特許第5764384号(P5764384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764384
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】流体管の切断方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 21/00 20060101AFI20150730BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20150730BHJP
   B26D 3/16 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   B23D21/00 D
   F16L55/00 C
   B26D3/16 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-110760(P2011-110760)
(22)【出願日】2011年5月17日
(65)【公開番号】特開2012-240141(P2012-240141A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】金田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】玉田 聡
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−190568(JP,A)
【文献】 実開昭54−073583(JP,U)
【文献】 特開平04−029696(JP,A)
【文献】 特開昭62−193713(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0103907(US,A1)
【文献】 特開2003−080392(JP,A)
【文献】 特開平05−078749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 41/08,
B23D 21/00,
B26D 3/16, 7/08,
F16L 41/04,55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状に形成されたカッタ部材を流体管の径方向に向けて進行させることで流体管を切断する流体管の切断方法であって、
前記カッタ部材によって切断される流体管に対して前記カッタ部材の切断箇所を避けて補強部材を固着させた後、該補強部材が前記カッタ部材によって切断される切片部に残るように前記カッタ部材によって流体管を切断することを特徴とする流体管の切断方法。
【請求項2】
前記カッタ部材は、該カッタ部材の中心軸回りに回転しながら流体管の径方向に向けて進行することで流体管を切断することを特徴とする請求項1に記載の流体管の切断方法。
【請求項3】
前記補強部材は、流体管の外径方向に突出形成するとともに周方向に伸びたリブを有していることを特徴とする請求項1または2に記載の流体管の切断方法。
【請求項4】
前記カッタ部材は、該カッタ部材の中心軸と同一軸心に流体管を貫通するセンタードリルを備え、前記リブは、前記センタードリルを流体管の管軸方向で挟むように複数条形成されていることを特徴とする請求項3に記載の流体管の切断方法。
【請求項5】
前記リブは、前記センタードリルを流体管に向けてガイドするドリルガイドを形成していることを特徴とする請求項4に記載の流体管の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状に形成されたカッタ部材を流体管の径方向に向けて進行させることで流体管を切断する流体管の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流体管の切断方法としては、既設水道管(流体管)の所定箇所に筐体を水密的に装着するとともに、筐体内に穿孔用カッタ(カッタ部材)を進行させることで既設水道管を切断し、切断した既設水道管間に仕切体を配置することで、既設水道管内を流れる流体の流路を調整しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4519580号公報(第4頁、第9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の流体管の切断方法にあっては、穿孔用カッタ(カッタ部材)の進行方向に向けて既設水道管(流体管)が押圧されるため、既設水道管の切断の過程において変形応力が生じた流体管がカッタ部材に対して過大な負荷を与えてしまい、カッタ部材が損傷し流体管を切断できなくなる虞があるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、流体管に生じる変形応力によりカッタ部材に負荷を与えること無く流体管を切断することが可能な流体管の切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の流体管の切断方法は、
円筒形状に形成されたカッタ部材を流体管の径方向に向けて進行させることで流体管を切断する流体管の切断方法であって、
前記カッタ部材によって切断される流体管に対して前記カッタ部材の切断箇所を避けて補強部材を固着させた後、該補強部材が前記カッタ部材によって切断される切片部に残るように前記カッタ部材によって流体管を切断することを特徴としている。
この特徴によれば、カッタ部材による切断箇所を避けて流体管に補強部材を固着して該補強部材が前記カッタ部材によって切断される切片部に残るようにして流体管の断面係数を高めて大きな剛性を得ることができるため、カッタ部材を進行させることによる流体管の切断時に、流体管のカッタ部材によって切断される箇所の荷重及び切断に伴う変形応力を支持させることができ、カッタ部材の流体管の径方向への進行に伴う流体管の変形を抑え、カッタ部材に大きな負荷を与えること無く流体管の切断を行うことができる。
【0007】
本発明の流体管の切断方法は、
前記カッタ部材は、該カッタ部材の中心軸回りに回転しながら流体管の径方向に向けて進行することで流体管を切断することを特徴としている。
この特徴によれば、カッタ部材が回転しながら流体管を切断することで、切断される切片部に回転モーメントがかかり変形応力が発生しても、この回転モーメントを補強部材によって緩和できるので、切片部の変形を抑えて正確に流体管の切断を行うことができる。
【0008】
本発明の流体管の切断方法は、
前記補強部材は、流体管の外径方向に突出形成するとともに周方向に伸びたリブを有していることを特徴としている。
この特徴によれば、リブにより切片部の荷重及び切断に伴う変形応力による変形を抑えながら、切片部を、切片部を除く流体管に対して支持させつつ切断することができる。
【0009】
本発明の流体管の切断方法は、
前記カッタ部材は、該カッタ部材の中心軸と同一軸心に流体管を貫通するセンタードリルを備え、前記リブは、前記センタードリルを流体管の管軸方向で挟むように複数条形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、カッタ部材が回転しながら流体管を切断する際に切片部に生じる回転モーメントにより生じる変形応力を複数条のリブにより強力に抑えることができるとともに、センタードリルは、切片部を貫通しつつ回転しながら切片部を支持するので、切片部に生じる回転モーメントによる切片部の変形を補強部材とともに抑えることができる。
【0010】
本発明の流体管の切断方法は、
前記リブは、前記センタードリルを流体管に向けてガイドするドリルガイドを形成していることを特徴としている。
この特徴によれば、リブによる補強部材の強度の向上を図りながら、ドリルガイドによってセンタードリルをガイドすることで確実に切片部の所定位置にセンタードリルを貫通させ、カッタ部材が流体管を切断する切断位置の位置決めを正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1における切断装置を示す一部断面図である。
図2】(a)は、補強部材を固着した流体管の切片部を示す側面図であり、(b)は、図2(a)におけるA−A断面図である。
図3】筐体と収納ケースとを密封状に接続した状態を示す一部断面図である。
図4】流体管を切断した状態を示す一部断面図である。
図5】流体管の切片部を回収した状態を示す一部断面図である。
図6】筐体から収納ケースを取り外した状態を示す一部断面図である。
図7】制流体を筐体内に設置した状態を示す一部断面図である。
図8】(a)は、実施例2における補強部材を固着した流体管の切片部を示す側面図であり、(b)は、図8(a)におけるB−B断面図である。
図9】(a)は、実施例3における補強部材を固着した流体管の切片部を示す側面図であり、(b)は、図9(a)におけるC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る流体管の切断方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1に係る流体管の切断方法につき、図1から図7を参照して説明する。以下、図1の紙面正面側を切断装置の正面側(前方側)として説明する。
【0014】
図1の符号1は、本発明における地中に埋設され略水平方向に延設された鋼製等の流体管1である。本実施例では流体管内の流体は上水であるが、流体管1の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水であってもよいし、また気体や気液混合状態の流体が流れる流体管であっても構わない。
【0015】
この流体管1には、流体管1の所定箇所を不断水状態にて切断する切断装置2が取り付けられる。この切断装置2は、図1に示すように、流体管1に溶接加工により直接取り付けられる筐体3と、流体管1の所定切断箇所を切断するため流体管1の管軸方向に略直交する略水平方向にアプローチするカッタ部材4と、このカッタ部材4を収納する収納ケース5と、カッタ部材4を流体管1と収納ケース5内との間で進退させることが可能な進退駆動部6と、から主に構成されている。
【0016】
このうち、筐体3は、特に図示しないが、流体管1の径方向に分割可能な2つの接続部材から構成された割T字管であり、該2つの接続部材を接続した後、前述のように溶接加工することで、筐体3と流体管1の外周面との間が密着されている。また、筐体3の右側部には、筐体3の右方への開口を開閉するための開閉弁7が前後方向に移動可能に設けられている。
【0017】
筐体3の上端部及び下端部の内壁は、右側から左側にかけて流体管1側に向けて傾斜をなすテーパー状に形成されている。これら内壁の前端部及び後端部には、後述する制流体11を流体管1内を流れる流体の流体圧に抗して筐体3内にガイドするための一対のガイド片3b(本実施例では後端部側のみ図示)が突設されている。
【0018】
収納ケース5は、図5及び図6に示すように、筐体3の右端部と水密に接続可能であり左右方向に連通する筒体8と、左方に向けて開口するケース本体9と、から構成されている。収納ケース5は、これら筒体8とケース本体9とによって、左右幅寸法を伸縮自在な入れ子構造となっているとともに、筒体8とケース本体9間は、図示しないパッキンによって水密に保持されている。
【0019】
尚、筒体8とケース本体9とは、それぞれのフランジを介して、切断装置2の左右幅方向に向けて形成されたボルトを有する複数の図示しない操作ボルト・ナットによって接続されている。筒体8とケース本体9とは、これら前記操作ボルト・ナット及び図示しない油圧機構等を備えた補助手段を操作することで、筒体8に対してケース本体9を左右幅方向に相対移動させることが可能となっている。
【0020】
進退駆動部6は、図4に示すように、ケース本体9の右側端部に水密に接続されている。この進退駆動部6の左部からは、ケース本体9内に、流体管1に向けて水平に軸部材6aが延設されている。進退駆動部6は、油圧や電力等の動力により、この軸部材6aを、軸回りに回転させることが可能であるとともに、流体管1が配置されている筐体3内とケース本体9内との間で進退させることが可能となっている。尚、進退駆動部6は、内部がケース本体9内と水密に連通しているとともに、開放することで進退駆動部6の内部と外部とを連通させることが可能な図示しない排水弁を備えている。
【0021】
カッタ部材4は、流体管1を切断するために流体管1の直径よりも長寸の直径に形成されている。また、カッタ部材4は、軸部材6aの先端部に固設されているとともに、軸部材6aと同一軸心であり、流体管1側に向けて伸びるセンタードリル4aを備えている。
【0022】
尚、これらカッタ部材4及びセンタードリル4aは、図1に示すように、伸長されていない状態の収納ケース5の左右幅寸法よりも長寸の左右幅寸法に形成されている。このため、図3に示すように、開閉弁7が解放されている状態の筐体3と収納ケース5とが水密に接続されることで、カッタ部材4及びセンタードリル4aの両先端部は、開閉弁7よりも流体管1側で流体管1の外周面に近接して配置されるようになっている。
【0023】
また、このように構成された切断装置2によって切断された後に除去される流体管1の切片部1aには、切断装置2によって流体管1を切断する際に切片部1aを除く流体管1で切片部1aの荷重を支持可能なように流体管1の強度を補強するための補強部材10が固着されている。
【0024】
この補強部材10は、図2(a)及び図2(b)に示すように、管軸方向に離間して並設された一対のリブ10b,10bと、これらリブ10b,10b間に配置されるリブ10cと、から構成されている。このうち、リブ10b,10bは、それぞれ正面視で略半円弧形状に形成されており、これらリブ10b,10bの内径側は、流体管1の外周面に沿う形状に形成されている。両リブ10b,10bは、対向して内径側を流体管1の外周面に当接させた状態で流体管1に対して溶接されることで、リング状に形を成して流体管1に固着される。
【0025】
流体管1の管軸方向におけるこれら両リブ10b,10b間の左右両端部は、後述するように、センタードリル4aがカッタ部材4に先行して切片部1aを貫通するための左右一対の被貫通部1d,1dとなっている。
【0026】
一方、リブ10cは、流体管1における両リブ10b,10b間において、被貫通部1d,1dを除く流体管1の周方向の略全長に亘って流体管1に対して溶接されることで流体管1に固着される。このため、各リブ10b,10b,10cは、流体管1の外周面に固着されることで、それぞれ、管軸方向に延びる流体管1の管壁とにより側断面視で略T字形状をなすことで流体管1の強度の向上が図られている。
【0027】
このように構成された切断装置2及び補強部材10を用いて流体管1を切断するには、先ず、図1に示すように、左右一対の被貫通部1d,1dを避けて、切片部1aにおける管軸方向の略中央にリブ10b,10b,10cを溶接する。そして、筐体3を切片部1aを囲うように流体管1に対して水密に取り付け、筐体3に対して水平方向である右方からカッタ部材4を収納した収納ケース5を水密に接続する。
【0028】
このときの収納ケース5は、進退駆動部6と接続されるとともに、図示しない台車上に筐体3との高さ位置を合わせた状態で固定されている。この状態で前記台車を流体管1に向けて略水平面である床面上を左右方向に移動させることで、筐体3と収納ケース5とを容易に水密に接続することが可能となっている。尚、収納ケース5の左右幅寸法は、予め前記操作ボルト・ナットを回動操作することで筒体8に対してケース本体9を左方向に移動させることで、最短となるように調整しておく。
【0029】
図3に示すように、筐体3と収納ケース5が接続されることで、流体管1の一部は水密的に密封される。更に、前述したように、カッタ部材4及びセンタードリル4aの先端部が流体管1の外周面に近接配置される。
【0030】
そして、図4に示すように、進退駆動部6に設けられた図示しない排水弁を開放操作した後、進退駆動部6を駆動させることで、軸部材6aを介してカッタ部材4を回転させながら流体管1に向けて進出させていく。このとき、先ずセンタードリル4aが水平方向の右側を向く被貫通部1dから切片部1aを貫通することで、カッタ部材4の進出方向を固定する。
【0031】
更に軸部材6aを介してカッタ部材4を回転させながら流体管1に向けて進出させていくことで、カッタ部材4による切片部1aの切断を行っていく。このとき、切片部1aにはカッタ部材4及びセンタードリル4aが回転することで生じる回転モーメントがかかっているが、リブ10b,10b,10cによってこれら回転モーメントが抑えられていることで、切片部1aの変形量が小さく抑えられ、カッタ部材4及びセンタードリル4aに対する負荷も抑えられる。これにより、正確な流体管1の切断を行うことができ、また、カッタ部材4等が損傷することを防止することができる。
【0032】
切片部1aは、センタードリル4aによって貫通されながらカッタ部材4によって切断されていく。尚、切片部1aは、流体管1から完全に切断されるまでは切片部1aを除く流体管1に支持されているため、切断途上の切片部1aの荷重がカッタ部材4に負荷されることを低減し、また、カッタ部材4の回転に伴う回転モーメントによって生じる変形応力による変形が抑えられている。特に、流体管1が、補強部材10のリブ10b,10b,10cによって断面係数を高めて大きな剛性を得ており、切片部1aが、流体管1から完全に分断される直前まで切片部1aを除く流体管1に強力に支持されているため、カッタ部材4に掛かる負荷を極めて小さく抑えることができる。
【0033】
このように、切片部1aは、センタードリル4aによって貫通されながら、カッタ部材4によって切断されていく。尚、このカッタ部材4により流体管1から切断された切片部1aは、切片部1aに対して貫通したセンタードリル4aによってカッタ部材4内に保持される。
【0034】
一方、流体管1内を流れる流体は、流体管1が切断されることで流体管1内から筐体3及び収納ケース5内に流出し、これら筐体3内及び収納ケース5内を満たすとともに、開放されている前記排水弁から切断装置2外に排水される。尚、カッタ部材4が流体管1を切断したことで生じる切り粉は、この流体管1から前記排水弁に向けて生じる水流に乗って切断装置2外に排出される。
【0035】
更に尚、収納ケース5を構成する筒体8とケース本体9とは、流体管1内から流入する流体による流体圧を受けるが、筒体8に対するケース本体9の右方向への移動は、前記操作ボルト・ナットによって規制されているため、収納ケース5の流体圧による伸長は防止されている。
【0036】
次に、前記排水弁を閉止した後、図5に示すように、進退駆動部6の軸部材6aを退行させ、カッタ部材4及び切片部1aを筐体3内から収納ケース5内に向けて移動させる。このとき、カッタ部材4の右側部及び切片部1aの一部は収納ケース5内に配置されるとともに、カッタ部材4の先端部は、開閉弁7よりも左方側に配置される。
【0037】
更に、前記操作ボルト・ナット及び前記補助手段を操作することで、筒体8に対するケース本体9の右方向への移動範囲を許容していく。このとき、ケース本体9には流体圧がかかっているため、作業者は、前記操作ボルト・ナット及び前記補助手段の操作を行うのみで、収納ケース5を右方向に向けて伸長させることができるとともに、前記操作ボルト・ナットが許容している移動範囲内のみでケース本体9の右方向への移動が可能となっているため、収納ケース5の流体圧による急激な伸長が防止されている。
【0038】
この収納ケース5の右方向に向けての伸長により、ケース本体9に進退駆動部6の軸部材6aを介して接続されているカッタ部材4は、流体管1から離間する方向である右方に向けて、ケース本体9が右方向に移動した距離だけ移動する。
【0039】
尚、収納ケース5は、ケース本体9が流体圧、前記操作ボルト・ナット及び図示しない油圧機構等を備えた補助手段によって右方向に移動したことで、カッタ部材4及びセンタードリル4aよりも長寸の左右幅寸法に形成される。このため、収納ケース5内には、カッタ部材4、センタードリル4a及び切片部1aが完全に収納される。つまり、カッタ部材4及びセンタードリル4aの先端部は、開閉弁7よりも右方側に配置される。
【0040】
カッタ部材4、センタードリル4a及び切片部1aが収納ケース5内に収納された後は、図6に示すように、開閉弁7をスライド移動させることで筐体3内を水密に密閉するとともに、収納ケース5を筐体3から取り外し、切断装置2による流体管1の切断を終了する。
【0041】
収納ケース5を筐体3から取り外した後は、図7に示すように、筐体3に制流体設置装置12を取り付け、筐体3内に制流体11を設置する。制流体設置装置12は、前述したように流体管1に取り付けられている筐体3と、筐体3内に挿入配置される制流体11と、この制流体11を収納する収納ケース13と、制流体11を筐体3内と収納ケース13内との間で進退させることが可能な進退駆動部14と、から主に構成されている。
【0042】
収納ケース13内の左部における下端部には、図7に示すように、下方から操作ネジ20が螺挿されている。この操作ネジ20の先端部には、図示しない支持ローラが流体管1の管軸方向を向く枢軸によって回動可能に枢支されている。このため、前記支持ローラは、操作ネジ20の螺挿に伴い、収納ケース13内への突出量を調整可能となっている。
【0043】
進退駆動部14は、図5に示すように、収納ケース13の右側端部に水密に接続されている。この進退駆動部14の左部からは、収納ケース13内に、流体管1に向けて水平に軸部材14aが延設されている。進退駆動部14は、油圧や電力等の動力により、この軸部材14aを、流体管1が配置されている筐体3内と収納ケース13内との間で進退させることが可能となっている。
【0044】
また、軸部材14aの先端部には、軸部材14aと制流体11とを接続するためのブラケット14bが取り付けられている。このブラケット14bには、前後方向を向く図示しない枢軸に回動可能に枢支されている補助ローラ21が設けられており、この補助ローラ21は、収納ケース13の下端面に当接している。このため、補助ローラ21は、前述の進退駆動部14の駆動によって、収納ケース13内の下端面上を転動しながら軸部材14a及びブラケット14bとともにベース体15内を移動するようになっている。尚、進退駆動部14は、内部が収納ケース13内と水密に連通しているとともに、開放することで進退駆動部14の内部と外部とを連通させることが可能な図示しない排水弁を備えている。
【0045】
制流体11は、筐体3の右部の内部形状と略同一形状に形成された蓋部11aと、蓋部11aから左方に向けて伸びる制水部11bとから構成されている。蓋部11aの右部には、ブラケット14bが接続可能となっている。また、制水部11bは、筐体3内に突設されているガイド片3b,3b(図4参照)間に挿入配置可能な前後幅寸法に形成されているとともに、上端部と下端部とは、右側から左側にかけて制水部11bの上下幅方向の中央部に向けて傾斜をなすテーパー状に形成されている。つまり、本実施例における制流体11は、右方から左端部である先端部にかけて先細りの形状に形成されている。
【0046】
このように構成された制流体設置装置12を用いて筐体3内に制流体11を設置するには、先ず、前述の流体管1の切断後に、切断装置2の一部である収納ケース5に換えて、本制流体設置装置12の一部である収納ケース13を、開閉弁7により水密に密閉されている筐体3に右方から水密に接続する。そして、進退駆動部14に設けられた図示しない排水弁を開放操作した後、開閉弁7を開放する。このとき、流体管1内を流れる流体は、収納ケース13内及び筐体3内を満たすとともに、開放されている前記排水弁から切断装置2外に排水され、また筐体3内の空気も前記排水弁を介し切断装置2外に排気される。
【0047】
この状態から進退駆動部14を駆動させることで、制流体11を筐体3内に向けて移動させていく。このとき、制流体11を、前記支持ローラと補助ローラ21とによって下方から支持することで、制流体11の荷重によってブラケット14bを介して軸部材14aに下方を向くモーメントが生じることを防止する。更に、制流体11の上端部及び下端部は、前後の両ガイド片3b,3b間に挿通されていくため、流体から流体圧による前後方向の位置ずれが防止されている。そして、制流体11を筐体3内に完全に挿入配置することで、筐体3内における流体の流路が完全に遮断される。
【0048】
制流体11を筐体3内に挿入配置した後は、前記排水弁を開放して収納ケース13内の流体を排水した後、筐体3の外方から図示しない固定ボルトを制流体11の右側方に螺挿することで、制流体11を筐体3内に固定する。そして、収納ケース13に設けられた図示しない操作口から作業者が手を入れることで、ブラケット14bから制流体11を取り外す。最後に、進退駆動部14の軸部材14a及びブラケット14bを退行させて収納ケース13内に収納した後、開閉弁7によって筐体3を閉止し、制流体11の筐体3内への設置を終了する。
【0049】
以上、本実施例における流体管1の切断方法にあっては、カッタ部材4によって切断される流体管1に対してカッタ部材4の切断箇所を避けて補強部材10を固着させた後、カッタ部材4によって流体管1を切断することで、カッタ部材4による切断箇所を避けて流体管1に補強部材10を固着させることで、流体管1の断面係数を高めて大きな剛性を得ることができるため、カッタ部材4を進行させることによる流体管1の切断時に、流体管1のカッタ部材4によって切断される箇所の荷重及び切断に伴う変形応力を、流体管1の切断される箇所を除く部分で支持させることができ、カッタ部材4の流体管1の径方向への進行に伴う流体管1の変形を抑え、カッタ部材4に大きな負荷を与えること無く流体管1の切断を行うことができる。
【0050】
また、カッタ部材4は、カッタ部材4の中心軸回りに回転しながら流体管1の径方向に向けて進行することで流体管1を切断し、補強部材10は、カッタ部材4によって切断される切片部1aに固着されるので、カッタ部材4が回転しながら流体管1を切断することで、切断される切片部1aに回転モーメントがかかり変形応力が発生するが、この回転モーメントを補強部材10によって緩和することで、切片部1aの変形を抑えて正確に流体管1の切断を行うことができる。
【0051】
また、補強部材10には、流体管1の外径方向に突出するとともに周方向に伸びたリブ10b,10cが突出形成されているので、リブ10b,10cにより切片部1aの荷重及び切断に伴う変形応力による変形を抑えながら、切片部1aを、切片部1aを除く流体管1に対して支持させつつ切断することができる。
【0052】
また、カッタ部材4は、カッタ部材4の中心軸と同一軸心に流体管を貫通するセンタードリル4aを備え、リブ10bは、センタードリル4aを流体管1の管軸方向で挟むように複数条形成されているので、カッタ部材4が回転しながら流体管1を切断する際に切片部1aに生じる回転モーメントにより生じる変形応力を複数条のリブ10b,10b,10cにより強力に抑えることができるとともに、センタードリル4aは、切片部1aを貫通しつつ回転しながら切片部1aを支持するので、切片部1aに生じる回転モーメントによる切片部1aの変形をリブ10b,10b,10cとともに抑えることができる。
【実施例2】
【0053】
次に、実施例2に係る流体管の切断方法につき、図8を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。図8(a)及び図8(b)に示すように、本実施例における補強部材10’の右方側を向く被貫通部1dには、ドリルガイド16が設けられている。このドリルガイド16は、流体管1の径方向に向けて開口する筒状に形成されており、内径は、センタードリル4aの直径と略同一寸法に形成されている。このため、流体管1の切断時にセンタードリル4aを切片部1aに対して貫通させる際、センタードリル4aの先端部をドリルガイド16に挿通させた状態で切片部1aにセンタードリル4aを貫通させることで、カッタ部材4による切断位置の位置ずれを防止することができるようになっている。
【0054】
また、ドリルガイド16には、流体管1の対向する管軸方向に向けて伸びる一対のリブ16a,16aが形成されている。これらリブ16a,16aの先端部は、それぞれリブ10b,10bに支持されている。更に、ドリルガイド16には、同一方向である流体管1の周方向に向けて伸びる一対の挟持板16b,16bが形成されている。これら挟持板16b,16bは、リブ10cを流体管1の管軸方向で挟持することで、リブ10cと一体となっている。このため、補強部材10’は、これらドリルガイド16が備えるリブ16a,16a及び挟持板16b,16bによって更なる強度の向上が図られている。
【0055】
以上、本実施例の流体管1の切断方法におけるドリルガイド16は、補強部材10’の一部を構成して流体管1の強度の向上を図りながら、センタードリル4aをガイドすることで確実に切片部1aの所定位置にセンタードリル4aを貫通させ、カッタ部材4による流体管1を切断する切断位置の位置決めを正確に行わせることが可能となっている。
【実施例3】
【0056】
次に、実施例3に係る流体管の切断方法につき、図9を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。図9(a)及び図9(b)に示すように、本実施例における流体管1の切片部1aには、補強部材17が流体管1に固着されている。この補強部材17は、管軸方向に離間した一対のリブ17b,17bから構成されており、それぞれのリブ17bは、周方向に一対の半円弧形状のフレーム体同士をボルト・ナット18で緊締することで流体管1に対して固着されている。尚、カッタ部材4により流体管1を切断する際には、実施例1及び実施例2と同様に、非貫通部をなす流体管1における補強部材17のリブ17b,17b間をセンタードリル4aで貫通しながらカッタ部材4による切断を行う。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0059】
例えば、前記実施例では、略水平方向に延設された流体管1に対して略直交するカッタ部材4を略水平方向右方から進出させて流体管1の切断を行ったが、切断装置2を設置するための十分な空間が存在していれば、例えば略水平方向に延設された流体管1に対して鉛直方向上方に切断装置2を設け、上方からカッタ部材4を進出させて流体管1の切断を行うようにしてもよいし、あるいは、略鉛直方向に延設された流体管に対して略直交するカッタ部材を略水平方向に進出させて前記流体管を切断するようにしても構わない。
【0060】
また、前記実施例では、鋼製等の流体管1をカッタ部材4を回転させることで切断したが、流体管が樹脂管等の鋼よりも軟質な材質で構成されている場合には、カッタ部材を回転させること無く、カッタ部材によって流体管1を押圧する力のみで流体管1の切断を行ってもよいし、あるいは、流体管を鋳鉄材から成る鋳鉄管で構成し、前記鋳鉄管を分割構造を有する割T字状に形成された筐体により密封するようにしても構わない。
【0061】
また、前記実施例では、流体管1よりも大径であるカッタ部材4を用いて流体管1を切断したが、カッタ部材を流体管1よりも小径に形成することで前記カッタ部材が流体管1の一部のみを切断可能なように構成し、流体管1における前記カッタ部材が切断する切片部に補強部材を固着させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 流体管
1a 切片部
4 カッタ部材
4a センタードリル
10、10’ 補強部材
10b リブ
10c リブ
11 制流体
16 ドリルガイド
17、17’ 補強部材
17b リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9