(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光半導体装置用エポキシ樹脂組成物の硬化物の光反射率が、波長430〜800nmの領域において80%以上である請求項1記載の光半導体装置用エポキシ樹脂組成物。
光半導体装置用エポキシ樹脂組成物の硬化物の曲げ強度が60MPa以上で、曲げ弾性率が10GPa以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光半導体装置用エポキシ樹脂組成物。
光半導体素子搭載領域を備え、その少なくとも一部で素子搭載領域の周囲を囲んだ状態でリフレクタが形成されてなる光半導体装置用リードフレームであって、上記リフレクタが請求項1〜6のいずれか一項に記載の光半導体装置用エポキシ樹脂組成物を用いて形成されてなることを特徴とする光半導体装置用リードフレーム。
光半導体素子搭載領域を備え、その少なくとも一部で素子搭載領域の周囲を囲んだ状態でリフレクタが形成されてなる光半導体装置用基板であって、上記リフレクタが請求項1〜6のいずれか一項に記載の光半導体装置用エポキシ樹脂組成物を用いて形成されてなることを特徴とする光半導体装置用基板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような光半導体装置においては、線膨張係数を引き下げるための手法として、充填剤(フィラー)を添加することが知られているが、充填剤(フィラー)の添加量を増量すると強度が増加するものの、その反面、光半導体装置が脆くなるという問題がある。特に、上記特許文献1で使用される、脂肪族(脂環式)系炭化水素を主骨格にするエポキシ樹脂は、比較的靱性が乏しいため、上記特許文献1の材料に、充填剤(フィラー)を多量に添加すると、光半導体装置が著しく脆くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低い線膨張係数と、強度の両立を図ることができる、光半導体装置用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いて得られる光半導体装置用リードフレームまたは光半導体装置用基板、ならびに光半導体装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(D)成分とともに、下記の(E)成分を含有する光半導体装置用エポキシ樹脂組成物であって、上記(C)成分および(D)成分の合計含有量がエポキシ樹脂組成物全体の69〜94重量%で、かつ、上記(E)成分の添加量が下記の数式(1)を満たす値となっている光半導体装置用エポキシ樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)
イソシアヌレート環構造を有するエポキシ樹脂。
(B)
酸無水物系硬化剤。
(C)白色顔料。
(D)無機質充填剤。
(E)シランカップリング剤。
【数1】
【0008】
そして、本発明は、光半導体素子搭載領域を備え、その少なくとも一部で素子搭載領域の周囲を囲んだ状態でリフレクタが形成されてなる光半導体装置用リードフレームであって、上記リフレクタが上記光半導体装置用エポキシ樹脂組成物を用いて形成されてなる光半導体装置用リードフレームを第2の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、光半導体素子搭載領域を備え、その少なくとも一部で素子搭載領域の周囲を囲んだ状態でリフレクタが形成されてなる光半導体装置用基板であって、上記リフレクタが上記光半導体装置用エポキシ樹脂組成物を用いて形成されてなる光半導体装置用基板を第3の要旨とする。
【0010】
さらに、本発明は、光半導体装置用リードフレームまたは光半導体装置用基板の所定位置に光半導体素子が搭載されてなる光半導体装置を第4の要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明者らは、低い線膨張係数と、強度の両立を図ることができる、光半導体装置を得るため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、表面改質剤であるシランカップリング剤に着目し、
イソシアヌレート環構造を有するエポキシ樹脂〔(A)成分〕、
酸無水物系硬化剤〔(B)成分〕、白色顔料〔(C)成分〕、無機質充填剤〔(D)成分〕とともにシランカップリング剤〔(E)成分〕を併用し、上記(C)成分および(D)成分の合計含有量をエポキシ樹脂組成物の69〜94重量%とし、かつ、上記シランカップリング剤〔(E)成分〕の添加量を前記数式(1)で表される表面被覆率(
25〜
150%)を満たす値に調整することにより、このエポキシ樹脂組成物を用いてなる光半導体装置は、脆くならずに、低い線膨張係数と、強度の両立を図ることができることを見いだし本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明の光半導体装置用エポキシ樹脂組成物(以下、「エポキシ樹脂組成物」ともいう)は、
イソシアヌレート環構造を有するエポキシ樹脂〔(A)成分〕、
酸無水物系硬化剤〔(B)成分〕、白色顔料〔(C)成分〕、無機質充填剤〔(D)成分〕とともに、表面改質剤であるシランカップリング剤〔(E)成分〕を併用している。そして、上記(C)成分および(D)成分の合計含有量をエポキシ樹脂組成物の69〜94重量%とし、かつ、上記(E)成分の添加量を、前記数式(1)で表される表面被覆率(
25〜
150%)を満たす値に調整しているため、上記白色顔料〔(C)成分〕および無機質充填剤〔(D)成分〕の表面が、上記シランカップリング剤〔(E)成分〕により改質され、このエポキシ樹脂組成物を用いてなる光半導体装置は、脆くならずに、低い線膨張係数と、強度の両立を図ることができる。
【0013】
そして、本発明のエポキシ樹脂組成物は、光半導体素子から発する光を反射させるリフレクタの形成材料となるため、上記エポキシ樹脂組成物を用いてリフレクタを形成してなる光半導体装置では、上記リフレクタを使用することで、LEDパッケージ作製中のリフレクタの割れや欠けを低減・防止できることから、より安価に量産することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、
イソシアヌレート環構造を有するエポキシ樹脂(A成分)、
酸無水物系硬化剤(B成分)、白色顔料(C成分)、無機質充填剤(D成分)およびシランカップリング剤(E成分)を用いて得られるものであり、通常、液状、あるいは粉末状、もしくはその粉末を打錠したタブレット状にして封止材料に供される。本発明のエポキシ樹脂組成物は、
図1に示す光半導体装置のリフレクタ3形成材料として好ましく用いられる。
【0016】
本発明においては、上記白色顔料(C成分)および無機質充填剤(D成分)の合計含有量がエポキシ樹脂組成物全体の69〜94重量%で、かつ、上記シランカップリング剤(E成分)の添加量が前記数式(1)を満たす値となっていることが最大の特徴である。
【0017】
まず、本発明のエポキシ樹脂組成物の各成分について説明する。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用するエポキシ樹脂(A成分
)は、耐熱性および耐光性の観点から、トリグリシジルイソシアヌレート
等のイソシアヌレート環構造を有するエポキシ樹脂
であり、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる
。
【0019】
上記
イソシアヌレート環構造を有するエポキシ樹脂(A成分)は、常温で固形であっても液状であってもよいが、一般に、使用するエポキシ樹脂の平均エポキシ当量が90〜1000のものが好ましく、また、固形の場合には、軟化点が160℃以下のものが好ましい。エポキシ当量が小さすぎると、エポキシ樹脂組成物硬化物が脆くなる傾向がみられ、エポキシ当量が大きすぎると、エポキシ樹脂組成物硬化物のガラス転移温度(Tg)が低くなる傾向がみられる。
【0020】
上記酸無水物系硬化剤(B成分)は、耐熱性および耐光性の観点から好ましく、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。上記酸無水物系硬化剤
(B成分)としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等があげられる。これらの中でも、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いることが好ましい。さらに、酸無水物系硬化剤
(B成分)としては、その分子量が、140〜200程度のものが好ましく、また、無色ないし淡黄色の酸無水物系硬化剤が好ましい。
【0021】
ここで、上記
イソシアヌレート環構造を有するエポキシ樹脂(A成分)と
酸無水物系硬化剤(B成分)との配合割合は、
イソシアヌレート環構造を有するエポキシ樹脂(A成分)中のエポキシ基1当量に対して、
酸無水物系硬化剤(B成分)中におけるエポキシ基と反応可能な活性基(酸無水
基)が0.5〜1.5当量となるよう設定することが好ましく、特に好ましくは0.7〜1.2当量である。活性基が少なすぎると、エポキシ樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、その硬化物のガラス転移温度(Tg)が低くなる傾向がみられ、活性基が多すぎると耐湿性が低下する傾向がみられる。
【0022】
つぎに、上記A成分およびB成分とともに用いられる白色顔料(C成分)としては、例えば、無機系の白色顔料である、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、鉛白、カオリン、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫化亜鉛等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、優れた光反射率が得られる観点から、酸化チタンを用いることが好ましく、特にルチル型の結晶構造を有するものを用いることが好ましい。さらにそのなかでも、流動性および遮光性という観点から、平均粒径が0.05〜2.0μmのものを用いることが好ましい。特に好ましくは、光反射性という観点から、0.08〜0.5μmである。なお、上記平均粒径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。
【0023】
なお、本発明における白色顔料(C成分)の含有量は、後述する範囲に設定される。
【0024】
上記A〜C成分とともに用いられる無機質充填剤(D成分)としては、例えば、石英ガラス粉末、タルク、溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等のシリカ粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ケイ素粉末等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、線膨張係数の低減等の観点から、シリカ粉末を用いることが好ましく、特に高充填性および高流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが好ましい。上記無機質充填剤(D成分)の粒径およびその分布については、上記白色顔料(C成分)の粒径およびその分布との組み合わせを、エポキシ樹脂組成物をトランスファー成形等により成形する際に生ずるバリ等が最も低減されるように配慮し設定することが好ましい。具体的には、無機質充填剤(D成分)の平均粒径は、5〜60μmの範囲とすることが好ましい。
【0025】
本発明においては、上記白色顔料(C成分)および無機質充填剤(D成分)の合計含有量が、エポキシ樹脂組成物全体の69〜94重量%であることが必要であり、好ましくは75〜94重量%、特に好ましくは80〜94重量%である。上記合計含有量が少なすぎると、曲げ弾性率や光反射率が劣り、線膨張係数の低減を図ることができず、上記合計含有量が多すぎると、著しい増粘により混練等でのエポキシ樹脂組成物を作製することができなくなる。
【0026】
ここで、上記白色顔料(C成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の2〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは15〜30重量%である。また、上記無機質充填剤(D成分)の含有量は、上述の白色顔料(C成分)および無機質充填剤(D成分)の合計含有量から、上記白色顔料(C成分)の含有量を差し引いた値が好ましい。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、前記A〜D成分とともにシランカップリング剤(E成分)を特定の割合で使用することが特徴である。上記シランカップリング剤(E成分)としては、特段の阻害反応なしに
イソシアヌレート環構造を有するエポキシ樹脂(A成分)と化学的に反応できるという観点から、下記の一般式(1)で表されるシランカップリング剤が好ましい。
【0029】
上記一般式(1)で表されるシランカップリング剤の具体的としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等があげられる。
【0030】
上記シランカップリング剤(E成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の0.01〜2.4重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2.0重量%である。
【0031】
本発明においては、上記シランカップリング剤(E成分)の添加量(Z
2)は、下記の数式(1)で示される表面被覆率が
25〜
150%となるよ
う調整される。表面被覆率が下限未満の添加量では、充分な強度が得られず、上限を超える添加量では、エポキシ樹脂組成物のTgが低下してしまう。
【0032】
なお、本発明において表面被覆率とは、下記の数式(1)で示される値を意味するが、より詳しく説明すると、白色顔料(C成分)および無機質充填剤(D成分)の比表面積の合計と、シランカップリング剤(E成分)の比表面積との比を示す。
【0034】
上記数式(1)において、上記白色顔料(C成分)のBET比表面積(X
1)は、2〜70m
2/gの範囲が好ましく、特に好ましくは5〜60m
2/gの範囲である。また、上記無機質充填剤(D成分)のBET比表面積(Y
1)は、0.1〜10m
2/gの範囲が好ましく、特に好ましくは1〜8m
2/gの範囲である。
【0035】
また、上記シランカップリング剤(E成分)の最小被覆面積(Z
1)は、100〜1000m
2/gの範囲が好ましく、特に好ましくは150〜500m
2/gの範囲である。
【0036】
なお、上記シランカップリング剤(E成分)の最小被覆面積(Z
1)は、下記の数式(2)で表される。
【0038】
上記数式(2)において、上記シランカップリング剤(E成分)の分子量は100〜1000の範囲が好ましく、特に好ましくは100〜500の範囲である。
【0039】
なお、上記数式(1)における上記白色顔料(C成分)の添加量(X
2)、無機質充填剤(D成分)の添加量(Y
2)およびシランカップリング剤(E成分)の添加量(Z
2)は、それぞれ前述したエポキシ樹脂組成物全体に占める含有量(重量%)を満たす範囲が好ましい。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記A〜E成分以外に、必要に応じて、硬化促進剤(F成分)、変性剤、難燃剤、酸化防止剤、脱泡剤、レベリング剤、離型剤等の各種添加剤を適宜配合することができる。
【0041】
上記硬化促進剤(F成分)としては、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアミノベンゼン、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサン等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホニウムジチオエート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、およびこれらの誘導体等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらの中でも、3級アミン類、イミダゾール類、リン化合物を用いることが好ましく、その中でも、着色度が少なく、透明で強靱な硬化物を得るためには、リン化合物を用いることが特に好ましい。
【0042】
上記硬化促進剤(F成分)の含有量は、上記
イソシアヌレート環構造を有するエポキシ樹脂(A成分)に対して0.001〜8.0重量%に設定することが好ましく、特に好ましくは0.01〜3.0重量%である。硬化促進剤(F成分)の含有量が少なすぎると、充分な硬化促進効果を得られない場合があり、硬化促進剤(F成分)の含有量が多すぎると、得られる硬化物に変色が生じる傾向がみられる。
【0043】
上記難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム等の金属水酸化化合物、臭素系難燃剤、窒素系難燃剤、リン系難燃剤等があげられ、さらに三酸化アンチモン等の難燃助剤を用いることもできる。
【0044】
上記変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類、アルコール類等があげられる。
【0045】
上記酸化防止としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、スルフィド系等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、ヒンダードフェノール系を用いることが、耐加熱変色の点で好ましい。
【0046】
上記脱泡剤としては、例えば、シリコーン系等の脱泡剤があげられる。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、上記A〜E成分、場合により硬化促進剤(F成分)、さらに必要に応じて配合される上記各種添加剤を適宜配合した後、混練機を用いて混練して溶融混合し、ついで粉砕することにより粉末状のエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、その硬化物が、下記の曲げ特性を示すことが好ましい。すなわち、曲げ強度は60MPa以上が好ましく、特に好ましくは80MPa以上、最も好ましくは100MPa以上であり、曲げ弾性率は10GPa以上が好ましく、特に好ましくは15GPa以上、最も好ましくは20GPa以上である。
【0049】
上記曲げ強度および曲げ弾性率は、例えば、つぎのようにして測定される。すなわち、厚み4mmのエポキシ樹脂組成物の硬化物を、所定の硬化条件、例えば、175℃×2分間の成形後、175℃×2時間のキュアにて試験片(硬化物)を作製し、JIS−K7171に従って、測定装置(例えば、島津製作所社製のAG−500)用いて常温(20℃±15℃)にて測定することができる。
【0050】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域の線膨張係数が28ppm/K以下が好ましく、特に好ましくは25ppm/K以下、最も好ましくは20ppm/K以下である。
【0051】
上記線膨張係数は、例えば、つぎのようにして測定される。すなわち、厚み5mmのエポキシ樹脂組成物の硬化物を、所定の硬化条件、例えば、175℃×2分間の成形後、175℃×3時間のキュアにて試験片(硬化物)を作製し、2℃/分の昇温速度で測定装置(例えば、島津製作所社製のTMA−50)用いて測定することができる。
【0052】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、光反射率が、波長430〜800nmの領域において80%以上であることが好ましく、特に好ましくは85%以上である。なお、上限は、通常100%である。
【0053】
上記光反射率は、例えば、つぎのようにして測定される。すなわち、厚み1mmのエポキシ樹脂組成物の硬化物を、所定の硬化条件、例えば、150℃×4分間の成形後、150℃×5時間のキュアにて作製し、上記硬化物の反射率を上記範囲内の波長において分光光度計(例えば、日本分光社製の分光光度計V−670)を用いて室温(20℃±15℃)にて測定することができる。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いてなる光半導体装置は、例えば、つぎのようにして製造される。すなわち、金属リードフレームをトランスファー成形機の金型内に設置して上記エポキシ樹脂組成物を用いてトランスファー成形によりリフレクタを形成する。このようにして、光半導体素子搭載領域の周囲を囲んだ状態でリフレクタが形成されてなる光半導体装置用の金属リードフレームを作製する。ついで、上記リフレクタの内部の、金属リードフレーム上の光半導体素子搭載領域に光半導体素子を搭載し、必要に応じてワイヤーボンディングを行なう。このようにして、例えば、
図1に示すような、搭載される光半導体素子2の周囲を囲んだ状態でリフレクタ3が形成された金属リードフレーム1と、その金属リードフレーム1上に搭載された光半導体素子2を備えたユニットである光半導体装置が作製される。金属リードフレーム1上に形成された電極回路(図示せず)と、光半導体素子2とは、ボンディングワイヤー4により電気的に接続されている。上記光半導体装置では、上記光半導体素子2を含むリフレクタ3の内側領域は、シリコーン樹脂等を用いて封止されている。
【0055】
さらに、上記光半導体装置の他の構成を
図2〜
図4に示す。
図2に示す光半導体装置では、光半導体素子2が搭載された金属リードフレーム1a(または基板)の片面のみにリフレクタ3aが形成されており、裏面側は金属リードフレーム1a(または基板)が露出している。また、
図3に示す光半導体装置は、
図1に示す光半導体装置と略同じ構成であるが、リフレクタ3の内側領域の光半導体素子2の周囲の金属リードフレーム1上にもリフレクタ3が形成されている。そして、
図4に示す光半導体装置は、
図2に示す光半導体装置と略同じ構成であるが、リフレクタ3aの内側領域の光半導体素子2の周囲の金属リードフレーム1a(または基板)上にもリフレクタ3aが形成されている。なお、
図2〜
図4に示す光半導体装置の構成において、
図1の光半導体装置と同一の部分には同一の符号を付している。
【0056】
なお、本発明において、上記
図2および
図4に示す光半導体装置では、金属リードフレーム1aに代えて各種基板を用いてもよい。上記各種基板としては、例えば、有機基板、無機基板、フレキシブルプリント基板等があげられる。そして、上記
図2および
図4に示す光半導体装置の金属リードフレーム1aおよび各種基板では、その表面には電極回路(図示せず)が形成されている。
【実施例】
【0057】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
まず、エポキシ樹脂組成物の作製に先立って下記に示す材料を準備した。
【0058】
〔
イソシアヌレート環構造を有するエポキシ樹脂(A)〕
トリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量:100)
【0059】
〔
酸無水物系硬化剤(B)〕
4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(酸当量:168)
【0060】
〔白色顔料(C)〕
ルチル型酸化チタン〔平均粒径:0.21μm、BET比表面積(X
1):9.0m
2/g〕
【0061】
〔無機質充填剤(D)〕
球状溶融シリカ〔平均粒径:22μm、BET比表面積(Y
1):3.2m
2/g〕
【0062】
〔シランカップリング剤(E)〕
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔最小被覆面積(Z
1):330m
2/g〕
【0063】
〔硬化促進剤(F)〕
テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホニウムジチオエート
【0064】
〔実施例1〜7、比較例1〜4〕
下記の表1および表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、ビーカー中で溶融混合を行い、熟成した後、室温(25℃)まで冷却して粉砕することにより粉末状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
このようにして得られた実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物を用い、下記の方法に従って各特性の評価を行った。その結果を上記表1および表2に併せて示した。
【0068】
〔曲げ試験(曲げ強度、曲げ弾性率)〕
上記各エポキシ樹脂組成物を用い、厚み4mm、幅10mm、長さ80mmの試験片を所定の硬化条件(条件:175℃×2分間の成形、および175℃×3時間キュア)にて作製し、この試験片(硬化物)を用いて、JIS−K7171に従って曲げ試験(曲げ強度、曲げ弾性率)を行った。なお、測定装置として島津製作所社製のAG−500を使用して、常温(20℃)で測定した。曲げ強度は60MPa以上、曲げ弾性率は10GPa以上が好ましい。
【0069】
〔線膨張係数(Tg以下の温度領域)〕
上記各エポキシ樹脂組成物を用い、厚み5mm、幅5mm、長さ30mmの試験片を所定の硬化条件(条件:175℃×2分間の成形、および175℃×3時間キュア)にて作製し、2℃/分の昇温速度で測定装置(島津製作所社製のTMA−50)用いて、エポキシ樹脂組成物硬化物のTg以下の温度領域における線膨張係数を測定した。なお、線膨張係数は、28ppm/K以下が好ましい。
【0070】
〔光反射率〕
上記各エポキシ樹脂組成物を用い、厚み1mmの試験片を所定の硬化条件(条件:175℃×2分間の成形、および175℃×3時間キュア)にて作製し、この試験片(硬化物)を用いて、初期の光反射率を測定した。なお、測定装置として日本分光社製の分光光度計V−670を使用して、波長450nmを室温(25℃)にて測定した。なお、光反射率は80%以上が好ましい。
【0071】
上記表の結果から、すべての実施例品は、C成分およびD成分の合計含有量が所定の範囲で、かつ、表面被覆率が所定の範囲となるようシランカップリング剤の添加量が調整されているため、光反射率が良好、かつ、低い線膨張係数と、強度の両立を図ることが確認された。
【0072】
これに対して、比較例1品は、シランカップリング剤を配合していないため、曲げ強度が劣っていた。
比較例2品は、シランカップリング剤の添加量が多く表面被覆率が高すぎるため、エポキシ樹脂組成物が硬化しなかった。
比較例3品は、C成分およびD成分の合計含有量が多すぎるため、著しい増粘により混練が困難となり、エポキシ樹脂組成物を作製することができなかった。
比較例4品は、C成分およびD成分の合計含有量が少なすぎるため、曲げ弾性率が低く、線膨張係数も高かった。
【0073】
つぎに、上記実施例品である微粉末状のエポキシ樹脂組成物を用いて、
図1に示す構成の光半導体発光装置を製造した。すなわち、42アロイ(Agメッキ)製のリードフレーム1をトランスファー成形機に投入し、トランスファー成形(成形条件:175℃×2分間+175℃×2時間キュア)を行なうことにより、
図1に示す、リフレクタ3と、そのリフレクタ3に形成された凹部と、その凹部内に設けられた金属リードフレーム1を製造し、その凹部内に光半導体素子(大きさ:0.3mm×0.3mm)2を搭載し、金属リードフレーム1に形成された電極回路と光半導体素子2とをボンディングワイヤー4にて電気的に接続したものを準備した。最後に液状シリコーン封止剤を注ぎ、キュアすることで、
図1に示す、リフレクタ3と、そのリフレクタ3に形成された凹部と、その凹部内に設けられた金属リードフレーム1と、その金属リードフレーム1上に搭載された光半導体素子2を備えたユニットとなる光半導体発光装置を製造した。得られた光半導体発光装置は問題の無い良好なものが得られた。