(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硬化性樹脂と、Cu(I)化合物と、コバルトおよびチタンから選択される遷移金属と、リン含有化合物と、窒素含有塩基と、ヒドロキシ官能性溶媒とを含む、予め促進された樹脂組成物。
第一の成分と第二の成分とを含む二成分組成物であって、前記第一の成分が請求項4から6のいずれか一項に記載の予め促進された樹脂組成物を含み、前記第二の成分がペルオキシドを含む、二成分組成物。
前記ペルオキシドが、有機ヒドロペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシカーボネートおよびペルオキシエステルからなる群から選択される、請求項7に記載の二成分組成物。
【背景技術】
【0002】
酸化還元系は、樹脂硬化に適用され得る。従来の酸化還元系は、酸化剤(例えば、ペルオキシド)および可溶性遷移金属イオンを促進剤として含む。促進剤は、より低い温度で酸化剤の活性を増大させ、その結果として、硬化速度を加速する働きをする。
【0003】
促進剤系は、硬化される樹脂に様々な手法で添加され得る。1つの方法は、ペルオキシドを添加する前に樹脂への個々の促進剤原料の添加を伴うものである。これは、ペルオキシド添加の直前、またはその数日もしくは数週間前に為され得る。後者の事例において、本発明者らは、樹脂および促進剤原料を含み、さらなる使用およびペルオキシドによる硬化まで貯蔵することができる、予め促進された樹脂組成物に言及する。もう1つの方法は、さらなる使用および樹脂への添加までその溶液を貯蔵することができる、促進剤原料を含有する促進剤溶液の予調製を伴うものである。予め促進された樹脂は、促進剤系の個々の原料を樹脂に添加することによって、または混和したこれらの原料を促進剤溶液の形態で添加することによってのいずれかで調製できる。
【0004】
典型的な促進剤系は、遷移金属塩または錯体を含む。この目的のために最も頻繁に使用される遷移金属は、コバルトである。しかしながら、法律制定には、その毒性を考慮し、コバルトの量の低減が必要である。
【0005】
最近の多くの特許公報は、Coフリーの促進剤系に関するものである。1つのそのような系は、Cu(I)およびCu(II)を含むCuに基づく系を開示している国際公開第2008/119783号パンフレットにおいて見ることができる。
【0006】
今や、そのようなCuベースの系の反応性は、Cu(I)、コバルトおよびチタンから選択される遷移金属ならびにリン含有化合物の併用によって改善され得ることが分かっている。さらに、この組み合わせは、予め促進された樹脂の調製を低ゲル・タイム・ドリフトで可能にすることが分かっている。ゲル・タイム・ドリフトは、予め促進された樹脂の保存期間安定性を反映するものである。ゲル・タイム・ドリフトは、その製造時に測定された元のゲルタイムと比較した、樹脂の測定されたゲルタイムにおける変化として定義される。ゲル・タイム・ドリフトは、典型的には、樹脂のゲルタイムにおける漸進的増大に関連し、経時的な促進剤の活性の損失に起因する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
Cu(I)化合物は、好ましくは、促進剤溶液中に、金属として決定して、少なくとも50mmol/l、より好ましくは少なくとも100mmol/lの量で存在する。該化合物は、好ましくは、促進剤溶液中に、5000mmol/l未満、より好ましくは2500mmol/l未満、最も好ましくは1000mmol/l未満の量で存在する。
Cu(I)化合物は、好ましくは、予め促進された樹脂中に、金属として決定して、少なくとも1mmol/kg樹脂、より好ましくは少なくとも2mmol/kg樹脂の量で存在する。該化合物は、好ましくは、50mmol/kg樹脂以下、より好ましくは25mmol/kg樹脂以下、最も好ましくは10mmol/kg樹脂以下の量で存在する。
【0012】
Cu(I)化合物に加えて、促進剤溶液または予め促進された樹脂は、コバルトおよびチタンからなる群から選択される別の遷移金属を含有する。
コバルトを、コバルトナフテネートまたはオクタノエート(2−エチルヘキサノエート)として溶液に添加することができる。
チタンを、チタン塩または錯体として溶液に添加することができる。適切な塩または錯体の例は、チタンイソプロポキシド、チタンビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド、チタンブトキシド、チタンtert−ブトキシド、チタンブトキシド、チタンクロライド、チタンブロマイド、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)、チタンジイソプロポキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、チタンエトキシド、チタン2−エチルヘキソイルオキシド、チタンメトキシド、チタンオキシアセチルアセトネート、チタンフタロシアニンジクロライド、チタンプロポキシド、チタン(テトラエタノールアミナト)イソプロポキシドおよびチタニルフタロシアニンである。
【0013】
任意の原子価(II〜IV)のチタンが使用され得る。
コバルトおよびチタンは、好ましくは、促進剤溶液中に、金属として決定して、少なくとも10mmol/l、より好ましくは少なくとも25mmol/lの量で存在する。これは、好ましくは、促進剤溶液中に、1000mmol/l未満、より好ましくは500mmol/l未満、最も好ましくは250mmol/l未満の量で存在する。
コバルトおよびチタンは、好ましくは、予め促進された樹脂中に、金属として決定して、少なくとも0.02mmol/kg樹脂、より好ましくは少なくとも0.10mmol/kg樹脂、さらに一層好ましくは少なくとも0.25mmol/kg樹脂、最も好ましくは0.50mmol/kg樹脂の量で存在する。これは、好ましくは、10mmol/kg樹脂以下、より好ましくは5mmol/kg樹脂以下、最も好ましくは2mmol/kg樹脂以下の量で存在する。
【0014】
Cu(I):Tiの重量比(金属重量に基づく)およびCu(I):Coの重量比(金属重量に基づく)は、好ましくは、3:1から200:1までの範囲である。
【0015】
リン含有化合物は、好ましくは有機リン含有化合物である。より好ましくは、有機リン含有化合物は、室温で液体である。最も好ましくは、式P(R)
3またはP(R)
3=Oを持つリン含有化合物[式中、各Rは、水素、1から10個の炭素原子を持つアルキルおよび1から10個の炭素原子を持つアルコキシ基から独立に選択される]である。好ましくは、少なくとも2個のR基は、アルコキシ基のいずれかのアルキル基から選択される。適切なリン含有化合物の具体例は、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート(TEP)、ジブチルホスファイトおよびトリエチルホスフェートである。
【0016】
促進剤溶液および予め促進された樹脂中に存在するのに適切な窒素含有塩基は、第三級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリンまたはN,N−ジメチル−p−トルジン(toludine)(DMPT)、ポリアミン、例えば1,2−(ジメチルアミン)エタン、第二級アミン、例えばジエチルアミン、エトキシ化アミン、例えばトリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミンまたはモノエタノールアミン、および芳香族アミン、例えばビピリジンである。
窒素含有塩基は、好ましくは、促進剤溶液中に5〜50wt%の量で存在する。予促進剤(pre-accelerator)樹脂中においては、好ましくは、0.5〜10g/kg樹脂の量で存在する。
【0017】
用語「ヒドロキシ官能性溶媒」は、式HO−(−CH
2−C(R
1)
2−(CH
2)
m−O−)
n−R
2の化合物[式中、各R
1は、水素、1から10個の炭素原子を持つアルキル基および1から10個の炭素原子を持つヒドロキシアルキル基からなる群から独立に選択され、n=1〜10であり、m=0または1であり、かつ、R
2は、水素、または1〜10個の炭素原子を持つアルキル基である]を含む。最も好ましくは、各R
1は、H、CH
3およびCH
2OHから独立に選択される。適切なヒドロキシ官能性溶媒の例は、グリコール、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびポリエチレングリコール、グリセロール、ならびにペンタエリスリトールである。
【0018】
ヒドロキシ官能性溶媒は、好ましくは、促進剤溶液中に、1〜50wt%、好ましくは5〜30wt%の量で存在する。予促進剤樹脂中においては、好ましくは、0.1〜100g/kg樹脂、好ましくは0.5〜60g/kg樹脂の量で存在する。
【0019】
本発明による促進剤溶液および予め促進された樹脂は、1つまたはそれ以上のプロモーター、水、還元剤、添加剤および/または充填剤を場合により含有し得る。
プロモーターには2つの重要な分類:金属炭酸塩および1,3−ジケトンがある。
1,3−ジケトンの例は、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトンおよびジベンゾイルメタン、ならびにアセトアセテート、例えばジエチルアセトアセトアミド、ジメチルアセトアセトアミド、ジプロピルアセトアセトアミド、ジブチルアセトアセトアミド、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、プロピルアセトアセテートおよびブチルアセトアセテートである。
適切な金属炭酸塩の例は、アンモニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の、2−エチルヘキサノエート、オクタノエート、ノナノエート、ヘプタノエート、ネオデカノエートおよびナフテネートである。好ましいアルカリ金属はKである。塩は、促進剤溶液または樹脂にそのまま添加してもよいし、インサイチュで形成してもよい。例えば、アルカリ金属2−エチルヘキサノエートは、溶液へのアルカリ金属ヒドロキシドおよび2−エチルヘキサン酸の添加後に、促進剤溶液中でインサイチュで調製され得る。
アセトアセテートは、特に好ましいプロモーターである。特に好ましいのは、ジエチルアセトアセトアミドである。
1つまたはそれ以上のプロモーターが促進剤溶液中に存在するならば、それらの量は、いずれも促進剤溶液の総重量に基づき、好ましくは少なくとも0.01wt%、より好ましくは少なくとも0.1wt%、さらに一層好ましくは少なくとも1wt%、より好ましくは少なくとも10wt%、最も好ましくは少なくとも20wt%;好ましくは90wt%以下、より好ましくは80wt%以下、最も好ましくは70wt%以下である。
【0020】
本発明による促進剤溶液は、追加の有機化合物、例えば脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、およびアルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アルコール、ホスフェートまたはカルボン酸基を担持する溶媒をさらに含み得る。適切な溶媒の例は、脂肪族炭化水素溶媒、例えばホワイトスピリットおよび無臭ミネラルスピリット(OMS)、芳香族炭化水素溶媒、例えばナフテンならびにナフテンおよびパラフィンの混合物、イソブタノール;ペンタノール;1,2−ジオキシム、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);2,2,4−トリメチルペンタンジオールジイソブチレート(TxIB);エステル、例えばジブチルマレエート、ジブチルスクシネート、エチルアセテート、ブチルアセテート、ケトグルタル酸のモノおよびジエステル、ピルベート、ならびにアスコルビン酸のエステル、例えばアスコルビン酸パルミテート;アルデヒド;モノおよびジエステル、より具体的にはジエチルマロネートおよびスクシネート;1,2−ジケトン、具体的にはジアセチルおよびグリオキサル;ベンジルアルコール、ならびに脂肪アルコールである。
【0021】
促進剤溶液および予め促進された樹脂は、還元剤をさらに含有し得る。還元剤の例は、アスコルビン酸、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)、還元糖、例えばグルコースおよびフルクトース、シュウ酸、ホスフィン、ホスファイト、有機または無機ニトライト、有機または無機スルファイト、有機または無機スルフィド、メルカプタン、およびアルデヒド、ならびにそれらの混合物である。本明細書においてその用語がL−アスコルビン酸およびD−イソアスコルビン酸を含むアスコルビン酸は、好ましい還元剤である。
還元剤が促進剤溶液中に存在するならば、0.1wt%超、好ましくは少なくとも1wt%、最も好ましくは少なくとも5%の量で存在する。還元剤は、いずれも促進剤溶液の総重量に基づき、30wt%未満、より好ましくは20wt%未満の量で存在する。
促進剤溶液は、水を場合により含み得る。存在するならば、溶液の水分含有量は、好ましくは少なくとも0.01wt%、より好ましくは少なくとも0.1wt%である。水分含有量は、いずれも促進剤溶液の総重量に基づき、好ましくは50wt%以下、より好ましくは40wt%以下、より好ましくは20wt%以下、さらに一層好ましくは10wt%以下、最も好ましくは5wt%以下である。
促進剤溶液は、場合により中間加熱および/または混合工程を加え、原料を単純に混合することによって調製できる。
予め促進された樹脂は、種々の手法で:個々の原料を樹脂と混合することによって、または任意選択の単量体を含む樹脂を本発明による促進剤溶液と混合することによって調製できる。後者の方法が好ましい。
【0022】
本発明による促進剤溶液を使用して硬化させるのに、かつ予め促進された樹脂組成物中に存在するのに適切な樹脂は、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル(UP)樹脂、ビニルエステル樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、およびそれらの混合物を含む。好ましい樹脂は、(メタ)アクリレート樹脂、UP樹脂およびビニルエステル樹脂である。本願の文脈において、用語「不飽和ポリエステル樹脂」および「UP樹脂」は、不飽和ポリエステル樹脂およびエチレン系不飽和単量体化合物の組み合わせを指す。用語「(メタ)アクリレート樹脂」は、アクリレートまたはメタクリレート樹脂およびエチレン系不飽和単量体化合物の組み合わせを指す。上記で定義された通りのUP樹脂およびアクリレート樹脂は普及しており、市販されている。硬化は、概して、本発明による促進剤溶液および開始剤(ペルオキシド)を樹脂に添加することによって、またはペルオキシドを予め促進された樹脂に添加することによってのいずれかで開始される。
本発明のプロセスによって硬化する適切なUP樹脂は、いわゆるオルソ樹脂、イソ樹脂、iso−npg樹脂およびジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂である。そのような樹脂の例は、マレイン酸、フマル酸、アリル、ビニルおよびエポキシ系樹脂、ビスフェノールA樹脂、テレフタル酸樹脂、ならびにハイブリッド樹脂である。
ビニルエステル樹脂は、例えばメタクリレート、ジアクリレート、ジメタクリレートおよびそれらのオリゴマーに基づくアクリレート樹脂を含む。
アクリレート樹脂は、アクリレート、メタクリレート、ジアクリレートおよびジメタクリレート、ならびにそれらのオリゴマーを含む。
【0023】
エチレン系不飽和単量体化合物の例は、スチレンおよびスチレン誘導体、例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ジビニルベンゼン、ビニルピロリドン、ビニルシロキサン、ビニルカプロラクタム、スチルベンだけでなく、ジアリルフタレート、ジベンジリデンアセトン、アリルベンゼン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、(メタ)アクリル酸、ジアクリレート、ジメタクリレート、アクリルアミド;ビニルアセテート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、光学的用途に使用されるアリル化合物(例えば(ジ)エチレングリコールジアリルカーボネート)、クロロスチレン、tert−ブチルスチレン、tert−ブチルアクリレート、ブタンジオールジメタクリレートおよびそれらの混合物も含む。(メタ)アクリレート反応性希釈剤の適切な例は、PEG200ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよびその異性体、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PPG250ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(ビス)マレイミド、(ビス)シトラコンイミド、(ビス)イタコンイミド、ならびにそれらの混合物である。
予め促進された樹脂中におけるエチレン系不飽和単量体の量は、樹脂の重量に基づき、好ましくは少なくとも0.1wt%、より好ましくは少なくとも1wt%、最も好ましくは少なくとも5wt%である。エチレン系不飽和単量体の量は、好ましくは50wt%以下、より好ましくは40wt%以下、最も好ましくは35wt%以下である。
【0024】
促進剤溶液が、樹脂を硬化させるため、または予め促進された樹脂を調製するために使用されるならば、促進剤溶液は概して、樹脂の重量に基づき、少なくとも0.01wt%、好ましくは少なくとも0.1wt%、好ましくは5wt%以下、より好ましくは3wt%以下の促進剤溶液の量で用いられる。
【0025】
樹脂を硬化させるのに適切であり、かつ二成分組成物の第二の成分中に存在するのに適切であるペルオキシドは、無機ペルオキシドおよび有機ペルオキシド、例えば従来使用されるケトンペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアリールペルオキシド、ジアルキルペルオキシドおよびペルオキシジカーボネートだけでなく、ペルオキシカーボネート、ペルオキシケタール、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシドおよび過酸化水素も含む。好ましいペルオキシドは、有機ヒドロペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシエステルおよびペルオキシカーボネートである。さらに一層好ましいのは、ヒドロペルオキシドおよびケトンペルオキシドである。好ましいヒドロペルオキシドは、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシドおよびピネンヒドロペルオキシドを含む。好ましいケトンペルオキシドは、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソプロピルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドおよびアセチルアセトンペルオキシドを含む。
当然ながら、2つまたはそれ以上のペルオキシドの混合物;例えば、ヒドロペルオキシドまたはケトンペルオキシドとペルオキシエステルとの組み合わせを使用してもよい。
特に好ましいペルオキシドは、メチルエチルケトンペルオキシドである。当業者であれば、これらのペルオキシドを、従来の添加剤、例えば充填剤、ピメント(piments)および鈍感剤と組み合わせてよいことを理解するであろう。鈍感剤の例は、親水性エステルおよび炭化水素溶媒である。樹脂を硬化させるために使用されるペルオキシドの量は、好ましくは少なくとも0.1phr(per hundred resin;樹脂100重量部に対する配合量)、より好ましくは少なくとも0.5phr、最も好ましくは少なくとも1phrである。ペルオキシドの量は、好ましくは8phr以下、より好ましくは5phr以下、最も好ましくは2phr以下である。
【0026】
ペルオキシドを予め促進された樹脂と混合する場合、ペルオキシドを樹脂と促進剤溶液との予混合物に添加するか、または樹脂と予混合し、その後これに促進剤溶液を添加する。得られた混合物を混合し、分散させる。硬化プロセスは、開始剤系、促進剤系、硬化速度を適合させる化合物、および硬化される樹脂組成物に応じて、−15℃から最大250℃までの任意の温度で行われ得る。好ましくは、該プロセスは、用途、例えばハンドレイアップ、スプレイアップ、フィラメントワインディング、樹脂トランスファー成形、コーティング(例えば、ゲルコートおよび標準的なコーティング)、ボタン製作、遠心鋳造、波板または平面パネル、床裏装系(relining systems)、鋳込み化合物によるキッチンシンク等において一般的に使用される周囲温度で行われる。しかしながら、該プロセスは、SMC、BMC、引き抜き成形技術等において使用されることもあり、それには、最大180℃、より好ましくは最大150℃、最も好ましくは最大100℃の温度が使用される。
【0027】
本発明による硬化プロセスにおいて、他の任意選択の添加剤、例えば充填剤、ガラス繊維、顔料、阻害剤およびプロモーターが用いられ得る。
【0028】
硬化樹脂は、海洋用途、化学的固着、屋根葺き、建築、床裏装、パイプおよびタンク、フローリング、風車の羽根等を含む種々の用途における使用が見出されている。
【実施例】
【0029】
実施例1
2つのCu(I)含有促進剤溶液を調製し、相違点は少量のCoであった。Coは、コバルト(II)2−エチルヘキサノエートを10wt%Co(金属として)の量で含む0.045wt%(促進剤溶液の重量に基づく)の市販の促進剤NL−53(旧AkzoNobel)を添加することによって添加した。
溶液の原料を表1に挙げる。
【0030】
これらの促進剤溶液−0.5phr(樹脂100重量部に対する配合量)−を1.5phrメチルエチルケトンペルオキシド(Butanox(登録商標)M50、旧AkzoNobel)とともに使用して、オルソフタル酸ベースの不飽和ポリエステル樹脂(Palatal(登録商標)P6、旧DSM Resin)を、20℃で硬化させた。
米国プラスチック産業協会の方法(SPI法F/77.1;Akzo Nobel Polymer Chemicalsから入手可能)によって硬化性能を分析した。この方法は、ピーク発熱、行過時間およびゲルタイムを測定することを伴う。この方法に従って、100部の樹脂、1.5部のペルオキシドおよび0.5部の促進剤溶液を含む25gの混合物を試験管に注ぎ入れ、管の中心にある筐体を経由して熱電対を入れた。次いで、20℃に維持した気候制御された部屋にガラス管を入れ、時間−温度曲線を測定した。曲線から、下記のパラメータを算出した。
ゲルタイム(Gt)=実験の開始から浴温が5.6℃超となるまでの間に経過した時間(単位:分)
行過時間(TTP)=実験の開始からピーク温度に到達する瞬間までの間に経過した時間
ピーク発熱(PE)=到達される最高温度
【0031】
結果を表1に表示し、これは促進剤NL−53(0.045phr)のみを使用した参照実験も含んでいる。
【表1】
【0032】
実施例2
100phr Palatal(登録商標)P6を、0.03wt% Ti(IV)イソプロポキシドを追加で含有する実験2の1phrの促進剤溶液で予め促進させた。
予め促進された樹脂のゲルタイムを、上記で説明した通り、SPI測定により、10gの樹脂および2phr メチルイソプロピルケトンペルオキシド(Butanox(登録商標)P50、旧AkzoNobel)を使用して、8週間モニターした。以下の表2に示す通り、ゲル・タイム・ドリフトは全くまたはごくわずかしか観察されなかった。
【表2】