(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764157
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】作業車両のアクスル装置及び作業車両
(51)【国際特許分類】
B60B 35/14 20060101AFI20150723BHJP
B60B 35/16 20060101ALI20150723BHJP
B60B 35/18 20060101ALI20150723BHJP
E02F 9/02 20060101ALI20150723BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20150723BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20150723BHJP
F16C 25/08 20060101ALI20150723BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20150723BHJP
F16C 35/07 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
B60B35/14 V
B60B35/16 E
B60B35/18 A
E02F9/02 Z
F16C19/36
F16C33/58
F16C25/08 Z
F16H1/32 Z
F16C35/07
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-71072(P2013-71072)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-193694(P2014-193694A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2014年4月18日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中田 文明
(72)【発明者】
【氏名】大野木 博章
【審査官】
田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−133328(JP,U)
【文献】
実開平06−056525(JP,U)
【文献】
特開平03−048025(JP,A)
【文献】
特表2001−500823(JP,A)
【文献】
特開2007−120649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 35/14
B60B 35/16
B60B 35/18
E02F 9/02
F16C 19/36
F16C 25/08
F16C 33/58
F16C 35/07
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクスル軸と、
前記アクスル軸を収容するアクスルハウジングと、
前記アクスル軸に固定されるサンギアと、前記サンギアに噛み合うプラネタリギアと、前記プラネタリギアに噛み合うリングギアとを有し、前記アクスル軸の軸線方向において、前記アクスルハウジングの外方に配置される遊星歯車機構と、
前記アクスル軸の径方向において前記アクスルハウジングの外方に配置されるホイールハブと、
前記プラネタリギアを回転可能に支持し、前記軸線方向において前記ホイールハブの外方に配置され、前記遊星歯車機構を収容するキャリアと、
前記ホイールハブと前記キャリアとを収容し、前記ホイールハブと前記キャリアとに取り付けられるホイールと、
前記ホイールハブの内周面と前記アクスルハウジングの外周面との間に配置される第1の軸受と、
前記軸線方向において前記第1の軸受の外方かつ前記径方向において前記アクスルハウジングの外方に配置され、前記リングギアに連結されるリングギアハブと、
前記軸線方向において前記リングギアハブの外方に配置され、前記アクスルハウジングに固定される第1固定部材と、
前記軸線方向において前記第1の軸受の外方かつ前記径方向において前記アクスルハウジングの外方に配置される第2固定部材と、
を備え、
前記アクスルハウジングの外周面は、前記第1の軸受を支持する第1外周面と、前記第1外周面の外径よりも小さな外径を有する第2外周面と、前記第1外周面と前記第2外周面との間に位置する段部とを有し、
前記アクスルハウジングは、前記第2外周面に設けられるスプラインと、前記第2外周面において前記スプラインと前記段部との間に配置される逃げ溝とを有し、
前記リングギアハブは、前記スプラインを介して前記アクスルハウジングと連結されており、
前記第2固定部材は、前記逃げ溝に嵌合されており、
前記逃げ溝は、前記軸線方向において前記スプラインと前記第1の軸受との間に配置され、前記第2固定部材の外周面は、前記第1の軸受の内周面よりも前記径方向における外方に位置していることで、前記第1の軸受が前記アクスルハウジングに対して抜け止めされる、
作業車両のアクスル装置。
【請求項2】
前記第1の軸受の内周面の前記軸線方向における外方側の端部は、前記第2固定部材に近づく方向に向かって内径が大きくなる形状を有する、
請求項1に記載の作業車両のアクスル装置。
【請求項3】
前記第1の軸受は、外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置される円錐台形状の転動体とを有し、
前記リングギアハブは、前記内輪に接触している、
請求項2に記載の作業車両のアクスル装置。
【請求項4】
前記軸線方向において前記第1の軸受の内方かつ前記ホイールハブの内周面と前記アクスルハウジングの外周面との間に配置される第2の軸受をさらに備え、
前記ホイールハブの内周面は、前記軸線方向において前記第1の軸受と前記第2の軸受との間に配置される突出部を有する、
請求項1から3のいずれかに記載の作業車両のアクスル装置。
【請求項5】
前記リングギアハブは、凹部を有し、
前記凹部は、前記軸線方向における前記リングギアハブの内方の端部から前記軸線方向に凹んだ形状を有し、
前記第2固定部材は、前記凹部内に配置される、
請求項1から4のいずれかに記載の作業車両のアクスル装置。
【請求項6】
前記アクスルハウジングの外周面は、前記第2外周面の前記軸線方向における外方に配置され雄ネジが設けられる第3外周面をさらに有し、
前記第1固定部材は、前記第3外周面の雄ネジに螺合することによって前記アクスルハウジングに固定される、
請求項1から5のいずれかに記載の作業車両のアクスル装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のアクスル装置を備える作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両のアクスル装置及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダ或いはバックホーローダなどの作業車両は、アクスル装置を備えている。アクスル装置は、エンジンからの駆動力をタイヤに伝達するための装置である。例えば、特許文献1に開示されているように、アクスル装置は、アクスル軸と、アクスルハウジングと、遊星歯車機構とを備えている。アクスルハウジングは、アクスル軸を収容している。遊星歯車機構は、アクスル軸の側方に配置される。アクスルハウジングは、軸受を介してホイールハブに支持される。遊星歯車機構のリングギアは、リングギアハブを介してアクスルハウジングに支持される。リングギアハブはアクスルハウジングに連結される。また、軸線方向におけるアクスルハウジングの端部には、固定部材が取り付けられる。固定部材により、リングギアハブとホイールハブとの移動が規制される。これにより、ホイールがアクスルハウジングに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−120649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールのアクスルハウジングへの保持力を向上させるためには、固定部材がアクスルハウジングに強固に固定されることが好ましい。そのためには、固定部材を大型化させて、固定部材の固定力を増大させることにより、ホイールの保持力を向上させることができる。しかし、この場合、アクスル装置が大型化するという問題がある。また、固定部材とは別の固定部材を追加することによっても、ホイールの保持力を向上させることができる。しかし、この場合、追加の固定部材を取り付けるための構造が必要となり、アクスル装置の構造が複雑化するという問題がある。或いは、追加の固定部材を配置するためのスペースが必要がとなり、アクスル装置が大型化する場合もありうる。
【0005】
本発明の課題は、アクスル装置において簡易な構造でホイールの保持力を向上させることができると共に、アクスル装置の大型化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作業車両のアクスル装置は、アクスル軸と、アクスルハウジングと、遊星歯車機構と、ホイールハブと、キャリアと、ホイールと、第1の軸受と、リングギアハブと、第1固定部材と、第2固定部材とを備える。アクスルハウジングは、アクスル軸を収容する。遊星歯車機構は、軸線方向においてアクスルハウジングの外方に配置される。遊星歯車機構は、サンギアとプラネタリギアとリングギアとを有する。サンギアは、アクスル軸に固定される。プラネタリギアは、サンギアに噛み合う。リングギアは、プラネタリギアに噛み合う。ホイールハブは、径方向においてアクスルハウジングの外方に配置される。キャリアは、プラネタリギアを回転可能に支持する。キャリアは、軸線方向においてホイールハブの外方に配置される。キャリアは、遊星歯車機構を収容する。ホイールは、ホイールハブとキャリアとを収容する。ホイールは、ホイールハブとキャリアとに取り付けられる。第1の軸受は、ホイールハブの内周面とアクスルハウジングの外周面との間に配置される。リングギアハブは、軸線方向において第1の軸受の外方かつ径方向においてアクスルハウジングの外方に配置される。リングギアハブは、リングギアに連結される。第1固定部材は、軸線方向においてリングギアハブの外方に配置される。第1固定部材は、アクスルハウジングに固定される。第2固定部材は、軸線方向において第1の軸受の外方かつ径方向においてアクスルハウジングの外方に配置される。アクスルハウジングの外周面は、第1外周面と第2外周面と段部とを有する。第1外周面は、第1の軸受を支持する。第2外周面は、第1外周面の外径よりも小さな外径を有する。段部は、第1外周面と第2外周面との間に位置する。アクスルハウジングは、スプラインと逃げ溝とを有する。スプラインは、第2外周面に設けられる。逃げ溝は、第2外周面においてスプラインと段部との間に配置される。リングギアハブは、スプラインを介してアクスルハウジングと連結されている。第2固定部材は、逃げ溝に嵌合されている。第2固定部材の外周面は、径方向において第1の軸受の内周面よりも外方に位置している。
【0007】
この作業車両のアクスル装置では、第1固定部材によってリングギアハブと第1の軸受との軸線方向への移動が規制される。また、第2固定部材によって第1の軸受の軸線方向への移動が規制される。従って、第1固定部材と第2固定部材とによってホイールの保持力を向上させることができる。また、第1固定部材を大型化させる必要が無いため、アクスル装置の大型化を防止することができる。さらに、第2固定部材は、逃げ溝に嵌合されている。逃げ溝は、アクスルハウジングの外周面にスプラインを形成する加工を行うときに必要となる構成である。従って、第2固定部材を取り付けるための複雑な構造を追加することなく、逃げ溝を利用して第2固定部材を取り付けることができる。これにより、簡易な構造でホイールの保持力を向上させることができる。
【0008】
好ましくは、第1の軸受の内周面の軸線方向における外方側の端部は、第2固定部材に近づく方向に向かって内径が大きくなる形状を有する。この場合、第1の軸受が軸線方向における外方に移動すると、第1の軸受が第2固定部材に乗り上げる。第1の軸受が第2固定部材に乗り上げると、第1の軸受の外周面がホイールハブの内周面に押し当てられる。これにより、ホイールハブの保持力を増大させることができる。
【0009】
好ましくは、第1の軸受は、外輪と、内輪と、転動体とを有する。転動体は、外輪と内輪との間に配置される円錐台形状を有する。リングギアハブは、内輪に接触している。この場合、第1の軸受が軸線方向における外方に移動すると、第1の軸受の内輪が第2固定部材に乗り上げる。第1の軸受の内輪が第2固定部材に乗り上げると、第1の軸受の外輪の外周面がホイールハブの内周面に押し当てられる。これにより、ホイールの保持力をさらに増大させることができる。
【0010】
好ましくは、作業車両のアクスル装置は、第2の軸受をさらに備える。第2の軸受は、軸線方向において第1の軸受の内方かつホイールハブの内周面とアクスルハウジングの外周面との間に配置される。ホイールハブの内周面は、軸線方向において第1の軸受と第2の軸受との間に配置される突出部を有する。この場合、突出部によって第2の軸受の軸線方向における外方への移動が規制される。これにより、ホイールの保持力をさらに増大させることができる。
【0011】
好ましくは、リングギアハブは、凹部を有する。凹部は、リングギアハブの軸線方向における内方の端部から軸線方向に凹んだ形状を有する。凹部内には、第2固定部材が配置される。この場合、第2固定部材が軸線方向にリングギアハブから離れて配置される場合と比べて、第2固定部材とリングギアハブとを軸線方向にコンパクトに配置することができる。これにより、アクスル装置を小型化することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る作業車両は、上述したアクスル装置を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構造でホイールの保持力を向上させることができると共に、アクスル装置の大型化を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る作業車両について、図面を用いて説明する。
図1は、作業車両1の斜視図である。本実施形態において作業車両1は、ホイールローダである。作業車両1は、車体2と、作業機3と、複数のタイヤ4と、キャブ5と、を備えている。キャブ5は、車体2上に載置されている。作業機3は、車体2の前部に取り付けられている。
【0016】
作業機3は、ブーム6とバケット7と油圧アクチュエータ8,9とを有する。ブーム6は、バケット7を持ち上げるための部材である。ブーム6は、上下方向に回動可能に車体2に取り付けられている。バケット7は、上下方向に回動可能にブーム6の先端部に取り付けられている。油圧アクチュエータ8,9は、ブームシリンダ8とバケットシリンダ9を有する。ブーム6は、ブームシリンダ8によって上下に回動する。バケット7は、バケットシリンダ9によって上下に回動する。なお、ブーム6には、バケット7に代えてフォークなどの他の作業具が装着可能である。
【0017】
作業車両1は、エンジン11と油圧ポンプ12とを有する。エンジン11は、例えば、ディーゼル式のエンジンであり、エンジン11で発生した駆動力が、油圧ポンプ12に伝達される。エンジン11で発生した駆動力は、後述するアクスル装置を介してタイヤ4に伝達される。油圧ポンプ12は、エンジン11によって駆動されることにより作動油を吐出する。上述した油圧アクチュエータ8,9は、油圧ポンプ12から吐出された作動油によって駆動される。
【0018】
図2は、
図1のII−II断面視におけるアクスル装置13の断面図である。
図2に示すように、アクスル装置13は、アクスル軸21と、アクスルハウジング22と、遊星歯車機構23と、ホイールハブ24と、キャリア25と、カバー34と、ホイール26と、を備える。
【0019】
アクスル軸21は、アクスル軸21の中心軸線が作業車両1の車幅方向に沿うように配置されている。アクスル軸21はエンジン11からの駆動力によって回転駆動される。アクスル軸21は、ユニバーサルジョイント27を有している。ユニバーサルジョイント27は、本体ハウジング28内に配置されている。なお、本実施形態において、軸線方向とは、アクスル軸21の中心軸線に平行な方向を意味する。また、軸線方向における内方とは、アクスル軸21の中心軸線に平行な方向において車体2の中心に向かう方向を意味する。軸線方向における外方とは、アクスル軸21の中心軸線に平行な方向において車体2の中心から離れる方向を意味する。径方向における内方とは、アクスル軸21の径方向に平行な方向においてアクスル軸21の中心軸線に向かう方向を意味する。径方向における外方とは、アクスル軸21の径方向に平行な方向においてアクスル軸21の中心軸線から離れる方向を意味する。
【0020】
アクスルハウジング22は、アクスル軸21を収容する。アクスルハウジング22は、本体ハウジング28に固定されている。アクスル軸21の端部は、アクスルハウジング22の端部から軸線方向における外方に突出している。
【0021】
遊星歯車機構23は、アクスルハウジング22の軸線方向における外方に配置される。遊星歯車機構23は、アクスル軸21に連結されており、アクスル軸21の回転をホイール26に減速して伝達する。遊星歯車機構23は、サンギア31と複数のプラネタリギア32とリングギア33とを有する。
【0022】
サンギア31は、アクスル軸21と同心に配置されている。サンギア31は、アクスル軸21に固定されており、アクスル軸21と共に回転する。プラネタリギア32は、サンギア31の周囲に配置されており、サンギア31に噛み合う。プラネタリギア32は、サンギア31の周囲を公転可能に配置される。また、プラネタリギア32は、プラネタリギア32軸を中心に自転可能に配置される。
【0023】
リングギア33は、プラネタリギア32に噛み合う。プラネタリギア32は、リングギア33に対して回転可能に配置される。キャリア25は、プラネタリギア32を回転可能に支持している。キャリア25は、プラネタリギア32の公転と共に回転する。カバー34は、キャリア25に固定されている。
【0024】
ホイールハブ24は、アクスルハウジング22の径方向における外方に配置される。キャリア25は、ホイールハブ24の軸線方向における外方に配置される。キャリア25は、遊星歯車機構23を収容する。ホイール26は、ホイールハブ24とキャリア25とを収容する。ホイール26は、ボルトなどの固定手段によって、ホイールハブ24とキャリア25とに取り付けられる。ホイール26には、上述したタイヤ4が取り付けられている。
【0025】
図3は、
図2の一部を拡大した図である。
図3に示すように、アクスル装置13は、第1の軸受35と、第2の軸受36と、リングギアハブ37と、第1固定部材38と、第2固定部材39とを有する。
【0026】
第1の軸受35は、ホイールハブ24の内周面とアクスルハウジング22の外周面との間に配置される。第2の軸受36は、ホイールハブ24の内周面とアクスルハウジング22の外周面との間に配置される。第1の軸受35は、いわゆる円錐ころ軸受である。第1の軸受35は、第1外輪351と、第1内輪352と、第1転動体353とを有する。第1転動体353は、第1外輪351と第1内輪352との間に配置されている。第1転動体353は、円錐台形状を有する。第1転動体353は、第1転動体353の中心軸線が、軸線方向における外方且つ径方向における外方に向かって傾斜するように配置されている。
【0027】
第1の軸受35の内周面は、端部354を有する。端部354は、第1の軸受35の内周面において軸線方向における外方側の端部である。端部354は、軸線方向における外方に向かって内径が大きくなる形状を有する。すなわち、第1内輪352の端部354は、軸線方向における外方に向かって内径が大きくなる形状を有する。
【0028】
第1の軸受35と第2の軸受36とは、軸線方向に並んで配置されている。第2の軸受36は、第1の軸受35の軸線方向における内方に配置されている。第2の軸受36は、ホイールハブ24の内周面とアクスルハウジング22の外周面との間に配置される。
【0029】
第2の軸受36は、いわゆる円錐ころ軸受である。第2の軸受36は、第2外輪361と、第2内輪362と、第2転動体363とを有する。第2転動体363は、第2外輪361と第2内輪362との間に配置されている。第2転動体363は、円錐台形状を有する。第2転動体363は、中心軸線が、軸線方向における内方且つ径方向における外方に向かって傾斜するように配置されている。
【0030】
第2の軸受36の内周面は、端部364を有する。端部364は、第2の軸受36の内周面において軸線方向における内方側の端部である。端部364は、軸線方向における内方に向かって内径が大きくなる形状を有する。すなわち、第2内輪362の端部364は、軸線方向における内方に向かって内径が大きくなる形状を有する。
【0031】
リングギアハブ37は、第1の軸受35の軸線方向における外方に配置されている。リングギアハブ37は、アクスルハウジング22の径方向における外方に配置されている。リングギアハブ37は、リングギア33に連結される。リングギアハブ37は、第1内輪352に接触している。詳細には、リングギアハブ37は、第1内輪352の軸線方向における外方の端面355に接触している。
【0032】
アクスルハウジング22の外周面は、第4外周面221と第1外周面222とを有する。第4外周面221は、オイルシール41を支持する。オイルシール41は、アクスルハウジング22とホイールハブ24との間に配置されている。オイルシール41は、アクスルハウジング22とホイールハブ24との隙間を封止する。
【0033】
第1外周面222は、第1の軸受35と第2の軸受36とを支持する。第1外周面222において第1の軸受35を支持する部分と第2の軸受36を支持する部分とは平坦に繋がっている。第1外周面222の直径は、第4外周面221の直径よりも小さい。このため、第4外周面221と第1外周面222との間には第1段部226が形成されている。第2の軸受36の第2内輪362は、第1段部226に接触している。
【0034】
なお、ホイールハブ24の内周面は、突出部241を有する。突出部241は、第1外周面222の径方向における外方に配置されている。突出部241は、軸線方向において第1の軸受35と第2の軸受36との間に配置される。突出部241は第1外輪351と第2外輪361との間に配置される。
【0035】
アクスルハウジング22の外周面は、第2外周面223と第2段部229とを有する。第2外周面223は、第1外周面222の軸線方向における外方に配置されている。第2外周面223の直径は、第1外周面222の直径よりも小さい。第2段部229は、第1階周面222と第2外周面223との間に位置する。第2外周面223は、スプライン227と逃げ溝228とを有する。
【0036】
スプライン227は、アクスルハウジング22の外周面において軸線方向に延びている。スプライン227は、第1外周面222の軸線方向における外方に配置されている。逃げ溝228は、アクスルハウジング22の外周面において周方向に延びている。逃げ溝228は、軸線方向においてスプライン227と第2段部229との間に配置される。すなわち、逃げ溝228は、軸線方向においてスプライン227と第1の軸受35との間に配置される。
【0037】
アクスルハウジング22の外周面は、第3外周面224を有する。第3外周面224は、第2外周面223の軸線方向における外方に配置されている。第3外周面224の直径は、第2外周面223の直径よりも小さい。第3外周面224の外周面には、雄ネジが設けられている。
【0038】
第1固定部材38は、ナット状の形状を有する。第1固定部材38は、リングギアハブ37の軸線方向における外方に配置される。第1固定部材38は、アクスルハウジング22に固定される。詳細には、第1固定部材38は、第3外周面224に固定される。第1固定部材38の内周面には、雌ネジが設けられている。第3外周面224の雄ネジが第1固定部材38の雌ネジに螺合することによって、第1固定部材38が、第3外周面224に固定される。
【0039】
リングギアハブ37は、第1凹部371を有する。第1凹部371は、リングギアハブ37の軸線方向における外方の端部から軸線方向に凹んだ形状を有する。第1凹部371内には、第1固定部材38が配置される。リングギアハブ37は、第1の軸受35と第1固定部材38との間に挟みこまれる。これにより、リングギアハブ37の軸線方向への移動が規制される。
【0040】
第2固定部材39は、例えばスナップリングである。第2固定部材39は、第1の軸受35の軸線方向における外方に配置されている。第2固定部材39は、アクスルハウジング22の径方向における外方に配置される。第2固定部材39は、逃げ溝228に嵌合されている。第2固定部材39の外周面は、第1の軸受35の内周面よりも径方向における外方に位置している。リングギアハブ37は、第2凹部372を有する。第2凹部372は、リングギアハブ37の軸線方向における内方の端部から軸線方向に凹んだ形状を有する。第2凹部372内には、第2固定部材39が配置される。
【0041】
本実施形態に係るアクスル装置13の特徴は次のとおりである。アクスル装置13では、第1固定部材38によって第1の軸受35とリングギアハブ37の軸線方向への移動が規制される。また、第2固定部材39によって第1の軸受35の軸線方向への移動が規制される。従って、第1固定部材38と第2固定部材39とによってホイール26の保持力を向上させることができる。また、第1固定部材38を大型化させる必要が無いため、アクスル装置13の大型化を防止することができる。さらに、第2固定部材39は、逃げ溝228に嵌合されている。逃げ溝228は、アクスルハウジング22の外周面にスプライン227を形成する加工を施すときに必要となる構成である。従って、第2固定部材39を取り付けるための複雑な構造を追加することなく、逃げ溝228を利用して第2固定部材39を取り付けることができる。これにより、簡易な構造でホイール26の保持力を向上させることができる。
【0042】
第1の軸受35の内周面の端部354は、第2固定部材39に近づく方向に向かって内径が大きくなる形状を有する。このため、
図4に示すように、第1の軸受35が軸線方向における外方に移動すると、第1内輪352が第2固定部材39に乗り上げる。第1内輪352が第2固定部材39に乗り上げると、第1外輪351がホイールハブ24の内周面に押し当てられる。これにより、ホイールハブ24の保持力を増大させることができる。
【0043】
ホイールハブ24の内周面の突出部241が、軸線方向において第1の軸受35と第2の軸受36との間に配置されている。このため、突出部241によって第2の軸受36の軸線方向における外方への移動が規制される。これにより、ホイール26の保持力をさらに増大させることができる。
【0044】
第2凹部372内には、第2固定部材39が配置される。このため、第2固定部材39が軸線方向にリングギアハブ37から離れて配置される場合と比べて、第2固定部材39とリングギアハブ37とを軸線方向にコンパクトに配置することができる。これにより、アクスル装置13を小型化することができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0046】
本発明は、ホイールローダに限らず、バックホーローダ或いはダンプカーなどの他の種類の作業車両のアクスル装置に適用されてもよい。
【0047】
第1固定部材は上述した形状に限られない。例えば、第1固定部材が板状であり、ボルトによってアクスル軸に固定されてもよい。第2固定部材は、スナップリングに限らず、逃げ溝に嵌合できる形状であれば他の形状であってもよい。
【0048】
第1の軸受は、円錐ころ軸受に限らず、玉軸受、或いは、球面ころ軸受などの他の種類の軸受であってもよい。第2の軸受は、円錐ころ軸受に限らず、玉軸受、或いは、球面ころ軸受などの他の種類の軸受であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、アクスル装置において簡易な構造でホイールの保持力を向上させることができると共に、アクスル装置の大型化を防止することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 作業車両
21 アクスル軸
22 アクスルハウジング
23 遊星歯車機構
24 ホイールハブ
25 キャリア
26 ホイール
35 第1の軸受
36 第2の軸受
37 リングギアハブ
38 第1固定部材
39 第2固定部材
227 スプライン
228 逃げ溝
241 突出部
372 第2凹部