特許第5764269号(P5764269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5764269超音波スケーラー用チップおよび超音波スケーラー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5764269
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】超音波スケーラー用チップおよび超音波スケーラー
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/20 20060101AFI20150730BHJP
   A61C 3/03 20060101ALI20150730BHJP
   A46B 15/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   A61C17/20
   A61C3/03
   A46B15/00 M
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-504437(P2015-504437)
(86)(22)【出願日】2014年5月8日
(86)【国際出願番号】JP2014062314
【審査請求日】2015年2月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595159264
【氏名又は名称】菅野 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】菅野 稔
(72)【発明者】
【氏名】菅野 太郎
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−75602(JP,A)
【文献】 特開2001−299699(JP,A)
【文献】 特開2002−45379(JP,A)
【文献】 特開2009−119118(JP,A)
【文献】 特開昭56−083339(JP,A)
【文献】 特開平1−212547(JP,A)
【文献】 実開昭59−36317(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/20
A61C 3/03
A46B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌する所定波長領域の光の光源を有する超音波スケーラー本体に取り付けて使用するための超音波スケーラー用チップであって、
チップ本体と、光ファイバーとを有し、
前記チップ本体は管状であって先端開口と後端開口とを有し、超音波スケーラー本体に取付け可能な後端を有し、中間に湾曲部を有し、
前記光ファイバーは前記チップ本体の最小の内径より細く、前記光源の光を入射可能な後端を有し、前記チップ本体の前記後端開口から前記先端開口まで挿入され、前記チップ本体の超音波振動により先端が振動するよう中間部が前記湾曲部に接触しており、可撓性を有して前記光ファイバーの先端が振動幅が大きくなるよう前記先端開口から突出していることを、
特徴とする超音波スケーラー用チップ。
【請求項2】
前記チップ本体は面対称の外形を有し、歯周ポケットに挿入可能な先端部を有し、前記先端部の外面に長さ方向に沿って伸び、前記チップ本体の対称面に対して垂直方向に突出する1対の突出部を有することを、
特徴とする請求項1記載の超音波スケーラー用チップ。
【請求項3】
請求項1または2記載の超音波スケーラー用チップを有する超音波スケーラーであって、
超音波スケーラー本体と、液体供給手段と、超音波発生手段と、光源とを有し、
前記超音波スケーラー本体は、前記液体供給手段と前記超音波発生手段と前記光源とを収納し、前記超音波スケーラー用チップの前記後端に取り付けられ、
前記液体供給手段は、前記チップ本体の前記後端開口に液体を供給して前記先端開口から放出可能に設けられ、
前記超音波発生手段は超音波を発生して前記チップ本体を超音波振動させるよう設けられ、
前記光源は前記光ファイバーの後端に殺菌する所定波長領域の光を入射させるよう設けられていることを、
特徴とする超音波スケーラー。
【請求項4】
請求項2記載の超音波スケーラー用チップを有し、前記超音波発生手段は前記チップ本体を前記突出部の長さ方向に対して垂直かつ突出方向に対して垂直の方向に超音波振動させる構成を有することを、
特徴とする請求項4記載の超音波スケーラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波スケーラー用チップおよび超音波スケーラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波振動子により発生する超音波振動をプローブの先端部に伝えて歯石の粉砕を行い、液供給手段により供給される消毒用液をプローブ先端部から歯部へ供給し、供給された消毒溶液に対して光源装置からの光をライトガイドにより導光して照射することによりヒドロキシラジカルを発生させて殺菌を行なう超音波スケーラーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−235979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の超音波スケーラーでは、ヒドロキシラジカルを発生させて殺菌を行うため、ライトガイドの光を歯石除去部に照射する。しかし、プローブの先端開口は細いため、さらに細いライトガイドの光が照射される範囲は狭く、ヒドロキシラジカルが発生する範囲が限られて、殺菌効果を十分に発揮できないという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、殺菌効果が高い超音波スケーラー用チップおよび超音波スケーラーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る超音波スケーラー用チップは、殺菌する所定波長領域の光の光源を有する超音波スケーラー本体に取り付けて使用するための超音波スケーラー用チップであって、チップ本体と、光ファイバーとを有し、前記チップ本体は管状であって先端開口と後端開口とを有し、超音波スケーラー本体に取付け可能な後端を有し、中間に湾曲部を有し、前記光ファイバーは前記チップ本体の最小の内径より細く、前記光源の光を入射可能な後端を有し、前記チップ本体の前記後端開口から前記先端開口まで挿入され、前記チップ本体の超音波振動により先端が振動するよう中間部が前記湾曲部に接触しており、可撓性を有して前記光ファイバーの先端が振動幅が大きくなるよう前記先端開口から突出していることを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る超音波スケーラー用チップは、後端を超音波スケーラー本体に取り付けて使用される。チップ本体は、歯周ポケットの内部の歯石を超音波振動により粉砕除去する。光ファイバーは、チップ本体の超音波振動により先端が振動し、振動する範囲で、殺菌する光を照射する。このため、光ファイバーは、チップ本体に固定されている場合に比べて、広い範囲に光を照射することができ、殺菌効果を高めることができる。光ファイバーは中間部がチップ本体の湾曲部に接触しているため、チップ本体の超音波振動が光ファイバーに確実に伝導される。
【0008】
殺菌する所定波長領域の光には、波長400nm〜420nmの光が好ましい。光ファイバーによる光の照射は、殺菌効果を高めるため、過酸化水素水または次亜塩素酸の存在下で行われることが好ましい。チップ本体の湾曲部には、光ファイバーの接触する位置に曲面状の突起を有していてもよい。この場合、光ファイバーが突起に当たったり突起から外れたりして、その振動幅が大きくなり、光の照射範囲、すなわち殺菌範囲をより広くすることができる。
【0009】
本発明に係る超音波スケーラー用チップで、前記チップ本体は面対称の外形を有し、歯周ポケットに挿入可能な先端部を有し、前記先端部の外面に長さ方向に沿って伸び、前記チップ本体の対称面に対して垂直方向に突出する1対の突出部を有することが好ましい。この場合、突出部により歯石を効果的に粉砕除去することができる。
光ファイバーの先端は、前記先端開口から突出している。このため、光ファイバーの先端の振動幅が大きくなり、光の照射範囲、すなわち殺菌範囲をより広くすることができる。
【0010】
本発明に係る超音波スケーラーは、前記超音波スケーラー用チップを有する超音波スケーラーであって、超音波スケーラー本体と、液体供給手段と、超音波発生手段と、光源とを有し、前記超音波スケーラー本体は、前記液体供給手段と前記超音波発生手段と前記光源とを収納し、前記超音波スケーラー用チップの前記後端開口に取り付けられ、前記液体供給手段は、前記チップ本体の前記後端開口に液体を供給して前記先端開口から放出可能に設けられ、前記超音波発生手段は超音波を発生して前記チップ本体を超音波振動させるよう設けられ、前記光源は前記光ファイバーの後端に殺菌する所定波長領域の光を入射させるよう設けられていることを、特徴とする。
【0011】
本発明に係る超音波スケーラーは、超音波発生手段によりチップ本体を超音波振動させて、チップ本体により歯周ポケットの内部の歯石を超音波振動で粉砕除去する。光ファイバーは、チップ本体の超音波振動により先端が振動し、振動する範囲で、光源からの殺菌する光を照射する。このため、光ファイバーは、チップ本体に固定されている場合に比べて、広い範囲に光を照射し殺菌することができる。光ファイバーは、中間部がチップ本体の湾曲部に接触することにより、チップ本体の超音波振動を確実に伝導される。液体供給手段により、チップ本体の先端開口から液体を放出する。液体に消毒液を用いることより、歯石除去とともに消毒を行うことができる。特に、光源の光を波長400nm〜420nmの光とし、液体供給手段により供給される液体を3質量%以下の濃度の過酸化水素水または次亜塩素酸とすることにより、安全に殺菌効果を高めることができる。
【0012】
本発明に係る超音波スケーラーは、チップ本体の先端部の外面に突出部を有する前述の超音波スケーラー用チップを有し、前記超音波発生手段は前記チップ本体を前記突出部の長さ方向に対して垂直かつ突出方向に対して垂直の方向に超音波振動させる構成を有することが好ましい。この場合、チップ本体の超音波振動方向に合わせて突出部で歯石を効果的に粉砕除去することができる。
【0013】
本発明に係る歯ブラシは、ハンドルとヘッドとブラシとを有し、前記ヘッドは内部に、波長400〜420nmの光を照射するLEDを有し、前記ハンドルの端部に設けられ、前記ブラシは光ファイバーから成り、前記LEDの光を入射し、入射した光を先端から出射するよう前記ヘッドに設けられていることを、特徴とする。
【0014】
本発明に係る歯ブラシは、ハンドルを握って歯磨きする際、光ファイバーから成るブラシの先端から波長400〜420nmの光を照射することができる。3質量%以下の濃度の過酸化水素水または次亜塩素酸を口に含んで歯磨きすることにより、光の照射箇所でヒドロキシラジカルを発生させ、殺菌することができる。波長400〜420nmの光は、紫外線に比べて、口内への影響が小さく、安全に殺菌することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、殺菌効果が高い超音波スケーラー用チップおよび超音波スケーラーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態の超音波スケーラー用チップを示す側面図である。
図2図1に示す超音波スケーラー用チップの先端部の拡大平面図である。
図3】本発明の実施の形態の超音波スケーラーの構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の超音波スケーラー用チップを示し、図2はその先端部を示している。図3は、その超音波スケーラー用チップを有する超音波スケーラーを示している。
【0018】
図3に示すように、超音波スケーラーは、超音波スケーラー用チップ1と、超音波スケーラー本体2と、液体供給手段3と、超音波発生手段4と、光源5と、電源6と、スイッチ7とを有している。
【0019】
図1に示すように、超音波スケーラー用チップ1は、チップ本体11と、光ファイバー12とを有している。チップ本体11は、管状であって先端開口13と後端開口14とを有している。チップ本体11は、超音波スケーラー本体2に取付け可能な後端15を有し、中間に湾曲部16を有している。
チップ本体11は後端15にファイバーアダプター17が取り付けられている。チップ本体11は、面対称の外形を有し、歯周ポケットに挿入可能な細い先端部1aを有している。図2に示すように、チップ本体11は、先端部1aの外面に長さ方向に沿って伸び、チップ本体11の対称面に対して垂直方向に突出する1対のフィン状の突出部18を有している。
【0020】
光ファイバー12は、チップ本体11の最小の内径より細く、光源5の光を入射可能な後端15を有している。光ファイバー12は、可撓性を有し、チップ本体11の後端開口14に取り付けられたファイバーアダプター17から先端開口13まで挿入されている。光ファイバー12は、チップ本体11の先端開口13でチップ本体11との間に周囲に隙間をあけて配置されている。光ファイバー12は、チップ本体11の超音波振動により先端が振動するよう中間部が湾曲部16に接触している。
【0021】
超音波スケーラー本体2は、液体供給手段3と超音波発生手段4と光源5とを収納している。超音波スケーラー本体2は、先端が超音波スケーラー用チップ1の後端15に取り付けられている。液体供給手段3は、超音波スケーラー本体2の外部の液体タンク31の内部に収容された液体を、チップ本体11の後端開口14に供給して先端開口13から放出可能に設けられている。液体には、3質量%以下の濃度の過酸化水素水または次亜塩素酸が好適に用いられる。
【0022】
超音波発生手段4は、超音波を発生してチップ本体11を超音波振動させるよう設けられている。超音波発生手段4は、チップ本体11を突出部18の長さ方向に対して垂直かつ突出方向に対して垂直の方向(図1の矢印方向)に超音波振動させる構成を有している。
光源5は、LEDから成り、光ファイバー12の後端15に、殺菌する所定波長領域の光を、レンズ19を介してレーザー光で入射させるよう設けられている。光源5が照射する光は、波長400〜420nmの光である。
電源6は、100V電源から成り、液体供給手段3と超音波発生手段4と光源5とに駆動または発光する電力を供給するよう接続されている。電源6は、スイッチ7の操作によりオン・オフを切換え可能である。
【0023】
次に、作用について説明する。
本発明に係る超音波スケーラーは、歯科治療で使用され、チップ本体11の先端部1aを歯周ポケットに挿入して使用される。スイッチ7をオンにしたとき、超音波発生手段4によりチップ本体11を超音波振動させて、チップ本体11により歯周ポケットの内部の歯石を超音波振動で粉砕除去する。超音波発生手段4は、チップ本体11を突出部18の長さ方向に対して垂直かつ突出方向に対して垂直の方向に超音波振動させるため、チップ本体11の超音波振動方向に合わせて突出部18で歯石を効果的に粉砕除去することができる。
【0024】
光ファイバー12は、チップ本体11の超音波振動により先端が振動し、振動する範囲で、光源5からの殺菌する光を照射する。このため、光ファイバー12は、チップ本体11に固定されている場合に比べて、広い範囲に光を照射することができ、殺菌効果を高めることができる。光ファイバー12は中間部がチップ本体11の湾曲部16に接触しているため、チップ本体11の超音波振動が光ファイバー12に確実に伝導される。液体供給手段3により、チップ本体11の先端開口13から歯周ポケット内に液体を放出すれば、歯石除去とともに消毒を行うことができる。光源5の波長400nm〜420nmの光は、3質量%以下の過酸化水素水または次亜塩素酸と反応してヒドロキシラジカルを発生させる。これにより、人体に対して安全に殺菌することができ、歯周病菌の増殖を抑制することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 超音波スケーラー用チップ
1a 先端部
2 超音波スケーラー本体
3 液体供給手段
4 超音波発生手段
5 光源
6 電源
7 スイッチ
11 チップ本体
12 光ファイバー
13 先端開口
14 後端開口
16 湾曲部
18 突出部
【要約】
【課題】殺菌効果が高い超音波スケーラー用チップおよび超音波スケーラーを提供する。口内への影響が少ない歯ブラシを提供する。
【解決手段】超音波スケーラー用チップ1はチップ本体11と光ファイバー12とを有する。チップ本体11は管状であって先端開口と後端開口とを有し、超音波スケーラー本体2に取付け可能な後端を有し、中間に湾曲部16を有する。光ファイバー12はチップ本体11の最小の内径より細く、光源の光を入射可能な後端を有する。光ファイバー12はチップ本体11の後端開口から先端開口まで挿入され、チップ本体11の超音波振動により先端が振動するよう中間部が湾曲部16に接触している。超音波スケーラー本体2は液体供給手段と超音波発生手段と光源とを収納し、超音波スケーラー用チップ1の後端に取り付けられる。光源は光ファイバー12の後端に殺菌する所定波長領域の光を入射させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4