(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被防水加工体の表面に対して塗膜防水加工を施す方法であって、層厚0.8mm以上5mm以下の塗膜防水層が予め形成された防水下層構造体を、該被防水加工体の表面に固定して敷設し、防水下層構造体とその隣に敷設される防水下層構造体とを断面同士で突き合わせ、その突き合わせ部分に上からU字ないしV字に切り込みを入れ、該切り込み部分に、塗膜防水材又はシーラントを塗布若しくは注入し、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラントの上をも含めて該防水下層構造体の該塗膜防水層の上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層をシームレスに形成させることを特徴とする塗膜防水工法。
被防水加工体の表面に対して塗膜防水加工を施す方法であって、層厚0.8mm以上5mm以下の塗膜防水層が予め形成された防水下層構造体を、該被防水加工体の表面に固定して敷設し、防水下層構造体とその隣に敷設される防水下層構造体とを、1mm以上10mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させ、生じた並設間隔部分を含み隣接する防水下層構造体の下面に両面粘着クロステープ又は両面粘着ジョイントテープを敷設して、防水下層構造体と被防水加工体を貼り付け、更に、該並設間隔部分に露出した両面粘着クロステープ又は両面粘着ジョイントテープの上面に、幅1mm以上10mm以下の遮蔽フィルムを、塗膜防水材又はシーラントが該両面粘着クロステープ又は該両面粘着ジョイントテープを通過して被防水加工体に流下しないように貼り付け、該遮蔽フィルムの上の該並設間隔部分に、塗膜防水材又はシーラントを塗布若しくは注入し、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラントの上をも含めて該防水下層構造体の該塗膜防水層の上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層をシームレスに形成させることを特徴とする塗膜防水工法。
被防水加工体の表面に対して塗膜防水加工を施す方法であって、層厚0.8mm以上5mm以下の塗膜防水層が予め形成された防水下層構造体を、該被防水加工体の表面に固定して敷設し、該防水下層構造体の縁に、塗膜防水層が形成されておらず基材層のみの部分である耳部分を幅5mm以上100mm以下で設け、防水下層構造体とその隣に敷設される防水下層構造体とを、該耳部分同士を重ならないように突き合わせ、その突き合わされた耳部分の上部にジョイントテープを貼り付けて接合し、更にその上に塗膜防水材又はシーラントを塗布若しくは注入し、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラントの上をも含めて該防水下層構造体の該塗膜防水層の上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層をシームレスに形成させることを特徴とする塗膜防水工法。
被防水加工体の表面に対して塗膜防水加工を施す方法であって、層厚0.8mm以上5mm以下の塗膜防水層が予め形成された防水下層構造体を、該被防水加工体の表面に固定して敷設し、防水下層構造体とその隣に敷設される防水下層構造体とを、1mm以上10mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させ、生じた並設間隔部分を含み隣接する防水下層構造体の下面に両面粘着クロステープ又は両面粘着ジョイントテープを敷設して、防水下層構造体と被防水加工体を貼り付け、更に、該並設間隔部分に露出した両面粘着クロステープ又は両面粘着ジョイントテープの上面に、防水下層構造体の基材層のみを幅1mm〜10mmに切断した帯状基材を貼り付け、該帯状基材上の該並設間隔部分に、塗膜防水材又はシーラントを塗布若しくは注入し、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラントの上をも含めて該防水下層構造体の該塗膜防水層の上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層をシームレスに形成させることを特徴とする塗膜防水工法。
上記防水下層構造体の基材層の通気性が、隣接する防水下層構造体の基材層間でも連続して確保できるように、該防水下層構造体を、その接合面が直線上に揃わないようにずらして被防水加工体の表面に固定して敷設する請求項8に記載の塗膜防水工法。
上記防水下層構造体を、上記被防水加工体の表面に固定して敷設し、該防水下層構造体の該塗膜防水層の上面を接着プライマーで処理した後、その上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層をシームレスに形成させる請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載の塗膜防水工法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0020】
図1に、本発明の塗膜防水工法を使用して被防水加工体13の上に形成された塗膜防水全層14の断面図を示す。下から、被防水加工体13、防水下層構造体11、塗膜防水上層12の順に形成されている。
図1(a)は、防水下層構造体11が塗膜防水層11aからなる場合であり、
図1(b)は、防水下層構造体11が、基材層11bの上に塗膜防水層11aが形成されてなるものである場合であり、
図1(c)は、
図1(b)の層構成の上に、更にトップコート層15が形成されている場合である。
【0021】
<防水下層構造体>
本発明の塗膜防水工法は、まず、「塗膜防水層11aが予め形成された防水下層構造体11」を、該被防水加工体13の表面に固定して敷設し、その上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる。
防水下層構造体11が基材層11bを有するものである場合は、基材層11b側を被防水加工体13の表面に固定し、塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させる。
【0022】
該防水下層構造体11は、予め形成された塗膜防水層11aのみからなっていても、基材層11bの上に塗膜防水層11aが予め形成されていてもよい。防水下層構造体11が予め形成された塗膜防水層11aのみからなっている場合は、本発明の塗膜防水工法を使用した後には
図1(a)のような層構成になり、防水下層構造体11が基材層11bの上に塗膜防水層11aが予め形成されてなっている場合は、本発明の塗膜防水工法を使用した後には
図1(b)のような層構成になる。
【0023】
<<塗膜防水層>>
上記何れの場合であっても、塗膜防水層11aの層厚は、0.8mm以上が必須であり、0.9mm以上が好ましく、1.0mm以上が特に好ましい。また、上限は5mm以下で良く、4mm以下が好ましく、3.5mm以下がより好ましく、3mm以下が特に好ましい。
【0024】
防水下層構造体11の塗膜防水層11aの層厚の下限が上記であると、ピンホールのない塗膜防水層11aが実現できる、強度が高く強靭となる、耐久性や寸法安定性等に優れる、防水下層構造体11の塗膜防水層11aとその上に形成された塗膜防水上層12の合計の層厚(すなわち塗膜防水全層14の層厚)が、JASS8規格や国土交通省の公共建築工事標準仕様を満足するための層厚の管理がし易い等の効果がある。
【0025】
一方、防水下層構造体11の塗膜防水層11aの層厚の上限が上記であると、防水下層構造体11を巻いてロール状にし易い、取り扱いが容易となる、不必要な塗膜防水層11aの材料の使用がなく経済的である等の効果がある。
【0026】
塗膜防水層11aの材料は、防水性があれば特に限定はないが、ポリウレタン系、FRP系、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)系、(メタ)アクリル樹脂系等の材料が、防水性、強度、耐久性等の点から好ましい。
また、材料の如何によらず、塗膜防水層11aの材料と塗膜防水上層12の材質とは、同一又は同一系の材質であることが、該2層の密着性、防水性、耐久性、公的仕様としての認可の可能性等の点から特に好ましい。
【0027】
JASS8規格や国土交通省の公共建築工事標準仕様を満足させるために、ポリウレタン系材料が特に好ましい。塗膜防水層11aの材料がポリウレタン系材料であれば、塗膜防水上層12の材質もポリウレタン系材料とすれば、ポリウレタン系材料の2回塗りの公的仕様を満足すると考えられるために特に好ましい。
【0028】
ポリウレタン系材料としては特に限定はないが、熱可塑性であっても熱硬化性であってもよいが、熱可塑性であることが、強靭でピンホールのない塗膜防水層11aが得られ、工場等で安定的な膜厚の塗膜が容易に形成できる等の点から好ましい。
また、汎用の塗膜防水塗料である、平場用塗膜防水材、立ち上り用塗膜防水材、目止め用塗膜防水材等に用いられているポリウレタン系材料も、防水下層構造体11の塗膜防水層11aの材料として好適に用いられる。
【0029】
塗膜防水層11aを被防水加工体13の上に設けることによって、その上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12を設けた後は、塗膜防水材を2度塗りしたことと同等になり、貫通するピンホールの発生を防止できることは勿論のこと、塗膜防水工法に関する、JASS8及び国土交通省の公共建築工事標準仕様等において塗膜防水工法に要求される「2度塗り」という要件(規定)をクリアすることになる。
従って、本発明は、「塗膜防水工法」として公的に認められたものと同等と考えられる。
【0030】
通気緩衝シートのなかには、ポリウレタン塗膜防水材との接着性を考慮して、最上層にポリウレタン層等の極めて薄塗りを施したものもあるが、基本的にはその薄塗りのポリウレタン層等は、2度塗りのポリウレタン塗膜防水層との接着性向上が目的であり、2層の塗膜防水層の下層を形成する防水塗膜としては設計されておらず、そういう通気緩衝シートを用いたからといって、2度にわたりポリウレタン層を形成したことにはならず、このような場合は、塗膜防水工法に要求される上記要件を満たしたものとはならない。
【0031】
本発明の塗膜防水工法においては、そこで用いる防水下層構造体11の塗膜防水層11a(「下層」に該当)の層厚は0.8mm以上5mm以下であるので、防水性に優れていることは勿論、塗膜防水工法に要求される「2度塗り」という要件(規定)をクリアすることができる。
【0032】
<<基材層>>
上記防水下層構造体11が、基材層11bの上に上記塗膜防水層11aが予め形成されたものである場合の基材層11bは、特に限定はないが、補強クロス、高分子フィルム、不織布、織布及び金属フィルムよりなる群から選択された1種又は2種以上の組み合わせを有するものが好ましい。該金属フィルムとしては、低コスト、軽量、加工し易い材料が特に好ましい。
【0033】
一般に、塗膜防水工法においては、被防水加工体13であるコンクリート等に亀裂等がはいった場合であっても防水層が破損しないように補強クロス(補強布)が用いられているが、基材層11bに補強クロス(補強布)を用い、接合方法1、2、3、4、5にジョイントテープ32を用いることにより、現場で補強クロス(補強布)を敷いてからその上に塗膜防水材を塗布しなくても、被防水加工体13の挙動に対する緩衝性を有するようになり、上記の効果を得ることができる。該ジョイントテープ32の材質には特に指定はなく一般に市販されているものが使用できるが、幅方向に伸縮性のあるジョイントテープ32が特に好ましい。
【0034】
基材層11bは、水蒸気の通気性及び/又は被防水加工体13の挙動に対する緩衝性を有するものであることが好ましい。
【0035】
基材層11bに高分子フィルムを用いると、液体である塗膜防水材の通気層等へ浸透防止や、工事途中での雨濡防止、ブリードの防止という効果を奏するために好ましい。
【0036】
また、基材層11bに不織布や織布を用いると、優れた寸法安定性が得られ、被防水加工体13に亀裂等がはいったりしてもそれに追従し、優れた下地挙動緩衝性を示すために好ましい。また、水蒸気等の通気性に優れるので、被防水加工体13であるコンクリート等から発生する水分を逃がし、防水層のフクレ等を防止できるために好ましい。
【0037】
不織布又は織布を構成する繊維は、長繊維、短繊維の何れでもよく、その原料は特に限定はないが、ガラス繊維等の無機系繊維;ポリ(メタ)アクリル系繊維、ポリアルキレン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコールの変性体等のビニル系繊維;ポリエステル系繊維;等が好ましいものとして挙げられる。
【0038】
金属フィルムは、塗膜防水層11aの下に存在することにより、電磁膜厚計による膜厚測定が可能となり、膜厚管理が容易に行えるので好ましい。
【0039】
基材層11bは、補強クロス、高分子フィルム、不織布、織布及び金属フィルムよりなる群から選択された1種であってもよいが、それら2種以上の組み合わせを有するものであってもよい。組み合わせれば、それぞれの上記機能が何れも発揮されるので特に好ましい。
例えば、高分子フィルム、金属フィルム等の有するブリード防止機能、塗膜防水材の通気層等への浸透を防止する機能、雨濡対策機能等と、補強クロスの有する寸法安定性や強度と、補強クロスや不織布や織布が有する通気性や緩衝性とを幾つか合わせ持つことができるため特に好ましい。
【0040】
また、上記を2種以上組み合わせたものとして、塗膜防水工法の下地として一般に用いられている通気緩衝シートを基材層11bとして用いることも好ましい。
【0041】
本発明において、基材層11bは、上記した、補強クロス、高分子フィルム、不織布、織布、金属フィルム以外のものの存在を排除するものではない。
また、基材層11bには、段差、溝等をつけて、通気性や緩衝性を持たせることも好ましい。
【0042】
基材層11bは、ブリードを防ぐことや、塗膜防水材の通気層等への浸透を防ぐことや、施工中の雨濡れを防ぐことや、被防水加工体13の挙動に対する緩衝性を有するものであることや、被防水加工体13から発生する水蒸気を逃がして防水層のフクレ等を防止できることや、また、被防水加工体13の動きに追従しながら、被防水加工体13への密着性を維持する等の何れかの機能又はそれらが組み合わされた機能を果たすために、存在していることが好ましい。
【0043】
基材層11bの層厚は特に限定はないが、高分子フィルムの場合には、0.003mm〜0.5mmが好ましく、0.005mm〜0.2mmがより好ましく、0.01mm〜0.1mmが特に好ましい。下限が上記以上であると、強度、遮断性等に優れ、一方、上限が上記以下であると、取り扱い、ロール巻き取り性、巻ぐせ防止性等に優れる。
【0044】
基材層11bが不織布の場合には、0.1mm〜5mmが好ましい。下限が上記以上であると、通気性、緩衝性、強度、寸法安定性等に優れ、一方、上限が上記以下であると、取り扱い、ロール巻き取り性等に優れる。
【0045】
基材層11bが織布の場合には、0.1mm〜3mmが好ましい。塗膜防水材を塗布して下限が上記以上にすると、通気性、緩衝性、強度、寸法安定性等に優れ、一方、上限が上記以下であると、取り扱い、ロール巻き取り性等に優れる。
【0046】
基材層11bが金属フィルムの場合には、0.001mm〜0.5mmが好ましく、0.003mm〜0.2mmがより好ましく、0.005mm〜0.1mmが特に好ましい。下限が上記以上であると、強度、電磁膜厚計による膜厚測定精度等に優れ、一方、上限が上記以下であると、取り扱い、ロール巻き取り性、巻ぐせ防止性等に優れる。
【0047】
基材層11b全体の層厚は特に限定はないが、0.003mm〜5mmが好ましく、0.005mm〜4mmがより好ましく、0.01mm〜3mmが特に好ましい。かかる範囲であれば、上記したのと同様の効果が得られる。
【0048】
<<防水下層構造体の製造方法と形態>>
塗膜防水層11aのみを形成させたり、基材層11bの上に塗膜防水層11aを形成させたりして防水下層構造体11を製造する方法は特に限定はないが、要すれば、水を含む無機系溶剤、有機系溶剤、それらを混合した溶剤に溶解し、又は、熱融解(熱溶融)させ、押し出し、モールド、カレンダー、どぶ付け、手塗り、スプレー塗布等の公知の方法で製造することができる。
【0049】
防水下層構造体11は工場等の「施工現場以外の場所」で製造される。そのため、塗膜防水層11aが制御されて形成され、その結果、塗膜防水層11aにはピンホールが入らず、また、一定層厚が維持されるために、防水性に優れたものになる。
また、その上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12を形成させる際の該塗膜防水上層12の層厚をより正確に管理できることで、塗膜防水材の不必要な使用量を制限することが可能になる。すなわち、塗膜防水上層12の平均層厚を薄く設定しても、貫通するピンホールが生じず、塗膜防水層11aと塗膜防水上層12とが重層されて形成された合計の塗膜防水全層14の最低層厚が常に確保される。その結果、貫通するピンホール発生の可能性がないことから、塗膜防水全層14の層厚も薄くできる。
【0050】
防水下層構造体11は、その最下層の全面若しくは一部に、粘着層又は接着層が設けられていてもよい。すなわち、防水下層構造体11の下面には、全面若しくは部分的に粘着材や接着剤の層が予め設けられていてもよい。防水下層構造体11をロール状に巻き取る場合には、該接着剤や粘着材の層の上に離型紙が貼り付けられていてもよい。
「接着剤」とは、化学変化等で接着性を生じさせるものを言い、「粘着材」とは、固定後も材質としては実質的な変化がなく粘着性を有し続けるものを言う。接着剤や粘着材は、公知のものが好適に使用できる。
【0051】
防水下層構造体11は、平板状で供給しても、ロール状に巻き取って供給してもよい。ロール状で入手した場合は、「屋上等の被防水加工体の上」等の施工現場で、適当な長さに切断して、被防水加工体13の表面に固定して敷設することになる。
防水下層構造体11がロール状の場合、その幅は作業性等を勘案して決めればよく、特に限定はないが、500mm〜1500mmが好ましく、900mm〜1100mmが特に好ましい。
【0052】
後述するが、隣接する防水下層構造体11同士の接合部分の密着性や防水性を考慮して、防水下層構造体11の側部(両端の縁部分)には、塗膜防水層11aが設けられておらず基材層11bのみの部分(以下、「耳部分」と略記する)があることも好ましい。耳部分21の幅は、特に限定はないが、5mm〜100mmが好ましく、10mm〜40mmがより好ましく、15mm〜30mmが特に好ましい。
【0053】
<防水下層構造体の固定>
上記防水下層構造体11を被防水加工体13の表面に固定する方法は特に限定はないが、機械的に固定、接着剤を用いて固定、又は、粘着材を用いて固定して敷設することが好ましい。
機械的に固定する方法としては、例えば、ビス、釘、足開きアンカー、カールプラグ等の固定部材を用いて固定する方法が挙げられる。これらは、他の機械的固定方法に比べ強固に固定できる。
【0054】
「接着剤」とは、化学変化、溶媒留去等で接着性を生じさせるものを言い、「粘着材」とは、固定後も材質としては実質的な変化がなく粘着性を有し続けるものを言う。接着剤や粘着材は、公知のものが使用できる。また、施工現場で被防水加工体13及び/又は防水下層構造体11の最下面に付与して使用してもよいし、上記したように、防水下層構造体11に、予め粘着層又は接着層が自着層として設けられていてもよい。
【0055】
<塗膜防水上層>
本発明の塗膜防水工法においては、上記した防水下層構造体11を該被防水加工体13の表面に固定して敷設した後、該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させることを特徴とする。
接合部に注入若しくは塗布された塗膜防水材又はシーラント31の上部を含み、防水下層構造体11の上面に形成された塗膜防水層11aの全面に塗膜防水上層12を形成させることが好ましい。塗膜防水層11aと塗膜防水上層12とは一体となって、塗膜防水全層14となる。
【0056】
塗膜防水材としては、硬化して塗膜を形成し防水性能を与える材料であれば特に限定はなく、例えば、平場用塗膜防水材、立ち上り用塗膜防水材、目止め用塗膜防水材等、公知のものが使用可能である。
該塗膜防水材の材質から見た分類としては、特に限定はないが、ポリウレタン系、FRP系、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)系、(メタ)アクリル樹脂系、ポリマーセメント系塗膜防水材が防水性、強度、耐久性等の点から好ましい。「FRP」とは、不飽和ポリエステル樹脂、硬化剤、ガラス繊維等の補強材等を組み合わせてなる材料を言う。
【0057】
塗膜防水層11aの材料と塗膜防水上層12の材質とは、異なっていてもよいが、同一又は同一系の材質であることが、該2層の密着性、防水性、耐久性、公的仕様としての認可の可能性等の点から特に好ましい。
塗膜防水上層12の材料がポリウレタン系材料であれば、塗膜防水層11aの材質もポリウレタン系材料とすれば、ポリウレタン系材料の2回塗りの公的仕様を満足すると考えられるために特に好ましい。
【0058】
ポリウレタン系材料としては特に限定はないが、熱可塑性であっても熱硬化性であってもよいが、熱可塑性であることが、強靭でピンホールがなく、安定的な膜厚の塗膜防水上層12が容易に施工現場で形成できる等の点から好ましい。
【0059】
塗膜防水材の塗布方法は、特に限定はないが、例えば、刷毛、鏝、ローラー等を用いて塗布する方法や、スプレー工法等が挙げられる。
【0060】
上記防水下層構造体11を上記被防水加工体13の表面に固定して敷設した後に、該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上面を接着プライマーで処理した後、その上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させることが、塗膜防水材の塗布性の向上、塗膜防水層11aと塗膜防水上層12との密着性の点から好ましい。
該接着プライマーとしては、特に限定はなく、公知のものが使用できる。
【0061】
塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成する際の塗膜防水上層12の層厚は、下層である塗膜防水層11aの層厚との兼ね合いで防水性等を勘案して決定すればよいが、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、0.7mm以上が特に好ましく、1.0mm以上が更に好ましい。また、上限は5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3.5mm以下が特に好ましく、3mm以下が更に好ましい。
【0062】
上記防水下層構造体11の塗膜防水層11aと、該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して形成された塗膜防水上層12の合計の層厚、すなわち塗膜防水全層14の層厚は、特に限定はないが、1mm以上7mm以下が好ましく、2mm以上3.5mm以下が特に好ましい。
【0063】
本発明の塗膜防水工法によれば、下層である塗膜防水層11aの上に、上層として塗膜防水上層12がシームレスで形成されるので、同一素材であれば、塗布性や層同士の密着性が優れ、防水性、耐久性等に優れた塗膜防水全層14を得ることができる。
【0064】
<トップコート層>
本発明の塗膜防水工法においては、要すれば、更なる耐久性や外観を良くするために、
図1(c)に示したように、塗膜防水上層12の上に、更にトップコート層15を設けることも好ましい。トップコート層15は、公知のトップコート層形成用の塗料を塗布することで形成することができる。
トップコート層15には、着色剤、紫外線吸収剤、艶消し材、遮熱剤、断熱材等の改良剤を含有させることもできる。
【0065】
トップコート層15の層厚は、特に限定はないが、通常0.1kg〜0.3kg/m2が好ましい。但し、遮熱、断熱等の機能を付加した場合にはその限りではない。
トップコート層15の形成方法は特に限定はないが、前記した塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12を形成する方法と同様の方法が好ましく用いられる。
【0066】
<防水下層構造体同士の接合>
本発明の塗膜防水工法においては、従来の塗膜防水材を2度塗布する塗膜防水工法に比べて、塗膜防水層11aすなわち防水下層構造体11には縁があり、その接合部分の防水性担保が重要となる。
【0067】
本発明の塗膜防水工法においては、防水下層構造体11とその隣に並設される防水下層構造体11とを被防水加工体13の表面に固定した後、該並設された防水下層構造体11がなす接続部分に塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入して、該並設された防水下層構造体11の塗膜防水層11a同士を隙間なく接合し、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて、該防水下層構造体11の塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる上記の塗膜防水工法である。
【0068】
換言すると、防水下層構造体11を被防水加工体13の表面に固定して敷設した後、次いで、敷設された防水下層構造体11とその隣に敷設された防水下層構造体11とを、1層目の塗膜防水層11aがシームレスで存在し得る方法で接合し、更に、該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から全体に塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させる。
【0069】
防水下層構造体Aの塗膜防水層Aと、その隣に並設された防水下層構造体Bの塗膜防水層Bが(すなわち、隣接する塗膜防水層同士が)、例えば、塗膜防水材又はシーラント31によって隙間なく接合されることで、防水性が接合部分でも担保される。
更に、その上から、全体に塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させることによって、塗膜防水層A、塗膜防水層B及び塗膜防水上層12が全て一体化して、防水性が極めて確実なものとなる。
【0070】
すなわち、「塗膜防水層Aとその上の塗膜防水上層12からなる塗膜防水全層A」及び「塗膜防水層Bとその上の塗膜防水上層12からなる塗膜防水全層B」が一体化してシームレスになり、防水性が極めて確実なものとなる。
また、JASS8や国土交通省の公共建築工事標準仕様等において塗膜防水工法に要求される「2度塗り」という要件(規定)をクリアすることになり、「塗膜防水工法」として公的に認められたものと同等と考えられる。
【0071】
本発明の塗膜防水工法においては、防水下層構造体11(その塗膜防水層11a)と、その隣に並設された防水下層構造体11(その塗膜防水層11a)との接合方法として、具体的には、以下の接合方法1ないし接合方法6が防水性の確実な実現のために好ましい。
【0072】
<<接合方法1>>
接合方法1を用いた塗膜防水工法は、上記防水下層構造体11の縁に、塗膜防水層11aが形成されていない耳部分21を幅5mm以上100mm以下で設け、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを、該耳部分21同士を重ならないように突き合わせ、その突き合わされた耳部分21の上部にジョイントテープ32を貼り付けて接合し(
図2(a))、更にその上に塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入し(
図2(b))、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(
図2(c))上記の塗膜防水工法である。
【0073】
ジョイントテープ32は、特に限定はなく後記するものが使用できるが、幅方向に伸縮性を有するものが好ましい。
【0074】
耳部分21は、塗膜防水層11aが設けられておらず基材層11bのみの部分を言い、防水下層構造体11が板状の場合は、周囲に設けることが可能であるが、防水下層構造体11がロール状の場合は、側部(両端の縁部分、すなわち長手方向)にのみ設けることが可能であり、切断面には通常は耳部分21を設けることはできない。
また、防水下層構造体11が防水層11aのみからなる場合には、耳部分21を形成できないため、該接合方法1は適用できないが、防水下層構造体11が基材層11bの上に上記塗膜防水層11aが予め形成されたものである場合には、上記の接合方法1は好適に適用できる。
【0075】
防水下層構造体11がロール状の場合であって、側部(両端の縁部分)同士の接合、すなわち長手方向同士の接合には、かかる接合方法1が特に好ましい。
【0076】
耳部分21の幅は、特に限定はないが、前記した通り、5mm〜100mmが好ましく、10mm〜40mmがより好ましく、15mm〜30mmが特に好ましい。
【0077】
接合方法1では、次いで、その接着された耳部分21の上部に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入する。塗膜防水材は特に限定はなく、前記した塗膜防水上層12形成用の塗膜防水材でもよいが、更に高粘度にしたものが、該耳部分21の上部の空間に貯まり易いために好ましい。
塗布若しくは注入される塗膜防水材又はシーラント31は、防水性能を有するものであれば特に限定はなく公知のものが使用できる。
【0078】
図2に示したように、「塗膜防水材又はシーラント31」は、塗膜防水層11aと同一面まで埋めることが、その後に形成させる塗膜防水上層12の均一な塗布の作業性を担保するため、隅等に空間を作らず一体化させるために好ましい。
【0079】
塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入した後に、その部分(該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上)を含み防水下層構造体11の塗膜防水層11aの上から全体に塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させる。それによって、接合部分も含めて一体になり、優れた防水性が得られる。
すなわち、工場等で形成された塗膜防水層11aであっても、現場で塗布若しくは注入された接合部分であっても共に、その上に一体となった塗膜防水上層12がシームレスに形成され、すなわち2層確保され、塗膜防水工法として優れた防水性が得られる。また、シート防水工法の接合部分に関する短所が現れない。
【0080】
<<接合方法2>>
接合方法2を用いた塗膜防水工法は、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを断面同士で突き合わせ(
図3(a))、その突き合わせ部分に上からU字ないしV字に切り込みを入れ(
図3(b))、該切り込み部分22に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入し(
図3(c))、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(
図3(e))上記の塗膜防水工法である。
【0081】
例えば、防水下層構造体11がロールの場合には、上記「断面」は、短手方向、すなわちロールの切断面となる場合が多い。
【0082】
接合方法2では、まず、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを断面同士で突き合わせ(
図3(a))、その接合部分に上からU字ないしV字に切り込みを入れる(
図3(b))。切り込みは、
図3(b)に示したように、塗膜防水層11aにのみ入れてもよいが、基材層11bがある場合には、塗膜防水層11aと基材層11b(すなわち、防水下層構造体11)の全体に入れてもよい。基材層11bに通気性を持たせている場合は、通気性が接合部分で遮断されないように、塗膜防水層11aにのみ切り込みを入れることが好ましい。
【0083】
防水下層構造体11がロール状の場合の切断面には、上記した耳部分21が設けられないので、耳部分21のない切断面の接合、すなわち短手方向同士の接合には、接合方法2が特に好ましい。
【0084】
次いで、該切り込み部分22に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入する(
図3(c))。このときの塗膜防水材やシーラント31は、特に限定はなく、上記したものが使用できる。
【0085】
接合方法2においては、塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させることが好ましい。
【0086】
接合部の引張強度の向上のため、ジョイントテープ32を該切り込み部分22に塗布若しくは注入した塗膜防水材又はシーラント31の上から、隣接する2つの該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aまで被覆するように、防水下層構造体11同士を留めることも好ましい(
図3(d))。ジョイントテープ32は、幅方向に伸縮性を有するものが特に好ましい。
【0087】
次いで、防水下層構造体11の塗膜防水層11a及び該接合部の上から(ジョイントテープ32を使用する場合には更にその上から)、全体に塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させる。それによって、接合部分も含めて一体になり、優れた防水性が得られる。
すなわち、接合部分においても、防水層は2層確保され、かつ一体面として仕上げることができ、塗膜防水工法として優れたものとなる。また、シート防水工法の接合部分に関する短所が現れない。
【0088】
<<接合方法3>>
接合方法3を用いた塗膜防水工法は、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを、1mm以上5mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させ(
図4(a))、生じた並設間隔部分23に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入し(
図4(b))、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(
図4(d))上記の塗膜防水工法である。
【0089】
接合方法3では、まず、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを、1mm以上5mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させる(
図4(a))。間隔は、3mm以上が特に好ましい。間隔が狭すぎると、該間隔への塗膜防水材又はシーラント31の注入作業が困難となり、一方、広すぎると、防水下層構造体11同士の密着性が劣り、防水性が損なわれる場合がある。
【0090】
その並設間隔部分23に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入する(
図4(b))。塗膜防水材又はシーラント31は、上記した接合方法2と同様である。
【0091】
接合方法3においては、塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させることが好ましい。
【0092】
接合部の引張強度を向上させるため、並設間隔部分23に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入した上部を含め、その両端が該並設する防水下層構造体11の塗膜防水層11aにそれぞれ被さるように、並設する該防水下層構造体11同士を留めることも好ましい(
図4(c))。ジョイントテープ32は特に限定はなく、公知のものが使用できるが、幅方向に伸縮性を有するものが特に好ましい。
【0093】
次いで、防水下層構造体11の塗膜防水層11aの上及び塗膜防水材若しくはシーラント31を塗布若しくは注入した該併設間隔部分の上に(ジョイントテープ32を使用する場合は更にその上に)、接合面も含めた全体に塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させる。それによって、接合部分も含めて一体になる。
すなわち、接合部分においても、防水層は2層確保され、かつ一体面として仕上げることができ、塗膜防水工法として優れた防水性が得られる。また、シート防水工法の接合部分に関する前記した短所が現れない。
【0094】
<<接合方法4>>
接合方法4を用いた塗膜防水工法は、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを、1mm以上10mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させ(
図5(a))、生じた並設間隔部分23を含み隣接する防水下層構造体11の下面に両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51を敷設して、防水下層構造体11と被防水加工体13を貼り付け(
図5(a))、更に、該並設間隔部分23に露出した両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51の上面に、幅1mm以上10mm以下の遮蔽フィルムを、塗膜防水材又はシーラント31が該両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51を通過して被防水加工体13に流下しないように貼り付け(
図5(a’))、該遮蔽フィルムの上の該並設間隔部分23に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入し(
図5(b))、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(
図5(c))上記の塗膜防水工法である。
【0095】
換言すると、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを、1mm以上10mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させ(
図5(a))、該並設間隔部23を含みその両端に隣接する防水下層構造体11の下面の一部まで、被防水加工体13に貼り付ける両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51を敷設する。該両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51は、クロス上面も下面同様に粘着性を有するものである。
【0096】
上記した両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51の使用により、隣接する防水下層構造体11は、接合部においても被防水加工体13との接着を維持し、かつ被防水加工体13の挙動に対しての接合部の追随性も維持することができる。
【0097】
該両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51は特に限定はなく、市販品等の公知のものも使用できるが、被防水加工体13との接着力、被防水加工体13の挙動に対する追随性、引張強度等を考えると、ガラスクロステープ、ビニロンクロステープ、ポリエステルクロステープ等が好ましく、幅方向に伸縮性を有するものが特に好ましい。
両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51の幅は並設間隔部の幅にもよるが、並設間隔部の幅より30mm〜200mm広いものが好ましく、50mm〜150mm広いものがより好ましく、80mm〜120mm広いものが特に好ましい。
【0098】
次いで、両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51の上面には、両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51の並設間隔部に表出している部分の実質的全面に、帯状に幅1mm〜10mmの遮蔽フィルム41を貼りつける(
図5(a’))。
該遮蔽フィルム41の厚みは、0.005mm〜0.03mmが好ましく、0.008mm〜0.02mmがより好ましく、0.01〜0.015mmが特に好ましい。厚すぎると巻き癖が着き易く、固すぎて作業性が悪く、薄すぎると強度が不足する。
【0099】
接合方法4は、防水下層構造体11が塗膜防水層11aのみからなるものの場合、又は、防水下層構造体11の基材層11bが高分子フィルム若しくは金属フィルムの場合に特に好ましい。
防水下層構造体11の基材層11bが高分子フィルム若しくは金属フィルムの場合、上記遮蔽フィルム41の厚みは、該基材層11bの厚みとほぼ同一であって不必要に厚くないことが、隣接する塗膜防水層11a同士を塗膜防水材又はシーラント31で接合し易い等の点から好ましい。
【0100】
次いで、その上から、並設間隔部分23に、塗膜防水材又はシーラント31を、防水下層構造体11の塗膜防水層11aの上面と同等の高さまで塗布若しくは注入する(
図5(b))。
【0101】
次いで、該並設間隔部分23に塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上面、及び、該防水下層構造体11の該塗膜防水面11aの上から、それらと一体になるように塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(
図5(c))。
【0102】
並設間隔部分23に塗膜防水材若しくはシーラント31を塗布若しくは注入する際、上記した遮蔽フィルム41により、該塗膜防水材若しくはシーラント31が、防水下層構造体11と被防水加工体13の間や、防水下層構造体11と並設する防水下層構造体11の間に流下することを防ぐことができる。
【0103】
<<接合方法5>>
接合方法5を用いた塗膜防水工法は、防水下層構造体11とその隣に敷設される防水下層構造体11とを、1mm以上10mm以下の間隔を開けて断面同士を並設させ、生じた並設間隔部分23を含み隣接する防水下層構造体11の下面に両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51を敷設して、防水下層構造体11と被防水加工体13を貼り付け、更に、該並設間隔部分23に露出した両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51の上面に、防水下層構造体11の基材層11bのみを幅1mm〜10mmに切断した帯状基材52を貼り付け(
図6(a))、該帯状基材52上の該並設間隔部分23に、塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入し(
図6(b))、更に、該塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上をも含めて該防水下層構造体11の該塗膜防水層11aの上から塗膜防水材を塗布して、塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(
図6(c))上記の塗膜防水工法である。
【0104】
両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51及びその使用方法は、上記した接合方法4の場合と同様のものを同様に使用できる。
【0105】
更に、該両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51の上面に、並設間隔部分23の幅両端に平行に、長さ方向のほぼ中央部に帯状に、予め該並設間隔幅に切断しておいた帯状基材52を貼りつける(
図6(a))。
【0106】
その上から、並設間隔部分23に塗膜防水材又はシーラント31を、接合方法4と同様に、防水下層構造体11の塗膜防水層11aの上面とほぼ同じの高さまで塗布若しくは注入する(
図6(b))。
【0107】
次いで、該並設間隔部分23に塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラント31の上面を含み、該防水下層構造体11の塗膜防水層11aの上から、それらと一体になるように塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させる(
図6(c))。
【0108】
並設間隔部分23の底を形成する両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51により、隣接する防水下層構造体11は、接合部においても被防水加工体13との接着を維持し、かつ被防水加工体13の挙動に対しての接合部の追随性も維持することができる。
更に、接合部に塗膜防水材又はシーラント31を塗布若しくは注入する際、防水下層構造体11の基材層11bと同じ材質・厚さの帯状基材52を用いれば、該塗膜防水材又はシーラント31の流下を防ぐと同時に、接合部に塗布若しくは注入した塗膜防水材又はシーラント31の膜厚を、防水下層構造体11の塗膜防水層11aの膜厚と同じにすることができるので両者が一体化する。
また、塗膜防水上層12と一体のシームレスな塗膜防水全層14が形成された際に、塗膜防水全層14として、接合部分でも一体化した均一な膜厚を維持することができる。
【0109】
該両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51は特に限定はなく、市販品等の公知のものも使用できるが、被防水加工体13との接着力、被防水加工体13の挙動に対する追随性、引張強度等を考えると、ガラスクロステープ、ビニロンクロステープ、ポリエステルクロステープ等が好ましい。特に幅方向に伸縮性を有するものが更に好ましい。
【0110】
両面粘着クロステープ51又は両面粘着ジョイントテープ51の幅は並設間隔部の幅にもよるが、並設間隔部の幅より30mm〜200mm広いものが好ましく、50mm〜150mm広いものがより好ましく、80mm〜120mm広いものが特に好ましい。
【0111】
<<<ジョイントテープ>>>
防水下層構造体11の接合の際に用いられるジョイントテープ32は特に限定はなく、市販品等の公知のものも使用できるが、ジョイントテープ32の基材が塗膜防水材と同質の材料でコーティングされたものは、その上から塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12を形成させた時に、該塗膜防水上層12との密着性が同じ材質同士であるために良好となり特に好ましい。
【0112】
ジョイントテープ32は、継ぎ目部分の上部を含め接合しようとする隣接した防水下層構造体11の塗膜防水層11aの上面の一部にかかる様に貼付することが好ましい。ジョイントテープ32の幅は特に限定はないが、10mm〜100mmが好ましく、20mm〜80mmがより好ましく、30mm〜60mmが特に好ましい。ジョイントテープ32の幅が小さ過ぎる場合には、敷設された防水下層構造体11とその隣に敷設された防水下層構造体11との接着性が充分でない場合がある。
【0113】
また、接合方法2ないし3の場合、隣接して敷設された防水下層構造体11同士の間の継ぎ目部分の上部にジョイントテープ32を貼付ける場合には、その上から全体に塗膜防水材を塗布して塗膜防水上層12をシームレスに形成させるので、塗膜防水層11aと塗膜防水上層12とで上下からジョイントテープ32を挿み込むような形になるが、この場合、ジョイントテープ32が幅方向に上下の層と同様の挙動追随性を有するものであれば(例えば、特願2009−032931等に記載のジョイントテープ)、上下の層の亀裂や剥がれがより軽減できる。
【0114】
<<<両面粘着ジョイントテープ>>>
両面粘着ジョイントテープ51は、ジョイントテープ32の様に、その上面の上に塗膜防水材やシーラントを塗布若しくは注入するために使用されるわけではないので、上記したような、上面が塗膜防水材と同質の材料でコーティングされたものである必要はない。ただ、下地の挙動に対する追随性向上のため、幅方向に伸縮性のあるものが特に好ましい。
【0115】
<<防水下層構造体の配置>>
防水下層構造体11の基材層11bには、フクレ等を防止するため通気性があることが好ましいが、複数枚の防水下層構造体11を使用したときにも、それらの接合部分で通気性が遮断されないようにすることが好ましい。
そのために、接続方法2ないし5の場合、上記防水下層構造体11の基材層11bの通気性が、隣接する防水下層構造体11の基材層11b間でも連続して確保できるように、
図7に一例を示したように、該防水下層構造体11を、その接合面が直線上に揃わないようにずらして被防水加工体13の表面に固定して敷設することによって解決できる。
【0116】
長手方向は接合方法1とし、長手方向の通気性は耳部分21を経由して確保される。しかし、短手方向は耳部分21がないので、接合方法2、3、4、5の何れかで行うが、接合方法5の基材層11bが通気緩衝シートであり、帯状基材52とその両側に隣接する防水下層構造体11との間に隙間がなく、塗布若しくは注入された塗膜防水材又はシーラントが隙間に漏れ出さない場合を除いて、耳部分21がないので接合面からの通気は遮断される。
そこで、
図7に示したように、短手方向の接合面をずらして、一直線上に並ばないようにすることで、通気は隣接する防水下層構造体11を経由して確保される。
【実施例】
【0117】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0118】
実施例1
熱可塑性ポリウレタンを溶融し、押出し成型で層厚1mmの塗膜防水層のみからなる防水下層構造体11を製造した。
【0119】
次いで、上記防水下層構造体と、被防水加工体であるコンクリートの両方の上に、ウレタン用プライマー(ユープレックス社製コスミックプライマーP)を塗布して、接着剤(日本シーカ社製、Sikaflex 11FC)を用いて、防水下層構造体を被防水加工体に固定した。
【0120】
接合は、接合方法4で行った。すなわち、上記防水下層構造体は、2枚を3mmの間隔を開けて、断面同士を並設させて敷設した。その下に、両面粘着ジョイントテープとして、株式会社秀カンパニー製の両面粘着PUジョイントテープを幅105mmで貼った。
【0121】
次いで、両面粘着ジョイントテープの上面に、並設間隔部分の幅のほぼ中央部に、遮蔽フィルムとして、幅3mmのPETフィルムを貼って、該PETフィルムの部分がちょうど並設間隔部分に収まるように、両面粘着ジョイントテープのそれぞれの幅端を、接合しようとしている防水下層構造体の下面と両面粘着ジョイントテープの上面とを接着させた。
次いで、その並設間隔部分に、シーラント(日本シーカ社製、Sikaflex 11FC)を注入した。
【0122】
次に、該並設間隔部分に注入したシーラントの上面及び該防水下層構造体の該塗膜防水層に、接着プライマー(ユープレックス社製コスミック層間プライマー)を塗布し、その上から、塗膜防水材(ユープレックス社製、コスミックプロ12)を、硬化後の層厚として、2mmとなるように塗布して、塗膜防水上層をシームレスに形成させた。
【0123】
これによって、
図1(a)に示す塗膜防水層が、被防水加工体の表面に施工された。接合部分は
図5(c)に示したものとなった。
塗膜防水全層のうちの、該防水下層構造体の該塗膜防水層は1mm、塗膜防水上層は2mmであり、合計の層厚(塗膜防水全層の層厚)は3mmであった。
【0124】
実施例2
まず、東洋紡社製スパンボンド不織布3701ADと4163Nを貼り合わせた目付230g/m
2、厚み1.3mmの不織布層である基材層の上に、直接、溶融した熱可塑性ポリウレタンをモールディングによって、ピンホールのない、強靭にして均一な塗膜防水層を層厚1mmとなるように形成し、防水下層構造体を得た。
この防水下層構造体は、その縁の部分(側部)には、塗膜防水層がなく基材層(不織布)のみの部分(耳部分)を30mm設けた。この防水下層構造体の幅は、1000mmであり、ロール状に巻き取られた。
【0125】
施工現場で、ロール状に巻き取られた防水下層構造体を、被防水加工体であるコンクリートの上に、2枚の防水下層構造体の縁の部分(側部)が隣接するように突き合わせて、ウレタン系接着剤(ユープレックス社製、CMボンドU)を使用して固定した。
【0126】
接合は接合方法1で行った。すなわち、2枚の防水下層構造体の耳部分同士を、間隔を開けずしかも重ならないように突き合わせ、その耳部分の接合部を中心として、幅50mmのジョントテープ(株式会社秀カンパニー製、PUジョイントテープ)を貼付して、防水下層構造体同士(基材層同士)を接合した。
【0127】
次いで、その接着された耳部分の上部に、ウレタン防水塗料(ユープレックス社製、コスミックプロ立上用)を塗布・注入した。それによって、接合部分は
図2(b)に示したものとなった。
【0128】
ロール状に巻き取られた防水下層構造体は切断したが、切断面同士の接合部分には耳部はない。従って、接合は接合方法5で行った。
すなわち、防水下層構造体を3mmの間隔で並設させ、その下に両面粘着ジョイントテープである上記両面粘着PUジョイントテープ(幅105mm)を貼り、該両面粘着ジョイントテープの上面の幅のほぼ中央部に、防水下層構造体の基材層(東洋紡社製スパンボンド不織布3701ADと4163Nを貼り合わせた目付230g/m
2、厚み約1.3mmの不織布層)を3mm幅に切断した帯状基材を貼り付けた。
【0129】
該帯状基材がちょうど並設間隔部分に収まるように、両面粘着ジョイントテープのそれぞれの幅端約51mmずつを、接合しようとしている両側の防水下層構造体の下面と両面粘着ジョイントテープの上面とを接着させた。
当面ジョイントテープの下面は被防水加工体の表面に貼り付けた。
【0130】
次に、該並設間隔部に、該帯状基材を底にして、シーラント(日本シーカ社製、Sikaflex 11FC)を、防水下層構造体11の塗膜防水層11aの上面と同じ高さまで注入した。
次に、該注入されたシーラント31を含み上記防水下層構造体の塗膜防水層の上から、全面、実施例1と同様の塗膜防水材を、硬化後の層厚として、2mmとなるように塗布してポリウレタン上層をシームレスで形成させた。
【0131】
なお、切断面での通気性が遮断される為、隣接する防水下層構造体同士の接合面が同じ線上に揃わない様に、
図7に示したように、併接した防水下層構造体の接合部をずらして敷設し、防水下層構造体の耳部分から接合方法1により連続性が確保された通気層から隣接した防水下層構造体を経由して(接合方法5にて接合した切断面を迂回して)通気層の連続性を確保した。
【0132】
これによって、
図1(c)に示す塗膜防水層と塗膜防水上層(塗膜防水全層)が、被防水加工体の表面に施工された。接合部分は、防水下層構造体の側部同士は
図2(c)に示したものとなり、切断部分同士は
図6(c)に示したものとなった。
【0133】
塗膜防水全層のうちの、塗膜防水層は1mm、塗膜防水上層は2mmであり、合計の層厚(塗膜防水全層の層厚)は3mmであった。
【0134】
実施例3
実施例2において、基材層を通気緩衝シート(ユープレックス社製CMマットE)に代えた以外は、実施例2と同様に塗膜防水工法を行なって、ポリウレタン塗膜防水層を形成させた。それぞれの層厚は、実施例2と同様であった。
【0135】
実施例4
実施例2において、基材層を自着通気緩衝シート(ユープレックス社製CAマットSB)に代えた以外は、実施例2と同様に塗膜防水工法を行なった。接合方法も実施例2と同様に行った。
そのようにして、塗膜防水全層(ポリウレタン塗膜防水層)を形成させた。それぞれの層厚は、実施例2と同様であった。
【0136】
なお、切断面での通気性が遮断されるため、隣接する防水下層構造体同士の接合面が同じ線上に揃わない様に、
図7に示したように、併接した防水下層構造体の接合部をずらして施設し、防水下層構造体の耳部分から接合方法1により連続性が確保された通気層から隣接した防水下層構造体を経由して(接合方法5にて接合した切断面を迂回して)通気層の連続性を確保した。
【0137】
実施例5
実施例2において、最後に、トップコート(ユープレックス社製コスミックトップP)を、常法に従って0.2kg/m
2で塗布した以外は、実施例2と同様に塗膜防水工法を行なって、ポリウレタン塗膜防水層を形成させた。それぞれの層厚は、実施例2と同様であった。
【0138】
実施例6
実施例2において、短手方向の接合方法5に代えて、接合方法2を採用した以外は実施例2と同様に行った。切り込み部分は、層厚1mmの塗膜防水層のみにV字型に形成させた。そのV字型の切り込み部分の開口部の幅は、平均で1.4mm(すなわち、1つの防水下層構造体では、切り込み部分の開口部の幅は、平均で0.7mm)とした。
【0139】
図3(d)のように、実施例2と同一のジョイントテープを使用した。そのようにして、塗膜防水全層(ポリウレタン塗膜防水層)を形成させた。それぞれの層厚は、実施例2と同様であった。
【0140】
実施例7
実施例2において、短手方向の接合方法5に代えて、接合方法3を採用した以外は実施例2と同様に行った。並設間隔部分の幅は平均3mmとした。
【0141】
図4(c)のように、実施例2と同一のジョイントテープを使用した。そのようにして、塗膜防水全層(ポリウレタン塗膜防水層)を形成させた。それぞれの層厚は、実施例2と同様であった。
【0142】
比較例1
被防水加工体にプライマー(東洋ゴム工業社製AD−12R)0.2kg/m
2を塗布し、プライマー乾燥後、接着剤(東洋ゴム工業社製アクメボンドAD−102)0.2kg/m
2を塗布した。
EPDMシート(東洋ゴム工業社製トーヨーシートエキストラTS−S1.2)を広げ、シート下面にもアクメボンドAD−102を0.2kg/m
2塗布し、シートとシートのジョイント部は両面粘着ブチルテープ(東洋ゴム工業社製トーヨーGテープ)で接着させた。
シート施設後、トップコート(東洋ゴム工業社製カバーペイントHTCシルバー)を0.3kg/m
2塗布した。
【0143】
比較例2
被防水加工体に、下地専用クシゴテを使い、接着剤(田島ルーフィング社製ビューボンド)0.3kg/m
2を塗布した。塩ビ防水シート(田島ルーフィング社製、塩ビ防水シート)を仮敷きした。
塩ビシートを墨にあわせ貼付け、モップで抑え充分に圧着した。ラップ部を熱風で融着した。ラップ部にくちあきがないことを確認してから、塩ビ系シール材(田島ルーフィング社製Uシール)で端末処理を行った。
【0144】
比較例3
被防水加工体である下地コンクリート層をケレン処理し、脆弱部分を取り払い、プライマー塗布した後、ガラスクロス補強布を平場用2液ウレタン(ユープレックス社製コスミックプロ12)0.4kg/m
2で固定し、更に、同じ平場用2液ウレタン1.7kg/m
2を塗布した。
【0145】
翌日、1層目の硬化後、再度同じ2液平場用ウレタンを1層目の上から1.8kg/m
2塗布した。
塗膜防水用ウレタンの比重は1.2のものを使用し、ウレタン塗膜防水層の合計膜厚が3.0mmとなるように施工した。
更に、翌日、2層目の硬化後、0.2kg/m
2でトップコート(ユープレックス社製コスミックトップP)を塗布して仕上げた。
【0146】
【表1】
【0147】
<評価>
[貫通するピンホールの有無]
高電圧のピンポールテスターを使用して、常法に従って、全面50m
2について検査した。
【0148】
[貫通するピンホールの有無の判定]
○:ピンホールが、全く観察されない
×:ピンホールが、観察される
【0149】
[接合部分の防水性の評価方法]
接合部分の仕上がりを目視検査し、防水性と耐風圧性能を常法に従って評価した。
【0150】
[接合部分の防水性の判定]
○:接合部分の仕上がりも綺麗で、防水性と耐風圧性能も確保されている
△:接合部分の防水性は確保されているものの、仕上がりが不均一で、耐風圧性能にも不安がある
×:接合部分に密着しきれていない部分が残っており、防水性と耐風圧性能で問題あり
【0151】
[作業時間]
塗膜防水工法にかかった全ての時間を測定した。
【0152】
[作業時間の判定]
○:トップコート層なしの場合1日、トップコート層ありの場合2日
×:トップコート層なしの場合2日以上、トップコート層ありの場合3日以上
【0153】
[作業性]
作業の難易度を評価した。
【0154】
[作業性の判定]
○:熟練工でなくても充分作業可能、単純
△:熟練工でないと作業が難しい、やや複雑
×:熟練工でないと作業不可能、複雑
【0155】
【表2】
【0156】
表2に示したように、実施例1〜7では、塗膜防水全層に貫通するピンホールが皆無であり、接合部分の防水性にも全く問題がなかった。
また、作業時間が短かった。すなわち、補強クロスの目止めに要する時間、1層目の塗布時間、1層目の硬化時間を待つ時間が節約され、大幅に作業時間が短縮できた。
更に、熟練工でなくても充分作業可能であった。
【0157】
また、実施例1〜7の工法は、「塗膜防水工法」としての規格にも適合したものであった。また、実施例1〜7では、通気性、緩衝性等の性能にも優れており、塩化ビニルを使用していないので、接続部の防水性、下地接着性にも優れていた。
【0158】
一方、比較例1のEPDMゴムシート工法では、作業は単純で、熟練工でなくても容易に施工が可能だった。しかし、シートの接合部分の仕上がり状態や、風圧によるめくれ・剥がれの点で脆弱であり劣っていた。
【0159】
比較例2の塩ビシート工法では、接合部の施工が複雑で熟練工を必要とした。また、接合面での仕上がりも不均一で、耐風圧性等に不安が見受けられた。
【0160】
比較例3の2度塗り塗膜防水工法は、「塗膜防水工法」としての規格にも適合したものであったが、作業に時間がかかり、均一な層厚を確保するには熟練工でないと難しかった。作業時間は3日必要とした。
また、塗膜防水全層に貫通するピンホールも僅かに観察された。