【実施例】
【0026】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0027】
本実施例の電着ドラムは、インナードラム1の外周面にチタン板2を張設したもので、電解槽中で回転させることで前記チタン板2の外周面に銅箔を電着生成させるものである。
【0028】
具体的には、前記チタン板2の外周面の幅方向両端部若しくは前記チタン板2の外周面にして銅箔が生成される有効領域の幅方向両端
部を起点とし、これら両端部から内方へ最少で2mm最大で5mmの位置を終点とする範囲には、夫々幅方向中央部に比し硬質な硬質部3が設けられ、この硬質部3の表面硬さはブリネル硬さで130HBW以上のものである。
【0029】
なお、ブリネル硬さとは、圧子(金属球)を所定の試験荷重で試料の表面に押し込み、表面に残ったくぼみの表面積を計測して算出する硬さ値である。その試験方法はJIS Z 2243や、ISO6506において定められており、試験荷重P(kgf)を算出した表面積S(mm
2)で割った値がブリネル硬さである。
【0030】
また、
図3に図示したように、インナードラム1の側面にはチタン側板4が設けられている。図中符号5は回転軸である。
【0031】
なお、本実施例は、銅箔をチタン板2の外周面に生成する例について説明しているが、例えば、ニッケル、鉄、銀等の他の金属箔を生成する構成としてもよい。
【0032】
本実施例の硬質部3の表面硬さはチタン板2の幅方向中央部(硬質部以外の部分)よりブリネル硬さで5〜40HBW硬くなるように設定している。また、チタン板2の幅方向中央部は、ブリネル硬さで90HBW以上、好ましくは110HBW以上に設定する。
【0033】
また、本実施例においてチタン板2としてはTP270材を採用している。なお、純チタン材に限らず、チタン合金材を採用しても良い。
【0034】
硬質部3は、本実施例においては、適宜な加工具6によりチタン板2の幅方向端面側から端部を冷間圧下して加工硬化させることで形成している(
図4(a)、(b)参照)。加工具6は自転させながら前記端面に沿って移動させ、一連の動作で全周を略一様に加工する。
【0035】
なお、本実施例においては、チタン板2をインナードラム1の外周面に張設してリング状とした状態で加工硬化処理を行っているが、チタン板2をインナードラム1の外周面に張設する前のシート状の段階で加工硬化処理を行っても良い。
【0036】
また、加工硬化処理を行った後、当該処理により生じた不要部分(凹凸等)を除去し切削等の平坦化(平滑化)処理を行う(
図4(c)参照)。従って、前記チタン板2の外周面は平滑面となり、前記硬質部3も銅箔が生成される有効領域となる。
【0037】
なお、加工硬化処理に限らず、前記チタン板2の幅方向両端部に該チタン板2より硬質な硬質部材7(例えば、TP340材)を溶接、溶射若しくはイオンプレーティングすることで硬質部3を形成しても良い。
【0038】
図5は溶接接合により硬質部を設ける例、
図6は肉盛溶接により硬質部を設ける例である。この場合も、
図5(a)及び
図6(a)に図示したような溶接及び溶射処理後に平坦化処理を行う(
図5(b)及び
図6(b)参照)。溶接によれば、チタン板2の両端部に硬質部材から成る硬質部3が設けられ、溶射及びイオンプレーティングによれば、チタン板2の両端部の表面に硬質部材から成る硬質皮膜が形成され硬質部3が設けられることになる。
【0039】
なお、上述した加工硬化処理と同様、溶接、溶射若しくはイオンプレーティングについても、インナードラム1の外周面に張設する前のシート状若しくは張設後のリング状のいずれの状態のチタン板2に対して行っても良い。シート状のチタン板2に対して溶接等を行う場合には同様にシート状の硬質部材7を用い、リング状のチタン板2に対して溶接等を行う場合には同様にリング状の硬質部材7を用いる。
【0040】
また、本実施例においては、硬質部3は、チタン板2の外周面の幅方向両端
を起点とし該両端から内方へ最少で2mm最大で5mmの位置を終点とする範囲に設ける。2mm未満では硬質部3による効果が不十分であり、また、5mmを越えると幅方向中央部と性質の異なる領域が広くなり過ぎるため、銅箔のトリムロスを考慮する必要が生じる。
【0041】
なお、チタン板2の外周面の幅方向両端の極僅かな範囲、具体的には1〜2mm程度の範囲に銅箔が生成されない無効領域を設ける場合には、外周面にして銅箔が生成される有効領域の幅方向両端から上記所定範囲に硬質部3を設ける。この場合も、無効領域は通常極僅かであることからチタン板2の外周面の幅方向両端から所定範囲に設ける場合と同様、上記数値範囲に設定する。また、無効領域も硬質部3としても良い。
【0042】
本実施例は上述のように構成したから、チタン板2を弾性砥石4により研磨する際、チタン板2の幅方向両端面に弾性砥石4が回り込んでもチタン板2の幅方向両端部が硬質であるためにエッジ部の磨耗が抑制され、よって、チタン板2の幅方向両端部のエッジ部が丸まり難くなり、
図1に図示したようなシールリング方式を用いて金属箔を生成するに際し、エッジ部とシールリングとの密着性を長期間にわたって維持することができ、長期間にわたって良好な金属箔の製造が可能となる。また、エッジ部が丸まり難いため、丸みが生じた際に行う切削頻度を減少させることができ、従って、それだけメンテナンスが容易であり、チタン板2の寿命も長期化できる。
【0043】
よって、本実施例は、弾性砥石による研磨の際のチタン板の幅方向両端部の磨耗を抑制することで、シールリングとの密着性を長期間維持することができ、長期間にわたって金属箔製造可能領域の減少を伴わず安定的に均一な平滑面を有する金属箔を生成可能な生産性に秀れる電着ドラムとなる。
【0044】
以下に、本実施例の効果を裏付ける実験例について説明する。
【0045】
次の1.〜7.の手順でサンプルを作製し、条件毎の研磨耐性を比較した。
図7,8に実験条件及び実験結果を示す。
【0046】
1.母材硬さがブリネル硬さで夫々108、110、120、135HBWであるチタ
ン熱延板(厚さ8mm×幅300mm×長さ300mm)を、各幅方向の端面を機械
加工により平坦に仕上げる。
【0047】
2.上記チタン熱延板の各幅方向の端面に該端面から5mm以上の範囲に及ぶように加
工硬化処理を施す。
【0048】
3.上記チタン熱延板の各表裏面(内外周面)、各幅方向の両端面を機械加工により平
坦に仕上げ、加工済みチタン熱延板(厚さ6mm×(幅300mm−α[mm])×
長さ300mm)を得る。なお、硬質部が両端面から夫々5mm以内の範囲に収まる
ようにする。また、−αとは機械加工により減ずる幅寸法である。
【0049】
4.各表面(外周面)と端面のエッジが立っていることを確認する。
【0050】
5.外径305mm×幅30mmのPVA研磨砥石とPVA油を用い、砥石回転速度1
500rpm、砥石押し付け力15N、長さ方向送り速度300mm/min、幅方
向送り速度15mm/min、エッジ部の砥石乗り越し量が15mm前後になるよう
に上記各加工済みチタン熱延板に、研磨砥石番手が♯180、♯320、♯600の
順に100パスずつPVA研磨を施す。
【0051】
6.PVA研磨終了後、幅方向両端部のエッジ部の状況と、表面段差の有無を評価する
。評価は熟練検査員が目視により行う。
【0052】
7.硬質部が端面から3、2、1mmの範囲に収まるように加工した加工済みチタン熱
延板についても同様の研磨及び評価を行う。
【0053】
この実験結果から、本発明で規定した硬質部を設ける位置及び範囲、硬質部のブリネル硬さ並びに硬質部と中央部とのブリネル硬さの差により、弾性砥石による研磨の際のチタン板の幅方向両端部の磨耗を良好に抑制できることが確認できる。