【実施例1】
【0013】
実施例1に係る制流体及び流体管につき、
図1から
図6を参照して説明する。以下、
図1における紙面手前側を制流体の正面側(前方側)として説明する。
図1に示すように、本実施例の流体管1は、断面視略円形状に形成された高密度ポリエチレン等の樹脂製管から成り、内部には流体としての上水が流れている。この流体管1の所定箇所には、流体管1の流路を遮断するための本発明の制流体11を備えた制流装置2が取り付けられている。
【0014】
尚、流体管1の材質は高密度ポリエチレンに限らずその他ポリオレフィン樹脂或いは所定の樹脂から成る熱融着可能なものでもよい。更に尚、本実施例では流体管1内の流体は上水であるが、流体管1の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や下水等であってもよいし、また気体や気液混合状態の流体が流れる流体管であっても構わない。
【0015】
本実施例における制流装置2は、前述した制流体11と、流体管1に取り付けられており制流体11を収容している筐体5と、制流体11を操作して流体管1の流路の開閉を行う操作部9と、から構成されている。このうち、筐体5は、いわゆる割T字管であり、
図1及び
図2に示すように、流体管1に対して上方から配設され、流体管1の外周の上側を被覆する第1分割体3と、流体管1に対して下方から配設され、流体管1の外周の下側を被覆する第2分割体4と、から構成されている。これら第1分割体3及び第2分割体4は、高密度ポリエチレン等の熱融着可能な樹脂材により構成されている。尚、筐体は、制流体を収容する収容部を有していれば、必ずしも流体管の上下各側にそれぞれ配設される複数の分割体から構成されているものに限られず、例えば筐体は、流体管の上側を被覆する単体のみで構成されていてもよい。
【0016】
第1分割体3の流体管1の管軸方向における略中央部には、流体管1の管軸側である下方に向けて開口し、制流体11を収容可能な収容部3gが上方に向けて突出形成されている。また、第1分割体3は、流体管1の上部における外周面1aに当接する当接部3aを備えている。流体管1の上部における外周面1aに当接する当接部3a内部には、電流が流れることで発熱する電熱線3bが、後述する収容部3gの周囲を囲うように、当接部3a略全面に亘り連続して延設されている。電熱線3bの各端部は、外部電源と電気的に接続可能に第1分割体3の外面に設けた接続部6に接続されている。
【0017】
第1分割体3には、当接部3aに連続して流体管1の外径方向に向けてフランジ3c,3cが突出形成されている。これらフランジ3cの流体管1における管軸方向の幅寸法は、第1分割体3の流体管1における管軸方向の幅寸法と略同一寸法に形成されている。第1分割体3の上部には、流体管1の管軸と略直交するように、上方に向けて収容部3gが形成されている。収容部3g内は、制流体11を収納可能なように、下方に向けて開口している。収容部3gの上端部の流体管1における上流側端部及び下流側端部には、左右方向を向く枢軸によって固定ボルト・ナット20が揺動可能に枢支されている。
【0018】
一方、第2分割体4は、
図1及び
図2に示すように、第1分割体3と略同一の流体管1における管軸方向の幅寸法を有し、流体管1の下部における外周面1aに当接する当接部4aを備えている。流体管1の下部における外周面1aに当接する当接部4a内部には、電流が流れることで発熱する電熱線4bが、当接部4a略全面に亘り連続して延設されている。電熱線4bの各端部は、外部電源と電気的に接続可能に第2分割体4の外面に設けた接続部8に接続されている。
【0019】
また、第2分割体4には、当接部4aに連続して流体管1の外径方向に向けてフランジ4c,4cが突出形成されている。これらフランジ4cの流体管1における管軸方向の幅寸法は、第2分割体4の流体管1における管軸方向の幅寸法と略同一寸法に形成されている。
【0020】
これらフランジ4cの内部には、フランジ4c,4cの流体管1における管軸方向の略全長に亘って電熱線4dが延設されている。電熱線4dの各端部は、外部電源と電気的に接続可能にフランジ4c,4cの外面に設けた接続部7に接続されている。これらフランジ4cは、第2分割体4が流体管1に対して下方から配設されることで、第1分割体3に形成されたフランジ3cに対して対向配置される。
【0021】
また、制流体11は、
図1及び
図2に示すように、流体管1内に挿入配置される制流板12と、この制流板12を流体管1の径方向である下方に向けて押圧する押圧部材13と、を備えている。
【0022】
制流板12の上部は、正面視で矩形状に形成されているとともに、制流板12の下部は、正面視で流体管1の外周面1aの径よりも短寸、且つ流体管1の内周面1cの径よりも長寸な径を有する円弧状に形成されている。更に、この制流板12の下部の端縁部は、流体管1を穿孔可能な刃部12aに形成されている。
【0023】
押圧部材13には、図示しない下方に開口する挿入孔が形成されている。制流板12の上部は、前記挿入孔に挿入配置され、ボルト・ナット8によって押圧部材13に固着されている。また、押圧部材13の下部は、流体管1の外周面1aに沿う曲面形状に形成されている。この押圧部材13の曲面形状に形成された底面には、前記挿入孔に挿入された制流板12を包囲するように、弾性変形可能なゴム等の材質で構成された密封部材14が取り付けられている。
【0024】
押圧部材13の上端部には、上方に向けて軸部材15が立設されている。この軸部材15の上端部は、第1分割体3の上端部に穿設された挿通孔3dを介して筐体5の上方に突出して配置されている。この軸部材15の上端部には、流体管1における上流側端部及び下流側端部に向けて、前述した固定ボルト・ナット20を挿入配置可能な切欠15aが形成されている。尚、挿通孔3dと軸部材15との間には、ゴム等の材質で構成された止水部材が配置されており、挿通孔3dと軸部材15との間を水密に保持している。
【0025】
更に、
図3及び
図4に示すように、押圧部材13の左右側部には、上下方向に沿った張出部13a,13aが、収容部3g内の左右側部に形成された本発明における案内部としての溝部3eに沿って摺接可能に上下方向に延設されている。このように構成された張出部13a,13aが溝部3eに当接することで、制流体11の軸部材15周りの回転が規制されるため、制流体11に曲げや捻れが生じることを防止できるようになっている。
【0026】
操作部9は、
図1及び
図2に示すように、第1分割体3の上端部にボルト・ナット16により取り付けられるフレーム部材17と、このフレーム部材17の上端部に上下方向を向いて穿設された螺挿孔17aに螺挿されている回転ネジ18と、を備えている。回転ネジ18の周面には、上端部を除いて略全長に亘ってネジ部18aが螺設されている。このネジ部18aは、螺挿孔17aの内周面の略全長に亘って螺設された図示しない雌メジ部に螺合しており、回転ネジ18の上端部に形成された回転操作部19の回転に応じネジ部18aが回転することで、回転ネジ18が上下動可能となっている。
【0027】
回転ネジ18の下端部は、軸部材15の上端部に取り付けられた連結ネジ15bを介して軸部材15に連結されている。このため、制流体11は、回転ネジ18の上下動に連動して上下方向に移動可能となっている。尚、連結ネジ15bは、図示しないベアリングを介して軸部材15の上端部に水平方向に回転自在に取り付けられており、回転ネジ18の回転が制流体11に伝達されないようになっている。
【0028】
このように構成された制流装置2を流体管1に対して取り付けるには、先ず、
図1に示すように、第1分割体3に操作部9が接続され、且つ第1分割体3を収容部3g内に制流体11が収容されている状態で流体管1に対して上方から配設するとともに、第2分割体4を流体管1に対して下方から配設する。
【0029】
次に、両フランジ3c,4cを図示しないボルト・ナットにより緊締して、フランジ3cとフランジ4cとを密着させる。尚、本実施例における当接部3a,4aには、図示しない係止爪が設けられている。このため、図示しないボルト・ナットを緊締してフランジ3cとフランジ4cとを密着させることで、当接部3a,4aの流体管1に向けての弾性変形がなされ、前記係止爪が流体管1の外周面1aに食い込む。これら前記係止爪が流体管1の外周面1aに食い込むことで、筐体5が流体管1に対して移動不能に仮固定される。
【0030】
次に、図示しない外部電源に接続されている電源ケーブルを第1分割体3に形成された各接続部6及び第2分割体4に形成された各接続部7,8に接続し、前記外部電源から所定時間電源を供給する。電源供給された電熱線3b,4b,4dが高温に発熱することで、樹脂からなる当接部3a、4a及び当接部3a、4aに接触している流体管1の外周面1aと、フランジ3c,4c間と、を加熱し次第に溶融する。
【0031】
溶融された当接部3a、4a及び流体管1の外周面1aと、フランジ3c,4c間とは、互いに混ぜ合わされ、電熱線3b,4b,4dによる発熱を停止し常温に下がることで一体化して凝固する。このようにして、制流装置2は、熱融着によって流体管1に対して水密に取り付けられる。
【0032】
このように制流装置2が流体管1に取り付けられた後、制流体11により流体管1の上部を穿設しながら流体管1の流路の遮断を行う。具体的には、
図1及び
図3に示すように、回転操作部19を回転操作することで、収容部3g内の制流体11を流体管1の径方向である下方に向けて移動させる。
【0033】
そして、制流板12の刃部12aが流体管1の外周面1aに当接した後、更に制流体11を下方に向けて移動させることで、制流板12は、刃部12aによりスリット(細隙)状の孔であるスリット孔1bを流体管1の上部に継続的に穿設しながら流体管1内に挿入配置される。この穿設時に、上述したように、押圧部材13の張出部13a,13aが溝部3eに当接することで、制流体11の軸部材15周りの回転が規制されるため、制流体11に曲げや捻れが生じることなく、制流体11に対し下方のみに力が伝達される。刃部12aは、制流板12が流体管1内に挿入配置されることで、
図3及び
図5に示すように、スリット孔1bを穿設するとともに流体管1の内壁に食い込む。
【0034】
同時に、密封部材14は、スリット孔1bの全周を覆うように流体管1の外周面1aに当接するとともに、制流板12が流体管1内に挿入されていくに従って、押圧部材13と流体管1の外周面1aとの間で押圧されながら弾性変形し、スリット孔1bを密封状に被覆する。また、このように押圧部材13が密封部材14を介し流体管1の外周面1aに係合することで、流体管1の内壁に食い込んだ制流板12の刃部12aが過度に進出し流体管1の管壁を貫通してしまう虞を防止できる。この密封部材14によるスリット孔1bの被覆が完了した後、両固定ボルト・ナット20,20を枢軸回りに揺動させることで切欠15a,15a内に挿入配置させるとともに、両固定ボルト・ナット20,20のナットを螺挿することで軸部材15の上端部を流体管1に向けて押圧し、制流板12の流体管1内からの抜け出しを防止する。
【0035】
以上で制流板12の流体管1内への挿入配置が完了する。以後、制流体11は、制流板12の刃部12aが流体管1の内壁に食い込んだ状態で流体管1の流路を遮断する。このとき、流体管1内にて制流板12に流体圧がかかっても、流体管1の内壁に刃部12aが食い込んでいるため、流体圧に抗して流路の遮断状態を維持することができる。
【0036】
制流体11による流体管1の流路の遮断後は、回転操作部19を逆操作することで制流体11を収容部3g内に引き戻すことで流体管1の流路を開放してもよいし、或いは、操作部9と第1分割体3との接続及び回転ネジ18と軸部材15との接続を解除して操作部9を第1分割体3から取り外すことで、制流装置2の上下幅寸法を短寸として流体管1の流路の遮断を継続させてもよい。
【0037】
尚、これら制流体11の上下動は、押圧部材13に形成された張出部13aを介して溝部3eにガイドされているため、刃部12aのスリット孔1bへの挿入位置及び刃部12aの流体管1の内壁への食い込み位置を、常に同一位置として流体管1の流路を遮断できるようになっている。
【0038】
更に尚、本実施例では、前述したように、収容部3gを第1分割体3の上部に一体に設けたが、本実施例の変形例として、
図6に示すように、第1分割体3’の上部に上下方向に貫通する分岐部3hを形成するとともに、この分岐部3hに上方からボルト・ナット22により水密に接続する弁蓋3iを設け、これら分岐部3hと弁蓋3iとで収容部3jを構成するようにしてもよい。
【0039】
この場合には、流体管1に対して第1分割体3’と第2分割体4を配設して、これら第1分割体3’と第2分割体4を流体管1に対して熱溶着した後、制流体11を収容した弁蓋3iを分岐部3hに水密に接続することで制流体11を流体管1の流路を遮断する所定位置に配置することが可能となっている。以後は、本実施例と同様に、第1分割体3に取り付けられた操作部9の回転操作部19を操作することで、刃部12aによる流体管1へのスリット孔1bの穿設を行いながら、制流板12を流体管1内に挿入配置させ、流体管1の流路を遮断することができる。
【0040】
更に、本変形例では、制流板12が経年劣化で交換が必要になった場合等の保守作業を要する場合には、流体管1の本制流装置2よりも上流側で流体管1の流路の遮断を行った後、弁蓋3iを分岐部3hから取り外すことで、制流板12を押圧部材13から取り外すことが可能となっている。
【0041】
以上、本実施例における制流体11にあっては、流体管1の流路を遮断したときに、スリット孔1bを密封状に被覆している密封部材14を備えるので、制流体11が流体管1の流路を遮断することで、密封部材14がスリット孔1bから流体が流体管1外に漏出しないよう、流体管1の外周面1aにおけるスリット孔1bの周囲を密封状に被覆するので、スリット孔1bから流体管1外に漏出した流体が制流体11を回り込み流体管1内を流れることを防止することができ、しかも、流体管1の流路の遮断とスリット孔1bの密封状の被覆とを同時に行うことができるので、良好な作業効率を実現することができる。
【0042】
また、刃部12aは、流体管1の外周面1aの径よりも短寸、且つ流体管1の内周面1cの径よりも長寸な径を有する円弧状に形成されているので、刃部12aが略全周に亘って流体管1の内壁に食い込むので、制流体11は、流体管1内で流体の流体圧に抗するに十分な係止力を得ることができる。
【0043】
また、制流体11は、刃部12aが設けられるとともに、密封部材14を流体管1の外周面1aとの間で流体管1の径方向に押圧する押圧部材13を備えるので、押圧部材13により制流体11を流体管1の径方向に押圧することで、密封部材14にてスリット孔1bを十分に密封状に被覆しつつ、刃部12aを流体管1の内壁に対して十分に係止させることができる。
【0044】
また、収容部3g内には、押圧部材13を流体管1の径方向に向けて案内する溝部3eが形成されているので、押圧部材13を溝部3eに沿って移動させることで、刃部12aが流体管1に新たなスリット孔を穿設することを防止しつつ、常に流体管1内の同一位置で制流体11による流路の遮断を行うことができる。
【0045】
また、制流体11は、樹脂材により構成された流体管1に設けられるので、刃部12aによるスリット孔1bの穿設を容易に行うことができるとともに、刃部12aが流体管1の内壁に大きな抵抗を受けること無く係止されるので、制流体11と流体管1の内壁との間を止水性を良好に保つことができる。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施例では、第1分割体3と第2分割体4とを熱溶着することで、筐体5の流体管1に対しての取り付けを行ったが、例えば、フランジ3c,4cを緊締したことで当接部3a,4aと流体管1の外周面1aに生じる摩擦力によって筐体5の流体管1に対しての取り付けを行うようにしてもよい。
【0048】
また、前記実施例では、筐体5を構成する第1分割体3及び第2分割体4を高密度ポリエチレン等の熱融着可能な樹脂材により構成したが、例えば、これら第1分割体若しくは第2分割体の一部又は全部を金属で構成することで、筐体の強度を向上させるようにしてもよい。
【0049】
また、前記実施例では、流体管1は、断面視略円形状に形成された高密度ポリエチレン等の樹脂製管であるが、本発明に係るバイパス装置が取り付けられる対象となる流体管の材質は、前記実施例に限られず、例えば塩化ビニール等の他の素材からなる樹脂製管であってもよい。