(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
他者らは、種々の方法を使用して次亜ハロゲン酸を産生しようとした。例えば、次亜塩素酸(HClO)の低塩化物水溶液を産生する1つの方法は、次亜塩素酸ガスおよび固体金属塩化物を生成するように、塩素ガスを伴う反応乾燥器内での、水性アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の微細な液滴を噴霧するステップを含む。微細な液滴の噴霧を形成するには、高い圧力が必要であり、したがって、高いエネルギー入力が必要である。次亜塩素酸ガスは、次いで、濃縮次亜塩素酸を産生するように、水蒸気とともに凝縮されるが、凝縮温度の達成には冷凍装置が必要である。このプロセスの不利な点には、固体塩の取り扱いの問題、塩素比率の高さ、およびエネルギー効率の悪さが挙げられる。
【0003】
水性次亜塩素酸の生成に対して上述の不利な点を共有する別のプロセスは、アルカリ金属水酸化物の溶液を塩素雰囲気中に噴霧し、結果としてHClOの気化および乾燥固体塩を生じるステップを含む。このプロセスによって、HClOおよび水蒸気の凝縮とは対照的に、HClO水溶液は、HClOの水への吸収によって産生される。
【0004】
さらに別のプロセスは、ブライン溶液からHClOを抽出するのに、有機溶媒を使用する。このプロセスは、HClO水溶液を産生するのに有機溶媒からHClOをさらに除去する必要があること、ブライン溶液から残留溶媒を除去する必要があること、およびHClOと有機溶剤との望ましくない反応、といった欠点がある。
【0005】
次亜塩素酸を産生するためのいくつかの既知のプロセスがあるが、殺菌用途に好適な次亜塩素酸溶液を産生するための、迅速、安全、かつ効率的なプロセスの必要性がまだある。したがって、液体の送給に際し、大きな加熱/冷却サイクルまたは高い圧力を必要としない、エネルギー効率のより高い方法が所望されているため、固体の塩副生物の取り扱い、または塩素ガスの注入を必要としない方法が求められている。
【0006】
食品加工時の殺菌剤としての使用に好適な次亜塩素酸溶液を産生するための1つの方法には、液体酸と、塩素化薬剤の添加によって塩素化された加圧担体ストリームとを混合することによって、ストリームの次亜塩素酸塩と次亜塩素酸との平衡を制御することが記述されている。液体ストリームのpHを減少させることによって、液体ストリームの次亜塩素酸塩に対する次亜塩素酸の相対比が増加する。このプロセスによって、より大きな制御を反応プロセスにわたって提供する特定の濃度の次亜塩素酸を産生するために、加圧ストリームの操作が可能となる。しかしながら、このプロセスは、好適な高温で、空気以外のガス種の導入を必要とする。
【0007】
酸性液体の産生に関連して、先行発明では電解セルが利用されていた。そのように記述された発明の1つは、電気分解による過酸化水素溶液および次亜ハロゲン化物を産生するための電解セルおよびプロセスを提供しており、それによって、次亜ハロゲン化物および過酸化水素が、それぞれ陽極チャンバおよび陰極チャンバ内で産生される。該発明は、具体的には、水を効果的に処理するように、所望の生成物である過酸化水素および次亜塩素酸の両方が海水中に再導入される、海水処理方法に関する。しかしながら、該発明は、二重チャンバ型装置の使用を必要とし、過酸化水素は、日常の手の殺菌用製剤には不適である。
【0008】
これまでは、強酸性殺菌液体を産生するために電気化学的装置も使用されていた。水処理施設で使用するためのそのような装置の1つは、低濃度であり、そのpHが3以下である次亜塩素酸を含有する、強酸性殺菌液体を発生させて分注するための装置を利用している。その装置では、海水を電気分解するように、陽極板と、DC電圧が電極間に印加される隔膜の表面と対向する面に配置される陰極板との間に形成される、チャネルに海水を通過させる。隔膜は、陽極での生成物と陰極での生成物との混合を防止する。次亜塩素酸を含有する酸性液体は、隔膜と陽極との間の空間を通って流れる水溶液を、電解セルから取り出すことによって得ることができる。
【0009】
同じく2チャンバ型電解セル装置を使用して、低pHの酸性水溶液を得ることを目的とした別の方法では、殺菌に使用するために、陽極で塩化物イオンが酸化されるものによって含有する塩化物の量が削減された強酸性水が産生される。この装置については、上述の発明と同様に、最終生成物のpHが3未満であることが所望され、したがって、日常の手の殺菌用製剤には不適切である。
【0010】
塩素化は、望ましくない微生物を殺傷するための方法として長く知られている。塩素は、塩素ガス(Cl
2)を含む複数の形態で提供され得、比較的に安価で極めて効率の高い抗菌剤である。しかしながら、同じく、毒性が非常に強く、腐食性のガスである。NaOClまたはCa(OCl)
2等の次亜塩素酸塩は、非常に安全な代替物であるが、塩素ガスよりも高価である。最終的には、次亜塩素酸塩溶液(すなわち、漂白剤)を利用してもよい。しかしながら、これらは、かさばり、かつ危険なため、大規模な用途には稀にしか使用されない。塩素源に関係なく、次亜塩素酸(HClO)および次亜塩素酸塩イオン(OCl
−)は、最終的な望ましい抗菌性生成物である。しかしながら、手の殺菌剤のためのあらゆる用途において、次亜塩素酸は、人間の皮膚との接触における安全な使用に好適である。
【0011】
安全性を越えて、次亜塩素酸の水溶液の殺菌作用は、特に殺菌剤用途で使用するものと見なす必要がある。水溶液中に溶解される塩素化合物の形態がpHによって変動するので、次亜塩素酸の水溶液の組成は、溶液のpHによって変動する。一般的にpH3を超える低pHでは、HClOが支配的な形態であり、一方で、一般的にpH8を超える高pHでは、OCl
−が支配的である。HClOは、次亜塩素酸塩イオンよりも簡単に細胞膜を横断するので、HClOの形態は、微生物の殺傷に対して、OCl
−よりも約80倍効率的である。
【0012】
次亜塩素酸水溶液のpHが8以上である時、すなわち次亜塩素酸の水溶液がアルカリ性である時には、殺菌作用がかなり低い次亜塩素酸イオン(ClO
−)が、主に水溶液中に存在する。したがって、次亜塩素酸のアルカリ性水溶液の殺菌作用はかなり低い。
【0013】
次亜塩素酸水溶液のpHが7以下である時、すなわち次亜塩素酸の水溶液が酸性である時には、殺菌作用が次亜塩素酸塩イオンの10〜100倍である次亜塩素酸(HClO)の量は、次亜塩素酸塩イオンの量よりも多い。したがって、次亜塩素酸の酸性水溶液の殺菌作用は高い。
【0014】
次亜塩素酸水溶液のpHが3〜5.5である時には、水溶液中に溶解される塩素化合物の実質的に100%が次亜塩素酸である。したがって、次亜塩素酸の水溶液の殺菌作用はさらに高くなる。
【0015】
次亜塩素酸水溶液のpHが3以下である時には、水溶液中に溶解される塩素化合物の一部が、殺菌作用が次亜塩素酸よりもさらに高い塩素ガス(Cl
2)になる。したがって、次亜塩素酸水溶液の殺菌作用はさらに高くなる。しかしながら、人間の皮膚は、このような低pHの酸性殺菌液体の適用によって損傷を受け得る。
【0016】
塩素化プロセスの抗菌有効性を増加させ、また、手の殺菌剤等の使用に対する安全性を確保するように、塩素化溶液のpHを制御することが望ましい。水ストリームのpHを調整するためのこれまでのプロセスおよびシステムは説明されてきた。これらのプロセスは、直接的なガス送給、もしくはバブラーによる、水中への注入によって、またはベンチュリ型エダクタを使用して水ストリーム中へ二酸化炭素を吸引することによる、二酸化炭素を水中へ注入するための別の方法によって、二酸化炭素を使用するステップを含む。しかしながら、二酸化炭素ガスの使用効率の制御は困難であり、これらのプロセスは、本質的に非効率的である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、次亜ハロゲン酸を水溶液中で産生するための本発明の方法の実施例を説明するが、本発明は、それに制限されるものと解釈されるべきではない。本発明の1実施形態は、
図1Aの概略図に示されているように、単一液体チャンバ内で、pH制御された次亜ハロゲン酸水溶液を産生するための電解装置1を提供する。本発明の方法で使用するための電解装置1において、電解合成反応器の動作は、酸素の水への還元を誘導するようにガス拡散電極2に接続され、かつ、例えばHClOを発生させるよう塩化物イオンの酸化を促進するように陽極3に接続される、DC定電流電源の使用に依存する。この電解セルでは、化学薬品を産生するのに電気が消費される。
図1Bにおいて、本明細書においてはガス透過性陰極と同等として知られ、電流コレクタとして機能する、ガス拡散電極2は、空気に、または酸素の一部の気体状源に面し、構造体を通じた液体の濾過を防ぐように、外側に疎水性表面4を有する。ガス拡散電極2は、電解質に面し、二酸素の実際の還元が生じる電解触媒表面の形成を可能とする、親水性表面5をさらに有する。
【0025】
次亜ハロゲン酸を発生させるための電解装置の代表的な一形態は、
図2の断面図に示され、参照符号10で示されている。電解装置10は、単一液体チャンバ12と、ガス区画14とを含む。本発明において、好ましくは有機材料を含まず、それによって単一液体チャンバ内での有機材料の酸化反応を回避する、NaCl溶液または海水等の水溶液中のハロゲン化物イオン源は、ハロゲン化物イオンを含有する水溶液を受容するための流入口18を通じて、重力送給容器またはポンプ16によって、電解セルの単一液体チャンバ12に供給される。重力送給容器16は、プラスチックまたはガラス等のいかなる材料で作製されていてもよく、電解合成反応器を通じて送給される緩衝または非緩衝溶液と反応しない。弁40は、流入口18を通じた単一液体チャンバ12内への送給の流れを調節する。
【0026】
単一液体チャンバ12は、次亜ハロゲン酸を水溶液中に産生するように、ハロゲン化物イオンの酸化を提供する単一液体チャンバ12内に含まれる、単一液体チャンバ外壁32と、固体陽極20とを有する。代替的に、固体陽極20は、電解質内に陽極を完全に浸漬する必要が無いので、容器の壁またはその一部とすることができる。
【0027】
本発明に使用される固体陽極20は、例えば、De Nora Tech等の供給業者によって市販されている、寸法安定性陽極(Dimensionally Stable Anode: DSA)であってもよい。ガス透過性陰極22は、単一液体チャンバ外壁32の一部を形成し、その後陽極の生成物と混合される、単一液体チャンバ内の溶液中に水酸基イオンを提供するように、酸素の還元を提供する。単一液体チャンバ12の外側から酸素を受容するための疎水性表面、および二酸素の還元を可能にする親水性表面を有する、本発明に使用される陰極は、例えば、電解触媒として高面積炭素および高面積Pt(白金)を含有する、BASF Fuel Cell, Inc.を含む種々の供給業者によって市販されている、ガス拡散電極(Gas Diffusion Electrode: GDE)であってもよい。電解触媒の使用は、二酸素の水への還元に必要な過電圧を削減することによって、電解装置の全体的な電力消費を削減するため、望ましい。特定の有機材料の熱分解によって導出される種を含む特定の金属および酸化物等の、他の電解触媒も同様に使用してもよいが、概して多孔質形態で使用される。代替的に、触媒は、板、金属ゲージ、焼結粉末、またはステンレス鋼、ジルコニウム、銀、および炭素等の耐食性材料の焼結金属繊維上に担持されてもよい。単一液体チャンバに対向する陰極側に疎水性シートを形成することによって、反応性表面へのガスの接近を高めることができる。
【0028】
他の1実施形態において、ガス透過性陰極22で画定される、単一液体チャンバ12の外面は、大気に露出してもよい。別の実施形態では、
図2に示されるように、電解装置10は、ガス区画14を通じてガス透過性陰極22に酸素を提供するための酸素源24をさらに含んでもよい。酸素源24は、空気、市販の酸素ボンベ、別途設置された電解セル内での水の電気分解によって産生される酸素、または、PSA(Pressure Swing Absorption: 圧力スイング吸着)装置による濃縮空気によって得られる酸素であってもよく、この酸素源24はまた、ガス透過性陰極の疎水性表面の方へ酸素を送り込むように、ポンプを含んでもよい。ガス区画14は、ガス区画外壁30を通る酸素を受容するための流入口26をさらに含む。ガス区画14は、ガス透過性陰極22から成る単一液体チャンバ外壁の一部を囲む、少なくとも1つのガス区画外壁30を有する。流出口46は、酸素または空気の何らかの過剰圧力がシステムを出ることを可能にする。
【0029】
単一液体チャンバ内では、本明細書において混合排出物とも称される、流出する排出物を生じるように、固体陽極20と、ガス透過性陰極22との間の界面で反応生成物を組み合わせる。
【0030】
産生される次亜ハロゲン酸が次亜塩素酸であり、産生されるハロゲン化物イオンが塩化物イオンである一実施例において、陽極の酸化は、塩化物イオンの酸化を介して、HClOを産生するように、単一液体チャンバ12内で行われる。
Cl
−+H
2O → HClO+2e
−+H
+
一方で、水の存在下では、塩素ガスCl
2(最初に形成される)は、上述の反応に対応する結果として生ずるHClOに、即座に変成する。ガス透過性陰極22は、次の反応式に従って、水への二酸素の還元に関与する。
O
2+2H
2O+4e
− → 4OH
−
電気化学反応は、水のストリーム中ではなく、電極と電解溶液との間の界面で、またはその近くで生じる。生成物は、全て水溶性である。
【0031】
単一液体チャンバ12は、流出口28をさらに含み、流出する混合排出物は、それを通って、単一液体チャンバ外壁32を通って単一液体チャンバ12を出て、その後、流出する排出物は、
図2に34で示される、流出した混合排出物のpHを判定するためのpH感知電極またはpH計を通過する。手の殺菌剤としての使用に望ましいpHの範囲は、約4〜9の間である。誤り感知フィードバック装置またはサーボを、pHの調節をさらに補助するように含んでもよいことを理解されるであろう。pHを測定するためのpH計は、弁36を組み込むが、電気的に作動する弁でもよく、この弁は、排出物溶液のpHが約4〜9の間である時に、生成物として使用するために流出ストリームを外へ導く。
【0032】
図2に示され、単一液体チャンバを利用する実施形態では、DC定電流電源によって回路に印加される電流を変化させることによって、または代替的に、必要に応じて、ハロゲン化物電解溶液の送給流のpHを調整するように、緩衝剤を添加することによって、pHを管理または制御することが可能である。
【0033】
本発明で次亜ハロゲン酸を発生させるための電解装置の別の代表的な形態は、
図3の立体図に示され、参照符号100で示されている。電解装置は、
図2の単一液体チャンバ型装置と同じように装備される。しかしながら、
図3は、円筒形のガス区画外壁130によって可能であるような、ガス区画114の構成を示している。単一液体チャンバ112は、円筒形であってもよく、ガス区画114内に含まれる。電解セル100の単一液体チャンバ112は、固体陽極120と、単一液体チャンバ外壁132とを有し、ガス区画114の内壁としての役目を果たしてもよい。単一液体チャンバ外壁132は、単一液体チャンバ112を囲み、単一液体チャンバ外壁132の一部としての役目を果たすように、ガス透過性陰極122のための開口部を残している。単一液体チャンバ112内に含まれる電解質内に固体陽極120を完全に浸漬する必要が無いので、固体陽極120は、ガス透過性陰極122の位置と同じ位置に配置されないのであれば、代替的に、単一液体チャンバ112によって画定されるような、壁の一部としての役目を果たしてもよい。
【0034】
図2に示されている実施形態と同様に、
図3の電解装置は、水溶液中のハロゲン化物イオンを単一液体チャンバ112内に送給するための重力送給容器またはポンプ116および流入口118を有する。弁140はさらに、重力送給容器またはポンプ116から単一液体チャンバ112までの流れを調節する。混合排出物は、単一液体チャンバ外壁132を通り、
図3に134で示されている、pHを判定するためのpH感知装置またはpH計を通る流出ストリームを導く流出口128を通過して、単一液体チャンバを出る。さらに、誤り感知フィードバック装置またはサーボが含まれてもよい。弁136は、それによって、約4〜9の所望のpHの範囲が達成された場合に、最終生成物として使用するために、システムの外へ流体を導く。ガス区画114は、電解装置100を囲む役目を果たし得る、ガス区画外壁130を有する。流入口126は、ガス透過性陰極122との界面で、またはその近くで反応が生じるように、酸素源124からガス区画114内に酸素を送給する。流出口146は、必要に応じて、空気または酸素の何らかの生じた過剰圧力を放出することができる。
【0035】
また、
図2の装置と同様に、代替的に、
図3に示されている装置を、ガス透過性陰極に酸素を導入するためのガス区画を利用するのではなく、大気に露出させ得ることも可能である。また、
図2の単一液体チャンバ型電解セルと同様に、混合排出物のpHは、DC定電流電源によって回路に印加される電流を調整することによって、または代替的に、必要に応じて、ハロゲン化物電解溶液の送給流のpHを調整するように、緩衝剤を添加することによって、最良に制御または最適化され得る。
【0036】
図4は、本発明において次亜ハロゲン酸を発生させるための、装置200で示される、電解装置のさらなる代替の代表的な形態であり、立体図で示されている。電解装置は、
図2の単一液体チャンバ型装置と同じように構成される。しかしながら、
図4は、ガス区画の外壁としてガス透過性陰極222を使用することが可能になるように、内筒としてのガス区画214の配置を示している。単一液体チャンバ212は、円筒形であってもよく、ガス区画214を囲んでもよい。それによって、固体陽極220は、単一液体チャンバ外壁を形成し、一方で、ガス透過性陰極222は、単一液体チャンバ内壁としての役目を果たす。
【0037】
図3に示されている実施形態と同様に、
図4の電解装置は、水溶液中のハロゲン化物イオンを単一液体チャンバ212内に送給するための重力送給容器またはポンプ216および流入口218を有する。弁240はさらに、重力送給容器またはポンプ216から単一液体チャンバ212までの流れを調節する。混合排出物は、単一液体チャンバ外壁232の底面を通り、pHを判定するためのpH感知装置またはpH計234を通じて流出ストリームを導く流出口246を通過して、単一液体チャンバを出る。誤り感知フィードバック装置またはサーボが含まれてもよい。弁236は、それによって、約4〜9の所望のpHの範囲が達成された場合に、最終生成物として使用するために、システムの外へ流体を導く。ガス区画214は、上部および下部にガス区画外壁230と、ガス透過性陰極222との界面で、またはその近くで反応が生じるように、酸素源224からガス区画214内に酸素を送給する流入口226と、を有し、流出口228は、必要に応じて、空気または酸素の何らかの生じた過剰圧力を放出することができる。
【0038】
図2および3の単一液体チャンバ型電解セル装置と同様に、混合排出物のpHは、DC定電流電源によって回路に印加される電流を調整することによって、または代替的に、必要に応じて、ハロゲン化物電解溶液の送給流のpHを調整するように、緩衝剤を添加することによって、最良に制御または最適化され得る。
【0039】
図5は、次亜ハロゲン酸を発生させるための電解装置300の別の代表する形態をさらに示しており、この二重チャンバ型装置は、陽極液チャンバと、陰極液チャンバとを有する。セルは、外壁350を有し、陰極液チャンバ314の外壁の少なくとも一部として、ガス透過性陰極322がその外壁の中に配置される。電解装置300は、ハロゲン化物イオンの水溶液をその中に受容するための流入口318を有する陽極液チャンバ312を有する。本実施形態に示されているように、陽極液チャンバ312は、水溶液中の次亜ハロゲン酸の陽極液排出物を産生するように、ハロゲン化物イオンの酸化を提供する陽極液チャンバ内に含まれる、固体陽極320を有する。固体陽極320は、電解質内に陽極を完全に浸漬する必要が無いので、示されているように陽極液チャンバ内に配置するか、または、代替的に、陽極液チャンバの不透過性壁またはその一部としての役目を果たしてもよい。しかしながら、固体陽極320は、陽極液チャンバ312と陰極液チャンバ214とを分離する陽極液チャンバ壁の一部を形成することができない。
【0040】
この二重チャンバの構成において、ガス透過性陰極322は、陰極液チャンバ314が、少なくとも部分的にガス透過性陰極322を含む、少なくとも1つの壁を有するように配置することができる。陰極は、陰極液チャンバ314の外側から酸素を受容するための疎水性表面と、二酸素の還元、および水性ベースの陰極液排出物を電解装置300の陰極液チャンバ314内に保持可能にするための親水性表面と、を有する。
【0041】
さらに、
図5に示されているセルは、2つの液体チャンバ、すなわち陽極液チャンバ312と陰極液チャンバ314とを仕切るように、アイオノマー膜344を有する。膜は、中性膜またはイオン交換膜であってもよい。アイオノマー膜344は、陽極液および陰極液溶液の容易な混合を防ぐように、DuPontから入手可能なNafion(登録商標)等の合成重合体で作製されるイオン交換膜、または代替的に、種々の供給元から入手可能な超微細孔の非アイオノマー膜であってもよい。本実施形態に利用されるNafion膜は、最小の電気抵抗でナトリウム陽イオン(Na
+)の陽極液チャンバから陰極液チャンバまでの移動を可能にし、一方で、OH
−等の陰イオンの陰極液チャンバからの逆移動を最小限に抑える。陽極液チャンバ312と陰極液チャンバ314とを分離するアイオノマー膜344の使用は、両液体の混合を防ぐこと、および次亜ハロゲン酸が陰極に到達するのを防ぐことを可能にする。動作中、本発明の陽極液チャンバは、塩化物の反応物に加えてHClOを含有しなければならず、また、陰極液チャンバ内で産生される大量の二酸素の還元生成物、すなわち陰極液排出物を含有してはならない。
【0042】
陽極液チャンバ312および陰極液チャンバ314へ送給するための別個の流入口は、それぞれ流入口318および流入口326によって保持される。セルへの送給を達成するための多数の方法が存在するが、
図5に示されるように、水性NaCl、またはハロゲン化物イオンを含有する溶液を陽極液チャンバ312に導入する、重力送給容器またはポンプ316は、陰極液チャンバ314に液体水または別の水溶液を提供するための源324をさらに含んでもよい。このように、装置へ送給される液体の流れは、陽極液チャンバ312、または陰極液チャンバ314のいずれかへの別々の入力を調節するように、弁352によって管理される。
【0043】
図5に示されるような本発明の二重チャンバの実施形態において、それにより産生される次亜ハロゲン酸が次亜塩素酸であり、産生されるハロゲン化物イオンが塩化物イオンである場合には、陽極の酸化は、塩化物イオンの酸化を介して、HClOを産生するように、陽極液チャンバ312内で行われる。
Cl
−+H
2O → HClO+2e
−+H
+
一方で、水の存在下では、塩素ガスCl
2(最初に形成される)は、上述の反応に対応する結果として生ずるHClOに、即座に変換する。ナトリウム陽イオン(Na
+)は、陽極液チャンバ312から膜344を通じて陰極液チャンバ314に渡ってもよい。陰極液チャンバ314内のガス透過性陰極322の親水側は、次の反応式に従って、水へ二酸素の還元に関与する。
O
2+2H
2O+4e
− → 4OH
−
電気化学反応は、水性のストリーム中ではなく、電極と電解溶液との間の界面で、またはその近くで生じる。生成物は、全て水溶性である。
この二重液体チャンバ装置において、ナトリウム陽イオンは、最小限の電気抵抗で、膜344を通って、陽極液チャンバ312から陰極液チャンバ314まで移り得る。陰極液チャンバ314において、ナトリウム陽イオンおよび水酸基は、このように、陰極液排出物を生ずるように水中に溶解したままである。
【0044】
図示されていないが、
図3に示されている単一チャンバ装置の概念と同様に描かれる、代替的な円筒形の一実施形態において、二重チャンバ型装置の陽極液チャンバは、完全に、または、実質的に膜で形成されている、
図3で説明されている壁132に対応する外壁を有してもよい。このような二重チャンバ型装置の円筒形構成において、ガス透過性陰極は、陰極液チャンバの外側の壁、またはその一部として機能してもよく、
図3に説明されている壁130と同様に対応する。
【0045】
図5に示されている本発明の実施形態において、陽極液チャンバ312および陰極液チャンバ314は、必要に応じて、制御されたpHで、陽極液および陰極液排出物を流出ストリームに進行させるように、それぞれ流出口328および356をさらに含む。pHの制御は、以下に詳述される弁348を利用して流出ストリームへ導入される、陰極液排出物の量を調節することによって達成されてもよい。pHは、pHを判定するためのpH感知装置またはpH計334によって測定されてもよく、一方で、弁348は、流出する陽極液排出物のpHを約4〜9の間に調節するために調整されてもよい。
【0046】
陰極液チャンバ314は、未反応水溶液、例えば、水および/または反応陰極液を含有してもよい。電解装置は、陰極液チャンバ314内に残っている反応陰極液排出物を放出するための流出口346をさらに含む。あらゆる反応陰極液排出物が、本質的に、アルカリ性であることが理解されるであろう。弁348は、流出口346を通って陰極液チャンバから流出する陰極液排出物の流れを調節し、その後、流出する陰極液は、陽極液排出物単独よりもpHが高い混合排出物を形成するように、流出する陽極液排出物と混合される。混合排出物は、pH感知装置またはpH計334によって測定されてもよい。pH制御器は、コンピュータ制御のサーボを含んでもよく、弁336を通過する流出する液体の流れを、約4〜9の間の所望のpH範囲になるように調節することを可能にする。実際には、流出ストリームに配置されるpH計334が、流出する排出物のpHを測定する。流出する排出物が過度に酸性である場合、陰極液も流すことができるようにし、それによって、アルカリ溶液を流出ストリームに導入するように、弁348が開かれてもよい。流出する溶液が約4〜9の所望のpH範囲に到達するまで、必要に応じて、放出される陽極液排出物と組み合わせる陰極液排出物の流れを調節するように、調整を繰り返し行ってもよい。
【0047】
さらに、pHは、陽極液または陽極液および陰極液の混合排出物を、陽極液チャンバ312内に再導入するために、再循環器338を通じて流入口318内へ戻すように再循環させることによって制御されてもよい。
図5に示されているように、再循環器338は、弁354を有し、これにより、陽極液排出物、または陽極液および陰極液の混合排出物のpHが9を上回る時には、陽極液、または陽極液および陰極液の混合排出物を、陽極液チャンバ312内へ戻すように再循環させることができ、または、流出する陽極液排出物、または陽極液および陰極液の混合排出物のpHが4を下回る時には、流れを陽極液チャンバ内へ戻すように再循環させてもよい。換言すれば、pHを制御するために、陰極液含有排出物または水溶液中のOH
−を、陽極液チャンバ内へ戻すように再循環させて、pHを(5まで、6まで、7まで、最高8まで)増加させる。代替的に、pHの制御は、pHを減少させるように、流出する陽極液排出物を陽極液チャンバ内の電解質内に戻すように再循環させることによって達成されてもよい。それによって、次亜ハロゲン酸溶液の最終生成物内での所望のpHの達成は、好ましくは4〜9の間、より好ましくは5〜8の間、より好ましくは5〜6の間の範囲になり得、HClOのpKaは、7.5である。pHをさらに制御するために、電解装置は、緩衝剤を、流入弁318を通じて、ハロゲン化物イオンを含有する水溶液の陽極液チャンバ内へ放出することができるようにしてもよい。また、上述の単一液体チャンバの設計と同様に、二重チャンバ型装置のpHの制御は、DC定電流電源によって印加される回路への電流を最適化することによって達成されてもよい。
【0048】
図5に示されている装置は、本発明のセルの外側からガス透過性陰極322に空気を提供するように、大気に開口しているが、代替的に、
図2および3に示されているものと同様に、ガス透過性陰極322に空気または酸素を送給するように、ガス区画を有することも可能となり得る。酸素源は、ガス透過性陰極322の疎水性表面に対して酸素を送り込むように、ポンプを含んでもよい。
【0049】
全ての実施形態において、耐久性および安定性の観点から、電解セル10、100、200、300は、好ましくは、ガラスライニング材料、炭素、または耐食性チタン、ステンレス鋼、またはPTFE樹脂で作製される。
【0050】
HClO溶液を産生するための本発明の方法の実施例を以下に記述するが、本発明は、それらに制限されるものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0051】
出願人の研究室において実験的に示されているように、本発明による
図1に示されるタイプの単一液体チャンバ型装置の1具体例は、必要に応じて、表1に示されているように、pH5.9〜7.8で、塩素濃度が80〜240ppmの範囲であるHClO溶液を産生する。電解合成反応器の動作は、二酸素の水への還元、およびHClOを発生させるようDSA陽極での塩化物イオンの酸化を誘導するように、GDE陰極(E-Tek, ELAT(登録商標), GDE LT250EW; 10cm×10cm)に接続される、DC定電流電源の使用に依存する。電源を接続して投入する前に、電解合成反応器は、重力送給容器からの緩衝または非緩衝いずれかのNaCl溶液で満たされ、流速は、手動弁によって2〜12ml/分に調整される。HClOの濃度、および排出物溶液のpHは、両者とも、流速、印加電流、および他の関連パラメータの関数として、継続的な動作中に種々の時間間隔で、従来の計器類および方法で測定される。
【0052】
【表1】
【0053】
この装置では、陽極液排出物を形成するように、単一液体チャンバ内で、水の存在下でハロゲン化物イオンを酸化させるステップを含む、次亜ハロゲン酸を発生させるための方法が達成される。陰極側では、水酸基を形成するために、水の存在下で酸素を還元するように、酸素は、ガス透過性陰極を通じて、ポンプを利用している場合は強制的にガス透過性陰極を通じて送給されている。この装置において、ガス透過性陰極は、単一液体チャンバ外壁の少なくとも一部を形成する。装置内に電解質回路を完成させて、次亜ハロゲン酸を産生するのに十分な量で、水酸基を混合する手順が達成される。pHは、pH計によって判定されてもよく、次亜ハロゲン酸は、電解装置から取り除かれてもよい。pHの制御は、DC定電流電源によって印加される時の回路への電流を調整することによって、またはハロゲン化物水溶液の送給流に緩衝剤を添加することによって達成してもよい。手の殺菌剤として使用するのに所望される範囲は、約4〜9の間のpHである。ガス透過性陰極に酸素を送給する手順は、ガス区画から酸素を送達するステップを含んでもよく、ガス透過性陰極から成る単一液体チャンバ外壁の一部は、ガス区画内に含まれる。代替的に、ガス透過性陰極に酸素を送給する手順は、ガス透過性陰極の外側の疎水部分を大気に露出させるステップを含んでもよい。
【0054】
水溶液中のHClO等のpH制御された次亜ハロゲン酸水溶液を発生させるための、2液体チャンバ型電解装置を利用する本発明の方法が達成される。この方法は、陽極側では、次亜ハロゲン酸を含有する陽極液排出物を形成するように、陽極液チャンバ内で、水の存在下でハロゲン化物イオンを酸化させるステップを含む。陰極側では、水酸基を含有する陰極液排出物を形成するために、水の存在下で酸素を還元するように、酸素がガス透過性陰極を通じて送給され、ガス透過性陰極は、陰極液チャンバの外壁の少なくとも一部を形成する。水酸基は、装置内に電解質回路を完成させて、次亜ハロゲン酸を産生するのに十分な量で混合される。この装置は、pHが約4〜9の間になるように、次亜ハロゲン酸のpHを制御することを可能にする。次亜ハロゲン酸のpH判定には、pH計の使用を含んでもよい。次亜ハロゲン酸は、電解装置から取り除かれてもよい。
【0055】
pHは、例えば、確実にpHが約4〜9の間になるように、次亜ハロゲン酸のpHを増加させるのに十分な量の、流出する陽極液および陰極液排出物を混合することによって、2液体チャンバ型電解装置内でさらに制御および調節されてもよい。本方法は、流出する陽極液および陰極液排出物を混合した後にpHを判定する手順をさらに含み、該手順は、pH計の使用を含む。この方法は、最終生成物として使用するために次亜ハロゲン酸を取り除く前に、確実にpHが約4〜9になるように、産生される次亜ハロゲン酸のpHが制御され得るという点で好都合である。
【0056】
2液体チャンバ型電解装置によって産生される次亜ハロゲン酸のpHの調整は、次亜ハロゲン酸のpHがpH9を上回った場合には、次亜ハロゲン酸の流れを陽極液チャンバ内へ戻すように再循環させることによってさらに達成され得、該方法は、次亜ハロゲン酸の流れを陽極液チャンバ内へ戻すように再循環させた後に、次亜ハロゲン酸のpHを判定する手順をさらに含み、該手順は、pH計の使用を含む。
【0057】
別の実施形態において、ユーザは、代替的に、pHが4を下回る場合、(1)次亜ハロゲン酸の流れを、陽極液チャンバへ戻すように再循環させ、送給流からの入力が変更され得る、または緩衝され得ることによって、または(2)pHがpH4を十分に上回るまで、
図5に示されている弁354を閉鎖することによって、電解装置の二重液体チャンバによって産生される次亜ハロゲン酸のpHを調節することもできることを理解されるであろう。
【0058】
ガス透過性陰極に酸素を送給する手順は、ガス区画から酸素を送達するステップを含んでもよく、ガス透過性陰極から成る陰極液チャンバ外壁の一部は、ガス区画内に含まれる。代替的に、ガス透過性陰極に酸素を送給する手順は、ガス透過性陰極の外側の疎水部分を大気に露出させるステップを含んでもよい。
【0059】
本発明の方法および装置は、塩素ガス等のガス種の貯蔵が不要であるという利点をさらに有する。また、源となる電解質は、経済的であり、かつ取り扱いの面で安全であり、一方で、最終生成物は、人間の皮膚に刺激または損傷を与えない手の殺菌剤としての使用に好適な、制御されたpHレベルでの殺菌目的に直接使用されてもよい。
【0060】
したがって、上述したことを考慮すれば、本発明は、制御されたpHによって、次亜ハロゲン酸を水溶液中で産生するための装置および方法を提供し、実質的に技術を向上させることは明白である。特許法に従って、本発明の好適な実施形態だけを上記に詳細に記述したが、本発明はそのことに、またはそれによって制限されるものではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある、全ての変形および変更を含むものとする。