(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764182
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】メタン発酵槽の撹拌装置からし渣を除去する方法、及び撹拌装置からし渣を除去することが容易なメタン発酵槽
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20150723BHJP
B01F 15/00 20060101ALI20150723BHJP
B01F 7/32 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
C02F11/04 AZAB
B01F15/00 D
B01F7/32 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-237017(P2013-237017)
(22)【出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2015-96250(P2015-96250A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2014年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳田 直子
(72)【発明者】
【氏名】榎本 周一
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 淳
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06126150(US,A)
【文献】
特開2011−125781(JP,A)
【文献】
特開2011−110481(JP,A)
【文献】
特開2009−072715(JP,A)
【文献】
特開2010−167329(JP,A)
【文献】
特開2000−070985(JP,A)
【文献】
米国特許第05458816(US,A)
【文献】
特開2002−045891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00
C02F 3/12−3/34
C02F 7/00
C02F 11/00−11/20
B01F 1/00−5/26
D06F 1/00−51/02
F04D 1/00−13/16
F04D 17/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
B63B 1/00−69/00
B63J 1/00−99/00
B63H 1/00−25/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌翼によって被処理液を撹拌する撹拌装置を備えるメタン発酵槽における、撹拌装置に絡まったし渣を除去する方法であって、
前記方法は、
前記撹拌装置の回転シャフトを中空とし、
前記回転シャフトには、前記撹拌翼との接続部分近傍に開口部を設けると共に、前記回転シャフトと前記撹拌翼との接続部分を覆うように、複数の開口部を有し、かつ、外表面が平坦な被覆部材を取り付け、
一定期間毎に、前記撹拌装置を通常運転時と逆回転させると共に、前記回転シャフトに除去用媒体を供給し、前記回転シャフトの開口部を経由して前記被覆部材の開口部から前記除去用媒体を放出させることにより、前記撹拌装置に絡まったし渣を除去することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記除去用媒体が水、被処理液、消化ガス、窒素又は二酸化炭素であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被覆部材の開口部から放出される前記除去用媒体の初速を50cm/秒以上100cm/秒以下とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記し渣が毛髪である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
撹拌翼によって被処理液を撹拌する撹拌装置を備えるメタン発酵槽であって、
前記撹拌装置の回転シャフトが中空であり、
前記回転シャフトには、前記撹拌翼との接続部分近傍に開口部が設けられており、
前記回転シャフトと前記撹拌翼との接続部分は、複数の開口部を有し、かつ、外表面が平坦な被覆部材で覆われており、
前記回転シャフトには、除去用媒体を供給する供給管が接続されており、
一定期間毎に、前記撹拌装置を通常運転時と逆回転させると共に、前記回転シャフトに前記除去用媒体を供給し、前記回転シャフトの開口部を経由して前記被覆部材の開口部から水又は消化ガスを放出させることにより、前記撹拌装置に絡まったし渣を除去することを特徴とする、メタン発酵槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水のような廃水又は下水汚泥を被処理水とするメタン発酵槽において、撹拌装置に絡まったし渣を除去する方法に関する。また、本発明は、そのようなし渣除去方法の実施に適したメタン発酵槽に関する。
【0002】
下水汚泥のような有機物を含有する廃水の処理方法には、汚泥の安定化及びメタンガスの回収を目的として、嫌気性消化法が一般的に用いられる。嫌気性消化法としては、有機物を含有する廃水をメタン発酵槽(消化槽)に投入し、嫌気性下でメタン菌により発酵処理することで、有機物をメタンガスに転換するメタン発酵法が汎用される。投入原料の性状及び運転条件によって、様々な処理方法及びメタン発酵槽が提案されている。
【0003】
嫌気性下でメタン菌により有機物が嫌気的に生分解されると、バイオガスと水とに分解される。このような嫌気性消化法は、廃水に含有されている有機物を大幅に減少することができると共に、副産物として生成するメタンガス(バイオガス)をエネルギーとして回収できる利点がある。
【0004】
廃水中には難分解性で比重の高い固形物又は発酵不適物(砂、毛髪、ビニール片等)も存在することから、メタン発酵槽内にこれらが徐々に堆積する。そのため、定期的にメタン発酵槽底面に堆積した堆積物を除去したり、堆積物の堆積を防止したりする必要がある。堆積物の堆積を防止するためには、メタン発酵槽へと供給される廃水から固形物又は発酵不適物を除去することが効果的である。
【0005】
下水中のし渣は、一般的には、下水流入口に設置したバースクリーン又はドラムスクリーンによって捕捉及び除去され、汚水と固形物を分離して後工程で個別的に処理される。スクリーンは、細目スクリーンでの目幅が数10mm〜100mm程度、微細目スクリーンにおいてもその目幅は数mm程度であり、微細目スクリーンの目幅より小さな毛髪のようなし渣は、スクリーンでの捕捉除去は困難あり、毛髪のようなし渣は、廃水と共にメタン発酵槽へ供給されやすい。
【0006】
特許文献1は、下水処理槽の水路内における、沈降しやすい毛髪等のし渣を浮上流出させるに必要な流速を有する位置に、昇降可能としたネットスクリーンを設置することを特徴とする下水処理槽におけるし渣除去装置を開示している。特許文献1の装置によれば、汚泥より比重が大きく沈降しやすい毛髪等もネットスクリーンにて収集捕捉でき、曝気機又は汚泥掻寄機のような水処理機械への巻き付きが未然に防止できるとされている。
【0007】
特許文献2は、最初沈殿池等の前処理設備を経由したあるいは直接流入する汚水を、流入スクリーンを通さず毛髪類を含んだまま反応槽に流入させ、反応槽で微生物担体を用いた生物処理を行い、生物処理された処理水はスクリーンに付着した毛髪類の通過補助手段を備えた担体分離スクリーンを通し、生物処理担体は分離するが毛髪類は分離することなく槽外へ流出させることを特徴とする毛髪類を含む下水の生物処理方法を開示している。特許文献2の方法によれば、設備コストを引き下げ、及びスクリーン清掃のメンテナンス作業の負担を軽減することができ、しかも従来と同様に微生物担体を用いた生物処理を行うことができるとされる。
【0008】
一方、下水処理以外の分野においても、撹拌装置に繊維等が絡まることを防止することが好ましい場合がある。特許文献3は、野菜の繊維等が絡みつかないように、処理槽壁面に取り付けられた軸受と、これに支持される撹拌軸との接合部分に、ボルトのような連結部分を覆うようにして、半円状かつ平滑な外周面を有する密封部材を設けた生ゴミ処理装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−24838号公報
【特許文献2】特開2008−229466号公報
【特許文献3】特開2002−1275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
メタン発酵槽は、低温発酵においては温度20℃付近で滞留時間30〜60日、中温発酵においては温度37℃付近で滞留時間20〜30日、高温発酵においては温度55℃付近で滞留時間7〜20日程度で運転される。また、メタン発酵槽には、被処理液を撹拌するための撹拌装置(例えば、インペラ、パドル又はスクリュー)が設けられることが一般的であり、被処理液の液温は、比較的均一に保たれている。
【0011】
このため、メタン発酵槽に供給される廃水中にし渣が混入した場合、砂のような固形物が混入した場合と異なり、堆積物量が増大することよりも、撹拌装置にし渣が絡みつき、撹拌装置の動力が増大したり、撹拌性能が低下したりすることが大きな問題となる。
【0012】
特許文献1に開示されるし渣除去装置は、流速が速く、乱流が発生する場所にネットスクリーンを設置することにより、底に沈んだ毛髪をも浮上させて捕集するが、大型のメタン発酵槽には適用できない。また、特許文献2に開示される生物処理方法は、微生物担体を用いた生物処理方法には有効だが、メタン発酵槽におけるし渣除去には適用できない。
【0013】
さらに、特許文献3に開示されているような生ゴミ処理装置と比較して、メタン発酵槽は大型であり、撹拌装置に絡まったし渣を除去することは容易ではない。そのため、メタン発酵槽の撹拌装置においては、し渣が絡みつかないような構造とすることはもちろん、絡みついてしまったし渣を除去し得る構造又は操作が求められる。
【0014】
本発明は、メタン発酵槽内の撹拌装置に絡まったし渣を有効に除去し得るし渣除去防止方法、及びそのようなし渣除去方法の実施に適したメタン発酵槽の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、撹拌装置の回転軸と撹拌翼との接続部分を、特許文献3に示されているような密封部材で覆うだけでは、撹拌装置へのし渣、特に毛髪又は獣毛(毛髪類)の絡みつきを完全には防止できないが、密封部材から水、被処理液又は消化ガスを放出させ、撹拌装置を通常運転時の回転方向と逆方向に回転させることにより、毛髪類を効率よく除去し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
具体的に、本発明は、
撹拌翼によって被処理液を撹拌する撹拌装置を備えるメタン発酵槽における、撹拌装置に絡まったし渣を除去する方法であって、
前記方法は、
前記撹拌装置の回転シャフトを中空とし、
前記回転シャフトには、前記撹拌翼との接続部分近傍に開口部を設けると共に、前記回転シャフトと前記撹拌翼との接続部分を覆うように、複数の開口部を有し、かつ、外表面が平坦な被覆部材を取り付け、
一定期間毎に、前記撹拌装置を通常運転時と逆回転させると共に、前記回転シャフトに除去用媒体を供給し、前記回転シャフトの開口部を経由して前記被覆部材の開口部から前記除去用媒体を放出させることにより、前記撹拌装置に絡まったし渣を除去することを特徴とする、方法に関する。
【0017】
また、本発明は、
撹拌翼によって被処理液を撹拌する撹拌装置を備えるメタン発酵槽であって、
前記撹拌装置の回転シャフトが中空であり、
前記回転シャフトには、前記撹拌翼との接続部分近傍に開口部が設けられており、
前記回転シャフトと前記撹拌翼との接続部分は、複数の開口部を有し、かつ、外表面が平坦な被覆部材で覆われており、
前記回転シャフトには、除去用媒体を供給する供給管が接続されており、
一定期間毎に、前記撹拌装置を通常運転時と逆回転させると共に、前記回転シャフトに前記除去用媒体を供給し、前記回転シャフトの開口部を経由して前記被覆部材の開口部から前記除去用媒体を放出させることにより、前記撹拌装置に絡まったし渣を除去することを特徴とする、メタン発酵槽に関する。
【0018】
メタン発酵槽内に被処理水と共に混入したし渣は、撹拌装置の回転シャフトと撹拌翼との接続部分に絡みつきやすい。回転シャフトと撹拌翼とは、ボルトのような連結部材によって固定されている場合が多く、このような連結部材が突起していれば、し渣がさらに撹拌装置に絡みつきやすくなる。
【0019】
連結部材の有無に拘わらず、接続部分を平滑な外周面を有する被覆部材で覆うことにより、撹拌装置へのし渣の絡みつきはある程度防止し得ると考えられる。しかし、そのような被覆部材を設けても、し渣の絡みつきを完全に防止することは不可能である。また、撹拌装置を通常運転時とは逆回転させることにより、絡まったし渣がある程度ほぐれることが予想されるが、毛髪類のようなし渣が絡みついている場合には、撹拌装置の逆回転だけによって、撹拌装置からし渣を除去することは困難である。
【0020】
ここで、撹拌装置の回転シャフトを中空として、除去用媒体(液体であってもよく、気体であっても良い)を回転シャフト内に供給する。撹拌翼との接続部分付近には開口部が設け、さらに複数の開口部を有する被覆部材で接続部分を覆えば、除去用媒体は、回転シャフトの開口部を経て被覆部材内へと供給され、さらに被覆部材の複数の開口部から外向きに放出される。本発明においては、被覆部材から外側に向けたこうした液体又は気体である除去用媒体の放出と、撹拌装置の逆回転との併用により、従来は困難であった撹拌装置に絡まった毛髪類のようなし渣の除去が達成し得る。
【0021】
前記除去用媒体は、水、被処理液、消化ガス、窒素又は二酸化炭素であることが好ましい。
【0024】
前記被覆部材の開口部から放出される前記除去用媒体の初速は、50cm/秒以上100cm/秒以下とすることが好ましい。
【0025】
前記し渣は、毛髪であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、撹拌装置に絡まった毛髪類のようなし渣を、効率よく除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明を実施するためのメタン発酵槽の一例を示す。
【
図5】本発明を実施するためのメタン発酵槽の別の一例を示す。
【
図6】本発明を実施するためのメタン発酵槽のさらに別の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の記載に限定されない。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本発明を実施するためのメタン発酵槽の一例を示す。本発明で使用されるメタン発酵槽1は、下水処理場で発生する初沈汚泥及び余剰汚泥を消化処理して消化ガスを取り出すように構成されている。このようなメタン発酵槽の缶体高さは、10m以上30m以下で、直径(水平方向の断面が多角形の場合は、内接円の直径は10m以上30m以下であることが一般的である。
【0030】
メタン発酵槽1内の被処理液(下水のような被処理水)3は、メタン発酵槽1の下部から配管5を通じてポンプ(図示せず)によって取り出され、加温装置6により、例えば、中温発酵に適した37℃〜40℃に加温される。加温された被処理液3は、配管7を経てメタン発酵槽1へと返送される。メタン発酵槽1には、中央部にモータMに接続された撹拌装置2が設けられている。
【0031】
撹拌装置2は、回転シャフト8、回転翼9a及び9bから構成されている。回転シャフト8は、メタン発酵槽1の上部に設けられたモータMによって回転するようになっている。回転翼9aと回転シャフト8との接続部分は、被覆部材13aで覆われている。回転翼9bと回転シャフト8との接続部分は、被覆部材13bで覆われている。撹拌装置2によって被処理液3が撹拌され、メタン発酵槽1内の被処理液3の温度が均一に保たれている。
【0032】
メタン発酵槽1の底面付近には、堆積物を抜き出すための引き抜き配管4が設けられており、ポンプPの動力によって堆積物をメタン発酵槽1から定期的に除去する。
【0033】
被処理液3の具体例は、下水処理場で発生する汚泥又は食品廃棄物、畜産由来の糞尿等のバイオマスを含む液であるが、有機物を含有し、メタン菌の発育に悪影響を与える物質を含有していない限り、被処理液3としてメタン発酵槽1へと供給してよい。なお、メタン発酵槽に供給される汚泥又は食品廃棄物は、事前に固形分濃度2〜10%に調整されることが好ましい。
【0034】
回転シャフト8は、中空構造であり、その上端は給水配管10を経て貯水槽11に接続されている。通常運転時には、貯水槽11内に貯水されている水は、給水配管10へは供給されない。ここでいう水は、水道水、工業用水又は河川水のように塩分を含有せず、有機物のメタン発酵に影響する成分を含有していなければ足りる。一定期間毎に、撹拌装置2に絡まったし渣を除去するために除去運転を行う際には、貯水槽11内に貯水されている水が、給水配管10に設けられたポンプPによって回転シャフト8へ供給される。回転シャフト8には、後述するように開口部12a〜12cが設けられており、給水配管10を経て回転シャフト8に供給された水は、開口部12a〜12cから放出される。回転シャフト8と、撹拌翼9a及び9bと接続部分には、被覆部材13a及び13bが取り付けられている。
【0035】
図2は、被覆部材13a付近の拡大図を示す。被覆部材13a及び13bは、構造及び機能が同じである。被覆部材13aは、平滑な外周面を有する部材であり、その上部と中央部と下部には、複数の開口部(14a〜14c)が円周方向に配置されている。
図2では、開口部14a〜14cは、スリット状であるが、円形であってもよい。また、被覆部材13の形状は、
図2に示される形態に限定されず、表面が平滑である限り、球状であってもよく、円柱状であってもよい。回転シャフト8の開口部12a〜12cから放出された水は、さらに被覆部材13aの複数の開口部14a〜14cから被処理液3中へと放出される。
【0036】
図3は、
図2に示される部分の透視図を示す。回転シャフト8には、開口部12a〜12cが設けられている。回転翼9aは、回転シャフト8の一部である翼取付部15aとボルト16aによって固定されている。同様に、回転翼9bは、回転シャフト8の一部である翼取付部15bとボルト16bによって固定されている。
図3に示されるように、回転シャフト8と撹拌翼9a,9bとの接続部分には、翼取付部15a,15b、ボルト16a,16bのような突起物が存在している。このため、通常運転を継続していると、
図3に示される回転シャフト8と撹拌翼9a,9bとの接続部分には、毛髪類のようなし渣が絡みついてしまう。
【0037】
被覆部材13aによって、翼取付部15a,15b、ボルト16a,16bを含め、し渣が絡みつきやすい回転シャフト8と撹拌翼9a,9bとの接続部分を覆うことによって、撹拌装置2を回転させてもし渣は絡みつきにくくはなる。しかし、メタン発酵槽1を連続して運転し、撹拌装置2の回転時間が長くなれば、徐々にし渣が被覆部材13a及び13b付近に絡みつく。撹拌装置2にし渣が大量に絡まった場合、撹拌抵抗が大きくなり、モータMの消費電力が増大する。また、撹拌装置2の撹拌効率も低下する。さらに、撹拌装置2をメタン発酵槽1から取り出してし渣を除去するためには、多大な労力を要する。
【0038】
そこで、本発明においては、一定期間毎にし渣の除去運転を行い、その際には撹拌装置2を通常運転時と逆方向に回転させる。これにより、絡まったし渣は、ある程度ほぐれることになる。モータMは、通常運転時の回転方向とは逆方向に回転させるが、逆回転の速度は、通常運転時の0.3倍〜0.7倍とすることが好ましく、0.4〜0.6倍とすることがより好ましい。
【0039】
さらに、本発明においては、回転シャフト8を経て被覆部材13aの開口部14a〜cから水を放出し、ほぐれたし渣を水流によって撹拌装置2から剥離させることが可能となる。開口部14a〜cから放出される水流は、初速50cm/秒以上100cm/秒以下に調整されることが好ましい。剥離されたし渣は、堆積物としてメタン発酵槽1の底面に堆積するが、上述したように、ポンプPの動力によって他の堆積物と共に、引き抜き配管4から定期的に除去される。
【0040】
図4は、
図2のA−A’断面図を示す。開口部14bの外側には、被覆部材13aの内側から外側へ向かって放出される水が、被覆部材13aの外周面となす角度が10°以上30°以下となるように、突起部17が形成されていることが好ましい。水を逆回転方向に向かって斜めに放出させることにより、し渣を撹拌装置2からより剥離させやすくなる。開口部14a及び14cについても同様である。開口部14a〜14cの断面寸法は、スリット状の場合には5mm×50mm程度、円形の場合には直径10mm程度とすることが実用的である。開口部14〜14cの相互の間隔は、10cm程度とすることが実用的である。なお、開口部14a〜14cからの水の放出時間は、5〜10分程度とすることが実用的である。一定時間経過後、通常運転に切り替える。
【0041】
(実施形態2)
図5は、本発明を実施するためのメタン発酵槽の別の一例を示す。
図5に示されるメタン発酵槽18は、撹拌装置2の上端が被処理液配管19に接続されている。本実施形態では、一定期間毎に、撹拌装置2に絡まったし渣を除去するために除去運転を行う際に、被処理液3が、被処理液配管19に設けられたポンプPによって回転シャフト8へ供給される。これ以外は、すべて実施形態1と同様である。本実施形態は、し渣の除去運転を長時間行っても、被処理液3の成分が変化しない。
【0042】
(実施形態3)
図6は、本発明を実施するためのメタン発酵槽のさらに別の一例を示す。
図6に示されるメタン発酵槽20は、撹拌装置2の上端が消化ガス配管21に接続されている。本実施形態では、一定期間毎に、撹拌装置2に絡まったし渣を除去するために除去運転を行う際に、メタン発酵槽20内の上部空間にある消化ガスが、消化ガス配管21に設けられたコンプレッサCによって回転シャフト8へ供給される。これ以外は、すべて実施形態1と同様である。本実施形態は、し渣の除去運転を長時間行っても、メタン発酵槽20内の消化ガスの成分が変化しない。
【0043】
被覆部材13a及び13bの開口部から、気体の除去用媒体(消化ガス、窒素又は二酸化炭素)を放出させることによっても、撹拌装置2からし渣を剥離させることが可能である。被覆部材13a及び13bの開口部から窒素又は二酸化炭素を放出させる場合には、撹拌装置2の上端を、窒素ガスボンベ又は炭酸ガスボンベのようなガス供給源に接続する。本実施形態は、被覆部材13a及び13bの開口部から、液体の除去用媒体を放出させる場合と比較して、し渣除去運転に要する消費電力が少なくて済む。
【産業上の利用可能性】
【0044】
1,18,20:メタン発酵槽
2:撹拌装置
3:被処理液
4:引き抜き配管
5,7:配管
6:加温装置
8:回転シャフト
9a,9b:撹拌翼
10:給水配管
11:貯水槽
12a,12b,12c:回転シャフトの開口部
13a,13b:被覆部材
14a,14b,14c:被覆部材の開口部
15a,15b:翼取付部
16a,16b:ボルト
17:開口部出口の突起部
19:被処理液配管
21:消化ガス配管
M:モータ
P:ポンプ
C:コンプレッサ