(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764175
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】燃焼圧検知センサ付きグロープラグ
(51)【国際特許分類】
F23Q 7/00 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
F23Q7/00 605Z
F23Q7/00 P
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-182416(P2013-182416)
(22)【出願日】2013年9月3日
(62)【分割の表示】特願2012-530033(P2012-530033)の分割
【原出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-238394(P2013-238394A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2013年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2011-39119(P2011-39119)
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097434
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和久
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 忠
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松井 正好
【審査官】
正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−309916(JP,A)
【文献】
特開2008−139150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を突出させた棒状をなすヒータが、前記ハウジングの内周面と該ヒータの外周面との間に隙間を保持して軸方向に変位可能に配置されており、該ヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する圧力又は変位を検出することで燃焼圧を検知可能のセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きグロープラグであって、
変形可能に形成され、しかも、該ヒータに外嵌状態とされて該ヒータを保持するように形成された環状膜部を有する保持部材が、少なくとも、その環状膜部を前記ハウジングの先端寄り部位の内周面と前記ヒータの外周面との間に位置させ、該ハウジングの内周面と前記ヒータの外周面との間を先後において遮断するように、該ハウジング及び該ヒータの双方に、周方向に沿って接合されて設けられてなる燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
先端から後方に軸方向に沿って見たとき、前記保持部材の前記環状膜部より先方であって、該保持部材と前記ヒータの外周面との接合部より先方に、該ヒータの外周面において半径外方に拡径するように突出した鍔状の防燃焼ガス壁が、燃焼ガスが該防燃焼ガス壁の外周側の先端を迂回して前記環状膜部に到達可能となるように設けられていることを特徴とする燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【請求項2】
前記防燃焼ガス壁を、前記ハウジングの内周面と前記ヒータの外周面との間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【請求項3】
前記防燃焼ガス壁を、前記保持部材の前記環状膜部の内周縁において先方に延るように形成した筒状部又は環状部に設けたことを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【請求項4】
前記ハウジングの先端寄り部位の内側に、該ハウジングの先端よりも内径が拡径されてなる拡径環状内周面を有しており、前記保持部材は、少なくとも、その環状膜部を該拡径環状内周面と前記ヒータの外周面との間に位置させており、
前記防燃焼ガス壁が、自身の外径が前記ハウジングの先端の内径より大径をなすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【請求項5】
前記防燃焼ガス壁を、前記保持部材の先方において、該保持部材とは別に設けたことを特徴とする、請求項1、2又は4のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃焼室内における着火の促進と、それに加えて燃焼圧を検知(検出)する機能を備えた燃焼圧検知センサ付きグロープラグに関する。詳しくはエンジンヘッドに取り付けられ、燃焼室内にヒータを露出させて燃料の着火の促進を図ることに加えて、燃焼室内の燃焼圧(燃焼ガス圧)をヒータで受圧させ、これを保持するハウジング内に配置された圧電素子やヒズミセンサ(ゲージ)等の検知センサによって燃焼圧を検知するようにした燃焼圧検知センサ付きグロープラグに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ(以下、単にグロープラグともいう)としては各種のものが知られている(例えば、特許文献1)。
図9は、これと同種のグロープラグ901の断面構造を簡略化して示した破断縦断面図である。同図のものは、筒状をなすハウジング110内に、通電することによって発熱する棒状(円軸状)のヒータ(例えば、メタルヒータ、又はセラミックヒータ)10を、自身の先端(燃焼室内に突出する側の端。図示下端)10aが、そのハウジング110の先端136から突出するようにして備えている。なお、
図9、および
図10中の「破線」は、エンジンヘッドにおける燃焼室の近傍部分を示す。このようなグロープラグ901では、ヒータ10は、燃焼圧を受圧させるためやそれ自身の熱膨張等を考慮して、ハウジング110内において、その軸G方向(先後方向)に微小ではあるが変位可能に配置されている。すなわち、ヒータ10は、ハウジング110の内周面との間に空隙(環状空隙)を保持して配置されている。そして、このヒータ10の後方には、ヒータ10が燃焼圧によって先端10aから後方に押されることによって発生する圧力を検出させ得る検知手段として、例えば圧電素子40が配置されている。これは、燃焼圧によってヒータ10が後方に押される力でその圧電素子40を圧縮し、その圧縮力の変化に応じて発生する電気信号を測定することで、燃焼圧を検出するように構成されている。なお、特許文献1では、歪ゲージをその検知手段としている。
【0003】
ところで、このグロープラグ901では、高温、高圧の燃焼ガスが、ハウジング110の先端136から、その内周面とヒータ10の外周面との間の上記した環状空隙を通ってハウジング110内の後方に入り込むのを防止する(シールを確保する)必要がある。このため、ハウジング110の内周面とヒータ10の外周面との間の環状空隙には、何らかのシール部材が配置されるのが普通である。例えば、同図のグロープラグ901では、同図中の拡大図、及び
図10に示したように、ハウジング110の先端部位(先端側ハウジング131)の内側に拡径状に形成された拡径環状空間K2を有しており、この空間K2に、燃焼ガスの後方への侵入を防止するシール部材60が配置されている。他方、ハウジング110に対するヒータ10の軸G方向の変位を許容するため、このシール部材60には、ベローズではないがダイアフラムのようにそれ自体が先後に容易に変形できる金属薄膜(例えば、SUS630製の薄膜)など、十分な可撓性のある環状膜部(メンブレン)63を有する耐熱部材が使用されている。同図のシール部材60は、先端側の小径筒部65と後端側の大径筒部61との間に、先後を仕切るように環状膜部63を有している。そして、上記した拡径環状空間K2内において、その小径筒部65が所定位置(黒塗り三角部)W1でヒータ10の外周面に沿って溶接(レーザ溶接)され、その大径筒部61がその後端側の所定位置(黒塗り三角部)W2、W3で、周方向に沿ってハウジング110側に溶接等により固定されている。これによってハウジング110の先端136の内周面とヒータ10の外周面との間におけるシールが確保されている。
【0004】
すなわち、このようなシール部材60により、ハウジング110に対してヒータ10が軸G方向(先後方向)に変位する際には、主としてその環状膜部63が変形し、シールを確保しつつも、ヒータ10の軸G方向の変位を許容できるよう構成されている。このように、シール部材60はハウジング110の先端寄り部位において、その内周面とヒータ10の外周面との間(環状空隙)に入り込む高温、高圧の燃焼ガスを遮断する役割を担うと共に、ハウジング110に対し、ヒータ10が軸G方向に変位するのを許容する役割をも担っている。なお、図示はしないが、例えばハウジングの先端より奥に入り込んだ位置の、その内周面と、ヒータ10の外周面との間にシール部材を配置することで、その間のシールを確保するようにした構成のものもある。このような構成のものでは、前記したようなハウジングの先端寄り部位におけるシール部材60は不要となる。しかし、その奥に配置されたシール部材の位置次第では、ハウジングの先端又は先端寄り部位において、奥のシール部材とは別途に、ヒータの軸方向の変位を許容しつつ、ヒータを保持する保持部材を設けることが必要となるのが普通である。すなわち、上記シール部材と同様の変形容易性を備えた構成が必要となる。というのは、ヒータはハウジング内において隙間嵌め状態にあり、突出する先端が自由端をなしているため、このようなヒータを安定して保持するためには、ハウジングの先端又は先端寄り部位においても、奥に配置されたシール部材とは別に、ヒータを保持(支持)する必要があるためである。これより理解されるが、上記シール部材60は、この保持の役割をも兼ねており、したがって、ハウジングの先端又は先端寄り部位においてヒータを保持する保持部材であるともといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−139148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したことから明らかであるが、シール部材60は、エンジンの燃焼サイクルに伴い、ハウジング110の内周面とヒータ10の外周面との間で、先端136側から入り込む高温、高圧の燃焼ガス(爆風)に直撃され、熱的衝撃を受ける形で配置されている。一方、このシール部材60は、その変形容易性の確保のため、環状膜部63を含めて、ヒータ10やハウジング110の先端部位(先端側ハウジング131)等の他の各構成部材(各部位)に比べると、相対的に著しくその肉厚が薄いものとされている。例えば、環状膜部63の肉厚は0.15〜0.30mm程度しかない。このためシール部材60が、燃焼サイクルにおいて高温、高圧の燃焼ガスに直撃される際においては、ヒータ10やハウジング110等の他の各構成部材に比べると、このシール部材60は著しく早く、すなわち、瞬時に高温となり、したがって、瞬時に相対的に大きな熱膨張(以下、異常熱膨張ともいう)を発生させる。そして、これが燃焼サイクルにおいて繰り返されることになる。
【0007】
他方、ヒータ10は、その突出する先端10aが自由端であり、上記構成のシール部材60は、その先端側の小径筒部65が所定位置W1で、このヒータ10の外周面に溶接で固定されており、大径筒部61は所定位置(黒塗り三角部)W2、W3で、ハウジング110側に同様に固定されている。このため、
図10中に2点鎖線で示したように、シール部材60は、燃焼ガスの直撃により、瞬時に軸G方向(
図10中の白抜き矢印方向)の先端側に向けて相対的に大きな熱膨張をすることになる。この結果として、その小径筒部65に溶接されているヒータ10は、このシール部材60の異常熱膨張に対応して、先端側(自由端側)に押出される応力作用を受けることになる。すなわち、ヒータ10は、シール部材60の異常熱膨張により、その小径筒部65とのヒータ側溶接部W1において先端側に引張られる作用を受けることになり、ヒータ10の例えば後端の圧電素子40に接している基準位置が先方に微量変位(移動)するか、圧電素子に対する圧縮力が変化することになる。
【0008】
したがって、燃焼圧によってヒータ10が後方に押される力で圧電素子40を圧縮し、その圧縮力の変化に応じて発生する電気信号を測定、検知するよう構成されているグロープラグ901においては、シール部材60の異常熱膨張によるヒータ10の先端側への押出し作用が、その圧縮に影響を与えてしまう。このように、前記構成のグロープラグ901においては、燃焼圧の検出においてドリフトを発生させ、その検知精度を低下させるといった問題があった。なお、こうした問題は、燃焼圧を検知させるセンサが圧電素子40でなく、ヒータ10の後方への歪(ヒズミ)を検知するヒズミセンサ(歪ゲージ)を用いた場合にも同様に存在する。
【0009】
また、上記もしたが、ハウジングの先端より奥に入り込んだ位置にシール部材を配置するなどの構成に基づき、ハウジングの先端又は先端寄り部位において、その奥のシール部材とは別途に、ヒータを保持する保持部材を設ける場合には、その保持においても、シール部材60と同様にヒータの軸方向の変位を許容する必要があるのは上記した通りである。すなわち、このような保持部材には、上記したようなシール性は要求されないものの、上記シール部材60と同様、金属薄膜など、十分な可撓性のあるものを用いることになる。このため、このような保持部材を設ける場合にも、前記したシール部材における問題と同じ問題がある。なお、上記もしたように、「シール部材」はヒータを保持する保持部材の役割をも兼ねるものであることから、以下、このシール部材についても、保持部材ともいう。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解消するためになされたもので、上記したシール部材(保持部材)、及びこれとは別途に設けられる上記したようなヒータの保持部材が、瞬時に異常熱膨張することを緩和ないし低減し、もって、上記した従来のグロープラグよりも燃焼圧の検知精度を高めることのできる燃焼圧検知センサ付きグロープラグを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を突出させた棒状をなすヒータが、前記ハウジングの内周面と該ヒータの外周面との間に隙間を保持して軸方向に変位可能に配置されており、該ヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する圧力又は変位を検出することで燃焼圧を検知可能のセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きグロープラグであって、
変形可能に形成され、しかも、該ヒータに外嵌状態とされて該ヒータを保持するように形成された環状膜部を有する保持部材が、少なくとも、その環状膜部を前記ハウジングの先端寄り部位の内周面と前記ヒータの外周面との間に位置させ、該ハウジングの内周面と前記ヒータの外周面との間を先後において遮断するように、該ハウジング及び該ヒータの双方に、周方向に沿って接合されて設けられてなる燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
先端から後方に軸方向に沿って見たとき、前記保持部材の前記環状膜部より先方であって、該保持部材と前記ヒータの外周面との接合部より先方に、
該ヒータの外周面において半径外方に拡径するように突出した
鍔状の防燃焼ガス壁が
、燃焼ガスが該防燃焼ガス壁の外周側の先端を迂回して前記環状膜部に到達可能となるように設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記防燃焼ガス壁を、前記ハウジングの内周面と前記ヒータの外周面との間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグである。そして、請求項3に記載の発明は、前記防燃焼ガス壁を、前記保持部材の前記環状膜部の内周縁において先方に延るように形成した筒状部又は環状部に設けたことを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記ハウジングの先端寄り部位の内側に、該ハウジングの先端よりも内径が拡径されてなる拡径環状内周面を有しており、前記保持部材は、少なくとも、その環状膜部を該拡径環状内周面と前記ヒータの外周面との間に位置させており、
前記防燃焼ガス壁が、自身の外径が前記ハウジングの先端の内径より大径をなすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグである。また、請求項5に記載の発明は、前記防燃焼ガス壁を、前記保持部材の先方において、該保持部材とは別に設けたことを特徴とする、請求項1、2又は4のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグである。
【0014】
上記のような本発明のグロープラグは、これがエンジン(エンジンヘッド)に取付けられる場合には、環状膜部は、エンジンの燃焼室に連通することになる。本発明では、防燃焼ガス壁が設けられているため、エンジンの燃焼サイクル過程で、ヒータの先端から後端に向けてその外周面に沿って突進するような高温、高圧の燃焼ガスは、その防燃焼ガス壁に衝突する。すなわち本発明では、前記防燃焼ガス壁が存在することから、このような燃焼ガスが、先ず、この防燃焼ガス壁を直撃し、これを迂回するようにしてから前記環状膜部に衝突するようにした。すなわち、前記環状膜部を直撃する割合を低減している。このため、この防燃焼ガス壁が無い従来の構成のグロープラグに比べると、それが存在する分、燃焼ガスが環状膜部に到達するまでの時間を遅延させることもでき、また、到達するまでの間に燃焼ガスが冷却することが期待できる。このように本発明では、燃焼ガスが前記環状膜部を直撃することもないし、それに到達するまでの時間を遅延させることができることより、前記環状膜部が、従来のように瞬時に異常高温となって異常熱膨張することを低減ないし緩和できることから、ヒータを軸方向先方へ押出すような作用を低減ないし防止できる。これにより、その分、燃焼圧力の検出において、従来のようなドリフトの発生の問題を緩和ないし防止でき、したがって、燃焼圧の検知精度を高めることができる。
【0015】
なお、請求項1に記載の発明において、「変形可能」とは、燃焼ガスが、該ハウジングの先端の内周面と前記ヒータの外周面との間の環状空隙を通って、ハウジングの内部の後方に入り込もうとしたときに、前記保持部材が前記ハウジングに対する前記ヒータの変位に伴って微小な伸びや縮みができることを意味する。
【0016】
本発明では、防燃焼ガス壁は、ヒータの表面に沿うようにその軸方向に突進する高温の燃焼ガスが、前記保持部材における前記環状膜部を直撃するのを防止できればよい。したがって、請求項2に記載のように、ハウジングの前記内周面と前記ヒータの外周面との間に設けてもよいし、請求項3に記載のように、前記保持部材の前記環状膜部の内周縁において先方に延るように形成した筒状部又は環状部に設けてもよい。また、本発明において、前記保持部材は、少なくとも、その環状膜部を前記ハウジングの先端寄り部位の内周面と前記ヒータの外周面との間に位置させ、該ハウジングの内周面と前記ヒータの外周面との間を先後において遮断するように、該ハウジング及び該ヒータの双方に、周方向に沿って接合されて設けられてなることでよい。すなわち、本発明では、該保持部材における環状膜部が位置されるところの、前記ハウジングの先端を含む先端寄り部位の内周面は、先端に向けてストレート(同一径)でもよい。
【0017】
しかし、請求項4に記載のように、前記ハウジングの先端寄り部位の内側に、該ハウジングの先端よりも内径が拡径されてなる拡径環状内周面を有しており、前記保持部材は、少なくとも、その環状膜部を該拡径環状内周面と前記ヒータの外周面との間に位置させており、防燃焼ガス壁は、自身の外径が前記ハウジングの先端の内径より大径をなすものとするのが好ましい。すなわち、本発明においては請求項4に記載のようにすることで、ハウジングの先端は、その奥より相対的に小径となる。そして、請求項4に記載の発明では、ヒータを先端側から見たとき、前記防燃焼ガス壁の外周縁が、ハウジングの先端の内周面より外周側に位置することになるから、ヒータの先端から後方に(その外周面に)沿って突進する燃焼ガスが前記環状膜部により直撃し難くなる。なお、請求項4に記載の発明において、「前記拡径環状内周面と前記ヒータの外周面との間」とある技術的事項は、前記拡径環状内周面と前記ヒータの外周面との間が環状の空間をなすことから、本明細書では、以後、「拡径環状空間」ともいう。なお、前記防燃焼ガス壁は、この「拡径環状空間」において設けられるのが好ましい。そして、請求項5に記載のように、前記防燃焼ガス壁は、前記保持部材の先方において、該保持部材とは別に設ける、すなわち、該保持部材とは別の部材(別部材)を、ヒータの外周面に溶接等して設けてもよい。
【0018】
本発明において、上記環状膜部を有する前記保持部材を前記ハウジング及び前記ヒータの双方に、周方向に沿って接合する手段としては、レーザ溶接等の溶接によるのが好ましい。ただし、この接合手段は、溶接以外にも、ロウ付けやカシメ、又は圧入、さらにはこれらの組合せとしても良い。なお、本発明において、周方向に沿って接合され、とは、周方向に沿って全周にわたって連続して接合されることの他、周方向に沿って不連続で接合されること、及び周方向に沿って連続して接合されているものの、全周にわたっては接合されていないことも含む。周方向に沿って全周にわたって連続して接合されているということは、少なくとも、1周以上連続して接合されていることを意味することから、その接合部を挟む先後においてシールが確保されていることを意味する。したがって、保持部材がシール部材でもある場合には、シール(気密)の確保のため、ハウジング及びヒータへの接合においては、各接合部とも、それぞれ周方向に沿って、全周にわたって連続して接合される。また、周方向に沿って不連続で接合されているということは、例えば、周方向に沿って、3箇所とか4箇所など、間隔をおいて通常、複数箇所で接合されていることを意味し、シール性が要求されない保持部材である場合に適用される。すなわち、前記保持部材が、シール部材とは別途に設けられる保持部材である場合には、該保持部材自身によって、前記ハウジングの内周面と前記ヒータの外周面との間を先後にシールを保持して遮断する必要がない。このため、このような場合には、保持部材が、該内周面と該外周面との間を先後において遮断するように配置されて、前記ハウジング及び該ヒータの双方に、周方向に沿って接合されて設けられてなるとしても、周方向に沿って全周にわたって連続して接合する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明を具体化した燃焼圧検知センサ付きグロープラグ(第1実施形態例)の部分破断面図、及びその要部の拡大図。
【
図2】
図1のA1部(保持部材(本例ではシール部材)を含む要部の拡大図)のさらなる拡大図。
【
図4】
図1のグロープラグの組立て過程を説明する分解図であって、ハウジングに、シースヒータユニット等を組付ける前の分解図。
【
図5】
図1のグロープラグの組立て過程を説明する分解図であって、
図4の状態からの組付け工程例の説明図。
【
図6】
図3のシール部材において、カールをなくした防燃焼ガス壁の変形例を示す図。
【
図7】
図1のグロープラグにおけるシール部材(保持部材)を含む要部の変形例の拡大断面図。
【
図8】シール部材(保持部材)を含む要部の別例(第2実施形態例)の拡大断面図。
【
図9】従来の燃焼圧検知センサ付きグロープラグの一例を示す破断縦断面図、及びそのシール部材を含む部分の拡大図。
【
図10】
図9のグロープラグにおける問題点を説明する、同図中のA9部(シール部材を含む部分)の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を具体化した実施形態例(第1実施形態例)の燃焼圧検知センサ付きグロープラグについて、
図1〜
図5に基づいて説明する。本例のグロープラグ101は、概略円筒状のハウジング110と、その内側において先端(図示、下方端)10aを、ハウジング110の先端136から突出させてなるシースヒータ10と、さらには、このシースヒータ10の後端側に配置された圧電素子40等を主体として構成されている。以下、先ずこのグロープラグ101の全体構成について、
図4、
図5に示した組立て過程を説明する分解図も参照しながら詳細に説明する。
【0021】
本例において、ハウジング110は、概略円筒状のハウジング本体111と、その内部に内挿され、シースヒータ10の後端において圧電素子40を支持するように、このハウジング本体111内に内挿、配置された圧電素子支持用内部ハウジング121と、ハウジング本体111の先端部位に位置する先端側ハウジング131との3部品から構成されている(
図3参照)。このうち、ハウジング本体111は、後端寄り部位の外周面に、ねじ込み用多角形部113を備えていると共に、その先端側の外周面には、シリンダヘッドへのねじ込み用のネジ115を備えており、このネジ115より先端側は、そのネジ115の谷の径より若干小径をなす円筒管部117を備えている。そして、この円筒管部117の先端寄り部位の内周面には、圧電素子支持用内部ハウジング121が内挿、配置されている。
【0022】
この素子支持用内部ハウジング121は、その外径がハウジング本体111の内径より若干小さい外径の円筒管をなしており(
図4参照)、先端側の外周面において突出形成されたフランジ123を備えている。このフランジ123は、外径がハウジング本体111の円筒管部117の外径と同じとされ、
図1の拡大図及び
図2に示されるように、このフランジ123における後端向き面124を、ハウジング本体111の先端118に当接させて、例えば、溶接で固定されている。一方、
図1の拡大図に示されるように、この素子支持用内部ハウジング121の後端125には、中央が開口する円環状底板126を有する円筒状キャップ127が、その筒状部128の先端を介して溶接されている。そして、この円筒状キャップ127内には、その円環状底板126に当接する配置で、円環状をなし、両端面に電極板43,44を介して、絶縁板47が配置された圧電素子40が配置されている。なお、各電極板43,44からは、後方へ配線が引き出されている。
【0023】
一方、シースヒータ10は、先端10aが凸となす半球面状とされ、後方に延びる円管からなるシースパイプ11と、その内部の先端に接続されて、後方に延びる形で配置された発熱コイル21と、この発熱コイル21の後端にシースパイプ11内で接続されて後方に延びる通電用軸部材(円軸部材)25等から構成されている。本例では、このシースパイプ11の後端から通電用軸部材25を突出させており、シースパイプ11の後端寄り部位には、シースパイプ11の後端を閉塞状にするシースパイプ外装管31が外嵌されている(
図4中参照)。ただし、シースヒータ10は、全体としてみると、棒状をなしており、シースパイプ11の先端寄りの半分程度が、ハウジング110の先端136から突出するよう設定されている。また、
図1の拡大図に示したように、このシースパイプ外装管31の後端は、通電用軸部材25を突出させるように縮径された円形の後端底部33を有しており、この後端底部33の後端向き面には、円筒部35が突出状に形成されている。なお、本実施例では、このシースパイプ外装管31は、その先端が、素子支持用内部ハウジング121の先端と略同位置か、若干それより先端側に位置するように保持されていると共に、外径が小さい薄肉部37とされている。そして、例えば、このシースパイプ外装管31は、周方向に沿ってシースパイプ11の外周面に溶接されて固定されている。なお、このシースパイプ外装管31は、素子支持用内部ハウジング121の内周面に対し、空隙を有して配置されている。
【0024】
他方、この通電用軸部材25は、このシースパイプ外装管31の後端の円筒部35内、及びその後方に配置された次記する押圧体50の内側、さらには、上記した圧電素子40、円筒状キャップ127の円環状底板126の各内側(貫通孔)を貫通するようにして、ハウジング110内においてその軸Gに沿って後方に延びている。そして、通電用軸部材25の後端は、ハウジング本体111の後端において、図示しない絶縁材等にて絶縁が保持されて固定されており、外部に突出されている。なお、シースパイプ11内部には、図示はしないが絶縁粉末が充填され、その後端がゴム等で封止されている。
【0025】
前記したシースヒータ10に外嵌されたシースパイプ外装管31の後端部における円筒部35と、上記した圧電素子40の先端に配置された電極板43、絶縁板47との間には、この絶縁板47と略同径の円環板部51と、これから同心で先方に延びる小円環部53を有する押圧体50が配置されている。この押圧体50の小円環部53は、シースパイプ外装管31の後端部における円筒部35に同軸状に固定されている。しかして、シースヒータ10は、自身の先端10aを上記したように筒状をなすハウジング110の先端136から突出させ、素子支持用内部ハウジング121内で、その内周面に対し隙間を保持した状態で配置されている。これにより、このヒータ10は、燃焼圧によって先端10aから後方に押されることによって発生する圧力により軸G方向(後方)に圧縮され、圧電素子40は、シースパイプ外装管31の後端部の円筒部35に固定された押圧体50の円環板部51と、素子支持用内部ハウジング121の後端に固定された円筒状キャップ127の円環状底板126との間で圧縮される。そして、この圧縮によって発生する電圧信号を、各電極板43,44から後方へ配線を介して出力できる構成とされている。なお、各電極板43,44からの配線は、例えば円筒状キャップ127の円環状底板126の内側と通電用軸部材25のあいだを絶縁を保持して通され、外部に引き出されるように設けられている。
【0026】
さて、本例のグロープラグ101においては、素子支持用内部ハウジング121は、その先端側の外周面において突出形成されたフランジ123における後端向き面124を、ハウジング本体111の先端118に当接させて、溶接で固定されているのは上記したとおりである。一方本例では、この素子支持用内部ハウジング121のフランジ123の先端向き面(環状面)122には、次記する本発明の要部をなすところの保持部材(本例ではシール部材)60を介して、先端側ハウジング131が固定されている。なお、本例を含め、以下の各実施形態例において用いられている「保持部材」はシール部材であるため、以下の各例においては、「シール部材」という。すなわち、素子支持用内部ハウジング121のフランジ123の先端向き面(環状面)122には、このフランジ123の外径と同外径の円筒部133と、その先端側に外周面が先細りテーパ面を有するテーパ筒部135とからなる先端側ハウジング131が、シール部材60を介して、溶接(W2、W3)で固定されている。シール部材60については次に詳述するが、この先端側ハウジング131をなすテーパ筒部135の先端136の内径D1は、ヒータ10の外周面と微小な環状空隙K1を有するように設定されている。一方、先端側ハウジング131における内周面のうち、本例では、テーパ筒部135の後端寄り部位より後方は、その微小な環状空隙K1をなす、その先端136の内径D1より内径が大径をなすように拡径された環状の内周面(拡径環状内周面132)を形成しており、この拡径環状内周面132の内側とヒータ10の外周面との間に、拡径環状空間K2を形成している(
図2、
図3参照)。以下、この拡径環状内周面132の内側と、ヒータ10の外周面との間の空間を拡径環状空間K2という。
【0027】
本例においてシール部材60は、後端側が、拡径環状空間K2内に納まる寸法で、相対的に大径の大径円筒部61をなし、先端側が小径の小径円筒部(環状部)65をなし、この両円筒部61、65間が、先後方向にダイヤフラムのように変形容易な金属薄膜からなる環状膜部63で、本例では軸Gに垂直となるようにして連結されている。そして、大径円筒部61において、外方に円環状に突出し、外径が先端側ハウジング131の円筒部133の外径と同じとされた固定用フランジ62を備えている。一方、小径円筒部65はヒータ10の外周面に外嵌状をなす寸法とされ、その先端において、ヒータ10の外周面において、半径外方に拡径するように突出し、自身の外径D2が先端側ハウジング131の先端136の内径D1より大径をなす防燃焼ガス壁67を備えている。なお、本例でのこの防燃焼ガス壁67は、鍔状(フランジ状)をなしておりその先端(外周側の先端)において、若干、後方にカールさせている。
【0028】
このシール部材60は、その大径円筒部61の外側の固定用フランジ62を、素子支持用内部ハウジング121のフランジ123の先端向き面122と、先端側ハウジング131の円筒部133との間に挟ませる形で、それぞれの間において周方向に沿って所定位置W2、W3で溶接されている。そして、小径円筒部65とヒータ10の外周面との間も、所定位置W1において周方向に沿って溶接されている。しかして、
図2、
図3中、破線矢印で示したように、燃焼ガスが、先端側ハウジング131の先端136から、その内周面とヒータ10の外周面との間の環状空隙K1を通って、拡径環状空間K2内に入り込むとしても、そのシール部材60にて、それより後方に入り込むのが抑制されている。
【0029】
一方、本例のグロープラグ101をエンジンのシリンダヘッドに取り付けて使用する場合においては、その燃焼ガス(爆風)が、ヒータ10をその先端10aから後方に押すことになる。これによる圧力が、素子支持用内部ハウジング121の後端に固定された円筒状キャップ127の円環状底板126と、ヒータ10に外嵌されたシースパイプ外装管31の後端部の円筒部35に固定された押圧体50の円環板部51との間にある圧電素子40を圧縮し、それによって発生する電圧信号として出力され、検出される。そして、その際において、ヒータ10が後方に微量変位するとしても、シール部材60における環状膜部63が変形し、この変位を許容する。なお、この環状膜部63は本例では軸Gに垂直となるよう形成されているものとしたが、先細りテーパ状をなしているものでもよいなど、その形状構造はその変位を許容できるものである限り、適宜のものとすればよい。
【0030】
他方、本例のグロープラグ101においては、防燃焼ガス壁67は、その外径D2が、ハウジング110の先端136の内径(内周面の径)D1より大きく設定されている。すなわち、防燃焼ガス壁67は、ヒータ10を、先端10aから後方に軸G方向に沿って見たとき、ハウジング110の先端136の内周面と、ヒータ10の外周面との間の環状空隙K1を閉塞するように設けることが好ましい(
図2、
図3参照)。エンジンの燃焼サイクル過程で、ヒータ10の先端10aから後端に向けて、その外周面に沿って突進する高温、高圧の燃焼ガスは、シール部材60の先端に設けられた防燃焼ガス壁67を直撃することになり、したがって、環状膜部63を直撃しないためである。すなわち、本例では、拡径環状空間K2内において、同燃焼ガスは、先ずは、防燃焼ガス壁67の前面(先端向き面)に衝突し、これを迂回して、その外周側先端のカール部に沿って流れてから環状膜部63に到達することになる。このため、この防燃焼ガス壁67が無い従来の構成のグロープラグ(
図9、
図10参照)に比べると、それがある分、環状膜部63が高温、高圧の燃焼ガスに直撃されるのを防止できるか、その時期を遅延させることができる。すなわち、本例では、この防燃焼ガス壁67がある分、従来のようなシール部材における環状膜部の瞬時高温化により、それが先後に異常熱膨張するのを緩和ないし低減できる。なお、本例では、防燃焼ガス壁67の外径D2が、ハウジング110の先端136の内径(内周面の径)D1より大きく設定されているため、燃焼ガスが環状膜部63を直撃するのを防止する作用が極めて高いが、本発明では、この防燃焼ガス壁67の外径D2は、ハウジング110の先端136の内径(内周面の径)D1と同じか、それより小さくてもよい。防燃焼ガス壁67がある分、防燃焼ガス壁67がない場合に比べれば、その直撃の防止作用が得られるためである。
【0031】
この結果、本例では、上記した従来のグロープラグのように、シール部材の先後方向の異常熱膨張により、それがヒータ10を軸方向、先方へ押出す作用を緩和できる。これにより、燃焼圧力の検出において、従来のようなドリフトの発生を緩和ないし防止できるので、その分、検出圧力精度を高めることができる。なお、本例では、防燃焼ガス壁67はその先端(外周側の先端)68において、若干、後方にカールさせた場合を例示したが、
図6に示したシール部材60のように防燃焼ガス壁67におけるそのようなカールは無くてもよい。なお、
図6は、
図3のシール部材60において防燃焼ガス壁67のそのカールをなくした点のみが相違するだけであり、他の相違点はないので同一の部位には同一の符号を付し、その説明は省略する。また、カールを設けるとしても逆に、
図7の変形例に示したように、防燃焼ガス壁67の先端68を先方にカールさせる(又は折り曲げる)ようにして、燃焼ガスの流下経路を長く、或いは複雑化してもよい。
【0032】
なお、上記例のグロープラグ101の組立ては、例えば、次のようにすればよい。
図4の中央に示したように、シースパイプ11内に、発熱コイル21、通電用軸部材25の先端側を内挿し、図示しない絶縁粉末を充填する等してシースヒータ10を組立てておく。そして、このようなシースパイプ11の後端寄り部位にシースパイプ外装管31を外嵌して固定する。そして、これにシール部材60を外嵌してヒータに溶接し、素子支持用内部ハウジング121の後端125に、圧電素子40を含む円筒状キャップ127を組み付けておいた組付け体を、
図5の中央に示したように、シースパイプ外装管31に外嵌し、その先端のフランジ123をシール部材60に押付けるようにし、先端側ハウジング131をシースヒータ10の先端10aから外嵌し、シール部材60を挟み付け、溶接する。その後、
図5の右図に示したようにしてハウジング本体111を組付け、所定の溶接工程等を経ることにより、
図1のように組立てられる。
【0033】
さて次に、上記本発明のグロープラグの別例(第2実施形態例)について、
図8に基づいて説明する。ただし、本例は、上記した第1実施形態例のグロープラグと本質的な相違はなく、
図8に示した、
図2に対応する拡大図のように、シール部材260及び防燃焼ガス壁267の構造のみが異なるだけであるため、その相違点のみ説明し、同一の部位には同一の符号を付すにとめる。すなわち、本例では、上記第1実施形態例のシール部材60と異なり、小径円筒部65の先端において防燃焼ガス壁267を切り離した形で、すなわち、シール部材260とは別に、防燃焼ガス壁267を拡径環状空間K2内に存在するように、ヒータ10の外周面に所定位置W4において周方向に溶接して設けものである。したがって、この防燃焼ガス壁267による場合にも、前例と同様の作用効果を有することは明らかである。すなわち、このような本例でも、エンジンの燃焼サイクル過程で、ヒータ10の先端10aから後端に向けてその外周面に沿って突進する高温、高圧の燃焼ガスは、それが拡径環状空間K2内に入り込んだとしても、先ず、防燃焼ガス壁67を直撃する。したがって、環状膜部63を直撃しないので、シール部材267の異常熱膨張を低減できる。本例では、この防燃焼ガス壁267は断面L字形を呈しており、その一方のフランジを介してヒータ10の外周面に溶接して、他方のフランジが防燃焼ガス壁267をなすようにしたものである。
【0034】
上記各例(実施形態例)では、保持部材がシール部材である場合において具体化している。このため、シール部材は、ハウジング及びヒータに、周方向に沿って全周にわたって連続して接合されているものである。しかし、本発明においては、保持部材が、シール性が要求されないものである場合、すなわち、ヒータの保持のみの役割を担うものであるときは、上記もしたように、周方向に沿って全周にわたって連続して接合されていてもよいが、不連続で接合されていてもよい。例えば、周方向において間隔をおいて、例えば、3箇所又は4箇所をスポット的に接合されているだけでもよい。また、周方向に沿って連続して接合されているとしても、全周にわたって連続していなくともよい。全周(360度)の例えば3/4周(270度)の角度範囲で周方向に連続して接合しているものとしてもよい。
【0035】
本発明においては、ヒータの表面に沿うようにその軸方向に突進する高温の燃焼ガスが、前記保持部材における環状膜部を直撃するのを防止できるように防燃焼ガス壁が設けられていればよく、したがって、この防燃焼ガス壁は、適宜の形状、構造のものとして具体化できる。また、この保持部材における環状膜部を直撃するのを防止できればよく、したがって、防燃焼ガス壁を先後に複数設けても良い。なお、上記例では、センサが圧電素子である場合で具体化したが、燃焼ガスがヒータを後方に押圧する際の圧力又はこれによるヒータの先後方向の変位からその燃焼圧を検知可能のセンサであればよく、したがって、例えば、ヒズミセンサを用いるものにおいても、同様に適用できる。
【0036】
また、上記例のグロープラグは、ヒータをなすシースパイプ、及びシースパイプ外装管そして、ハウジングがハウジング本体や、先端側ハウジング等からなる構成のものとして具体化したが、本発明においてこれらは適宜の構成のものとして具体化できる。さらに、上記各例では、拡径環状空間が、その先端側ハウジングの内面に形成されると共に、保持部材(シール部材)の外周縁が、この先端側ハウジングと圧電素子支持用内部ハウジングのフランジとで挟まれる形で、溶接されて固定されているものとして具体化したが、保持部材のハウジングに対する溶接構造は、これらに限定されるものではない。また、上記例では、保持部材の接合の手段として溶接を用いるものとしたが、溶接を用いるとしても、レーザ溶接の他、電子ビーム溶接や抵抗溶接等、適宜の溶接を用いることができる。さらに、溶接の必要のない箇所については、圧入等による締り嵌めのみとしておいてもよいし、ロウ材を用いたロウ付けによる接合とするなど、保持部材の接合手段は適宜の手段を用いればよい。
【符号の説明】
【0037】
10 ヒータ
10a ヒータの先端
40 圧電素子(センサ)
60、267 シール部材(保持部材)
63 シール部材(保持部材)の環状膜部
65 小径筒状部(シール部材(保持部材)の前記環状膜部の内周縁において先方に延るように形成した筒状部(環状部))
67,267 防燃焼ガス壁
101 燃焼圧検知センサ付きグロープラグ
110 ハウジング
111 ハウジング本体
121 圧電素子支持用内部ハウジング
132 拡径環状内周面
136 ハウジングの先端
G ヒータの軸
K2 拡径環状空間
K1 ハウジングの先端の内周面とヒータの外周面との間の環状空隙
D1 ハウジングの先端の内径
D2 防燃焼ガス壁の外径