特許第5764199号(P5764199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764199
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】補聴器
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20150723BHJP
   H04R 25/02 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   H04R25/00 G
   H04R25/02 B
【請求項の数】21
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-504122(P2013-504122)
(86)(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公表番号】特表2013-524704(P2013-524704A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】DK2011000029
(87)【国際公開番号】WO2011127932
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2012年11月30日
(31)【優先権主張番号】13/084,506
(32)【優先日】2011年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10159929.8
(32)【優先日】2010年4月14日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ リザウンド エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN RESOUND A/S
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オブラードビッチ ゴッホ
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン ポール ロセンキルデ
【審査官】 松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−043700(JP,A)
【文献】 実公昭32−006940(JP,Y1)
【文献】 実開平01−015500(JP,U)
【文献】 米国特許第05068901(US,A)
【文献】 米国特許第05987146(US,A)
【文献】 特開平05−115092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00
H04R 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシーバハウジングの内部に配置されるレシーバを備える補聴器であって、
前記レシーバが、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されており、
前記補聴器が、前記レシーバの音響ポート開口部に音響的に接続されており、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有する音響管を備えており、
前記音響管が、18mmから40mm程度の全長を有しており、
前記音響管の前記全長が、前記音響管の共鳴周波数が前記レシーバの第1共鳴周波数から1kHz付近となるように構成されている、補聴器。
【請求項2】
前記音響管が、前記少なくとも2つの方向のうちの少なくとも1つに沿って、少なくとも部分的に前記レシーバハウジングに当接する、請求項1の補聴器。
【請求項3】
前記音響管の全長が、前記レシーバの長手方向の長さよりも大きい、請求項1または2の補聴器。
【請求項4】
前記レシーバハウジングが、使用時に、完全にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている、請求項1から3の何れか一項の補聴器。
【請求項5】
前記少なくとも2つの方向のうちの1つに沿った前記音響管の長手方向の長さが、前記レシーバの長手方向の長さよりも大きい、請求項1から4の何れか一項の補聴器。
【請求項6】
前記音響管が、少なくとも2つの異なる断面積を有する、請求項1から5の何れか一項の補聴器。
【請求項7】
前記音響管が、着脱式の電気ソケットシステムを有するイヤーピースと一体の部品として形成されている、請求項1から6の何れか一項の補聴器。
【請求項8】
前記音響管が、レシーバに搭載することが予め定められた部品として形成されている、請求項1から7の何れか一項の補聴器。
【請求項9】
前記音響管が、前記レシーバハウジングと一体の部品として形成されている、請求項1から6の何れか一項の補聴器。
【請求項10】
前記音響管が、必要とされる音響性能(例えば、周波数増幅面積、フィードバック抑制のためのダンピング特性)に依存して、個別にエンドユーザに関連付けられた形状、断面および長さを有するように形成されている、請求項1から9の何れか一項の補聴器。
【請求項11】
前記音響管が、ラピッドプロトタイピング技術(例えばSLS/SLA)によって製造されている、請求項1から10の何れか一項の補聴器。
【請求項12】
使用時に、ユーザの外耳道の内部からの音を拾うように構成されたマイクをさらに備える、請求項1から11の何れか一項の補聴器。
【請求項13】
前記音響管の断面積が、前記レシーバのポート開口部から、前記音響管の長手方向の伸長の少なくとも一部に沿って、徐々に、あるいは段階的に、あるいは部分的に徐々に、および/または部分的に段階的に、増加する、請求項1から12の何れか一項の補聴器。
【請求項14】
前記音響管が、18mmから26mm程度、例えば20mmから24mmの全長を有する、請求項1から13の何れか一項の補聴器。
【請求項15】
前記音響管が、21mmから31mm程度、例えば23mmから29mm程度の全長を有する、請求項1から13の何れか一項の補聴器。
【請求項16】
前記音響管が、30mmから40mm程度、例えば32mmから38mm程度の全長を有する、請求項1から13の何れか一項の補聴器。
【請求項17】
補聴器に用いられるレシーバであって、
前記レシーバは、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されており、
前記レシーバは、モータと、レシーバハウジングを備えており、
前記レシーバハウジングは、一体的に形成された音響管を有しており、
前記音響管は、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有しており、
前記音響管は18mmから40mm程度の全長を有しており、
前記音響管の前記全長が、前記音響管の共鳴周波数が前記レシーバの第1共鳴周波数から1kHz付近となるように構成されており、
前記レシーバは、前記レシーバのモータによって生成された音が、前記音響管を介して、前記レシーバの音響出力ポートを通して放射されるように構成されている、レシーバ。
【請求項18】
請求項17のレシーバを備える補聴器。
【請求項19】
音を電気信号に変換して処理するように構成された耳かけ型(BTE)ユニットと、
前記電気信号をイヤーピースに通信するように構成された信号線を備える補聴器であって、
前記イヤーピースが、前記電気信号を音信号に変換するように構成されたレシーバを備えており、
前記イヤーピースが、音響管を備えており、
前記音響管が、前記レシーバの音響ポート開口部に接続されており、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有しており、18mmから40mm程度の全長を有しており、
前記音響管の前記全長が、前記音響管の共鳴周波数が前記レシーバの第1共鳴周波数から1kHz付近となるように構成されている、補聴器。
【請求項20】
レシーバハウジングの内部に配置されたレシーバを有する補聴器を用いて、補聴器のユーザに音を提供する方法であって、
前記レシーバは、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されており、
前記補聴器は、音響管を備えており、
前記音響管は、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有しており、かつ18mmから40mm程度の全長を有しており、前記音響管の前記全長が、前記音響管の共鳴周波数が前記レシーバの第1共鳴周波数から1kHz付近となるように構成されており、
前記方法は、前記レシーバから前記ユーザに前記音響管を介して音を提供する工程を備えている、方法。
【請求項21】
前記補聴器が、請求項1から16および18または19の何れか一項の補聴器である、請求項20の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補聴器に関する。特に、本発明は、使用時にレシーバがユーザの耳の内部に配置されるタイプの補聴器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクからの音信号が、聴覚障害の補償済み信号に処理され、耳の後ろのハウジングに配置されたレシーバによって音響信号に変換され、音響管を介してイヤーピースに伝達される、従来の耳かけ型(BTE)の補聴器は、公知の耳あな型(ITE)の補聴器や、完全外耳道挿入型(CIC)の補聴器、あるいはレシーバ挿入型(RIE)の補聴器に比べて、より高い最大音圧レベル(SPL)を提供することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これは、中度から重度の聴覚損失を有する人々に対して問題を生じる。ITE、CICおよびRIEの補聴器は、従来のBTEの補聴器に比べて、より目立ちにくい。これは、ITEおよびCICの補聴器はBTEユニットを有しておらず、RIEの補聴器ではレシーバが使用時にユーザの耳の内部に配置されるように構成されたイヤーピース内に配置されているため、RIEの補聴器は従来のBTEの補聴器に比べてより小さなBTEユニットを有するからである。従って、CIC、ITEおよびRIEの補聴器はすべて、より目立たないという理由から、従来のBTEの補聴器に比べて、ユーザにとってより魅力的である。この事は、これらのより目立たないCIC、ITEおよびRIEの補聴器を入手した人物が、従来のBTEの補聴器と比較してこれらの補聴器のパフォーマンスに失望するおそれがある、というリスクを伴う。
【0004】
従って、本発明は、補聴器のユーザに対して、補聴器をより目立たなくするとともに、高い聴覚損失の補償性能を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記および他の目的は、本発明の第1の態様によって達成される。その第1の態様は、レシーバハウジング内に配置されたレシーバを備える補聴器に関する。前記レシーバは、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている。前記補聴器はさらに、前記レシーバまたは前記レシーバハウジングの音響ポートに音響的に接続された音響管を備えている。前記音響管は、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有している。前記音響管はさらに、少なくとも16mm、例えば18mmから40mm程度の全長を有している。
【0006】
それによって、従来のBTE型の補聴器よりも目立たない補聴器が実現される。なぜなら、前記レシーバは、比較的大きな補聴器の構成要素であるが、使用時に少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されているからである。さらに、使用時にユーザの外耳道に向けて発生する音を伝えるために、レシーバの出力ポートに音響管を接続することにより、音響管によって生成された音響共鳴効果は、補聴器の最大音響出力を増大させ、その結果、本発明に係る上述のような音響管構造を備える補聴器は、従来の設計に係る補聴器によって達成されるものに比べて、使用時にユーザの外耳道の内部でより高い音圧レベルを生成することができる。この向上された音声出力はまた、当該技術分野で知られている従来の補聴器に比べて、本発明に係る補聴器が増加されたダイナミックレンジを有するという、さらなる利点も有する。しかしながら、十分な共鳴効果を達成するためには、十分な長さの音響管が必要であり、シミュレーションと実測値はいずれも、少なくとも16mm、例えば18mmから40mm程度の音響管が必要となることを示している。音響管が少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるレシーバに接続されているので、必要とされる共鳴効果を生成するために十分な長さを有するまっすぐな音響管を使用することはできない。なぜなら、平均的な人間の外耳道はあまりに短すぎるからである。従って、少なくとも2つの異なる方向に長手方向の伸長を有する音響管を有することによって、ユーザの耳または外耳道の内部において利用可能な限られたスペースを使用しつつ、より長い音響管を使用することができ、さらに、より高い増幅を可能とし、あるいは本発明に係る補聴器がより高い出力音圧レベルを提供できるようにする、十分に高い共鳴効果を生成することができる。
【0007】
本出願においては、"少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有する"という表現は、"少なくとも2つの方向に複数の長手方向の伸長を有する"ことを意味することがある。すなわち、音響管は、音響管によって形成される経路の方向に沿った2以上の方向に伸びており、その経路は音をレシーバからユーザの鼓膜に向けて導くように構成されている。これは、本明細書の様々な実施形態、例えば図1図2図4図5図6図11図12図13図14図15において例示されている。このように、少なくとも2つの方向に伸びる音響管を有することによって、例えば外耳道および/または補聴器の第1ハウジングに起因して与えられた寸法上の制約に対して、少なくとも2つの方向に伸びていない音響管で可能となるものに比べて、音響管の長さを増加することができる。これは、音響管が少なくともユーザの外耳道の内部に配置されるように構成された第1ハウジングの内部に位置する場合に、特にそうであろう。
【0008】
音響管の全長とは、音響管の第1端部から音響管の第2端部まで音響管によって形成される経路の長さ、例えばその経路の中心の長さであってもよい。
【0009】
レシーバの音響ポート開口部とは、補聴器の使用時に補聴器のユーザによって聴き取られることを意図された、レシーバからの音を伝送するように構成された、レシーバの開口部であってもよい。
【0010】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、音響管は、少なくとも音響管の2つの方向のうちの1つに沿って、少なくとも部分的にレシーバハウジングに(すなわちハウジングの表面に)当接していてもよい。それによってよりコンパクトであり、従ってより小さなイヤーピースが実現される。また、ユーザの聴力損失を解消するために必要とされる増幅を実現するために、必要とされる音響管の長さと、利用可能なスペースのトレードオフを解決することができる。
【0011】
コンピュータシミュレーションでは、今日現在の補聴器のレシーバの長手方向の伸長よりも短い長手方向の伸長を有する音響管は十分に効果的でない、すなわち十分な増幅を提供するうえで共鳴効果が十分な大きさではないことが示されている。従って、音響管の長手方向の長さは、レシーバの長手方向の伸長よりも長くてもよく、その方が好ましい。
【0012】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、レシーバハウジングは、使用時に完全にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている。それによって、より目立たない補聴器が実現される。なぜなら、比較的大きなレシーバ構成要素が、使用時に完全に外耳道の内部に配置されるからである。
【0013】
しかしながら、別の実施形態では、レシーバハウジングは、少なくとも部分的に、ユーザの耳の三角窩の直下の、耳甲介または耳甲介舟の内部に配置されるように構成されていてもよい。
【0014】
別の実施形態によれば、少なくとも2つの方向のうちの1つに沿った音響管の長手方向の長さは、レシーバの長手方向の長さよりも大きくてもよい。
【0015】
通常、補聴器のレシーバは、レシーバの支持系の剛性と、膜の後方の空気の体積、およびレシーバの運動系とその前方にある空気の質量といった、レシーバの機械的特性によって決定される、3kHz付近の共鳴を生成する。音響管をレシーバのポート開口部に接続することによって、音響管の導波路効果がさらなる共鳴を作り出す。20mmから24mmの音響管の長さの範囲に対して、共鳴は3.5kHzから4.4kHzまでの付近で生じる。
【0016】
可能な限り簡素なシステム、すなわち、まっすぐな音響管の一方の端部が剛なピストンに接続され、他方の端部が開口しているシステムは、正確に以下の共鳴を示す。
【0017】
【数1】
【0018】
ここで、cは音速であり、通常は343m/s(20℃の乾燥空気についての値)に設定できる。Lは音響管の長さである。
【0019】
実際の補聴器においては、システムは上述のものに比べて、はるかに複雑である。例えば、ピストンはレシーバの内部の膜であり、レシーバハウジング、音響ポートおよび音響管の内部の、前方の空気の体積を駆動する。最終的に、その終わりは音響管の開放端によってのみ定義されるのではなく、外耳道および鼓膜によって定義される。しかしながら、コンピュータシミュレーションと実測値(例えば、図9図10および関連する記載を参照のこと)は、共鳴周波数を計算するための上記の数式が、実際のシステムに対する良い近似であることを示している。従って、実際のシステムについての共鳴周波数は、上記の数式に従って計算されるものの付近にあることが期待できる。それゆえ、本発明に係る補聴器が18mmから26mmまでの長さを有する音響管を備える場合には、第2の共鳴ピークの位置およびサイズの両方に関して、最適な共鳴特性が実現されることを、上記の式から推定することができる。本発明のさらに好ましい実施形態では、音響管は20mmから24mmの長さを有しており、さらにより好ましい実施形態では、音響管は18mmから24の長さを有している。
【0020】
(実施形態について)
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、音響管は少なくとも2つの異なる断面積を有していてもよい。それによって、音響管の共鳴特性に影響を及ぼすことができる。例えば、音響管の長さに沿って、断面積がより小さな領域に前後を挟まれた、断面積が増加した領域を有することによって、共鳴室を形成することができる。共鳴室は、音響管によって導かれる音に対するフィルタとして機能することができる。従って、共鳴室は音響管の周波数応答に対して、所望の周波数でのピークを追加することができる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、2つの異なる断面積は何れも、レシーバのポート開口部の面積よりも大きいことが実用的であることが見出されている。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、補聴器は実質的に矩形断面の音響管を含んでもよい。それによって、よりコンパクトなイヤーピースを製造することができる。
【0023】
本発明に係る補聴器の特に有利な実施態様では、音響管は着脱式の電気ソケットシステムを有するイヤーピースの一部として形成することができる。それによって、内部にレシーバを配置することができる内蔵型のユニットが実現される。この内蔵型のユニットは、今日のRIE型の補聴器において使用されている、特定の標準的なレシーバにフィットするように、配置し、および/または形成することができる。
【0024】
本発明に係る1またはそれ以上の実施形態では、音響管をレシーバに搭載されるように予め定められた部品として形成することができる。それによって、レシーバと組み合わせて使用することが容易な音響管を得ることができる。好ましくは、または必要に応じて、音響管をイヤーピースの一部として形成することができる。それによって、音響管に対する機械的な支持を提供することができる。
【0025】
あるいは、音響管は少なくとも部分的にレシーバハウジングの一部として形成することができる。それによって、よりコンパクトで省スペースなユニットが実現される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、音響管は、ラピッドプロトタイピング技術、例えば選択的レーザー焼結(SLS)技術や光造形(SLA)技術によって製造される。好ましくは、または必要に応じて、音響管は、SLAまたはSLS技術を使用して、RIE型の補聴器のためのイヤーピースの一部として形成される。あるいは、音響管は、ITE型またはCIC型の補聴器のシェル構造(例えばチップ部分)の一部として形成することができる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、補聴器は、必要な音響性能に応じて、エンドユーザに関連付けられた形状、断面積および長さを有するように、個別に形成される音響管を含んでもよい。この必要な音響性能は、1またはそれ以上の実施形態では、例えば特定の所望の周波数および/または特定の増幅、および/またはフィードバックを抑制するためのダンピング特性であってもよい。従って、特定のレシーバまたはレシーバのタイプと組み合わされた音響管を設計することが可能となり、ユーザに固有の要望、例えば聴力損失を考慮することが可能となる。これは、例えばコンピュータ、例えば標準的なパーソナルコンピュータ上で実行可能な専用のソフトウェアプログラムの助けを借りて行うことができる。ソフトウェアプログラムは、補聴器ディスペンサーに提供される通常のソフトウェアプログラムの拡張とすることができる。ソフトウェアプログラムを動作させる場合、ディスペンサーは、プログラムへの入力として、潜在的な補聴器ユーザのオージオグラムと耳および/または外耳道の3次元スキャンを提供することができる。そして、ソフトウェアプログラムは、この入力に基づいて、使用すべきレシーバを提案する。この提案は、3次元スキャンから推定される利用可能なスペースに基づいて、および/または、取得されたまたは測定されたオージオグラムに基づいて、行うことができる。そして、プログラムは、音響管の長さ、形状および形態を計算する。これに加えて、イヤーピースの内部の想定されるベントの影響を考慮することができる。最後に、音響管(そしておそらくはベント)と、提案されたレシーバのための空間を備えるイヤーピースが、ソフトウェアプログラムによって3次元モデルとして設計される。そして、SLS(選択的レーザー焼結)やSLA(光造形)などのラピッドプロトタイピング技術によって印刷することができる。ソフトウェアプログラムによってレシーバを提案する代わりに、利用可能なレシーバのタイプをソフトウェアプログラムの入力として提供することもできる。
【0028】
本発明に係る他の1つの実施形態では、補聴器は、使用時に、ユーザの外耳道の内部から音を拾うように構成されたマイクを備えていてもよい。好ましくは、または必要に応じて、マイクは、使用時にユーザの耳の内部に配置されるように構成されたイヤーピースの内部に配置され、例えば、それは、レシーバに隣接して配置されてもよいし、レシーバと同じハウジング構造に組み込まれても良い。1またはそれ以上の実施形態において、使用時に、実質的にユーザの鼓膜に対向する解放端と、マイクに接続された他方の端部を有する第2音響管を介して、外耳道の内部からマイクに音が伝達される。それによって、いわゆる閉塞効果を測定し、考慮に入れることが可能な補聴器が実現される。
【0029】
マイクは、外耳道の外から音を拾うように構成することもできる。あるいは、その代わりに、イヤーピースが、ユーザの周囲の音を拾うように構成された第2のマイクをさらに備えていてもよい。それによって、外耳や耳介によって行われている、周囲の音響場についての自然な周波数の形成を直接的に利用することができる。さらに、BTEユニットを備えるこれらの実施形態では、これによってより小さなBTEユニットを製造することが可能となる。なぜなら、2つの比較的大きな構成要素である、レシーバとマイクが、全てイヤーピースの内部に配置されるからである。
【0030】
耳垢による音響管の詰まりを防ぐために、音響管またはイヤーピースが耳垢フィルタを備えていてもよい。
【0031】
代替実施形態によれば、補聴器は、レシーバのポート開口部からの音響管の長手方向の伸長の少なくとも一部に沿って、徐々に、あるいは段階的に、あるいは部分的に徐々に、あるいは部分的に段階的に、増加する断面積を有する音響管を備えていてもよい。
【0032】
本発明の第2の態様は、補聴器のレシーバまたはレシーバを備える補聴器に関する。そのレシーバは、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている。そのレシーバは、モータとレシーバハウジングを備えている。そのレシーバハウジングは、一体的に形成された音響管を有している。その音響管は、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有している。その音響管は、少なくとも16mm、例えば18mmから40mm程度の全長を有している。そのレシーバは、レシーバのモータによって生成された音が、音響管を介して、レシーバの音響出力ポートを通して放射されるように構成することができる。
【0033】
本発明の第3の態様は、音を電気信号に変換して処理するように構成された耳かけ型(BTE)ユニットと、その電気信号をイヤーピースに通信するように構成された信号線を備える補聴器に関する。そのイヤーピースは、前記電気信号を音信号に変換するように構成されたレシーバを備える。そのイヤーピースは、レシーバの音響ポート開口部に接続されており、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有する音響管を備える。その音響管は、18mmから40mm程度の全長を有していてもよい。
【0034】
本発明の第4の態様は、レシーバハウジングの内部に配置されたレシーバを備える補聴器に関する。そのレシーバは、第1の共鳴周波数を有している。そのレシーバは、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている。その補聴器はさらに、レシーバの音響ポート開口部に音響的に接続可能な音響管を備える。音響管は、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有していてもよい。補聴器は、音響管の共鳴周波数がレシーバの第1の共鳴周波数から1kHz付近となるように構成されていてもよい。その代わりに、あるいは必要に応じて、共鳴周波数の相違は0.5kHzから1.5kHz程度であり、および/または、1.5kHz程度より小さく、例えば1kHz程度より小さい。
【0035】
本発明の第5の態様は、補聴器のユーザに音を提供する方法に関する。その補聴器は、レシーバハウジングの内部に配置されたレシーバを有する。そのレシーバは、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている。その補聴器はさらに音響管を備えている。その音響管は、少なくとも2つの方向の長手方向の伸長を有しており、18mmから40mm程度の全長を有する。その方法は、レシーバからの音を音響管を介してユーザに提供する工程を備えている。
【0036】
本発明の任意の態様に係る音響管の全長は、18mmから26mm程度の範囲、例えば20mmから24mmの範囲を備えていてもよい。
【0037】
本発明の任意の態様に係る音響管の全長は、21mmから31mm程度の範囲、例えば23mmから29mm程度の範囲を備えていてもよい。
【0038】
本発明の任意の態様に係る音響管の全長は、30mmから40mm程度の範囲、例えば32mmから38mm程度の範囲を備えていてもよい。
【0039】
本発明の任意の態様に係る音響管の全長は、20mmから38mm程度の範囲、例えば25mmから33mm程度の範囲を備えていてもよい。
【0040】
本発明の5つの態様についての幾つかの実施形態について説明したが、それらの態様の1つの任意の実施形態からの任意の特徴が、他の態様の実施形態に含まれてもよいことが理解されるべきである。本明細書において”実施形態”または”1つの実施形態”という場合、本発明の3つの態様の何れかに係る実施形態をさしていることが理解される。
【0041】
以下では、本発明の好ましい実施形態が、図面を参照しながら、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一態様に係る補聴器の実施形態の一部を示す。
図2】本発明の一態様に係る補聴器の代替実施形態を示す。
図3】着脱可能な電気ソケットシステムを備える補聴器の実施形態の一部を示す。
図4】音響管が取り付けられたハウジングを備えるレシーバの断面図を示す。
図5】音響管とレシーバの省スペースな代替構成の断面図を示す。
図6】本発明の第2の態様に係る補聴器の一部を示す。
図7】本発明の第3の態様に係る補聴器を示す。
図8】3つのイヤーピースとレシーバを示す。
図9】1つの例示的な音響管の構造を用いた周波数応答のシミュレーションと実測値の比較を示す。出力の増強という音響管の利点と、シミュレーションの予測可能性が示されている。
図10】別の例示的な音響管の構造を用いた周波数応答のシミュレーションと実測値の比較を示す。より良好な補聴器挿入損失補償の利点が示されている。
図11】イヤーピースの内部のマイクを備える補聴器の実施形態の一部を示す。
図12】増加する断面積を有する音響管を備える補聴器の実施形態の一部を示す。
図13】増加および減少する断面積を有する音響管を備える補聴器の実施形態の一部を示す。
図14】増加する断面積を有する音響管を備える補聴器の代替実施形態の一部を示す。
図15】増加および減少する断面積を有する音響管を備える補聴器の代替実施形態の一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(好ましい実施形態の説明)
本発明について、本発明の例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、以下でより十分に説明する。しかしながら、本発明は、異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるように提供されている。同様の参照符号は、全体を通して同様の構成要素を参照する。それゆえ、同様の構成要素については、各図の説明において詳細には説明されない。参照符号6は、図9および図10の説明に関する場合を除いて、全体を通して音響管を参照するために使用される。図9および図10の説明では、実験およびシミュレーションで使用される試験用の管を、それぞれ「音響管1」、「音響管2」と表記する。本明細書の他の部分では、参照符号2は、全体を通してレシーバを参照するために使用される。
【0044】
図1は、レシーバハウジング4内に配置されたレシーバ2を備える補聴器の実施形態の一部を示している。レシーバ2は、使用時に、ユーザの耳の内部に配置されるように構成されている。補聴器は、さらにレシーバ2の音響ポート開口部8に音響的に接続された音響管6を備えている。図示された実施形態では、音響管6は、その長手方向の伸長に沿った螺旋形状を有しており、従って無数の方向における長手方向の伸長を示している。図示された実施形態では、音響管6は、好ましくは、イヤーチップ10と一体の部品として形成されていてもよく、好ましくは、少なくとも16mm、例えば18mmから40mm程度の長手方向の長さを有していてもよい。音響管6を備えるイヤーチップ10は、SLA/SLS技術を用いて、単一のピースに製造することができる。この場合、音響管6は、イヤーチップ10の内部のチャネルとして、一体的に形成される。
【0045】
1またはそれ以上の実施形態において、イヤーチップ10は、標準的なサイズで製造することができる。しかしながら、好ましい実施形態によれば、図示されたイヤーチップ10は、個別に特定のユーザの耳の内部にフィットする形状にされたカスタムバージョンで提供され、必要とされる音響性能に応じた、かつユーザの耳および/または外耳道の内部の物理的な制約の範囲内の、事前に設定された長さの音響管6を有する。音響管6の正確な形状は、必ずしも図1に示すような螺旋形状でなくてもよく、レシーバの出力ポート8と、イヤーチップ10の前方にある反対側の端部12をつなぐように、ソフトウェアプログラムによって設定されてもよい。図示された実施形態では、イヤーチップ10はイヤーピース11と一体の部品として形成される。
【0046】
図2は、レシーバハウジング4内に配置されたレシーバ2を備える補聴器の代替実施形態の一部の断面を示している。レシーバ2は、使用時に、ユーザの耳の内部に配置されるように構成される。補聴器は、さらにレシーバ2の音響ポート開口部(図示せず)に音響的に接続された音響管6を備える。図示された実施形態では、音響管6は、その長手方向の伸長に沿って区分的な直線形状を有しており、従って8つの直線状の部分に含まれている3つの異なる方向における長手方向の伸長を示している。図示された実施形態では、音響管6は、好ましくは、イヤーチップ10(本明細書を通して、イヤーチップおよびイヤーピースという言葉はほとんど同じ意味で使われているため、イヤーピースといってもよい)と一体の部品として形成されていてもよい。音響管6を備えるイヤーチップ10は、SLA/SLS技術を用いて、単一のピースに製造することができる。この場合、音響管6は、イヤーチップ10の内部のチャネルとして、一体的に形成される。
【0047】
図示された音響管6は、音響管6の直線状の部分14に沿って、レシーバハウジング4に当接する。これによって、より小さく、よりコンパクトなイヤーピース11が実現される。
【0048】
また、図2は、レシーバ2の電気端子(図示せず)と、補聴器のオーディオ信号処理ユニット(図示せず)を収容する部分との間で、電気配線38を介した電気的な接続を提供するように構成された、電気ソケットシステム16も示している。好ましい実施形態では、電気ソケットシステム16は、着脱可能であってもよい。
【0049】
図3は、着脱可能な電気ソケットシステム16を備える本発明に係る補聴器の一部の実施形態を示す。電気ソケットシステム16は、レシーバ2の電気端子18と電気ソケットシステム16の対応する電気端子19の間で電気的な接続を提供する。それによって、レシーバは補聴器のオーディオ信号処理ユニット(図示せず)を収容する部分に、電気配線38を介して、動作可能に接続することができる。
【0050】
図4は、ハウジング4を備えるレシーバ2の断面の斜視図を示している。そのハウジング4に、音響管6が取り付けられている。図示された音響管6は、矩形断面を有する。従って、音響管6は、レシーバ2のハウジング4に当接する、大きな接触面20を有している。このことは、円形断面を有する音響管6を使用する場合と比較して、レシーバ2と音響管6の組み合わせの、方向22に沿った空間的な広がりが、最小化されるという効果を有する。
【0051】
図5は、音響管6とレシーバ2の省スペースな代替実施形態の断面の斜視図を示している。
【0052】
図1から図5の何れかに示されたような音響管6を備えるイヤーチップ10とレシーバ2は、1またはそれ以上の実施形態において、いわゆるITE型の補聴器の一部を構成することができる。代替的な実施形態では、上述した音響管6を備えるイヤーチップ10とレシーバ2は、CIC型の補聴器の一部を構成することができ、さらに別の代替的な実施形態では、上述した音響管6を備えるイヤーチップ10とレシーバ2は、RIE型の補聴器のイヤーピースを構成することができる。
【0053】
図1図5の1つに示す音響管6は、レシーバ2の長手方向の伸長よりも長い、長手方向の長さを有していてもよい。図2図5の1つに示す音響管6の代替実施形態においては、レシーバ2の長手方向の長さよりも長い、少なくとも2つの方向のうちの1つに沿った長手方向の長さを有していてもよい。好ましくは、または必要に応じて、図1図5の何れかに示す音響管6の全体的な長手方向の長さは、18mmから26mmの間であってもよく、より好ましくは20mmから24mmの間であってもよい。
【0054】
図6は、本発明の第2の態様に係る補聴器の一部を示している。図6は、少なくとも部分的にユーザの耳または外耳道の内部に配置されるように構成された、レシーバ2の分解図を示す。レシーバ2は、モータ24と、2つのピース26、28からなるレシーバハウジングを備えている。レシーバハウジングは、少なくとも16mm、例えば18mmから40mm程度の全体の長さと、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有する、一体的に形成された音響管6を有する。1またはそれ以上の実施形態において、音響管6は、ピース26、28の一方と一体的に形成されていてもよい。あるいは、図に示すように、ハウジングピース26,28の両方の合わせ溝として、ピース26,28の両方と一体的に形成されていてもよい。この場合、レシーバモータ24によって生成された音は、レシーバ2の音響出力ポート30を通して放出されるまでに、音響管6からの影響を受けて、音響管6の共鳴特性によって強められるであろう。レシーバ2は、補聴器の信号処理ユニットを収容する別の部分に、ケーブル接続(図示せず)を介して、動作可能に接続することができる。
【0055】
図7は、本発明の第3の態様に係る補聴器34を示す。図示された補聴器34は、音を変換および処理して電気信号にするように構成された耳かけ型(BTE)ユニット36と、前記電気信号をイヤーピース(図示せず)に通信するように構成された信号線38(例えば配線)を備えている。前記イヤーピース(図示せず)は、前記電気信号を音信号に変換するように構成されたレシーバ2を備えている。前記イヤーピース(図示せず)は、さらに前記レシーバ2の音響ポート開口部(図示せず)に接続された音響管(図示せず)を備えている。前記音響管(図示せず)はさらに、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有している。
【0056】
代替実施形態において、前記イヤーピース(図示せず)は、図1図5の何れかに示された実施形態の何れかで説明されたようなレシーバ2および音響管6を備えていてもよい。図7に図示された補聴器34のさらに別の代替実施形態において、前記イヤーピース(図示せず)は、図6に関連して図示および説明がされたレシーバ2を備えていてもよい。この場合、音響管6は、2つのピース26,28からなるレシーバハウジングと一体的に形成される。
【0057】
図8は、3つのイヤーピース40,41,42と、レシーバ2を示している。イヤーピース40,41、42は、図1および図2の何れかに示されているように、それぞれ前記イヤーピース40,41,42のチップ部分10と一体的に形成されていてもよい音響管(図示せず)を備えていてもよい。イヤーピースはそれぞれキャビティ44を有している。キャビティ44は、レシーバ2を受け入れるように構成されており、好ましくはレシーバハウジング4の外側の輪郭の少なくとも一部がぴったりフィットするように構成されている。あるいは、音響管(図示せず)は、例えば図6に示すように、レシーバハウジング4と一体的に形成されていてもよい。この場合、イヤーピース40,41,42は、その内部に一体化された音響管を有する必要はない。しかしながら、さらに別の代替実施形態では、音響管(図示せず)は、部分的にイヤーピース40,41,42の何れかの内部に形成することができ、部分的にレシーバ2のハウジング4の内部に形成することができる。レシーバ2は、配線38を介してBTEユニット(図示せず)と接続される。配線38は、電気ソケット16を介してレシーバ2に接続される。
【0058】
図9は、駆動電圧を一定とし、1つの例示的な音響管(音響管1と称する)を用いた場合と、音響管を取り付けない場合とを比べた、周波数応答のシミュレーションと実測値の比較を示している。音響管は、異なる長さと断面積を有する2つの取り付け管から構成される。その寸法は、12mmの長さと3mmの直径のものと、10mmの長さと2.5mmの直径のものである。そして、RIE/ITEアプリケーションに適合しているレシーバが、実際の測定に使用されている。この例では、KnowlesのタイプEDレシーバが使用された。
【0059】
レシーバは、標準的なRIEの条件、すなわちレシーバとカプラ(あるいはユーザの外耳道)の間に音響管が無い条件のもとで、測定およびシミュレーションが行われた。測定では、IEC711イヤーシミュレータが、測定カプラとして使用された。これは、当該技術分野で知られている標準的なRIE型の補聴器についての条件に対応している。この測定の結果は、太い実線(ED、音響管なし、実測値と記載されている)によって図示されており、3kHz付近に共鳴ピークが現れている。同じ条件でのコンピュータシミュレーションは、細い実線(ED、音響管なし、シミュレーションと記載されている)によって与えられている。実測値の応答とシミュレーションの応答の間の相違は、音響管の効果を予測する上で、重要な影響を有していない。
【0060】
そして、コンピュータシミュレーションによって、RIE型の補聴器の周波数応答を変化させた。シミュレーションと同様に、上記のような音響管1が、物理的に構築されて、測定が行われた。そして、両者の間で良好な一致が得られた。図9において、前者は太い破線(ED、音響管1、実測値と記載されている)によって表わされ、後者は細い破線(ED、音響管1、シミュレーションと記載されている)によって表わされている。
【0061】
音響管をレシーバの前方に配置すると、音響経路は2つの観点から変化する。第一には、いわゆる音響質量(これは、音響管のL/Sに比例する。ここで、Lは長さであり、Sは断面積である)が、レシーバ膜の前方に追加されることである。第二には、一方の端部がレシーバに結合され、他方の端部が外耳道(または測定カプラ)に結合された、導波路が作成されることである。
【0062】
音響質量が追加されることによって、元々のレシーバの2つの共鳴に影響を及ぼすであろう。第1の共鳴ピークは3kHz付近であり(実線参照)、それはレシーバの機械的な共鳴であり、それは支持系の剛性と運動系の質量によって決定される。音響管に追加される音響質量は、機械的な共鳴に影響を及ぼすのに十分な大きさであり、それは周波数をやや下方にシフトさせる(実線における第1の共鳴ピークと比較した、破線における第1の共鳴ピークを参照のこと)。追加される音響質量は、7kHz−8kHz付近の共鳴ピークにも影響を与え、ここでの微調整はシステムの帯域幅の調整において有益であろう。
【0063】
機械的な共鳴の影響はレシーバのタイプに依存しており、大きなレシーバに比べて、小さなレシーバについて、より顕著な影響を有する。
【0064】
さらに重要なこととして、導波路には、3.8kHz付近に、追加の共鳴ピーク(破線における第2の共鳴ピーク参照)を作り出す効果がある。この共鳴ピークの周波数は、音響管の4分の1波長の共鳴にほぼ相当している。
【0065】
可能な限り最も簡潔なシステム、すなわち、まっすぐな音響管が、一方の端部において剛なピストンに接続されており、他方の端部が開口しているシステムでは、正確に以下のような共鳴を示す。
【0066】
【数2】
【0067】
ここで、cは音速であり、通常は343m/s(20℃の乾燥空気に対する値)に設定される。Lは音響管の長さである。
【0068】
図9の太い破線からも分かるように、c/(4*L)の近似は実際のシステムにも適用されるが、正確な数値を期待することはできない。しかしながら、(破線の)2つの共鳴ピークを遠く離して配置しないように(なぜなら、それらの間に大きな谷をもたらしてしまうからである)、音響管の長さの範囲(18mm〜26mm程度、好ましくは20mm〜24mm、さらに好ましくは18mm〜24mm程度)についての推定値を提供するには十分である。
【0069】
従って、本発明に係る補聴器は、既存の電気補聴器のハードウェア、すなわち既存の信号処理装置と、レシーバを使用して、当該技術分野で知られている標準的なRIE型の補聴器に比べて、より高い出力音圧レベル(図9の実線と破線を比較することによって容易に見て取ることができる)と3kHz付近のより幅広いピーク(これも、図9の実線と破線を比較することに見て取ることができる)を提供することができることが分かる。改善された出力の利点は、補聴器のより良好なダイナミックレンジと、そして、安定性が許す場合には、より高い最大ゲインである。
【0070】
図10は、基本的に音響管1と同じ内部寸法を有する別の音響管構造(音響管2という)を示す。しかしながら、音響管2は、図2に示す音響管6の形状と似た形状を有するものである。ここでは、ターゲットとする補聴器挿入損失曲線(BTE CORFIG、典型形状と記載されている)に対するより良好な一致という利点が示されている。ここでも、KnowlesのEDタイプのレシーバが、試験とシミュレーションのために選ばれている。図9に示すEDとの違いは、音響ポートが無いことである。レシーバの応答は、1kHzに正規化されている。ここでも、IEC711イヤーシミュレータが測定カプラとして使用されている。
【0071】
点線は、BTE装置についての補聴器挿入損失補償曲線の典型的な形状(RIE装置にも適用可能である)であり、BTE CORFIG、典型形状と記載されている。図10に示す形状は、IEC711イヤーシミュレータに対して有効である。
【0072】
出力の増加とは別に、破線(音響管2を備えるレシーバ)の何れもが、実線(音響管のないレシーバ)よりも、CORFIGに良く一致することが、音響管の利点として明確に見て取ることができる。ここで、CORFIGは、フラット挿入利得に対するカプラレスポンス(Coupler Response for Flat Insertion gain)の頭文字をとったものである。ユーザの外耳道の内部にイヤーモールド(例えばカスタムメードのITE型またはCIC型の補聴器や、BTE型の補聴器のイヤーピース)を挿入することによって、鼓膜への自然な音の伝わりが乱される。これは、一般的に、いわゆる挿入損失と呼ばれている。補聴器は、例えば、任意の聴覚障害補正ゲインが適用される前に、その補聴器における適切な挿入利得を設定することにより、この挿入損失を補償することができなければならない。この目的を達成するために、応答のターゲットが測定され、定義される。例えば、CORFIGと呼ばれる、補償応答(またはゲイン)曲線が補聴器のそれぞれのタイプに対して定義されており、補聴器は、挿入損失を適切に補償することができるように、与えられたCORFIGに可能な限り近い周波数応答を有していなければならない。図10から分かるように、本発明に係る典型的な補聴器は、BTE型の補聴器の典型的なCORFIG(点線)に対して、はるかに良くフィットする応答(破線)を有している。
【0073】
図11は、レシーバハウジング4の内部に配置されたレシーバ2を備える補聴器の実施形態の一部を示している。図11に示す実施形態は図1に示すものと非常によく似ているので、相違点のみを説明する。図1に関連してすでに説明した特徴に加えて、図11に示す実施形態は、一方の端部がマイク48に接続され、他方の端部が開口50を有する開放端となっている、第2音響管46を備えている。イヤーチップ10がユーザの外耳道に配置されると、マイク48は、第2音響管46を介して、前記ユーザの外耳道の内部における音響場を拾うことができる。
【0074】
話したり噛んだりするときに、骨が伝導する振動は、外耳道に導かれる。これらの振動は、外耳道の内部に空気の振動(音)を生成する。それは、通常であれば開いた外耳道から抜け出ていき、ほとんどの人がその存在に気付かない。しかしながら、外耳道が補聴器や補聴器のイヤーピースで遮蔽されていると、これらの空気の振動が反射されて、鼓膜に向かって戻っていく。これは、いわゆる閉塞効果と呼ばれている。完全に開かれた外耳道に比べて、閉塞効果は、外耳道内での低周波数(通常は500Hz以下)の音圧を、20dB以上高めるおそれがある。従って、この閉塞効果は補聴器の装用者にとって、非常に迷惑なものであろう。しかしながら、マイク48の助けを借りることで、図示されたイヤーチップ10の使用時の閉塞効果を測定することができ、それによって取り除くことができる。
【0075】
図12は、増加する断面積を有する音響管6を備える補聴器の実施形態の一部を示している。音響管6は、2つの方向に伸長を有しているが、他の実施形態では、2より多い方向に長手方向の伸長を有していてもよい。図示された音響管6の一部は、断面積が段階的に増加する3つのセクション52,54,56を有している。この種の音響管は、特定の所望の周波数応答を備えるシステムの設計において、さらなる自由度をもたらす。
【0076】
図13は、段階的に増加および減少する断面積を有する音響管6を備える補聴器の実施形態の一部を示す。音響管6は順に、断面積が増加したセクション58と、それに続いて断面積が減少したセクション60と、それに続いて断面積が増加したセクション62と、それに続いて断面積が減少したセクション64を有している。セクション58および62の断面積は、実質的に等しくてもよいし、あるいは互いに異なっていてもよい。同様に、セクション60および64の断面積は、実質的に等しくてもよいし、あるいは互いに異なっていてもよい。セクション58および62は、音響管6の内部における2つの共鳴室を定義する。
【0077】
図14は、増加する断面積を有する音響管6を備える補聴器の代替実施形態の一部を示している。音響管6は、音響管6の長手方向の伸長に沿って、それぞれが異なる方向に伸びる2つのセクション66および68を有する。セクション68は、音声出力12に向かう方向に、徐々に、すなわち無段階で、増加する断面積を有している。
【0078】
図15は、徐々に増加および減少する断面積を有する音響管6を備える補聴器の代替実施形態の一部を示している。音響管6は順に、セクション70と、それに続くセクション72と、それに続くセクション74を有する。セクション72は、徐々に、すなわち無段階で、増加および減少する断面積を有しており、それによって、音響管のセクション72は、音響管6の内部における空洞または共鳴室を定義する。
【0079】
図1図2図4図6および図11図15の何れかに示す音響管6は、耳垢フィルタを含んでもよい。
【0080】
本発明によれば、レシーバは、約3kHzより高い共鳴周波数を有することができる。例えば、レシーバの共鳴周波数は、約3.5kHzまたは約4kHzとすることができる。
【0081】
本発明の音響管が、レシーバの共鳴周波数から、例えば約1kHzまたは1kHzを超えない程度に離れた共鳴周波数を生成するように構成されていることは、利点となるであろう。1kHzより大きく離すと、共鳴周波数の間で、望んでいるよりも深い周波数応答の「谷」を作ってしまう。従って、約3.5kHzまたは約4kHzの共鳴周波数を有するレシーバについては、音響管の共鳴周波数は、それぞれ約2.5kHzまたは約3kHzであることが望ましいであろう。
【0082】
特に、これに限定されるわけではないが、約3.5kHzの共鳴を有するレシーバでは、音響管の共鳴は約2.5kHz(例えば±0.3kHz)であることが望ましいであろう。従って、音響管は3.5cm(例えば±3mmまたは±5mm)の全長を有することが望ましいであろう。
【0083】
特に、これに限定されるわけではないが、約4kHzの共鳴を有するレシーバでは、音響管の共鳴は約3kHz(例えば±0.3kHz)であることが望ましいであろう。従って、音響管は2.6cm(例えば±3mmまたは±5mm)の全長を有することが望ましいであろう。
【0084】
本発明に係る補聴器は、音響管が補聴器の第1ハウジングの内部に配置されるように構成することができる。例えば、音響管は第1ハウジングと一体に形成されていてもよいし、少なくとも実質的に第1ハウジングに囲われていてもよい。第1ハウジングは、レシーバハウジングおよび/またはイヤーモールドおよび/またはイヤーチップおよび/またはイヤーピースおよび/または少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている補聴器の他の部分であってもよいし、そのように形成されていてもよいし、それらを備えていてもよい。
【0085】
従って、本明細書における開示および記述は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を例示することを意図するものであるが、限定するものではない。
【0086】
補聴器は、以下の項目の何れかによって提供することができる。
【0087】
(項目1)
レシーバハウジングの内部に配置されたレシーバを備える補聴器であって、
前記補聴器は、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されており、
前記補聴器は、前記レシーバの音響ポート開口部に音響的に接続されており、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有する音響管を備えており、
前記音響管は、少なくとも16mmの全長を有する、補聴器。
【0088】
(項目2)
前記音響管は、2つの方向の少なくとも1つに沿って、前記レシーバハウジングに少なくとも部分的に当接している、項目1の補聴器。
【0089】
(項目3)
前記音響管の前記長手方向の長さが、前記レシーバの前記長手方向の伸長よりも大きい、項目1または2の補聴器。
【0090】
(項目4)
前記レシーバハウジングが、使用時に、完全にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている、項目1から3の何れか一項の補聴器。
【0091】
(項目5)
前記少なくとも2つの方向のうちの1つに沿った前記音響管の長手方向の長さが、前記レシーバの長手方向の長さよりも大きい、項目1から4の何れか一項の補聴器。
【0092】
(項目6)
前記音響管が、少なくとも2つの異なる断面積を有する、項目1から5の何れか一項の補聴器。
【0093】
(項目7)
前記音響管が、着脱式の電気ソケットシステムを有するイヤーピースの一体の部品として形成されている、項目1から6の何れか一項の補聴器。
【0094】
(項目8)
前記音響管が、レシーバに搭載されるものとして予め定められた部品として形成されている、項目1から6の何れか一項の補聴器。
【0095】
(項目9)
前記音響管が、前記レシーバハウジングの一体の部品として形成されている、項目1から6の何れか一項の補聴器。
【0096】
(項目10)
前記音響管が、必要とされる音響性能(例えば、周波数増幅面積、フィードバック抑制のためのダンピング特性)に依存して、個別にエンドユーザに関連付けられた形状、断面および長さを有するように形成されている、項目1から9の何れか一項の補聴器。
【0097】
(項目11)
前記音響管が、ラピッドプロトタイピング技術(例えばSLS/SLA)によって製造されている、項目1から10の何れか一項の補聴器。
【0098】
(項目12)
使用時に、ユーザの外耳道の内部からの音を拾うように構成されたマイクをさらに備える、項目1から11の何れか一項の補聴器。
【0099】
(項目13)
前記音響管の前記断面積が、前記レシーバのポート開口部から、前記音響管の長手方向の伸長の少なくとも一部に沿って、徐々に、あるいは段階的に、あるいは部分的に徐々に、あるいは部分的に段階的に、増加する、項目1から12の何れか一項の補聴器。
【0100】
(項目14)
少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されたレシーバを備える補聴器であって、前記レシーバは、モータと、レシーバハウジングを備えており、前記レシーバハウジングは、一体的に形成された音響管を有しており、前記音響管は、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有しており、前記音響管は少なくとも16mmの全長を有している、補聴器。
【0101】
(項目15)
音を電気信号に変換して処理するように構成された耳かけ型(BTE)ユニットと、
前記電気信号をイヤーピースに通信するように構成された信号線を備える補聴器であって、
前記イヤーピースが、前記電気信号を音信号に変換するように構成されたレシーバを備えており、
前記イヤーピースが、音響管を備えており、
前記音響管が、前記レシーバの音響ポート開口部に接続されており、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有している、補聴器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15