(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の半導体や電子部品の小型化に伴い、検査画像情報は高い解像度を有することが求められている。このように高い解像度を得るため、超音波映像装置は、超音波の周波数が高い高分解能のプローブ(高解像度プローブ)を用いている。
高分解能のプローブは、超音波の減衰が大きく、焦点深度と追従ゲートの可動域が狭い。ここで焦点深度とは、プローブの超音波を照射する側の表面位置から、超音波の照射方向に焦点を結ぶことが可能な距離である。この焦点深度の狭さは、試料や欠陥構造の湾曲や傾斜に対して問題となる。
つまり、試料の表面や内部欠陥構造の湾曲や傾斜が小さいならば、このプローブが受信した特定の反射エコーに対して、ゲートを追従させる方法があった。しかし、試料の表面や内部欠陥構造の湾曲や傾斜が大きく、高分解能のプローブの焦点深度から外れたならば、ゲートを追従させても焦点を結ぶことができない。よって、プローブを水平方向の二次元で走査して試料を観察することが困難であった。
【0006】
図11は、比較例の高解像度プローブによる試料4の表面エコーの波形図である。図の縦軸は、それぞれプローブに印加される電圧を示している。図の横軸は、送信インパルスを基準としたタイミングを示している。この比較例では、試料の表面の傾斜が大きい場合を示している。
各グラフは、所定距離だけ走査する毎に、高解像度プローブにインパルス信号が印加され、そのインパルス信号の反射波形を受信していることを示している。
最上部に示した第1グラフは、ゲート期間Tgの受信信号にインパルスが現れていないことを示している。このとき試料の表面は、高解像度プローブに極めて近く、よって焦点深度の範囲外である。
次に示した第2グラフは、ゲート期間Tgの受信信号にインパルスが僅かに現れていることを示している。このとき試料の表面の位置は、高解像度プローブから遠ざかり、焦点深度の範囲に近づいている。
第3グラフは、ゲート期間Tgの受信信号にインパルスが明瞭に現れていることを示している。インパルスは、送信信号のインパルスから時刻Tcの後に現れている。このとき試料の表面は、高解像度プローブの焦点深度の範囲に位置している。
その次に示した第4グラフは、ゲート期間Tgの受信信号にインパルスが僅かに現れていることを示している。このとき試料の表面は、高解像度プローブから更に遠ざかり、焦点深度の範囲から外れようとしている。
最下部に示した第5グラフは、ゲート期間Tgの受信信号にインパルスが現れていないことを示している。このとき試料の表面は、高解像度プローブから更に遠ざかり、焦点深度の範囲外である。
図11に示すように、試料の表面の傾斜が大きい場合には、ゲートを追従させても焦点を結ぶことができず、よって、表面や内部欠陥などを観察することはできなかった。
【0007】
他方で、長焦点距離のプローブは、高分解能のプローブよりも超音波の減衰が小さく、焦点深度と追従ゲートの可動域が広い。しかし、長焦点距離のプローブでは、高分解能で試料を観察することができないという問題がある。
そこで、長焦点距離のプローブと高分解能のプローブの2本を切り替えて走査することが考えられる。従来技術において複数のプローブで走査する主な目的は、特許文献1に記載の発明のようにスループットを向上させることであり、目的に合ったプローブに切り替えることではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、深く湾曲した表面や傾斜した欠陥構造を有する試料を高分解能で観察することが可能な超音波画像装置、およびそれを用いた観察方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するため、本発明の超音波映像装置は、
分解能と焦点深度
の広さとを切り換え可能な超音波探触手段と、前記超音波探触手段を平面方向に走査する走査手段と、前記超音波探触手段と試料との間隔を可変する深度可変手段と、前記超音波探触手段
の分解能を第1分解能に、焦点深度の広さを第1焦点深度に設定して前記走査手段によって走査することにより前記試料の観察位置の深度マップを取得し、前記超音波探触手段
の分解能を前記第1分解能よりも高い第2分解能に、焦点深度の広さを前記第1焦点深度よりも狭い第2焦点深度に設定して、前記超音波探触手段の前記第2焦点深度が前記深度マップに係る前記観察位置を含むように、前記深度可変手段により前記超音波探触手段と前記観察位置との距離を可変させながら前記走査手段によって前記超音波探触手段を走査する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の超音波映像装置を用いた観察方法は、
分解能と焦点深度
の広さを切り換え可能な超音波探触手段と、前記超音波探触手段を平面方向に走査する走査手段と、前記超音波探触手段と試料との間隔を可変する深度可変手段と、制御手段と、を備える超音波映像装置を用いた観察方法であって、前記制御手段が前記超音波探触手段の
分解能を第1分解能に、焦点深度の広さを第1焦点深度に設定するステップと、前記走査手段により前記超音波探触手段を平面方向に走査するステップと、前記制御手段が前記試料の観察位置の深度マップを取得するステップと、前記制御手段が前記超音波探触手段
の分解能を前記第1分解能よりも高い第2分解能に、焦点深度の広さを前記第1焦点深度よりも狭い第2焦点深度に設定するステップと、前記超音波探触手段の前記第2焦点深度が前記深度マップに係る前記観察位置を含むように、前記深度可変手段により前記超音波探触手段と前記観察位置との距離を可変させながら前記走査手段によって前記超音波探触手段を走査するステップとを含むことを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、深く湾曲した表面や傾斜した欠陥構造を有する試料を高分解能で観察することが可能な超音波画像装置、およびそれを用いた観察方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態における超音波映像装置1を示す概略の構成図である。
本実施形態の超音波映像装置1は、焦点深度を切り替え可能な超音波探触部2により試料4の観察位置に係る深度マップ53を取得するものである。本実施形態では、信号発生測定装置6にインパルス波発信器61,62を備え、超音波探触部2に長焦点距離プローブ22と高解像度プローブ23とを備える。長焦点距離プローブ22と高解像度プローブ23とをスイッチ24で切り替えることにより、超音波探触部2の焦点深度を切り替えることができる。
【0014】
超音波映像装置1は、超音波の送受信を行う超音波探触部2と、この超音波映像装置1を統括制御して超音波映像を表示する映像処理表示装置5と、超音波探触部2との間で電気信号を入出力する信号発生測定装置6とを備える。超音波映像装置1は更に、超音波探触部2を平面的に走査するX軸駆動装置81およびY軸駆動装置82と、超音波探触部2と試料4との間隔を可変するZ軸駆動装置83と、これらを制御する制御装置7とを備える。
【0015】
超音波探触部2は、互いの相対的な空間座標位置が固定された長焦点距離プローブ22と、高解像度プローブ23を有する。これら長焦点距離プローブ22と高解像度プローブ23とは、超音波探触部2に支えられて、水槽3に満たされた水31に浸漬され、圧電素子221,231が試料4に対向するように配置される。更に超音波探触部2は、超音波探触部2の走査位置を検知するエンコーダ21と、スイッチ24とを備えている。
【0016】
長焦点距離プローブ22は、電気信号と超音波信号とを相互に変換する圧電素子221を備えている。長焦点距離プローブ22は、焦点深度(第1焦点深度)が広いものであり、超音波の周波数が相対的に低く分解能が低い。
高解像度プローブ23は、電気信号と超音波信号とを相互に変換する圧電素子231を備えている。この圧電素子231が発生する超音波の周波数は、圧電素子221が発生する超音波の周波数よりも高い。高解像度プローブ23は、高分解能用であり、超音波の周波数が相対的に高く焦点深度(第2焦点深度)が狭い。
スイッチ24は、タイミング制御部52の出力信号に基づいて、圧電素子221,231のうちいずれの信号をA/D変換器65に出力するかを切り替えるものである。
【0017】
映像処理表示装置5は、超音波探触部2の走査位置を制御する走査制御部51と、超音波の送受信タイミングを制御するタイミング制御部52と、超音波画像を生成する画像生成部54とを備え、試料4の観察位置に係る深度情報のマップである深度マップ53を不図示の記憶部に格納する。
【0018】
信号発生測定装置6は、インパルス波の電気信号を生成するインパルス波発信器61,62と、超音波探触部2が受信した受信信号を増幅するアンプ64と、当該受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するA/D変換器65と、当該受信信号を信号処理する信号処理部66とを備えている。なお、2個のインパルス波発信器61,62に替えて、1個のインパルス波発信器を備えて、スイッチ等で2本のプローブのうちいずれに出力するかを切り替えてもよい。
【0019】
走査制御部51は、制御装置7(スキャナ)と入出力可能に接続されている。走査制御部51は、制御装置7とX軸駆動装置81とY軸駆動装置82(走査手段)によって超音波探触部2の水平方向の走査位置を制御し、制御装置7から超音波探触部2の現在の走査位置情報を受信する。更に走査制御部51は、Z軸駆動装置83(深度可変手段)によって超音波探触部2と試料4との間の距離を制御し、制御装置7から超音波探触部2の現在のZ軸位置情報を受信する。
【0020】
制御装置7の出力側は、X軸駆動装置81、Y軸駆動装置82およびZ軸駆動装置83に接続されている。制御装置7には、超音波探触部2のエンコーダ21の出力側が接続されている。制御装置7は、エンコーダ21の出力信号によって超音波探触部2の走査位置を検知し、X軸駆動装置81とY軸駆動装置82とによって超音波探触部2が指示された走査位置になるように制御する。
【0021】
制御装置7は、エンコーダ21の出力信号によって、超音波探触部2と試料4との間の距離を検知し、Z軸駆動装置83によって超音波探触部2が指示された深さ位置になるように制御する。
制御装置7は、走査制御部51から超音波探触部2の制御指示を受けると共に、超音波探触部2の走査位置情報と深さ位置情報とを応答する。
タイミング制御部52は、走査制御部51から取得した超音波探触部2の走査位置情報に基づいて、信号発生測定装置6に超音波の送受信タイミング信号(情報)を出力する。
【0022】
インパルス波発信器61は、タイミング制御部52が出力したタイミング信号に基づいて、長焦点距離プローブ22の圧電素子221にインパルス波を出力するものである。
インパルス波発信器62は、タイミング制御部52が出力したタイミング信号に基づいて、高解像度プローブ23の圧電素子231にインパルス波を出力するものである。
【0023】
圧電素子221,231は、圧電膜の両面にそれぞれ電極が取り付けられているものである。圧電素子221,231は、両電極間に電圧が印加されることにより、当該圧電膜から超音波を送信する。圧電素子221が送信する超音波の周波数は、圧電素子231が送信する超音波の周波数よりも低い。
【0024】
更に圧電素子221,231は、当該圧電膜が受信したエコー波(受信波)を、前記両電極間に発生する電圧である受信信号に変換する。スイッチ24は、圧電素子221の受信信号と圧電素子231の受信信号のうちいずれかを選択して出力するものである。アンプ64は、選択された当該受信信号を増幅して出力信号として出力するものである。A/D変換器65は、増幅された当該受信信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換するものである。
【0025】
信号処理部66は、受信信号を信号処理するものである。信号処理部66は、タイミング制御部52が出力するゲートパルスによって、受信信号の所定期間のみを切り出す。信号処理部66は、所定期間の受信信号の振幅情報、または、所定期間の受信信号の時間情報を、画像生成部54に出力する。
画像生成部54は、信号処理部66の出力信号に基づいて、所定周波数における超音波画像を生成するものである。
超音波映像装置1による試料4の観察では、まず長焦点距離プローブ22を用いた前走査にて試料4や欠陥構造の湾曲や傾斜の空間座標を大まかに調べる。次に超音波映像装置1は、その深度マップ53の情報に基づき、高解像度プローブ23を用いて本走査を実施する。その際、超音波映像装置1は、水平方向の走査だけでなく垂直方向(Z軸方向)のプローブ位置も機械的に調整する。これにより、観察対象の深い湾曲や傾斜に対しても高解像度プローブ23の焦点を合わせることができ、試料4を高分解能で観察することが可能となる。
深度マップ53は、本走査よりもスキャン密度が疎である。よって、走査制御部51は、本走査における水平方向の走査位置を取得すると、その最近傍位置の深度情報を観察位置とする。また、最近傍の複数の深度情報を補間して、その走査位置の深度情報を算出してもよい。
【0026】
図2は、超音波映像装置1の走査方法を示す斜視図である。
ここでは、超音波映像装置1の一部として、X軸駆動装置81と、Y軸駆動装置82と、Z軸駆動装置83と、超音波探触部2と、水槽3のみが示されている。
X軸駆動装置81は、Y軸駆動装置82とZ軸駆動装置83と超音波探触部2を±X方向に移動させるものである。Y軸駆動装置82は、Z軸駆動装置83と超音波探触部2を±Y方向に移動させるものである。Z軸駆動装置83は、超音波探触部2を±Z方向に移動させるものである。
超音波探触部2は、下部に長焦点距離プローブ22と高解像度プローブ23とが取り替え可能に装着されており、更にエンコーダ21(
図1)を備えている。超音波探触部2は、水槽3に満たされた水31に浸漬され、試料4の上部Z方向に所定の距離をおいて対向するように配置されている。
【0027】
図3は、長焦点距離プローブ22による前走査を示す概念図である。ここでは、
図1と
図2を参照しつつ、超音波映像装置1による前走査の動作について説明する。
【0028】
試料4は、例えば円盤形状のシリコンウェーハであり、中央部が下方向に湾曲している。この
図3では、試料4の平面図と側面図とを示している。走査制御部51は、超音波探触部2を±Y方向にスキャンして、長焦点距離プローブ22により、試料4に係る1ライン分の画素を取得する。長焦点距離プローブ22の焦点深度222は広く、この湾曲した試料4を含んでスキャンすることができる。
【0029】
走査制御部51は、超音波探触部2がY方向の一端(図の右端)に位置していることを検知したならば、超音波探触部2を−X方向に所定ピッチだけ移動させたのち、+Y方向にスキャンして、1ライン分の画像を取得する。その後は超音波探触部2を−X方向に所定ピッチだけ移動させたのち、−Y方向にスキャンして、1ライン分の画像を取得する。これを繰り返して、走査制御部51は、所定範囲の走査を行う。走査制御部51は、長焦点距離プローブ22の平面方向の走査において、この長焦点距離プローブ22の深度方向(Z軸方向)を固定する。これにより、深度方向を可変しながら走査する場合よりも高速に走査することが可能となる。
【0030】
前走査における−X方向の移動量は本走査よりも粗く、例えば
図3、
図4に示す概念図においては、本走査における−X方向の移動量の3倍である。すなわち、前走査における1ラインは、
図4に示す本走査における3ラインに相当する。このように、前走査を本走査よりも粗くスキャンすることで、本走査よりも短時間に前走査を完了することができる。
映像処理表示装置5のタイミング制御部52は、走査制御部51から超音波探触部2のX方向とY方向の走査位置情報を受け取り、X方向の走査位置情報に基づいて信号発生測定装置6に超音波の送信を指示すると共に、受信信号を信号処理するためのゲートパルスを出力する。
【0031】
信号発生測定装置6は、インパルス波発信器61が出力したインパルス信号を、超音波探触部2の長焦点距離プローブ22に出力する。更に信号発生測定装置6は、超音波探触部2の長焦点距離プローブ22のエコー波(受信波)の受信信号をアンプ64で増幅したのち、A/D変換器65によってデジタル信号に変換する。信号処理部66は、タイミング制御部52から入力されたゲートパルスに基づいて、受信信号(デジタル信号)を信号処理し、映像処理表示装置5に出力する。
【0032】
映像処理表示装置5は、走査制御部51が取得した走査位置の情報と、信号発生測定装置6が信号処理した受信信号の情報に基づき、試料4の表面および内部欠陥構造に係る深度マップ53を作成する。ここで、試料4の表面および内部欠陥構造は、この試料4の観察位置である。試料4の観察位置に係る深度マップ53は、受信信号がエコーを捉えた時間の情報によるものである。
【0033】
図4は、高解像度プローブ23による本走査を示す概念図である。この本走査は、
図3に示す前走査に引き続いて実行される。ここでは、
図1と
図2を参照しつつ、超音波映像装置1による本走査の動作について説明する。
【0034】
走査制御部51は、超音波探触部2の焦点深度232が深度マップ53に係る観察位置を含むように、超音波探触部2を深度方向に可変させながら+Y方向にスキャンして、1ライン分の画素を取得する。走査制御部51は、超音波探触部2が+Y方向の端に位置していることを検知したならば、超音波探触部2を−X方向に所定ピッチだけ移動させたのち、超音波探触部2を深度方向に可変させながら−Y方向にスキャンして、1ライン分の画像を取得する。これを繰り返して、走査制御部51は、所定範囲の本走査を行う。
なお、本実施形態において、高解像度プローブ23と長焦点距離プローブ22とは、互いの相対的な空間座標位置だけ相違している。よって走査制御部51は、先ず高解像度プローブ23に係る水平位置を相対的な空間座標位置だけ補正する。次に、その水平位置に係る深度マップ53の観察位置を、高解像度プローブ23の焦点深度232が含むように、この高解像度プローブ23と試料4との距離を可変する。
【0035】
映像処理表示装置5のタイミング制御部52と走査制御部51は、超音波探触部2からX方向とY方向の走査位置情報を受け取り、走査位置情報と深度マップ53に基づいて超音波探触部2を深度方向(±Z方向)に可変させる。タイミング制御部52は更に、Y方向の走査位置情報に基づいて信号発生測定装置6に超音波の送信を指示すると共に、受信信号を信号処理するためのゲートパルスを出力する。
【0036】
信号発生測定装置6は、インパルス波発信器62が出力したインパルス信号を、超音波探触部2に出力する。更に信号発生測定装置6は、超音波探触部2の高解像度プローブ23のエコー波(受信波)の受信信号をアンプ64で増幅したのち、A/D変換器65によってデジタル信号に変換する。信号処理部66は、タイミング制御部52から入力されたゲートパルスに基づいて、受信信号(デジタル信号)を信号処理し、映像処理表示装置5に出力する。
【0037】
映像処理表示装置5は、走査制御部51が取得した走査位置の情報を画素位置とし、信号発生測定装置6が信号処理した受信信号の情報を画素の輝度や色の情報として、試料4の内部構造を画像化して表示する。試料4の内部を示す超音波画像は、受信信号の振幅情報によるものでも、受信信号が所定振幅以上になる時間の情報によるものでもよい。また、深度マップ53上に輝度情報などをマッピングして表示してもよい。
【0038】
図5は、長焦点距離プローブ22による試料4の表面エコーの波形図である。図の縦軸は、それぞれ長焦点距離プローブ22に印加される電圧を示している。図の横軸は、送信インパルスを基準としたタイミングを示している。この事例では、試料4の表面の傾斜が大きい場合を示している。
各グラフは、各走査位置において長焦点距離プローブ22に送信インパルスが印加され、試料4に向けて−Z方向に超音波が送信され、そのインパルスの反射波形を長焦点距離プローブ22が受信していることを示している。最上部に示した第1グラフから最下部に示した第5グラフまで順に、走査位置が水平移動し、かつ試料4の表面の位置が深くなる。
最上部に示した第1グラフでは、ゲート期間Tgかつ送信インパルスよりも時間T0の後の受信信号にインパルスが現れている。このとき試料4の表面は、長焦点距離プローブ22に近いが、この長焦点距離プローブ22の焦点深度の範囲内である。映像処理表示装置5は、時間T0を媒体内の音速で除算し、更に1/2を乗算することで、この走査位置に係る深度情報を算出する。
次に示した第2グラフは、ゲート期間Tgかつ送信インパルスよりも時間T1の後の受信信号にインパルスが現れている。このとき試料4の表面の位置は、長焦点距離プローブ22から遠ざかっており、かつ長焦点距離プローブ22の焦点深度の範囲内である。
【0039】
第3グラフは、ゲート期間Tgかつ送信インパルスよりも時間T2の後の受信信号にインパルスが現れている。このとき試料4の表面の位置は、長焦点距離プローブ22から遠ざかっており、かつ長焦点距離プローブ22の焦点深度の範囲内である。
その次に示した第4グラフは、ゲート期間Tgかつ送信インパルスよりも時間T3の後の受信信号にインパルスが現れている。このとき試料4の表面の位置は、長焦点距離プローブ22から遠ざかっており、かつ長焦点距離プローブ22の焦点深度の範囲内である。
最下部に示した第5グラフは、ゲート期間Tgかつ送信インパルスよりも時間T4の後の受信信号にインパルスが現れている。このとき試料4の表面は、長焦点距離プローブ22から遠ざかっており、かつ長焦点距離プローブ22の焦点深度の範囲内である。
図5に示すように、試料4の表面の傾斜が大きい場合であっても、長焦点距離プローブ22の焦点深度の範囲に収まるならば、ゲートを追従させて焦点を結ぶことができるので、深度マップ53を作成することができる。
【0040】
図6は、高解像度プローブ23による試料4の表面エコーの波形図である。図の縦軸は、それぞれ高解像度プローブ23に印加される電圧を示している。図の横軸は、送信インパルスを基準としたタイミングを示している。この事例では、試料4の表面の傾斜が大きい場合を示している。
各グラフは、各走査位置において高解像度プローブ23に送信インパルスが印加され、試料4に向けて−Z方向に超音波が送信され、そのインパルスの反射波形を高解像度プローブ23が受信していることを示している。最上部に示した第1グラフから最下部に示した第5グラフまで順に、走査位置が水平移動し、表面の位置が深くなると共に高解像度プローブ23は深さ方向(−Z方向)に移動している。
高解像度プローブ23は、自身の焦点深度が表面を含むように、深度方向に可変している。すなわち、走査制御部51は、高解像度プローブ23の送信インパルスと、そのインパルスの反射波形との時間間隔が時間Tcの近傍となるように、制御装置7を介してZ軸駆動装置83を制御している。
【0041】
最上部に示した第1グラフから、最下部に示した第5グラフまで、ゲート期間Tgかつ送信インパルスよりも時間Tcの後の受信信号にインパルスが現れている。このとき試料4の表面は、高解像度プローブ23の焦点深度232の範囲内である。この時間Tcは、高解像度プローブ23の先端から焦点深度232の中心までの距離の2倍を音速で除算した値である。
このように、高解像度プローブ23の深さ位置を調整することによって、観察対象である試料4の表面を高解像度で好適に観察することができる。
【0042】
図7は、傾斜した内部欠陥構造41を有する試料4の観察動作を示す図である。
破線矢印は、長焦点距離プローブ22を用いた前走査を示している。実線矢印は、高解像度プローブ23を用いた本走査を示している。
試料4の内部欠陥構造41は、斜めに傾いている。
長焦点距離プローブ22を用いた前走査では、この内部欠陥構造41の深度マップ53を生成している。前走査において、長焦点距離プローブ22は深さ方向に変化しない。
高解像度プローブ23を用いた本走査では、この内部欠陥構造41の超音波画像を生成している。本走査において、高解像度プローブ23は内部欠陥構造41との距離等を反映して次第に下がりながら移動する。
【0043】
図8は、傾斜した内部欠陥構造41を有する試料4に対する探触動作を示す拡大図である。
図8は、
図7に示す観察動作の詳細を示す図である。
図8は、高解像度プローブ23と試料4と内部欠陥構造41との位置関係を示している。試料4の上側は、媒体である水31で満たされている。高解像度プローブ23は、媒体である水31内において焦点距離が距離Dである。
図の左側において高解像度プローブ23は、試料4の内部欠陥構造41が焦点となるように位置している。高解像度プローブ23の先端は、試料4の内部欠陥構造41と、距離D1だけ離間している。高解像度プローブ23が送信した超音波は、試料4の表面で屈折するので、試料4の内部欠陥構造41との距離D1は、距離Dとは異なっている。
図の右側においても高解像度プローブ23は、試料4の内部欠陥構造41が焦点となるように位置している。高解像度プローブ23の先端は、試料4の内部欠陥構造41と、距離D2だけ離間している。
この内部欠陥構造41に追随するためには、長焦点距離プローブ22での前走査において試料4の表面に由来するエコーと内部欠陥構造41に由来するエコーとを捉え、試料4の音速を考慮して深度マップ53を生成する。試料4の表面と内部欠陥構造41とを焦点深度内に収められない場合は、試料4の表面に焦点を合わせた前走査と、内部欠陥構造41に焦点を合わせた前走査とを分けて実施することにより深度マップ53を生成してもよい。
【0044】
図9は、超音波映像装置1による観察処理を示すフローチャートである。
観察処理を開始すると、超音波映像装置1は、ステップS10の処理を開始する。
ステップS10において、映像処理表示装置5は、制御装置7と信号発生測定装置6によって、長焦点距離プローブ22の前走査を行う。
ステップS11において、映像処理表示装置5は、長焦点距離プローブ22の前走査を終了するか否かを判断する。映像処理表示装置5は、前走査を終了しないならば(No)、ステップS10の処理に戻り、前走査を終了するならば(Yes)、ステップS12の処理を行う。
【0045】
ステップS12において、映像処理表示装置5は、試料4の表面や、試料4の内部欠陥構造41に係る深度マップ53を作成する。
ステップS13において、映像処理表示装置5は、制御装置7によって、高解像度プローブ23の垂直方向(Z軸方向)の位置調整を行う。
ステップS14において、映像処理表示装置5は、制御装置7と信号発生測定装置6によって、高解像度プローブ23の本走査を行う。
ステップS15において、映像処理表示装置5は、高解像度プローブ23の本走査を終了するか否かを判断する。映像処理表示装置5は、本走査を終了しないならば(No)、ステップS13の処理に戻り、本走査を終了するならば(Yes)、ステップS16の処理を行う。
ステップS16において、映像処理表示装置5は、高解像度の画像を生成し、
図9の処理を終了する。
【0046】
図10は、深度マップ53を表示した図である。
図10に示すように、超音波映像装置1は、深度マップ53を三次元の斜視図として表示している。これにより超音波映像装置1は、試料4の内部欠陥構造41を三次元的に示すことができる。
【0047】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き替えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0048】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
本発明の変形例として、例えば、次の(a)〜(g)のようなものがある。
(a) 高解像度プローブ23と試料4の観察位置との間の距離の調整手段は、上記実施形態に限定されない。例えば、高解像度プローブ23のみを深さ方向に移動する調整手段であってもよく、または、水槽3や試料4などを深さ方向に移動する調整手段であってもよい。
【0049】
(b) 超音波探触部2は、3本以上のプローブを有し、前走査の結果に応じて本走査で使用すべき適切なプローブを選択するように構成してもよい。これにより、試料4の観察位置との間の距離に応じた適切なプローブを選択することができる。
(c) 超音波探触部2の長焦点距離プローブ22と高解像度プローブ23とは、互いの相対的な空間座標位置を切り替えて走査するように構成してもよい。これにより、深度マップ53における位置調整が不要となる。
(d) 超音波探触部2は、長焦点距離プローブ22と高解像度プローブ23のうちいずれか1つが装着され、かつ長焦点距離プローブ22と高解像度プローブ23とは超音波探触部2から取り外して交替可能に構成してもよい。
【0050】
(e) 超音波映像装置1は、観察位置の深度マップ53と高解像度プローブ23の走査結果とを組み合わせて表示手段に表示してもよい。
(f) 超音波映像装置1は、前走査における±Y方向の走査速度を、本走査における±Y方向の走査速度よりも速くしてもよい。
(g) 超音波映像装置1は、試料4のXY領域を前走査したのちに本走査することに限定されない。超音波映像装置1は例えば、試料4の1ライン領域を前走査したのちに、1ライン領域を本走査するように動作してもよく、また画素単位で前走査と本走査とを繰り返してもよく、限定されない。
【解決手段】超音波映像装置1は、焦点深度を切り替え可能な超音波探触部2と、超音波探触部2を平面方向に走査するX軸駆動装置81およびY軸駆動装置82と、超音波探触部2と試料4との間隔を可変するZ軸駆動装置83と、超音波探触部2の焦点深度を広く設定して走査することにより試料4の観察位置の深度マップ53を取得し、超音波探触部2の焦点深度を狭く設定し、かつ超音波探触部2の焦点深度が観察位置を含むように、Z軸駆動装置83により超音波探触部2と観察位置との距離を可変させながら超音波探触部2を走査する走査制御部51とを備える。