(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764211
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物、それから製造されるケーブル結束具、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20150723BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20150723BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20150723BHJP
B65D 63/02 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/22
C08K3/34
B65D63/02
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-526293(P2013-526293)
(86)(22)【出願日】2010年9月3日
(65)【公表番号】特表2013-536880(P2013-536880A)
(43)【公表日】2013年9月26日
(86)【国際出願番号】CN2010001338
(87)【国際公開番号】WO2012027863
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2013年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,リー
(72)【発明者】
【氏名】ユエン,ジアユー・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ホワーン,ジエンフオン
【審査官】
岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−070541(JP,A)
【文献】
特開平08−073736(JP,A)
【文献】
特開2001−019846(JP,A)
【文献】
特開平10−204290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00−77/12
B65D 63/00−63/18
C08K 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド組成物であって、
前記ポリアミド組成物の少なくとも90重量%を構成する40FAV(蟻酸粘度)未満の粘度を有する少なくとも1種類のポリアミド−6材料;
少なくとも50重量%の5:1未満の炭素原子とアミド基との比を有するポリアミド及び50重量%未満の金属ケイ酸塩から選ばれる無機金属材料を含む、ポリアミド材料内に分散している2.0重量%未満の少なくとも1種類の成核剤;及び
少なくとも1種類の潤滑剤;
を含むポリアミド組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種類の成核剤が、少なくとも75重量%の5:1未満の炭素原子とアミド基との比を有するポリアミド及び25重量%未満の金属ケイ酸塩から選ばれる無機金属材料を含む、請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のポリアミド組成物から形成される細長い本体を含むケーブル結束具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、概してポリアミドの分野に関する。特に、本発明は、ポリアミド−6及び成核剤から形成されるポリアミド組成物、及びかかるポリアミド組成物から物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリアミド−6及びポリアミド−66のような安定な低分子量で低粘度のポリアミドは、エンジニアリングプラスチック及び編織布の用途のためなどの種々の用途のために用いられている。エンジニアリングプラスチックの分野においては、これらのポリアミドは射出成形技術を用いる用途において用いることができる。
【0003】
[0003]ポリアミド−6及びポリアミド−66の相対的な特性及び性能特性によって、それぞれのポリマーは特定の用途のためにより好適になっている。例えば、自動車及びエレクトロニクス産業において用いられるケーブル結束具は、歴史的に産業の性能要求を満足するために射出成形プロセスを用いてポリアミド−66から製造されている。ポリアミド−6はケーブル結束具の製造に関してポリアミド−66を凌ぐ幾つかの利益を与えるが、劣った離型性、スプルー破壊性、及び脆性の問題が、ポリアミド−6からのケーブル結束具の製造を妨げている。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明の一態様は、ポリアミド組成物から形成される細長いポリマー体を含むケーブル結束具である。ポリアミド組成物は、ポリアミド−6材料及び成核剤を含む。成核剤は、少なくとも1種類の無機金属材料及び少なくとも1種類の有機材料を含む。ポリアミド組成物にはまた、場合によって潤滑剤を含ませることもできる。
【0005】
[0005]他の態様は、少なくとも1種類のポリアミド−6材料及び少なくとも1種類の成核剤を含み、成核剤は少なくとも1種類の無機金属材料及び少なくとも1種類の有機材料を含むポリアミド組成物からケーブル結束具を形成する方法である。ポリアミド組成物を溶融し、成形型中に射出し、冷却してケーブル結束具を形成する。次に、ケーブル結束具を成形型から離型する。
【0006】
[0006]本発明の更なる態様は、42FAV未満の粘度を有する低粘度ポリアミド−6、約2.0重量%未満の成核剤、及び潤滑剤を含むポリアミド組成物である。成核剤は、少なくとも約50重量%の有機ポリマー及び約50重量%未満の無機金属材料を含む。
【0007】
[0007]他の態様は、ポリアミド−6組成物を成核剤及び場合によっては潤滑剤と混合するポリアミド組成物の形成方法である。成核剤は、有機ポリマー及び無機金属材料を含む。成分を、予備ブレンドし、混合し、ペレット化し、包装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】[0008]
図1は、本発明の幾つかの態様にしたがってポリアミド組成物を形成する方法を示すフローチャートである。
【
図2】[0009]
図2は、本発明の幾つかの態様にしたがってケーブル結束具を形成する方法を示すフローチャートである。
【
図3】[0010]
図3は、本発明の幾つかの態様にしたがって製造されるケーブル結束具を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0011]本発明は、射出成形プロセスによるケーブル結束具の製造などの種々の用途のために有用なポリアミド組成物に関する。一態様においては、ポリアミド組成物は、少なくとも1種類のポリアミド−6材料、少なくとも1種類の成核剤、及び少なくとも1種類の場合によって用いる成核剤を含む。
【0010】
[0012]好適なポリアミド−6材料は、一般に、重合を開始させるのに好適な温度条件下でカプロラクタムとアミノカプロン酸を反応させることによって形成される。反応時間及び/又は温度を変化させることによるか、触媒を含ませることによるか、及びポリアミド−6材料上に種々の末端基を形成することによって、異なるポリアミド−6材料を製造することができる。商業的に入手できるポリアミド−6材料の例としては、Honeywell International Inc.から入手できるAegisブランドのポリアミド−6製品が挙げられる。これらの製品の具体例は、H35ZI、H8202NLB、H35L、H50LN、及びH50Lのブランド名で販売されている。ポリアミド−6は、ポリアミド組成物の少なくとも約90重量%、より特にはポリアミド組成物の少なくとも約95重量%を構成していてよい。一態様においては、ポリアミド−6は、例えば約52FAV未満、より特には約25〜約42FAVの間、更により特には約30FAV〜42FAVの間の低い粘度を有していてよい。
【0011】
[0013]好適な成核剤は、有機及び無機成分の混合物を含む。好適な有機材料の例としては、カルボン酸塩のような有機塩、アリールアミドのようなアミド、及び有機ポリマーが挙げられる。ポリアミド−6以外の種々のポリアミド材料が特に好適である可能性がある。特に、5:1未満、より特には3:1未満、更により特には2:1以下の炭素原子とアミド基との比を有するポリアミドである。代表的なポリアミドはポリアミド−22である。
【0012】
[0014]成核剤において用いるのに好適な無機材料の例としては、無機金属材料が挙げられる。好適な無機金属材料としては、金属酸化物及び金属ケイ酸塩が挙げられる。特に好適な無機金属材料としては、ケイ酸アルミナ、酸化アルミニウム、及び二酸化ケイ素が挙げられる。他の好適な無機材料としては、タルク、マイカ、カオリン、アスベスト、アルミナ、シリカ、臭化銀、グラファイト、二硫化モリブデン、フッ化リチウム、ナトリウムフェニルホスフィネート、ナトリウムイソブチルホスフィネート、酸化マグネシウム。臭化水銀、塩化水銀、酢酸カドミウム、酢酸鉛、塩化銀などが挙げられる。
【0013】
[0015]特に好適な有機及び無機材料の組合せは、5:1未満の炭素原子とアミド基との比を有するポリアミド(例えばポリアミド−2.2)及び金属ケイ酸塩を含む。一態様においては、有機成分は、成核剤の50重量%超、より特には約60〜約95重量%の間、更により特には約75〜90重量%の間を構成する。無機成分は、成核剤の50重量%未満、より特には約5〜約40重量%の間、更により特には約5〜約15重量%の間を構成する。代表的な商業的に入手できる成核剤は、Brueggemann Chemicalによって製造されている90重量%ポリアミド−2.2/10%ケイ酸アルミナ材料であるP22である。タルク又は二酸化ケイ素のような更なる有機及び/又は無機成核剤を、上記に記載の有機/無機成核剤と組み合わせて用いることができる。しかしながら、一態様においては、ポリアミド組成物は、タルク又は二酸化ケイ素のような更なる成核剤を含まないか又は実質的に含まない。成核剤は、ポリアミド組成物の約5.0重量%未満、より特には約1.0重量%未満、更により特にはポリアミド組成物の約0.5重量%未満を構成してよい。
【0014】
[0016]種々の潤滑剤が、本発明の幾つかの態様において用いるのに好適である可能性がある。好適な潤滑剤の例としては、エチレンビスステアラミドのようなステアラミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸ナトリウムのようなステアレート、ポリジメチルシロキサンのようなポリシロキサン、ポリオレフィン、及びエチレン酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。特に好適な添加剤としては、ステアリン酸亜鉛及び/又はエチレンビスステアラミドが挙げられる。潤滑剤は、ポリアミド組成物の5重量%未満、より特にはポリアミド組成物の2重量%未満を構成してよい。
【0015】
[0017]ポリアミド組成物には、種々の場合によって用いる添加剤を更に含ませることができる。代表的な添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、離型剤、顔料、染料、可塑剤、静電防止剤、難燃剤、ガラス充填材、無機充填材、及び耐衝撃性改質剤が挙げられるが、これらに限定されない。ポリアミド組成物にはまた繊維状又は粒子状充填材を含ませることもでき、これらは組成物の弾性及び剛性を向上させるように機能する。
【0016】
[0018]更に、ポリアミド組成物は、所望の場合には1種類以上のポリアミド−66組成物とブレンドすることができる。一態様においては、かかるブレンドした組成物は約50重量%以下のポリアミド−66材料を含む。
【0017】
[0019]ポリアミド組成物は通常の手順によって形成することができる。一態様においては、種々の原材料を一緒にブレンドする。適当なブレンド方法としては、溶融押出、バッチ溶融などが挙げられる。1つの有用な手順においては、ブレンド手順は、別々に試薬の個々の成分としてか、或いは激しく撹拌しながら溶融体に加える粒状物、ペレット、及び粉末のような好適な形態の成分の組合せとして予め形成したポリマー及び成核剤のいずれかの融点よりも高い昇温温度において行うことができる。或いは、成核剤の種々の成分の全部又は一部を、溶融体中のポリアミドとマスターバッチ化又は予備ブレンドすることができ、この予備混合物又はマスターバッチを、ポリアミド生成物中の成核剤の所望の量を与えるのに十分な量で溶融体中のポリアミドに加えることができる。均一な組成物が形成されるまで撹拌を継続する。ブレンド温度及びブレンド圧力、並びに種々の成分の添加順序は、実質的に均一な組成物が得られるならば所望のように変化させることができる。ブレンド手順は昇温温度において行うことができ、この場合にはポリマー成分を溶融し、溶融体を激しく撹拌することによって固体の成核剤をそれと混合する。同様に、種々の固体成分を粒状化することができ、粒状化成分は、好適なブレンダー、又は例えばバンバリーミキサー内で可能な限り均一に混合乾燥し、次に押出機内で溶融し、冷却しながら押出す。
【0018】
[0020]
図1は、本発明の幾つかの態様にしたがってポリアミド組成物を形成する方法10を示す。ポリアミド材料、成核剤、及び場合によって潤滑剤をブレンドすることによってポリアミド混合物を形成する(ブロック20)。次に、混合物を混合し(ブロック30)、ペレット化する(ブロック40)。次に、ペレットをバッチ混合し(ブロック50)、将来の使用のために所望の形態で包装する(ブロック60)。
【0019】
[0021]得られるポリアミド組成物は、種々の成形物品、繊維、及びフィルムを製造するために用いることができる。好適な成形方法としては、射出成形、溶融紡糸、注型、及び押出が挙げられる。特定の態様においては、ポリアミド組成物は、射出成形法によって電子ケーブル結束具を製造するために用いることができる。
【0020】
[0022]
図2は、本発明の幾つかの態様にしたがってケーブル結束具を形成する方法100を示す。上記に記載のポリアミド組成物を、好適な温度、例えば約250℃〜300℃の間で溶融する(ブロック110)。次に、組成物を、好ましくは約1000kgf/cm
2より低い射出圧力において好適な成形型中に射出する(ブロック120)。成形型を冷却して、ポリアミド組成物をケーブル結束具の形態で固化させる(ブロック130)。次に、ケーブル結束具を成形型から離型する(ブロック140)。
【0021】
[0023]
図3は、本発明の一態様による代表的なケーブル結束具200を示す。ケーブル結束具200は、細長い本体210、ギヤ歯220、及びラチェット230を含む。使用においては、ケーブル結束具200を1つ又は複数の物体の周りに巻き付け、歯220をラチェット230中に挿入する。ラチェット230は、個々のギヤ歯と噛み合う締着メカニズムを含む。勿論、本発明のポリアミド組成物を用いて種々の異なるケーブル結束具の構造を製造することができる。
【0022】
[0024]下記の実施例において示すように、本発明のポリアミド組成物から形成されるケーブル結束具は、従来のポリアミド−6及びポリアミド−66組成物の両方と比べて、向上した結晶化度、より低い射出圧、減少した成形型粘着性及びスプルー破壊性、及び/又はより低い脆性を示す。したがって、本発明のポリアミド組成物は、ケーブル結束具の形成などの種々の用途のためのポリアミド−66に関する実用的な代替物である。
【実施例】
【0023】
[0025] 本発明の範囲内の数多くの修正及び変更は当業者に明らかであるので、本発明を例示のみとして意図される以下の実施例においてより詳しく記載する。他に言及しない限りにおいて、以下の実施例において報告されている全ての部、パーセント、及び比は重量基準であり、実施例において用いた全ての試薬は下記に記載する化学物質供給業者から得たか又は入手できるか、或いは通常の技術によって合成できる。
【0024】
[0026]下表1に示す実施例1〜2及び比較例A〜Bの組成物を、成分を転動ブレンドし、標準的な実験室手順を用いて二軸押出機(直径30mmの実験室サイズ)のスロート中に転動した成分を供給することによってマスターバッチ化した。H35ZI及びH8202NLBは、Honeywell International Inc.から入手できるポリアミド−6組成物である。EBSは、潤滑剤であるN/N’−エチレンビスステアラミドを表す。P22は、90重量%ポリアミド−2.2/10%ケイ酸アルミナの混合物を構成するBruggemann Chemicalから入手できる成核剤である。
【0025】
【表1】
【0026】
[0027]実施例3〜4及び比較例C〜Nの組成物を下表2に示す。実施例3〜4は、上記に示す実施例1と、DuPontから入手できるポリアミド−66組成物である101Lのブレンドである。比較例C〜Nは、商業的に入手できるポリアミド組成物、及び商業的に入手できるポリアミド組成物のブレンドを表す。H50LN、H50L、及びH35ZIは、それぞれHoneywell International Inc.から入手できるポリアミド−6組成物である。A205Fは、Rhodiaによて販売されている商業的に入手できるポリアミド−66である。21SPCは、Vydyneによって販売されている商業的に入手できるポリアミド−66樹脂である。160ERは、Koplaによって販売されている商業的に入手できるポリアミド−6樹脂である。1013Bは、UBE Engineering Plasticsによって販売されている商業的に入手できるポリアミド−6組成物である。B3Sは、BASFによって販売されている商業的に入手できるポリアミド−6組成物である。B30sは、Lanxessによって販売されている商業的に入手できるポリアミド−6組成物である。
【0027】
【表2】
【0028】
結晶化特性:
[0028]実施例1の結晶化特性を、種々の商業的に入手できるポリアミド−6及びポリアミド−66組成物を表す比較例C〜Hと比較した。それぞれの材料の結晶化特性は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。DSC実験は、標準手順にしたがってDSC−Q100システムを用いて行った。試料を10℃/分の速度で25℃から280℃に加熱した。280℃の温度を2分間維持し、次に試料を10℃/分の速度で25℃に冷却して戻した。それぞれの試料の融点(Tm)、結晶化温度(TC)、及び結晶化度(%)を測定した。結果を下表3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
[0029]上記は、本発明の幾つかの態様にしたがう有機/無機成核剤を含む実施例1は、通常のポリアミド−66樹脂よりも低く、通常のポリアミド−6樹脂と同様の結晶化温度及び結晶化度を有することを示す。
【0031】
[0030]標準手順にしたがって、実施例1並びに比較例C、D、及びGに関して非等温結晶化速度を求めた。それぞれの試料を50K/分の速度で25℃から280℃に加熱した。280℃の温度を2分間維持し、次に試料を、2.5K/分、5K/分、7.5K/分、10K/分、及び12.5K/分の種々の速度で25℃に冷却して戻した。結果を表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】
表4に示す結果は、実施例1が特定の単位時間(X(t))において規定の結晶化度を達成するためにより低い冷却速度(F(T))を有することを示す。Qiao XY、Wang XH、Zhao XJ、Mo ZS、Zhang HF (2000) Synthetic Met 113:1を参照。より低い値のF(T)値はより速い結晶化速度を示す。
【0034】
射出成形特性:
[0031]次に、実施例1の射出成形特性を、商業的に入手できるポリアミド−66組成物を表す種々の比較例と比較した。下表5に、それぞれの実施例に関する射出成形処理性のデータを与える。この試験のために用いた射出成形装置は、Sumitomo Heavy Industries, LTDによって製造されたSE100DU-C250であった。試料を、下記に示す温度において、90℃の維持された成形型温度を有するケーブル結束具成形型中に射出成形した。成形型を3秒間冷却し、次にケーブル結束具を成形型から離型した。圧力センサーを用いて射出圧を測定した。離型性を0〜5のスケールにしたがって測定した。ゼロのスコアはケーブル結束具が成形型内に堅く接着していたことを意味し、5のスコアはケーブル結束具が更なる処理工程を行わずに成形型から落下したことを意味する。4以上のスコアが好適であるとみなされる。Instron Corp.から入手できるInstron-5567装置によって、25℃、50%の相対湿度、及び50mm/分の引張り速度においてバックル強さを測定した。
【0035】
【表5】
【0036】
[0032]表5に示す結果は、実施例1がポリアミド−66組成物と同等に良好であるか又はそれよりも良好である射出成形特性を有することを示す。特に、実施例1は、未だ好適な離型性(4より大きい)及びバックル強さ(22kgf/cm
2より大きい)を有しながら、比較例よりも低い処理温度及び射出圧を達成した。実施例1はまた、ケーブル結束具を折り曲げて折り目にそって破断が生じるかどうかを求めることによって測定される好適な抗折り曲げ特性を示した。
【0037】
[0033]次に、実施例1の射出成形特性を、全て285℃の成形温度において、商業的に入手できるポリアミド−6組成物を表す種々の比較例と比較した。結果を表6に示す。
【0038】
【表6】
【0039】
[0034]結果は、他の商業的に入手できるポリアミド−6組成物は実施例1よりも非常に低い離型性の値を有し、したがってケーブル結束具の製造プロセスなどの幾つかの射出成形プロセスには好適でないであろうことを示す。
【0040】
[0035]次に、実施例1の組成物に種々の修正を行って、処理特性に対する影響を求めた。
【0041】
【表7】
【0042】
[0036]上記に示す結果は、本発明の種々の態様が種々の成形特性のために好適な離型性の値を有することを示す。しかしながら、42FAV未満の粘度を有するポリアミド−6材料から形成される実施例1は、未だ低い射出圧を示した。
【0043】
[0037]上記の記載から、当業者であれば本発明の本質的な特徴を容易に突き止めることができ、その精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の種々の変更及び修正を行って種々の用法及び条件にそれを適合させることができる。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
ポリアミド組成物を含み、ポリアミド組成物が、少なくとも1種類のポリアミド−6材料及びポリアミド材料内に分散されている少なくとも1種類の成核剤を含み、少なくとも1種類の成核剤が、少なくとも1種類の有機材料及び少なくとも1種類の無機金属材料を含む、細長いポリマー体を含むケーブル結束具。
[2]
細長いポリマー体の第1の端部付近に配置されているギヤ歯、及び細長いポリマー体の第2の端部付近に配置されているラチェットを更に含み、ラチェットがギヤ歯を受容してこれに締着するように適合されている、[1]に記載のケーブル結束具。
[3]
ポリアミド−6の粘度が約52FAV未満である、[1]に記載のケーブル結束具。
[4]
ポリアミド−6の粘度が約30〜約42FAVの間である、[1]に記載のケーブル結束具。
[5]
有機材料がポリマーを含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[6]
有機材料が5:1未満の炭素原子とアミド基との比を有するポリアミド材料を含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[7]
有機材料が2:1以下の炭素原子とアミド基との比を有するポリアミド材料を含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[8]
有機材料がポリアミド−22を含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[9]
有機材料が少なくとも約50重量%の成核剤を含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[10]
有機ポリマーが少なくとも約75重量%の成核剤を含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[11]
少なくとも1種類の無機金属材料が、金属酸化物、二酸化ケイ素、又はこれらの誘導体若しくは組合せを含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[12]
少なくとも1種類の無機金属材料が、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、又はこれらの誘導体を含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[13]
少なくとも1種類の無機金属材料が金属ケイ酸塩を含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[14]
少なくとも1種類の無機金属材料がケイ酸アルミナを含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[15]
成核剤が約25重量%未満のケイ酸アルミナを含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[16]
成核剤が、5:1未満の炭素原子とアミド基との比を有するポリアミド材料、及び金属酸化物、金属ケイ酸塩、若しくは両方を含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[17]
ポリアミド組成物が0.5重量%未満の成核剤を含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[18]
ポリアミド組成物が少なくとも1種類のポリアミド−66材料を更に含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[19]
少なくとも1種類のステアレート、ステアラミド、ポリシロキサン、ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、又はこれらの組合せを含む少なくとも1種類の潤滑剤を更に含む、[1]に記載のケーブル結束具。
[20]
潤滑剤が、エチレン−ビスステアラミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ポリジメチルシロキサン、ポリオレフィン、及びエチレン酢酸ビニルコポリマーからなる群から選択される、[19]に記載のケーブル結束具。
[21]
少なくとも1種類の潤滑剤がステアラミド及びステアレートの一方又は両方である、[19]に記載のケーブル結束具。
[22]
少なくとも1種類の潤滑剤がエチレンビスステアラミド及びステアリン酸亜鉛の一方又は両方である、[19]に記載のケーブル結束具。
[23]
少なくとも1種類のポリアミド−6材料及び少なくとも1種類の成核剤を含み、成核剤が少なくとも1種類の無機金属材料及び少なくとも1種類の有機材料を含むポリアミド組成物を溶融し;
溶融したポリアミド組成物を成形型中に射出し;
成形型を冷却してケーブル結束具を形成し;そして
ケーブル結束具を成形型から離型する;
ことを含むケーブル結束具の形成方法。
[24]
ポリアミド組成物を300℃未満の温度で溶融する、[23]に記載の方法。
[25]
ポリアミド組成物を1000kgf/cm2未満の圧力で射出する、[23]に記載の方法。
[26]
約40FAV未満の粘度を有する少なくとも1種類のポリアミド−6材料;
少なくとも約50重量%の有機ポリマー及び約50重量%未満の無機金属材料を含む、ポリアミド材料内に分散している約2.0重量%未満の少なくとも1種類の成核剤;及び
少なくとも1種類の潤滑剤;
を含むポリアミド組成物。
[27]
ポリアミド−6の粘度が30〜42FAVの間である、[26]に記載のポリアミド組成物。
[28]
有機ポリマーが5:1未満の炭素原子とアミド基との比を有するポリアミドを含む、[26]に記載のポリアミド組成物。
[29]
少なくとも1種類の潤滑剤がステアラミド及びステアレートの一方又は両方である、[26]に記載のポリアミド組成物。
[30]
潤滑剤が、エチレンビスステアラミド、ステアリン酸亜鉛、又は両方を含む、[26]に記載のポリアミド組成物。
[31]
少なくとも1種類の無機金属材料が金属ケイ酸塩を含む、[26]に記載のポリアミド組成物。
[32]
少なくとも1種類の無機金属材料がケイ酸アルミナを含む、[26]に記載のポリアミド組成物。
[33]
成核剤が約25重量%未満の少なくとも1種類の無機金属材料を含む、[26]に記載のポリアミド組成物。