特許第5764178号(P5764178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 奇美實業股▲分▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特許5764178-蛍光体および発光装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764178
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】蛍光体および発光装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/68 20060101AFI20150723BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20150723BHJP
【FI】
   C09K11/68CQD
   H01L33/00 410
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-217054(P2013-217054)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-122324(P2014-122324A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2013年10月18日
(31)【優先権主張番号】101149282
(32)【優先日】2012年12月22日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】594006345
【氏名又は名称】奇美實業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】莊 淵仁
(72)【発明者】
【氏名】温 正雄
【審査官】 馬籠 朋広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−182780(JP,A)
【文献】 特開2006−008862(JP,A)
【文献】 特表2012−509364(JP,A)
【文献】 特開2004−300247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される組成物を含有する蛍光体であって、
CapSrqm-Aa-Bb-Ot-Nn:Eur …(I)
前記式(I)において、Mが、マグネシウムおよびバリウムからなる群から選択される1つであり;Aが、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウムおよびルテチウムからなる群から選択される1つであり、且つ、Aが、少なくともアルミニウムを含み;Bが、シリコン、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選択される1つであり、且つ、Bが、少なくともシリコンを含み;Oが、酸素を表し、Nが、窒素を表し、0<p<1、0<q<1、0≦m<1、0≦t≦0.3、0.00001≦r≦0.1、a=1、0.8≦b≦1.2および2.6≦n≦3.1であって、
前記蛍光体が、10〜500ppmのモリブデンを含有する蛍光体。
【請求項2】
前記蛍光体が、10〜200ppmのモリブデンを含有する請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記蛍光体中のモリブデンの原材料が、含酸素モリブデン化合物、含窒素モリブデン化合物および純金属モリブデンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の種類である請求項1または2に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記含酸素モリブデン化合物が、MoO2またはMoO3を含む請求項3に記載の蛍光体。
【請求項5】
0.05≦p≦0.9および0.1≦q≦0.95である請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項6】
0.15≦(p+q)<1である請求項5に記載の蛍光体。
【請求項7】
フッ素、ボロン、塩素および炭素のうちの少なくとも1つの元素をさらに含み、前記各元素の含有量が、1000ppm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項8】
455nmの光源により励起された時、前記蛍光体が、580〜680nmの主波長を有する光を発光し、CIE1931色度図に基づく前記光の色座標(x、y)が、0.45≦x≦0.72および0.2≦y≦0.5である請求項1〜7のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項9】
半導体発光素子と、
式(I)で表される組成物を含有する蛍光体と
を含む発光装置であって、
CapSrqm-Aa-Bb-Ot-Nn:Eur …(I)
前記式(I)において、Mが、マグネシウムおよびバリウムからなる群から選択される1つであり、Aが、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウムおよびルテチウムからなる群から選択される1つであり、且つ、Aが、少なくともアルミニウムを含み、Bが、シリコン、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選択される1つであり、且つ、Bが、少なくともシリコンを含み、Oが、酸素を表し、Nが、窒素を表し、0<p<1、0<q<1、0≦m<1、0≦t≦0.3、0.00001≦r≦0.1、a=1、0.8≦b≦1.2および2.6≦n≦3.1であり、前記蛍光体が、10〜500ppmのモリブデンを含有し、
前記半導体発光素子から発光された第1光によって励起された時、前記蛍光体が、主波長を有する第2光を発光し、前記第2光の前記主波長が、前記第1光の主波長と異なる発光装置。
【請求項10】
455nmの波長を有する前記第1光により励起された時、前記第2光の前記主波長が、580〜680nmであり、CIE1931色度図に基づく前記光の色座標(x、y)が、0.45≦x≦0.72および0.2≦y≦0.5である請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記半導体発光素子から発光された前記第1光が、300〜550nmの波長を有する請求項9〜10のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記蛍光体が、10〜200ppmのモリブデンを含有する請求項9〜11のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記蛍光体中のモリブデンの原材料が、含酸素モリブデン化合物、含窒素モリブデン化合物および純金属モリブデンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の種類である請求項9〜12のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記含酸素モリブデン化合物が、MoO2またはMoO3を含む請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
0.05≦p≦0.9および0.1≦q≦0.95である請求項9〜14のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項16】
0.15≦(p+q)<1である請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記蛍光体が、フッ素、ボロン、塩素および炭素のうちの少なくとも1つの元素をさらに含み、前記各元素の含有量が、1000ppm以下である請求項9〜16のいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光組成物に関するものであり、特に、輝度の高い蛍光体および発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(light emitting diode)は、現在、半導体ベース発光装置に広く使用されており、この種の発光装置は、高発光効率、小型、低消費電力、低コストといった利点を有するため、様々な種類の光源に適用することができる。半導体ベース発光装置は、半導体発光素子および蛍光体を含み、蛍光体は、半導体発光素子から発光された光を吸収および変換する。半導体発光素子から発光された光と蛍光体から変換および発光された光は、混合して使用される。この種の発光装置は、蛍光灯、車両用照明、モニター、バックライト型液晶ディスプレイ等の様々な分野に適用することができる。そのうち、白色発光装置が最も広く使用されている。
【0003】
現在の白色発光装置は、セリウムを活性中心とするイットリウム・アルミニウム・ガーネット(yttrium aluminum garnet, YAG)系蛍光体(Y3Al512:Ce)と青色光を発光する半導体発光素子によって組成される。しかしながら、Y3Al512:Ce蛍光体と青色光を発光する半導体発光素子を組み合わせて発光された混光を使用すると、混光の色座標は、半導体発光素子から発光された青色光の色座標とY3Al512:Ce蛍光体から発光された光の色座標の間の接続線上に位置する。そのため、発光された混光は、赤色光が欠乏した白色光になり、演色性と彩度が明らかに不十分である。また、Y3Al512:Ceの励起スペクトルの好ましい領域と半導体発光素子の発光領域は一致しないため、励起光の変換効率が悪く、白色光源の高輝度を得るのも困難である。このような現象を解決するため、近年、赤色光を発光する蛍光体と混合されたYAG:Ce蛍光体が開発された。この種の蛍光体は、ユーロピウム(Eu)を活性中心とするSr2Si58:Eu蛍光体を含み、CaAlSiN3:Eu蛍光体とサイアロン系蛍光体が知られている。しかしながら、結晶自体は耐熱性が悪いため、Sr2Si58:Eu蛍光体は、長期使用後に輝度と演色性が減少するという欠点がある。また、サイアロン蛍光体自体は耐性の問題がないが、蛍光体の発光輝度が明らかに不十分であるため、商業上普及していない。CaAlSiN3:Eu蛍光体は好ましい耐性を有し、サイアロン蛍光体よりも優れた輝度を提供するが、業界では蛍光体の発光輝度をさらに向上させて、さらに高い発光効率を提供することのできる発光装置が期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、発光輝度を上げることのできる蛍光体を提供する。
【0005】
本発明は、さらに、発光効率を上げることのできる発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式(I)で表される組成物を含有する蛍光体を提供し、蛍光体は、10〜500ppmのモリブデンを含有する。
【0007】
CapSrqm-Aa-Bb-Ot-Nn:Eur …(I)
【0008】
式(I)において、Mは、マグネシウムおよびバリウムからなる群から選択される1つであり、Aは、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウムおよびルテチウムからなる群から選択される1つであり、且つ、Aは少なくともアルミニウムを含み、Bは、シリコン、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選択される1つであり、且つ、Bは少なくともシリコンを含み、Oは、酸素を表し、Nは、窒素を表し、0<p<1、0<q<1、0≦m<1、0≦t≦0.3、0.00001≦r≦0.1、a=1、0.8≦b≦1.2および2.6≦n≦3.1である。
【0009】
本発明の1つの実施形態中、蛍光体は、10〜200ppmのモリブデンを含有する。
【0010】
本発明の1つの実施形態中、蛍光体中のモリブデンの原材料は、含酸素モリブデン化合物、含窒素モリブデン化合物および純金属モリブデンから成る群から選択される少なくとも1つ以上の種類である。
【0011】
本発明の1つの実施形態中、含酸素モリブデン化合物は、MoO2またはMoO3を含む。
【0012】
本発明の1つの実施形態中、式(I)において、0.05≦p≦0.9および0.1≦q≦0.95である。
【0013】
本発明の1つの実施形態中、式(I)において、0.15≦(p+q)<1である。
【0014】
本発明の1つの実施形態中、蛍光体は、さらに、フッ素、ボロン、塩素および炭素のうちの少なくとも1つの元素を含み、各元素の含有量は、1000ppm以下である。
【0015】
本発明の1つの実施形態中、455nmの光源により励起された時、蛍光体は、580〜680nmの主波長を有する光を発光し、CIE1931色度図に基づく光の色座標(x、y)は、0.45≦x≦0.72および0.2≦y≦0.5である。
【0016】
本発明は、さらに、半導体発光素子および蛍光体を含む発光装置を提供する。蛍光体は、上述した蛍光体であり、半導体発光素子から発光された第1光によって励起された時、主波長を有する第2光を発光する。第2光の主波長は、半導体発光素子から発光された第1光の主波長とは異なる。
【0017】
本発明の別の実施形態中、半導体発光素子から発光された第1光は、300〜550nmの波長を有する。
【0018】
本発明の別の実施形態中、455nmの波長を有する第1光により励起された時、第2光の主波長は、580〜680nmであり、CIE1931色度図に基づく光の色座標(x、y)は、0.45≦x≦0.72および0.2≦y≦0.5である。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、モリブデンを追加することにより、本発明の蛍光体は、同じ色度のモリブデンを持っていない蛍光体よりも高い輝度を有する。いわゆる同じ色度とは、色座標(x、y)の差がそれぞれ±0.002であることを意味する。さらに、本発明において、蛍光体は、特定範囲内の含有量のモリブデンを含むことにより、より高い輝度を得ることができる。本発明に基づき、蛍光体と半導体発光素子を組み合わせることにより輝度の高い発光装置を完成させることができる。
【0020】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の1つの実施形態に係る発光装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を例として、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明の1つの実施形態において、蛍光体は、以下の式(I)で表される化合物を含む。
【0024】
CapSrqm-Aa-Bb-Ot-Nn:Eur …(I)
【0025】
式(I)において、Mは、マグネシウム(Mg)およびバリウム(Ba)からなる群から選択される1つであり、Aは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)およびルテチウム(Lu)からなる群から選択される1つであり、且つ、Aは、少なくともアルミニウムを含み、Bは、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)からなる群から選択される1つであり、且つ、Bは、少なくともシリコンを含み、Oは、酸素を表し、Nは、窒素を表し、0<p<1、0<q<1、0≦m<1、0≦t≦0.3、0.00001≦r≦0.1、a=1、0.8≦b≦1.2および2.6≦n≦3.1である。
【0026】
式(I)において、Aは、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウムおよびルテチウムからなる群から選択される1つであり、且つ、Aは、少なくともアルミニウムを含む。そのため、Aは例えば、単にアルミニウムであるか、あるいは、アルミニウムとガリウムの混合であってもよい。上述した式(I)において、Bは、シリコン、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選択される1つであり、且つ、Bは、少なくともシリコンを含む。そのため、Bは例えば、単にシリコンであるか、あるいは、シリコンとゲルマニウムの混合であってもよい。
【0027】
また、式(I)において、pおよびqの値は、0.05≦p≦0.9および0.1≦q≦0.95であるのが好ましい。カルシウム(Ca)とストロンチウム(Sr)の相対関係は、0.15≦(p+q)<1であるのが好ましい。また、式(I)における(p/q)の値は、0.1〜10であるのが好ましい。
【0028】
さらに、本実施形態の蛍光体は、10〜500ppmのモリブデンを含有し、より好ましくは、10〜200ppmのモリブデンを含有する。モリブデンの含有量が500ppm以下の時、蛍光体の発光輝度は減少しない。モリブデンの含有量が10ppm以上の時、輝度の効果が増加する。蛍光体におけるモリブデンの原材料は、含酸素モリブデン化合物、含窒素モリブデン化合物および純金属モリブデンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の種類であり、含酸素モリブデン化合物は、酸素、炭酸塩、シュウ酸塩等を含む。例えば、含酸素モリブデン化合物を原材料として使用する場合は、MoO2またはMoO3、あるいはMoO2およびMoO3を同時に使用する。
【0029】
同様にして、「含窒素モリブデン化合物」の定義は、モリブデンと窒素を含む化合物のことを指す。
【0030】
本発明の蛍光体は、10〜500ppmのモリブデンを含有するため、実験により、発光輝度の効果が増加することがわかった。蛍光体の輝度が増加する理由について確認することはできないが、本発明は以下の理論に限定されないものとする。蛍光体中のモリブデンの原材料は、焼結時に液体状態に変わるため、その結果、モリブデン原子が液体状態中で容易に移動して、結晶成長を促進することにより、結晶の結晶度が増加し、蛍光体の輝度が増加するものと推測される。
【0031】
455nm光源を使用して本発明の蛍光体を照射した時、蛍光体が励起されて光を発光する。発光された光の主波長は、約580〜680nmであり、蛍光体は、250〜550nmの励起可能波長範囲を有する。CIE1931色度図に基づく発光された光の色座標(x、y)は、例えば、0.45≦x≦0.72および0.2≦y≦0.5である。さらに、モリブデンの特定含有量を含む蛍光体は、同じ色度のモリブデンを持たない蛍光体と比較して、相対的に高い輝度を有する。いわゆる「発光された光の主波長」とは、発光スペクトルの発光強度が最大の波長を指す。
【0032】
式(I)で表される組成物は、単相に存在する。しかしながら、合成プロセスは、原材料の比率、溶剤の添加、原材料中の不純物、処理過程中の汚染、原材料の揮発等の要因に影響される。そうすると、他の結晶相または非晶相との混合を含む蛍光体を得ることが可能となる。発光輝度が影響されないという前提条件の下であれば、上述した状況は本発明の範囲内である。
【0033】
高い輝度を得るために、CaAlSiN3結構構造と同じ結晶相を有する本発明の蛍光体の含有量は、蛍光体の総質量の30%またはそれ以上であるのが望ましく、より好ましくは、60%またはそれ以上であり、さらに好ましくは、90%またはそれ以上である。実際に実施する時は、X線粉末回折スペクトルを使用して、蛍光体がCaAlSiN3と同じ結晶相を含むことを確認することができるとともに、X線粉末回折スペクトルの最強ピークと他の結晶相の最強ピークを比較して、結晶化相の質量比を決定することができる。
【0034】
本発明の蛍光体の製造において、M元素(+II原子価)、A元素(+III原子価)、B元素(+IV原子価)の原材料をそれぞれ含窒素化合物、含酸素化合物、あるいは任意の形式の化合物または金属から選択することができる。例えば、M32とMOの混合、あるいは、ANとB34の混合を使用することができる。
【0035】
本発明の蛍光体に用いる原材料は、各種異なる形式の前駆体であってもよいが、ここでは、便宜上、窒化物原材料を用いた実施方法について説明する。M、AおよびBの各種窒化物の原材料は商業上可能であるが、純度が高くなればなるほど良い結果を得ることができるため、最適結果が得られるよう、3N(純度が99.9%)以上の原材料を準備した。反応を促進するという点で、各原材料の粒子は微小サイズであるのが好ましい。しかしながら、粒子のサイズや原材料の形状が異なることにより、得られる蛍光体の粒子サイズや形状も異なる。そのため、蛍光体に必要な最終粒子サイズとほぼ同じサイズの窒化物原材料が準備できればよい。Eu原材料として、商業上利用可能な酸化物、窒化物原材料または金属が好ましい。純度が高ければ高いほど良い結果が得られるため、2N(純度が99%)以上が好ましく、より詳しく言及すると、3N(純度が99.9%)以上の原材料が更に好ましい。
【0036】
上述した原材料を混合する方法は、乾式法、湿式法、または乾式ボール研磨法や液体を用いる湿式ボール研磨法等の他の適切な方法であってもよいが、本発明はこれに限定されない。Ca32やSr32等の酸化されやすい化合物を計量して混合する時は、グローブボックスの不活性雰囲気内で行うのがより適切である。さらに、各原材料の窒化物は湿気に影響されやすいため、水分が完全に除去された不活性ガスを使用するのが好ましい。また、水を湿式混合法の溶媒として使用した場合、原材料が分解されるため、適切な有機溶媒を選択しなければならない。混合装置は、従来のボール研磨またはモルタルから選択することができる。
【0037】
蛍光体を製造する時、特定の重量比に基づいて原材料を混合してるつぼに入れ、原材料とともにるつぼを高温の溶鉱炉に入れて焼成する。焼成時、焼成温度は高温で行われるため、溶鉱炉は、金属抵抗加熱方式または黒鉛抵抗加熱方式が好ましい。焼成方法は、常圧焼結法やガス圧焼結法などの外部から機械的な加圧を施さない焼成方法によるのが好ましい。るつぼは、不純物を含まない高純度材料で作るのが好ましく、Al23るつぼ、Si34るつぼ、AlNるつぼ、サイアロンるつぼ、およびBN(ボロン窒化物)るつぼなどの不活性環境で使用できるるつぼを含む。しかしながら、るつぼから生じる不純物が混合するのを防ぐため、BNるつぼを使用するのが好ましい。焼成雰囲気は、窒素、水素、アンモニア、アルゴン、または上述したガスの任意の組み合わせ等の非酸化性ガスである。
【0038】
本実施形態の蛍光体の焼成温度は、1200℃以上、2200℃以下であり、より好ましくは、1400℃以上、2000℃以下であり、加熱率は、3〜15℃/分である。比較的低温で焼成を行うと、比較的小さな粒子サイズの蛍光体が得られ、比較的高温で焼成を行うと、比較的大きな粒子サイズの蛍光体が得られる。焼成時間は、使用した原材料の種類により異なるが、一般的に、反応時間は1〜12時間である。不活性環境における焼成時の圧力は、0.5MPa以下で行うのが好ましい(特に、0.1MPa以下が好ましい)。焼成が完了した後、室温に冷却して、ボール研磨または工業用粉砕機を使用して焼成された化合物を粉砕し、洗浄、濾過、乾燥および分粒ステップを行った後、本実施形態の蛍光体が得られる。
【0039】
高輝度の蛍光体を得るためには、蛍光体に含まれる不純物の量をできるだけ少なくしなければならない。例えば、フッ素、ボロン、塩素、炭素等の元素の含有量をそれぞれ1000ppm以下にすると、発光された光に影響しない。
【0040】
本実施形態の蛍光体を粉末状で使用した場合、蛍光体粉末の平均粒径は30μm以下であるのが好ましいため、粉末の各単位重量の表面面積を所望の値に一致させることにより、輝度の減少を防止することができる。上述した粉末を発光素子に塗布するため、粉末の密度を増やすだけではなく、輝度の減少も防止することができる。さらに、好ましい平均粒径は、蛍光体粉末の発光効率の観点から見て、1μm以上であることがわかっている。上記に基づき、蛍光体粉末の平均粒径は、約1μm以上、30μm以下であるのが好ましく、より詳しく言及すると、最適の選択は、3.0μm以上、20μm以下の粒径である。ここで言ういわゆる「平均粒径」とは、体積中の粒子分布の中間値(D50)を指す。
【0041】
図1は、本発明の別の実施形態に係る発光装置を示す概略図である。
【0042】
図1を参照すると、発光装置100は、半導体発光素子102と、発光層104とを含む。本実施形態において、半導体発光素子102は、導電性ベース106と、発光ダイオード108と、導線110とを含むが、本発明はこれに限定されない。発光層104は、蛍光体112を含む。本実施形態において、蛍光体112は、上述した実施形態に関連する蛍光体であるため、詳細説明については省略する。導線110を用いて外部に提供された電気エネルギーを導電性ベース106および発光ダイオード108に伝送した時、半導体発光素子102が光を発光する。蛍光体112が半導体発光素子102から発光された第1光によって励起された時、発光層104に含まれる蛍光体112は、主波長を有する第2光を発光する。第2光の主波長は、半導体発光素子102から発光される第1光の主波長とは異なる。例えば、蛍光体112が455nmの波長を有する第1光によって励起された時、第2光の主波長は、580〜680nmであり、CIE1931色度図に基づく第2光の色座標(x、y)は、0.45≦x≦0.72および0.2≦y≦0.5である。発光装置100は、さらに、封止構造114を含む。本実施形態において、封止構造114は、半導体発光素子102および発光層104を封止する。
【0043】
本実施形態において、半導体発光素子102は、波長300〜550nmの光を発光し、波長330〜420nmの紫外光(または紫光)または波長420〜500nmの青色光が好ましい。例えば、半導体発光素子102は、硫化亜鉛または窒化ガリウムを含む各種半導体であってもよい。発光効率に関しては、窒化ガリウム半導体が好ましい。
【0044】
本実施形態において、発光装置100の蛍光体112は、上述した実施形態の蛍光体であるが、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、発光装置100の発光層104は、さらに、他の発光特性を備える蛍光体を含み、発光装置100の発光領域を調整してもよい。例えば、紫外線半導体発光素子を用いて330〜420nmの波長を有する光を励起光源として提供する条件では、これらの波長で励起され、420nm以上、500nm以下の波長を発光する青色光蛍光体を使用し、および/または、500nm以上、570nm以下の波長を有する光を有する緑色光蛍光体を使用する。適切な組み合わせにより蛍光体を励起して、赤、緑、青の三色光を発光し、白色発光装置を形成する。
【0045】
また、青色半導体発光素子を用いて420〜500nmの波長を有する光を励起光源として提供する条件では、これらの波長で励起され、550nm以上、600nm以下の波長を発光する黄色蛍光体を使用し、本発明の蛍光体と組み合わせて赤と黄色の二色光を発光することができる。赤と黄色の二色光は、半導体発光素子から発光された青色光と混合して、白色光または電球色の照明器具を形成する。
【0046】
さらに、青色半導体発光素子を用いて420〜500nmの波長を有する光を励起光源として提供する条件では、これらの波長で励起され、500nm以上、570nm以下の波長を発光する緑色蛍光体をさらに使用し、本発明の蛍光体と組み合わせて赤と緑色の二色光を発光することができる。赤と緑色の二色光は、半導体発光素子から発光された青色光と混合して、白色光の照明器具を形成する。
【0047】
上述した発光装置100は、発光ダイオード(light emitting diode, LED)を例に挙げたが、本発明の蛍光体は、蛍光表示管(vacuum fluorescent display, VFD)、電界放出ディスプレイ(field emission display, FED)、プラズマディスプレイパネル(plasma display panel, PDP)等にも適用可能である。
【0048】
以下の例を上げて本発明の効果について説明する。
【0049】
測定方法の説明
【0050】
(1)蛍光体の輝度および色座標:455nmの波長を有する光を使用して蛍光体を照射し、輝度メータTOPCON SR-3Aで測定を行った。輝度値の測定誤差は、±0.3%以内であった。
【0051】
(2)蛍光体から発光された光の主波長:Jobin YVONのFluoro Max-3で測定を行った。発光された光の主波長とは、455nm光を用いて蛍光体を励起した時の最大発光強度の波長を指す。
【0052】
(3)蛍光体の元素組成の分析:
【0053】
(3-1a)装置:Jobin YVONのULTIMA-2、誘導結合プラズマ原子発光分析装置(inductively coupled plasma atomic emission spectrometer, ICP-AES)で測定を行った。
【0054】
(3-1b)サンプル前処理:0.1gのサンプルを正確に測って白金るつぼに加え、1gのNa2CO3と均一に混合した後、混合物を1200℃(温度条件:2時間で室温から1200℃まで温度を上昇させ、それから、その温度を5時間維持する)の高温溶鉱炉で溶解した。混合物を冷却した後、25mlのHCl(hydrochloric acid)(36%)を加えて、300℃のホットプレートで透明になるまで加熱溶解した。冷却後、100mlのPFAメスフラスコに入れ、一定量の純水を標線に加えた。
【0055】
(3-2a)装置:Horibaの窒素‐酸素分析器。モデル:EMGA-620W。
【0056】
(3-2b)測定:20mgの蛍光体をスズのカプセルに入れてから、るつぼに入れて測定した。
【0057】
実例1
【0058】
23.016gの窒化カルシウム(Ca32、純度は2N)化合物、203.719gの窒化ストロンチウム(Sr32、純度は2N)化合物、106.062gの窒化アルミニウム(AlN、純度は3N)、121.000gの窒化シリコン(Si34、純度は3N)、3.643gの酸化ユウロピウム(Eu23、純度は4N)および0.138gの二酸化モリブデン(Alfa Aesar社により製造されたMoO2、99%)を原材料として測り、窒素下にてグローブボックス内でるつぼを使用して混合した。この時、二酸化モリブデンの重量パーセントは、約0.03wt%であった。
【0059】
上述した混合物を窒化ボロン(BN)で作られたるつぼに入れ、るつぼを高純度の窒素雰囲気にて混合物とともに高温溶鉱炉の中に入れた。窒素のガス流量は、80リットル/分であった。温度は、10℃/分の加熱率で1800℃まで上昇させ、8時間1800℃に維持した。高温溶鉱炉の操作圧力を0.1MPaに維持して焼成を行った。
【0060】
焼成後、温度を10℃/分の冷却率で室温まで冷却し、粉砕、ボール研磨、洗浄2回、濾過、乾燥および分粒ステップを行って、実例1の蛍光体を得た。
【0061】
実例1の蛍光体により、誘導結合プラズマ原子発光分析装置を用いてモリブデン元素の含有量の分析を行った。また、455nmの波長を有する光を用いて蛍光体を照射し、輝度メータ、TOPCON SR-3Aで測定を行った。輝度値の測定誤差は、±0.3%であった。測定結果は、表1に示した通りである。測定した実例1の蛍光体の組成比率は、Ca0.197Sr0.684Al1.000Si0.9822.5640.213Eu0.005であった。
【0062】
実例2〜6
【0063】
実例1の方法を用いて、実例2〜6の蛍光体を製造した。相違点は、原材料である二酸化モリブデン(MoO2)の重量%を変えたことである。
【0064】
実例1の方法で実例2〜6の蛍光体を測定し、測定結果を表1に示した。
【0065】
実例7
【0066】
実例1の方法を用いて、実例7の蛍光体を製造した。相違点は、原材料である二酸化モリブデンを0.01wt%の三酸化モリブデン(Alfa Aesar社により製造されたMoO3、99.5%)に変えたことである。実例1の方法で実例7の蛍光体を測定し、測定結果を表1に示した。
【0067】
実例8
【0068】
実例1の方法を用いて、実例8の蛍光体を製造した。相違点は、原材料である二酸化モリブデンを0.01wt%の三酸化モリブデン(MoO3、99.5%)に変え、焼成時間を8時間から4時間に減らしたことである。実例1の方法で実例8の蛍光体を測定し、測定結果を表1に示した。
【0069】
実例9
【0070】
実例1の方法を用いて、実例9の蛍光体を製造した。相違点は、添加元素とその比率を以下のように変えたことである:4.461gの窒化マグネシウム(Mg32)化合物、23.587gの窒化カルシウム(Ca32)化合物、195.915gの窒化ストロンチウム(Sr32)化合物、108.692gの窒化アルミニウム(AIN、純度は3N)、124.000gの窒化シリコン(Si34、純度は3N)、3.733gの酸化ユウロピウム(Eu23、純度は4N)および0.138gの二酸化モリブデン(MoO2、純度は2N)を原材料として使用した。そして、実例1の方法を用いて、実例9の蛍光体を製造した。実例1の方法で実例9の蛍光体を測定し、測定結果を表1に示した。
【0071】
実例10
【0072】
実例1の方法を用いて、実例10の蛍光体を製造した。相違点は、添加元素とその比率を以下のように変えたことである:18.819gの窒化バリウム(Ba32)化合物、22.826gの窒化カルシウム(Ca32)化合物、189.595gの窒化ストロンチウム(Sr32)化合物、105.185gの窒化アルミニウム(AlN、純度は3N)、120.000gの窒化シリコン(Si34、純度は3N)、3.613gの酸化ユウロピウム(Eu23、純度は4N)および0.138gの二酸化モリブデン(MoO2、純度は2N)を原材料として使用した。そして、実例1の方法で実例10の蛍光体を測定し、測定結果を表1に示した。
【0073】
比較例1
【0074】
実例1の方法を用いて、比較例1の蛍光体を製造した。相違点は、二酸化モリブデンを添加しなかったことである。実例1の方法で比較例1の蛍光体を測定し、測定結果を表1に示した。
【0075】
比較例2〜4
【0076】
実例1の方法を用いて、比較例2〜4の蛍光体を製造した。相違点は、二酸化モリブデンの添加量を変えたことである。実例1の方法で比較例2〜4の蛍光体を測定し、測定結果を表1に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
表1からわかるように、モリブデンを含有する蛍光体は、モリブデンを含有しない蛍光体と比較して、比較的高い輝度を有する。さらに、蛍光体が10〜500ppmのモリブデンを含有する時、蛍光体が微量のマグネシウムまたはバリウムを含んでいても(実例9および10)、蛍光体の発光輝度をさらに上げることができる。モリブデンの含有量が多すぎる場合、大量のモリブデンが結晶の中に進入することが予測される。結晶中のモリブデン元素は、エネルギーレベルが低いほど活性中心Euのエネルギーを吸収する。そのため、蛍光体は、発光する光を減らすことでより低い輝度を有する。
【0079】
以上のように、本発明は、モリブデンの含有量を特定範囲内に制御することによって、同じ色度内で蛍光体の輝度を上げることができる。本発明の蛍光体を半導体発光素子と組み合わせることにより、輝度の高い発光装置を製造することができる。
【0080】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【符号の説明】
【0081】
100 発光装置
102 半導体発光素子
104 発光層
106 導電性ベース
108 発光ダイオード
110 導線
112 蛍光体
114 封止構造
図1