(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764434
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】照明装置及びこれを備えるカラー表示装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20060101AFI20150730BHJP
F21V 7/22 20060101ALI20150730BHJP
F21V 9/08 20060101ALI20150730BHJP
F21V 9/16 20060101ALI20150730BHJP
F21V 3/04 20060101ALI20150730BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20150730BHJP
F21Y 101/02 20060101ALN20150730BHJP
【FI】
F21S2/00 431
F21V7/22 240
F21V9/08
F21V9/16 100
F21V3/04 500
G02F1/13357
F21Y101:02
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-184377(P2011-184377)
(22)【出願日】2011年8月26日
(65)【公開番号】特開2012-84512(P2012-84512A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2014年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-207087(P2010-207087)
(32)【優先日】2010年9月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】森原 崇文
(72)【発明者】
【氏名】栗原 慎
(72)【発明者】
【氏名】出島 範宏
【審査官】
柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−287073(JP,A)
【文献】
特開2007−180022(JP,A)
【文献】
特開2009−229933(JP,A)
【文献】
特開2003−248218(JP,A)
【文献】
特開2006−338901(JP,A)
【文献】
特開2009−251352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 3/04
F21V 7/22
F21V 9/08
F21V 9/16
G02F 1/13357
F21Y 101/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色発光素子と黄色蛍光体を用いて擬似白色光を発する光源と、
前記光源から入射した光を出射面から出射する導光体と、
前記光源からの光のうち、550nm〜620nmの波長領域の光を吸収し、それ以外の波長領域の可視光を透過する波長選択層と、を備え、
前記光源が、青色発光ピークの高さを1とした場合に黄色発光ピークの高さが0.28以上である発光スペクトルを持つ黄色味LEDであることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記青色発光素子は、450nm以下の波長領域に発光ピークを持つことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記光源が、色度x=0.29以上,色度y=0.27以上の色度xyを持つ黄色味LEDであることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記波長選択層には、590nmに吸収ピークを持つ色吸収色素が含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記波長選択層が、アザポルフィリン系、シアニン系、スクアリリウム系、フタロシアニン系のいずれかの色素を含むことを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記導光体の出射面上に拡散フィルムを備え、前記波長選択層が前記拡散フィルムに設けられたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記拡散フィルムは、透明基材と、前記透明基材の上面に設けられた拡散層と、前記透明基材の下面に設けられた密着防止層を備え、
前記波長選択層が前記密着防止層の下面に設けられたことを特徴とする請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記拡散フィルムは、透明基材と、前記透明基材の上面に設けられた拡散層と、前記透明基材の下面に設けられた密着防止層を備え、
前記密着防止層と前記拡散層の少なくとも一方に前記色吸収色素を混合することにより前記波長選択層として機能させたことを特徴とする請求項6に記載の照明装置。
【請求項9】
前記波長選択層には、490nm±20nmに吸収ピークを持つ第二の色吸収色素、または青色光を励起光として530nm±20nmに発光ピークを持つ緑色光を発光する緑蛍光材、または青色光を励起光として630nm±20nmに発光ピークを持つ赤色光を発光する赤蛍光材のいずれか1つが波長変換材として含まれたことを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記波長選択層が、前記光源と前記導光体の間に設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項11】
青色発光素子と黄色蛍光体を用いて擬似白色光を発する光源と、
前記光源から入射した光を出射面から出射する導光体と、
前記光源からの光のうち、550nm〜620nmの波長領域の光を吸収し、それ以外の波長領域の可視光を透過する波長選択層と、
前記出射面の上方に配置され、RGBのカラーフィルタを持つ非自発光型の表示素子を備え、
前記光源が、青色発光ピークの高さを1とした場合に黄色発光ピークの高さが0.28以上である発光スペクトルを持つ黄色味LEDであり、
前記波長選択層が、前記光源と前記表示素子の間の光路内に設けられたことを特徴とするカラー表示装置。
【請求項12】
前記表示素子のB(青色)フィルタに入光する光量をG(緑色)フィルタとR(赤色)フィルタに入光する光量より減らすことにより、該カラー表示装置の色味を黄色味にすることを特徴とする請求項11に記載のカラー表示装置。
【請求項13】
前記青色発光素子は、450nm以下の波長領域に発光ピークを持つことを特徴とする請求項11または請求項12に記載のカラー表示装置。
【請求項14】
前記光源が、色度x=0.29以上,色度y=0.27以上の色度xyを持つ黄色味LEDであることを特徴とする請求項13に記載のカラー表示装置。
【請求項15】
前記波長選択層には、590nmに吸収ピークを持つ色吸収色素が含まれることを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載のカラー表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面発光型の照明装置に関し、特に、光源に擬似白色LEDを用いた照明装置及びこれを備えるカラー表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やモバイルコンピュータ等に、少ない消費電力で、高精彩カラー画像を表示できる液晶表示装置が用いられている。液晶表示装置には、それ自体は発光しない非自発光型の表示素子を用いて画像が表示されるため、照明装置が必要となる。特に、携帯電話の液晶表示装置では、擬似白色LEDを光源としたバックライトが照明装置として広く用いられている。擬似白色LEDは、青色光を発光するLEDと青色光で励起され黄色光を蛍光する黄色蛍光体を分散した樹脂を組み合わせた構成である。LEDが発光する青色光と蛍光体によって波長変換された黄色光とは補色の関係にあるので、この2種類の光が混色すると擬似的な白色光が得られる(例えば、特許文献1の
図1を参照)。そして、液晶表示装置は、この擬似白色LEDから発光された光と、液晶パネル内に設けられたRGBのカラーフィルタと、液晶素子のスイッチング機能を利用して、カラー画像を表示する仕組みになっている。
【0003】
さらに、このような擬似白色LEDを用いた表示装置で、カラーフィルタで吸収される波長の光によって励起し、カラーフィルタを透過する波長の光を発光する蛍光体を、導光体の出射面と表示パネルの間に設けて、光源からの光の利用効率を向上させることが知られている(例えば、特許文献2の
図1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−107325号公報
【特許文献2】特開2006−338901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の擬似白色LEDでは、青色光と黄色光を混色して白色光を得ているが、その波長分布は450nm前後をピークとする波長範囲が狭小な青色光と560nm付近をピークとするブロードな黄色光で構成されている。
図11に、液晶パネル用カラーフィルタの分光透過率を示す。一般に、液晶パネルに用いられるRGBのカラーフィルタが透過する波長のピークは、青(B)が450nm、緑(G)が530nm、赤(R)が600nmである。このRGBのカラーフィルタはピーク波長の光のみ透過するのではなく、ピーク波長の前後の光も透過する特性を持っている。そのため、青と緑のフィルタの中間波長領域480nm〜510nmの光は、青フィルタからも緑フィルタからも透過し、緑と赤のフィルタの中間波長領域570nm〜590nm付近の光は、緑フィルタからも赤フィルタからも透過する。これら2種類の中間波長領域の光が照明光に含まれる場合、表示装置の色再現性は低下してしまう。RGBの各カラーフィルタの透過特性が重複しないようにすれば、不要な中間波長領域を含まず高い色再現性を維持できる。しかし、そのためにはカラーフィルタの厚みを厚くする、カラーフィルタに使用する顔料を変更する必要があり、既存の製造工程の変更や照明光の利用効率の低下などの問題が生じる。
【0006】
また、より簡便な対策としては、RGBの各波長に発光ピークを持つ三波長LEDと呼ばれる光源を用いた照明装置を使用する方法がある。三波長LEDは青色発光素子を励起光とし、緑色光を発光する緑蛍光体と赤色光を発光する赤蛍光体をLEDパッケージにまとめたものが代表的である。この三波長LEDは青色発光素子からの光を、緑蛍光体と赤蛍光体のそれぞれが励起光として使用するため、黄色蛍光体1種類を使用する擬似白色LEDと比較して発光効率が低いという問題点がある。そのため、三波長LEDを照明装置の光源として使用した場合、輝度の点で擬似白色LEDに大きく劣ってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、擬似白色LEDを用いた照明装置の発光分布を、三波長LEDを用いた照明装置の発光分布に近づけることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
照明装置の光源に青色発光素子と黄色蛍光体を含む擬似白色LEDを使用し、光源と照明装置の照射面の光路中に、特定波長(550nm〜620nm)の光を吸収する波長選択層を設ける。波長選択層には、特定波長(550nm〜620nm)の光を吸収する色吸収色素が含まれており、この色素として、アザポルフィリン系、シアニン系、スクアリリウム系、もしくはフタロシアニン系の色素が例示できる。
【0009】
さらに、光源の擬似白色LEDには黄色味のLEDを用いてもよい。これにより、波長選択層のために、青色側に色調が変化するのを防ぐことができる。
【0010】
さらに、480nm〜510nmの波長光を減少するために、発光ピーク波長が450nm以下の青色発光素子を擬似白色LEDに用いてもよい。
【0011】
また、本発明の表示装置は、上述のいずれかの構成の照明装置の上方に、RGBで構成されたカラーフィルタを備える非自発光型の表示素子を配置する構成とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の照明装置は、特定波長(550nm〜620nm)の光を吸収する波長選択層が設けられているので、緑色領域と赤色領域の中間の波長領域がカットされる。これにより、擬似白色LEDを用いた照明装置の発光分布を、三波長LEDを用いた照明装置の発光分布に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1のカラー表示装置の断面構成を示す模式図である。
【
図2】実施例1に用いた波長選択フィルムの断面構成を示す模式図である。
【
図3】擬似白色LEDの分光スペクトルを示す図表である。
【
図4】実施例1で用いた波長選択フィルムの分光透過率を示す図表である。
【
図5】実施例1の照明装置の出射光の分光スペクトルを示す図表である。
【
図6】実施例2で用いた波長選択フィルムの断面構成を示す模式図である。
【
図7】実施例2で用いた波長選択フィルムの断面構成を示す模式図である。
【
図8】実施例3のカラー表示装置の断面構成を示す模式図である。
【
図9】実施例4で用いた波長選択フィルムの断面構成を示す模式図である。
【
図10】実施例4で用いた波長選択フィルムの断面構成を示す模式図である。
【
図11】液晶パネルのRGBカラーフィルタの分光透過率を示す図表である。
【
図12】透過型液晶パネルの断面構成を示す模式面図である。
【
図13】実施例5のカラー表示装置の分光スペクトルを示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の照明装置は、青色発光素子と黄色蛍光体を用いて擬似白色光を発する光源と、光源からの光を出射面に導いて出光させる導光体を備える。さらに、光源からの光のうち550nm〜620nmの波長領域を吸収し、それ以外の可視光の波長領域の光を透過する波長選択層が設けられる。波長選択層は590nm付近に最大吸収ピークを持つ色吸収色素を含んでいる。このような色素として、アザポルフィリン系、シアニン系、スクアリリウム系、もしくはフタロシアニン系の色素が例示できる。このような構成により、緑色領域と赤色領域の中間の波長領域がカットされるため、擬似白色LEDの照明装置の発光分布を、三波長LED型の照明装置の発光分布に近づけることができる。導光体の出射面上に拡散フィルムが設けられた構成では、この波長選択層をこの拡散フィルムに設けることができる。
【0015】
ここで、擬似白色LEDに含まれる黄色蛍光体を通常より多くすることが好ましい。色吸収色素は590nm付近に最大吸収ピークを持っているため、発光色が青み方向にシフトしてしまう。そこで、黄色蛍光体の含有量が多い黄色味LEDを光源に用いると、波長選択層により青み方向へシフトした色味を元の方向に戻すことができる。
【0016】
さらに、緑色領域と青色領域の中間波長領域をカットするために、擬似白色LEDに発光ピーク波長が450nm以下の青色発光素子を用いることが好ましい。このような構成により、波長480nm〜510nmの光を減らすことができるため、擬似白色LEDの照明装置の発光分布を、三波長LED型の照明装置の発光分布にさらに近づけることができる。
【0017】
また、本発明の表示装置は、上述の構成の照明装置の出射面側にRGBカラーフィルタを持つ非自発光型の表示素子が配置された構成であり、光源から表示素子までの光路中のどこかに波長選択層が設けられている。これにより、表示素子のカラーフィルタのRとGの中間の波長領域に発光スペクトルを持たない照明装置を用いることになるので、輝度・色味を犠牲にせずに、表示素子の色再現性を向上させることができる。
【0018】
さらに、表示素子のB(青色)フィルタに入光する光量を、G(緑色)フィルタ及びR(赤色)フィルタに入光する光量より減らすことにより、該カラー表示装置の色味を黄色側にすることができる。このとき、青色発光素子に、450nm以下の波長領域に発光ピークを持つLEDを用いても良い。また、光源として、色度x=0.29以上,色度y=0.27以上の色度xyを持つ黄色味LED、または、青色発光ピークの高さを1とした場合に黄色発光ピークの高さが0.28以上である発光スペクトルを持つ黄色味LEDを用いても良い。また、波長選択層に、590nmに吸収ピークを持つ色吸収色素を含ませても良い。
【0019】
以下に、表示素子として液晶パネルを用いたカラー表示装置の実施例について、図面を用いて具体的に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本実施例のカラー表示装置の断面構成を示す模式図である。図示するように、照明装置の導光板4の照射面上に波長変換フィルム1を介して液晶パネル2が配置されている。ここでは、照明装置と液晶パネル2の間に一対のプリズムシート6が設けられている。波長変換フィルム1には、550nm〜620nmの波長領域を吸収し、残りの波長領域を透過する波長選択層が設けられている。光源3は、YAG等の黄色蛍光体を混合した樹脂を青色LEDにポッティングした構成の擬似白色LEDである。導光体4は、光源3からの入光を導いて出光面から出射させて面発光する。ポリカーボネート、アクリル、ゼオノアやアートン等の透明樹脂剤を射出成型することによって導光体4を形成する。光源3からの光が導光体4の内部に効率良く入光するために、導光体4の入光面に光を散乱させる微細なプリズム加工を施してもよい。さらに、導光体4からの出光効率を高めるため、導光体4の出光面に拡散処理を施したり、プリズムを形成したりしてもよい。また、導光体の裏面(すなわち、出光面と反対側の面)には、光学設計に基づいて反射体が配置され、出光面の輝度分布が均一になるように設計されている。さらに、導光体4の裏面側に反射板5が配置されている。反射板5は導光体4から一度漏れた光を再度導光体側に戻すため、光の利用効率が向上する。ここでは、銀やアルミを蒸着した反射板5を用いて正反射させてもよいし、反射板5に白色PET等を用いて拡散反射させてもよい。一般的に、小型の製品には銀反射板を、大型の製品には白色PETを用いることが多い。より反射効率を高めるために誘電体多層膜で形成された反射板を使用してもよい。
【0021】
導光体4から出光した光は、波長選択フィルム1とプリズムシート6を通って液晶パネル2を正面から照らす。波長選択フィルム1を通過した光は、光源3から発光された光に比べ550nm〜620nmの波長領域の成分が減少している。このように、照明装置から出射された光は液晶パネル2を通り、画像の表示がなされる。
図1には示されていないが、液晶パネル2を構成する一方の基板には、青色光を透過する着色層、緑色光を透過する着色層、赤色光を透過する着色層で構成されたカラーフィルタが形成されている。
【0022】
図2に、波長選択フィルム1の断面構成を模式的に示す。波長選択フィルム1は、拡散フィルム8と波長選択層7で構成される。拡散フィルム8はPET等の透明基材10の表面に拡散層11が設けられた構成である。拡散層11は液晶パネル2に対向するように配置される。拡散層11は、透明な樹脂に1〜30μm程度の直径のアクリルやシリカ等のビーズを分散したインクをコーター等で印刷して作製される。さらに、拡散フィルム8には、拡散層11が設けられた面と反対の面に、貼りつき防止のための密着防止層12が形成されている。図示するように、この密着防止層12の表面に波長選択層7が形成されている。
【0023】
波長選択層7は光吸収色素が微量添加された樹脂であり、特定波長(550nm〜620nm)の光を吸収し、これ以外の波長領域を透過する。ここでは、波長選択層7に透明ビーズ9が混合されている。光吸収色素は590nm付近に最大吸収ピークを持ち、本実施例ではアザポルフィリン系色素を用いた。色素を混合する樹脂には透過率90%以上の高い透明性を有することが望ましく、アクリル系の樹脂が適している。透明ビーズ9は、直径1〜30μm程度のアクリルやシリカ等のビーズであり、導光体4と波長選択層7の密着防止のために設けられている。透明ビーズ9の樹脂内の含有量は、樹脂固形分に対して0.5%程度が望ましい。
【0024】
本実施例の波長選択層7を用いた波長選択フィルム1の分光透過率を
図4に示す。本実施例の波長選択層7は590nm付近に最大吸収ピークを持つアザポルフィリン系色素を含んでいるため、波長選択フィルム1は590nm付近の光を吸収する。そのため、波長選択フィルム1を介すると青みがかった色に観察される。そこで、一般的な擬似白色LEDよりも黄色蛍光体を多く含んだ樹脂を用いてポッティングした黄色味LEDを光源として用いることとした。その場合、黄色蛍光体の使用量が多いため、一般的な擬似白色LEDよりも560nm付近をピークとする黄色光スペクトルが多くなる。そのため、波長選択フィルム1により青み方向へシフトした色味を元の方向に戻すことができる。また、人間が感じる波長毎の明るさを示した比視感度曲線は約550nmをピークとしたガウス分布であり、ピークに近い黄色光スペクトルが多い方が明るく感じられる。したがって、波長選択フィルム1の吸収により損失した輝度を、黄色味LEDの輝度上昇効果が補うこととなる。
【0025】
ここで、擬似白色LEDの分光スペクトルを
図3に示す。一般的な擬似白色LEDの分光スペクトルをスペクトルAに、本実施例で使用する擬似白色LEDの分光スペクトルをスペクトルBに示す。本実施例で使用した擬似白色LEDは、スペクトルAで示した従来の擬似白色LEDとは以下の2点で大きく異なっている。一つは、発光ピークが450nm以下の青色発光素子を用いている。そのため、緑色領域と青色領域の中間の波長成分を減少させることができる。すなわち、480nm〜510nmの光をカットするため、照明装置の発光分布を、三波長LED型の照明装置の発光分布にさらに近づけることができる。このような構成の擬似白色LEDは、黄色蛍光体の使用量が多いため、一般的な擬似白色LEDよりも560nm付近をピークとする黄色光成分が多くなっている。擬似白色LEDの色度が、色度x=0.29以上、色度y=0.27以上となるように、黄色蛍光体の量を設定することが望ましい。もしくは擬似白色LEDの分光スペクトルが、青色発光ピークの高さを1としたときに黄色発光ピークの高さが0.28以上となるように、黄色蛍光体の量を設定することが望ましい。なお、本実施例で使用した擬似白色LEDは、色度座標上で色度x=0.31、色度y=0.30である。
【0026】
本実施例では、
図3のスペクトルBで示した分光スペクトルの擬似白色LEDと
図4に示した透過特性の波長選択フィルム1を組み合わせて照明装置を形成している。この照明装置の分光スペクトルを
図5に示す。図示するように本実施例の照明装置の分光スペクトルは、440nm、530nm、620nmに発光波長のピークがあり、青色と緑色の中間の波長領域480nm〜510nm、及び緑色と赤色の中間の波長領域570nm〜590nm付近のスペクトル光が低減している。この照明装置にカラーフィルタを持つ液晶パネルを搭載すると、
図5のスペクトル光が、青,緑,赤の各カラーフィルタを透過するため、表示装置の色再現性を向上させることができる。以上のような構成により、従来の表示装置と同等の輝度,色度を維持したまま、色再現性を向上させることができる。
【実施例2】
【0027】
本実施例は、波長選択フィルム1の構成が実施例1と異なっている。それ以外は、実施例1と同様であるため、重複する説明は省略する。
図6、
図7に本実施例で用いた波長選択フィルム1の断面構成を模式的に示す。
図6に示した波長選択フィルム1は、透明基材10の表面に設けられた拡散層11に色吸収色素17を混合させ、波長選択層として機能させている。
図7に示した波長選択フィルム1は、透明基材10の裏面に設けられた密着防止層12に色吸収色素17を混合させ、波長選択層として機能させている。どちらも機能的には
図2に示した波長選択フィルム1と同等であるが、波長選択層7を独立して設けない分、厚みを増加せずに波長選択フィルムを構成できる。また波長選択層を印刷する工程が必要ないので、工数を増やすことがなく、既存の拡散フィルム製造工程をそのまま利用できる。本実施例の構成により、既存の拡散フィルムと寸法上でも差異がない波長選択フィルムを実現でき、実施例1と同様の特性で実施例1より薄い表示装置が実現できる。このとき、拡散層11と密着防止層12の両層に色吸収色素17を分散させてもよい。
【実施例3】
【0028】
本実施例の表示装置の断面構成を
図8に模式的に示す。本実施例では、波長選択フィルムの配置位置が実施例1や実施例2と異なり、光源3と導光体4の間に波長選択フィルム1が設けられている。それ以外の構成は、実施例1や実施例2と同様に適用できるため、重複する説明は省略する。光源3から出る光のほぼ全ては入光面から導光体4に入るため、光源3と導光体4の間は光路が最も集中する場所となる。この場所に波長選択フィルム1を置くことにより、光源3からの光を効率良く波長選択フィルム1に照射させることができ、余分な波長領域が含まれない照明光を得ることができる。すなわち、本実施例では、液晶パネル2に照射される光には、液晶パネル2に用いられるカラーフィルタの各色の中間の波長領域が、できる限り含まれないようにできる。そのため、色再現性の高い表示装置が実現できる。
【0029】
図2の波長選択フィルム1では、拡散フィルム8の透明基材10を基材フィルムとして利用したが、光源3からの光を導光体4へ効率良く導くためには、波長選択フィルム1の基材フィルムにはヘイズの低い基材を使用した方が良い。波長選択フィルム1の基材フィルムとして、光を集光されるレンズ効果を持ったプリズムフィルムなどを用いることにより、より効率良く導光体4へ光を入射させることができる。
【実施例4】
【0030】
本実施例で、波長選択フィルムの構成が実施例1と異なっている。その他の基本的な構成は同様であるため、重複する説明は適宜省略する。
図9、
図10に本実施例で用いた波長選択フィルム1の断面構成を模式的に示す。本実施例では、波長選択層7に波長変換材20を分散させている。波長選択層7は550nm〜620nmに吸収ピークを持つ色吸収色素を含んでおり、さらに波長変換材20が分散されている。このような構成によれば、液晶パネルに照射される光の色味を修正することができる。修正したい内容に応じて添加する波長変換材の種類を選択すればよい。
図9は、波長変換材20として490nm付近(490±20nm)の波長を吸収する第二の色吸収色素を使用した波長選択フィルムの構成を示している。この構成では490nm付近の波長が吸収されるため、黄色方向へシフトすることとなる。
図10は、波長変換材20として青色光を励起光として530nm付近(530±20nm)に発光ピークを持つ緑蛍光材を使用した波長選択フィルムの構成を示している。この構成によれば、緑色方向へシフトすることとなる。また、
図10と同様の構成で、波長変換材20として青色光を励起光として630nm(630±20nm)付近に発光ピークを持つ赤蛍光材を使用してもよい。この構成によれば、赤色方向にシフトさせることができる。さらに、波長変換材20と波長選択層の色吸収色素との分量比を調整することにより、所望する色度を持った照明装置が得られる。
【0031】
ここで、490nm付近に吸収ピークを持つ色吸収色素としてシアニン系色素が挙げられる。530nm付近に発光ピークを持つ緑蛍光材料として、II族金属チオガレートと希土類ドーパントとからなる蛍光材、酸化物蛍光体と希土類ドーパント、Sr−SIONと希土類ドーパント、2,1,4,組成のシリケート蛍光体、あるいは、有機系の蛍光体が挙げられる。630nm付近に発光ピークを持つ赤蛍光材料として、CaSやSrS等の硫化物や、酸化物、俗にカズンと呼ばれる蛍光体、あるいは、有機系の蛍光体が挙げられる。これらの波長変換材は、色吸収色素の場合は液晶パネルのカラーフィルタの中間波長領域に吸収ピークを持ち、蛍光材は液晶パネルのカラーフィルタの透過領域に発光ピークを持つため、色再現性に影響を及ぼさない。
【0032】
本実施例の構成により、高い色再現性を維持した状態で表示装置の色味が調整可能な表示装置を実現できる。ここでは実施例1の波長選択フィルム1の構成で説明したが、実施例2、実施例3と同様の形態に適用できることは言うまでもない。
【実施例5】
【0033】
実施例4では、波長選択層により生じる色シフトを、バックライト側で補正したが、本実施例では、波長選択層により生じる色シフトを液晶パネル側で補正することとした。
図12に、液晶パネルの断面構成を模式的に示す。携帯電話等に用いられる一般的な液晶パネルはTFT方式の透過型液晶パネルであり、上偏光板31、上ガラス32、上電極層33、カラーフィルタ層34、液晶層35、下電極層36、下ガラス37、下偏光板38で構成されている。下電極層36には液晶層35を制御するTFT素子が各表示画素に対応するように設けられており、上電極層33と下電極層36の間で電圧を印加することにより液晶層35の状態を制御し、各表示画素を透過する光量が制御される。液晶層35で調整された光はカラーフィルタ層34へ入光される。カラーフィルタ層34は、R(赤色)G(緑色)B(青色)の三色のフィルタと各色フィルタ間のブラックマトリクスで構成されており、各色のフィルタに入光する光を液晶層35で調整することにより、様々な色を表現することができる。
【0034】
この3色のフィルタのうち、Bフィルタの透過光量を抑制することにより、波長選択層の影響による青味よりにシフトした表示装置の色味を、黄色味側にシフトさせ、適正な色味に調整することができる。ノーマリーブラックの場合を具体的に説明すると、Bフィルタの位置に対応する液晶層(表示画素)に対して供給する印加電圧を、GフィルタとRフィルタに対応する液晶層に供給する印加電圧より小さくすることにより、液晶分子のねじれ変化量を少なくし、透過する光量を少なくする。このように、Bフィルタへの入光量を減らすことにより、表示画像から青味成分を減らすことができる。
【0035】
図13は青成分調整の実施有無による表示装置の分光スペクトルを比較したグラフである。
図13は青成分の透過光量を85%に抑制したものであり、表示装置の分光スペクトルの青色成分が低減し、
図13内に併記した色度値も青味よりの白色であったのが黄色味方向にシフトして改善されている。また、輝度値は約2%程度しか低下しておらず、測定誤差レベルの影響である。これは前述した比視感度曲線が約550nmをピークとしたガウス分布であることに関係しており、青成分が450nm付近であるため輝度への影響が小さいためである。この方法はGフィルタやRフィルタにも適用できるが、青成分と比較して輝度への影響が大きいため、影響が許容されるかどうかを判断する必要がある。
【0036】
本実施例の構成により、従来の液晶表示装置と同等の輝度,色度を維持したまま、波長選択層により色再現性を向上させた表示装置を実現できる。
なお、本実施例は、前述の実施例1〜3で説明した構成の場合にも適応できる。
【符号の説明】
【0037】
1 波長選択フィルム
2 液晶パネル
3 光源
4 導光体
5 反射フィルム
6 プリズムシート
7 波長選択層
8 拡散フィルム
9 透明ビーズ
10 透明基材
11 拡散層
12 密着防止層
13 波長変換層
17 色吸収色素
20 波長変換材
31 上偏光板
32 上ガラス
33 上電極層
34 カラーフィルタ層
35 液晶層
36 下電極層
37 下ガラス
38 下偏光板