特許第5764341号(P5764341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧 ▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5764341-燃料電池システム 図000002
  • 特許5764341-燃料電池システム 図000003
  • 特許5764341-燃料電池システム 図000004
  • 特許5764341-燃料電池システム 図000005
  • 特許5764341-燃料電池システム 図000006
  • 特許5764341-燃料電池システム 図000007
  • 特許5764341-燃料電池システム 図000008
  • 特許5764341-燃料電池システム 図000009
  • 特許5764341-燃料電池システム 図000010
  • 特許5764341-燃料電池システム 図000011
  • 特許5764341-燃料電池システム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764341
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/06 20060101AFI20150730BHJP
   H01M 8/04 20060101ALI20150730BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20150730BHJP
   H01M 8/12 20060101ALN20150730BHJP
【FI】
   H01M8/06 G
   H01M8/04 Z
   C01B3/38
   !H01M8/12
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-26641(P2011-26641)
(22)【出願日】2011年2月10日
(65)【公開番号】特開2012-169044(P2012-169044A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2013年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】大河原 裕記
(72)【発明者】
【氏名】岩田 伸
(72)【発明者】
【氏名】安原 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】高見 晋
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−111766(JP,A)
【文献】 特開2010−260772(JP,A)
【文献】 特開2009−249203(JP,A)
【文献】 特開2009−032406(JP,A)
【文献】 特開2006−260874(JP,A)
【文献】 特開平09−320622(JP,A)
【文献】 特開2008−138153(JP,A)
【文献】 特開2006−008459(JP,A)
【文献】 特開2012−169045(JP,A)
【文献】 特開2013−084456(JP,A)
【文献】 特開2012−169046(JP,A)
【文献】 特開2006−137649(JP,A)
【文献】 特開2008−277308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/06
C01B 3/38
H01M 8/04
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードガスが供給されるアノードおよびカソードガスが供給されるカソードを有する燃料電池と、前記燃料電池の前記カソードにカソードガスを供給するカソードガス通路と、原料ガスを改質させてアノードガスを生成させる改質器と、前記原料ガスを前記改質器に供給させるガス搬送源と前記原料ガスを脱硫させる第1脱硫器および第2脱硫器とを有する原料ガス通路と、前記改質器で生成された前記アノードガスを前記燃料電池の前記アノードに供給させる前記アノードガス通路と、制御部とを具備しており、
前記第1脱硫器は、前記第2脱硫器の上流に配置され、相対的に高温の第1環境に設置されており、且つ、相対的に高露点の原料ガスに対して前記第2脱硫器よりも脱硫性能が高い高温設置型の脱硫器であり、
前記第2脱硫器は、前記第1環境よりも相対的に低温の第2環境に設置されており、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能が高いと共に、相対的に高露点の原料ガスに対して相対的に低露点の原料ガスよりも脱硫性能を低下しやすい低温設置型の脱硫器であり、
前記制御部は、前記原料ガス通路を流れる原料ガスの露点と、基準時期から前記原料ガス通路を流れる原料ガスの積算流通量とに基づいて、前記第1脱硫器および前記第2脱硫器に関するメンテナンスについてのメンテナンス情報を報知する燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、前記制御部は、前記原料ガス通路を流れる原料ガスの露点が規定露点以上であるときには、前記基準時期から前記原料ガス通路を流れる原料ガスの積算流通量に基づいて、前記第1脱硫器および前記第2脱硫器に関するメンテナンスについてのメンテナンス情報を報知する燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1において、前記制御部は、前記原料ガス通路を流れる原料ガスの露点が規定露点以上であるときには、前記第1脱硫器を交換するメンテナンス情報を前記基準時期から規定露点未満の原料ガスが原料ガス路を流れる原料ガスの積算流量に基づいて報知する燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1において、前記制御部は、前記原料ガス通路を流れる原料ガスの露点が規定露点未満であるときには、前記第2脱硫器を交換するメンテナンス情報を前記基準時期から規定露点未満の原料ガスが原料ガス路を流れる原料ガスの積算流量に基づいて報知する燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1において、前記制御部は、前記原料ガス通路を流れる原料ガスの露点が規定露点の前後で変化したときには、前記原料ガス通路を流れる規定露点未満の原料ガスの積算流通量と、前記原料ガス通路を流れる規定露点以上の原料ガスの積算流通量とを合計した合計流通量に基づいて、前記第1脱硫器および前記第2脱硫器に関するメンテナンスについてのメンテナンス情報を報知する燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1において、前記原料ガス通路において上流から下流に向けて、前記第1脱硫器、前記第2脱硫器、前記流量計の順に配置されている燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄化合物を含む付臭剤として原料ガスを脱硫させる高温設置型の第1脱硫器および低温設置型の第2脱硫器を併有する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はLPG用脱硫器を開示する。この脱硫器は常温用脱硫器と高温用(>100℃)脱硫器とに2つに分割されている。また、常温用脱硫器は上流側に配置されており、原料ガスに付臭剤として含有されている比較的脱硫させ易いイオウ化合物(TBMやDMS)用とされている。高温用脱硫器は、常温用脱硫器よりも下流側に配置されており、LPG特有のイオウ化合物(COS等)を吸着するためのものであり、Ni等の金属酸化物を使用している。
【0003】
特許文献2によれば、特許文献1と基本的には同じ構成であり、常温用脱硫器と高温用脱硫器とに2つに分割されている。高温用脱硫器は50℃以上の運転温度とされている。高温用脱硫器の脱硫剤はLPG用と考えられる。特許文献3によれば、常温脱硫器と水素添加型の脱硫器(高温)との2つの脱硫方法(脱硫器)を組み合わせたものであり、起動時に水素添加による脱硫効果が不足することを、常温脱硫器で補う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-111766号公報
【特許文献2】特開2006-265480号公報
【特許文献3】特開平5-114414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3によれば、併有されている第1脱硫器および第2脱硫器の交換等のメンテナンスに関する技術ではない。
【0006】
ところで、ガス会社から供給される原料ガス(都市ガス)には、水分が含まれる場合がある。脱硫剤は一般的にはゼオライトや活性炭等の多孔質物質を使用し、常温の温度環境で使用され、硫黄化合物を吸着させて脱硫する。しかし、多孔質物質を基材とする所謂低温用の脱硫剤は低コストである利点を有するものの、水蒸気が相対的に多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させる場合には、原料ガスに含まれる水蒸気を硫黄化合物よりも優先的に吸着させる性質を有する。結果として、高露点の原料ガスを脱硫させる場合には、原料ガスに含まれる硫黄化合物を吸着させる吸着能力を低下させてしまい、脱硫効果が過剰に低下してしまうおそれがある(図2参照)。露点とは、原料ガスを冷却させたとき結露を発生させる温度をいい、高露点で有れば水蒸気量が相対的に多く、低露点で有れば水蒸気量が相対的に少ない。
【0007】
一般的には、水蒸気が少ない低露点の原料ガスが産業界では供給されている。しかし、ガス工事や配管の影響等で、原料ガスに含まれる水蒸気の量が増加し、原料ガスが高露点となることが間々ある。ここで、露点が高い原料ガスに含まれる水蒸気によって、脱硫剤は原料ガスの硫黄化合物を吸着させる吸着能力を低下させてしまい、脱硫剤の脱硫効果が低下してしまうおそれがある。この問題を回避するために、脱硫剤の使用量を必要以上に増加させることが必要であり、コストが莫大になり、燃料電池システムのサイズが大型化されるので非実用的である。
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、水蒸気が低めの低露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、更には、水蒸気が多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、原料ガスに含まれる硫黄化合物を良好に脱硫でき、これにより原料ガスの露点の変化に対応でき、加えて、第1脱硫器および第2脱硫器に関するメンテナンス(脱硫剤の交換、再生、修理を含む)に関する情報を報知する燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は燃料電池システム用脱硫装置について鋭意開発を進めている。そして本発明者は、(i)(ii)に着目した。
(i)産業界では、一般的には、相対的に低露点(例えば−20℃露点以下)の原料ガスが供給されている。しかしガス工事や配管等の様々な事情で、相対的に高露点の原料ガスが供給されることが間々あること。
(ii)一般的な脱硫剤は、原料ガスに含まれる水蒸気を吸着させ易く、このため脱硫剤に存在する吸着サイトが水蒸気に奪われ、原料ガスに含まれる硫黄化合物の吸着が困難になる。しかし、上記したように水蒸気ダメージがある脱硫剤といえども、高温の温度環境(例えば40℃以上)では、水蒸気を吸着しにくくなるため、水蒸気の影響が少なくなり、脱硫能力が維持され易い。本発明はかかる着目に基づいて完成されたものである。
【0010】
(1)すなわち、請求項1に係る燃料電池システムは、(i)アノードガスが供給されるアノードおよびカソードガスが供給されるカソードを有する燃料電池と、燃料電池のカソードにカソードガスを供給するカソードガス通路と、原料ガスを改質させてアノードガスを生成させる改質器と、原料ガスを改質器に供給させるガス搬送源と原料ガスを脱硫させる第1脱硫器および第2脱硫器とを有する原料ガス通路と、改質器で生成されたアノードガスを燃料電池のアノードに供給させるアノードガス通路と、制御部とを具備しており、
(ii)第1脱硫器は、第2脱硫器の上流に配置され、相対的に高温の第1環境に設置されており、且つ、相対的に高露点の原料ガスに対して第2脱硫器よりも優れた脱硫性能をもつ脱硫器であり、
(iii)第2脱硫器は、第1環境よりも相対的に低温の第2環境に設置されており、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能をもつと共に、相対的に高露点の原料ガスに対して相対的に低露点の原料ガスよりも脱硫性能を低下させる脱硫器であり、
(iv)制御部は、原料ガス通路を流れる原料ガスの露点と、基準時期から原料ガス通路を流れる原料ガスの積算流通量とに基づいて、第1脱硫器および第2脱硫器に関するメンテナンスに関する情報を報知する。
【0011】
原料ガスは、通常、低露点のガス(例えば−20℃露点以下)として供給される。しかしガス工事や配管等の影響で高露点のガスとして(例えば+20℃露点以上)供給される可能性が少なからずある。この場合、低温設置型の脱硫剤は水分により短期間で劣化し、原料ガスに腐臭剤として含まれる硫黄化合物が改質器等に流入し、改質器等の耐久性を低下させる可能性がある。これに対し、高温設置型の第1脱硫器は、相対的に高露点の原料ガスに対して低温設置型の第2脱硫器よりも脱硫性能をもつものであるため、高露点の原料ガスが供給される場合であっても、脱硫効果を良好に得ることができる。また、通常的には、低露点の原料ガスが供給されるが、相対的に低露点の原料ガスに対して良好な脱硫性能をもつ低温設置型の第2脱硫器が高温設置型の第1脱硫器と併設されているため、第1脱硫器での不足分については第2脱硫器を設けることで、低露点の原料ガスに対しても脱硫性能を確保することができる。
【0012】
ここで、高温設置型の高温、低温設置型の低温は、相対的な温度の高低を意味するものである。高温設置型の第1脱硫器は、低温設置型の第2脱硫器よりも相対的に高温に設置されており、燃料電池システムの筐体の内部において、例えば50℃〜300℃の温度領域に配置される。これに対して低温設置型の第2脱硫器は、燃料電池システムの筐体の内部において第1脱硫器よりも相対的に低温の環境に設置される。
【0013】
なお、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器のみで脱硫させる場合には、次の不具合があるため、不具合を解消させるため、第1脱硫器の他に、低温設置型の第2脱硫器を設けることが好ましい。低露点の原料ガスを脱硫させる場合には、一般的には脱硫剤の温度が低温ほど、脱硫効率が良い。従って低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器のみで脱硫させる場合には、脱硫効率が必ずしも充分ではなく、第1脱硫器の脱硫剤の使用量を増加させる必要がある不具合が生じる。この場合、第1脱硫器からの放熱量が増大し、システムの熱ロスが増大し、排熱回収効率が低下する不具合がある。更に、高温設置型の第1脱硫器に使用される第1脱硫剤は、一般市場では、低温設置型の第2脱硫器に使用される第2脱硫剤よりも高価であることが多い。
【0014】
しかし請求項1の燃料電池システムによれば、高温設置型の第1脱硫器および低温設置型の第2脱硫器の双方を設けている。そして、高露点の原料ガス(水蒸気が相対的に多い)については高温設置型の第1脱硫器で主として分担し、低露点の原料ガス(水蒸気が相対的に少ない)については低温設置型の第2脱硫器で主として分担することで、コストが高い第1脱硫剤の使用量をできるだけ低減でき、コスト低減が図れる。更に、第1脱硫剤および第2脱硫剤の全体としての使用量を低減でき、システムの小型化が可能となる。上記したように請求項1に係る燃料電池システムによれば、水蒸気が少なめの低露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、更には、水蒸気が多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、良好に脱硫を行うことができる。さらに、第2脱硫器の上流に第1脱硫器を設けたことで、高露点の原料ガスに対して第2脱硫器は水分が吸着するものの、第2脱硫器は第1脱硫器100よりも下流に配置されているため、第2脱硫器へ硫黄化合物の吸着は抑えられる。従って第2脱硫器200は新品状態に保たれると推定される。
【0015】
ところで、システムの発電運転時間が長くなり、原料ガス通路を介して改質器に流れる原料ガスの積算流通量が増加するにつれて、第1脱硫器の第1脱硫剤および第2脱硫器の第2脱硫剤の劣化が進行する。更に、原料ガスの露点が高いと、原料ガスに含まれる水分が多いため、第1脱硫器および第2脱硫器の寿命が短くなる。殊に、低温設置型の第2脱硫器は、高露点の原料ガスに対して第1脱硫器よりも脱硫性能の低下が激しい。そこで本発明によれば、制御部は、原料ガス通路を流れる原料ガスの露点と、基準時期から原料ガス通路を流れる原料ガスの積算流通量とに基づいて、第1脱硫器および第2脱硫器に関するメンテナンスに関する情報を報知する。メンテナンスとは、脱硫器自体の交換、脱硫器に搭載されている脱硫剤の交換のうちのいずれか一つを含む。交換は再生、修理を含む。
【0016】
基準時期とは、一般的には、燃料電池システムを設置した時期、原料ガス通路を流れる原料ガスの積算流通量の起算開始時期、または、起算開始時期と実質的に推定できる時期をいう。この場合、新品状態(実質的に新品を含む)の脱硫器を搭載する燃料電池システムを新しく設置した時期、原料ガスを新品状態(実質的に新品を含む)の脱硫器に流通させた開始時期、あるいは、脱硫器が交換(再生を含む)された場合には交換時期(再生時期)が例示される。報知とは、警報器にメンテナンス信号を警報したり、表示部にメンテナンス信号を表示したり、システムの運転を停止させることなどが例示される。
【0017】
(2)請求項2に係る燃料電池システムによれば、制御部は、原料ガス通路を流れる原料ガスの露点が規定露点以上であるときには、基準時期から原料ガス通路を流れる原料ガスの積算流通量に基づいて、第1脱硫器および第2脱硫器に関するメンテナンスについてのメンテナンス情報を報知する。原料ガスの露点が規定露点以上であるときには、第2脱硫器ばかりか、第1脱硫器ついても劣化が進行し易く、脱硫剤の寿命が短くなる。この場合、除去されなかった硫黄化合物が改質器に流入するおそれがある。このため第1脱硫器および第2脱硫器の双方を交換させるメンテナンス情報を報知する。
【0018】
(3)請求項3に係る燃料電池システムによれば、制御部は、原料ガス通路を流れる原料ガスの露点が規定露点以上であるときには、基準時期から原料ガス通路を流れる原料ガスの積算流通量に基づいて、第2脱硫器を交換せず、第1脱硫器を交換するメンテナンス情報を報知する。原料ガスの露点が規定露点以上であるときには、第2脱硫器は実質的に脱硫効果を発揮しないことが多い。そこで、脱硫効果を発揮しない第2脱硫器を交換せず、脱硫効果を発揮する第1脱硫器を交換(再生、修理を含む)するメンテナンス情報を報知する。
【0019】
(4)請求項4に係る燃料電池システムによれば、制御部は、原料ガス通路を流れる原料ガスの露点が規定露点未満であるときには、基準時期から原料ガス通路を流れる原料ガスの積算流通量に基づいて、第1脱硫器の脱硫剤を交換せず第2脱硫器の脱硫剤を交換するメンテナンス情報を報知する。原料ガスの露点が規定露点未満であるときには、第2脱硫器の脱硫性能が高い。このため高価な第1脱硫器を交換せず、低価格の第2脱硫器を交換(再生、修理を含む)するメンテナンス情報を報知する。
【0020】
(5)配管工事等の事情により、原料ガスの露点が規定露点の前後で変化するときがある。この場合、第1脱硫器および第2脱硫器の寿命は、規定露点未満の原料ガスの積算流通量と、規定露点以上の原料ガスの積算流通量との影響を受ける。そこで、請求項5に係る燃料電池システムによれば、制御部は、原料ガス通路を流れる原料ガスの露点が規定露点の前後で変化したときには、原料ガス通路を流れる規定露点未満の原料ガスの積算流通量と、原料ガス通路を流れる規定露点以上の原料ガスの積算流通量とを合計した合計流通量に基づいて、第1脱硫器および第2脱硫器に関するメンテナンスについてのメンテナンス情報を報知する。
【0021】
(6)請求項6に係る燃料電池システムによれば、原料ガス通路において上流から下流にかけて、第1脱硫器、第2脱硫器、流量計の順に配置されている。脱硫剤は、一般的には、温度に対して炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着特性をもつ。このため、システムの起動・停止時や、システムの負荷変動等に伴い、脱硫剤温度が変化すると、原料ガスの主要成分である炭化水素基が脱硫剤に対して吸着または脱着することがある。殊に、第1脱硫器のように高温域に設置される場合には、その影響が更に大きい。このため、従来技術のように流量計が第1脱硫器よりも上流にあるときには、流量計で原料ガスの流量を計測したにも拘わらず、脱硫器において炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着が発生し、結果として、改質器に供給される原料ガスの実流量が変動するおそれがある。すなわち、第1脱硫器において炭化水素基が吸着または脱着し、改質器に実際に供給される原料ガスの実流量の不足または過剰が生じるおそれがある。ここで、原料ガスが不足した場合には、燃料電池において原料ガスの欠乏による劣化が進行するおそれがある。また、原料ガスが過剰となった場合には、改質器において原料ガスに対する水蒸気のモル比(S/C)が低下することによる改質触媒のコーキング劣化や異常高温による改質器や燃料電池の劣化が促進させるおそれがある。このため、温度によって炭化水素基を吸着または脱着させる特性を持つ第1脱硫器よりも下流に流量計を設置することが好ましい。
【0022】
更に、高温設置型の第1脱硫器よりも下流に流量計が設置されている場合には、第1脱硫器を通過した原料ガスは熱をもち、原料ガスの温度は流量計の耐熱温度以上となり易いため、流量計の長寿命化には好ましくない。そこで請求項6に係る燃料電池システムによれば、第1脱硫器、第2脱硫器、流量計の順に設置させる。このように原料ガスを高温設置型の第1脱硫器→低温設置型の第2脱硫器→流量計の順に流す。これにより高温の第1脱硫器を通過した原料ガスの熱を第2脱硫器で授受し,第2脱硫器において放熱させる。このため流量計へ流入する原料ガスの温度をできるだけ低下させることができ、流量計の耐熱の問題も解消することが可能となり、流量計の長寿命化に有利である。また、第1脱硫器を通過した原料ガスが保有する熱量は小さいため、第2脱硫器における放熱で充分に原料ガスを低温化できる。ここで、脱硫器において炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着が発生し、結果として、改質器に供給される原料ガスの実流量が変動するときであっても、高温設置型の第1脱硫器→低温設置型の第2脱硫器→流量計の順に流す。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高温設置型の第1脱硫器とその下流に低温設置型の第2脱硫器とが直列に併設されているため、水蒸気が低めの低露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、更には、水蒸気が多く含まれる高露点の原料ガスを脱硫させるときにおいても、原料ガスに含まれる硫黄化合物を良好に脱硫できる。これにより原料ガスの露点の変化に対応できる。
【0024】
システムの発電運転期間が長くなり、原料ガス通路を流れる原料ガスの積算流通量が増加すると、第1脱硫器および第2脱硫器の劣化が進行する。更に、原料ガスの露点が低いと、原料ガスに含まれる水蒸気量や水分が少ないため、第1脱硫器および第2脱硫器の寿命が長い。原料ガスの露点が高いと、原料ガスに含まれる水蒸気量や水分が多いため、第1脱硫器および第2脱硫器の寿命が短い。殊に、第2脱硫器は高露点の原料ガスに対して第1脱硫器よりも脱硫性能の低下が激しい。そこで、制御部は、原料ガス通路を流れる原料ガスの露点の高低と、基準時期から原料ガス通路を流れる原料ガスの積算流通量とに基づいて、第1脱硫器および第2脱硫器に関するメンテナンスに関する情報を報知する。このため第1脱硫器および第2脱硫器に対して適切にメンテナンス(交換、再生、修理を含む)の有無を報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態1に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
図2】第1脱硫剤および第2脱硫剤に係り、原料ガスの露点と脱硫剤の温度と寿命年数(相対値)との関係を示すグラフである。
図3】脱硫器の交換の形態を示す概念図である。
図4】原料ガスが低露点から高露点に変化したときにおける脱硫器の交換の形態を示す概念図である。
図5】原料ガスが低露点から高露点に変化したときにおける脱硫器の交換の形態を示す概念図である。
図6】制御部が実行するフローチャートである。
図7参考例に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
図8】別の実施形態に係り、発電モジュールに第1脱硫器が隣設されている状態を示す概念図である。
図9】更に別の実施形態に係り、第1脱硫器が配設されている状態を示す概念図である。
図10】別の実施形態に係り、第1脱硫器が配設されている状態を示す概念図である。
図11】適用形態に係り、燃料電池システムを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
高温設置型の第1脱硫器および低温設置型の第2脱硫器に収容される脱硫剤の基材として、ゼオライト、遷移金属等の金属を担持したゼオライト、活性炭等の多孔性物質が挙げられる。第1脱硫器の第1脱硫剤は、遷移金属等の金属を含むことが多い。この場合、物理的吸着の他に化学的吸着も併有する形態でも良い。上記した金属としては、銀、銅、金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、鉄、クロム、モリブデンのうちの少なくとも1種が例示され、更に、これらを2種以上含む合金が例示される。第1脱硫器に使用される第1脱硫剤は、第1脱硫剤を100%とするとき、上記した金属を質量比で0.5〜40%の範囲内で含むことが好ましい。ゼオライトは、
アルミノケイ酸塩のなかで結晶構造中に空隙を持つものの総称であり、天然ゼオライトでも人工ゼオライトでも良い。脱硫剤は、原料ガスに含まれる硫黄化合物(例えばメチルメルカプタン、ジメチルサルファイド、ジメチルジサルフィド)だけでなく、原料ガスに含まれる水蒸気やHC等を物理吸着させる。脱硫剤はその吸着能力は水蒸気等の吸着物の種類や脱硫剤の温度により変化し、殊に常温領域では水蒸気によりダメージを受け易い。ここで、脱硫剤において、原料ガスに含まれる硫黄化合物の吸着を妨害する物質のうち、最も影響が大きいのが原料ガスに含まれる水蒸気と考えられている。よって、低露点(例えば0℃以下、−10℃以下)の原料ガスを脱硫剤で脱硫させる場合には、原料ガスに含まれる水蒸気の含有量が少なく、水蒸気の影響が少ないため、原料ガスに含まれる硫黄化合物を吸着させる能力が効果的に発揮される。しかし、高露点の原料ガスを常温領域の第2脱硫器に通過させる場合には、原料ガスに含まれる水蒸気の量が増加しているため、第2脱硫剤は水蒸気の影響を受け易く、第2脱硫剤が硫黄化合物を吸着させる能力は激減する。このような性質を有する第2脱硫剤といえども、温度環境が高温(例えば、40℃以上、50℃以上、230℃以下)になれば、脱硫剤における水蒸気ダメージが回復し、結果として、脱硫能が回復される。
【0027】
(実施形態1)
図1は実施形態1を示す。燃料電池システムは、アノード10およびカソード11を有する燃料電池1と、燃料電池1のカソード11にカソードガス(空気等の酸素含有ガス)を供給するカソードガス通路70と、原料ガスを改質させてアノードガス(水素含有ガスまたは水素ガス)を生成させる改質器2Aと、原料ガスを脱硫させた状態で改質器2Aに供給させるガス搬送源として機能するポンプ60を有する原料ガス通路6と、改質器2Aで生成されたアノードガスを燃料電池1のアノード10に供給させるアノードガス通路73と、アノードガス通路73、改質器2Aおよび燃料電池1を収容する断熱壁19とを有する。発電モジュール18は、改質器2A、燃料電池1、断熱壁19で形成されている。改質用の水または水蒸気が供給させる給水通路8が改質器2Aに接続されている。改質器2Aは、水蒸気を生成させる蒸発部と、水蒸気を用いて燃料を改質させる改質部とを含む。
【0028】
図1に示すように、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、遮断弁69、第1脱硫剤を収容する高温設置型の第1脱硫器100と、第2脱硫剤を収容する低温設置型の第2脱硫器200と、第1脱硫器100および第2脱硫器200を経た原料ガスの流量を計測する流量計300とをこの順に直列に有する。第1脱硫器100は、相対的に高温の第1環境(例えば50℃以上、220℃以下の温度環境)に設置されており、具体的には、発電モジュール18の断熱壁19から受熱(熱伝導、輻射熱の受熱)できるように、断熱壁19の外壁面に接触または接近状態で隣設されて配置されている。
【0029】
第1脱硫器100は、相対的に高露点の原料ガスに対しても脱硫性能をもつ第1脱硫剤を収容する。第1脱硫剤としては、ゼオライトが挙げられるが、銀や銅等の金属を担持したゼオライト、活性炭等の多孔質材料でも良い。第2脱硫器200は、第1環境よりも相対的に低温(例えば0〜50℃未満)の第2環境に設置されており、高温の発電モジュール18から離間して配置されている。第2脱硫器200の第2脱硫剤は、相対的に低露点の原料ガスに対して脱硫性能をもつ。第2脱硫器200では、相対的に高露点の原料ガス(水蒸気が相対的に多い)に対して、相対的に低露点の原料ガス(水蒸気が相対的に少ない)よりも脱硫性能を低下させる(図2参照)。このような第2脱硫剤としてはゼオライトが挙げられる。原料ガスとしては炭化水素系が例示される。
【0030】
一般的には、原料ガス(例えば都市ガス(13A))は低露点(例えば0℃以下、−10℃以下、−20℃以下)であり、原料ガスに含有されている水蒸気は微小量である。しかしガス配管工事、配管等の事情により、原料ガスに含まれる水蒸気量が増加し、高露点(例えば+20℃露点以上)の原料ガスが供給される可能性が少なからずある。この場合、脱硫剤は短期間で劣化し、原料ガスに腐臭剤として含まれる硫黄化合物が改質器2A等に流入し、改質器2A等の耐久性を低下させる可能性がある。これに対し、高温設置型の第1脱硫器100は、相対的に高露点の原料ガスに対しても良好な脱硫性能をもつものである。このため、高露点の原料ガスが供給される場合であっても、脱硫効果を良好に得ることができる。また、通常的には、低露点の原料ガスが原料ガス通路6に供給されるが、相対的に低露点の原料ガスに対して良好な脱硫性能をもつ第2脱硫器200が第1脱硫器100の他に設けられている。このため、第1脱硫器100での不足分については第2脱硫器200を設けることで、低露点の原料ガスに対しても脱硫性能を確保することができる。なお、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器100のみで脱硫させる場合には、次の不具合がある。このような不具合を解消させるため、高温設置型の第1脱硫器100と低温設置型の第2脱硫器200との双方を設けることが好ましい。
【0031】
すなわち、低露点の原料ガスを脱硫させる場合には、一般的には、脱硫剤の温度が低ほど脱硫効率が良いため、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器100のみで脱硫させる場合には、脱硫効率が充分ではなく、第1脱硫器100の第1脱硫剤の使用量を過剰に増加させる必要がある不具合がある。しかし本実施形態によれば、第1脱硫器100および第2脱硫器200の双方を設けることにより、露点の原料ガスについては第1脱硫器100で主として分担し、露点の原料ガスについては第2脱硫器200で分担することで、全体としての第1脱硫剤および第2脱硫剤の合計の使用量を低減でき、システムの小型化が可能となる。
【0032】
ここで、低露点の原料ガスを高温設置型の第1脱硫器100のみで脱硫させる場合には、脱硫効率が必ずしも充分ではないため、高温の第1脱硫器100に収容する第1脱硫剤の使用量を増大させる必要がある不具合がある。この場合には、第1脱硫器100からの放熱量が増大し、システムの熱ロスが増大し、排熱回収効率が低下する不具合がある。しかも、高温設置型の第1脱硫器100に使用される第1脱硫剤は、一般市場に流れている低温設置型の脱硫剤に対し高価である。しかし本実施形態によれば、高温設置型の第1脱硫器100および低温設置型の第2脱硫器200の双方を設けている。そして、露点の原料ガスについては主として第1脱硫器100で分担し、露点の原料ガスについては主として第2脱硫器200で分担することで、高温設置型の第1脱硫器100に使用されるコスト高の脱硫剤の使用量を低減でき、コスト低減が図れる。
【0033】
さて、上記構成とした場合には、脱硫剤は、温度に対して炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着特性を持っている。このため、システムの起動・停止時や、システムの負荷変動等に伴い、脱硫剤温度が変化すると、脱硫剤温度の変化に伴い、炭化水素基が脱硫剤に対して吸着または脱着することがある。高温設置型の第1脱硫器100のように高温域に第1脱硫剤を設置する場合には、その度合が更に大きい。このため従来技術のように流量計300が脱硫器よりも上流にあるときには、流量計300で原料ガスの流量を正確に計測したにも拘わらず、脱硫器において炭化水素基(例えばメタンやブタン等)の吸着または脱着が発生すると、改質器2Aに供給される原料ガスの流量が変動するおそれがある。すなわち、脱硫器において炭化水素基が吸着または脱着し、改質器に実際に供給される原料ガスの流量の過剰または不足が生じるおそれがある。ここで、原料ガスが不足した場合には、燃料電池において原料ガスの欠乏による劣化が進行するおそれがある。また、原料ガスが過剰となった場合には、改質器において原料ガスに対する水蒸気のモル比(S/C)が低下することによる改質触媒のコーキング劣化や異常高温による改質器や燃料電池の劣化が促進させるおそれがある。このため、温度によって炭化水素基を吸着または脱着させる特性を持つ第1脱硫器100よりも下流に流量計300を設置することが好ましい。しかし、第1脱硫器100よりも下流に流量計300が設置されている場合には、高温設置型の第1脱硫器100を通過した原料ガスは熱をもち、原料ガスは、流量計300の耐熱温度以上となり易いため、流量計300の故障を誘発させるおそれがある。
【0034】
そこで本実施形態によれば、図1に示すように、原料ガス通路6において第1脱硫器100および第2脱硫器200の双方よりも下流に流量計300を設置し、改質器2A等に安定的に原料ガスを供給可能となる。さらに原料ガスを、高温設置型の第1脱硫器100→低温設置型の第2脱硫器200の順に流すことで、第1脱硫器100を通過した原料ガスの熱を第2脱硫器200で授受し,第2脱硫器200において放熱させることができる。このため、熱の影響を受け易い流量計300へ流入する原料ガスの温度をできるだけ低下させることができる。この場合、流量計300の耐熱の問題も解消することが可能となる。なお、第1脱硫器100を通過した原料ガスが保有する熱量は小さいため、第2脱硫器200における放熱で充分に原料ガスを低温化できる。なおポンプ60は圧力の脈動を発生させにくいものが好ましい。
【0035】
図1に示すように、原料ガス通路6には、バッファ室をもつバッファ400が設けられている。原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、遮断弁69、第1脱硫器100、第2脱硫器200、流量計300、バッファ400と、ポンプ60とをこの順に直列に配置している。バッファ400は中空室であるバッファ室401を有する。ポンプ60は、原料ガス通路6において原料ガスを発電モジュール18の改質器2Aに向けて搬送させるものであるが、原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。そこで図1に示すように、原料ガス通路6において、第1脱硫器100、第2脱硫器200、流量計300、バッファ400、ポンプ60をこの順に直列に配置している。この場合、図1に示すように、バッファ400は、流量計300の下流、且つ、ポンプ60の上流に配置されている。流量計300は第2脱硫器200に対して直後の下流に配置されている。すなわち、脈動原因となるポンプ60と、脈動を受けたくない流量計300との間には、バッファ400が介在する。このため流量計300はポンプ60の脈動の影響を受けにくくなる。この場合、システムの安定運転に有利である。換言すると、図1に示すように、第1脱硫器100→第2脱硫器200→流量計300→バッファ400→ポンプ60、チャッキ弁500が直列に設けられているため、ポンプ60の脈動をバッファ400により吸収することができる。このため流量計300の流量脈動を抑止することができる。これにより流量計300の出力値が安定し、制御上の安定性が確保されるとともに、脈動による流量計300の出力値が真値から外れる挙動も抑えることが可能となる。
【0036】
なお、チャッキ弁500は作動により原料ガスの圧力の脈動を発生させるおそれがある。そこで図1に示すように、流量計300とチャッキ弁500(ポンプ60)との間にバッファ400が介在するため、流量計300は、ポンプ60およびチャッキ弁500に起因する脈動の影響を受けにくくなる。この場合、流量計300が原料ガスの流量を計測させる精度が確保され、システムの安定運転に有利である。
【0037】
第1脱硫器100は発電モジュール18の断熱壁19から受熱できるように、断面壁19の外壁面側に接触または近接するように設置されており、規定温度範囲(例えば、60〜220℃、または、60〜150℃)に維持される。これに対して、第2脱硫器200はシステムの筐体の内部において発電モジュール18から離間する相対的に低温の環境(0℃以上、50℃未満)に設置されている。ここで、原料ガスが第1脱硫器100を流通することで、原料ガスは昇温され、第2脱硫器200に供給される。原料ガスの持っている熱量は数Wのため、第2脱硫器200のうちの上流側の温度が若干上昇する。ここで、原料ガスは第2脱硫器200における放熱にてシステムの筐体の内部温度まで低下し、流量計300、バッファ400、チャッキ弁500、発電モジュール18の改質器2Aに送られる。これにより、流量計300に入る原料ガスの温度は低下し、流量計300の耐熱温度以下となり、流量計300の故障を招くことなくシステムを運転可能である。また、システムの起動〜停止までにおける第1脱硫器100に収容されている第1脱硫剤の温度変化に起因して、第1脱硫器100において炭化水素基の吸着または脱着が起こり得る。この点について本実施形態によれば、流量計300が第1脱硫器100,200よりも下流に配置されていることで、発電モジュール18へ流入する原料ガス(吸着または脱着後の原料ガス)の単位時間あたり流量を正確に把握することができる。この場合、発電モジュール18におけるガス欠による劣化を抑止することができる。
【0038】
ところで、システムの発電運転の累積時間が長くなると、原料ガス通路6を流れる原料ガスの積算流通量が増加するにつれて、第1脱硫器100および第2脱硫器200の劣化が進行する。更に、原料ガスの露点が高いと、原料ガスに含まれる水蒸気量や水分が多いため、第1脱硫器100および第2脱硫器200の寿命が短い。殊に、第2脱硫器200は高露点の原料ガスに対して第1脱硫器100よりも脱硫性能の低下が激しい。そこで本実施形態によれば、制御部100Xは、原料ガス通路6を流れる原料ガスの露点の高低と、基準時期から原料ガス通路6を流れる原料ガスの積算流通量とに基づいて、第1脱硫器100および第2脱硫器100に関するメンテナンス(交換、再生、処理を含む)に関する情報を報知する。このため第1脱硫器100および第2脱硫器200に対して適切にメンテナンスできる。
【0039】
報知とは、警報器にメンテナンス信号を警報したり、表示部にメンテナンス信号を表示したり、システムの運転を停止させることなどが例示される。基準時期とは、一般的には、原料ガス通路を流れる原料ガスの積算流通量の起算開始時期、または、起算開始時期と実質的に推定できる時期をいう。新品状態(実質的に新品を含む)の脱硫器を搭載する燃料電池システムを新しく設置した時期、原料ガスを新品状態(実質的に新品を含む)の脱硫器に流通させた開始時期、あるいは、脱硫器が交換された場合には交換時期が例示される。なお、積算流通量は流量計300からの信号に基づいて制御部100Xにより求められる。
【0040】
(実施形態2)
図2は実施形態2を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有するため、図を準用する。図2は、第1脱硫器100に使用される第1脱硫剤および第2脱硫器200に使用される第2脱硫剤の使用される温度が40℃と70℃の場合について、原料ガスの露点と脱硫剤の寿命との関係を示す。図2において、特性線AHは第1脱硫剤の温度が70℃の場合を示し、特性線ALは第1脱硫剤の温度が40℃の場合を示す。特性線BHは第2脱硫剤の温度が70℃の場合を示し、特性線BLは第2脱硫剤の温度が40℃の場合を示す。原料ガスの露点温度が相対的に低い場合には、原料ガスに含まれる水蒸気量が少ないため、いずれの脱硫剤も寿命年数が長い。第1脱硫剤に関してはAH,ALが比較的差が小さく温度の影響が少ないが、第2脱硫剤はBHに対しBLの寿命が長く脱硫剤温度が低い方が寿命が長いことが分かる。また、比較的露点が高い領域においては、第1,2脱硫剤とも低露点に比較し寿命は短くなる。第2脱硫剤は著しく寿命が低下するのに対し第1脱硫剤は寿命が長い。殊に脱硫剤温度が高温であるAHに関しては高寿命が保持できる。上記より、第1脱硫器に関しては第1脱硫剤を用いることが望ましい。第2脱硫器に関しては、低温かつ低露点での脱硫特性が良好であり安価な第2脱硫剤を用いることが望ましい。なお、第2脱硫器には第1脱硫剤を用いても良い。第1脱硫剤は低露点域において、AHとALが大きく差がないことから低温でも良好な脱硫特性を示し、かつ寿命年数相対値からも同量において第2脱硫剤よりも高寿命を持つ。よって、同寿命を持たせるのに少量の脱硫剤で良いことを示す。上記より、必要脱硫剤量による小型化とトータル脱硫剤量でのコスト(単価×容量から決定)から脱硫剤を選定することが望まれる。なお、第1、第2脱硫剤とも原料ガスの露点が高露点から低露点に移行した場合には、脱硫剤に吸着していた水蒸気が脱離することで図2に示す硫黄吸着能力(寿命)を回復できる。
【0041】
(実施形態3)
図3は実施形態3を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有するため、図1および図2を準用する。図2として示す特性を有する第1脱硫剤および第2脱硫剤を用いている。第1脱硫器100は、高露点の原料ガスに対して基準時期から2.0年の寿命をもち、低露点の原料ガス(正常の原料ガス)に対して4.6年分の寿命をもつように設計されている。これに対して第2脱硫器200は、低露点の原料ガス(正常の原料ガス)に対して基準時期から3.5年分の寿命をもつように設計されている。第1脱硫器100および第2脱硫器200のトータルで、8.1年分(3.5+4.6=8.1)の寿命がシステムの設置初期に得られている。
【0042】
図3の上半分Aは、設置初期(基準時期)から継続的に低露点の原料ガスが供給される場合を示す。トータルで8.1年分の寿命が設置初期には得られている。このため、設置初期(基準時期)から8.1年後には、低露点の原料ガスに有効な第2脱硫器200のみを交換する。その後、3.5年(低露点の原料ガスが供給される場合における第2脱硫器200の寿命に相当)周期で、第2脱硫器200のみを交換(再生含む)する。低露点であれば、第2脱硫器200は低価格であるにもかかわらず、脱硫効果を良好に発揮するためである。
【0043】
第1脱硫器100は、設置初期から4.6年(低露点の原料ガスが供給されるとき)で寿命となる。第1脱硫器100の第1脱硫剤は高価であるため、価格が低いものの低露点の原料ガスの脱硫に有効な第2脱硫器200のみ交換する。これにより3.5年交換を可能とし、システムの脱硫に要するランニングコストを低減できる。
【0044】
図3の下半分Bは、設置初期(基準時期)から継続的に高露点の原料ガスが供給される場合を示す。第1脱硫器100は、高露点(例えば+20℃)の原料ガスが供給される場合には、2年分の寿命をもつ第1脱硫剤を充填している。一方、第2脱硫器200は図2に示すように、高露点の原料ガスに対してほとんど脱硫機能しない。このため、システムの設置初期から2年後には、第1脱硫器100において腐臭剤(硫黄化合物)の吸着状態が飽和となる。このため、設置初期から2年後には第1脱硫器100のみ交換し、第2脱硫器200を交換しない。第1の理由として、第2脱硫器200は高露点の原料ガスに対しては脱硫機能を実質的に有しない。第2の理由として、コスト低減のため、第3の理由として、上流側の第1脱硫器10が脱硫効果を有する限り、下流側の第2脱硫器200は新品に近い状態であり、原料ガスが高露点から低露点に変化すれば、第2脱硫剤は脱硫機能を再び発揮することから、第2脱硫器200は交換しない。このように、原料ガスが継続的に高露点である場合には、第1脱硫器100のみを交換し、脱硫機能を発揮しない第2脱硫器200は交換しない。脱硫に要するランニングコストが低減される。
【0045】
(実施形態4)
図4は実施形態4を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有するため、図1および図2を準用する。本実施形態は、システムの設置初期から低露点の原料ガスが供給されていたものの、低露点の原料ガスの積算流通量が1年分(2年未満,基準時期から相対的に短期間)のとき、原料ガスが低露点から高露点に変化した場合を示す。
水蒸気が相対的に多い高露点の原料ガスに含まれる硫黄化合物が吸着する第1脱硫剤内の高活性サイトは、硫黄化合物が吸着しやすい。従って、この第1脱硫剤内の高活性サイトには、低露点の原料ガスに含まれる硫黄化合物も吸着しやすいため、この第1脱硫剤内の高活性サイトには1年分の低露点の原料ガスに含まれる硫黄化合物が吸着していると考えられる。そのため低露点の原料ガスを1年間処理した第1脱硫剤内の高活性サイトは残り1年分と計算でき、高露点の原料ガスに含まれる硫黄化合物を1年分しか吸着できない。
つまり、第1脱硫器100の高露点の原料ガスに対する2年分の寿命は低露点の原料ガスの積算流通量と高露点の原料ガスの積算流通量の和がとなる2年分となる時に、第1脱硫器100は脱硫効果が飽和して寿命となると判断される。
システムの設置初期では、低露点の原料ガスに対して第1脱硫器100は4.6年の寿命をもち、第2脱硫器200は3.5年の寿命をもつ。故に、第1脱硫器100および第2脱硫器200の合計で8.1年分(4.6+3.5=8.1)の寿命をもつ。1年後の段階でも、原料ガスが低露点であれば、第1脱硫器100は1年分の硫黄化合物を吸着しただけの状態であるから、第1脱硫器100は3.6年分(4.6−1=3.6)の寿命を持ち、第1脱硫器100および第2脱硫器200の合計で7.1年分(3.6+3.5=7.1)の寿命をもつ。しかし、設置初期(基準時期)から1年後に原料ガスが低露点から高露点に変化した場合には、高露点の原料ガスに対して、第1脱硫器100の寿命は残り1年であり、かつ、第2脱硫器200はほとんど脱硫機能を発揮しない。このことから、高露点の原料ガスに対して第1脱硫器100は残り1年の寿命しか有しないと考えられる。このため、高露点の原料ガスで残り1年分運転した後に第1脱硫器100のみを交換する。高露点の原料ガスに対して脱硫効果を発揮できない第2脱硫器200については、交換しない。
【0046】
ここで、第2脱硫器200については、水分が吸着しているものの、第1脱硫器100よりも下流に配置されているため、硫黄化合物の吸着は抑えられる。従って第2脱硫器200は新品状態であると推定される。この場合、原料ガスが高露点から低露点に変化すれば、第2脱硫器200はそのまま3.5年分の寿命を持つため、第2脱硫器200は交換しない。これにより原料ガスが低露点から途中で高露点に変更された場合であっても、第1脱硫器100のみの交換で足り、第2脱硫器200を交換せずとも良い。従って、メンテナンスコストの低減が図れる。
【0047】
(実施形態5)
図5は実施形態5を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有するため、図1および図2を準用する。実施形態5は、設置初期には、低露点の原料ガスがシステムに供給されており、低露点の原料ガスの積算流通量が設置初期(基準時期)から2.5年後(2年以上)のとき、原料ガスが低露点から高露点に変化した場合を示す。システムの設置初期では、第1脱硫器100は低露点の原料ガスに対して4.6年の寿命を有する。第2脱硫器200では、3.5年の寿命を有する。このように低露点の原料ガスに対して、第1脱硫器100および第2脱硫器200の合計値として8.1年分の寿命がある。設置初期(基準時期)から2.5年(基準時期から相対的に長期間)経過した後の段階で原料ガスが低露点であれば、第1脱硫器100は2.1年(4.6−2.5=2.1)の寿命をもつ。第1脱硫器100よりも下流側の第2脱硫器200は、3.5年の寿命をまだもつ。
【0048】
しかしながら、設置初期から2.5年経過した後に原料ガスが低露点から高露点に変化した場合には、この様にはならない。
水蒸気が相対的に多い高露点の原料ガスに含まれる硫黄化合物が吸着する第1脱硫剤内の高活性サイトは、硫黄化合物が吸着しやすい。従って、この第1脱硫剤内の高活性サイトは低露点の原料ガスに含まれる硫黄化合物の2年分で寿命となる。従って低露点の原料ガスの2.5年では第1脱硫剤内の高活性サイトは全て硫黄化合物が吸着し、もはや高露点の原料ガスに含まれる硫黄化合物が吸着する高活性サイトは残っていない。このため、第1脱硫器は高露点の原料ガスに含まれる硫黄化合物を吸着することができず、高露点の原料ガスはそのまま第2脱硫器に入る。第2脱硫器はもともと高露点の原料ガス中の硫黄化合物を吸着することができないため、原料ガスに含まれる硫黄化合物が改質器2Aに流入してしまう恐れがある。
【0049】
このため、設置初期(基準時期)から2.5年が経過した段階で、原料ガスが低露点から高露点となった場合には、脱硫効果が飽和したとみなせる第1脱硫器100を交換する。なお、低露点原料ガスの2.5年分の硫黄化合物は第1脱硫器で全て取り除かれ、第2脱硫器は新品の状態にあると考えられるので、第2脱硫器は交換しない。
【0050】
交換後、高露点の原料ガスが継続して供給されるのであれば、第1脱硫器100のみを2年(高露点の原料ガスに対する第1脱硫器100の寿命)毎に交換する。また原料ガスが高露点から低露点に再び戻るようであれば、図3のBで説明したように、第2脱硫器200は新品の状態にあると考えられるので3.5年間使用し続けることができる。これにより、原料ガスが低露点から高露点になったタイミングにより、改質器の劣化を防ぎつつ、かつ低いランニングコストで第1脱硫器100の交換が可能となる。なお、各実施形態によれば、制御部100Xは、交換時期が到来したら警報を出力することが好ましい。警報としては、メーカーやユーザーやメンテナンス者に警報信号を警報器102に出す警報、あるいは、システムの運転を停止させる警報が例示される。この場合、交換時期の所定時間前(例えば1ケ月前)に警報を警報器102に出力することが好ましい。
【0051】
(実施形態6)
図6は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有するため、図1および図2を準用する。図6は本実施形態の制御部100Xのマイコンが実行する制御フローを示す。燃料電池システムが起動してシステムに原料ガスが供給されると、フローチャートが開始される(ステップS1)。まず、制御部100Xは、露点計510により検知された原料ガスの露点を読み込み(ステップS3)、次に、原料ガスの露点が既定値A1未満か否かを判断する(ステップS5)。規定値A1は−15℃露点等、ガス会社が供給元として送る原料ガスの露点の範囲値内において設定される。露点が規定値A1未満である場合(ステップS5のYES)、制御部100Xは、原料ガスが低露点(露点が正常である)と判断し、ステップS7へ移行する。ステップS7では、制御部100Xは、基準時期からの原料ガスの積算流通量を求め、積算流通量が既定量BO未満か否かを判断する。積算流通量が既定量BO未満である場合(ステップS7のYES)、まだ第1脱硫剤100および第2脱硫器200の脱硫能力があると判断され、制御部100Xは発電運転を継続する指令を出力し(ステップS9)、メインルーチンにリターンする。積算流通量が既定量BO以上である場合(ステップS7のNO)、制御部100Xは、第2脱硫器200の第2脱硫剤の脱硫能力が寿命であると判断し、第2脱硫器200を交換(再生を含む)する警報を警報器102に出力する(ステップS11)。なお、低露点であるため第2脱硫器200で充分であり、第1脱硫器も脱硫能力が寿命となっているが第1脱硫器100は高価であるため、交換しない。
【0052】
ここで、既定量BOとしては、例えば、本システム低露点(正常)の原料ガスが供給される場合に8.1年の寿命であったとすると、8.1年相当運転時の原料ガスの積算流通量がBOに設定される。制御部100Xは、低露点の原料ガスの積算流通量を監視する。原料ガスの積算流通量が8.1年分(規定値BOに相当)に達すると、第2脱硫器200の交換の必要りと制御部100Xは判断し、第2脱硫器200の第2脱硫剤を交換させる警報を警報器102に出力する(ステップS11)。この場合、第1脱硫器100の第1脱硫剤は高価であるため、ランニングコストが高くなり、かつ、第2脱硫器200で脱硫能力が足りるため、第1脱硫剤は交換しない。
【0053】
さらに、原料ガスが低露点(規定値A1未満)から高露点(A1以上)に移り変わる場合について述べる。ガス原料が低露点から高露点に移り変わると、ステップS5において、原料ガスの露点が規定値A1以上で、原料ガスが高露点であると制御部100Xは判断し(ステップS5のNO)、ステップS13に移行する。ステップS13においては、低露点(規定値A1未満)の原料ガスの積算流通量B2を制御部100Xが求める。そして制御部100Xは、積算流通量B2が既定値B1未満か否かを判断する(ステップS13)。ここで、水蒸気が相対的に多い高露点の原料ガスに含まれる硫黄化合物が吸着する第1脱硫剤内の高活性サイトは、硫黄化合物が吸着しやすい。従って、高露点の原料ガスに含まれる硫黄化合物が吸着する第1脱硫剤内の高活性サイトに低露点の原料ガスに含まれる硫黄化合物は吸着する。そのため、低露点の原料ガスの積算流通量と高露点の原料ガスの積算流通量の和が、高露点の原料ガスに対する第1脱硫器100の寿命となる2年分となった時に、第1脱硫器100は脱硫効果が飽和して寿命となったとみなす
そこで、規定値B1としては、高露点の原料ガスで第1脱硫器100が腐臭剤を吸着・除去可能な原料ガス量が設定されている。例えば、高露点の原料ガスが供給される場合、2年後にシステムをメンテナンスする仕様の場合には、規定値B1としては、2年運転相当時の原料ガスの積算流通量が設定される。積算流通量B2が規定値B1以上の場合(ステップS13のNO)には、高露点の原料ガスに対して、第1脱硫器100が寿命となっているとみなす。このため、第1脱硫器100交換(再生、修理を含む)する警報を警報器102に出力し(ステップS15)、メインルーチンにリターンする。
【0054】
一方、ステップS13において、低露点の原料ガスの積算流通量B2が規定値B1未満(B2<B1)と判定した場合には、制御部100Xは、第1脱硫器100は高露点の原料ガスに対してまだ脱硫能力があると判断し、ステップS17に移行する。ステップS17において運転を継続し、高露点(規定値A1以上)の原料ガスの積算流通量B3を求める。更に、低露点(規定値A1未満)の原料ガスの積算流通量B2およびB3の合計値(B3+B2)を求める。制御部100Xは、合計値(B3+B2)が規定値B1未満であるか否かを判断する(ステップS17)。(B3+B2)≧B1となった場合には(ステップS17のNO)、制御部100Xは、第1脱硫器100が高露点の原料ガスで寿命(上記例で2年分吸着した)となったと判断し、第1脱硫器100のみを交換する警報を出力する(ステップS19)。ここで、第2脱硫器200は、高露点の原料ガスに対してほとんど脱硫機能を発揮しない。B2<B1であり、少なくとも原料ガスが低露点から高露点のものへ切り替わった時まで、第1脱硫器100は低露点及び高露点の原料ガスに対して高い脱硫機能を発揮しているので、第2脱硫器200については、硫黄化合物(腐臭剤)がほとんど流入されておらず、新品同様と判断される。このため第2脱硫器200は交換されない。なお、原料ガスの露点が途中で高露点から低露点に戻れば、既に搭載されている第2脱硫器200の脱硫能力が自動的に復帰するため、第2脱硫器200は当初設定の年数分の硫黄化合物を吸着・除去可能である。
【0055】
(B+B2)<B1の場合には(ステップS17のYES)、制御部100Xは、第1脱硫器100がまだ高露点の原料ガスでも脱硫能力を有していると判断し、ステップS7に移行する。なお、図6に示すフローチャートは、露点に関する規定値A1,規定値B1をそれぞれ1水準で示した例である。但しこれに限らず、露点に関する規定値A1,規定値B1をそれぞれ段階的もしくは連続的に設定することで、メンテナンス回数を低減でき、メンテナンスコストおよびランニングコストを低減させることが可能である。例えば、図2に示すように、露点0℃と20℃とを比較すると、20℃に比較し0℃露点であれば脱硫剤の寿命が長い。このため、規定値A1を0℃,20℃の2水準で設定し、20℃露点であれば2年分で交換し,0℃露点であれば4年で交換するといったように、積算流通量B1を設定することで、0℃露点サイトでのメンテナンス期間を20℃に比較し延長することが可能である。
【0056】
参考例
図7参考例を示す。参考例は前記した実施形態1と基本的には同じ構成、同じ作用効果を有する。図7に示すように、第1脱硫器100は第2脱硫器200の下流に配置されている。すなわち、原料ガス通路6は、上流から下流にかけて、第2脱硫器200、第1脱硫器100、冷却部600、流量計300をこの順に直列に配置している。昇圧用のポンプ60は、原料ガスの脈動を発生させるおそれがある。そこで、ポンプ60を流量計300から離間させるべく、流量計300とポンプ60との間には脈動抑制用のバッファ400が設けられている。また、流量計300が熱に弱い場合には、高温設置型の第1脱硫器100を通過した原料ガスを冷却機構600で放熱させることにより、原料ガスを冷却させる。このため冷却部600で冷却された原料ガスが流量計300に供給され、流量計300が熱から保護される。更に逆止弁として機能するチャッキ弁500と流量計300との間には、バッファ400が設けられている。このため、チャッキ弁500の作動の影響を流量計300が受けることが抑制される。冷却部600としては、放熱フィン方式、冷却風が当たる方式、冷却水と熱交換方式が例示される。
【0057】
(実施形態
図8は実施形態を示す。図8に示すように、上記した発電モジュール18(加熱源)の断熱壁19の側面19s(表面)には、高温設置型の第1脱硫器100が伝熱可能に接触させつつ、図略の取付具により取り付けられている。断面壁19の上面または下面に取り付けても良い。第1脱硫器100の脱硫室101には、ゼオライト系の多孔質物質を基材とする粒状の第1脱硫剤が収容されている。発電モジュール18の熱は高温設置型の第1脱硫器100に伝熱および輻射熱により伝達される。図8に示すように、第1脱硫器100の脱硫室101は、Uターン用の複数の開口103mを形成する複数の仕切板104mにより仕切られて複数回曲成されている。入口101iから流入した原料ガスは蛇行するように複数回Uターンを繰り返し、脱硫距離を確保し、出口101pから改質器2Aに向けて吐出される。第1脱硫器100の厚みtxは発電モジュール18の幅tyよりも薄く、偏平箱形状をなすことが好ましい。この場合、発電モジュール18の断熱壁19の側面19s(表面)からの受熱面積を増加でき、第1脱硫器100に収容されている第1脱硫剤の温度ばらつきの低減に有利である。システムを長期間停止していた場合等のように、システムの起動時に発電モジュール18の断熱壁19が高温ではないことがある。そこで、図8に示すように、高温設置型の第1脱硫器100の外壁面に電気ヒータ109を設けることが好ましい。システムの起動時には、電気ヒータ109により高温設置型の第1脱硫器100の第1脱硫剤を暖め、50℃以上の温度環境に設定する。発電モジュール18の断熱壁19が高温になったら、電気ヒータ109をオフさせれば良い。場合によっては、電気ヒータ109を廃止させても良い。なお、各実施形態について、高温設置型の第1脱硫器100に電気ヒータを設けることが好ましい。
【0058】
(実施形態
図9は実施形態を示す。図9に示すように、温水が流れる貯湯通路78の復路78cを形成するパイプ78xに対して、多孔質物質を基材とする第1脱硫剤が収容された高温設置型の第1脱硫器100は、接合部120(例えば溶接部またはろう付け部)で接触されつつ並走されている。貯湯通通78を流れる温水(例えば50℃〜95℃)の熱により第1脱硫器100は、加熱されて50℃以上の高温環境に昇温される。パイプ78xの代わりに、改質器や燃料電池等から排出される高温の排ガスが流れる排ガス通路75としても良い。
【0059】
(実施形態
図10は実施形態を示す。図10に示すように、温水が流れる貯湯通路78の復路78cを形成するパイプ78xは、第1脱硫剤が収容された高温用の第1脱硫器100にスパイラル状に巻回されている。貯湯通通78を流れる温水(例えば50℃〜95℃)の熱により第1脱硫器100は加熱されて50℃以上の高温環境に昇温される。パイプ78xの代わりに、改質器や燃料電池等から排出される高温の排ガスが流れる排ガス通路75としても良い。
【0060】
(適用形態1)
図11は適用形態1の概念を示す。図11に示すように、燃料電池システムは、燃料電池1と、液相状の水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部2と、蒸発部2で生成された水蒸気を用いて燃料を改質させてアノードガスを形成する改質部3と、蒸発部2に供給される液相状の水を溜めるタンク4と、これらを収容する筐体5とを有する。燃料電池1は、イオン伝導体を挟むアノード10とカソード11とをもち、例えば、SOFCとも呼ばれる固体酸化物タイプ(運転温度:例えば400℃以上)とされている。改質部3は、セラミックス等の担体に改質触媒を担持させて形成されており、蒸発部2に隣設されている。改質部3および蒸発部2は改質器2Aを構成しており、燃料電池1と共に断熱壁19で包囲され、発電モジュール18を形成している。発電モジュール18内には、改質部3,蒸発部2を加熱する燃焼部105が設けられている。アノード10側から排出されたアノード排ガスは、流路103を介して燃焼部105に供給される。カソード11側から排出されたカソード排ガスは、流路104を介して燃焼部105に供給される。起動時には、燃焼部105は、アノード10から供給された燃料を、カソード11から供給されたカソードガスで燃焼させ、蒸発部2および改質部3を加熱させる。発電運転時には、燃焼部105はアノード10から排出されたアノード排ガスを、カソード11から排出されたカソード排ガスで燃焼させ、蒸発部2および改質部3を加熱させる。燃焼部105には燃焼排ガス路75が設けられ、燃焼部105における燃焼後のガス、未燃焼のガスを含む燃焼排ガスが燃焼排ガス路75を介して大気中に放出される。改質部3の温度を検知する温度センサ33が設けられている。着火させるヒータである着火部35が燃焼部105に設けられている。着火部35は燃料に着火できるものであれば何でも良い。外気の温度を検知する外気温度センサ57が設けられている。温度センサ33,57の信号は制御部100Xに入力される。制御部100Xは警報器102に警報を出力する。
【0061】
システムの発電運転時には、改質器2Aは改質反応に適するように断熱壁19内において加熱される。発電運転時には、蒸発部2は水を加熱させて水蒸気とさせ得るように加熱される。燃料電池1がSOFCタイプの場合には、アノード10側から排出されたアノード排ガスとカソード11側から排出されたカソード排ガスが燃焼部105で燃焼するため、改質部3および蒸発部2は、発電モジュール18の内部において同時に加熱される。図11に示すように、原料ガス通路6は、ガス源63から原料ガスを改質器2Aに供給させるものであり、ポンプ60、高温設置型の第1脱硫器100、低温設置型の第2脱硫器200、流量計300、チャッキ弁500をもつ。
【0062】
図11は、あくまでも燃料電池システムの一例の概念的なレイアウトを示す。実際には、第1脱硫器100は、銀等の金属を有するゼオライト系の多孔質物質を基材とする第1脱硫剤を収容しており、発電モジュール18(加熱源)の断熱壁19に受熱可能に接触されている。システムの運転時には、第1脱硫器100は、発電モジュール18の断熱壁19から受熱して例えば50℃以上230℃以下の高温領域に加熱される。第2脱硫器200は、ゼオライト系の多孔質物質を基材とする第2脱硫剤を収容しており、発電モジュール18(加熱源)の断熱壁19から離間しており、常温領域(例えば0℃〜50℃未満の温度領域)に設置されている。燃料電池1のカソード11には、カソードガス(空気)をカソード11に供給させるためのカソードガス通路70が繋がれている。カソードガス通路70には、カソードガス搬送用の搬送源として機能するカソードポンプ71が設けられている。
【0063】
図11に示すように、筐体5は外気に連通する吸気口50と排気口51とをもち、更に、第1室である上室空間52と、第2室である下室空間53とをもつ。燃料電池1は、改質部3および蒸発部2と共に、筐体5の上側つまり上室空間52に収容されている。筐体5の下室空間53には、改質部3で改質される液相状の水を溜めるタンク4が収容されている。タンク4には、電気ヒータ等の加熱機能をもつ加熱部40が設けられている。加熱部40は、タンク4に貯留されている水を加熱させるものであり、電気ヒータ等で形成できる。外気温度等の環境温度が低いとき等には、制御部100Xからの指令に基づいて、タンク4の水は加熱部40により所定温度(例えば5℃、10℃、20℃)以上に加熱され、凍結が抑制される。図11に示すように、下室空間53側のタンク4の出口ポート4pと上室空間52側の蒸発部2の入口ポート2iとを連通させると共に水センサ87を有する給水通路8が、配管として筐体5内に設けられている。図11に示すように、筐体5内において、タンク4は蒸発部2の下側に配置されているため、給水通路8は基本的には縦方向に沿って延びる。給水通路8は、タンク4内に溜められている水をタンク4から蒸発部2に供給させる通路である。給水通路8には、タンク4内の水を蒸発部2まで搬送させる水搬送源として機能するポンプ80が設けられている。ポンプ80を制御するための制御部100Xが設けられている。更に、制御部100Xはポンプ80,71,79,60を制御する。
【0064】
システムの起動時において、ポンプ60が駆動すると、燃料通路6から燃料が蒸発部2,改質部3,アノードガス通路73,燃料電池1のアノード10,流路103を介して燃焼部105に流れる。カソードポンプ71によりカソード流体(空気)がカソードガス通路70、カソード11,流路104を介して燃焼部105に流れる。この状態で着火部35が着火すると、燃焼部105において燃焼が発生し、改質部3および蒸発部2が加熱される。このように改質部3および蒸発部2が加熱された状態で、ポンプ80が正モードで駆動すると、タンク4内の水はタンク4の出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて給水通路8内を搬送され、蒸発部2で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は、燃料通路6から供給される燃料(ガス状が好ましいが、場合によっては液相状としても良い)と共に改質部3に移動する。改質部3において燃料は水蒸気で改質されてアノード流体(水素含有ガス)となる。アノード流体はアノードガス通路73を介して燃料電池1のアノード10に供給される。更にカソード流体(酸素含有ガス、ケース5内の空気)がカソードガス通路70を介して燃料電池1のカソード11に供給される。これにより燃料電池1が発電する。アノード10から排出されたアノード流体のオフガス、カソード11から排出されたカソード流体のオフガスは、流路103,104を通過し、燃焼部105に至り、燃焼部105で燃焼される。高温の排ガスは、排ガス通路75を介してケース5の外方に排出される。
【0065】
システムの発電運転時において、ポンプ80が駆動すると、タンク4内の水は、タンク4の出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて給水通路8内を搬送され、蒸発部2で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は原料ガス通路6から供給される原料ガスと共に改質部3に移動する。改質部3において燃料は、水蒸気で改質されてアノードガス(水素含有ガス)となる。なお燃料がメタン系である場合には、水蒸気改質によるアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。但し燃料はメタン系に限定されるものではない。
(1)…CH+2HO→4H+CO
CH+HO→3H+CO
生成されたアノードガスはアノードガス通路73を介して燃料電池1のアノード10に供給される。更にカソードガス(酸素含有ガス、筐体5内の空気)がカソードガス通路70を介して燃料電池1のカソード11に供給される。これにより燃料電池1が発電する。燃料電池1で排出された高温の排ガスは、排ガス通路75を介して筐体5の外方に排出される。
【0066】
排ガス通路75には、凝縮機能をもつ熱交換器76が設けられている。貯湯槽77に繋がる貯湯通路78および貯湯ポンプ79が設けられている。貯湯通路78は往路78aおよび復路78cをもつ。貯湯槽77の低温の水は、貯湯ポンプ79の駆動により、貯湯槽77の吐出ポート77pから吐出されて往路78aを通過し、熱交換器76に至り、熱交換器76の熱メンテナンス作用により加熱される。熱交換器76で加熱された温水は、復路78cを介して帰還ポート77iから貯湯槽77に帰還する。このようにして貯湯槽77の水は温水となる。前記した排ガスに含まれていた水蒸気は、熱交換器76で凝縮されて凝縮水となる。凝縮水は、熱交換器76から延設された凝縮水通路42を介して重力等により水精製器43に供給される。水精製器43はイオン交換樹脂等の水精製器43aを有するため、凝縮水の不純物は除去される。不純物が除去された水は水タンク4に移動し、水タンク4に溜められる。ポンプ80が駆動すると、水タンク4内の水は給水通路8を介して高温の蒸発部2に供給され、蒸発部2で水蒸気とされて改質部3に供給され、改質部3において燃料を改質させる改質反応として消費される。制御部100Xは、原料ガス通路6を流れる原料ガスの露点の高低と、基準時期から原料ガス通路6を流れる原料ガスの積算流通量とに基づいて、第1脱硫器100および第2脱硫器200に関するメンテナンスについてのメンテナンス情報を報知する。
【0067】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態および適用形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。燃料電池は、固体酸化物形燃料電池に限定されず、場合によっては、固体高分子電解質形燃料電池でも良いし、リン酸形燃料電池でも良く、溶融炭酸塩形燃料電池でも良い。要するに、原料ガスを脱硫させる高温設置型の第1脱硫器および低温設置型の第2脱硫器を直列に有する燃料電池システムであれば良い。原料ガスも特に制限されず、硫黄化合物を含むガスが挙げられ、都市ガス、プロパンガス、バイオガス、LPGガス、CNGガス等を例示できる。第1脱硫器は水素添加により硫黄化合物を脱硫させる脱硫器でも良い。
【符号の説明】
【0068】
1は燃料電池、10はアノード、11はカソード、2Aは改質器、2は蒸発部、3は改質部、18は発電モジュール、19は断熱壁、60はポンプ(ガス搬送源)、70はカソードガス通路、73はアノードガス通路、75は排ガス通路、76は熱交換器、77は貯湯槽、78は貯湯通路、79は貯湯ポンプ、100Xは制御部、100は第1脱硫器、200は第2脱硫器、6,500は原料ガス通路、510は露点計を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11