルシウム工業社製)、平均粒径2.2μm
(C−2−5)No.5 カオリンクレイ(商品名、竹原化学工業社製)、平均粒径5.3μm
【0071】
(D)脂肪酸含有化合物
(D−1)ステアリン酸マグネシウム
エフコケムMGS(商品名、ADEKA社製)
(D−2)ステアリン酸カルシウム
SC−P(商品名、堺化学社製)
(D−3)ステアリン酸
ステアリン酸さくら(商品名、日油社製)
(D−4)ラウリン酸
NAA−122(商品名、日油社製)
(D−5)ベヘン酸
NAA−222S(商品名、日油社製)
【0072】
次いで、この難燃性樹脂組成物をバンバリーミキサによって160℃にて15分間混練した。その後、この難燃性樹脂組成物を、単軸押出機(L/D=20、スクリュー形状:フルフライトスクリュー、マース精機社製)に投入し、その押出機からからチューブ状の押出物を押し出し、導体(素線数1本/断面積2mm)上に、厚さ0.7mmとなるように被覆した。こうして絶縁電線を得た。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0073】
上記のようにして得られた実施例1〜22及び比較例1〜17の絶縁電線について、以下のようにして難燃性、機械的特性および表面平滑性の評価を行った。
【0074】
<難燃性>
実施例1〜22及び比較例1〜17の絶縁電線について、JIS C3005の60度傾斜燃焼試験を行い、難燃性を評価した。結果を表1〜7に示す。表1〜7においては、各実施例及び比較例ごとに、10本の絶縁電線を用意して難燃性試験を行い、10本の絶縁電線の消火時間(単位:秒)の平均値を測定した。ここで消火時間とは、接炎終了直後(バーナーの炎を電線から離した直後)から自己消火するまでの時間であり、消火時間が短ければ短いほど難燃性が高いことを表す。このとき、接炎は、30秒以内で電線に着火が起こるまで行った。結果を表1〜7に示す。なお、表1〜7において、消火時間の平均値の単位は秒であり、消火時間の平均値の合否基準は下記の通りとした。

60秒以下:合格
60秒超 :不合格

なお、表1〜7において、難燃性の点で合格の場合には、表1〜7の「自己消火」の欄に「○」と併記し、難燃性の点で不合格の場合には、表1〜7の「自己消火」の欄に「×」と併記した。また表6及び7において、自己消火しなかった比較例については、「消火時間(秒)」の欄に「全焼」と表示した。
【0075】
<機械的特性>
機械的特性の評価は、実施例1〜22及び比較例2,3,5,14,16,17の絶縁電線について、JIS C3005により引張試験を行い、測定された引張強度に基づいて行った。結果を表1〜7に示す。表1〜7において、引張強度の単位はMPaであり、引張強度の合否基準は下記の通りとした。引張試験において、引張速度は200mm/min、標線間距離は20mmとした。なお、比較例1,4,6〜13,15については、難燃性又は表面平滑性の点で合格基準を満たさなかったため、機械的特性についての評価を行わず、表5〜7において「−」と表記した。

10MPa以上:合格
10MPa未満:不合格
【0076】
<表面平滑性>
表面平滑性は、実施例1〜22及び比較例2,3,5,16,17の絶縁電線について、下記I〜IVの基準に従って評価した。結果を表1〜7に示す。なお、比較例1,4,6〜15については、難燃性又は機械的特性の点で合格基準を満たさなかったため、表面平滑性についての評価を行わず、表5において「−」と表記した。

I :触っても凹凸が確認できず且つ表面に光沢が見られる
II :触っても凹凸が確認できず且つ表面に光沢が見られない
III:触ると凹凸が確認できるが、目視では凹凸が確認できない
IV :触ると凹凸が確認でき且つ目視でも凹凸が確認できる

表面平滑性の合否基準は下記の通りとした。

表面平滑性がI又はII:合格
表面平滑性がIII又はIV:不合格
【0077】
表1〜7に示す結果より、実施例1〜22の絶縁電線は、難燃性、機械的特性及び表面平滑性の全てについて合格基準に達していた。これに対し、比較例1〜17の絶縁電線は、難燃性、機械的特性及び表面平滑性のうちいずれか1つについて合格基準に達していなかった。
【0078】
このことから、本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた機械的特性および表面平滑性を確保しながら、優れた難燃性を確保することができることが確認された。
【符号の説明】
【0079】
1…内部導体
2…絶縁層
3…シース
4…絶縁電線
10…丸形ケーブル
図1
図2