特許第5764291号(P5764291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5764291テトラフルオロプロペンおよびペンタフルオロプロペンを製造するための触媒製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764291
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】テトラフルオロプロペンおよびペンタフルオロプロペンを製造するための触媒製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20150730BHJP
   B01J 27/132 20060101ALI20150730BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20150730BHJP
   B01J 37/26 20060101ALI20150730BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20150730BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20150730BHJP
   C07C 21/185 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C07C17/25
   B01J27/132 Z
   B01J35/10 301G
   B01J35/10 301J
   B01J37/26
   C07B61/00 300
   C07C21/18
   C07C21/185
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2009-519495(P2009-519495)
(86)(22)【出願日】2007年7月11日
(65)【公表番号】特表2009-542812(P2009-542812A)
(43)【公表日】2009年12月3日
(86)【国際出願番号】US2007015751
(87)【国際公開番号】WO2008008350
(87)【国際公開日】20080117
【審査請求日】2010年7月6日
【審判番号】不服2013-13744(P2013-13744/J1)
【審判請求日】2013年7月18日
(31)【優先権主張番号】60/830,939
(32)【優先日】2006年7月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・ジョウゼフ・ナッパ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリユル・ノット・マリカルジュナ・ラオ
【合議体】
【審判長】 井上 雅博
【審判官】 木村 敏康
【審判官】 佐藤 健史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−114537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1,1,1,2,2,3−ヘキサフルオロプロパンを、100ppm未満のアルカリ金属を含有する表面積が40〜55m2/gmの酸化クロムをHF、CCl3Fまたはハイドロフルオロカーボンで処理することにより得られたオキシフッ化クロム触媒と、リアクタにおいて接触させて、Z−HFC−1225yeおよびE−HFC−1225yeを含む1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンを含む生成混合物を得る工程と、(b)該1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンを、該生成混合物から回収する工程とを含む方法。
【請求項2】
接触が、200℃〜500℃の温度で実施される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リアクタに、酸素を含むガスも供給される請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ハイドロフルオロカーボンのオキシフッ化クロム触媒の脱フッ化水素化により、ハイドロフルオロオレフィンを製造する方法に関する。特に、本開示は、ハイドロフルオロプロパンのオキシフッ化クロム触媒の脱フッ化水素化により、ハイドロフルオロプロペンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンを破壊するクロロフルオロカーボン(CFC)およびハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)を段階的に全廃するモントリオール議定書により、業界では、過去数十年にわたって、代替冷媒を見出す取り組みがなされてきた。大半の冷媒製造業者の解決策は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒の製品化であった。新たなハイドロフルオロカーボン冷媒、現時点で最も広く使われているHFC−134aは、オゾン層破壊係数がゼロであるため、モントリオール議定書により現在規制されている段階的全廃に影響されない。溶剤、発泡剤、洗浄剤、エアロゾル推進剤、熱移動媒体、誘電体、消火剤および動力サイクル作動流体等の用途の他のハイドロフルオロカーボンの製造も、かなり関心がもたれている。
【0003】
モバイル空調市場で、温暖化係数の減じた新たな冷媒を開発することにも関心が集まっている。
【0004】
テトラフルオロプロペンおよびペンタフルオロプロペンは、両方共、オゾン層破壊係数がゼロで、温暖化係数が低く、見込みのある冷媒と認識されてきた。欧州特許出願EP第726243号明細書には、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)の脱フッ化水素化による1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFC−1225ye)の製造方法が開示されている。脱フッ化水素化は、三価酸化クロムまたは部分フッ化三価酸化クロム触媒の存在下、気相でなされる。
【0005】
テトラフルオロプロペンおよびペンタフルオロプロペン生成のための新たな製造方法が必要とされている。
【0006】
HFC−1225yeは、異なる温度で沸騰する2つの立体配置異性体EまたはZの1つとして存在する。Z異性体は、冷媒として好ましいと認識されてきた。このように、高Z/E比を有するHFC−1225ye生成のための製造方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
HFC−1225yeを生成する方法が提供される。この方法には、(a)1,1,1,2,2,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236cb)およびHFC−236eaからなる群から選択される少なくとも1つのヘキサフルオロプロパンを、オキシフッ化クロム触媒と、リアクタにおいて接触させて、Z−HFC−1225yeおよびE−HFC−1225yeを含むHFC−1225yeを含む生成混合物を得る工程と、(b)前記HFC−1225yeを、前記生成混合物から回収する工程とが含まれる。
【0008】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)を生成する方法も提供される。この方法には、(a)1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)を、オキシフッ化クロム触媒と、リアクタにおいて接触させて、HFC−1234zeを含む生成混合物を得る工程と、(b)前記HFC−1234zeを、前記生成混合物から回収する工程とが含まれる。
【0009】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234yf)を生成する方法も提供される。この方法には、(a)1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)を、オキシフッ化クロム触媒と、リアクタにおいて接触させて、HFC−1234yfを含む生成混合物を得る工程と、(b)前記HFC−1234yfを、前記生成混合物から回収する工程とが含まれる。
【0010】
以上の概要および以下の詳細な説明は、あくまで例示および説明のためのものであり、添付の特許請求の範囲に定義される本発明を限定しない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施形態の詳細の前に、用語をいくつか定義または明瞭にする。
【0012】
HFC−1225yeは、2つの立体配置異性体EまたはZの1つとして存在する。本明細書で用いるHFC−1225yeとは、異性体、E−HFC−1225ye(CAS登録番号5595−10−8)またはZ−HFC−1225ye(CAS登録番号5528−43−8)およびかかる異性体の組み合わせまたは混合物を指す。
【0013】
HFC−1234zeは、2つの立体配置異性体EまたはZの1つとして存在する。本明細書で用いるHFC−1234zeとは、異性体、E−HFC−1234zeまたはZ−HFC−1234zeおよびかかる異性体の組み合わせまたは混合物を指す。
【0014】
「ヘキサフルオロプロパン」という用語は、式Cで表わされる部分フッ化プロパンを意味する。本発明の一実施形態において、ヘキサフルオロプロパンは、HFC−236cbおよびHFC−236eaからなる群から選択される。
【0015】
「オキシフッ化クロム触媒」という用語は、式Cr(式中、x+y/2=3)により表わされるオキシフッ化クロムを意味する。
【0016】
「アモルファス」という用語は、対象となる固体のX線回折パターンに実質的なピークがないことを意味する。
【0017】
本明細書で用いる「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「持つ」、「持っている」という用語またはこれらのその他の変形は、非排他的な包含をカバーするものである。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明らかにリストされていない、またはかかるプロセス、方法、物品または装置に固有のその他の要素を含む。さらに、相反する記載が特にない限り、「または」とは、包含的なまたはであり、排他的なまたはではない。例えば、条件AまたはBとは、以下のいずれか1つを満たすものである。Aが真(または存在する)かつBは偽(または存在しない)、Aは偽(または存在しない)かつBは真(または存在する)、およびAとBの両方が真(または存在する)である。
【0018】
同様に、単数形は、本明細書に記載した要素および成分を説明するのに用いられる。これは、単に、便宜上であり、本発明の範囲の一般的な意味を与えるためである。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むと考えるものとし、複数でないことを意味することが明らかでない限り、単数には複数も含まれる。
【0019】
特に他に定義されていない限り、本明細書で用いる全ての技術および科学用語は、本発明の属する当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を持つ。本明細書に記載したものと同様または等価の方法および材料を、本発明の実施形態の実施または試験に用いることができるが、好適な方法および材料について後述する。文献、特許出願、特許およびその他の本明細書に記載のその他の参考文献は、特に断りのない限り、その全内容が参照により組み込まれる。矛盾がある場合には、定義を含めた本明細書が優先される。さらに、材料、方法および例は、あくまで例示のためのものであり、限定しようとするものではない。
【0020】
オキシフッ化クロム触媒は、Crを、HF、CClFまたはハイドロフルオロカーボンで処理することにより製造することができる。本発明の一実施形態において、オキシフッ化クロム触媒は、乾燥したCrを、CClFまたはHF等のフッ化剤で処理することにより製造される。この処理は、実施例1に記載されているように、Crを好適な容器(脱フッ化水素化反応を実施するのに用いるリアクタ)に入れた後、HFを乾燥したCrに、好適な時間(例えば、約15〜300分)にわたって、好適な温度(例えば、約200℃〜450℃)で通すことにより行うことができる。
【0021】
本発明の他の実施形態において、オキシフッ化クロム触媒は、Crを、ハイドロフルオロカーボンで、高温で処理することにより製造される。
【0022】
本発明の他の実施形態において、オキシフッ化クロム触媒は、イン・サイチュで製造される。例えば、反応剤HFC−236cb、HFC−236ea、HFC−245faまたはHFC−245cbを、リアクタにおいて、Crと共に加熱することにより、オキシフッ化クロム触媒の形成に用いることができる。
【0023】
Crは、エンゲルハード社(Engelhard Corporation)(101ウッドアベニュー(Wood Avenue)、P.O.Box770、イセリン(Iselin)、NJ08830−0770)より市販されている。
【0024】
Crはまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,036,036号明細書に開示された二クロム酸アンモニウムの熱分解により製造することもできる。
【0025】
Crはまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,828,818号明細書に開示された、酸化クロム(VI)と、メタノール等の還元剤との反応により製造することもできる。
【0026】
Crはまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,258,500号明細書に開示された、酸化クロム(VI)と、エタノール等の好適な還元剤との反応により製造することもできる。
【0027】
Cr中のカリウムおよびその他のアルカリ金属の量は、米国特許第5,036,036号明細書に開示された水洗浄工程により減じることができる。
【0028】
本発明の一実施形態において、オキシフッ化クロム触媒の表面積は、約20m/g〜約500m/gである。
【0029】
本発明の他の実施形態において、オキシフッ化クロム触媒の表面積は、約40m/g〜約350m/gである。
【0030】
本発明の他の実施形態において、オキシフッ化クロム触媒の表面積は、約60m/g〜約300m/gである。
【0031】
本発明の他の実施形態において、オキシフッ化クロム触媒の表面積は、約100m/g〜約300m/gである。
【0032】
本発明の一実施形態において、オキシフッ化クロム触媒は、約2000ppm以下のアルカリ金属含量を有する。
【0033】
本発明の一実施形態において、オキシフッ化クロム触媒は、約300ppm以下のアルカリ金属含量を有する。
【0034】
本発明の他の実施形態において、オキシフッ化クロム触媒は、約100ppm以下のアルカリ金属含量を有する。
【0035】
本発明の一実施形態において、オキシフッ化クロム触媒は、アモルファスである。
【0036】
本発明の他の実施形態において、オキシフッ化クロム触媒は、結晶α−Crから製造される。
【0037】
HFC−1225yeを生成する方法が提供される。この方法には、(a)1,1,1,2,2,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236cb)およびHFC−236eaからなる群から選択される少なくとも1つのヘキサフルオロプロパンを、オキシフッ化クロム触媒と、リアクタにおいて接触させて、HFC−1225yeを含む生成混合物を得る工程と、(b)前記HFC−1225yeを、前記生成混合物から回収する工程とが含まれる。
【0038】
本発明の一実施形態において、生成混合物中のZ−HFC−1225ye対E−HFC−1225yeのモル比は、少なくとも6.0である。
【0039】
本発明の他の実施形態において、生成混合物中のZ−HFC−1225ye対E−HFC−1225yeのモル比は、少なくとも7.0である。
【0040】
本発明の他の実施形態において、生成混合物中のZ−HFC−1225ye対E−HFC−1225yeのモル比は、少なくとも8.0である。
【0041】
本発明の一実施形態において、生成混合物中に存在するHFC−1225yeは、生成混合物の他の成分および未反応出発材料から、分別蒸留により分離される。HFも生成混合物中に存在するときは、この分離には、HFC−1225yeおよびHFの共沸混合物または近共沸混合物の単離および更なる処理により、HFを含まないHFC−1225yeを生成することが含まれる。これは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0106263A1号明細書に開示されているのと同様の手順を用いてなされる。
【0042】
2005年11月1日出願で、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第60/732041号明細書には、Z−HFC−1225yeおよびHFの共沸混合物または近共沸混合物が開示されている。
【0043】
未反応出発材料は、追加のHFC−1225yeを生成するために、リアクタに再循環させることができる。本発明の一実施形態において、HFC−236cbおよび/またはHFC−236eaは、分別蒸留により生成混合物から再生され、リアクタに再循環される。
【0044】
HFC−1234zeを生成する方法も提供される。この方法には、(a)HFC−245faを、オキシフッ化クロム触媒と、リアクタにおいて接触させて、HFC−1234zeを含む生成混合物を得る工程と、(b)前記HFC−1234zeを、前記生成混合物から回収する工程とが含まれる。
【0045】
本発明の一実施形態において、生成混合物中に存在するHFC−1234zeは、生成混合物の他の成分および未反応出発材料から、分別蒸留により分離される。HFも生成混合物中に存在するときは、この分離には、HFC−1234zeおよびHFの共沸混合物または近共沸混合物の単離および更なる処理により、HFを含まないHFC−1234zeを生成することが含まれる。これは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0106263A1号明細書に開示されているのと同様の手順を用いてなされる。
【0046】
2005年11月1日出願で、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第60/732397号明細書には、HFC−1234zeおよびHFのE−異性体の共沸混合物または近共沸混合物が開示されている。2006年6月27日出願で、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第60/816650号明細書には、HFC−1234zeのZ−異性体およびHFの共沸混合物または近共沸混合物が開示されている。
【0047】
未反応出発材料は、追加のHFC−1234zeを生成するために、リアクタに再循環させることができる。本発明の一実施形態において、HFC−245faは、分別蒸留により生成混合物から再生され、リアクタに再循環される。
【0048】
HFC−1234yfを生成する方法も提供される。この方法には、(a)HFC−245cbを、オキシフッ化クロム触媒と、リアクタにおいて接触させて、HFC−1234yfを含む生成混合物を得る工程と、(b)前記HFC−1234yfを、前記生成混合物から回収する工程とが含まれる。
【0049】
本発明の一実施形態において、生成混合物中に存在するHFC−1234yfは、生成混合物の他の成分および未反応出発材料から、分別蒸留により分離される。HFも生成混合物中に存在するときは、この分離には、HFC−1234yfおよびHFの共沸混合物または近共沸混合物の単離および更なる処理により、HFを含まないHFC−1234yfを生成することが含まれる。これは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0106263A1号明細書に開示されているのと同様の手順を用いてなされる。
【0050】
2005年11月1日出願で、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第60/732321号明細書には、HFC−1234yfおよびHFの共沸混合物または近共沸混合物が開示されている。
【0051】
未反応出発材料は、追加のHFC−1234yfを生成するために、リアクタに再循環させることができる。本発明の一実施形態において、HFC−245cbは、分別蒸留により生成混合物から再生され、リアクタに再循環される。
【0052】
多くの態様および実施形態について説明してきたが、これらは単なる例示にすぎず、限定されない。本明細書を読めば、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様および実施形態が可能であることが分かる。
【0053】
実施形態の1つ以上の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0054】
上記の反応プロセスで用いる温度は、典型的に、約200℃〜500℃である。本発明の一実施形態において、上記の反応プロセスで用いる温度は、約300℃〜400℃である。
【0055】
上記のプロセスの反応時間は重要ではなく、典型的に、約1秒〜約1000秒である。本発明の一実施形態において、反応温度は、約5秒〜約100秒である。
【0056】
上記のプロセスの反応圧力は、減圧、大気圧または加圧とすることができる。本発明の一実施形態において、反応圧力は、大気圧近傍である。
【0057】
任意で、上記のプロセスの反応は、酸素を存在させて行うことができる。本発明の一実施形態において、上記のプロセスの反応は、空気を存在させて行われる。本発明の他の実施形態において、空気は、反応剤と共に、リアクタに供給される。
【0058】
任意で、上記のプロセスの反応は、窒素、ヘリウム、アルゴンまたはこれらの混合物等の不活性ガスを存在させて行うことができる。本発明の一実施形態において、不活性ガスは、反応剤と共に、リアクタに供給される。本発明の他の実施形態において、不活性ガスは、窒素である。
【0059】
本発明の実施形態のプロセスを適用するのに用いられるリアクタ、蒸留カラムおよびそれに関連した供給ライン、流出物ラインおよび関連のユニットは、耐食性の材料で構築されていなければならない。典型的な構築材料としては、ステンレス鋼、特に、オーステナイトタイプのもの、周知の高ニッケル合金、例えば、モネル(Monel)(商標)ニッケル−銅合金、ハステロイ(Hastelloy)(商標)ニッケル系合金およびインコネル(Inconel)(商標)ニッケル−クロム合金および銅張り鋼が挙げられる。
【実施例】
【0060】
本明細書に記載した概念を、以下の実施例によりさらに説明する。これらは、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない。
【0061】
実施例1
実施例1は、オキシフッ化クロム触媒を製造する方法を示すものである。実施例1ではまた、HFC−1225yeを高Z/E比で生成した。実施例1ではさらに、オキシフッ化クロム触媒の活性を、空気処理により回復できることも示されている。
【0062】
酸化クロムは、米国特許第5,036,036号明細書に記載した二クロム酸アンモニウムの熱分解により製造した。100ppm未満のアルカリ金属を含有する酸化クロムは、アルファ酸化クロム構造を有しており、表面積は40〜55m/gmであった。
【0063】
インコネル(Inconel)管(外径5/8インチ)を、5cc(7.18gm)の酸化クロムペレットで充填し、粉砕し、12/20メッシュの篩にかけた。酸化クロムを200℃で、15分間、N(50sccm、8.33×10−7/s)でパージして加熱した。次に、温度を、10分間にわたって325℃まで、20分間にわたって400℃まで上げてから、35分間にわたって300℃まで下げた。温度は、35分間にわたってN(35sccm、5.83×10−7/s)およびHF(12sccm、2.00×10−7/s)を流しながら、60分間にわたって325℃まで上げた。この流れを維持しながら、温度を60分間にわたって350℃まで、90分間にわたって375℃まで、30分間にわたって400℃まで、40分間にわたって425℃まで上げた。425℃に温度を維持しながら、20分間にわたってNの流れを25sccm(4.17×10−7/s)まで下げ、HFを20sccm(3.33×10−7/s)まで上げた。次に、20分間にわたってNの流れを15sccm(2.50×10−7/s)まで減じ、HFを28sccm(4.67×10−7/s)まで上げた。次に、20分間にわたってNの流れを5sccm(8.33×10−8/s)まで減じ、HFを36sccm(6.00×10−7/s)まで上げた。
【0064】
HF処理後、管温度を348℃まで下げ、HFC−236cbを、21.1sccm(3.52×10−7/s)で、Nを5.00sccm(8.33×10−8/s)で管に流した。HFC−236cbと触媒との接触時間は、30秒である。生成混合物をGC−MSにより分析した。分析結果を、以下の表1にGC面積%の単位で示した。GC面積%が0.5未満の少量の他の生成物は、表1には含まれない。26時間後、性能の低下があった。触媒を空気で処理することにより、触媒の活性は、元の活性まで戻った。以下の表1において、26時間の実施時間後、管中で触媒を空気で処理した。触媒を、管中でHFにより再活性化した。空気処理およびHF再活性化中は、実施時間の計数を停止し、HFC−236cbを再び流したときに、再開した。
【0065】
【表1】
【0066】
空気処理を表2に示す。空気および窒素の流れは、sccmである。
【0067】
【表2】
【0068】
上記の空気処理後、後述するとおり、触媒をHFで再活性化した。
【0069】
触媒を200℃で、15分間、N(50sccm、8.33×10−7/s)でパージして加熱した。次に、温度を、10分間にわたって325℃まで、20分間にわたって400℃まで上げてから、35分間にわたって300℃まで下げた。温度は、35分間にわたってN(35sccm、5.83×10−7/s)およびHF(12sccm、2.00×10−7/s)を流しながら、60分間にわたって325℃まで上げた。この流れを維持しながら、温度を60分間にわたって350℃まで、90分間にわたって375℃まで、30分間にわたって400℃まで、40分間にわたって425℃まで上げた。20分間にわたってNの流れを25sccm(4.17×10−7/s)まで下げ、HFを20sccm(3.33×10−7/s)まで上げた。次に、20分間にわたってNの流れを15sccm(2.50×10−7/s)まで減じ、HFを28sccm(4.67×10−7/s)まで上げた。次に、20分間にわたってNの流れを5sccm(8.33×10−8/s)まで減じ、HFを36sccm(6.00×10−7/s)まで上げた。
【0070】
実施例2(比較)
実施例2は、後述するとおりにして製造したオキシフッ化クロム触媒が、実施例1のものほど有効ではないことを示すものである。
【0071】
この実施例のCrは、ギネグリーン(Guignet’s Green)としても知られている六方晶系酸化クロムの水和物の形態であった。高レベルのアルカリ金属(Na、3400ppm、K、150ppm)およびB(1.4%)、Ca(0.5%)、Fe(0.2%)、Mg(0.1%)およびBa、Mn、VおよびZnを含有していた。このCrの表面積は、100〜150m/gmであった。
【0072】
インコネル(Inconel)管(外径5/8インチ)を、13cc(10.32gm)の酸化クロムペレットで充填し、粉砕し、12/20メッシュの篩にかけた。触媒を200℃で、15分間、N(50sccm、8.33×10−7/s)でパージして加熱した。次に、温度を、10分間にわたって325℃まで、20分間にわたって400℃まで上げてから、35分間にわたって300℃まで下げた。温度は、35分間にわたってN(35sccm、5.83×10−7/s)およびHF(12sccm、2.00×10−7/s)を流しながら、60分間にわたって325℃まで上げた。この流れを維持しながら、温度を60分間にわたって350℃まで、90分間にわたって375℃まで、30分間にわたって400℃まで、40分間にわたって425℃まで上げた。20分間にわたってNの流れを25sccm(4.17×10−7/s)まで下げ、HFを20sccm(3.33×10−7/s)まで上げた。次に、20分間にわたってNの流れを15sccm(2.50×10−7/s)まで減じ、HFを28sccm(4.67×10−7/s)まで上げた。次に、20分間にわたってNの流れを5sccm(8.33×10−8/s)まで減じ、HFを36sccm(6.00×10−7/s)まで上げた。
【0073】
HF処理後、管温度を373℃まで下げ、HFC−236cbを、13.0sccm(2.17×10−7/s)で管に流した。HFC−236cbと触媒との接触時間は、60秒である。生成混合物をGC−MSにより分析した。分析結果を、以下の表3にGC面積%の単位で示した。GC面積%が0.5未満の少量の他の生成物は、表3には含まれない。
【0074】
【表3】
【0075】
概要または実施例において上述した操作の全てが必要なわけではなく、特定の操作の一部は必要ない場合もあり、記載したものに加えて、1つまたはそれ以上のさらなる操作を実施する場合もあることに留意されたい。さらに、操作をリストした順番は、必ずしも、実施する順番とは限らない。
【0076】
前述の明細書において、概念を、具体的な実施形態を参照して説明してきた。しかしながら、当業者であれば、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を行えることが分かる。従って、明細書および図面は、限定する意味でなく、例示とみなすべきであり、かかる修正は全て、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0077】
利点、その他の長所および問題解決策を、具体的な実施形態に関して上述してきた。しかしながら、利点、長所または解決策が生じるか、またはより顕著となる利点、長所、問題解決策は、特許請求の範囲の重大な、必要な、または必須の構成とは解釈されないものとする。
【0078】
明瞭にするために別個の実施形態の文脈で本明細書に記載された特定の特徴は、単一の実施形態において、組み合わせて提供されてもよいものと考えられる。反対に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載された様々な特徴は、別個に、または任意の下位の組み合わせで提供されてもよい。さらに、範囲で記載した値には、その範囲内のそれぞれの全ての値が含まれる。