(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764264
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】硫化金属精鉱の浸出方法
(51)【国際特許分類】
C22B 19/20 20060101AFI20150730BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
C22B19/20 101
C22B3/04
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-539374(P2014-539374)
(86)(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公表番号】特表2014-534346(P2014-534346A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】FI2012051087
(87)【国際公開番号】WO2013068645
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2014年5月16日
(31)【優先権主張番号】20116104
(32)【優先日】2011年11月8日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】507221324
【氏名又は名称】オウトテック オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOTEC OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】ハアカナ、 ティモ
(72)【発明者】
【氏名】サクセン、 ビヨルン
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特表平10−507232(JP,A)
【文献】
米国特許第04125588(US,A)
【文献】
特表2004−536964(JP,A)
【文献】
特開平11−236630(JP,A)
【文献】
特開昭63−166935(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/071021(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 19/20
C22B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸出工程から高温の水蒸気を含有する排ガスを外に送り出し、前記浸出工程に高温に加熱した酸性溶液を送り込む、金属の湿式冶金製造における浸出工程で硫化金属精鉱を浸出する方法において、前記浸出工程からの排ガスを前記酸性溶液に直接触れさせることによって該酸性溶液を高温になるまで加熱することを特徴とする硫化金属精鉱の浸出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記酸性溶液を液滴として前記排ガスに供給することによって前記酸性溶液を加熱し、前記排ガスは連続相として存在することを特徴とする浸出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記排ガスおよび前記酸性溶液が流れに逆らって移動する装置内で、液粒を形成するノズルを介して前記酸性溶液を前記排ガスに噴霧することを特徴とする浸出方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の方法において、前記排ガスおよび前記酸性溶液をエジェクタまたはベンチュリ技術を用いて相互に接触させることを特徴とする浸出方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記酸性溶液中に前記排ガスを散布して前記酸性溶液を加熱し、該酸性溶液は連続相として存在することを特徴とする浸出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記排ガスを硫酸溶液中に散布することを特徴とする浸出方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法において、前記浸出工程での排ガス中の水蒸気の温度は100℃であることを特徴とする浸出方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法において、前記排ガスを用いて前記酸性溶液を50〜80℃に加熱することを特徴とする浸出方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の方法において、前記金属は亜鉛であり、前記酸性溶液は硫酸であることを特徴とする浸出方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の方法において、前記酸性溶液は電気分解で得られた戻り酸であることを特徴とする浸出方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の方法において、該方法は、高温の水蒸気を含む排ガスを送り出す少なくとも1つの低酸浸出段階、およびその後に続く、高温に加熱された酸性溶液が送り込まれる少なくとも1つの高酸浸出段階における浸出処理を含み、前記低酸浸出段階から出る排ガスを前記高酸浸出段階に送られる前記酸性溶液に直接接触させることによって、該酸性溶液を前記高酸浸出段階へ送る前に高温に加熱することを特徴とする浸出方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の方法に関するものである。
【0002】
金属の湿式冶金製造において、浸出工程での硫化金属精鉱の浸出方法は従来技術としてよく知られている。高温の水蒸気を含む排ガスは、浸出工程から送り出される。一方、高温になるまで熱せられた酸性溶液が当該工程に送り込まれる。こういった方法は、例えば、フィンランド特許公報第FI 100806 B号、国際公開第WO 2004/076698 A1号、ならびに論文「Outotec Direct Leaching application in China」(T.ハアカナ、B.サクセン、L.レウティネン、H.タカラ、M.ラウティネン、K.スヴェンス、M.ルオナラ、シャオ・ミン著、Lead&Zinc 2008、鉛および亜鉛処理に関する国際シンポジウム、南アフリカ共和国ダーバン、2008年2月25〜29日)および「Zinc Plant Expansion by Outotec Direct Leaching Process」(M.ラウティネン、K.スヴェンス、T.ハアカナ、L.レウティネン著、亜鉛および鉛冶金学;L.セントモ、M.J.コリンズ、J.ハルラモフスおよびJ.リウ編集、カナダ鉱業・冶金・石油学会(COM2008)、カナダ国ウィニペグ、2008年、第167〜178ページの亜鉛の直接浸出に関する記載)により公知である。また、銅の浸出方法がフィンランド特許公報第FI 121713 B号により公知である。ニッケルの浸出方法は、ニッケルラテライト鉱石の浸出に関するフィンランド特許公報第FI 121180 B号にて公知である。
【0003】
硫化金属精鉱の浸出では、硫化物の浸出工程で発熱反応が起こり、多量の熱が発生する。この熱は、高温の水蒸気を含む排ガスによって浸出段階から取り除かれる。排ガスは、多量のエネルギーを約100℃の水蒸気という形で運び去る。通常、排ガスはガス浄化装置を介して大気中に送られる。これに対し、浸出工程に供給される酸性溶液は、石油、天然ガスまたはその他同様の外部加熱エネルギー源によって発生する蒸気を使って加熱されるため、設備投資費用ならびに外部加熱エネルギーおよび二酸化炭素の放出に関するエネルギー費が大きくかさむ。
【0004】
本発明は、上述の欠点を改善することを目的とする。
【0005】
本発明は特に、硫化金属精鉱の浸出時に起きる発熱反応によって工程で発生する排ガスに含まれる高温の水蒸気が包含する熱エネルギーを利用して、工程に送られる酸性溶液を加熱することを可能とする方法を開示することを目的とする。
【0006】
さらに本発明は、工程に送られる酸性溶液の加熱に必要な外部エネルギーおよびエネルギー費を大幅に削減できる方法を開示し、エネルギー効率を向上させ、工程で発生する二酸化炭素を低減させることを目的とする。
【発明の概要】
【0007】
本発明に係る方法は、請求項1に記載される事項を特徴とする。
【0008】
本発明によれば、浸出段階からの排ガスを酸性溶液に直接接触させることによって、酸性溶液を高温になるまで加熱する。
【0009】
排ガスに含まれる高温の水蒸気の熱は、排ガスを酸性溶液に直接接触させることによって回収される。そのため、排ガスに含まれる硫黄含有化合物が冷表面上に増加するという問題が起こり得る、間接的な熱伝達で動作する従来型の熱交換器は用をなさないか不要となる。本発明の利点は、硫黄含有化合物に起因する問題が生じないことである。排ガスを酸性溶液に直接接触させると、排ガスに含まれる高温の水蒸気は液体とガスの平衡状態に応じてガスよりも冷たい酸性溶液の表面で凝縮する。凝縮の程度は、例えば各相の平衡状態や相間界面の表面積に応じて決まる。水分が凝縮するため酸性溶液は多少薄くなるものの、それはごく僅かであり、工程に影響するほどではない。本発明はさらに、排ガスに含まれる高温の水蒸気が包含する熱エネルギーを回収することで、工程に送られる酸性溶液の加熱に要する外部エネルギーを大幅に低減でき、それによりエネルギー費を削減できるため、工程におけるエネルギー効率が向上し、なおかつ二酸化炭素の排出を削減できるという利点を有する。本発明は、どのような硫化金属精鉱の浸出に対しても適用可能である。
【0010】
本方法の一実施形態において、酸性溶液を液滴として高温の排ガスに供給することで酸性溶液を加熱し、排ガスは連続相として存在する。酸性溶液を液滴状で排ガスに噴霧することで熱伝達面を大きくでき、熱伝達の効率を高めることができる。
【0011】
本方法の一実施形態において、排ガスおよび酸性溶液が流れに逆らって動く装置内で、液滴を形成するノズルを介して酸性溶液を排ガスに噴霧する。
【0012】
本方法の一実施形態において、排ガスおよび酸性溶液をエジェクタまたはベンチュリ技術を用いて相互に接触させる。
【0013】
本方法の一実施形態において、排ガスを酸性溶液中に散布して酸性溶液を加熱し、酸性溶液は連続相として存在する。
【0014】
本方法の一実施形態において、排ガスを硫酸溶液中に散布する。
【0015】
本方法の一実施形態において、浸出段階の排ガス中の水蒸気の温度は約100℃である。
【0016】
本方法の一実施形態において、排ガスを使用して酸性溶液を約50〜80℃に加熱する。
【0017】
本方法の一実施形態において、浸出される金属は亜鉛であり、酸は硫酸溶液である。
【0018】
本方法の一実施形態において、加熱される酸性溶液は電気分解によって得られる戻り酸である。
【0019】
本方法の一実施形態において、本方法は、高温の水蒸気を含む排ガスを送り出す少なくとも1つの低酸浸出段階、およびそれに続く、高温に加熱された酸性溶液が送り込まれる少なくとも1つの高酸浸出段階における浸出処理を含む。低酸浸出段階で発生した排ガスを高酸浸出段階に送られる酸性溶液に直接接触させることによって、酸性溶液は高酸浸出段階に送られる前に高温に加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下の段落で、本発明について実施例を用い、添付の図面を参照しながら詳細に述べる。
【
図1】本発明に係る方法の第1の実施形態を活用した工程または工程の一部のブロック図を示す。
【
図2】本発明に係る方法の第2の実施形態のブロック図を示す。
【0021】
図1は、湿式冶金の浸出工程において硫化金属精鉱を浸出する方法を示す。
【0022】
金属精鉱の浸出工程では、硫化金属精鉱を溶液の沸点(〜100℃)に近い大気圧の酸性および酸化条件下で浸出させる。酸性および酸化条件下における金属硫化物の溶解は発熱反応系であるため、多量のエネルギーを発生させる。簡単に言うと、反応は以下のように表すことができる。
【0023】
三価鉄(第二鉄)によって金属硫化物が酸化され、
MeS
(s)+Fe
2(SO
4)
3→MeSO
4+2FeSO
4+S
o
ここで、Meは、Zn、Fe、Cu、Co、Ni、Cd、Pbなどである。
【0024】
金属硫化物の酸化によって生成される二価鉄(第一鉄)は、酸素ガスおよび硫酸によって酸化されて、三価となり、
2FeSO
4+H
2SO
4+0.5O
2→Fe
2(SO
4)
3+H
2O
【0025】
また、上述の反応は反応全体として全体的に書き出すこともでき、
MeS
(s)+H
2SO
4+0.5O
2→MeSO
4+H
2O+S
o
となる。
【0026】
浸出工程にはスラリー形成段階1が含まれ、本段階に粉末またはスラリー形態の金属精鉱および高温になるまで加熱された酸性溶液を供給し、スラリー形成段階1では金属精鉱を酸性溶液中に散布して懸濁液を形成する。スラリー形成段階1から、精鉱および酸性溶液の懸濁液はさらに浸出段階2へと送られる。浸出段階2では、発熱反応が起きる。発熱反応によって発生した熱が水を蒸発させ、蒸発した水は高温の水蒸気となって排ガスとともに浸出段階2から抜け出る。この排ガスや水蒸気は熱回収段階3に送られ、酸性溶液をスラリー形成段階1に送る前に加熱する。浸出段階2の排ガスの一部は熱回収段階3に送られ、別の一部の排ガスは回収段階3を通り越してガス洗浄装置に直接送られる。ガス流の分散は、浸出段階2における温度測定に基づいて制御されてもよい。熱回収段階3では、浸出段階における排ガスを酸性溶液に直接接触させることによって、酸性溶液を高温になるまで加熱する。
【0027】
排ガスの酸性溶液への直接的な接触は、多様な方法でもたらされ得る。酸性溶液および排ガスの熱伝達領域を大きくするために、液体を液滴状にしてガスに注入するか、あるいはガスを液体中に散布してもよい。連続相は、状況に応じてガスまたは液体のいずれかでよい。
【0028】
例えば、酸性溶液を液滴状で高温の排ガスに供給してもよく、この場合には排ガスは連続相として存在する。例えば排ガスおよび酸性溶液が流れに逆らって移動する装置においては、酸性溶液を、液滴を形成するノズルを介して排ガスに噴霧してもよい。また、排ガスおよび酸性溶液をエジェクタまたはベンチュリ技術を用いて相互に接触させることも可能である。さらには、排ガスを酸性溶液中に散布して酸性溶液を加熱することも可能であり、この場合には酸性溶液は連続相として存在する。
【0029】
図2は、硫化金属精鉱の浸出工程の一例として、出願人が開発した、向流原理によりもたらされる亜鉛精鉱直接浸出工程(Outotec(登録商標) Zinc Direct Leaching Process)を示す。本発明に係る同方法は、前述の工程に適応するものである。
【0030】
図2の方法はスラリー形成段階4を含み、本段階に粉末またはスラリー形態の硫化亜鉛精鉱および高温に加熱した酸性溶液を供給する。スラリー形成段階4では、亜鉛精鉱を酸性溶液中に散布して懸濁液を形成する。スラリー形成段階4から、酸性溶液と亜鉛精鉱の懸濁液は低酸浸出段階5に送られ、段階5には酸素が供給される。低酸浸出段階5にてほとんどが溶解し、さらに発熱反応により大量の熱が発生する。反応によって生じた熱は水を蒸発させ、蒸発した水は約100℃の高温の水蒸気となって排ガスとともに低酸浸出段階5から排出される。
【0031】
本発明に従い、この排ガスは廃棄せずに熱回収段階6に送り、電解工程で得られる戻り酸を高酸浸出段階7に送る前に加熱する。電気分解は40℃未満の温度で行われるため、電解によって得られる戻り酸の温度は約35℃である。低酸浸出段階5の後、懸濁液は第1の濃化段階8に送られるが、同段階8では低酸浸出工程が継続され、濃化したスラリーは段階8から高酸浸出段階7に送られる。高酸浸出段階7で発生した排ガスも熱回収段階6に送られる。熱回収段階6では、浸出段階で出た排ガスを戻り酸溶液に直接触れさせて酸性溶液を高温に加熱する。熱回収段階6から、排ガスはガス洗浄装置を介して大気中に排出される。熱回収段階6では、必要に応じ、排ガスを使って戻り酸を約50〜80℃、
図2に例示する工程では好ましくは65℃に加熱してもよい。
【0032】
熱回収段階6において、酸性溶液を例えば液滴状で高温の排ガス中に供給してもよく、この場合に排ガスは連続相として存在する。例えば、排ガスおよび酸性溶液が流れに逆らって移動する装置においては、酸性溶液を、液滴を形成するノズルを介して排ガスに噴霧してもよい。また、排ガスおよび酸性溶液をエジェクタまたはベンチュリ技術を用いて相互に接触させることも可能である。さらには、排ガスを酸性溶液中に散布して酸性溶液を加熱することも可能であり、この場合に酸性溶液は連続相として存在する。
【0033】
高酸浸出段階7から、酸性溶液は浮遊硫黄を除去する浮遊選鉱段階9に送られる。浮遊選鉱段階9から、酸性溶液および非浮遊片はさらに第2の濃化段階10に送られ、そこで鉛、銀、ジャロサイト、および石膏が酸性溶液から分離される。濃化段階10から排出された酸性溶液は、スラリー形成段階4に戻される前に蒸気で加熱される。
【0034】
低酸および高酸の浸出段階5および7から出る排ガスを使用して熱回収段階6にて戻り酸を加熱するのに加え、高酸浸出段階7に送られる戻り酸をさらに熱交換段階11にて加熱する。段階11では、戻り酸は外部のエネルギー源を使って加熱する。低酸および高酸浸出段階から出る排ガスを使用して戻り酸を加熱するため、熱交換段階11で必要となる外部エネルギー源によって生じる蒸気の量は従来に比べ大幅に少ない。
【0035】
本発明は上述の例示する実施態様のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲により定義される発明の範囲において多様な変更が可能である。