【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記および他の目的は、本発明の第1の態様によって達成される。その第1の態様は、レシーバハウジング内に配置されたレシーバを備える補聴器に関する。前記レシーバは、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている。前記補聴器はさらに、前記レシーバまたは前記レシーバハウジングの音響ポートに音響的に接続された音響管を備えている。前記音響管は、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有している。前記音響管はさらに、少なくとも16mm、例えば18mmから40mm程度の全長を有している。
【0006】
それによって、従来のBTE型の補聴器よりも目立たない補聴器が実現される。なぜなら、前記レシーバは、比較的大きな補聴器の構成要素であるが、使用時に少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されているからである。さらに、使用時にユーザの外耳道に向けて発生する音を伝えるために、レシーバの出力ポートに音響管を接続することにより、音響管によって生成された音響共鳴効果は、補聴器の最大音響出力を増大させ、その結果、本発明に係る上述のような音響管構造を備える補聴器は、従来の設計に係る補聴器によって達成されるものに比べて、使用時にユーザの外耳道の内部でより高い音圧レベルを生成することができる。この向上された音声出力はまた、当該技術分野で知られている従来の補聴器に比べて、本発明に係る補聴器が増加されたダイナミックレンジを有するという、さらなる利点も有する。しかしながら、十分な共鳴効果を達成するためには、十分な長さの音響管が必要であり、シミュレーションと実測値はいずれも、少なくとも16mm、例えば18mmから40mm程度の音響管が必要となることを示している。音響管が少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるレシーバに接続されているので、必要とされる共鳴効果を生成するために十分な長さを有するまっすぐな音響管を使用することはできない。なぜなら、平均的な人間の外耳道はあまりに短すぎるからである。従って、少なくとも2つの異なる方向に長手方向の伸長を有する音響管を有することによって、ユーザの耳または外耳道の内部において利用可能な限られたスペースを使用しつつ、より長い音響管を使用することができ、さらに、より高い増幅を可能とし、あるいは本発明に係る補聴器がより高い出力音圧レベルを提供できるようにする、十分に高い共鳴効果を生成することができる。
【0007】
本出願においては、"少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有する"という表現は、"少なくとも2つの方向に複数の長手方向の伸長を有する"ことを意味することがある。すなわち、音響管は、音響管によって形成される経路の方向に沿った2以上の方向に伸びており、その経路は音をレシーバからユーザの鼓膜に向けて導くように構成されている。これは、本明細書の様々な実施形態、例えば
図1,
図2、
図4、
図5、
図6、
図11、
図12、
図13、
図14、
図15において例示されている。このように、少なくとも2つの方向に伸びる音響管を有することによって、例えば外耳道および/または補聴器の第1ハウジングに起因して与えられた寸法上の制約に対して、少なくとも2つの方向に伸びていない音響管で可能となるものに比べて、音響管の長さを増加することができる。これは、音響管が少なくともユーザの外耳道の内部に配置されるように構成された第1ハウジングの内部に位置する場合に、特にそうであろう。
【0008】
音響管の全長とは、音響管の第1端部から音響管の第2端部まで音響管によって形成される経路の長さ、例えばその経路の中心の長さであってもよい。
【0009】
レシーバの音響ポート開口部とは、補聴器の使用時に補聴器のユーザによって聴き取られることを意図された、レシーバからの音を伝送するように構成された、レシーバの開口部であってもよい。
【0010】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、音響管は、少なくとも音響管の2つの方向のうちの1つに沿って、少なくとも部分的にレシーバハウジングに(すなわちハウジングの表面に)当接していてもよい。それによってよりコンパクトであり、従ってより小さなイヤーピースが実現される。また、ユーザの聴力損失を解消するために必要とされる増幅を実現するために、必要とされる音響管の長さと、利用可能なスペースのトレードオフを解決することができる。
【0011】
コンピュータシミュレーションでは、今日現在の補聴器のレシーバの長手方向の伸長よりも短い長手方向の伸長を有する音響管は十分に効果的でない、すなわち十分な増幅を提供するうえで共鳴効果が十分な大きさではないことが示されている。従って、音響管の長手方向の長さは、レシーバの長手方向の伸長よりも長くてもよく、その方が好ましい。
【0012】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、レシーバハウジングは、使用時に完全にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている。それによって、より目立たない補聴器が実現される。なぜなら、比較的大きなレシーバ構成要素が、使用時に完全に外耳道の内部に配置されるからである。
【0013】
しかしながら、別の実施形態では、レシーバハウジングは、少なくとも部分的に、ユーザの耳の三角窩の直下の、耳甲介または耳甲介舟の内部に配置されるように構成されていてもよい。
【0014】
別の実施形態によれば、少なくとも2つの方向のうちの1つに沿った音響管の長手方向の長さは、レシーバの長手方向の長さよりも大きくてもよい。
【0015】
通常、補聴器のレシーバは、レシーバの支持系の剛性と、膜の後方の空気の体積、およびレシーバの運動系とその前方にある空気の質量といった、レシーバの機械的特性によって決定される、3kHz付近の共鳴を生成する。音響管をレシーバのポート開口部に接続することによって、音響管の導波路効果がさらなる共鳴を作り出す。20mmから24mmの音響管の長さの範囲に対して、共鳴は3.5kHzから4.4kHzまでの付近で生じる。
【0016】
可能な限り簡素なシステム、すなわち、まっすぐな音響管の一方の端部が剛なピストンに接続され、他方の端部が開口しているシステムは、正確に以下の共鳴を示す。
【0017】
【数1】
【0018】
ここで、cは音速であり、通常は343m/s(20℃の乾燥空気についての値)に設定できる。Lは音響管の長さである。
【0019】
実際の補聴器においては、システムは上述のものに比べて、はるかに複雑である。例えば、ピストンはレシーバの内部の膜であり、レシーバハウジング、音響ポートおよび音響管の内部の、前方の空気の体積を駆動する。最終的に、その終わりは音響管の開放端によってのみ定義されるのではなく、外耳道および鼓膜によって定義される。しかしながら、コンピュータシミュレーションと実測値(例えば、
図9、
図10および関連する記載を参照のこと)は、共鳴周波数を計算するための上記の数式が、実際のシステムに対する良い近似であることを示している。従って、実際のシステムについての共鳴周波数は、上記の数式に従って計算されるものの付近にあることが期待できる。それゆえ、本発明に係る補聴器が18mmから26mmまでの長さを有する音響管を備える場合には、第2の共鳴ピークの位置およびサイズの両方に関して、最適な共鳴特性が実現されることを、上記の式から推定することができる。本発明のさらに好ましい実施形態では、音響管は20mmから24mmの長さを有しており、さらにより好ましい実施形態では、音響管は18mmから24の長さを有している。
【0020】
(実施形態について)
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、音響管は少なくとも2つの異なる断面積を有していてもよい。それによって、音響管の共鳴特性に影響を及ぼすことができる。例えば、音響管の長さに沿って、断面積がより小さな領域に前後を挟まれた、断面積が増加した領域を有することによって、共鳴室を形成することができる。共鳴室は、音響管によって導かれる音に対するフィルタとして機能することができる。従って、共鳴室は音響管の周波数応答に対して、所望の周波数でのピークを追加することができる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、2つの異なる断面積は何れも、レシーバのポート開口部の面積よりも大きいことが実用的であることが見出されている。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、補聴器は実質的に矩形断面の音響管を含んでもよい。それによって、よりコンパクトなイヤーピースを製造することができる。
【0023】
本発明に係る補聴器の特に有利な実施態様では、音響管は着脱式の電気ソケットシステムを有するイヤーピースの一部として形成することができる。それによって、内部にレシーバを配置することができる内蔵型のユニットが実現される。この内蔵型のユニットは、今日のRIE型の補聴器において使用されている、特定の標準的なレシーバにフィットするように、配置し、および/または形成することができる。
【0024】
本発明に係る1またはそれ以上の実施形態では、音響管をレシーバに搭載されるように予め定められた部品として形成することができる。それによって、レシーバと組み合わせて使用することが容易な音響管を得ることができる。好ましくは、または必要に応じて、音響管をイヤーピースの一部として形成することができる。それによって、音響管に対する機械的な支持を提供することができる。
【0025】
あるいは、音響管は少なくとも部分的にレシーバハウジングの一部として形成することができる。それによって、よりコンパクトで省スペースなユニットが実現される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、音響管は、ラピッドプロトタイピング技術、例えば選択的レーザー焼結(SLS)技術や光造形(SLA)技術によって製造される。好ましくは、または必要に応じて、音響管は、SLAまたはSLS技術を使用して、RIE型の補聴器のためのイヤーピースの一部として形成される。あるいは、音響管は、ITE型またはCIC型の補聴器のシェル構造(例えばチップ部分)の一部として形成することができる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、補聴器は、必要な音響性能に応じて、エンドユーザに関連付けられた形状、断面積および長さを有するように、個別に形成される音響管を含んでもよい。この必要な音響性能は、1またはそれ以上の実施形態では、例えば特定の所望の周波数および/または特定の増幅、および/またはフィードバックを抑制するためのダンピング特性であってもよい。従って、特定のレシーバまたはレシーバのタイプと組み合わされた音響管を設計することが可能となり、ユーザに固有の要望、例えば聴力損失を考慮することが可能となる。これは、例えばコンピュータ、例えば標準的なパーソナルコンピュータ上で実行可能な専用のソフトウェアプログラムの助けを借りて行うことができる。ソフトウェアプログラムは、補聴器ディスペンサーに提供される通常のソフトウェアプログラムの拡張とすることができる。ソフトウェアプログラムを動作させる場合、ディスペンサーは、プログラムへの入力として、潜在的な補聴器ユーザのオージオグラムと耳および/または外耳道の3次元スキャンを提供することができる。そして、ソフトウェアプログラムは、この入力に基づいて、使用すべきレシーバを提案する。この提案は、3次元スキャンから推定される利用可能なスペースに基づいて、および/または、取得されたまたは測定されたオージオグラムに基づいて、行うことができる。そして、プログラムは、音響管の長さ、形状および形態を計算する。これに加えて、イヤーピースの内部の想定されるベントの影響を考慮することができる。最後に、音響管(そしておそらくはベント)と、提案されたレシーバのための空間を備えるイヤーピースが、ソフトウェアプログラムによって3次元モデルとして設計される。そして、SLS(選択的レーザー焼結)やSLA(光造形)などのラピッドプロトタイピング技術によって印刷することができる。ソフトウェアプログラムによってレシーバを提案する代わりに、利用可能なレシーバのタイプをソフトウェアプログラムの入力として提供することもできる。
【0028】
本発明に係る他の1つの実施形態では、補聴器は、使用時に、ユーザの外耳道の内部から音を拾うように構成されたマイクを備えていてもよい。好ましくは、または必要に応じて、マイクは、使用時にユーザの耳の内部に配置されるように構成されたイヤーピースの内部に配置され、例えば、それは、レシーバに隣接して配置されてもよいし、レシーバと同じハウジング構造に組み込まれても良い。1またはそれ以上の実施形態において、使用時に、実質的にユーザの鼓膜に対向する解放端と、マイクに接続された他方の端部を有する第2音響管を介して、外耳道の内部からマイクに音が伝達される。それによって、いわゆる閉塞効果を測定し、考慮に入れることが可能な補聴器が実現される。
【0029】
マイクは、外耳道の外から音を拾うように構成することもできる。あるいは、その代わりに、イヤーピースが、ユーザの周囲の音を拾うように構成された第2のマイクをさらに備えていてもよい。それによって、外耳や耳介によって行われている、周囲の音響場についての自然な周波数の形成を直接的に利用することができる。さらに、BTEユニットを備えるこれらの実施形態では、これによってより小さなBTEユニットを製造することが可能となる。なぜなら、2つの比較的大きな構成要素である、レシーバとマイクが、全てイヤーピースの内部に配置されるからである。
【0030】
耳垢による音響管の詰まりを防ぐために、音響管またはイヤーピースが耳垢フィルタを備えていてもよい。
【0031】
代替実施形態によれば、補聴器は、レシーバのポート開口部からの音響管の長手方向の伸長の少なくとも一部に沿って、徐々に、あるいは段階的に、あるいは部分的に徐々に、あるいは部分的に段階的に、増加する断面積を有する音響管を備えていてもよい。
【0032】
本発明の第2の態様は、補聴器のレシーバまたはレシーバを備える補聴器に関する。そのレシーバは、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている。そのレシーバは、モータとレシーバハウジングを備えている。そのレシーバハウジングは、一体的に形成された音響管を有している。その音響管は、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有している。その音響管は、少なくとも16mm、例えば18mmから40mm程度の全長を有している。そのレシーバは、レシーバのモータによって生成された音が、音響管を介して、レシーバの音響出力ポートを通して放射されるように構成することができる。
【0033】
本発明の第3の態様は、音を電気信号に変換して処理するように構成された耳かけ型(BTE)ユニットと、その電気信号をイヤーピースに通信するように構成された信号線を備える補聴器に関する。そのイヤーピースは、前記電気信号を音信号に変換するように構成されたレシーバを備える。そのイヤーピースは、レシーバの音響ポート開口部に接続されており、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有する音響管を備える。その音響管は、18mmから40mm程度の全長を有していてもよい。
【0034】
本発明の第4の態様は、レシーバハウジングの内部に配置されたレシーバを備える補聴器に関する。そのレシーバは、第1の共鳴周波数を有している。そのレシーバは、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている。その補聴器はさらに、レシーバの音響ポート開口部に音響的に接続可能な音響管を備える。音響管は、少なくとも2つの方向に長手方向の伸長を有していてもよい。補聴器は、音響管の共鳴周波数がレシーバの第1の共鳴周波数から1kHz付近となるように構成されていてもよい。その代わりに、あるいは必要に応じて、共鳴周波数の相違は0.5kHzから1.5kHz程度であり、および/または、1.5kHz程度より小さく、例えば1kHz程度より小さい。
【0035】
本発明の第5の態様は、補聴器のユーザに音を提供する方法に関する。その補聴器は、レシーバハウジングの内部に配置されたレシーバを有する。そのレシーバは、少なくとも部分的にユーザの外耳道の内部に配置されるように構成されている。その補聴器はさらに音響管を備えている。その音響管は、少なくとも2つの方向の長手方向の伸長を有しており、18mmから40mm程度の全長を有する。その方法は、レシーバからの音を音響管を介してユーザに提供する工程を備えている。
【0036】
本発明の任意の態様に係る音響管の全長は、18mmから26mm程度の範囲、例えば20mmから24mmの範囲を備えていてもよい。
【0037】
本発明の任意の態様に係る音響管の全長は、21mmから31mm程度の範囲、例えば23mmから29mm程度の範囲を備えていてもよい。
【0038】
本発明の任意の態様に係る音響管の全長は、30mmから40mm程度の範囲、例えば32mmから38mm程度の範囲を備えていてもよい。
【0039】
本発明の任意の態様に係る音響管の全長は、20mmから38mm程度の範囲、例えば25mmから33mm程度の範囲を備えていてもよい。
【0040】
本発明の5つの態様についての幾つかの実施形態について説明したが、それらの態様の1つの任意の実施形態からの任意の特徴が、他の態様の実施形態に含まれてもよいことが理解されるべきである。本明細書において”実施形態”または”1つの実施形態”という場合、本発明の3つの態様の何れかに係る実施形態をさしていることが理解される。
【0041】
以下では、本発明の好ましい実施形態が、図面を参照しながら、より詳細に説明される。