特許第5764329号(P5764329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5764329低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)を調節するための分子および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764329
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)を調節するための分子および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20150730BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20150730BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150730BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150730BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20150730BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150730BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20150730BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20150730BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C07K16/28ZNA
   A61K39/395 N
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P19/02
   A61P3/10
   A61P3/04
   A61P25/28
   A61P19/10
【請求項の数】39
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2010-532556(P2010-532556)
(86)(22)【出願日】2008年10月31日
(65)【公表番号】特表2011-503025(P2011-503025A)
(43)【公表日】2011年1月27日
(86)【国際出願番号】EP2008064821
(87)【国際公開番号】WO2009056634
(87)【国際公開日】20090507
【審査請求日】2011年10月19日
(31)【優先権主張番号】60/984,827
(32)【優先日】2007年11月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100144923
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 将之
(72)【発明者】
【氏名】コン・フェン
(72)【発明者】
【氏名】シャミナ・エム・ラングワラ
(72)【発明者】
【氏名】セス・エッテンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ザビネ・グート
【審査官】 ▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/115354(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0084494(US,A1)
【文献】 特表2007−536938(JP,A)
【文献】 Lin Li et al.,'Second cysteine-rich domain of Dickkopf-2 activates canonical Wnt signaling pathway via LRP-6 independently of dishevelled',The Journal of Biological Chemistry,Vol.277, No.8, Issue of Feb 22 (2002),5977-5981
【文献】 Development,Vol.129, No.24 (2002),5587-5596
【文献】 MAO BINGYU,NATURE,英国,2001年,V411 N6835,P321-325
【文献】 Molecular and Cellular Biology,Vol.27, No.20 (2007),p.7291-7301
【文献】 Molecular and Cellular Biology,Vol.25, No.12 (2005),p.4946-4955
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子であって、ここで、
(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合、抗原結合部分が
(a)配列番号:1のアミノ酸20−326;または
(b)配列番号:1のアミノ酸286−324;
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し、
モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり、優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが、Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない
(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合、抗原結合部分が
(c)配列番号:1のアミノ酸631−932;または
(d)配列番号:1のアミノ酸889−929;
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し、
モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt3および/またはWnt3a特異的であり、優先的にWnt3および/またはWnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害するが、Wnt1誘導シグナル伝達経路を阻害しない
、結合分子。
【請求項2】
請求項1に記載のLRP6結合分子であって、ここで、抗体の抗原結合部分が以下のうちいずれかに含まれるか、または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する結合分子:
(a)配列番号:1のアミノ酸20−326;または
(b)配列番号:1のアミノ酸286−324。
【請求項3】
請求項2に記載のLRP6結合分子であって、ここで、抗体の抗原結合部分が以下のうちいずれかに含まれるか、または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する結合分子:
(a)配列番号:1のアミノ酸70−109;
(b)配列番号:1のアミノ酸114−152;
(c)配列番号:1のアミノ酸157−196;
(d)配列番号:1のアミノ酸201−237;または
(e)配列番号:1のアミノ酸242−326。
【請求項4】
請求項1に記載のLRP6結合分子であって、ここで、抗体の抗原結合部分が以下のうちいずれかに含まれるか、または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する結合分子:
(a)配列番号:1のアミノ酸631−932;または
(b)配列番号:1のアミノ酸889−929。
【請求項5】
請求項4に記載のLRP6結合分子であって、ここで、抗体の抗原結合部分が以下のうちいずれかに含まれるか、または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する結合分子:
(a)配列番号:1のアミノ酸889−929;
(b)配列番号:1のアミノ酸677−680;
(c)配列番号:1のアミノ酸720−723;
(d)配列番号:1のアミノ酸763−766;
(e)配列番号:1のアミノ酸806−809;または
(f)配列番号:1のアミノ酸846−849。
【請求項6】
抗原結合部分がWntシグナル伝達経路をアゴナイズすることができる、請求項1−5のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項7】
抗原結合部分がWntシグナル伝達経路をアンタゴナイズすることができる、請求項1−5のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項8】
抗原結合部分が1つ以上のWnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7a、Wnt7bまたはWnt10−特異的シグナル伝達活性をアンタゴナイズすることができる、請求項1−3のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項9】
抗原結合部分が非ヒト霊長類のLRP6と交差反応する、請求項1−8のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項10】
抗原結合部分が齧歯動物種のLRP6と交差反応する、請求項1−8のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項11】
抗原結合部分がヒトLRP5と交差反応する、請求項1−10のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項12】
抗原結合部分が直鎖エピトープに結合する、請求項1−11のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項13】
抗原結合部分が非直鎖エピトープに結合する、請求項1−11のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項14】
LRP6結合分子が抗体のFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)、Fdフラグメント、一価フラグメント、二価フラグメント、一本鎖Fv、単一ドメイン抗体、ダイアボディまたはFvフラグメントを含む、請求項1−13のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項15】
抗原結合部分がリン酸化LRP6(ホスホ−LRP6)に結合し、阻害することができる、請求項1−14のいずれかに記載のアンタゴナイズLRP6結合分子。
【請求項16】
抗原結合部分が1nM以下のKにてLRP6に結合する、請求項1−15のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項17】
抗体がヒト抗体である、請求項1−16のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項18】
抗体がヒト化抗体である、請求項1−17のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項19】
LRP6結合分子がキメラ抗体である、請求項1−18のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項20】
抗原結合部分が下記イソ型のいずれか:IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4、の抗体由来である、請求項1−19のいずれかに記載のLRP6結合分子。
【請求項21】
LRP6結合分子がLRP6がWnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7a、Wnt7bおよびWnt10から選択されるLRP6リガンドに結合することを阻害する、請求項1−20のいずれかに記載のアンタゴナイズLRP6結合分子。
【請求項22】
LRP6結合分子がLRP6がWnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7a、Wnt7bおよびWnt10に結合することを阻害する、請求項1−21のいずれかに記載のアンタゴナイズLRP6結合分子。
【請求項23】
請求項1−22のいずれかに記載のLRP6結合分子を含む医薬組成物。
【請求項24】
Wnt関連障害に罹患しているか、または患っている対象における、Wnt関連障害を処置するための医薬組成物であって、請求項1−22のいずれかに記載のLRP6結合分子を含む医薬組成物。
【請求項25】
癌に罹患しているか、または患っている対象における、癌を処置するための医薬組成物であって、請求項1−5および7−22のいずれかに記載のアンタゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。
【請求項26】
骨関節症に罹患しているか、または患っている対象における、骨関節症を処置するための医薬組成物であって、請求項1−5および7−22のいずれかに記載のアンタゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。
【請求項27】
肥満または糖尿病に罹患しているか、または患っている対象における、肥満または糖尿病を処置するための医薬組成物であって、請求項1−14および16−20のいずれかに記載のアゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。
【請求項28】
神経変性疾患に罹患しているか、または患っている対象における、神経変性疾患を処置するための医薬組成物であって、請求項1−14および16−20のいずれかに記載のアゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。
【請求項29】
線維性障害に罹患しているか、または患っている対象における、線維性障害を処置するための医薬組成物であって、請求項1−14および16−20のいずれかに記載のアゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。
【請求項30】
骨粗鬆症に罹患しているか、または患っている対象における、骨粗鬆症を処置するための医薬組成物であって、請求項1−14および16−20のいずれかに記載のアゴナイズLRP6結合分子を含む医薬組成物。
【請求項31】
特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子であって、ここで、
(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合、抗原結合部分が
(a)配列番号:1のアミノ酸20−326;または
(b)配列番号:1のアミノ酸286−324;
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し、
抗原結合部分が、LRP6結合分子の非存在下または対照抗体の存在下での阻害と比較して、Wnt1シグナル伝達経路を少なくとも99%阻害し、Wnt3シグナル伝達経路を34%以下で阻害する
(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含む低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6ポリペプチド(LRP6)結合分子である場合、抗原結合部分が
(c)配列番号:1のアミノ酸631−932;または
(d)配列番号:1のアミノ酸889−929;
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合し、
抗原結合部分が、LRP6結合分子の非存在下または対照抗体の存在下での阻害と比較して、Wnt1シグナル伝達経路を36%以下で阻害し、Wnt3シグナル伝達経路を少なくとも98%阻害する
、結合分子。
【請求項32】
Wntシグナル伝達経路をアゴナイズすることができる、請求項31に記載のLRP6結合分子。
【請求項33】
Wntシグナル伝達経路をアンタゴナイズすることができる、請求項31に記載のLRP6結合分子。
【請求項34】
請求項3133のいずれかに記載のLRP6結合分子を含む医薬組成物。
【請求項35】
Wnt関連障害に罹患しているか、または患っている対象における、Wnt関連障害を処置するための医薬組成物であって、請求項3133のいずれかに記載のLRP6結合分子を含む医薬組成物。
【請求項36】
癌に罹患しているか、または患っている対象における、癌を処置するための医薬組成物であって、
特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子であって、ここで、
(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合、抗原結合部分が
(a)配列番号:1のアミノ酸20−326;または
(b)配列番号:1のアミノ酸286−324;
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する
(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合、抗原結合部分が
(c)配列番号:1のアミノ酸631−932;または
(d)配列番号:1のアミノ酸889−929
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する、結合分子を含む医薬組成物。
【請求項37】
肥満または糖尿病に罹患しているか、または患っている対象における、肥満または糖尿病を処置するための医薬組成物であって、
特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子であって、ここで、
(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合、抗原結合部分が
(a)配列番号:1のアミノ酸20−326;または
(b)配列番号:1のアミノ酸286−324;
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する
(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合、抗原結合部分が
(c)配列番号:1のアミノ酸631−932;または
(d)配列番号:1のアミノ酸889−929;
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する、結合分子を含む医薬組成物。
【請求項38】
神経変性疾患に罹患しているか、または患っている対象における、神経変性疾患を処置するための医薬組成物であって、
特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子であって、ここで、
(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合、抗原結合部分が
(a)配列番号:1のアミノ酸20−326;または
(b)配列番号:1のアミノ酸286−324;
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する
(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合、抗原結合部分が
(c)配列番号:1のアミノ酸631−932;または
(d)配列番号:1のアミノ酸889−929;
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する、結合分子を含む医薬組成物。
【請求項39】
線維性障害に罹患しているか、または患っている対象における、線維性障害を処置するための医薬組成物であって、
特異的にLRP6の第1のプロペラまたは第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子であって、ここで、
(i)特異的にLRP6の第1のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合、抗原結合部分が
(a)配列番号:1のアミノ酸20−326;または
(b)配列番号:1のアミノ酸286−324;
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する
(ii)特異的にLRP6の第3のプロペラに結合するモノクローナル抗体の抗原結合部分を含むアンタゴナイズLRP6結合分子である場合、抗原結合部分が
(c)配列番号:1のアミノ酸631−932;または
(d)配列番号:1のアミノ酸889−929;
のいずれかに含まれるか、またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配列番号:1)のエピトープに結合する、結合分子を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
Wnt遺伝子ファミリーはInt1/Wnt1癌原遺伝子およびショウジョウバエwingless(“Wg”)、ショウジョウバエWnt1ホモログに関連する分泌タンパク質の大きなクラスをコードする(Cadigan et al. (1997) Genes & Development 11:3286-3305)。Wntは種々の組織および臓器で発現し、ショウジョウバエにおける分節;線虫における内胚葉発達;および哺乳動物における手足の極性、神経堤分化、腎臓形態形成、性決定および脳発達の確立を含む多数の発生プロセスに必要である(Parr, et al. (1994) Curr. Opinion Genetics & Devel. 4:523-528)。Wnt経路は胚形成および成熟生物の両方で動物発達におけるマスター調節因子である(Eastman, et al. (1999) Curr Opin Cell Biol 11: 233-240; Peifer, et al. (2000) Science 287: 1606-1609)。
【背景技術】
【0002】
Wntシグナルは7回膜貫通ドメイン受容体のFrizzled(“Fz”)ファミリーにより伝達される(Bhanot et al. (1996) Nature 382:225-230)。Frizzled細胞−表面受容体(Fzd)は標準および非標準の両方のWntシグナル伝達において必須の役割を果たす。標準経路において、Wntタンパク質によるFzdおよびLRP5/6(低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質5および6)を活性化すると、シグナルは“β−cat破壊複合体”によるβ−カテニンのリン酸化および分解を阻止し、核において安定なβ−カテニン転座および蓄積、したがってWntシグナル伝達を可能にすることを引き起こす(Perrimon (1994) Cell 76:781-784)(Miller, J.R. (2001) Genome Biology; 3(1):1-15)。非標準Wntシグナル伝達経路はあまり定義されておらず:平面内細胞極性(PCP)経路、Wnt/Ca++経路および収斂伸長経路を含む提案されている少なくとも2つの非標準Wntシグナル伝達経路がある。
【0003】
グリコーゲン合成キナーゼ3(GSK3、ショウジョウバエにおけるshaggyとしても既知)、腫瘍サプレッサー遺伝子生成物APC(大腸腺腫様ポリポーシス)(Gumbiner (1997) Curr. Biol. 7:R443-436)および骨組(scaffold)タンパク質AxinはすべてWnt経路の負の調節因子であり、一緒に“β−cat破壊複合体”を形成する。Wntリガンドの非存在下で、これらのタンパク質は複合体を形成し、β−カテニンのリン酸化および分解を促進するが、Wntシグナル伝達は複合体を不活性化し、β−カテニン分解を阻止する。安定化β−カテニンは結果として核に移行し、そこでTCF(T細胞因子)転写因子(リンパ球エンハンサー結合因子−1(LEF1)としても既知)に結合し、TCF/LEF−誘導性転写のコアクチベーターとして働く(Bienz, et al. (2000) Cell 103: 311-320; Polakis, et al. (2000) Genes Dev 14: 1837-1851)。
【0004】
Wntシグナル伝達は標準および非標準メカニズムを介して起こる。標準経路において、Wntタンパク質によるFzdおよびLRP5/6の活性化が起こると、安定化β−カテニンは核において蓄積し、TCF標的遺伝子(上記のとおり)の活性化を引き起こす。(Miller, J.R. (2001) Genome Biology; 3(1):1-15)。非標準Wntシグナル伝達経路はあまり定義されておらず:平面内細胞極性(PCP)経路およびWnt/Ca++経路を含む少なくとも2つの非標準Wntシグナル伝達経路が提案されている。
【0005】
β−カテニンの安定化を介する異常に高いWnt経路活性化は多数の結腸直腸癌腫の腫瘍形成において主要な役割を果たす。80%の結腸直腸癌腫(CRC)が腫瘍リプレッサーAPCにおいて不活性化している変異を有し、これが連続したWntシグナル伝達を可能にすると予測されている。さらに、Wnt経路活性化が黒色腫、乳房、肝臓、肺および胃癌と関連し得ることを提案する証拠が増加している。Wnt、正常発達および癌の長く認められた関係、Wntシグナル伝達の標的としてc−Myc癌原遺伝子の同定でさらに確立された関係がある(He et al. (1998) Science 281:1509-3512)。
【0006】
さらに、Wntシグナル伝達の病理学的に高いまたは低いレベルと関連する他の障害は、骨粗鬆症、骨関節症、多発性嚢胞腎、糖尿病、統合失調症、血管疾患、心疾患、非発癌性増殖性疾患および神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病を含むが、これらに限定されない。Wntシグナル伝達の異常上方調節は癌、骨関節症および多発性嚢胞腎と関連し、Wntシグナル伝達の異常下方調節は骨粗鬆症、肥満、糖尿病、線維性障害および神経変性疾患と関連する。
【0007】
Wntシグナル伝達関連障害、例えば、結腸直腸癌の治療法を開発するための最近のパラダイムは、β−catまたはWnt経路のβ−catの下流成分を標的とすることに頼っている。しかしながら、最近の試験でWnt受容体FrizzledおよびLRP5/6が介在する自己分泌Wntシグナル伝達が腫瘍増殖および生存の調節において重要な役割を果たし得ることを提案している。他の重要な連結に沿ってWnt経路の活性化を調節することによりWntシグナル伝達活性を阻害または増強し、それによってWntシグナル伝達関連障害を処置、診断、予防および/または改善する薬物および方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は、LRP6のエピトープ、LRP6結合分子およびその分子を使用する方法に関する。LRP6結合分子はLRP6と相互作用し、したがってLRP6機能を調節することができる。LRP6をアゴナイズまたはアンタゴナイズする結合分子はそれぞれWnt経路シグナル伝達を促進または阻害するために使用することができる;したがって、LRP6をアゴナイズまたはアンタゴナイズする結合分子は、例えば、それぞれWnt経路シグナル伝達の異常に低いまたは異常に高いレベルと関連するWntシグナル伝達障害を診断、その症状を改善、その障害から保護、およびその障害を処置するために使用することができる。Wntシグナル伝達の異常上方調節と関連する障害の非限定的な例は癌(例えば、乳癌、肺癌および大腸癌)である。Wntシグナル伝達の異常下方調節と関連する障害の非限定的な例は低い骨ミネラル密度(BMD)により特徴付けられる骨関連障害(例えば、骨粗鬆症)である。
【0009】
種々の局面において、本発明はLRP6の1つ以上の生物学的機能を調節する(例えば、阻害または促進する)LRP6結合分子を提供する。例えば、LRP6結合分子はβ−カテニンのリン酸化および続く分解を調節することができる。さらなる例として、LRP6結合分子はWnt経路の不可欠のメンバー、例えば、DKK1(dickkopf1)、DKK2、DKK4、SOST1、SOSD1(USAG1)、sFRP(可溶性Fzd−関連タンパク質)1−4、Wise(USAG1のマウスバージョン)またはWntリガンドそれら自体に結合するLRP6の能力を妨げることができる。
【0010】
LRP6結合分子は、例えば、LRP6(例えば、LRP6の特定のドメインまたはエピトープ内、LRP6の細胞外ドメインの第1または第3のプロペラ、またはいずれかのプロペラ内の特定のドメイン(例えば、EGFリピート、YWTD様モチーフまたは他のもの))に結合する抗体およびこのような抗体の抗原結合部分を含むポリペプチドを含む。LRP6結合分子は、また、結合部分が抗体由来ではなく、例えば、免疫グロブリン様フォールドを有するポリペプチド由来LRP6結合分子であり、抗原結合部分がランダム化、選択および親和性成熟を介してLRP6に結合するように操作された分子を含む。
【0011】
したがって、1つの局面において、本発明はLRP6に結合する(例えば、特異的に結合する)抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であって、ここで、抗原結合部分は以下のうちいずれかに含まれるか、または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6のプロペラ1(配列番号:2;配列番号:1の残基20−326)内のエピトープに結合する結合分子を特徴とする:(a)配列番号:1のアミノ酸286−324(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:NATNPCGIDN GGCSHLCLMS PVKPFYQCAC PTGVKLLENG KTCK(配列番号:3));(b)配列番号:1のアミノ酸66−69(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:YWSD);(c)配列番号:1のアミノ酸110−113(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:YWTD);(d)配列番号:1のアミノ酸153−156(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:YWTD);(e)配列番号:1のアミノ酸197−200(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:YWAD);および(f)配列番号:1のアミノ酸238−241(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:YWTD)。
【0012】
他の局面において、本発明はLRP6に結合する(例えば、特異的に結合する)抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であって、ここで、抗原結合部分は以下のうちいずれかに含まれるか、または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6のプロペラ1(配列番号:2;配列番号:1の残基20−326)内のエピトープに結合する結合分子を特徴とする:(a)配列番号:1のアミノ酸20−65;(b)配列番号:1のアミノ酸70−109;(c)配列番号:1のアミノ酸114−152;(d)配列番号:1のアミノ酸157−196;(e)配列番号:1のアミノ酸201−237;および(f)配列番号:1のアミノ酸242−326。
【0013】
したがって、1つの局面において、本発明はLRP6に結合する(例えば、特異的に結合する)抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であって、ここで、抗原結合部分は以下のうちいずれかに含まれるか、または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6のプロペラ3(配列番号:4;配列番号:1の残基631−932)内のエピトープに結合する結合分子を特徴とする:(a)配列番号:1のアミノ酸889−929(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:GW NECASSNGHC SHLCLAVPVG GFVCGCPAHY SLNADNRTC(配列番号:5));(b)配列番号:1のアミノ酸677−680(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:YWTD);(c)配列番号:1のアミノ酸720−723(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:YWAD);(d)配列番号:1のアミノ酸763−766(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:YWTE);(e)配列番号:1のアミノ酸806−809(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:YWTD);および(f)配列番号:1のアミノ酸846−849(すなわち、下記配列に含まれるか、またはそれと重複しているエピトープ:YWTD)。
【0014】
他の局面において、本発明はLRP6に結合する(例えば、特異的に結合する)抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子であって、ここで、抗原結合部分は以下のうちいずれかに含まれるか、または以下のうちいずれかと重複しているヒトLRP6のプロペラ3(配列番号:4;配列番号:1の残基631−932)内のエピトープに結合する結合分子を特徴とする:(a)配列番号:1のアミノ酸631−676;(b)配列番号:1のアミノ酸681−719;(c)配列番号:1のアミノ酸724−762;(d)配列番号:1のアミノ酸767−805;(e)配列番号:1のアミノ酸810−845;および(f)配列番号:1のアミノ酸850−932。
【0015】
種々の態様において、LRP6結合分子(例えば、抗LRP6アンタゴナイズ抗体)は特定のWntリガンドが同時に結合することを阻止するようにヒトLRP6内のエピトープ(例えば、ヒトLRP6プロペラ1、プロペラ3またはそれらの構成ドメインまたはモチーフ)に結合する。非限定的な例として、Wntシグナル伝達経路をアンタゴナイズするLRP6結合分子はWnt1またはWnt3aリガンドがLRP6と結合することを阻止する。例えば、Wnt3およびWnt3a−特異的シグナル伝達活性はWnt3a特異的LRP6をアンタゴナイズする結合分子によりさらに効果的に阻害することができる。さらなる非限定的な例として、Wnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7a、Wnt7bおよびWnt10−特異的シグナル伝達活性はWnt1特異的LRP6をアンタゴナイズする結合分子によりさらに効果的に阻害することができる。
【0016】
種々の態様において、LRP6結合分子(例えば、抗LRP6アンタゴナイズ抗体)は1つ以上のLRP6のプロペラ(例えば、同時にプロペラ1、プロペラ3、またはそれらの構成ドメインまたはモチーフ)に結合することができる。場合によっては、該同時に結合するLRP6結合分子は特定のWntリガンドが同様にLRP6と結合することを阻止することができる。非限定的な例として、該同時に結合するLRP6結合分子はWnt1またはWnt3aリガンドがLRP6と結合することを阻止することができる。非限定的な例として、該同時に結合するLRP6結合分子はWnt3およびWnt3a−特異的シグナル伝達活性を阻害することができる。さらなる非限定的な例として、該同時に結合するLRP6結合分子はWnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7a、Wnt7bおよびWnt10−特異的シグナル伝達活性を阻害することができる。
【0017】
種々の態様において、ヒトLRP6プロペラ1、プロペラ3、またはそれらの構成ドメインまたはモチーフ内のエピトープに結合するLRP6結合分子(例えば、抗LRP6アゴナイズまたはアンタゴナイズ抗体)は非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルまたはアカゲザル)のLRP6タンパク質(またはそれらの部分)と交差反応する。種々の態様において、LRP6結合分子は齧歯動物種のLRP6(例えば、マウスLRP6、ラットLRP6)と交差反応する。種々の態様において、LRP6結合分子はヒトLRP5と交差反応する。
【0018】
種々の態様において、LRP6結合分子(例えば、抗LRP6アンタゴナイズ抗体)はリン酸化LRP6(ホスホ−LRP6)に結合し、調節(例えば、阻害)することができる。
【0019】
種々の態様において、抗原結合部分は直鎖エピトープに結合する。
【0020】
種々の態様において、抗原結合部分は非直鎖エピトープに結合する。1つの例において、抗原結合部分はそれぞれの下記直鎖エピトープの少なくとも1つの部分を含む、またはそれぞれの下記直鎖エピトープの少なくとも1つの部分からなる非直鎖エピトープに結合する:(a)配列番号:1のアミノ酸286−324;(b)配列番号:1のアミノ酸66−69;(c)配列番号:1のアミノ酸110−113;(d)配列番号:1のアミノ酸153−156;(e)配列番号:1のアミノ酸197−200;および(f)配列番号:1のアミノ酸238−241。さらなる例において、抗原結合部分は2または3つの下記直鎖エピトープの少なくとも1部を含む、または2または3つの下記直鎖エピトープの少なくとも1部からなる非直鎖エピトープに結合する:(a)配列番号:1のアミノ酸889−929;(b)配列番号:1のアミノ酸677−680;(c)配列番号:1のアミノ酸720−723;(d)配列番号:1のアミノ酸763−766;(e)配列番号:1のアミノ酸806−809;および(f)配列番号:1のアミノ酸846−849。
【0021】
種々の態様において、LRP6結合分子の抗原結合部分は解離定数(K)1nM、0.5nM、0.25nMまたは0.1nM以下にてLRP6に結合する。
【0022】
種々の態様において、LRP6結合分子の抗原結合部分はK1nM、0.5nM、0.25nMまたは0.1nM以下にて非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルまたはチンパンジー)のLRP6に結合する。
【0023】
種々の態様において、抗原結合部分は1nM、0.5nM、0.25nMまたは0.1nM以下のKにてでマウスLRP6に結合する。
【0024】
抗体はキメラ(例えば、ヒト化)抗体またはヒト抗体であり得る。
【0025】
1つの態様において、抗原結合部分はヒト抗体の抗原結合部分である。
【0026】
抗原結合部分はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の抗原結合部分であり得る。
【0027】
LRP6結合分子は、例えば、抗体のFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)またはFvフラグメントを含む。LRP6結合分子は、また、例えば、完全抗体、例えば、二価IgG抗体を含む。いくつかの態様において、LRP6をアンタゴナイズすることができるFabまたは他の一価抗体フラグメントはLRP6をアゴナイズすることができる二価完全抗体、例えば、二価IgG抗体に変換することができる。
【0028】
他の態様において、LRP6結合分子を該結合分子を増加するための薬物と接合または結合させる。場合によっては、LRP6結合分子はヒト血清アルブミン(HSA)結合タンパク質と結合する。いくつかの態様において、LRP6結合分子を(例えば、US特許番号US5,840,526;US5,874,541;US6,005,079;およびUS6,765,087(“Hamersの特許”)のいずれか、およびPCT出願WO97/49805を含む特許ファミリーに記載されている特許技術を使用して)ペグ化する。いくつかの態様において、LRP6結合分子はペグ化Fabフラグメントである。LRP6結合分子の該接合体を製造するために使用することができる技術の非限定的な例は1つ以上の下記のもの:US特許番号US5,840,526;US5,874,541;US6,005,079;およびUS6,765,087(“Hamersの特許”);PCT出願WO97/49805;欧州特許EP1517921B1;US特許6,267,974;およびUS出願US2003−0175921、を含む特許ファミリーにおいて見出すことができる。
【0029】
1つの態様において、LRP6結合分子はヒト抗体である。
【0030】
1つの態様において、LRP6結合分子は一本鎖Fvを含む。
【0031】
1つの態様において、LRP6結合分子はダイアボディ(例えば、一本鎖ダイアボディまたは2つのポリペプチド鎖を有するダイアボディ)を含む。
【0032】
いくつかの態様において、抗体の抗原結合部分は下記のいずれかのイソ型の抗体由来である:IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4。いくつかの態様において、抗体の抗原結合部分はIgAまたはIgEイソ型の抗体由来である。
【0033】
LRP6結合分子(例えば、LRP6の細胞外ドメインの第1または第3のプロペラ内のエピトープ、または該プロペラ内の特定のドメイン(例えば、EGFリピートまたはYWTD様モチーフ)に結合するLRP6結合分子)は1つ以上の多くの生物学的活性を示すことができる。種々の態様において、LRP6結合分子は種々のWntシグナル伝達経路メンバー(例えば、DKK1(dickkopf1)、DKK2、DKK4、SOST1、SOSD1(USAG1)、sFRP(可溶性Fzd−関連タンパク質)1−4、WiseまたはWntリガンドそれら自体)へのLRP6結合を阻害する。例えば、LRP6結合分子はWntシグナル伝達経路メンバーへのLRP6結合を対照と比較して(例えば、LRP6結合分子の非存在下での結合と比較して)少なくとも5%、10%、15%、25%または50%阻害する。
【0034】
1つの態様において、LRP6結合分子はLRP6に結合するためにWntシグナル伝達経路メンバー(例えば、DKK1(dickkopf1)、DKK2、DKK4、SOST1、SOSD1(USAG1)、sFRP(可溶性Fzd−関連タンパク質)1−4、WiseまたはWntリガンドそれら自体)と競合し、それによってWnt経路シグナル伝達の生物学的活性および結果を調節する。非限定的な例として、アンタゴナイズLRP6結合分子はLRP6に結合するためにWntシグナル伝達経路メンバーと競合することによりWnt経路活性化およびシグナル伝達を阻害、軽減または阻止することができる。さらなる例として、Wnt1特異的アンタゴナイズLRP6結合分子はWnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7a、Wnt7bおよびWnt10のいずれかによるWnt経路活性化およびシグナル伝達を阻止することができる。さらなる例として、アンタゴナイズLRP6結合分子(例えば、これはLRP6の第1のプロペラ内に結合する)は、WiseまたはWntリガンドによるWnt経路活性化およびシグナル伝達を阻害、軽減または阻止することができる。さらにさらなる例として、アンタゴナイズLRP6結合分子(例えば、これはLRP6の第3のプロペラ内に結合する)は、例えば、DKK1およびWntリガンド、例えば、Wnt3およびWnt3aによるWnt経路活性化およびシグナル伝達を阻害、軽減または阻止することができる。
【0035】
いくつかの態様において、LRP6結合分子はWntシグナル伝達経路を活性化、強化または永続化するか、または細胞をWntシグナル伝達に感受性にすることができる。非限定的な例として、アゴナイズLRP6結合分子はLRP6(例えば、第3のプロペラ)に結合し、カテニン破壊複合体の分解を引き起こし、それによってβ−カテニン安定化、核転座および転写因子の関与を可能にすることができる。
【0036】
いくつかの態様において、アゴナイズLRP6結合分子はLRP6をオリゴマー化することによりWntシグナル伝達経路を活性化、強化または永続化するか、または細胞をWntシグナル伝達に感受性にすることができる。Wntリガンドの必要条件は本発明のLRP6結合分子を含むLRP6のオリゴマー形成(例えば、Fzd−LRP6ヘテロ−オリゴマー)を可能にする薬物により排除することができることが知られている(Cong et al. (2004) Development 131(20): 5103)。いくつかの態様において、該LRP6結合分子は本明細書に記載されている二価IgG抗体である。
【0037】
いくつかの態様において、LRP6結合分子はLRP6により直接または間接様式において通常、調節される下流生物学的活性を調節する(例えば、β−カテニンリン酸化および分解の調節)。例えば、アンタゴナイズLRP6結合分子はβ−カテニンリン酸化および分解を対照と比較して(例えば、アンタゴナイズLRP6結合分子の非存在下での活性と比較して)少なくとも5%、10%、15%、25%または50%以上可能にする。
【0038】
1つの態様において、Wnt1特異的アンタゴナイズLRP6結合分子はWnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7a、Wnt7bおよびWnt10のいずれかによるWnt経路活性化およびシグナル伝達を阻止することによりβ−カテニンリン酸化および分解を対照と比較して少なくとも5%、10%、15%、25%または50%以上可能にする。他の態様において、Wnt3a特異的アンタゴナイズLRP6結合分子はWnt3またはWnt3aによりWnt経路活性化およびシグナル伝達を阻止することによりβ−カテニンリン酸化および分解を対照と比較して少なくとも5%、10%、15%、25%または50%以上可能にする。他の態様において、Wnt1特異的にアンタゴナイズするLRP6結合分子はWiseがLRP6に結合することを阻止することによりβ−カテニンリン酸化および分解を対照と比較して少なくとも5%、10%、15%、25%または50%以上可能にする。さらに他の態様において、Wnt3a特異的アンタゴナイズLRP6結合分子はDKK1、Wntリガンド、例えば、Wnt3およびWnt3aなどがLRP6に結合することを阻止することによりβ−カテニンリン酸化および分解を対照と比較して少なくとも5%、10%、15%、25%または50%以上可能にする。
【0039】
逆に、例えば、アゴナイズLRP6結合分子はβ−カテニンタンパク質レベルを対照と比較して(例えば、アゴナイズLRP6結合分子の非存在下での活性と比較して)少なくとも5%、10%、15%、25%または50%以上安定化する。
【0040】
本発明は、また、非抗体LRP6結合分子を特徴とする。非抗体LRP6結合分子は非抗体ポリペプチド、例えば、以下のいずれかのものなどの免疫グロブリン様(Ig様)フォールド由来アミノ酸配列を有するLRP6結合ドメインを含む:テネイシン、N−カドヘリン、E−カドヘリン、ICAM、フィブロネクチン、タイチン、GCSF−受容体、サイトカイン受容体、グリコシダーゼ阻害剤、抗生物質、色素タンパク質、ミエリン膜接着分子、P0、CD8、CD4、CD2、クラスI MHC、T−細胞抗原受容体、CD1、C2およびVCAM−1のI−setドメイン、ミオシン結合タンパク質CのI−set免疫グロブリンドメイン、ミオシン結合タンパク質HのI−set免疫グロブリンドメイン、テロキンのI−set免疫グロブリンドメイン、NCAM、トウィッチン、ニューログリアン、成長ホルモン受容体、エリスロポエチン受容体、プロラクチン受容体、インターフェロン−ガンマ受容体、β−ガラクトシダーゼ/グルクロニダーゼ、β−グルクロニダーゼ、トランスグルタミナーゼ、T−細胞抗原受容体、スーパーオキシド・ジスムターゼ、組織因子ドメイン、シトクロムF、緑色蛍光タンパク質、GroELまたはソーマチン。一般的に、LRP6結合ドメインのアミノ酸配列は、免疫グロブリン様フォールドのアミノ酸配列と比較して、LRP6結合ドメインが特異的にLRP6に結合するように改変される(すなわち、ここで、免疫グロブリン様フォールドは特異的にLRP6に結合しない)。
【0041】
種々の態様において、LRP6結合ドメインのアミノ酸配列はフィブロネクチン、サイトカイン受容体またはカドヘリンの免疫グロブリン様フォールドのアミノ酸配列と少なくとも60%同一(例えば、少なくとも65%、75%、80%、85%または90%同一)である。
【0042】
種々の態様において、LRP6結合ドメインのアミノ酸配列は以下のいずれかの免疫グロブリン様(Ig様)フォールドのアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、75%、80%、85%または90%同一である:テネイシン、N−カドヘリン、E−カドヘリン、ICAM、タイチン、GCSF−受容体、サイトカイン受容体、グリコシダーゼ阻害剤、抗生物質、色素タンパク質、ミエリン膜接着分子、P0、CD8、CD4、CD2、クラスI MHC、T−細胞抗原受容体、CD1、C2およびVCAM−1のI−setドメイン、ミオシン結合タンパク質CのI−set免疫グロブリンドメイン、ミオシン結合タンパク質HのI−set免疫グロブリンドメイン、テロキンのI−set免疫グロブリンドメイン、NCAM、トウィッチン、ニューログリアン、成長ホルモン受容体、エリスロポエチン受容体、プロラクチン受容体、インターフェロン−ガンマ受容体、β−ガラクトシダーゼ/グルクロニダーゼ、β−グルクロニダーゼ、トランスグルタミナーゼ、T−細胞抗原受容体、スーパーオキシド・ジスムターゼ、組織因子ドメイン、シトクロムF、緑色蛍光タンパク質、GroELまたはソーマチン。
【0043】
種々の態様において、LRP6結合ドメインはK1nM以下(例えば、0.5nM、01nM)にてLRP6に結合する。
【0044】
いくつかの態様において、Ig様フォールドはフィブロネクチンのIg様フォールド、例えば、III型フィブロネクチンのIg様フォールド(例えば、III型フィブロネクチンのモジュール10のIg様フォールド)である。
【0045】
本発明は、また、LRP6の抗原エピトープに対応するペプチドを提供する。1つの局面において、本発明は以下のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも90%同一のアミノ酸配列からなるペプチドを特徴とする:LRP6の第1のプロペラ(配列番号:2);NATNPCGIDN GGCSHLCLMS PVKPFYQCAC PTGVKLLENG KTCK(配列番号:3);LRP6の第3のプロペラ(配列番号:4);またはGW NECASSNGHC SHLCLAVPVG GFVCGCPAHY SLNADNRTC(配列番号:5)。
【0046】
他の局面において、本発明は、動物に投与したとき、特異的にLRP6に結合する抗体を引き起こすための組成物を提供する。組成物は、例えば、以下のペプチドのいずれかを含む:LRP6の第1のプロペラ(配列番号:2);NATNPCGIDN GGCSHLCLMS PVKPFYQCAC PTGVKLLENG KTCK(配列番号:3);LRP6の第3のプロペラ(配列番号:4);GW NECASSNGHC SHLCLAVPVG GFVCGCPAHY SLNADNRTC(配列番号:5);5つ未満のアミノ酸変化を有するそれらのペプチド;またはそれらのフラグメント(例えば、5、6、7、8、9、10、11または12つのアミノ酸を含むフラグメント)。ペプチドは、例えば、担体タンパク質と結合することにより、抗原性を増加させるために修飾することができる。
【0047】
本発明は、また、本明細書に記載されているLRP6結合分子を含む医薬組成物を特徴とする。該組成物は、例えば、LRP6結合分子および薬学的に許容される担体を含む。
【0048】
本発明は、また、本明細書に記載されているLRP6結合分子を使用する方法を特徴とする。
【0049】
1つの局面において、本発明は腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を特徴とする。該方法は腫瘍細胞をアンタゴナイズLRP6結合分子(例えば、特異的にLRP6に結合する抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子)と接触させ、それによってβ−カテニン破壊複合体を安定化し、β−カテニンリン酸化および分解を引き起こし、腫瘍細胞内のWnt経路シグナル伝達を阻止することを含む。
【0050】
他の局面において、本発明は腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導する方法を特徴とする。該方法は腫瘍細胞または宿主細胞環境をアンタゴナイズLRP6結合分子(例えば、特異的にLRP6に結合する抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子)と接触させ、それによってβ−カテニン破壊複合体を安定化し、β−カテニンリン酸化および分解を引き起こし、腫瘍細胞内のWnt経路シグナル伝達を阻止することを含む。
【0051】
さらに他の局面において、本発明は癌性腫瘍のストロマ支持体を侵食する方法を特徴とする。該方法は腫瘍細胞をアンタゴナイズLRP6結合分子(例えば、特異的にLRP6に結合する抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子)と接触させ、それによって腫瘍が依存する血管(血管形成またはその他)および/または他の構造成分を殺すことを含む。
【0052】
上記の場合、アンタゴナイズLRP6結合分子は腫瘍細胞の増殖を阻害するか、または腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導するそれぞれの有効量で投与することができる。対象の正常細胞に対する癌細胞の比を、組成物を投与する前の該比と比較して、少なくとも10%減少させることができる(例えば、正常細胞に対する癌細胞の比を少なくとも25%、30%、50%、60%、75%または100%減少させる)。いくつかの態様において、該対象は、また、化学療法剤による治療を受けている。
【0053】
1つの局面において、本発明のLRP6アゴナイズまたはアンタゴナイズ結合分子は、例えば、本明細書に定義の骨関連障害を診断、その症状を改善、その障害から保護、およびその障害を処置するために使用することができる。
【0054】
1つの局面において、本発明は対象における骨ミネラル密度を高くする方法を特徴とする。該方法はアゴナイズLRP6結合分子(例えば、特異的にLRP6に結合する抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子)を対象に骨ミネラル密度を高くするための有効量にて投与することを含む。いくつかの態様において、該アゴナイズLRP6結合分子はLRP6およびスクレロスチンの結合事象を妨げ、Wntシグナル伝達経路を活性化、強化または永続化するか、または細胞をWntシグナル伝達に感受性にすることができる。スクレロスチンはSOST遺伝子によってコードされるタンパク質であり、骨関連障害に関与するWntシグナル伝達経路の負の調節因子である(Wntシグナル伝達は正常生理学的条件下で骨形成に重要である)。
【0055】
非限定的な例として、アゴナイズLRP6結合分子はLRP6(例えば、LRP6の第3のプロペラ)に結合し、β−カテニン破壊複合体の分解を引き起こし、それによってβ−カテニン安定化、核転座および転写因子の関与を可能にし、それによってそのプロセスにおける骨ミネラル密度を高くすることができる。他の非限定的な例として、アゴナイズLRP6結合分子は第3のプロペラ以外のLRP6に結合することができる。これらの場合において、該LRP6アゴニスト抗体はWntシグナル伝達を活性化、強化または永続化するか、または細胞がWntシグナル伝達に感受性になるようにLRP6をオリゴマー化することができる。
【0056】
他の局面において、本発明は対象における骨ミネラル密度を低くする方法を特徴とする。該方法はアンタゴナイズLRP6結合分子(例えば、特異的にLRP6に結合する抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子)を対象に骨ミネラル密度を低くするための有効量にて投与することを含む。いくつかの態様において、該アンタゴナイズLRP6結合分子はスクレロスチンの効果を模倣し、したがって類似の方法でWnt経路を負に調節することができる。
【0057】
いくつかの態様において、アンタゴナイズLRP6結合分子はWnt1に特異的であり、LRP6の第1のプロペラに結合する。いくつかの他の態様において、アンタゴナイズLRP6結合分子はWnt1に特異的であり、LRP6の第1のプロペラに結合し、リガンドWnt1、Wnt6および/またはWnt7をLRP6との相互作用およびWnt経路の開始から阻止する。
【0058】
他の局面において、本発明はメタボリック・シンドロームおよび/または冠動脈疾患の症状を改善または予防する方法を特徴とする。該方法はアゴナイズLRP6結合分子(例えば、特異的にLRP6に結合する抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子)を対象にメタボリック・シンドロームおよび/または冠動脈疾患の症状を改善または予防するための有効量にて投与することを含む。いくつかの態様において、該アゴナイズLRP6結合はWntシグナル伝達経路を活性化、強化または永続化することができるか、または細胞をWntシグナル伝達に感受性にする。非限定的な例として、該アゴナイズLRP6結合分子はLRP6(例えば、LRP6の第3のプロペラ)に結合し、LRP6のオリゴマー形成を誘導し、およびβ−カテニン破壊複合体の分解を引き起こし、それによってβ−カテニン安定化、核転座および転写因子の関与を可能にし、それによってそのプロセスにおけるメタボリック・シンドロームおよび/または冠動脈疾患の症状を改善または予防することができる。
【0059】
いくつかの態様において、組成物は静脈内に投与される。
【0060】
本発明の1つ以上の態様の詳細は添付の図面および以下に記載されている。本発明の他の特徴、対象および利点は本記載および図面ならびに特許請求の範囲から明らかである。
【0061】
図面の簡単な説明
特許または出願ファイルは少なくとも1つの色つきで作製された図を含む。色つきの図を有する本特許または特許出願公開文献のコピーは請求および必要な料金の支払いがあれば庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1は優先的にWnt1誘導Wntシグナル伝達を阻害する抗LRP6アンタゴニストFabの同定の図示的描写である。
図2図2は優先的にWnt3A誘導Wntシグナル伝達を阻害する抗LRP6アンタゴニストFabの同定の図示的描写である。
図3図3は抗LRP6アゴニストFabの同定の図示的描写である。
図4図4Aは、LRP6切断変異体がLRP6ドメインマッピングにおいて生成される場所を説明する。図4Bは、異なる変異体に対応するそれぞれのグラフにて、切断変異体のFACS分析を示す。上段の左から右へLRP6全長、LRP6欠失IおよびLRP6欠失IIを特徴付ける。下段の左から右へLRP6欠失III、LRP欠失IおよびIIならびにLRP6欠失IおよびIIIを特徴付ける。細胞を抗Flag抗体で染色した。図4Cは、異なる変異体に対応するそれぞれのグラフにて、切断変異体のFACS分析を示す。配置は図4Bと同じであり、細胞をFab005、Fab021、Fab010、Fab004、Fab002、Fab026、Fab025およびコントロール(抗リソソームFab)で染色した。
図5図5は、多くのFabがIgGに変換されるときの、活性の変化の図示的描写である。図5AはWnt1による誘導を示し、そして図5BはWnt3Aによる誘導を示す。
図6図6はリン酸化LRP6(ホスホ−LRP6)を阻害する抗LRP6結合分子の能力の図示的証明である。図6AはPA−1(卵巣、奇形癌)細胞におけるホスホ−LRP6阻害を示し、そして図6BはNCI−H929(多発性骨髄腫)細胞におけるホスホ−LRP6阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明の詳細な説明
本発明は、LRP6(低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6)に結合する分子(“LRP6結合分子”)、特にヒトLRP6に結合し、その機能を調節するヒト抗体およびそれらの部分を提供する。LRP6のエピトープおよびこれらのエピトープに結合する薬物は、また、本出願に提供される。
【0064】
ヒトLRP6(hLRP6)の全長配列はGenbank(登録商標)受入番号GI:148727288、gb|NP_002327の下に見られ、配列番号:1として表Iに示されている。hLRP6をコードするmRNA配列は受入番号GI:148727287、NM_002336の下に見られる。
【0065】
表I:ヒトLRP6のアミノ酸配列
【表1】
【0066】
ヒトLRP6のタンパク質配列(配列番号:1)内のドメインの位置は下記のとおりである:シグナルペプチドは配列番号:1のアミノ酸残基1−19に見ることができ;六枚β−プロペラ構造を形成する、4つのYWTD(チロシン、トリプトファン、スレオニンおよびアスパラギン酸)−型β−プロペラドメイン(Springer (1998) J. Mol. Biol.; 283:837; Jeon et al. (2001) Nat. Struct. Biol. 22:1172)は配列番号:1のアミノ酸20−326;配列番号:1のアミノ酸327−630;配列番号:1のアミノ酸631−932および配列番号:1のアミノ酸933−1246に見ることができる。ヒトLRP6はN42、N81、N281、N433、N486、N692、N859、N865、N926およびN1039にてN−グリコシル化される。
【0067】
マウスLRP6のアミノ酸配列はGenBank受入番号GI:148727327、NP_032540を有する。ショウジョウバエArrow配列は受入番号GI:24653390、NP_524737の下に見られ、そしてアフリカツメガエルLRP6配列は受入番号GI:10280605、AAG15429の下に見られる。ヒトLRP6は、最初にLDLR(低比重リポタンパク質受容体)との相同性により単離された、LRP5との相同性により同定された。Arrow/LRP5/LRP6はそれぞれ1678、1615および1613アミノ酸残基でI型1回膜貫通タンパク質である。LRP5およびLRP6は細胞外および細胞内ドメインにおいてそれぞれ73%および64%同一性を共有しているが、Arrowは同程度にLRP5およびLRP6と関連している(40%同一)。実際に、LRP6は培養されたショウジョウバエ細胞におけるWgシグナル伝達中でArrowの代わりとなり(Schweizer et al. (2003) BMC Cell Biol. 4, 4)、そして構造的に活性化したArrowは哺乳動物細胞およびアフリカツメガエル胚におけるWnt/β−カテニンシグナル伝達を活性化する(Tamai et al. (2004) Nature 407: 530)。
【0068】
定義
本明細書において使用される“Wntシグナル伝達関連障害”なる用語は異常Wntシグナル伝達と関連する疾患および状態を意味し、癌(例えば、結腸直腸癌腫(CRC)、黒色腫、乳房、肝臓、肺および胃癌;他のもの、非発癌性増殖性疾患、例えば、増殖性皮膚障害(例えば、乾癬、皮膚炎);骨粗鬆症;骨関節症;線維性障害;統合失調症;血管疾患;心疾患;異常毛髪成長または毛髪成長障害;創傷治癒;再生不足(肝臓、肺、手足);および神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病を含むがこれらに限定されない。Wntシグナル伝達の異常上方調節は癌、骨関節症および多発性嚢胞腎と関連し、Wntシグナル伝達の異常下方調節は骨粗鬆症、肥満、糖尿病および神経変性疾患と関連する。
【0069】
本明細書において使用される“Wntシグナル伝達関連癌”は結腸直腸癌腫(CRCs)、黒色腫、乳房、肝臓、肺および胃癌を含むが、これらに限定されない。本明細書において使用される“Wnt関連癌”なる用語は、また、悪性髄芽腫および他の原発性CNS悪性神経外胚葉腫瘍、横紋筋肉腫、肺癌、消化管由来腫瘍(食道、胃、膵臓および胆管系の癌を含むが、これらに限定されない);前立腺および膀胱癌;大腸癌;白血病および他の血液癌(例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)および骨髄異形成症候群(MDS));およびリンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)を含む。
【0070】
本明細書において使用される“調節する”は直接的または間接的にコントロールまたは影響する能力を示し、あるいは、非限定的な例として、阻害または刺激する、アゴナイズまたはアンタゴナイズする、妨害または促進する、および強めるまたは弱めることを意味することができる。
【0071】
本明細書において使用される“アンタゴナイズ”は、例えば、シグナル伝達経路、例えば、Wntを阻害または阻止する能力を示す。例として、本発明のアンタゴナイズLRP6結合分子は、例えば、Wnt経路メンバー(例えば、DKK1(dickkopf1)、DKK2、DKK4、SOST1、SOSD1(USAG1)、sFRP(可溶性Fzd−関連タンパク質)1−4、WiseまたはWntリガンド)に結合するLRP6の能力を妨げることによりWntシグナル伝達経路を介するシグナル伝達を阻止し、それによってβ−カテニンのリン酸化および分解を促進することができる。
【0072】
本明細書において使用される、“アゴナイズ”は、例えば、シグナル伝達経路、例えば、Wntを引き起こす、促進する、強化する、または増強する能力を示す。例として、本発明のアゴナイズLRP6結合分子は、例えば、Wntシグナル伝達経路を介するシグナル伝達を促進または強化し、Wnt経路メンバー(例えば、DKK1(dickkopf1)、DKK2、DKK4、SOST1、SOSD1(USAG1)、sFRP(可溶性Fzd−関連タンパク質)1−4、WiseまたはWntリガンド)に結合するLRP6の能力を容易にし、それによってβ−カテニンのリン酸化および分解を阻止することができる(それによってβ−カテニンが細胞核に到達し、転写因子に結合することを可能にする)。
【0073】
本明細書において使用される“骨関連障害”は骨ミネラル密度(BMD)が健常対象と比較して異常におよび/または病理学的に高い障害および骨ミネラル密度(BMD)が健常対象と比較して異常におよび/または病理学的に低い障害を含む。高いBMDにより特徴付けられる障害は骨硬化症、Van Buchem症候群、骨過成長障害およびSimpson−Golabi−Behmel症候群(SGBS)を含むが、これらに限定されない。低いBMDおよび/または骨脆弱性により特徴付けられる障害は原発性および続発性骨粗鬆症、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症・偽性神経膠腫症候群(OPPG)、骨形成不全症(OI)、無血管性壊死(骨壊死)、骨折およびインプラント治療(歯のインプラントおよび股関節インプラント)および他の障害(例えば、HIV感染症、癌または関節炎と関連する)による骨量の減少を含むが、これらに限定されない。他の“骨関連障害”はリウマチ性関節炎、骨関節症、骨折、関節炎および溶骨性病巣の形成および/または存在を含むが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書において使用される“線維性障害”は、過剰な繊維芽細胞または筋繊維芽細胞増殖およびコラーゲン、フィブロネクチンおよびグルコサミノグリカン(GAG)を含む結合組織マトリックスの生成により特徴付けられる、ヒトにおけるすべての線維性障害を意味する。該障害は皮膚のケロイド形成;進行性全身性硬化症(PSS);肝臓肝硬変症;特発性および薬理学的に誘発された肺線維症;慢性移植片対宿主病;強皮症(局所および全身);ペイロニー病;膀胱鏡後の尿道狭窄;外科手術後の内部癒着;特発性および薬理学的に誘発された後腹膜線維症;および骨髄線維症を含むが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書において使用される“線維性障害”は、また、肺線維性障害(例えば、放射線誘発線維症および喘息、COPDおよびサルコイドーシスと関連する線維症);肝線維性障害(例えば、アルコール性、C型肝炎および原発性胆汁性線維症、ならびに非アルコール性脂肪症、硬化性胆管炎および住血吸虫症による線維症);腎臓線維性障害(例えば、糖尿病性腎症、狼瘡糸球体硬化症、アルポート症候群および慢性腎臓同種移植片拒絶反応);心血管線維性障害(例えば、心筋梗塞の瘢痕、心臓肥大、動脈再狭窄およびアテローム性動脈硬化症);皮膚線維性障害(例えば、肥厚性瘢痕、熱傷瘢痕および腎性線維化性皮膚症);眼線維性障害(例えば、硝子体網膜症および後眼窩線維症)を含むが、これらに限定されない。
【0076】
“治療有効量”の本発明のLRP6結合分子は疾患症状の重症度の低下(例えば、異常に高いWntシグナル伝達と関連する障害の症状(例えば、腫瘍細胞の数、増殖速度または悪性度の減少)または異常に低いWntシグナル伝達と関連する障害の症状(例えば、LDLおよびトリグリセリドレベルの増加)の低下)、疾患無症状期間の頻度および期間の増加または疾患苦痛による機能障害または障害の予防を引き起こすことができる。
【0077】
“対象”なる用語は異常Wntシグナル伝達と関連する疾患、障害または状態に罹患しているか、または患っている生物、例えば、真核生物を含むことを意図する。対象の例は哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラットおよび遺伝子導入非ヒト動物を含む。特定の態様において、対象はヒト、例えば、癌(例えば、大腸癌)および他の増殖性疾患、骨粗鬆症および統合失調症、および本明細書に記載されている他の疾患または状態(例えば、Wntシグナル伝達関連障害)に罹患している、罹患している危険性がある、または罹患する可能性があるヒトである。
【0078】
本明細書において使用される“抗体”なる用語はインタクトな抗体または抗原結合フラグメント(すなわち、“抗原−結合部分”)またはそれらの一本鎖(すなわち、軽鎖または重鎖)に関する。インタクトな抗体はジスルフィドにより相互結合された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。それぞれの重鎖は重鎖可変領域(本明細書においてVと省略する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。それぞれの軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書においてVと省略する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメインCを含む。VおよびV領域はフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域により分断されている相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに分類できる。それぞれのVおよびVはアミノ−末端からカルボキシ−末端へ次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4にて配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は免疫グロブリンの、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一の成分(Clq)を含む宿主組織または因子への結合を介し得る。
【0079】
本明細書において使用される抗体の“抗原結合部分”なる用語は、特異的に任意の抗原(例えば、hLRP6)に結合する能力を保持するインタクトな抗体の1つ以上のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能はインタクトな抗体のフラグメントにより実施できる。抗体の“抗原結合部分”なる用語内に包含される結合フラグメントの例は、Fabフラグメント、V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント;F(ab)フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド橋により連結された2つのFabフラグメント(一般的に重鎖および軽鎖から1つ)を含む二価フラグメント;VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体の単一のアームのVおよびVドメインからなるFvフラグメント;Vドメインからなる単一ドメイン抗体(dAb)フラグメント(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);および単離された相補性決定領域(CDR)を含む。
【0080】
さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVおよびVは別々の遺伝子によりコードされているが、それらは、組換え方法を使用して、VおよびV領域が対になって一価分子を形成する一本のタンパク質鎖として作製可能とする人工ペプチドリンカーにより連結することができる(一本鎖Fv(scFv)としても既知;例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426;およびHuston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883、参照)。このような一本鎖抗体は抗体の1つ以上の“抗原結合部分”を含む。これらの抗体フラグメントは当業者に既知の慣用の技術を使用して得られ、これらのフラグメントはインタクトな抗体と同様に有用性に関してスクリーニングされる。
【0081】
抗原結合部分は、また、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v−NARおよびビス−scFvに組み込まれていてもよい(例えば、Hollinger and Hudson, 2005, Nature Biotechnology, 23, 9, 1126-1136、参照)。抗体の抗原結合部分はポリペプチドに基づく骨組、例えば、III型フィブロネクチン(Fn3)にグラフトすることができる(フィブロネクチンポリペプチドモノボディを記載している米国特許第6,703,199号、参照)。
【0082】
抗原結合部分は相補的軽鎖ポリペプチドと一緒に1対の抗原結合領域を形成する、1対のタンデムFvセグメント(V−CH1−V−CH1)を含む一本鎖分子に組み込まれていてもよい(Zapata et al., 1995 Protein Eng. 8(10):1057-1062;および米国特許第5,641,870号)。
【0083】
本明細書において使用される“ラクダ抗体”なる用語は、ラマ種(Lama paccos、Lama glamaおよびLama vicugna)を含むラクダおよびヒトコブラクダ(Camelus bactrianusおよびCalelus dromaderius)科のメンバーから得られる1つ以上のフラグメントのインタクトな抗体タンパク質を意味する。VHHとして同定された小さい1本の可変ドメインであるラクダ抗体の領域は、標的に対して高い親和性を有する小タンパク質を得るための遺伝子工学により得ることができ、“ラクダナノボディ”として既知の低分子量抗体由来タンパク質が得られる。米国特許第5,759,808、参照;Stijlemans et al., 2004 J. Biol. Chem. 279: 1256-1261; Dumoulin et al., 2003 Nature 424: 783-788; Pleschberger et al., 2003 Bioconjugate Chem. 14: 440-448; Cortez-Retamozo et al., 2002 Int. J. Cancer 89: 456-62;およびLauwereys. et al., 1998 EMBO J. 17: 3512-3520も参照。
【0084】
本明細書において使用される“単離されたLRP6結合分子”は、LRP6以外の抗原に対する抗原特異性を有する分子を実質的に含まない結合分子を意味する(例えば、特異的にhLRP6に結合する単離された抗体は特異的にhLRP6以外の抗原に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、特異的にhLRP6に結合する単離された結合分子は他の種の他の抗原、例えば、LRP6分子に対して交差反応性を有し得る。細胞材料を実質的に含まないとき、結合分子は“精製”されている。
【0085】
本明細書において使用される“モノクローナル抗体組成物”なる用語は単一分子組成物の抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。
【0086】
本明細書において使用される“ヒト抗体”なる用語は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来している可変領域を有する抗体を含むことを意図する。さらに、抗体が定常領域を含むとき、定常領域は、また、このようなヒト配列、例えば、ヒト生殖細胞系列配列または突然変異型のヒト生殖細胞系列配列に由来する。本発明のヒト抗体はヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的突然変異またはインビボで体細胞変異により導入された変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される“ヒト抗体”なる用語は、別の哺乳動物種、例えば、マウスの生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。
【0087】
“ヒトモノクローナル抗体”なる用語はフレームワークおよびCDR領域の両方がヒト配列に由来している可変領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を意味する。1つの態様において、ヒトモノクローナル抗体は不死化細胞に融合させた遺伝子導入非ヒト動物(例えば、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する遺伝子導入マウス)から得られたB細胞を含むハイブリドーマにより製造される。
【0088】
本明細書において使用される“組換えヒト抗体”なる用語は、組換え手段により製造、発現、作製または単離されたすべてのヒト抗体、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子を遺伝子導入または染色体導入された動物(例えば、マウス)またはそれから製造されたハイブリドーマから単離された抗体;ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体;組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体;およびヒト免疫グロブリン遺伝子配列の全部または一部の他のDNA配列へのスプライシングを含む他の手段により製造、発現、作製または単離された抗体を含む。このような組換えヒト抗体はフレームワークおよびCDR領域がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来している可変領域を有する。しかしながら、特定の態様において、このような組換えヒト抗体をインビトロ突然変異(または、ヒトIg配列に対して動物遺伝子導入が使用されるとき、インビボ体細胞突然変異)に付すことができ、したがって、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VおよびV配列に由来し、関連するが、自然にヒトにおいてヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に存在しない配列である。
【0089】
本明細書において使用される“イソ型”は重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG、例えば、IgG1またはIgG4)を意味する。
【0090】
“抗原を認識する抗体”および“抗原に対して特異的な抗体”なる用語は“抗原に特異的に結合する抗体”なる用語と互換的に使用される。
【0091】
本明細書において使用される“特異的にLRP6に結合する”LRP6結合分子(例えば、抗体またはその抗原結合部分)はLRP6にK1×10−7M以下にて結合するLRP6結合分子を意味することを意図する。“抗原と交差反応する”LRP6結合分子(例えば、抗体)は抗原にK1×10−6M以下にて結合するLRP6結合分子を意味することを意図する。特定の抗原と“交差反応しない”LRP6結合分子(例えば、抗体)は検出可能にその抗原に結合しないか、またはK1×10−5M以上にて結合する、LRP6結合分子を意味することを意図する。特定の態様において、抗原と交差反応しないこのような抗体は標準結合アッセイにおいてこれらのタンパク質に対して本質的に検出可能な結合を示さない。
【0092】
本明細書において使用される、“高い親和性”なる用語は、IgG抗体に対する言及のとき、抗体が標的抗原に対してK10−9M以下を有することを意味する。
【0093】
核酸配列は、産生細胞または生物、一般的に真核細胞、例えば、酵母菌、例えば、ピキア(Pichia)の細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはヒト細胞において好ましいコドンを使用してアミノ酸配列をコードするように改変されているとき、“最適化”されていると呼ぶ。最適化された核酸配列は“親”配列としても既知である、元の出発核酸配列によってコードされるアミノ酸配列と同一またはほぼ同一のアミノ酸配列をコードするように操作される。
【0094】
本発明の種々の局面は以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記載されている。
【0095】
種々の種のLRP6および特定のLRP6のエピトープに結合する分子の能力を評価するための標準アッセイは、当分野で既知であり、例えば、ELISAおよびウエスタンブロットを含む。LRP6結合分子がLRP6の特定のエピトープに結合するかどうかの同定にペプチドエピトープ競合アッセイを使用することができる。例えば、LRP6結合分子をペプチドの飽和濃度にて興味あるLRP6エピトープに対応するペプチドとインキュベートする。プレインキュベートしたLRP6結合分子を、例えば、Biacore(登録商標)分析により、固定化LRP6への結合に対して試験する。ペプチドとのプレインキュベーションによるLRP6結合の阻害は、LRP6結合分子がペプチドエピトープに結合することを示す(例えば、米国特許出願第20070072797号、参照)。結合動態は、また、当分野で既知の標準アッセイ、例えば、Biacore(登録商標)分析またはFACS分析による明白な結合により評価することができる。LRP6の機能特性に対するLRP6結合分子の作用を評価するためのアッセイは以下にさらに詳細に記載されている。
【0096】
したがって、当分野において既知であり、本明細書に記載されている方法論にしたがって決定される1つ以上のこれらのLRP6機能特性(例えば、生化学的、細胞的、生理学的または他の生物学的活性など)を“阻害する”LRP6結合分子は、結合分子の非存在下(例えば、無関連の特異性の対照分子が存在するとき)と比較して特定の機能特性において統計学的に有意な低下を引き起こすと理解される。LRP6活性を阻害するLRP6結合分子は測定パラメーターの少なくとも5%の統計学的に有意な低下を引き起こす。特定の態様において、アンタゴナイズ抗体または他のLRP6結合分子は対照と比較して選択された機能特性において少なくとも10%、20%、30%または50%の減少を引き起こし得る。
【0097】
いくつかの態様において、LRP6阻害は、Wntシグナル伝達経路におけるタンパク質のレベルまたはタンパク質安定性(例えば、Wnt、Wise、DKK1、DKK2、DKK4、SOST1、SOSD1(USAG1)、sFRP(可溶性Fzd−関連タンパク質)1−4、Axinまたはβ−カテニン)を測定することにより決定される。他の態様において、生物学的、生理学的、および/または形態学的変化は、LRP6結合分子がLRP6を阻害し、例えば、腫瘍細胞の増殖を阻害するか、または腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導するか;または骨ミネラル密度を低くすることを示す。
【0098】
これに反して、LRP6活性をアゴナイズまたは促進するLRP6結合分子は測定パラメーターの少なくとも5%の統計学的に有意な増加を引き起こす。特定の態様において、アゴナイズ抗体または他のLRP6結合分子は対照と比較して選択された機能特性において少なくとも10%、20%、30%または50%の増加を引き起こし得る。
【0099】
いくつかの態様において、LRP6阻害は、Wntシグナル伝達経路における下流mRNAメッセージまたはタンパク質の発現または安定性レベル(例えば、Axin、Axin2、β−カテニン、VEGF、cMyc、サイクリンD1、SNAIL)を測定することにより決定される。他の態様において、生物学的、生理学的、および/または形態学的変化は、LRP6結合分子がWntシグナル伝達を阻害し、例えば、通常より骨ミネラル密度またはインスリン分泌を低くすることを示す。
【0100】
抗体
本明細書に記載されている抗LRP6抗体はヒトモノクローナル抗体を含む。いくつかの態様において、LRP6に結合する抗体の抗原結合部分(例えば、VおよびV鎖)は他の抗LRP6結合分子を創造するように“混合および適合”される。このような“混合および適合”された抗体の結合は前記結合アッセイ(例えば、FACS、ELISA)を使用して試験することができる。特定のV配列と混合および適合するVを選択するとき、一般的に1つはVとの対において置き換えられるVと構造的に類似しているVを選択する。同様に特定の全長重鎖/全長軽鎖対の全長重鎖配列は一般的に構造的に類似している全長重鎖配列と置換すべきである。同様に、特定のV/V対のV配列は構造的に類似しているV配列と置換すべきである。同様に特定の全長重鎖/全長軽鎖対の全長軽鎖配列は構造的に類似している全長軽鎖配列と置換すべきである。この文脈における構造類似の同定は当分野においてよく知られている方法である。
【0101】
他の局面において、本発明は1つ以上のLRP6結合抗体の重鎖および軽鎖のCDRl、CDR2およびCDR3を種々の組合せにおいて含む抗体を提供する。これらの抗体のそれぞれがLRP6に結合し、抗原−結合特異性が主としてCDR1、2および3領域により提供され得ることを考慮すると、VのCDR1、2および3配列およびVのCDR1、2および3配列は“混合および適合”することができる(すなわち、異なる抗体からのCDRを混合および適合することができる)。このような“混合および適合”抗体のLRP6結合は本明細書に記載されている結合アッセイ(例えば、ELISA)を使用して試験することができる。VのCDR配列が混合および適合されているとき、特定のV配列のCDR1、CDR2および/またはCDR3は構造的に類似しているCDR配列と置換すべきである。同様に、VのCDR配列が混合および適合されているとき、特定のV配列のCDR1、CDR2および/またはCDR3配列は構造的に類似しているCDR配列と置換すべきである。この文脈における構造類似の同定は当分野でよく知られている方法である。
【0102】
本明細書において使用される、ヒト抗体は、抗体の可変領域または全長鎖が配列源としてヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られるとき、特定の生殖細胞系列配列の“生成物”である、またはそれに“由来”する重鎖または軽鎖可変領域または全長重鎖または軽鎖を含む。このような系の1つにおいて、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子を有する遺伝子導入マウスにより製造される。遺伝子導入は興味ある抗原(例えば、本明細書に記載されているhLRP6のエピトープ)により免疫化される。あるいは、ヒト抗体は、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを提供し、興味ある抗原(例えば、本明細書に記載されているhLRP6またはhLRP6エピトープ)ライブラリーをスクリーニングすることにより同定される。
【0103】
ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列の“生成物”である、またはそれに“由来”するヒト抗体はヒト抗体のアミノ酸配列とヒト生殖細胞系列免疫グロブリンのアミノ酸配列を比較して、ヒト抗体の配列と配列において非常に近い(すなわち、同一性%が非常に高い)ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列を選択することによりそれ自体同定することができる。特定のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列の“生成物”である、またはそれに“由来”するヒト抗体は生殖細胞系列にコードされた配列と比較して、例えば、自然に起こる体細胞変異または人工部位特異的変異によるアミノ酸の違いを含み得る。しかしながら、選択されたヒト抗体は一般的にヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し、他の種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖細胞系列配列)と比較したとき、ヒト抗体をヒトとして同定するアミノ酸残基を含む。特定の場合において、ヒト抗体は生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列において少なくとも60%、70%、80%、90%または少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%または99%同一であり得る。
【0104】
2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要のあるギャップ数および各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の位置の#/位置の全#×100)。2つの配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定はALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Miller (1988 Comput. Appl. Biosci., 4:11-17)のアルゴリズムを使用して、PAM120 weight residue table、ギャップレングスペナルティー12およびギャップペナルティー4を使用して決定される。
【0105】
一般的に、特定のヒト生殖細胞系列配列由来ヒト抗体のVまたはVはヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とわずか10個のアミノ酸の違いを示す。特定の場合において、ヒト抗体のVまたはVは生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とわずか5つまたはわずか4、3、2または1つのアミノ酸の違いを示し得る。
【0106】
ラクダ抗体
新世界(New World)メンバー、例えば、ラマ種(Lama paccos、Lama glamaおよびLama vicugna)を含むラクダおよびヒトコブラクダ(Camelus bactrianusおよびCalelus dromaderius)科のメンバーから得られる抗体タンパク質は、サイズ、構造的複雑性およびヒト対象に対する抗原性に対して特徴付けられている。この科の哺乳動物において自然に見られる特定のIgG抗体は軽鎖を欠き、したがって他の動物の抗体において典型的な2つの重鎖および2つの軽鎖を有する4鎖の四次構造とは構造的に異なる。WO94/04678、参照。
【0107】
HHとして同定された小さい1本の可変ドメインであるラクダ抗体の領域は、標的に対して高い親和性を有する小タンパク質を得るための遺伝子工学により得ることができ、“ラクダナノボディ”として既知の低分子量抗体由来タンパク質が得られる。米国特許第5,759,808号、参照;Stijlemans et al., 2004 J. Biol. Chem. 279: 1256-1261; Dumoulin et al., 2003 Nature 424: 783-788; Pleschberger et al., 2003 Bioconjugate Chem. 14: 440-448; Cortez-Retamozo et al., 2002 Int. J. Cancer 89: 456-62;およびLauwereys. et al., 1998 EMBO J. 17: 3512-3520も参照。ラクダ抗体および抗体フラグメントの操作されたライブラリーは、例えば、Ablynx、Ghent、Belgiumから市販されている。非ヒト起源の他の抗体に関して、ラクダ抗体のアミノ酸配列はヒト配列をより密接に似ている配列を得るために組換え的に改変させることができる、すなわち、ナノボディはヒト化することができる。したがって、ヒトに対するラクダ抗体の本来の低い抗原性をさらに低減することができる。
【0108】
ラクダナノボディはヒトIgG分子の分子量の約1/10を有し、該タンパク質はわずか数ナノメーターの物理的直径を有する。小さいサイズの1つの結果は、より大きい抗体タンパク質によっては機能的に見えない抗原部位に結合するラクダナノボディの能力であり、すなわち、ラクダナノボディは従来の免疫技術を使用して他の方法では隠れている抗原を検出する試薬、および可能性としては治療剤として有用である。したがって、小さいサイズのさらなる結果は、ラクダナノボディが標的タンパク質の溝または狭い割れ目の特定の部位に結合する結果として阻害することができ、したがって従来の抗体よりも従来の低分子量薬物の機能とより密接に似ている能力で働き得ることである。
【0109】
さらに、低分子量および緻密化サイズの結果、ラクダナノボディが極めて熱安定性であり、極端なpHおよびタンパク質分解消化に対して安定であり、抗原性が低い。さらなる結果は、ラクダナノボディが循環系から組織へ、血液脳関門を介する場合でも容易に移動し、神経組織に影響する障害を処置することができることである。さらにナノボディは血液脳関門を介する薬物輸送を促進することができる。2004年8月19日公開の米国特許出願第20040161738号、参照。これらの特徴は、ヒトにおける低い抗原性と結合して、大きな治療的可能性を示す。さらに、これらの分子は原核細胞、例えば、大腸菌において完全に発現することができる。
【0110】
したがって、本発明の特徴はLRP6に対して高い親和性を有するラクダ抗体またはラクダナノボディである。本明細書におけるある特定の態様において、ラクダ抗体またはナノボディはラクダ動物で自然に製造され、すなわち、LRP6またはそのペプチドフラグメントで免疫化した後、他の抗体に関して本明細書に記載されている技術を使用してラクダにより製造される。あるいは、抗LRP6ラクダナノボディは、すなわち、例えば、適当に突然変異させたラクダナノボディタンパク質を提示するファージのライブラリーから標的として本明細書に記載されているLRP6またはLRP6エピトープを使用したパンニング法を使用して選択により操作、すなわち製造される。さらに、操作されたナノボディをレシピエント対象において45分から2週間の半減期を有するように遺伝子工学によりカスタマイズすることができる。
【0111】
ダイアボディ
ダイアボディは、VおよびVドメインが単一ポリペプチド鎖で発現され、あまりに短すぎるため同じ鎖の2つのドメイン間で対になることができないリンカーにより結合している、二価、二重特異性分子である。VおよびVドメインは別の鎖の相補的ドメインと対を作り、それによって2つの抗原結合部位を創造する(例えば、Holliger et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak et al., 1994 Structure 2:1121-1123、参照)。ダイアボディは同じ細胞内で構造VHA−VLBおよびVHB−VLA(V−V構成)、またはVLA−VHBおよびVLB−VHA(V−V構成)のいずれかを有する2つのポリペプチド鎖を発現させることにより製造することができる。それらのほとんどは細菌において可溶性形態で発現させることができる。
【0112】
一本鎖ダイアボディ(scDb)は、2つのダイアボディ形成ポリペプチド鎖を約15アミノ酸残基のリンカーと結合させることにより、製造される(Holliger and Winter, 1997 Cancer Immunol. Immunother., 45(3-4):128-30; Wu et al., 1996 Immunotechnology, 2(1):21-36、参照)。scDbは細菌において可溶性かつ活性な単量体型で発現させることができる(Holliger and Winter, 1997 Cancer Immunol. Immunother., 45(34): 128-30; Wu et al., 1996 Immunotechnology, 2(1):21-36; Pluckthun and Pack, 1997 Immunotechnology, 3(2): 83-105; Ridgway et al., 1996 Protein Eng., 9(7):617-21、参照)。
【0113】
ダイアボディはFcと融合させ、“ジ−ダイアボディ”を製造することができる(Lu et al., 2004 J. Biol. Chem., 279(4):2856-65、参照)。
【0114】
操作および修飾された抗体
本発明の抗体は、出発抗体から改変された特性を有し得る修飾された抗体を操作するように、出発物質として1つ以上のVおよび/またはV配列を有する抗体を使用して製造することができる。抗体を1つまたは両方の可変領域(すなわち、Vおよび/またはV)内、例えば、1つ以上のCDR領域および/または1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上の残基を修飾することにより操作することができる。さらに、または、あるいは、抗体を、例えば、抗体のエフェクター機能を改変するために、定常領域内の残基を修飾することにより操作することができる。
【0115】
実施することができる可変領域操作の1つはCDRグラフト法である。抗体は、主として6つの重鎖および軽鎖CDRに存在するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。この理由のため、CDR内のアミノ酸配列はCDR外の配列よりも個々の抗体間でより異なっている。CDR配列がほとんどの抗体−抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体のフレームワーク配列にグラフトされた特定の天然抗体のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann et al., 1998 Nature 332:323-327; Jones et al., 1986 Nature 321:522-525; Queen et al., 1989 Proc. Natl. Acad。U.S.A. 86:10029-10033、参照;米国特許第5,225,539号および米国特許第5,530,101; 5,585,089; 5,693,762および6,180,370号、参照)。
【0116】
フレームワーク配列は生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースまたは刊行されている参照文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は“VBase”ヒト生殖細胞系列配列データベース(インターネットwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで利用できる)、ならびにKabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins ofImmunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson et al., 1992 J. Mol. Biol. 227:776-798;およびCox et al., 1994 Eur. J. Immunol. 24:827-836;(これらのそれぞれの内容を出典明示により本明細書に包含させる)において見出すことができる。
【0117】
のCDR1、2および3の配列およびVのCDR1、2および3の配列をフレームワーク配列が由来する生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子において見出されたものと同一の配列を有するフレームワーク領域にグラフトすることができ、またはCDR配列を生殖細胞系列配列と比較して1つ以上の変異を含むフレームワーク領域にグラフトすることができる。例えば、ある場合において、抗体の抗原結合力を維持または強化するためにフレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが見出されている(例えば、米国特許第5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370号、参照)。
【0118】
CDRは、また、免疫グロブリンドメイン以外のポリペプチドのフレームワーク領域にグラフトさせることができる。適当な骨組は、局在した表面を形成し、興味ある標的(例えば、LRP6)に結合するようにグラフトされた残基を示す、構造的に安定なフレームワークを形成する。例えば、CDRは、フレームワーク領域がフィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルチノスタチン、シトクロムb、CP1亜鉛フィンガー、PST1、コイルドコイル、LACI−D1、Zドメインまたはテンドラミスト(tendramisat)に基づく骨組上にグラフトすることができる(例えば、Nygren and Uhlen, 1997 Current Opinion in Structural Biology, 7, 463-469、参照)。
【0119】
別種の可変領域修飾はVおよび/またはVのCDR1、CDR2および/またはCDR3領域のアミノ酸残基の変異であり、それによって“親和性成熟”として既知の興味ある抗体の1つ以上の結合特性(例えば、親和性)を改善する。部位特異的突然変異またはPCR介在突然変異を変異を導入するために実施することができ、抗体結合の作用または興味ある他の機能特性を本明細書に記載されているインビトロまたはインビボアッセイにおいて評価することができる。保存的修飾を導入することができる。変異はアミノ酸の置換、付加または欠失であり得る。さらに、一般的にCDR領域内のわずか1、2、3、4または5つの残基が改変される。
【0120】
操作された本発明の抗体は、修飾が、例えば、抗体の特性を改善するためにVおよび/またはV内のフレームワーク残基に行われたものを含む。一般的にこのようなフレームワーク修飾は抗体の免疫原性を軽減するために行われる。例えば、1つのアプローチは1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系列配列へと“復帰変異(backmutate)”させることである。さらに特に、体細胞変異がおこった抗体は抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は抗体のフレームワーク配列と抗体が由来する生殖細胞系列配列を比較することにより同定することができる。フレームワーク領域配列をそれらの生殖細胞系列の構成へ戻すために、体細胞変異を、例えば、部位特異的突然変異またはPCR介在突然変異により生殖細胞系列配列へ“復帰変異”させることができる。このような“復帰変異”抗体は、また、本発明により包含されることを意図する。
【0121】
別種のフレームワーク修飾は、T細胞−エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的な免疫原性を減少するために、フレームワーク領域内の、さらには1つ以上のCDR領域内の1つ以上の残基の変異を含む。このアプローチは、また、“脱免疫化”として称され、Carr et alによる米国特許公報第20030153043号においてさらに詳細に記載されている。
【0122】
フレームワークまたはCDR領域内で行われる修飾に加え、またはあるいは、本発明の抗体は、一般的に1つ以上の抗体の機能特性、例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合および/または抗原依存細胞傷害性を改変するために、Fc領域内に修飾を含むように操作することができる。さらに、本発明の抗体は、再び1つ以上の抗体の機能特性を改変するために、化学的に修飾させるか(例えば、1つ以上の化学部分を抗体に結合させることができる)、またはそのグリコシル化を改変するために修飾させることができる。
【0123】
1つの態様において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域のシステイン残基の数が改変、例えば、増加または減少されるように修飾される。このアプローチはBodmer et al.による米国特許第5,677,425号においてさらに記載されている。CH1のヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖の組み立てを促進するか、または抗体の安定性を増強または低下させるために改変される。
【0124】
他の態様において、抗体のFcヒンジ領域を抗体の生体半減期を短縮するために変異させる。さらに特に、1つ以上のアミノ酸変異は、抗体が天然Fc−ヒンジドメインSpA結合と比較して損なわれたブドウ球菌タンパク質A(SpA)結合を有するように、Fc−ヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメイン境界領域に導入される。このアプローチはWard et al.による米国特許第6,165,745号においてさらに詳細に記載されている。
【0125】
他の態様において、抗体は生体半減期を延長するために修飾される。種々のアプローチが可能である。例えば、米国特許第6,277,375号はインビボで半減期を延長するIgGにおける下記変異:T252L、T254S、T256Fを記載している。あるいは、生体半減期を延長するため、抗体は、Presta et al.による米国特許第5,869,046および6,121,022号に記載されているとおり、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取ったサルベージ受容体結合エピトープを含むように、CH1またはCL領域内で改変され得る。
【0126】
さらに他の態様において、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を改変するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることにより改変される。例えば、1つ以上のアミノ酸は、抗体がエフェクターリガンドに対する改変された親和性を有するが、親抗体の抗原結合力を保持するように、異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。親和性が改変されているエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であり得る。このアプローチは両方Winter et al. による米国特許第5,624,821および5,648,260号においてさらに詳細に記載されている。
【0127】
他の態様において、アミノ酸残基から選択される1つ以上のアミノ酸は、抗体がC1q結合を改変され、そして/または補体依存性細胞毒性(CDC)を減少または排除されるように、異なるアミノ酸残基により置き換えることができる。このアプローチはIdusogie et al.による米国特許第6,194,551号においてさらに詳細に記載されている。
【0128】
他の態様において、1つ以上のアミノ酸残基を改変し、それによって抗体が補体を固定する能力を改変する。このアプローチはBodmer et al.によるWO94/29351においてさらに詳細に記載されている。
【0129】
さらに他の態様において、Fc領域は、抗体が抗体依存細胞傷害性(ADCC)を介在する能力を増強するため、および/または抗体のFcγ受容体に対する親和性を増強するために、1つ以上のアミノ酸を修飾することにより修飾される。このアプローチはPrestaによるWO00/42072においてさらに詳細に記載されている。さらに、ヒトIgG1上のFcγRl、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対する結合部位はマッピングされており、改良された結合を有する変異体は記載されている(Shields, R.L. et al., 2001 J. Biol. Chem. 276:6591-6604、参照)。
【0130】
さらに別の態様において、抗体のグリコシル化は修飾される。例えば、非グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体がグリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、抗体の抗原に対する親和性を増強するために改変することができる。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内でグリコシル化の1つ以上の部位を改変することにより達成することができる。例えば、1つ以上のアミノ酸置換は、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の排除をもたらし、それによってその部位のグリコシル化を排除することを行うことができる。このようなグリコシル化は抗体の抗原に対する親和性を増強し得る。このようなアプローチはCo et al.による米国特許第5,714,350および6,350,861号においてさらに詳細に記載されている。
【0131】
さらに、またはあるいは、抗体は改変された型のグリコシル化を有する抗体、例えば、少ない量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体または増加したバイセクティングGlcNac構造を有する抗体を製造することができる。このような改変されたグリコシル化パターンは抗体のADCC能力を増強することが証明されている。このような炭水化物修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現することにより達成することができる。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は当分野で報告されており、本発明の組換え抗体を発現する宿主細胞として使用し、それによって改変されたグリコシル化を有する抗体を製造することができる。例えば、Hang et al.によるEP1,176,195は、発現された抗体が低フコシル化を示すような、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子機能的に破壊されている細胞系を記載している。PrestaによるPCT出願WO03/035835は、フコースがAsn(297)結合炭水化物に結合する能力を減少させ、また、宿主細胞において発現された抗体の低フコシル化を引き起こす、変異CHO細胞系であるLecl3細胞を記載している(Shields, R.L. et al., 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照)。Umana et al.によるWO99/54342は、操作された細胞系において発現された抗体が、抗体のADCC活性の増強を引き起こすバイセクティングGlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞系を記載している(Umana et al., 1999 Nat. Biotech. 17:176-180も参照)。
【0132】
本発明により考慮される本明細書の抗体のさらなる修飾はペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生体(例えば、血清)半減期を延長するためにペグ化することができる。抗体をペグ化するために、抗体またはそのフラグメントは、一般的にポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と1つ以上のPEG部分が抗体または抗体フラグメントに結合するようになる条件下で反応させる。ペグ化は反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)でのアシル化反応またはアルキル化反応により実施することができる。本明細書において使用される“ポリエチレングリコール”なる用語は、モノ(C1−C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの全ての形態を包含することを意図する。特定の態様において、ペグ化される抗体は非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当分野で既知であり、本発明の抗体に適用することができる。例えば、Nishimura et al.によるEP0154316およびIshikawa et al.によるEP0401384、参照。
【0133】
加えて、ペグ化は非天然アミノ酸の導入により本発明のLRP6結合ポリペプチドの任意の部分で達成することができる。特定の非天然アミノ酸はDeiters et al., J Am Chem Soc 125:11782-11783, 2003; Wang and Schultz, Science 301:964-967, 2003; Wang et al., Science 292:498-500, 2001; Zhang et al., Science 303:371-373, 2004またはUS特許第7,083,970号に記載されている技術により導入することができる。簡潔には、いくつかのこれらの発現系は部位特異的突然変異を含み、ナンセンスコドン、例えば、アンバーTAGが本発明のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームに導入される。次にこのような発現ベクターを導入されたナンセンスコドンに対して特異的なtRNAを利用することができる宿主に導入し、一般的に好まれる非天然アミノ酸で満たす。部分が本発明のポリペプチドに結合するために有益である特定の非天然アミノ酸は、アセチレンおよびアジド側鎖を有するものを含む。次にこれらの新規アミノ酸を含むポリペプチドをタンパク質のこれらの選択された部位でペグ化することができる。
【0134】
抗体を操作する方法
上記のとおり、抗LRP6抗体は全長重鎖および/または軽鎖配列、Vおよび/またはV配列またはそれに結合した定常領域を修飾することにより、新規抗LRP6抗体を創造するために使用することができる。例えば、抗体の1つ以上のCDR領域は、新規組換え操作された抗LRP6抗体を創造するために、既知のフレームワーク領域および/または他のCDRで組換えにより組み合わせることができる。他の型の修飾は前のセクションにおいて記載されているものを含む。操作する方法のための出発物質は1つ以上のVおよび/またはV配列またはそれらの1つ以上のCDR領域である。抗体を操作するため、1つ以上のVおよび/またはV配列またはそれらの1つ以上のCDR領域を有する抗体を実際に作製(すなわち、タンパク質として発現)する必要はない。それどころか、配列に含まれる情報を元の配列に由来する“第二世代”配列を創造するため出発物質として使用し、次に“第二世代”配列をタンパク質として製造および発現させる。
【0135】
標準分子生物学技術は改変された抗体配列を製造および発現させるために使用することができる。改変された抗体配列によってコードされる抗体は、機能特性が、特異的なLRP6への結合、LRP6がWnt経路メンバー(例えば、DKK1(dickkopf1)、DKK2、DKK4、SOST1、SOSD1(USAG1)、sFRP(可溶性Fzd−関連タンパク質)1−4、WiseまたはWntリガンド)に結合する能力の阻害およびβ−カテニンリン酸化および分解の調節を含むが、これらに限定されない、抗LRP6抗体の機能特性の1つ、一部または全部を保持するものである。改変された抗体の機能特性は当分野で利用できる、および/または本明細書に記載されている標準アッセイ(例えば、ELISA)を使用して評価することができる。
【0136】
本発明の抗体を操作する方法の1つの態様において、変異は抗LRP6抗体コード配列の全体または一部にランダムまたは選択的に導入することができ、得られた修飾された抗LRP6抗体は本明細書に記載されている結合活性および/または他の機能特性(例えば、特異的なLRP6への結合、LRP6がWnt経路メンバー(例えば、DKK1(dickkopf1)、DKK2、DKK4、SOST1、SOSD1(USAG1)、sFRP(可溶性Fzd−関連タンパク質)1−4、WiseまたはWntリガンド)に結合する能力の阻害およびβ−カテニンリン酸化および分解の調節)に関してスクリーニングすることができる。変異法は当分野で報告されている。例えば、ShortによるPCT出願WO02/092780は飽和突然変異、合成連結アセンブリまたはその組合せを使用して抗体変異を創造およびスクリーニングする方法を記載している。あるいは、Lazar et al.によるWO03/074679は抗体の物理化学的特性を最適化するためにコンピューター利用スクリーニング方法を使用する方法を記載している。
【0137】
非抗体LRP6結合分子
さらに、本発明は抗体の機能特性を示すが、他のポリペプチド(例えば、抗体遺伝子によってコードされるか、またはインビボで抗体遺伝子の組換えにより製造されるもの以外のポリペプチド)からのこれらのフレームワークおよび抗原結合部分に由来するLRP6結合分子を提供する。これらの結合分子の抗原結合ドメイン(例えば、LRP6結合ドメイン)は指向進化過程を介して製造される。米国特許第7,115,396号、参照。抗体の可変ドメインのフォールド(“免疫グロブリン様”フォールド)と類似している全フォールドを有する分子が適当な骨格タンパク質である。得られる抗原結合分子に適当な骨格タンパク質はフィブロネクチンまたはフィブロネクチンダイマー、テネイシン、N−カドヘリン、E−カドヘリン、ICAM、タイチン、GCSF−受容体、サイトカイン受容体、グリコシダーゼ阻害剤、抗生物質色素タンパク質、ミエリン膜接着分子、P0、CD8、CD4、CD2、クラスI MHC、T−細胞抗原受容体、CD1、C2およびVCAM−1のI−setドメイン、ミオシン結合タンパク質CのI−set免疫グロブリンドメイン、ミオシン結合タンパク質HのI−set免疫グロブリンドメイン、テロキンのI−set免疫グロブリンドメイン、NCAM、トウィッチン、ニューログリアン、成長ホルモン受容体、エリスロポエチン受容体、プロラクチン受容体、インターフェロン−ガンマ受容体、β−ガラクトシダーゼ/グルクロニダーゼ、β−グルクロニダーゼ、トランスグルタミナーゼ、T−細胞抗原受容体、スーパーオキシド・ジスムターゼ、組織因子ドメイン、シトクロムF、緑色蛍光タンパク質、GroELおよびソーマチンを含む。
【0138】
非抗体結合分子の抗原結合ドメイン(例えば、免疫グロブリン様フォールド)は10kDより小さいまたは7.5kDより大きい分子量(例えば、分子量7.5−10kD)を有することができる。抗原結合ドメインを得るために使用されるタンパク質は天然哺乳動物タンパク質(例えば、ヒトタンパク質)を含み、抗原結合ドメインは得られるタンパク質の免疫グロブリン様フォールドと比較して50%以下(例えば、34%、25%、20%または15%以下)の変異アミノ酸を含む。一般的に免疫グロブリン様フォールドを有するドメインは50−150アミノ酸(例えば、40−60アミノ酸)からなる。
【0139】
非抗体結合分子を製造するため、抗原結合表面を形成する骨格タンパク質の領域(例えば、位置および構造において抗体可変ドメイン免疫グロブリンフォールドのCDRに類似している領域)における配列がランダム化された、クローンのライブラリーを創造する。ライブラリークローンを興味ある抗原(例えば、hLRP6)への特異的結合および他の機能(例えば、LRP6の生物学的活性の阻害)に対して試験する。選択されたクローンをさらなるランダム化および選択に基づき、抗原に対して高い親和性の誘導体を製造するために使用することができる。選択プロトコールの1つの例は米国特許第6,207,446号に記載されている。
【0140】
高い親和性結合分子は、例えば、骨組としてフィブロネクチンIIIの10番目のモジュール(10Fn3)を使用して製造される。ライブラリーを残基23−29、52−55および78−87で10FN3の3つのCDR様ループのそれぞれに対して構築する。それぞれのライブラリーを構築するため、それぞれのCDR様領域と重複する配列をコードするDNAセグメントをオリゴヌクレオチド合成によりランダム化する。選択可能な10Fn3ライブラリーを製造するための技術は、米国特許第6,818,418および7,115,396号;Roberts and Szostak、1997 Proc.Natl. Acad. Sci USA 94:12297;米国特許第6,261,804号;米国特許第6,258,558号;およびSzostak et al.WO98/31700に記載されている。
【0141】
非抗体結合分子は標的抗原に対する親和性を増加するためにダイマーまたはマルチマーとして製造することができる。例えば、抗原結合ドメインをFc−Fcダイマーを形成する抗体の定常領域(Fc)を有する融合体として発現させる。例えば、米国特許第7,115,396号、参照。
【0142】
本発明の抗体をコードする核酸分子
本発明の他の局面は本発明のLRP6結合分子をコードする核酸分子に関する。核酸は細胞溶解物において細胞全体に存在してもよく、または部分的に精製された、もしくは実質的に純粋な形態であってもよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsCl結合、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動およびその他当分野で既知の技術を含む標準技術により、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば、他の細胞性核酸またはタンパク質から精製されたとき、“単離された”または“実質的に純粋にされた”である。F. Ausubel, et al., ed. 1987 Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York、参照。本発明の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであってもよく、イントロン配列を含んでいても含まなくてもよい。1つの態様において、核酸はcDNA分子である。核酸はベクター、例えば、ファージディスプレイベクターまたは組換えプラスミドベクター中に存在していてもよい。
【0143】
本発明の核酸は標準分子生物学技術を使用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに記載しているとおりのヒト免疫グロブリン遺伝子を有する遺伝子導入マウスから製造されたハイブリドーマ)により発現された抗体に関して、ハイブリドーマにより製造された抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは標準PCR増幅またはcDNAクローニング技術により得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を使用して)得られた抗体に関して、抗体をコードする核酸はライブラリーのメンバーである種々のファージクローンから回収することができる。
【0144】
およびVセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたとき、これらのDNAフラグメントは、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子またはscFv遺伝子に変換するために、標準組換えDNA技術によりさらに操作することができる。これらの操作において、VまたはVをコードするDNAフラグメントはさらなるタンパク質、例えば、抗体定常領域もしくはフレキシブルリンカーをコードするさらなるDNA分子またはフラグメントに作動可能に連結されている。この文脈において使用されるとき“作動可能に連結された”なる用語は、2つのDNAフラグメントが、例えば、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がフレーム内に残るように、またはタンパク質が所望のプロモーターのコントロール下で発現されるように機能する方法で連結されることを意味することを意図する。
【0145】
領域をコードする単離されたDNAはVをコードするDNAを重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードするさらなるDNA分子に作動可能に連結することにより全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で既知であり(例えば、Kabat et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242、参照)、これらの領域を含むDNAフラグメントは標準PCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であり得る。Fabフラグメント重鎖遺伝子に関して、VをコードするDNAは重鎖CH1定常領域のみをコードするさらなるDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0146】
領域をコードする単離されたDNAはVをコードするDNAを軽鎖定常領域CLをコードするさらなるDNA分子に作動可能に連結することにより全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で既知であり(例えば、Kabat et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242、参照)、これらの領域を含むDNAフラグメントは標準PCR増幅により得ることができる。軽鎖定常領域はカッパまたはラムダ定常領域であり得る。
【0147】
scFv遺伝子を創造するため、VおよびVをコードするDNAフラグメントは、フレキシブルリンカーにより連結されたVおよびV領域を有するVおよびV配列が連続する一本鎖タンパク質として発現することができるように、例えば、アミノ酸配列(Gly4−Ser)をコードするフレキシブルリンカーをコードするさらなるフラグメントに作動可能に連結される(例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426; Huston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al., 1990 Nature 348:552-554、参照)。
【0148】
モノクローナル抗体生成
モノクローナル抗体(mAb)は慣用のモノクローナル抗体方法論を含む種々の技術、例えば、Kohler and Milstein (1975 Nature, 256:495)の標準体細胞ハイブリダイゼーション技術により、またはライブラリーディスプレイ法、例えば、ファージディスプレイ法を使用して製造することができる。
【0149】
ハイブリドーマを製造するための動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ製造はよく確立された方法である。免疫化プロトコールおよび免役された融合用脾細胞の単離のための技術は当分野で既知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合方法は、また、既知である。
【0150】
本発明のキメラまたはヒト化抗体は上記のように製造されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて製造することができる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、標準分子生物学技術を使用して、興味あるマウスハイブリドーマから得ることができ、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作することができる。例えば、キメラ抗体を創造するために、マウス可変領域は、当分野で既知の方法を使用して、ヒト定常領域に連結することができる(例えば、Cabilly et al.による米国特許第4,816,567号、参照)。ヒト化抗体を創造するために、マウスCDR領域は、当分野で既知の方法を使用して、ヒトフレームワークに挿入することができる。例えば、米国特許第5,225,539号および米国特許第5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370号、参照。
【0151】
特定の態様において、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。LRP6に対するこのようなヒトモノクローナル抗体はマウス系よりむしろヒト免疫系部分を有する遺伝子導入されたまたは染色体導入されたマウスを使用して製造することができる。これらの遺伝子導入されたまたは染色体導入されたマウスは各々HuMAbマウスおよびKMマウスと称される、および本明細書において“ヒトIgマウス”と総称されるマウスを含む。
【0152】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex, Inc.)は、内因性μおよびκ鎖座を不活性化する標的変異とともに、非再配置ヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座(miniloci)を含む(例えば、Lonberg et al., 1994 Nature 368(6474): 856 859、参照)。したがって、マウスはマウスIgMまたはκの発現低下を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子がクラス切り換えと体細胞突然変異を受け、高い親和性ヒトIgGκモノクローナルを製造する(Lonberg, N. et al., 1994 supra; reviewed in Lonberg, N., 1994 Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101; Lonberg, N. and Huszar, D., 1995 Intern. Rev. Immunol.13: 65-93およびHarding, F. and Lonberg, N., 1995 Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:536-546)。HuMAbマウスの製造およびその使用およびこのようなマウスが有するゲノム修飾は、さらにTaylor, L. et al., 1992 Nucleic Acids Research 20:6287-6295; Chen, J. et at., 1993 International Immunology 5: 647-656; Tuaillon et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3720-3724; Choi et al., 1993 Nature Genetics 4:117-123; Chen, J. et al., 1993 EMBO J. 12: 821-830; Tuaillon et al., 1994 J. Immunol. 152:2912-2920; Taylor, L. et al., 1994 International Immunology 579-591;およびFishwild, D. et al., 1996 Nature Biotechnology 14: 845-851に記載されている(これらの全ての内容を出典明示によりその全体を本明細書の一部とする)。さらに、米国特許第5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,789,650;5,877,397;5,661,016;5,814,318;5,874,299;および5,770,429号(全てLonberg and Kay);Surani et al.による米国特許第5,545,807号;PCT出願番号WO92103918、WO93/12227、WO94/25585、WO97113852、WO98/24884およびWO99/45962(全てLonberg and Kay);ならびにKorman et al.によるPCT出願番号WO01/14424、参照。
【0153】
他の態様において、本発明のヒト抗体は導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を有するマウス、例えば、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を有するマウスを使用して製造することができる。“KMマウス”として本明細書で称されるこのようなマウスはWO02/43478において詳細に記載されている。
【0154】
なおさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別の遺伝子導入動物系が当分野で利用可能であり、本発明の抗LRP6抗体を製造するために使用することができる。例えば、Xenoマウス(登録商標)(Abgenix, Inc.)と称される別の遺伝子導入系を使用することができる。このようなマウスは、例えば、Kucherlapati et al.による米国特許第5,939,598;6,075,181;6,114,598;6、150,584および6,162,963号に記載されている。
【0155】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別の染色体を導入した動物系が当分野で利用可能であり、本発明の抗LRP6抗体を製造するために使用することができる。例えば、“TCマウス”と称されるヒト重鎖導入染色体およびヒト軽鎖導入染色体の両方を含むマウスを使用することができる;このようなマウスはTomizuka et al., 2000 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727に記載されている。さらに、ヒト重鎖および軽鎖導入染色体を有するウシは当分野で報告されており(Kuroiwa et al., 2002 Nature Biotechnology 20:889-894)、本発明の抗LRP6抗体を製造するために使用することができる。
【0156】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、また、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ方法を使用して製造することができる。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ方法は当分野で設立されている。例えば:Ladner et al.による米国特許第5,223,409;5,403,484;および5,571,698号;Dower et al.による米国特許第5,427,908および5,580,717号;McCafferty et al.による米国特許第5,969,108および6,172,197号;ならびにGriffiths et al.による米国特許第5,885,793;6,521,404;6,544,731;6,555,313;6,582,915および6,593,081号、参照。ライブラリーは全長LRP6またはLRP6の特定のエピトープへの結合をスクリーニングされ得る。
【0157】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、また、ヒト抗体応答が免疫で製造され得るようにヒト免疫細胞を再構成されたSCIDマウスを使用して製造することができる。このようなマウスは、例えば、Wilson et al.による米国特許第5,476,996および5,698,767号に記載されている。
【0158】
ヒトIgマウスにおけるヒトモノクローナル抗体の製造
原核細胞(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、哺乳動物細胞、例えば、HEK293細胞)において発現される精製された組換えヒトLRP6は抗原として使用することができる。該タンパク質は担体、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と結合され得る。
【0159】
LRP6に対する完全なヒトモノクローナル抗体はHuMab遺伝子導入マウスのHCo7、HCo12およびHCo17系ならびに遺伝子導入染色体導入マウスのKM系(これらはそれぞれヒト抗体遺伝子を発現する)を使用して製造される。これらのマウス系のそれぞれにおいて、内因性マウスカッパ軽鎖遺伝子はChen et al., 1993 EMBO J.12:811-820に記載されているとおりホモ接合的に分断することができ、内因性マウス重鎖遺伝子はWO01109187の実施例1に記載されているとおりホモ接合的に分断することができる。これらのマウス系のそれぞれは、Fishwild et al., 1996 Nature Biotechnology 14:845-851に記載されているとおりヒトカッパ軽鎖導入遺伝子、KCo5を有する。HCo7系は米国特許第5,545,806;5,625,825;および5,545,807号に記載されているとおりHCo7ヒト重鎖導入遺伝子を有する。HCo12系はWO01/09187の実施例2に記載されているとおりHCo12ヒト重鎖導入遺伝子を有する。HCo17系はHCo17ヒト重鎖導入遺伝子を有する。KNM系はWO02/43478に記載されているとおりSC20導入染色体を含む。
【0160】
LRP6に対する完全なヒトモノクローナル抗体を製造するために、HuMabマウスおよびKMマウスを、精製された組換えLRP6、LRP6フラグメントまたはそれらのコンジュゲート(例えば、LRP6−KLH)を抗原として免疫化する。HuMabマウスの一般的な免疫スキームはLonberg, N. et al., 1994 Nature 368(6474): 856-859; Fishwild, D. et al., 1996 Nature Biotechnology 14:845-851およびWO 98/24884に記載されている。マウスは抗原の初回注入時に6−16週齢である。抗原の精製された組換え製造物(5−50μg)を腹腔内、皮下(Sc)または足蹠注射によりHuMabマウスおよびKMマウスを免疫化するために使用する。
【0161】
遺伝子導入マウスを完全フロイントアジュバントまたはRibiアジュバント中の抗原を腹腔内(IP)、皮下(Sc)または足蹠(FP)のいずれかにより2回免疫化させ、3−21日間後にフロイントの不完全またはRibiアジュバント中の抗原をIP、ScまたはFP免疫化させる(最大11回の免疫化)。免疫応答を眼窩後方採血によりモニタリングする。血漿をELISAによりスクリーニングし、十分な力価の抗LRP6ヒト免疫グロブリンを有するマウスを融合のために使用する。マウスを屠殺3および2日前に抗原を静脈内に追加し、脾臓を取り出す。一般的に、それぞれの抗原に対して10−35回の融合を行う。数ダースのマウスをそれぞれの抗原に対して免疫化する。HCo7、HCo12、HCo17およびKMマウス系の全82匹のマウスをLRP6で免疫化する。
【0162】
LRP6と結合した抗体を製造するHuMabまたはKMマウスを選択するため、免疫マウスの血清をFishwild, D. et al., 1996に記載されているELISAにより試験することができる。手短に言えば、マイクロタイタープレートをPBS中1−2μg/mlで精製された組換えLRP6でコーティングし、50μl/ウェルを4℃で一晩インキュベートし、次にPBS/Tween(0.05%)中の5%のニワトリ血清を200μl/ウェルでブロッキングする。LRP6免疫マウスからの血漿の希釈物をそれぞれのウェルに加え、1−2時間周囲温度でインキュベートする。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、次にセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)をコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体と1時間室温でインキュベートする。洗浄後、プレートをABTS基質(Sigma、A−1888、0.22mg/ml)で現像し、分光光度計によりOD 415−495で分析する。抗LRP6抗体の最高力価を表した抗マウスの脾細胞を融合のために使用する。融合を行い、ハイブリドーマ上清をELISAにより抗LRP6活性に関して試験する。
【0163】
HuMabマウスおよびKMマウスから単離されたマウス脾細胞を標準プロトコールに基づいてPEGでマウス骨髄腫細胞系に融合させる。次に得られたハイブリドーマを抗原−特異的抗体の生成に関してスクリーニングする。免疫マウスからの脾臓リンパ細胞の単細胞懸濁液を1/4の数のSP2/0非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1581)に50%のPEG(Sigma)で融合させる。細胞を平底マイクロタイタープレート中で約1×10/ウェルで置き、次に約2週間、DMEM(Mediatech、CRL 10013、高グルコース、L−グルタミンおよびピルビン酸ナトリウムを含む)プラス5mMのHEPES、0.055mMの2−メルカプトエタノール、50μg/mlのゲンタマイシンおよび1×HAT(Sigma、CRL P−7185)中で10%のウシ胎児血清、10%のP388D 1(ATCC、CRL TIB−63)馴化培地、3−5%のOrigen(登録商標)(IGEN)を含む選択培地中でインキュベートする。1−2週間後、細胞をHATがHTと置き換えられている培地中で培養する。次に個々のウェルをヒト抗LRP6モノクローナルIgG抗体に対してELISAによりスクリーニングする。広範なハイブリドーマ増殖が起こると、通常、培地を10−14日後にモニタリングする。抗体を分泌するハイブリドーマを再播種し、再びスクリーニングし、まだヒトIgG陽性のとき、抗LRP6モノクローナル抗体を制限希釈により少なくとも2回サブクローニングする。次に安定なサブクローンをインビトロで培養し、さらなる特性化のため組織培養培地中で少量の抗体を生成する。
【0164】
ヒトモノクローナル抗体を製造するハイブリドーマの製造
本発明のヒトモノクローナル抗体を製造するハイブリドーマを製造するため、免疫マウスからの脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、適当な不死化細胞系、例えば、マウス骨髄腫細胞系に融合することができる。得られたハイブリドーマ抗原−特異的抗体の生成に関してスクリーニングすることができる。例えば、免疫マウスからの脾臓リンパ細胞の単細胞懸濁液を1/6の数のP3X63−Ag8.653非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1580)に50%のPEGで融合させることができる。細胞を平底マイクロタイタープレート中で約2×145で置き、次に20%の胎児クローン血清、18%の“653”馴化培地、5%のOrigen(登録商標)(IGEN)、4mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのHEPES、0:055mMの2−メルカプトエタノール、50単位/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのゲンタマイシンおよび1×HAT(Sigma;HATを融合24時間後に加える)を含む選択培地中で2週間インキュベートする。約2週後、細胞をHATがHTと置き換えられている培地中で培養する。次に個々のウェルをヒトモノクローナルIgMおよびIgG抗体に対してELISAによりスクリーニングする。広範なハイブリドーマ増殖が起こると、通常、培地を10−14日後に観察することができる。抗体を分泌するハイブリドーマを再播種し、再びスクリーニングし、まだヒトIgG陽性のとき、モノクローナル抗体を制限希釈により少なくとも2回サブクローニングすることができる。次に安定なサブクローンをインビトロで培養し、特性化のため組織培養培地中で少量の抗体を生成する。
【0165】
ヒトモノクローナル抗体を精製するため、選択したハイブリドーマをモノクローナル抗体精製のために2リットルのスピナーフラスコ中で増殖させることができる。上清を濾過し、濃縮し、タンパク質A−セファロース(Pharmacia, Piscataway, N.J.)でアフィニティクロマトグラフィーに付すことができる。溶出したIgGをゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによりチェックし、純度を確認することができる。バッファー溶液をPBSに交換し、濃度を吸光係数1.43を使用してOD280により測定することができる。モノクローナル抗体をアリコートし、−80℃で保存することができる。
【0166】
モノクローナル抗体を製造するトランスフェクトーマの製造
本発明の抗体は、また、例えば、当分野で既知である組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法の組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマ中で製造することができる(例えば、Morrison, 1985 Science 229:1202)。
【0167】
例えば、抗体またはその抗体フラグメントを発現させるため、部分的または全長軽鎖および重鎖をコードするDNAは標準分子生物学技術(例えば、PCR増幅または興味ある抗体を発現するハイブリドーマを使用するcDNAクローニング)により得ることができ、DNAを、遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、発現ベクターに挿入することができる。これに関して、“作動可能に連結された”なる用語は、抗体遺伝子が、ベクター内の転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を調節する意図された機能を果たすように、ベクターに連結されることを意味することを意図する。発現ベクターおよび発現制御配列は使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子を別々のベクターに挿入するか、または、さらに一般的に、両方の遺伝子を同じ発現ベクターに挿入することができる。抗体遺伝子は標準方法(例えば、抗体遺伝子フラグメント上の相補性制限部位およびベクターの連結または制限部位が存在しないとき、平滑末端連結)により発現ベクターに挿入される。本明細書に記載されている抗体の軽鎖および重鎖可変領域は、Vセグメントがベクター内のCHセグメントと作動可能に連結され、そしてVセグメントがベクター内のCHセグメントと作動可能に連結されるように、所望のイソ型の重鎖定常および軽鎖定常領域をすでにコードしている発現ベクターに挿入することにより、いずれかの抗体イソ型の全長抗体遺伝子を製造するために使用することができる。さらに、またはあるいは、組換え発現ベクターは宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子を、シグナルペプチドがインフレームで抗体鎖遺伝子のアミノ末端に連結されるように、ベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0168】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現をコントロールする調節配列を有する。“調節配列”なる用語は抗体鎖遺伝子の転写または翻訳をコントロールするプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. 1990 Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA)に記載されている。調節配列の選択を含む発現ベクターのデザインが形質転換された宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの因子に依存し得ることが当業者に理解されよう。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列はサイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびパピローマに由来する、哺乳動物細胞における高レベルタンパク質発現を指示するウイルスエレメント、例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサーを含む。あるいは、非ウイルス調節配列は、例えば、ユビキチンプロモーターまたはP−グロビンプロモーターを使用され得る。なおさらに、調節エレメントは、SV40初期プロモーターおよびヒト1型T細胞白血病ウイルスの長い末端反復配列からの配列を含む、異なる源からの配列、例えば、SRaプロモーター系を含む(Takebe et al., 1988 Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
【0169】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターはさらなる配列、例えば、宿主細胞においてベクターの複製を調節する配列(例えば、複製開始点)および選択マーカー遺伝子を有し得る。選択マーカー遺伝子はベクターが挿入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、すべてAxel et al.による米国特許第4,399,216;4,634,665;および5,179,017号、参照)。例えば、一般的に、選択マーカー遺伝子はベクターが挿入されている宿主細胞上で薬物、例えば、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートに対する耐性を付与する。選択マーカー遺伝子はジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr−宿主細胞中で使用するため)およびneo遺伝子(G418を選択するため)を含む。
【0170】
軽鎖および重鎖の発現のため、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを標準技術により宿主細胞にトランスフェクトする。“トランスフェクション”なる用語の種々の形態は、外来DNAを原核生物または真核生物宿主細胞に導入するために一般的に使用されている広範な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを含むことを意図する。原核生物または真核生物宿主細胞のいずれにおいても本発明の抗体を発現させることは理論上可能である。このような真核細胞、特に哺乳動物細胞が原核細胞よりも適当に折りたたまれた免疫学的に活性な抗体をアッセンブルおよび分泌しやすいため、真核細胞、特に哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が議論される。抗体遺伝子の原核生物発現は高収率の活性抗体の生成には無効であることが報告されている(Boss and Wood, 1985 Immunology Today 6:12-13)。
【0171】
本発明の組換え抗体を発現させるための哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(例えば、Kaufman and Sharp, 1982 Mol. Biol. 159:601-621に記載されているようなDHFR選択可能マーカーと使用されるUrlaub and Chasin, 1980 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されているdhfr−CHO細胞を含む)NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む。特に、NSO骨髄腫細胞の使用に関して、さらなる発現系はWO87/04462、WO89/01036およびEP338,841に示されているGS遺伝子発現系がある。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入するとき、宿主細胞中で抗体の発現または宿主細胞を増殖させる培養培地中へ抗体の分泌を可能にする十分な時間、宿主細胞を培養することにより抗体を製造する。抗体は標準タンパク質精製法を使用して培養培地から回収することができる。
【0172】
二重特異性分子
他の局面において、本発明は本発明のLRP6結合分子(例えば、抗LRP6抗体またはそのフラグメント)を含む二重特異性分子を特徴とする。本発明のLRP6結合分子は誘導体化されるか、または他の機能分子、例えば、他のペプチドまたはタンパク質(例えば、受容体に対する他の抗体またはリガンド)と結合し、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を製造することができる。実際に、本発明のLRP6結合分子は誘導体化されるか、または1つ以上の他の機能分子と結合し、2つ以上の異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性分子を製造することができる;このような多重特異性分子は、また、本明細書において使用される“二重特異性分子”なる用語により包含されることを意図する。本発明の二重特異性分子を創造するため、本発明の抗体を(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性会合またはその他のものにより)二重特異性分子となるように1つ以上の他の結合分子、例えば、他の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合模倣物に機能的に結合することができる。
【0173】
したがって、本発明はLRP6または別のタンパク質標的における、1つのLRP6エピトープに対する少なくとも1つの第1の結合特異性および第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む二重特異性分子を含む。非限定的な例として、本発明の二重特異性分子はLRP6のプロペラ1およびプロペラ3の両方に結合することができる。
【0174】
1つの態様において、本発明の二重特異性分子は結合特異性のために少なくとも1つの抗体またはその抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvまたは一本鎖Fvを含む。抗体は、また、軽鎖または重鎖ダイマーまたはそれらのいずれかの最小フラグメント、例えば、FvまたはLadner et al. 米国特許第4,946,778号(この内容を明白に出典明示により包含させる)に記載されている一本鎖構築物であり得る。
【0175】
本発明の二重特異性分子は当分野で既知の方法を使用して成分結合特異性を結合させることによって製造することができる。例えば、二重特異性分子のそれぞれの結合特異性は、別々に製造され、次に互いに結合させることができる。結合特異性がタンパク質またはペプチドであるとき、種々のカップリング剤または架橋剤を共有結合複合体のために使用することができる。架橋剤の例はタンパク質A、カルボジイミド、N−スクシニミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびスルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−l−カルボキシレート(スルホ−SMCC)を含む(例えば、Karpovsky et al., 1984 J. Exp. Med. 160:1686; Liu et al., 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648、参照)。他の方法はPaulus, 1985 Behring Ins. Mitt. No. 78,118-132; Brennan et al., 1985 Science 229:81-83, and Glennie et al., 1987 J. Immunol. 139: 2367-2375に記載されているものを含む。結合剤はSATAおよびスルホ−SMCCであり、両方ともPierce Chemical Co. (Rockford, IL)から入手できる。
【0176】
結合特異性が抗体であるとき、それらは2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合により結合させることができる。特定の態様において、ヒンジ領域は結合の前に奇数、例えば、1つのスルフヒドリル残基を含むように修飾される。
【0177】
あるいは、両方の結合特異性は同じベクターにおいてコードされ、同じ宿主細胞において発現およびアセンブルされる。この方法は、特に、二重特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab’)またはリガンド×Fab融合タンパク質であるとき有用である。本発明の二重特異性分子は1つの一本鎖抗体および結合決定基を含む一本鎖分子または2つの結合決定基を含む一本鎖二重特異性分子であり得る。二重特異性分子は少なくとも2つの一本鎖分子を含み得る。二重特異性分子を製造するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203;5,455,030;4,881,175;5,132,405;5,091,513;5,476,786;5,013,653;5,258,498;および5,482,858号に記載されている。
【0178】
二重特異性分子のこれらの特異性標的への結合は、例えば、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害)またはウェスタンブロットアッセイにより確認することができる。これらのアッセイのそれぞれは一般的に興味ある複合体に対して特異的な標識試薬(例えば、抗体)を使用することにより特定の興味あるタンパク質−抗体複合体の存在を検出する。
【0179】
機能アッセイ
LRP6結合分子の機能特性をインビトロおよびインビボで試験することができる。例えば、結合分子をWnt経路メンバー(例えば、DKK1(dickkopf1)、DKK2、DKK4、SOST1、SOSD1(USAG1)、sFRP(可溶性Fzd−関連タンパク質)1−4、WiseまたはWntリガンド)に結合するか、またはβ−カテニンリン酸化および分解、腫瘍細胞増殖、アポトーシス、骨ミネラル密度の調節およびインスリン分泌のようなこのような生物学的プロセスを調節するLRP6の能力を妨げる能力に対して試験することができる。
【0180】
Wnt経路メンバー(例えば、DKK1(dickkopf1)、DKK2、DKK4、SOST1、SOSD1(USAG1)、sFRP(可溶性Fzd−関連タンパク質)1−4、WiseまたはWntリガンド)へのLRP6結合は、Biacore(登録商標)を使用して、該Wnt経路メンバーを固体支持体に固定し、そこへの可溶性LRP6結合を検出することにより、検出することができる。あるいは、LRP6を固定し、それへのWnt経路メンバー結合を検出することができる。LRP6/Wnt経路メンバー結合は、また、ELISAにより(例えば、固定されたWnt経路メンバーへのLRP6結合を検出することにより)、または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により分析することができる。FRETを行うため、溶液中のWnt経路メンバーへのフルオロフォア標識LRP6結合を検出することができる(例えば、米国特許第5,631,169号、参照)。
【0181】
Wnt経路メンバー(例えば、DKK1(dickkopf1)、DKK2、DKK4、SOST1、SOSD1(USAG1)、sFRP(可溶性Fzd−関連タンパク質)1−4、WiseまたはWntリガンド)へのLRP6結合は、また、“液体結合”方法、すなわち、固定環境の代わりに液体環境において親和性を測定することにより検出することができる。該方法は、例えば、BioVeris(現在、Roche)により提供される。
【0182】
該Wnt経路メンバーへのLRP6結合は免疫共沈降により検出することができる(Lagace et al., 2006 J. Clin. Inv. 116(11):2995-3005)。この方法においてLRP6−Wnt経路メンバー結合を試験するため、HepG2細胞をステロール−枯渇培地で18時間培養する。精製されたLRP6を0.1mMのクロロキンの存在下の培地に加え、細胞を1時間インキュベートする。細胞を中性洗剤(1%のジギトニンw/vol)に溶解させる。LRP6またはWnt経路メンバーを細胞溶解物から免疫沈降し、SDS−PAGEにより分離し、免疫共沈降した該Wnt経路メンバーまたはLRP6のそれぞれの存在を検出するために免疫ブロットする(Lagace et al., 2006 J. Clin. Inv. 116(11):2995-3005)。これらのアッセイは高い親和性でWnt経路メンバーに結合するLRP6の変異体形態で実施され得る(Lagace et al., 2006, supra)。
【0183】
LRP6結合分子を細胞内のWnt経路メンバーレベルを増加または減少する能力に対して試験することができる。例えば、細胞をステロール−枯渇培地(100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン硫酸塩および1g/lのグルコースを補ったDMEM、5%(vol/vol)の新生仔牛リポタンパク質−欠乏血清(NCLPDS)、10μMのコンパクチンナトリウムおよび50μMのメバロン酸ナトリウム)で18時間培養し、Wnt経路メンバー発現を誘導する。精製されたLRP6(5μg/ml)を培地に加える。LRP6の添加0、0.5、1、2および4時間後に回収された細胞におけるWnt経路メンバーレベルを同定する(Lagace et al., 2006 J. Clin. Inv. 116(11):2995-3005)。Wnt経路メンバーレベルはフローサイトメトリー、FRET、免疫ブロットまたは他の方法により同定することができる。
【0184】
LRP6結合分子をWnt誘導LRP6リン酸化およびβ−カテニン安定化、レポーター遺伝子または標的遺伝子発現を増加または減少する能力に対して試験することができる。
【0185】
Wnt経路メンバーへのLRP6結合を、LRP6を含む細胞膜製造物の生成物により検出し、LRP6を含まない細胞膜製造物と比較して製造物に結合する能力に対して試験することができる。または内因性LRP6を有する細胞または過剰発現したLRP6を有する細胞のFACS分析による。
【0186】
抗LRP6 AbsはマウスにおけるWnt依存腫瘍の増殖を阻害する能力により試験され得る。例えば、抗LRP6 AbsによるWNT1−MMTV腫瘍の腫瘍増殖の阻害。腫瘍異種移植片モデル(例えば、SCID異種移植片モデル、同所異種移植片モデルなど)内の腫瘍増殖の阻害は、抗LRP6 AbsがWnt依存腫瘍の増殖を阻害する能力により試験され得る別の環境である。
【0187】
抗LRP6 AbsはインビトロでWnt依存腫瘍の増殖を阻害、例えば、軟寒天におけるコロニー形成を阻害する能力により試験され得る。
【0188】
医薬組成物
他の局面において、本発明は、本発明のLRP6結合分子(例えば、モノクローナル抗体またはその抗原−結合部分)の1つまたは組合せを含む、薬学的に許容される担体とともに製剤化された組成物、例えば、医薬組成物を提供する。このような組成物は(例えば、2種以上の異なる)結合分子の1つまたは組合せを含み得る。例えば、本発明の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合するか、または相補的活性を有する抗体または薬物の組合せを含むことができる。
【0189】
本発明の医薬組成物は、また、組合せ治療、すなわち他の薬剤と組み合わせて投与することができる。例えば、癌治療に関して、組合せ治療は抗LRP6抗体(例えば、LRP6抗体をアンタゴナイズする)を少なくとも1つの他の化学療法剤と共に含むことができる。同様に、糖尿病治療に関して、組合せ治療は抗LRP6抗体(例えば、LRP6抗体をアゴナイズする)を少なくとも1つの他のインスリン分泌促進剤、例えば、ナテグリニドまたはレパグリニドと共に含むことができる。同様に、骨粗鬆症治療に関して、組合せ治療は抗LRP6抗体(例えば、LRP6抗体をアゴナイズする)を少なくとも1つの他の骨密度を増加することができる薬物、例えば、カルシウム、ビタミンDまたはビスホスホネートと共に含むことができる。組合せ治療において使用することができる治療剤の例は以下の本発明の薬物の使用についてのセクションにおいてより詳細に記載されている。
【0190】
本明細書において使用される“薬学的に許容される担体”は、生理学的に適合するあらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。担体は(例えば、注射または注入による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または上皮投与に適しているべきである。投与経路に依存して、活性化合物を、化合物を不活性にし得る酸および他の天然条件の作用から化合物を保護するために物質でコーティングし得る。
【0191】
本発明の医薬化合物は1つ以上の薬学的に許容される塩を含み得る。“薬学的に許容される塩”は所望の親化合物の生物学的活性を保持するが、望ましくない毒性作用を付与しない塩を意味する(例えば、Berge, S.M., et al., 1977 J. Pharm. Sci. 66:1-19、参照)。このような塩の例は酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は無毒性の無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸など、ならびに無毒性の有機酸、例えば、脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などに由来するものを含む。塩基付加塩はアルカリ土金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど、ならびに無毒性の有機アミン、例えば、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものを含む。
【0192】
本発明の医薬組成物は、また、薬学的に許容される抗酸化剤を含み得る。薬学的に許容される抗酸化剤の例は:水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガレート、アルファ−トコフェロールなど;および金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含む。
【0193】
本発明の医薬組成物において使用され得る適当な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれの適当な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、および注入可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルを含む。適当な流動性は、例えば、コーティング剤、例えば、レシチンの使用、分散物の場合、必要な粒径の維持および界面活性剤の使用により維持することができる。
【0194】
これらの組成物は、また、アジュバント、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含み得る。微生物存在の防止は上記殺菌手順ならびに種々の抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの包含により確保され得る。また、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物に包含させることが望ましいこともある。加えて、注射可能な医薬形態の吸収の延長は吸収を遅らせる薬物、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの包含により実現され得る。
【0195】
薬学的に許容される担体は無菌注射可能溶液または分散液の即時製造調製のための無菌水溶液または分散液および無菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬物の使用は当分野で既知である。慣用の媒体または薬物が活性な化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が考慮される。補助的な活性化合物も組成物に包含することができる。
【0196】
一般的に、治療組成物は製造および保存の条件下で無菌および安定でなければならない。組成物は、溶液、ミクロエマルション、リポソームまたはその他の高濃度の薬物に適した調整構造物として調剤することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)および適当なそれらの混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング剤、例えば、レシチンの使用、分散物の場合、必要な粒径の維持および界面活性剤の使用により維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを組成物中に含むことができる。注射可能な組成物の吸収の延長は組成物中に吸収を遅らせる薬物、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含むことにより実現することができる。
【0197】
無菌注射可能溶液は適当な溶媒中で必要な量の活性な化合物を上記に挙げられた成分の1つまたは組合せと混合し、必要なとき、次に無菌的精密濾過をすることにより製造することができる。一般的に、分散液は基本的分散媒および上記に挙げられたものから必要な他の成分を含む無菌ビヒクル中に活性な化合物を配合することにより製造される。無菌注射可能溶液の製造のための無菌粉末の場合、製造方法は、事前に無菌濾過した溶液から活性成分プラス何らかのさらなる所望の成分の粉末が得られる、真空乾燥およびフリーズドドライ(凍結乾燥)である。
【0198】
単位投与形態を製造するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は処置される対象および特定の投与経路に依存して変化する。単位投与形態を製造するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は一般的に治療効果を引き起こす組成物の量である。一般的に、100%のうち、この量は薬学的に許容される担体との組み合わせで活性成分が約0.01%から約99%、約0.1%から約70%または約1%から約30%の範囲である。
【0199】
投与レジメンは所望の最適応答(例えば、治療応答)を提供するために調節される。例えば、単回ボーラスで投与してもよく、経時的に数回の分割投与で投与してもよく、または治療状況の緊急性により指示されるとき、比例的に用量を減少または増加してもよい。とりわけ、投与の容易性および投与量の均一性のため、非経口組成物を投与単位形態で調剤することが有利である。本明細書において使用される投与単位形態は処置される対象に対する単位用量として適した物理的に分離した単位を意味し;それぞれの単位は必要な医薬担体と一緒に所望の治療効果を引き起こすように計算されたあらかじめ決められた量の活性な化合物を含む。本発明の投与単位形態の仕様は活性な化合物の独自の特徴と達成すべき特定の治療効果、および各個体における治療感受性に関して、このような有効化合物を調剤する技術に固有の限界により規定され、かつ直接的に依存する。
【0200】
抗体の投与に関して、用量は約0.0001から100mg/kg、さらに通常、0.01から5mg/kg宿主体重の範囲である。例えば、用量は0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重または1−10mg/kgの範囲内であり得る。典型的な処置レジメンは1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1月に1回、3月に1回または3から6月に1回の投与を必要とする。本発明のLRP6結合分子のための投与レジメンは静脈内投与による1mg/kg体重または3mg/kg体重を含み、抗体を下記投与スケジュール:4週間ごとに6回投与、次に3月ごと;3週間ごと;3mg/kg体重を1回、次に3週間ごとに1mg/kg体重の1つを使用して与える。
【0201】
いくつかの方法において、異なる結合特異性を有する2つ以上の結合分子(例えば、モノクローナル抗体)を同時に投与され、この場合、投与されるそれぞれの抗体の用量は示される範囲内である。LRP6結合分子を通常、複数回投与する。各投与間の間隔は、例えば、毎週、毎月、3月ごとまたは1年ごとであり得る。間隔は、また、患者のLRP6に対する結合分子の血中レベルを測定することにより示されるように不定期であり得る。いくつかの方法において、用量は約1−1000μg/mlのLRP6結合分子の血漿濃度を達成するように調節され、いくつかの方法において約25−300μg/mlである。
【0202】
あるいは、LRP6結合分子を持続放出製剤として投与することができ、この場合、投与頻度は少なくてよい。用量および頻度は患者におけるLRP6結合分子の半減期に依存して変化する。一般的に、ヒト抗体が最も長い半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体が続く。用量および投与頻度は処置が予防的または治療的であるかどうかに依存して変化し得る。予防的適用において、比較的低用量を比較的低頻度で長期間投与する。ある患者は残りの生涯、処置を受け続ける。治療的適用において、ときどき、比較的高用量を比較的短間隔で、疾患の進行を遅らせるかもしくは停止させるまで、または患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで必要である。その後、患者は予防レジメンで投与され得る。
【0203】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物および投与経路に対して所望の治療応答を達成するために有効であり、患者に毒性がない、活性成分の量を得るために変化させることができる。選択された用量レベルは使用される本発明の特定の組成物またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与の経路、投与の時間、使用される特定の化合物の排泄速度、処置の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、健康状態および病歴ならびに医薬分野で既知の因子を含む種々の薬物動態因子に依存する。
【0204】
本発明の組成物は、1つ以上の当分野で既知の種々の方法を使用して、1つ以上の投与経路により投与することができる。投与様式および/または投与経路は所望の結果に依存して変化することが、当業者に理解される。本発明のLRP6結合分子の投与形路は、例えば、注射または注入による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経口経路の投与を含む。本明細書において使用されるフレーズ“非経口投与”は通常、注入による経腸および局所投与以外の投与方法を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管的、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0205】
あるいは、本発明のLRP6結合分子は、非経口経路、例えば、局所、上皮または粘膜経路の投与、例えば、鼻腔内、経口的、経膣的、経直腸的、舌下的または局所的により投与することができる。
【0206】
活性な化合物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤のように、化合物を迅速な放出に対して保護する担体とともに製造することができる。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用することができる。このような製剤の製造のための多数の方法は特許されているか、または一般的に当業者に既知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978、参照。
【0207】
治療組成物は当分野で既知の医療デバイスで投与することができる。例えば、1つの態様において、本発明の治療組成物は無針皮下注射デバイス、例えば、米国特許第5,399,163;5,383,851;5,312,335;5,064,413;4,941,880;4,790,824または4,596,556号に示されているデバイスで投与することができる。本発明において有用な既知のインプラントおよびモジュールの例は:コントロールされた速度で薬物を分配するためのインプラント可能な微小注入ポンプを示す米国特許第4,487,603号;皮膚を介する薬物を投与するための治療デバイスを示す米国特許第4,486,194号;正確な注入速度で薬物を送達するための薬物注入ポンプを示す米国特許第4,447,233号;連続的薬物送達のための流量可変のインプラント可能な注入装置を示す米国特許第4,447,224号;複数チャンバーコンパートメントを有する浸透圧薬物送達系を示す米国特許第4,439,196号;および浸透圧薬物送達系を示す米国特許第4,475,196号を含む。これらの特許は出典明示により本明細書に包含される。他のこのような多数のインプラント、送達系およびモジュールは当業者に既知である。
【0208】
特定の態様において、本発明のLRP6結合分子をインビボで適切な分布を確実にするため製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は多数の高親水性化合物を排除する。本発明の治療化合物がBBBを(所望により)通過することを確実にするため、それらは、例えば、リポソーム中で製剤化することができる。リポソームを製造する方法に関して、例えば、米国特許第4,522,811;5,374,548;および5,399,331号、参照。リポソームは特定の細胞または臓器に選択的に輸送される1以上の部分を含み得、したがって標的薬物送達を強化する(例えば、V.V. Ranade, 1989 J. Cline Pharmacol. 29:685、参照)。典型的な標的とする部部は葉酸またはビオチン(例えば、Low et al.による米国特許第5,416,016号、参照);マンノシド(Umezawa et al., 1988 Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al., 1995 FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al., 1995 Antimicrob. Agents Chernother. 39:180);界面活性剤タンパク質A受容体(Briscoe et al., 1995 Am. J. Physiol.1233:134);p120(Schreier et al., 1994 J. Biol. Chem. 269:9090)を含む;K. Keinanen; M.L. Laukkanen, 1994 FEBSLett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler, 1994 Immunomethods 4:273も参照。
【0209】
本発明の使用および方法
本明細書に記載されているLRP6結合分子はインビトロおよびインビボで診断的および治療的有用性を有する。例えば、これらの分子を種々の障害を処置、予防または診断するために、培養中の細胞に、例えば、インビトロまたはインビボで、または対象に、例えば、インビボで投与することができる。LRP6結合分子は異常Wntシグナル伝達と関連する疾患および状態を意味する“Wntシグナル伝達関連障害”に罹患しているヒト患者を処置するために特に適当である。Wntシグナル伝達の異常上方調節は、特にアンタゴナイズLRP結合分子の投与による処置で修正可能である、癌、骨関節症および多発性嚢胞腎と関連する。逆に、Wntシグナル伝達の異常下方調節は、特にアゴナイズLRP結合分子の投与による処置で修正可能である、骨粗鬆症、肥満、糖尿病および神経変性疾患と関連する。
【0210】
1つの態様において、LRP6アンタゴナイズ結合分子は、Wnt1特異的様式においてLRP6の第1のプロペラに結合することにより、Wnt経路の異常に高いレベルと関連するWntシグナル伝達障害を診断、その症状を改善、その障害から保護、およびその障害を処置するために使用することができる。他の態様において、LRP6アンタゴナイズ結合分子は、Wnt3a特異的様式においてLRP6の第3のプロペラに結合することにより、Wnt経路の異常に高いレベルと関連するWntシグナル伝達障害を診断、その症状を改善、その障害から保護、およびその障害を処置するために使用することができる。1つの態様において、LRP6アゴナイズ結合分子は、LRP6の第3のプロペラに結合することにより、Wnt経路の異常に低いレベルと関連するWntシグナル伝達障害を診断、その症状を改善、その障害から保護、およびその障害を処置するために使用することができる。
【0211】
本発明のLRP6結合分子の投与により治療可能である、“Wntシグナル伝達関連癌”は、大腸癌(例えば、結腸直腸癌腫(CRC))、黒色腫、乳癌、肝臓癌、肺癌、胃癌、悪性髄芽腫および他の原発性CNS悪性神経外胚葉腫瘍、横紋筋肉腫、消化管由来腫瘍(食道、胃、膵臓および胆管系の癌を含むが、これらに限定されない)ならびに前立腺および膀胱癌を含むが、これらに限定されない。
【0212】
関連様式において、本発明のLRP6アンタゴナイズ結合分子は腫瘍細胞の増殖を阻害するか、または腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導するか、もしくは血管形成を阻害することができる。例として、腫瘍細胞アンタゴナイズLRP6結合分子(例えば、特異的にLRP6に結合する抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子)と接触させ、それによってβ−カテニン破壊複合体を安定化し、β−カテニンリン酸化および分解を引き起こすことにより腫瘍細胞内のWnt経路シグナル伝達を阻止することができる。
【0213】
本明細書に記載されているLRP6結合分子は、骨関連障害、例えば、骨折の場合、骨ミネラル密度(BMD)が健常対象と比較して異常におよび/または病理学的に高い障害および骨ミネラル密度(BMD)が健常対象と比較して異常におよび/または病理学的に低い障害に罹患しているヒト患者を処置するために特に適当である。
【0214】
抗LRP6アンタゴナイズ結合分子の投与により治療可能である、高いBMDにより特徴付けられる障害は、骨硬化症、Van Buchem症候群、骨過成長障害およびSimpson−Golabi−Behmel症候群(SGBS)を含むが、これらに限定されない。例として、該アンタゴナイズLRP6結合分子(例えば、特異的にLRP6に結合する抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子)は、骨ミネラル密度を低くするための有効量で対象に投与される。
【0215】
抗LRP6アゴナイズ結合分子の投与により治療可能である、低いBMDおよび/または骨脆弱性により特徴付けられる障害は、原発性および続発性骨粗鬆症、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症・偽性神経膠腫症候群(OPPG)、骨形成不全症(OI)、無血管性壊死(骨壊死)、骨折およびインプラント治療(歯のインプラントおよび股関節インプラント)および他の障害(例えば、HIV感染症、癌または関節炎と関連する)による骨量の減少を含むが、これらに限定されない。該アゴナイズLRP6抗体はWntシグナル伝達経路を活性化、強化または永続化するか、または細胞をWntシグナル伝達に感受性にすることができる。該アゴナイズLRP6抗体はLRP6(例えば、LRP6の第3のプロペラ)に結合し、カテニン破壊複合体の分解を引き起こし、それによってβ−カテニン安定化、核転座および転写因子の関与を可能にし、それによってそのプロセスにおける骨ミネラル密度を高くすることができる。
【0216】
いくつかの態様において、該アゴナイズLRP6結合分子は、LRP6をオリゴマー化することにより、Wntシグナル伝達経路を活性化、強化または永続化するか、または細胞をWntシグナル伝達に感受性にすることができる。Wntリガンドの必要条件が本発明のLRP6結合分子を含むLRP6のオリゴマー形成(例えば、Fzd−LRP6 ヘテロ−オリゴマー)を可能にする薬物により排除することができることが知られている。(Cong et al. (2004) Development 131(20): 5103)。いくつかの態様において、該LRP6結合分子は本明細書に記載されている二価IgG抗体である。
【0217】
LRP6結合分子の投与により治療可能である、他の“骨関連障害”は、リウマチ性関節炎、骨関節症、関節炎および溶骨性病巣の形成および/または存在を含むが、これらに限定されない。
【0218】
1つの態様において、LRP6アンタゴナイズ結合分子は、Wnt1特異的様式においてLRP6の第1のプロペラに結合することにより、異常に高いBMDにより特徴付けられる骨関連障害を診断、その症状を改善、その障害から保護、およびその障害を処置するために使用することができる。他の態様において、LRP6アンタゴナイズ結合分子は、Wnt3a特異的様式においてLRP6の第3のプロペラに結合することにより、異常に高いBMDにより特徴付けられる骨関連障害を診断、その症状を改善、その障害から保護、およびその障害を処置するために使用することができる。1つの態様において、LRP6アゴナイズ結合分子は、LRP6の第3のプロペラに結合することにより、異常に低いBMDにより特徴付けられる骨関連障害を診断、その症状を改善、その障害から保護、およびその障害を処置するために使用することができる。
【0219】
本明細書に記載されているLRP6結合分子は、糖尿病、肥満または他の関連代謝障害、例えば、健常対象と比較してWntシグナル伝達の異常におよび/または病理学的に低い速度により特徴付けられるものに罹患しているヒト患者を処置するために特に適当である。該障害は、例えば、標的に結合しインスリン分泌を強化することができる、抗LRP6アゴナイズ結合分子の投与により治療可能である。(Fujino et al. (2003) PNAS 100:229)。例として、該アゴナイズLRP6結合分子(例えば、特異的にLRP6に結合する抗体の抗原結合部分を含むLRP6結合分子)は、糖尿病状態が予防、改善または治療されるようにインスリン分泌が強化するために有効な量で対象に投与される。
【0220】
1つの態様において、LRP6アゴナイズ結合分子は、LRP6の第3のプロペラに結合することにより、糖尿病、肥満または他の関連代謝障害(例えば、健常対象と比較してWntシグナル伝達の異常におよび/または病理学的に低い速度により特徴付けられるもの)を診断、その症状を改善、その障害から保護、およびその障害を処置するために使用することができる。
【0221】
LRP6結合分子が別の薬物と一緒に投与されるとき、その2つは連続して、任意の順序で、または同時に投与することができる。いくつかの態様において、LRP6結合分子は第2の薬物でも治療を受けている対象に投与される。該第2の薬物は癌の場合、化学療法剤;糖尿病または他の代謝障害の場合、インスリン分泌促進剤、例えば、ナテグリニドまたはレパグリニド;骨関連障害の場合、骨密度を増加することができる薬物、例えば、カルシウム、ビタミンDまたはビスホスホネートであり得る。組合せ治療レジメンは付加的結果を示すか、または相乗結果を示し得る(例えば、2つの薬物の組合せ使用に対する結果より高い骨ミネラル密度またはインスリン分泌または癌細胞のアポトーシスの増加)。
【0222】
1つの態様において、本発明の結合分子はLRP6のレベルを検出するために使用することができる。これは、例えば、結合分子とLRP6間の複合体の形成を可能にする条件下でサンプル(例えば、インビトロサンプル)および対照サンプルをLRP6結合分子と接触させることにより達成することができる。分子とLRP6間で形成される任意の複合体を検出し、サンプルおよび対照において比較する。例えば、当分野で既知である標準検出方法、例えば、ELISAおよびフローサイトメトリーアッセイは、本発明の組成物を使用して実施することができる。
【0223】
したがって、1つの局面において、さらに、本発明はサンプル中のLRP6(例えば、hLRP6)の存在を検出するか、またはLRP6の量を測定する方法であって、抗体またはその一部とLRP6間の複合体の形成を可能にする条件下でサンプルおよび対照サンプルを本発明のLRP6結合分子(例えば、抗体)と接触させることを含む方法を提供する。次に、サンプルと対照サンプル間の複合体形成の違いがサンプル中のLRP6の存在の指標となる複合体の形成を検出する。
【0224】
また、本発明の組成物および使用するための指示書からなるキットは本発明の範囲内にある。該キットはさらに少なくとも1つのさらなる試薬または1つ以上のさらなる本発明の抗体(例えば、第一の抗体と異なる標的抗原上のエピトープに結合する相補的活性を有する抗体)を含み得る。一般的に、キットはキットの内容の意図した目的を示したラベルを含む。ラベルなる用語は、キット上またはキットとともに供給されるか、他の方法でキットに付随する書類、または記録材料を含む。
【0225】
本発明は完全に記載されており、以下の実施例および特許請求の範囲によりさらに説明されるが、これらは説明のためであり、さらなる限定を意図しない。当業者は慣用の実験、本明細書に記載されている特定の手順に対する多くの等価なもののみを使用して確認するか、または確かめることができる。このような等価なものは本発明の範囲および特許請求の範囲内である。本出願に引用されている発行特許および公開特許出願を含む全ての刊行物の内容は出典明示により本明細書に包含される。
【実施例】
【0226】
実施例
実施例1:Wnt特異的抗LRP6アンタゴナイズ抗体の同定
抗LRP6アンタゴニストFabsが優先的にWnt1またはWnt3a−誘導Wntシグナル伝達を阻害することを見出した。293T細胞に、SuperTopflashおよびSV40−Renillaレポーターと共にWnt1またはWnt3a発現プラスミドを一時的にトランスフェクトした。LRP6 Fabで処理された細胞および抗−リソソーム対照Fab(Fab対照)で処理された細胞間のルシフェラーゼシグナルの比を少なくとも図1および2にプロットおよび記載した。
【0227】
標準Wntシグナル伝達できるWntシグナル伝達経路タンパク質は本発明のLRP6結合分子を2つのクラスに分けることができる。Wnt3およびWnt3aはWnt3a−特異的LRP6アンタゴニストAbsによりブロックされた。他のWntタンパク質(Wnt1、2、6、7A、7B、9、10A、10B)はWnt1−特異的LRP6アンタゴニストAbsによりブロックされた。
【0228】
293T細胞にSuperTopflashおよびSV40−Renillaと共に異なるWntおよびFrizzled構築物を一時的にトランスフェクトし、LRP6アンタゴニストFabの一群で処理することにより、実験を行った。LRP6 Fabで処理された細胞および抗−リソソーム対照Fab(Fab対照)で処理された細胞間のルシフェラーゼシグナルの比を表IIに示す:
表II
【表2】
【0229】
実施例2:Wnt特異的抗LRP6抗体の同定
抗LRP6アゴニストFabsを同定した。293T−STF細胞を指示された抗体(1ug/ml)および0%または5%のWnt3a−条件培地で一晩処理し、ルシフェラーゼ活性を測定した。指示されたWnt3a濃度で、LRP6 Fabで処理された細胞および抗−リソソーム対照Fab(Fab対照)で処理された細胞間のルシフェラーゼシグナルの比を少なくとも図3において見られるようにプロットした。
【0230】
実施例3:LRP6のドメインマッピングおよびエピトープ同定
少なくとも図4において示されるとおり、FACSアッセイを使用するLRP6欠失変異体のドメインマッピングは、Wnt1−特異的LRP6アンタゴニスト抗体がプロペラ1に結合し、そしてWn3a−特異的LRP6アンタゴニスト抗体およびアゴニストLRP6抗体がプロペラ3に結合することを示す。293T細胞にMESDと共にN−末端Flag−標識野生型または変異体LRP6発現構築物を一時的にトランスフェクトした。細胞を抗−Flag抗体(図4B)および指示されたFab(図4C)で染色し、FACSにより分析した。赤色の曲線は2つのアゴニストLRP6抗体(Fab025およびFab026)を示す。紫色の曲線は2つのWnt1特異的LRP6アンタゴニスト抗体(Fab010およびFab021)を示す。暗青色の曲線は2つのWnt3a特異的LRP6アンタゴニスト抗体(Fab002およびFab004)を示す。明青色の曲線はWnt3aおよびWnt1両方の誘導シグナル伝達を阻害するLRP6アンタゴニスト抗体(Fab005)を示す。表IIIは抗LRP6FabsおよびLRP6切断変異体間の相対的結合能を示す(この表形式データは図4A−4Cで示されるFACS分析図に対応する)。“−−”は非活性を示し、そして“+”は活性を示す(大きな活性に対してより多くの記号)。
表III
【表3】

【0231】
本出願中に記載および少なくとも図4A−4Cに記載されているとおり、FabにはWnt1特異性を有するLRP6機能のプロペラ1に結合することができるものがあり(それらには、Wnt1−特異的Fab Fab010およびFab021)、またFabにはWnt3A特異性を有するLRP6機能のプロペラ3に結合することができるものもある(それらには、Wnt3A−特異的Fabs Fab002およびFab004)。本明細書において示されているとおり、Wnt3およびWnt3a−特異的シグナル伝達活性はWnt3a特異的LRP6アンタゴナイズ結合分子により非常に効果的に阻害することができ;そして、Wnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7a、Wnt7bおよびWnt10−特異的シグナル伝達活性はWnt1特異的LRP6アンタゴナイズ結合分子により非常に効果的に阻害することができる。アゴナイズLRP6結合分子(例えば、Fab025およびFab026)はWnt特異的と考えられず、LRP6第3のプロペラに結合する(すなわち、プロペラ3が欠失している(LRP6 del IIIにより示される)ときのみ、それらはLRP6結合能を失う)。
【0232】
実施例4:LRP6のオリゴマー形成はWntシグナル伝達を強化する
図5に記載のとおり、LRP6アンタゴニスト抗体はIgGに変換されたときアゴニスト活性を示す。293T細胞にSuperTopflashレポーターと共にWnt1またはWnt3aをトランスフェクトし、LRP6抗体で処理した。ルシフェラーゼ活性を抗−リソソーム対照(Fab対照)に対して標準化した。IgGに変換されると、Wnt1−特異的アンタゴニスト抗体はWnt3aアッセイにおいてアゴニスト活性を示すが、Wnt3a−特異的アンタゴニスト抗体はWnt1アッセイにおいてアゴニスト活性を示す。これらの観察は、Wnt1およびWnt3aがシグナル伝達に関してLRP6の異なる領域に結合し、LRP6のオリゴマー形成がWntシグナル伝達を強化する観察と一致する。例えば、Wnt1特異的アンタゴニストIgGsはWnt1およびLRP6の物理的相互作用をブロックすることによりWnt1シグナル伝達を阻害する。しかしながら、Wnt1特異的抗体はWnt3a−LRP6相互作用をブロックせず、代わりにLRP6のオリゴマー形成を誘導する。これはWnt3aリガンド応答の強化を引き起こす。これらのデータは内因性LRP6のオリゴマー形成がWntシグナル伝達を強化していることを示す。
【0233】
実施例5:LRP6リン酸化および遊離β−カテニン蓄積の阻害
PA−1細胞は卵巣奇形癌細胞である。これらを6時間、Fab004、Fab004およびFab012の組合せの刺激で処理した。ホスホ−LRP6(pLRP6)およびLRP6サンプルを細胞溶解の間、Triton−Xバッファーを使用して製造した。β−カテニンIBサンプルを低張溶液中で多重凍結解凍による細胞分画により製造した。
【0234】
NCI−H929細胞は多発性骨髄腫細胞である。4×10の細胞を使用した。これらをタンパク質と30分プレインキュベートし、次に4時間、Wnt3a刺激(50%条件培地)した。細胞分画を低張溶液中で多重凍結解凍により行い、膜画分をTriton−Xバッファーに再懸濁した。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]