特許第5764303号(P5764303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764303
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】車両コンピューティングモジュール
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/18 20060101AFI20150730BHJP
   G06F 11/30 20060101ALI20150730BHJP
   G06F 3/00 20060101ALI20150730BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   G06F1/18 J
   G06F1/18 E
   G06F1/18 G
   G06F11/30 305E
   G06F3/00 A
   G06F1/20 C
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2010-128350(P2010-128350)
(22)【出願日】2010年6月3日
(65)【公開番号】特開2010-287229(P2010-287229A)
(43)【公開日】2010年12月24日
【審査請求日】2013年5月31日
(31)【優先権主張番号】09007617.5
(32)【優先日】2009年6月9日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504147933
【氏名又は名称】ハーマン ベッカー オートモーティブ システムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター クラフト
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エルフォルス
【審査官】 野村 和史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−235333(JP,A)
【文献】 特開2001−145233(JP,A)
【文献】 特開平08−056063(JP,A)
【文献】 特開平09−207626(JP,A)
【文献】 特開2003−011741(JP,A)
【文献】 特表平11−507751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/18
G06F 1/20
G06F 3/00
G06F 11/30
B60R 16/02
H05K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両コンピューティングシステム(200)のメインボード(204)に接続されるように適合された車両コンピューティングモジュールであって、
伝導経路を有する回路基板(120)と、
該回路基板(120)に取り付けられたコンピューティング構成部品であって、少なくとも中央処理ユニット(102)とメインメモリ(103)とを含む、コンピューティング構成部品と、
該回路基板(120)の縁に提供されたエッジコネクタ(101)であって、該回路基板を該メインボード(204)のエッジコネクタソケット(201)に接続するように適合されている、エッジコネクタと、
該コンピューティングモジュール(100)とインターフェイスするために、該エッジコネクタ(101)によって提供される複数のインターフェイス(105)と
を含み、
該車両コンピューティングモジュール(100)は、該車両コンピューティングシステム(200)のメインコンピューティングユニットとして車両の中で動作されることと、該車両コンピューティングシステム(200)のために、データの処理を実行することとを行うように適合されており、該データは、該インターフェイス(105)を介して該車両コンピューティングモジュールによって受け取られ、
該複数のインターフェイス(105)は、該車両コンピューティングモジュール(100)の該中央処理ユニット(102)のタイプに依存して該メインボード(204)のコントローラ(202)によって適合されるように構成され
該コントローラ(202)は、ブート機構を含み、
該インターフェイスは、該エッジコネクタ(101)のピン配列を変更することなく異なるタイプの中央処理ユニット(102)を支持するように構成されるDebug and Boot Portインターフェイス(108)を含む、車両コンピューティングモジュール。
【請求項2】
前記インターフェイスは、Peripheral Component Interconnect Expressインターフェイス、Universal Serial Busインターフェイス、Serial Advanced Technology Attachmentインターフェイス、Secure Digital Input Outputインターフェイス、Low−voltage differential signalingインターフェイス、universal asynchronous receiver/transmitterインターフェイスおよび電源制御インターフェイスのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項3】
前記エッジコネクタ(101)によって提供される前記Debug and Boot
Portインターフェイス(108)は、前記中央処理ユニット(102)によって提供される対応するインターフェイスに直接に接続される、請求項1または2に記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項4】
前記Debug and Boot Portインターフェイス(108)は、前記エッジコネクタの少なくとも4本のピンを使用する、請求項1、2または3に記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項5】
前記コンピューティング構成部品および前記伝導経路を含む前記回路基板は、車両の内部での動作のための所定の仕様を満たすように適合されている、請求項1〜のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項6】
前記回路基板(120)は、1つ以上のボールグリッド領域を含み、該回路基板は、該ボールグリッド領域とは異なる回路基板の領域において、トレースとパッド、ビアとパッド、パッドとパッドの距離が200μmより大きいように構成される、請求項1〜のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項7】
前記回路基板(120)は、少なくとも100μmの列幅を有するハンダマスクを含む、請求項1〜のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項8】
前記コンピューティング構成部品および前記回路基板は、前記コンピューティングモジュール(100)の前記動作を、−40℃から70℃の温度範囲内で可能にするように適合されている、請求項1〜のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項9】
前記車両コンピューティングモジュール(100)は、前記コンピューティングシステムのハウジングに接続されるように適合されたモジュールカバー(110)を含み、該モジュールカバー(110)が、該モジュールカバーに結合されたコンピューティング構成部品に対する熱分散器として働くように、前記コンピューティング構成部品のうちの少なくともいくつかは、熱ブリッジ(111)を介して、該モジュールカバーに結合される、請求項1〜のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項10】
所定の閾値より上の熱出力損失を有する前記コンピューティング構成部品が、前記車両コンピューティングシステムのハウジング(205)に結合されるように適合される熱ブリッジ(112)を提供される、請求項1〜のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項11】
前記コンピューティング構成部品の各々は、動作中に7Wより少ない熱出力損失を有するように適合されている、請求項1〜10のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項12】
前記エッジコネクタ(101)は、少なくとも2つの異なる動作電圧に対する接続を含み、該動作電圧のうちの第1の動作電圧は2.5Vと3.5Vとの間の範囲にあり、該動作電圧のうちの第2の動作電圧は、4.5Vと5.5Vとの間の範囲にある、請求項1〜11のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項13】
前記コンピューティング構成部品は、ノースブリッジおよびサウスブリッジあるいは組み合わされたノースブリッジ/サウスブリッジ(104)と、クロック発生器(107)と、電圧変換器(106)とをさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項14】
前記車両コンピューティングモジュールは、該コンピューティングモジュールを前記エッジコネクタソケットおよび/または前記メインボードに固く固定するように適合された固定要素を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
【請求項15】
車両コンピューティングシステムであって、
車両の構成部品に対するインターフェイス(203)と、エッジコネクタ(101)を受け入れるように適合されたエッジコネクタソケット(201)とを有するメインボード(204)と、
請求項1から13のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール(100)であって、該エッジコネクタによって該メインボード(204)に接続されるように適合される、車両コンピューティングモジュールと
を含み、
該メインボード(204)は、該複数のインターフェイス(105)を該車両コンピューティングモジュール(100)に適合させるように構成された前記コントローラ(202)を含む、車両コンピューティングシステム。
【請求項16】
前記車両コンピューティングシステム(200)は、該車両コンピューティングシステムが取り付けられる特定のタイプの車両に適合された車両特定のシステムであり、前記車両コンピューティングモジュール(100)は、異なるタイプの車両に適合された複数の異なる車両コンピューティングシステム(200)によって使用されるように適合された標準化車両コンピューティングモジュールである、請求項15に記載の車両コンピューティングシステム。
【請求項17】
前記メインボード(204)は、フィールドプログラマブルゲートアレイ、特定用途向け集積回路、もしくは、前記車両コンピューティングモジュール(100)のスタートアップおよび/または該車両コンピューティングモジュール(100)との通信を制御するためのマイクロコントローラを含む、請求項15または16に記載の車両コンピューティングシステム。
【請求項18】
前記エッジコネクタソケット(201)は、前記メインボード(204)および前記車両コンピューティングモジュール(100)の前記回路基板(120)が、2mmと9mmとの間の範囲の距離を有するように形成される、請求項1517のいずれかに記載の車両コンピューティングシステム。
【請求項19】
前記コンピューティングモジュールが前記エッジコネクタソケットおよび/または前記メインボードに固く固定されるように適合および配置される固定要素をさらに含む、請求項1518のいずれかに記載の車両コンピューティングシステム。
【請求項20】
前記車両コンピューティングシステム(200)は、車両情報娯楽システム、車両マルチメディアシステム、車両ナビゲーションシステム、車両制御システム、および、これらのシステムのうちの2つ以上を組み合わせる一体化車両コンピューティングシステムを含む群から選択される、請求項1519のいずれかに記載の車両コンピューティングシステム。
【請求項21】
前記メインボードの前記車両に対する前記インターフェイス(203)は、Controller Area Networkインターフェイス、Local Interconnect Networkインターフェイス、およびMedia Oriented System Transportインターフェイスのうちの少なくとも1つを含み、該メインボードは、これらのインターフェイスの1つにおいて受け取られたデータを処理のための該車両コンピューティングモジュール(100)に伝達するように構成されている、請求項1520のいずれかに記載の車両コンピューティングシステム。
【請求項22】
車両のコンピューティングシステムに対する処理機能を実行するための該車両内における請求項1〜14のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール(100)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両コンピューティングモジュールに関し、そして、そのような車両コンピューティングモジュールを備えている車両コンピューティングシステムに関する。本発明はさらに、車両コンピューティングシステムにおけるそのような車両コンピューティングモジュールの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の車両においては、複数の機能が、しばしばコンピュータによって制御されている。例として、車両の情報娯楽システムは、複数の情報および娯楽の機能をユーザに利用可能にするコンピュータプラットホームを含み得る。そのような機能は、例えば、CDまたはDVDからのオーディオまたはビデオファイルの再生、車両の運転者に案内を提供するナビゲーションソフトウェアの実行、あるいは音声認識のコンピュータ処理を含み得る。近年における新しいプロセッサおよび新しいシステムアーキテクチャの開発によって、システムの処理能力は、比較的短い期間に劇的に増大してきており、これからも増大するであろう。性能における有意な増加は、一般的に1〜3年以内で達成されており、これらのシステムに合うように調整されたメディアまたはソフトウェアが、しばしば古いシステム上で再生されず、また実行されないことがあり得る。
【0003】
車両コンピュータシステムは、しばしば特定のタイプの車両用に一般に構成され、車両内部に固定して取り付けられる。車両の寿命が最高15年に及び、そして、それを超えることさえあるので、車両のコンピューティングシステムは、車両の寿命のうちのほんの短い期間の後に旧式になるであろう。特定の車両に合うように調整された新しいコンピュータシステムは、製品の生産が中止されると、一般的には利用可能にならない。従って、車両ユーザは、時代遅れのコンピューティングシステムに束縛され、コンピューティングシステムにおける最近の発展および改良からの利益を得ることが可能でないことがあり得る。
【0004】
現代のCPUの技術的なサイクルは、通常、1〜1.5年の範囲にある。それに比べて、最初の企画から量産までの自動車ヘッドユニットの標準的な開発サイクルは、3年の範囲にある。新しいヘッドユニットは、すでに旧式な処理ユニットとともにライフサイクルを開始するというリスクを負っている。
【0005】
さらなる問題は、自動車環境において満足されなければならない特定の要件である。例えば、プロセッサを交換することによってアップグレード可能であり得る一般的なコンピューティングシステムは、概して自動車環境において採用されないことがあり得る。まず第1に、コンピューティングシステムは、特定のタイプの車両用にカスタマイズされる必要がある。例えば、車両の特定情報が交換される場合には、システムの幾何形状が、利用可能な導入スペースに適応する必要があり、インターフェイスは、特定の用途に適応する必要がある。第2に、車両のためのコンピューティングシステムは、非常に厳しい動作要件を満足する必要がある。コンピューティングシステムは、広い温度および湿度範囲などの様々な環境条件において、耐故障の安全な動作を保証する必要がある。制限された導入スペースに起因して、熱の除去は、従来のコンピューティングシステムの車両における使用を妨げる別の重要な問題である。コネクタおよび取り付け要素はさらに、振動に対する抵抗力に関する要件を満足しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、上述の欠点のうちの少なくともいくつかを除く改良された車両コンピューティングシステムに対するニーズがある。このニーズは、独立請求項の特徴によって満たされる。従属請求項は本発明の好ましい実施形態を記述する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の局面によると、車両コンピューティングシステムのメインボードに接続されるように適合される車両コンピューティングモジュールが提供される。車両コンピューティングモジュールは、伝導経路を有する回路基板と、該回路基板に取り付けられ、少なくとも中央処理ユニット(CPU)およびメインメモリを含むコンピューティング構成部品と、回路基板の縁に提供され、回路基板をメインボードのエッジコネクタソケットに接続するように適合されたエッジコネクタと,コンピューティングモジュールをインターフェイスするための、該エッジコネクタによって提供される複数のインターフェイスとを含む。車両コンピューティングモジュールは、車両内で該車両コンピューティングシステムのメインコンピューティングユニットとして動作されることと、車両コンピューティングシステムのためのデータの処理を実行することとを行うように適合され、データは、インターフェイスを介して車両コンピューティングモジュールによって受けられる。
【0008】
データ処理は、車両コンピューティングモジュールによって独立に実行され得る、つまり、車両コンピューティングモジュールはフルに機能するコンピュータに対応し得る。メインコンピューティングユニットとして、該モジュールは、車両コンピューティングシステムのためのデータ処理のうちの大部分を実行し得る。例えば、処理のうちの少なくとも50%を、あるいは、75%より多くを実行し得るか、あるいは、車両コンピューティングシステムのための処理のすべてをさえ実行し得る。車両コンピューティングシステムは、従って、そのメインボード上にさらなる中央処理ユニットを含まないことがあり得る。車両コンピューティングシステムには、また、処理の負荷を分担するいくつかの車両コンピューティングモジュールが提供され得る。車両コンピューティングシステムのメインの処理を実行するモジュールによって、コンピューティングシステムの残りの部分は、補助的な処理機能を実行するのみであり得、これは、特定の自動車環境に適合され得る。
【0009】
モジュールはエッジコネクタを採用するので、車両コンピューティングシステムのメインボードに容易に取り付けられ得る。従って、車両コンピューティングモジュールは、時代遅れの車両コンピューティングモジュールと代えることができ、従って、車両のコンピュータシステムをアップグレードする。該システムが取り付けられる特定のタイプの車両に適合され得るコンピューティングシステムは、交換される必要はない。車両適合コンピューティングシステムの処理能力は、車両の寿命にわたり、あるいは開発時間の間でさえ、更新され続ける。車両コンピューティングモジュールは車両内で動作されるように適合されるので、自動車構成部品に対して設定された厳しい要求に適応し得る。
【0010】
本発明の実施形態によると、インターフェイスは、Peripheral Component Interconnect Express(PCIe)インターフェイス、Universal Serial Bus(USB)インターフェイス、Serial Advanced Technology Attachment(SATA)インターフェイス、Secure Digital Input/Output(SDIO)インターフェイス、Low Voltage Differential Signaling(LVDS)、およびPower Supply Controlインターフェイスのうちの少なくとも1つを含む。また、インターフェイスは、Universal Asynchronous Receiver/Transmitter(UART)インターフェイスを含み得る。車両コンピューティングモジュールは、また、これらのインターフェイスの組み合わせあるいはすべてを含み得る。車両コンピューティングモジュールは、従って、多くの異なる方法においてデータを受ける能力を有し得、また、フルに機能するコンピュータとして動作し得る。これらのインターフェイスの仕様は、異なる車両適合コンピューティングシステムを有する同様なタイプの車両コンピューティングモジュールの使用を可能にし得る。さらに、これらのインターフェイスは、高速で信頼できるデータ交換を提供し、非常に多様な周辺構成部品との互換性を確実にする。
【0011】
インターフェイスは、また、Debug and Boot Port(DBP)インターフェイスをさらに含み得る。DBPインターフェイスは、エッジコネクタのピン配列を変更することなく、異なる世代および異なる販売者のCPUを支持することが可能である。DBPインターフェイスにより、プロセッサの動作がチェックされ得、オペレーティングソフトウェアが調節され得る。これは、デバッグ、ソフトウェアアップグレード、および製造試験のための有利なツールを提供し得る。エッジコネクタによって提供されるDebug and Boot Port(DBP)インターフェイスは、中央処理ユニットによって提供される対応するインターフェイスに直接接続され得る。処理ユニットのDBPインターフェイスは、従って、エッジコネクタを介して、直接アクセスされ得る。例として、DBPインターフェイスは、エッジコネクタのうちの少なくとも4つのピンを使用し得る。他の実施形態において、DBPインターフェイスは、採用される処理ユニットに依存して、2つあるいは3つのピンを使用し得る。コンピューティングシステムは、DBPインターフェイスを通って、車両コンピューティングシステムおよび車両コンピューティングモジュールが、車両内部にインストールされる場合に、メンテナンスが実行され得るように、作業者によりアクセス可能なメンテナンスポートに導き得る。
【0012】
コンピューティング構成部品および、伝導経路を含む回路基板は、車両内部の動作に対して、所定の仕様を満たすように適合され得る。従って、車両内部での動作の間、コンピューティングモジュールの劣化(例えば、伝導経路の腐食)が防がれ得る。所定の仕様は、例えば、温度および/または湿度に関する仕様を含み得る。
【0013】
回路基板は、1つ以上のボールグリッド領域を含み得、回路基板は、該ボールグリッド領域とは異なる回路基板の領域において、トレースとパッド、ビアとパッド、パッドとパッドの距離が200μmより大きいように構成され得る。さらに、回路基板は、少なくとも100μmの列幅を有するハンダマスクを含み得る。
【0014】
耐湿に関する自動車の仕様は、満たされ得る。そのような配置によって、例えば、凝縮が原因の、伝導経路の腐食あるいは伝導経路の間の望ましくない接続が妨げられる。
【0015】
コンピューティング構成部品および回路基板は、コンピューティングモジュールの動作を−40℃と70℃(モジュールの周囲温度)との間で、好ましくは、−40℃と85℃との間で可能にするように適合され得る。そのような動作を達成するために、コンピューティング構成部品の熱生成が制限される必要があり得る。
【0016】
モジュールは、モジュールカバーを含み得、少なくともいくつかのコンピューティング構成部品は、モジュールカバーが、モジュールカバーに結合されたコンピューティング構成部品に対する熱分散器として働くように、熱ブリッジを介して、モジュールカバーに結合され得る。モジュールカバーは、コンピューティングシステムのハウジングあるいは機械的フレームに接続されるように適合され得る。これは、また、コンピューティングシステムの機械的部分であり得る。コンピューティング構成部品によって生成された熱の一部が、従って取り除かれ得る。熱ブリッジとして、熱伝導パッドあるいは熱伝導ペーストが使用され得る。例として、少なくとも0.5Wの熱消費および3W〜6Wまでの熱消費を有する構成部品には、熱ブリッジが提供され得、モジュールカバーに結合される。
【0017】
所定の閾値を超える熱出力損失を有するコンピューティング構成部品には、車両コンピューティングシステムのハウジングに結合されるように適合された熱ブリッジが提供され得る。ハウジングに結合することによって、熱の除去はこれらの構成部品に対してより効率的であり得る。所定の閾値は、例えば、3Wと6Wとの間にあり得る。
【0018】
生成された熱を除去するための他の手段がまた考えられる。CPUには、例えば、一体化された熱分散器(IHS)ハウジングが提供され得る。そのようなIHSは、熱除去のための大きな表面を提供し得る。
【0019】
コンピューティング構成部品の各々は、動作中に7W未満の熱出力損失を有するように適合されている。車両コンピューティングモジュールによる熱の発生は、このようにして制限され得る。
【0020】
エッジコネクタは、2.5Vと3.5Vとの間の範囲にある第1の動作電圧、および4.5Vと5.5Vとの間の範囲にある第2の動作電圧である、少なくとも2つの異なる動作電圧のための接続を含み得る。例として、3.3Vおよび5Vが提供され得る。さらなる電圧が、0.1Vと2.5Vとの間の範囲のコア電圧のように、車両コンピューティングモジュール上で、これらの動作電圧から発生され得る。
【0021】
コンピューティング構成部品は、ノースブリッジおよびサウスブリッジあるいはノースブリッジ/サウスブリッジの組み合わせ、クロック発生器、ならびにローカル電圧変換器をさらに含み得る。クロック発生器および電圧変換器は、単一チップのソリューションに結合され得る。これらは、フラッシュメモリをさらに含み得る。ノースブリッジは、また、中央処理ユニットに一体化され得る。グラフィックスチップ等のような、さらなる構成部品が、もちろん、提供され得るか、あるいは、特定用途向け集積回路(ASIC)あるいはシステムコントローラのような機能ユニットが、例えば、1つのチップに結合され得る。
【0022】
回路基板は、高密度相互接続(HDI)基板あるいは、少なくとも6層の、好ましくは8層から10層のスルーホール技術(THT)基板であり得る。車両コンピューティングモジュールは、80×80mmと120×120mmの間の大きさを有し得、基板上に提供されるコンピューティング構成部品、および熱除去構成部品に依存する高さを有する。エッジコネクタは、200−250ピンを有し得る。
【0023】
さらに、インターフェイスは、General Purpose Input/Output(GPIO)インターフェイスを含み得、GPIOは、特定のタイプの車両コンピューティングモジュールあるいは車両コンピューティングシステムに適合され得る。例えば、車両コンピューティングモジュールが、より最近の車両コンピューティングシステムに使用されるか、あるいは古い車両コンピューティングシステムに使用されるかに依存して、または、車両コンピューティングモジュールが装備され得るどのタイプのプロセッサあるいはチップセットかに依存して、異なる機能が、これらのインターフェイスに割り当てられ得る。
【0024】
車両コンピューティングモジュールは、コンピューティングモジュールをエッジコネクタソケットあるいはメインボードに固く固定するように適合された固定要素を含み得る。固定要素は、例えば、コンピューティングモジュールの回路基板内のねじ穴、ならびに、コンピューティングモジュールとエッジコネクタソケットおよび/または車両コンピューティングシステムのメインボードとの間のボルト接続を形成するボルトを含み得る。特に、回路基板とエッジコネクタソケットとの間のボルト接続が確立され得る。エッジコネクタソケットは硬化され得て、機械的強度を増強する。これらの測度は、コンピューティングモジュールが高い加速度および振動にさらされ得る自動車アプリケーションに対して、特に有利である。
【0025】
本発明のさらなる局面によると、車両の構成部品に対するインターフェイスとエッジコネクタを受け入れるように適合されるエッジコネクタソケットとを有するメインボードを含み、上に述べたように、エッジコネクタによって該メインボードに接続されるように適合された車両コンピューティングモジュールをさらに含む車両コンピューティングシステムが提供される。そのような車両コンピューティングシステムによって、上に概観された利点と同様な利点が達成され得る。
【0026】
1つの実施形態によると、車両コンピューティングシステムは、それが取り付けられるべき特定のタイプの車両に適合された車両特定のシステムであり、車両コンピューティングモジュールは、異なるタイプの車両に適合された複数の異なる車両コンピューティングシステムに使用されるように適合された標準化車両コンピューティングモジュールである。そのような車両コンピューティングシステムは特定のタイプの車両に対して最適化されている利点を有する一方で、標準化コンピューティングモジュールを使用することによって、比較的低コストで生産可能である。さらに、車両のコンピューティングモジュールは、容易にアップグレードされ得る。特に、形状因子、コネクタおよび/または車両コンピューティングシステムのインターフェイスは、特定のタイプの車両に適合され得る。
【0027】
メインボードは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)あるいは、車両コンピューティングモジュールのスタートアップおよび/または車両コンピューティングモジュールとの通信を制御するためのマイクロコントローラをさらに含み得る。FPGAあるいはASICは、例えば、車両コンピューティングモジュールに対するGPIOインターフェイスを適合し構成し得る。
【0028】
エッジコネクタソケットは、メインボードおよび車両コンピューティングモジュールの回路基板が2mmと9mmとの間の、好ましくは6mmと8mmの間の範囲の距離を有するように形成され得る。そのように、車両コンピューティングモジュールは、コンピューティング構成部品が両側に装備され得る。
【0029】
車両コンピューティングシステムは、車両情報娯楽システム、車両マルチメディアシステム、車両ナビゲーションシステム、車両制御システム、および、上述のシステムのうちの2つ以上を組み合わせる一体化車両コンピューティングシステムを含む群から選択され得る。
【0030】
メインボードの車両に対するインターフェイスは、Controller Area Network(CAN)インターフェイス、Local Interconnect Network(LIN)インターフェイス、およびMedia Oriented System Transport(MOST)インターフェイスのうちの少なくとも1つを含み得る。メインボードは、これらのインターフェイスの1つにおいて受け取られたデータを、処理のための車両コンピューティングモジュールに伝達するように構成され得る。
【0031】
本発明のさらなる局面は、車両のコンピューティングシステムに対する処理機能を実行するための車両の中の上述の車両コンピューティングシステムの使用に関する。上述のように、車両の中のそのような車両コンピューティングモジュールの使用は、それが車両コンピューティングシステムのアップグレードを可能にするので、有益である。さらに、ただ1つのタイプの車両コンピューティングモジュールが、異なるタイプの車両に適合されるコンピューティングシステムに対して提供される必要がある。
【0032】
上述の特徴および以下で説明されるべき特徴は、示されたそれぞれの組み合わせにおいて使用され得るのみでなく、本発明の範囲から外れることなく、他の組み合わせあるいは個別において使用され得ることを理解すべきである。
【0033】
本発明は、さらに以下の手段を提供する。
(項目1)
車両コンピューティングシステム(200)のメインボード(204)に接続されるように適合された車両コンピューティングモジュールであって、
伝導経路を有する回路基板(120)と、
該回路基板(120)に取り付けられたコンピューティング構成部品であって、少なくとも中央処理ユニット(102)とメインメモリ(103)とを含む、コンピューティング構成部品と、
該回路基板(120)の縁に提供されたエッジコネクタ(101)であって、該回路基板を該メインボード(204)のエッジコネクタソケット(201)に接続するように適合されている、エッジコネクタと、
該コンピューティングモジュール(100)とインターフェイスするために、該エッジコネクタ(101)によって提供される複数のインターフェイス(105)と
を含み、
該車両コンピューティングモジュール(100)は、該車両コンピューティングシステム(200)のメインコンピューティングユニットとして車両の中で動作されることと、該車両コンピューティングシステム(200)のために、データの該処理を実行することとを行うように適合されており、該データは、該インターフェイス(105)を介して該車両コンピューティングモジュールによって受け取られる、
車両コンピューティングモジュール。
(項目2)
前記インターフェイスは、Peripheral Component Interconnect Expressインターフェイス、Universal Serial Busインターフェイス、Serial Advanced Technology Attachmentインターフェイス、Secure Digital Input Outputインターフェイス、Low−voltage differential signalingインターフェイス、universal asynchronous receiver/transmitterインターフェイスおよび電源制御インターフェイスのうちの少なくとも1つを含む、上記項目に記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目3)
前記インターフェイスは、Debug and Boot Portインターフェイス(108)を含む、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目4)
前記エッジコネクタ(101)によって提供される前記Debug and Boot Portインターフェイス(108)は、前記中央処理ユニット(102)によって提供される対応するインターフェイスに直接に接続される、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目5)
前記Debug and Boot Portインターフェイス(108)は、前記エッジコネクタの少なくとも4本のピンを使用する、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目6)
前記コンピューティング構成部品および前記伝導経路を含む前記回路基板は、車両の内部での動作のための所定の仕様を満たすように適合されている、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目7)
前記回路基板(120)は、1つ以上のボールグリッド領域を含み、該回路基板は、該ボールグリッド領域とは異なる回路基板の領域において、トレースとパッド、ビアとパッド、パッドとパッドの距離が200μmより大きいように構成される、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目8)
前記回路基板(120)は、少なくとも100μmの列幅を有するハンダマスクを含む、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目9)
前記コンピューティング構成部品および前記回路基板は、前記コンピューティングモジュール(100)の前記動作を、−40℃から70℃の範囲内で、好ましくは、−40℃から85℃の範囲内で可能にするように適合されている、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目10)
前記車両コンピューティングモジュール(100)は、前記コンピューティングシステムのハウジングに接続されるように適合されたモジュールカバー(110)を含み、該モジュールカバー(110)が、該モジュールカバーに結合されたコンピューティング構成部品に対する熱分散器として働くように、前記コンピューティング構成部品のうちの少なくともいくつかは、熱ブリッジ(111)を介して、該モジュールカバーに結合される、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目11)
所定の閾値より上の熱出力損失を有する前記コンピューティング構成部品が、前記車両コンピューティングシステムのハウジング(205)に結合されるように適合される熱ブリッジ(112)を提供される、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目12)
前記コンピューティング構成部品の各々は、動作中に7Wより少ない熱出力損失を有するように適合されている、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目13)
前記エッジコネクタ(101)は、少なくとも2つの異なる動作電圧に対する接続を含み、第1の該動作電圧は2.5Vと3.5Vとの間の範囲にあり、第2の該動作電圧は、4.5Vと5.5Vとの間の範囲にある、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目14)
前記コンピューティング構成部品は、ノースブリッジおよびサウスブリッジあるいは組み合わされたノースブリッジ/サウスブリッジ(104)と、クロック発生器(107)と、電圧変換器(106)とをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目15)
前記車両コンピューティングモジュールは、該コンピューティングモジュールを前記エッジコネクタソケットおよび/または前記メインボードに固く固定するように適合された固定要素を含む、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール。
(項目16)
車両コンピューティングシステムであって、
該車両の構成部品に対するインターフェイス(203)と、エッジコネクタ(101)を受け入れるように適合されたエッジコネクタソケット(201)とを有するメインボード(204)と、
上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール(100)であって、該エッジコネクタによって該メインボード(204)に接続されるように適合される、車両コンピューティングモジュールと
を含む、車両コンピューティングシステム。
(項目17)
前記車両コンピューティングシステム(200)は、該車両コンピューティングシステムが取り付けられる特定のタイプの車両に適合された車両特定のシステムであり、前記車両コンピューティングモジュール(100)は、異なるタイプの車両に適合された複数の異なる車両コンピューティングシステム(200)によって使用されるように適合された標準化車両コンピューティングモジュールである、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングシステム。
(項目18)
前記メインボード(204)は、フィールドプログラマブルゲートアレイ、特定用途向け集積回路、もしくは、前記車両コンピューティングモジュール(100)のスタートアップおよび/または該車両コンピューティングモジュール(100)との通信を制御するためのマイクロコントローラをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングシステム。
(項目19)
前記エッジコネクタソケット(201)は、前記車両コンピューティングシステム(100)の前記メインボード(204)および前記回路基板(120)が、2mmと9mmとの間の、好ましくは6mmと8mmとの間の範囲の距離を有するように形成される、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングシステム。
(項目20)
前記コンピューティングモジュールが、前記エッジコネクタソケットおよび/または前記メインボードに固く固定されるように適合され、配置される固定要素をさらに含む、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングシステム。
(項目21)
前記車両コンピューティングシステム(200)は、車両情報娯楽システム、車両マルチメディアシステム、車両ナビゲーションシステム、車両制御システム、および、これらのシステムのうちの2つ以上を組み合わせる一体化車両コンピューティングシステムを含む群から選択される、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングシステム。
(項目22)
前記メインボードの前記車両に対する前記インターフェイス(203)は、Controller Area Networkインターフェイス、Local Interconnect Networkインターフェイス、およびMedia Oriented System Transportインターフェイスのうちの少なくとも1つを含み、該メインボードは、これらのインターフェイスの1つにおいて受け取られたデータを処理のための該車両コンピューティングモジュール(100)に伝達するように構成されている、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングシステム。
(項目23)
前記車両のコンピューティングシステムに対する処理機能を実行する車両内における、上記項目のいずれかに記載の車両コンピューティングモジュール(100)の使用。
【0034】
(摘要)
本発明は、車両コンピューティングシステム(200)のメインボード(204)に接続されるように適合された車両コンピューティングモジュールに関し、該モジュールは、伝導経路を有する回路基板(120)と、少なくとも中央処理ユニット(102)とメインメモリ(103)とを含む、該回路基板(120)に取り付けられたコンピューティング構成部品と、該回路基板を該メインボード(204)のエッジコネクタソケット(201)に接続するように適合されている、該回路基板(120)の縁に提供されたエッジコネクタ(101)と、該コンピューティングモジュール(100)とインターフェイスするために、該エッジコネクタ(101)によって提供される複数のインターフェイス(105)とを含む。
【0035】
本発明の上述のおよび他の特徴および利点が、添付の図面と共に読まれるとき、以下の例示的実施形態の詳細な記述からさらに明らかになるであろう。図面において、同様な参照番号は、同様な要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の実施形態に従った車両コンピューティングモジュールを例示する模式的ブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に従った車両コンピューティングモジュールを例示する模式的ブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態に従った車両コンピューティングモジュールを例示する模式的断面側面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の実施形態の説明が、例示の目的のためだけに与えられ、限定する意味においてとられないことが理解されるべきである。図面は、概略的な表現をするだけであると考えられ、図面中の要素は、互いに必ずしも縮尺通りにはなっていない。むしろ、様々な要素の表現は、それらの要素の機能および汎用性が当業者に対して明らかになるように選択されている。図面に示された機能ブロックまたは機能ユニットにおいて複数の実施形態を分割化することは、これらのユニットが必ず物理的に別個のユニットとして実装されることを示しているとは解釈されないが、示されたり、記載されたりした機能ブロックまたは機能ユニットが、別個のユニット、回路、チップ、または回路要素として実装され得、一方で、1つ以上の機能ブロックまたは機能ユニットが、共通の回路、チップ、回路要素、またはユニットに同じく実装され得る。
【0038】
図1は、本発明の実施形態に従った、車両コンピューティングモジュール100を示している。モジュール100は、モジュールの縁に提供されたエッジコネクタ101を備えている。エッジコネクタ101は、複数のピン109を備え、車両コンピューティングシステムのメインボードに取り付けられたエッジコネクタソケットにはめ込むように適合されている。エッジコネクタは、200〜250個のピン、例えば、230個のピンを備え、該ピンは、モジュールがエッジコネクタソケットに挿入されるときに、対応する伝導要素と接触する。ピンは、0.4mmと0.6mmとの間の、例えば、0.5mmの中心間距離またはピッチを有し得る。このことは、隣接したピンとの間の望ましくない接触を回避する。従って、車両コンピューティングモジュールが動作し得る湿度に関する要件が満足され得る。
【0039】
エッジコネクタ101は、複数のインターフェイス105を車両コンピューティングモジュール100に対して提供する。インターフェイス105は、Peripheral Component Interconnect Express(PCIe)インターフェイス、Universal Serial Bus(USB)インターフェイス、Serial Advanced Technology Attachment(SATA)インターフェイス、Secure Digital Input/Output(SDIO)インターフェイス、Low Voltage Differential Signalling(LVDS)インターフェイス、Universal Asynchronous Receiver/Transmitter(UART)インターフェイス、イーサネット(登録商標)インターフェイス、および電力をモジュールに供給する2つのインターフェイス(3.3Vおよび5V)を含む。これらのインターフェイスの一部(例えば、UARTおよびイーサネット(登録商標)インターフェイス)は随意であり、さらなるインターフェイス(例えば、display I2Cインターフェイス、video inインターフェイス、SM busインターフェイス、SPIインターフェイス、複数のGeneral Purpose Input/Output(GPIO)インターフェイス、power supply controlインターフェイスなど)が提供され得ることは明らかである。次の表1は、本発明の実施形態に従った、車両コンピューティングモジュールの例示的なインターフェイスの構成を示し、提供されるそれぞれのインターフェイスの数が2列目に示されている。
【0040】
【表1】
エッジコネクタの1つ以上のピンが、各々のインターフェイスに割り当てられ得る。例えば、5〜10個のピンが、Debug and Boot Port(DBP)インターフェイス108に割り当てられ得る。GPIOインターフェイスが、例えば、モジュール100上で用いられる特定の中央処理ユニット(CPU)102にモジュールを適合させるために使用され得る。上述のインターフェイスを提供することによって、インターフェイス構成は、異なる販売者からの新しいプロセッサの世代またはプロセッサ/チップセットを含むモジュールが製造される場合でさえも維持され得、それによって、車両内にインストールされている車両コンピューティングシステムと、車両コンピューティングモジュール100との互換性を保証している。従って、車両にインストールされたモジュールは、車両の寿命にわたって新しいモジュールのバージョンによってアップグレードされ得る。
【0041】
車両コンピューティングモジュール100は、一般的にメモリコントローラを提供するノースブリッジと、一般的に残りのインターフェイスのための入力/出力コントローラを提供するサウスブリッジとをさらに含み得る。サウスブリッジは、例えば、USBコントローラをすでに含み得る。図1の実施形態において、モジュール100は、組み合わされたノースブリッジ/サウスブリッジ104を含む。例えば、ノースブリッジ/サウスブリッジ104は、ワンチップソリューション、例えば、グラフィックス処理機能性をも含み得るシステムコントローラという形態で提供され得る。他の構成もまたもちろん可能であり、ノースブリッジが、例えば、CPU102に一体化され得る。他のタイプの入力/出力(I/O)ハブがまた採用され得る。ノースブリッジ/サウスブリッジ104は、メインメモリ103をインターフェイス接続し、メインメモリ103は、ランダムアクセスメモリ(RAM)であり得る。クロック発生器107は、ノースブリッジ/サウスブリッジ104をインターフェイス接続し、ノースブリッジ/サウスブリッジ104はまた、CPU102をインターフェイス接続し得る。いくつかの別個のクロック発生器が、クロック信号を車両コンピューティングモジュール100の異なる構成部品に対して発生するために提供され得ることは明らかである。CPU102は、シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサであり得る。
【0042】
モジュール100は、電圧変換器106をさらに含み、電圧変換器106は、エッジコネクタを介して供給された電圧からコア電圧(例えば、CPU102の動作用)を発生させる。電圧変換器106が、モジュール100上に分散された多くの物理的に別個のユニットを含み得ることは明らかである。モジュール100は、最適化された負荷分散のために、5Vおよび3.3Vの母線システムを提供される。単一の母線システムの使用もまた可能である。随意に、3.3Vの待機用母線がまた利用可能にされ得る。電圧変換器106は、1V、1.5V、1.8V、...、および2.5Vなどのコア電圧の範囲を発生し得る。
【0043】
デバッグ/ブートポート(DBP)インターフェイス108は、モジュール100に配置されるチップセット専用のデバッグおよびブートポートインターフェイスの一般的な表現である。モジュール100のDBPインターフェイス108は、モジュール100が取り付けられる、車両コンピューティングシステムのメインボードのデバッグエッジコネクタに接続され得る。接続は、モジュールに用いられるCPUから独立な未修飾のピン割り当てによって起こり得る。メインボード上のデバッグエッジコネクタと、モジュール100のエッジコネクタ101とを介して、CPU102のDBPが、直接アクセスされ得る。CPU特有のインターフェイスへの適応が、基板外のツールによって行われ得、該基板外ツールは、デバッグエッジコネクタに接続され得る。例として、Intel(登録商標)のチップセットに対しては、LPCバスがDBPに割り当てられ得、一方で、Renesasのチップセットに対しては、HUDIインターフェイス用と同じ信号が使用され得る。DBPの概念によって、標準化されたインターフェイスピン割り当てを提供することが可能であり、一方で、異なるデバッグインターフェイスを用いる、異なる処理ユニット/チップセットをサポートすることが可能である。
【0044】
モジュール100が車両コンピューティングシステムに取り付けられている場合でさえも、ソフトウェアデバッギングと、ファームウェアのアップデートとが、DBPインターフェイスを介して容易に実行され得る。車両コンピューティングシステムが小さく、かつ制限されたスペース内に一般的に取り付けられるので、モジュールのチップセットのデバッグおよびブートポートを、エッジコネクタ101とメインボードのデバッグエッジコネクタとを介して直接導き出し、それによって、デバッグおよびブートポートが、コンピューティングシステムを取り外すことなく外からアクセスされ得ることは有利である。
【0045】
当然、車両コンピューティングモジュール100は、図1中に示されなかった構成部品をさらに含み得る。例として、車両コンピューティングモジュール100は、グラフィックス処理を実行する追加のグラフィックスチップ、データを格納する追加のフラッシュメモリまたはNAND型フラッシュメモリなどを含み得る。フラッシュメモリまたはNAND型フラッシュメモリがまた、メインボード上に配置され、エッジコネクタ101を介してアクセスされ得る。ハードディスクドライブなどの他のストレージ媒体がまた、コンピューティングシステムのメインボード上に配置されるかまたはメインボードに接続され、エッジコネクタ101を介して、例えば、SATAインターフェイスを用いてアクセスされ得る。
【0046】
車両コンピューティングシステムを取り付けるために利用可能な制限されたスペースに起因して、モジュール100の寸法がまた制限される。モジュールの長さと幅とは、80×80mm〜120×120mmの範囲内にあり得、モジュールの長さと幅とが、例えば、80×110mmのサイズを有し得る。モジュール100は、多層回路基板を含み得、該多層回路基板は、高密度相互接続(HDI)またはスルーホール技術を用いて製造され得る。該多層回路基板は、6層を超え、好ましくは、8層と10層との間の層数を有し得る。HDI回路基板によって、サイズにおける低減が達成され得、高速なバスシステムに対する信号の完全性についての要件が、より容易に満足され得る。
【0047】
車両コンピューティングモジュール100は、自動車環境における使用に特に適応している。特に、車両コンピューティングモジュール100は、様々な湿度において、−40℃と85℃との間の温度範囲で動作するように適合される。そのような高温での動作を達成するために、モジュール100の構成部品の各々が、7W未満の出力損失を発生するように適合される。モジュール100は、30W未満の全出力損失を有するように構成される。好ましくは、モジュール100は、20W未満かまたはさらに15W未満の出力損失を有するように構成される。0.5W超から2Wまでの出力損失を有するモジュール100の構成部品は、モジュールハウジングまたはモジュールカバーに結合される(間接的な熱ブリッジ)か、または車両コンピューティングシステムのハウジングに直接的に結合される(直接的な熱ブリッジ)。構成部品は、熱伝導パッドまたは熱伝導ペーストなどのような高い熱伝導率を有する材料を提供され得る。CPU102などの特に高い熱出力損失を有する構成部品は、熱交換用の大きな表面を提供するために、一体化された熱分散器(IHS)ハウジングを提供され得る。直接結合または追加の熱分散器が、例えば、3W超から5Wまでの熱出力損失を有する構成部品用に採用され得る。
【0048】
モジュール100は、耐湿条件において動作するようにさらに適合される。そのような条件においては、凝縮が起こり得、例えば、回路トレースなどの間の望ましくない接続に起因するモジュールの誤動作を結果としてもたらす。耐湿条件における動作を可能にするために、回路基板が、ボールグリッド領域外において、トレースとパッド、ビアとパッド、パッドとパッドとの距離が200μmを超えるように構成され得る。ボールグリッド領域(BGA)は、例えば、ボールグリッドを用いて回路基板に取り付けられる1つ以上のコンピューティング構成部品の下の領域、例えば、処理ユニット、メインメモリ、コントローラ、ASIC、あるいは他のチップまたは集積回路(IC)などの構成部品の下の領域である。例えば、多層基板を用いる場合には、パッドが、電気的接触を構成部品に確立するために一般的に使用され、一方で、ビアまたはマイクロビアが、回路基板の異なる層のトレースの間の電気的接続を提供するために使用される。
【0049】
ハンダレジストなどの一部のタイプのワニスまたはレジストが、回路基板の外側の層の伝導経路を覆うために使用され得る。回路基板は、少なくとも100μmの列幅を有するハンダマスクを含む。
【0050】
従って、漏洩電流と、他のタイプの誤動作とが、耐湿条件において防止され得る。図中に示されたコンピューティング構成部品を接続する実線が、接続の単なる概略的表現であり、実際のトレースを表していないことは明らかである。CPU102と、ノースブリッジ/サウスブリッジ104とがそれらを接続する、例えば、複数のトレースを有し得、該複数のトレースは、基板120の異なる層の上を延び得る。
【0051】
構成部品によって生成された熱を除去するための上記されたレイアウトと概説した配置とを用いることによって、車両内部で車両コンピューティングモジュール100を動作させるための厳しい要件が満足され得る。CPU102およびノースブリッジ/サウスブリッジ104などのコンピューティング構成部品自体が、上で示された温度範囲において動作可能であるように適合されることは明らかである。
【0052】
図2は、車両コンピューティングシステム200の概略図を示している。システム200は、情報娯楽システム、車両ナビゲーションシステム、車両マルチメディアシステム、または車両制御システム、あるいはそれらの組み合わせであり得る。システム200は、例えば、車両のシングルDINサイズまたはダブルDINサイズのスロットに取り付けられ得る。車両コンピューティングシステム200は、エッジコネクタソケット201を含み、コンピューティングモジュール100が、エッジコネクタソケット201を介してメインボード204に接続される。構成に依存して、ソケットは、異なる高さで提供され、例えば、5mmと8mmとの間の高さで提供され得る。ソケットまたはエッジカードコネクタ201は、車両コンピューティングモジュール100のエッジコネクタのピンに対応する接点を含む。コンピューティングモジュール100の回路基板120は、用いられるエッジコネクタソケットと整合する厚さによって構成され、例えば、1.2mm±0.1mmの厚さによって構成され得る。モジュール100と、エッジコネクタソケット201との間の接続は、自動車環境において使用するための要件、例えば、振動に関する要件を満足しなければならない。このことは、これらの要件を満足するようにソケット201を選択するかまたは適応させることによって、例えば、エッジコネクタ101のピンを接触させることに対して十分に高い接触力を保証することによって達成され得る。さらに、コンピューティングモジュール100は、例えば、ボルトなどを用いて、コンピューティングシステム200のメインボード204に機械的に固定され得る。従って、堅固な接続、分離可能な接続が達成され得、車両コンピューティングモジュール100の直接的な取り外しまたは交換を可能にしている。
【0053】
メインボード204は、コンピューティングシステム200が配備される車両の特定のタイプに適応する。コンピューティングシステム200は、特定の用途に依存して、例えば、CAN、LINまたはMOSTインターフェイスなどの車両特有のインターフェイスの範囲を提供し得る。車両の他の構成部品に対する、メインボード204のインターフェイス203は、車載用ディスプレイ、車載用入力ユニット、または車載用ラウドスピーカに対するインターフェイスと、GPSなどのアンテナ、Bluetooth(登録商標)もしくはWLANアンテナ、またはラジオ用アンテナに対するインターフェイスと、車両のダッシュボードまたはコンピューティングシステムのフェイスプレートに取り付けられたUSBコネクタに対するインターフェイスとを含み得る。その結果として、メインボード204は、デジタル−アナログ変換器またはアナログ−デジタル変換器などの、特定用途向けアナログオーディオおよびビデオ回路などを含み得る。USBインターフェイスなどの、コンピューティングモジュール100の一部のインターフェイスは、コンピューティングシステム200の対応するインターフェイスに直接的に接続され得るか、またはコントローラなどを介して接続され得る。メインボード204はさらに、DBPインターフェイスをメインボードのデバッグエッジコネクタという形態で含み、該DBPインターフェイスは、モジュール100の対応するDBPインターフェイスに直接的に接続されている。アダプタが、次いで、メインボードのデバッグエッジコネクタに接続されて、モジュール100に用いられたCPUの特定のタイプに対するアクセスを可能にし得る。
【0054】
車両コンピューティングシステム200が、機械的な形状因子、コネクタおよびインターフェイスの観点において車両の特定のタイプに適応する一方で、車両コンピューティングモジュール100は、様々なタイプのシステム200の範囲に接続され得る標準化されたモジュールである。そのような相互動作性を提供するために、モジュール100と、メインボード204との間のインターフェイスが標準化され、すなわちモジュール100のインターフェイスがエッジコネクタの所定のピンによって提供される。システム200が車両に適応される場合には、モジュール100へのインターフェイスは、変更される必要がなく、標準化されたモジュールが利用され得る。新世代のプロセッサおよびチップセットが利用可能な場合には、インターフェイス変換器が、車両コンピューティングモジュール100に提供されることにより、旧式の車両コンピューティングシステムとの互換性が保証され得る。DBP概念が、標準化されたインターフェイスにおいて要求される柔軟性を提供することにより、数世代にわたる異なる販売者からの処理ユニットがサポートされる。車両コンピューティングシステム200は、車両コンピューティングモジュール100が、広範囲のコンピューティングシステムにおいて利用され、従って、大量に生産され得るので、比較的低コストで生産され得る有利さだけでなく、コンピューティングシステム200が、利用可能な最新のプロセッサおよびチップセットに容易にアップグレード可能であることもまた有利であり得る。
【0055】
システム200は、コントローラ202をさらに含み、コントローラ202は、FPGA、ASICまたはマイクロコントローラであり得る。コントローラ202が、汎用入力/出力インターフェイスを、用いられたモジュール100の特定のタイプに適応させるために使用され得る。例示的な構成においては、16個のGPIOポートが提供され、13個のポートが随意のFPGAプログラミング用に、例えば、スレーブパラレルモードにおいて確保されている。スレーブシリアルモードにおけるプログラミングもまた可能である。GPIOインターフェイスを介してコントローラ202をプログラミングすることによって、採用されるモジュール100へのコンピューティングシステム200の特定の適応が可能になる。コントローラ202はさらに、コンピューティングモジュール100とメインボード204との間のインターフェイス用の制御機能を実行し得る。コントローラ202はまた、コンピューティングシステム200のためのスタートアップ機構またはブート機構を含み得る。コントローラ202が、上述の様々な機能性を提供する複数のASIC、FPGA、マイクロコントローラ、またはそれらの組み合わせを含み得ることは明らかである。
【0056】
図3は、車両コンピューティングシステム200の側面断面図である。図面は、モジュールがエッジコネクタソケット201に挿入される場合の、メインボード204とモジュール100との間の距離を例示している。好ましくは、距離は、モジュール100がその両側にコンピューティング構成部品を装備され得るように決められる。例として、コンピューティングモジュール100の回路基板120とメインボード204との間の距離は、6mmと8mmとの間に調整され得る。コンピューティング構成部品は、図3中の黒い長方形によって示される。示されるように、モジュール100は、ピン、植込みボルトまたはボルトなどによって、メインボード204に機械的に付着され得る。モジュール100は、カバー110をさらに含む。コンピューティング構成部品から熱を除去するために、いくつかの構成部品が、熱伝導パッド111などによってカバー110に熱的に結合される。他のコンピューティング構成部品は、再び熱伝導パッドまたは熱分散器112を用いて、コンピューティングシステム200のハウジング205に直接結合される。カバー110もまた、もちろんハウジング205に熱的に結合され得る。従って、コンピューティング構成部品の熱出力損失によって生成された熱を効果的に除去することが達成され得る。
【0057】
要約すると、本発明は、車両適合コンピューティングシステムを、多様に適応したシステムの範囲において採用され得る標準化車両コンピューティングモジュールによって提供する。そのような標準化コンピューティングモジュールを使用することによって、車両適合コンピューティングシステムの開発および生産におけるコスト削減が達成され得る。車両コンピューティングシステムがモジュールを交換することによって容易にアップグレード可能なので、ユーザは、車両の耐用期間にわたって処理能力における最新の改良からの利益を得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
100 車両コンピューティングモジュール
101 エッジコネクタ
102 CPU
103 メインメモリ
104 ノースブリッジ/サウスブリッジ
105 インターフェイス
106 電圧変換器
107 クロック発生器
108 デバッグ/ブートポート(DBP)インターフェイス
109 ピン
200 車両コンピューティングシステム
201 エッジコネクタソケット
202 コントローラ
203 メインボードのインターフェイス
204 メインボード
図1
図2
図3