(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可変抵抗部移動機構は、前記熱抵抗が第1熱抵抗である第1熱抵抗状態と、前記第1熱抵抗とは異なる第2熱抵抗である第2熱抵抗状態とに切り替える制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の熱発電携帯機器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術に係る熱発電腕時計においては、人体の腕に装着された後に熱発電腕時計全体の温度が飽和するように熱的平衡状態に向かい変化することに伴い、熱発電素子の発熱側の温度と放熱側の温度との温度差が小さくなり、熱発電素子の発電電圧が低下することで所望の発電量を確保することができなくなると共に、発電効率が低下してしまうという課題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、生体への装着状態において発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能な熱発電携帯機器および熱発電携帯機器の発電制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の手段を提供する。
本発明の熱発電携帯機器は、熱源と放熱先との温度差に基づき発電する熱発電素子と、熱源と放熱先との間の伝熱経路の一部である可変抵抗部を移動させる可変抵抗部移動機構と、を備え、可変抵抗部移動機構は、温度変化によって形状変化を起こす熱変形部を有し、形状変化によって可変抵抗部を移動させ、可変抵抗部の配置場所における熱抵抗を制御することを特徴とする。
かかる特徴によれば、熱源側位置の温度と放熱先側位置の温度が接近して発電効率が低下した際に、可変抵抗部の熱抵抗を変化させることで生体から放熱先への伝熱が一時的に低下し、上記両位置での温度を離反させることができ、その後伝熱を再開することで熱発電素子の発電効率を回復することが可能となる。
【0007】
また、本発明の熱発電携帯機器は、可変抵抗部移動機構は、熱抵抗が第1熱抵抗である第1熱抵抗状態と、第1熱抵抗とは異なる第2熱抵抗である第2熱抵抗状態とに切り替える制御を行うことを特徴とする。
かかる特徴によれば、熱源と放熱先との間の伝熱経路での温度分布を変更して、熱発電素子の熱源側位置と放熱先側位置との間に、熱源と放熱先との間の所定の温度差に基づく所望の大きさの温度差を確保することができる。これにより、所望の発電電圧および発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することが可能となる。
【0008】
また、本発明の熱発電携帯機器は、可変抵抗部移動機構は、熱源側熱変形部と放熱先側熱変形部とを有し、熱源と熱源側熱変形部とは、熱源側熱変形部支持部を介して接続され、熱源側熱変形部と放熱先側熱変形部とは、変形部間接続部を介して接続され、放熱先側熱変形部は、可変抵抗部と接続されていることを特徴とする。
かかる特徴によれば、生体の温度によって熱源側熱変形部が変形し、放熱先の温度によって放熱先側熱変形部が変形するため、可変抵抗部移動機構は両変形量の差分を利用することで、生体と放熱先の温度差に対応した移動量を実現することができ、熱発電素子の発電効率に直接相関のある移動動作をすることで、熱発電素子の発電効率を高めることが可能となる。
【0009】
また、本発明の熱発電携帯機器は、熱変形部は金属を有し、形状変化は金属の熱膨張であることを特徴とする。
かかる特徴によれば、温度変化による形状変化の特性が詳しく知られている上に安価に入手できる材料を利用して高性能な熱発電携帯機器を実現することが可能となる。
【0010】
また、本発明の熱発電携帯機器は、熱変形部はバイメタルを有し、形状変化は、バイメタルの変形であることを特徴とする。
かかる特徴によれば、わずかな温度変化に対して大きな形状変化を起こす特性を利用して高精度に制御した熱発電が可能となる。
【0011】
また、本発明の熱発電携帯機器は、熱源側熱変形部と放熱先側熱変形部とは、ともにバイメタルを有するぜんまいであり、両ぜんまいは、一つの回転軸を共有して接続され、温度が変化した際に回転軸に対して互いに反対方向に回転する力を発生するものであることを特徴とする。
かかる特徴によれば、生体あるいは放熱先の温度ではなく両者の温度差に基づく制御ができ、温度差で発電するという熱発電素子の原理に対応した高性能な熱発電携帯機器を実現することが可能となる。
【0012】
また、本発明の熱発電携帯機器は、熱源側熱変形部と放熱先側熱変形部は、ともにバイメタルを有するぜんまいであり、熱源側熱変形部は、回転軸周りに回転可能であり、回転軸は、放熱先側熱変形部を固定し、放熱先側熱変形部は、回転体を固定し、回転体は、回転軸周りに回転可能であり、可変抵抗部を固定し、両ぜんまいは、温度が変化した際に回転軸に対して互いに反対方向に回転する力を発生するものであることを特徴とする。
かかる特徴によれば、生体の温度と放熱先の温度との差に自動的に対応した制御ができる上に、それぞれのぜんまいが常に平衡位置に居るため力がかかっていない状態を維持することができ、ぜんまいの信頼性が高くなることから熱発電携帯機器自体の信頼性も高めることが可能となる。
【0013】
また、本発明の熱発電携帯機器は、熱変形部は、気体を封止した気体封止部を有し、形状変化は、気体封止部の変形であることを特徴とする。
かかる特徴によれば、熱変形部が軽くなることによって熱発電携帯機器を軽量化することが可能となる。
【0014】
また、本発明の熱発電携帯機器は、可変抵抗部は、回転軸周りに回転可能または所定方向にスライド移動可能であり、回転またはスライド移動に伴って、伝熱経路に対する干渉の有無または伝熱経路に干渉する位置が変化することによって、熱抵抗が変更することを特徴とする。
かかる特徴によれば、回転軸周りに回転可能または所定方向にスライド移動可能な可変抵抗部を備えるだけで、機器構成が複雑化することを抑制しつつ、可変抵抗部の配置場所における熱抵抗を容易に変更することが可能となる。
【0015】
また、本発明の熱発電携帯機器は、可変抵抗部は、板状部材であり、板状部材は、伝熱経路に交差可能であることを特徴とする。
かかる特徴によれば、例えば適宜の熱抵抗を有する板状部材による伝熱経路に対する交差状態の有無によって、あるいは、例えば位置に応じて異なる熱抵抗を有する板状部材による伝熱経路に対する交差位置の変化によって、可変抵抗部の配置場所における熱抵抗を変更することが可能となる。
【0016】
また、本発明の熱発電携帯機器は、可変抵抗部は、回転軸の軸心に対して点対称な形状を有することを特徴とする。
かかる特徴によれば、可動部材の回転性を向上させることができ、回転に伴う伝熱経路に対する干渉の有無あるいは回転に伴う伝熱経路に対する干渉の位置の変化を容易に生じさせることができ、可変抵抗部の配置場所における熱抵抗を容易に変更することが可能となる。
【0017】
また、本発明の熱発電携帯機器は、可変抵抗部は、回転軸の軸心に対して非点対称な形状を有することを特徴とする。
かかる特徴によれば、例えば重力の作用による可動部材の回転性を向上させることができ、回転に伴う伝熱経路に対する干渉の有無あるいは回転に伴う伝熱経路に対する干渉の位置の変化を容易に生じさせることができ、可変抵抗部の配置場所における熱抵抗を容易に変更することが可能となる。
【0018】
また、本発明の熱発電携帯機器の発電制御方法は、熱発電素子による発電時に可変抵抗部の配置場所における熱抵抗を変更し、変更後に可変抵抗部の配置場所における熱抵抗を変更前の値に向かい変更することを特徴とする。
かかる特徴によれば、生体に装着された熱発電携帯機器が熱的平衡状態に向かい変化することに伴い、熱発電素子の熱源側位置と放熱先側位置との間の温度差および熱発電素子の発電電圧が低下した場合であっても、熱発電素子の熱源側位置と放熱先側位置との間の温度差を再度増大させることができる。
これにより、所望の発電電圧および発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
熱発電携帯機器において、機器の生体への装着状態での発電効率を維持し、所望の発電量を確保するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る熱発電携帯機器の断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る熱発電携帯機器のムーブメントの構成図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る熱発電携帯機器の熱変形部が変形した際の断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る熱発電携帯機器の熱抵抗モデルである。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る熱発電携帯機器が生体に装着された以後における熱発電素子の熱源側位置の温度と放熱先側位置の温度との間に生じる温度差ΔTpの変化の一例を示すグラフ図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る熱発電携帯機器が生体に装着された以後における、導熱性可動部材の場所の熱抵抗と、熱発電素子の熱源側位置の温度と放熱先側位置の温度との間に生じる温度差ΔTpの変化とを示す図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る熱発電携帯機器のうち、導熱性可動部材22の一部と熱変形部19の一部、及びムーブメント18の一部の断面を示す図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る熱発電携帯機器のうち、熱源側導熱部材21から導熱性可動部材22の一部とその周辺部の断面を示す図である。
【
図9】本発明の第4の実施形態に係る熱発電携帯機器60の構造を示す図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係る熱発電携帯機器60の構造を示す図である。
【
図11】本発明の第5の実施形態に係る熱発電携帯機器70の構造を示す図である。
【
図12】本発明の第5の実施形態に係る熱発電携帯機器70の構造を示す図である。
【
図13】本発明の第6の実施形態に係る熱発電携帯機器80の構造を示す図である。
【
図14】本発明の第7の実施形態に係る熱発電携帯機器90の構造を示す図である。
【
図15】本発明の第8の実施形態に係る熱発電携帯機器のうち、導熱性可動部材100から熱源側導熱部材103までの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る熱発電携帯機器について
図1から5を参照しながら説明する。
本実施の形態による熱発電携帯機器10は、例えば人体の腕に装着される腕時計であって、
図1に示すように、筐体11と、枠体12と、カバーガラス13と、裏蓋14と、保持部材15と、文字盤16と、指針部17と、ムーブメント18と、熱変形部19と、熱発電素子20と、熱源側導熱部材21と、導熱性可動部材22と、放熱先側導熱部材23と、を備えて構成されている。筐体11は、例えば金属などにより筒状に形成され、一方の開口端はカバーガラス13により閉塞され、他方の開口端には筒状の枠体12の一方の開口端が接続されている。枠体12は、例えば合成樹脂などにより筒状に形成され、筐体11に接続されていない開口端は裏蓋14により閉塞されている。保持部材15は、例えばアルミニウム、銅、真鍮等の金属により形成され、筐体11および枠体12の内部に収容されている。文字盤16は、例えば時刻の秒、分、時に係る数字などが表示された表面がカバーガラス13を介して外部から視認可能になるようにして、裏面がムーブメント18により保持されている。指針部17は、例えば、時刻の秒を示す秒針と、時刻の分を示す分針と、時刻の時を示す時針とを備えて構成され、文字盤16の表面上から突出して設けられ、ムーブメント18により回転駆動されて文字盤16の表面上に設けられた時刻に係る適宜の表示を指し示す。ムーブメント18は、例えば、文字盤16の裏面側に配置されて保持部材15により保持されている。ムーブメント18は、例えば
図2に示すように、制御部31と、針駆動部32と、昇圧部33と、蓄電部34とを備えて構成されている。制御部31は、例えば蓄電部34から供給される電力により作動する発振回路および分周回路およびモータ駆動パルス出力回路などを備え、分周回路から出力される計時の基準となる信号に応じて、針駆動部32を駆動するための駆動パルスをモータ駆動パルス出力回路から出力する。針駆動部32は、例えばステッピングモータなどを備え、制御部31から出力される駆動パルスに応じて指針部17の秒針と分針と時針とを回転駆動する。昇圧部33は、例えば発振回路およびチャージポンプ回路などを備え、熱発電素子20に接続され、熱発電素子20から出力される発電電圧を昇圧して昇圧電圧を出力する。蓄電部34は、例えば2次電池やコンデンサなどを備え、昇圧部33に接続され、昇圧部33から出力される電力を蓄電する。
【0022】
熱変形部19は、例えば板であり、その中央においてムーブメント18に固定されることにより保持されている。熱変形部19の両側に導熱性可動部材22が固定されている。導熱性可動部材22は下面が櫛歯状の凹凸形状を持っており、同様の凹凸形状を上面に持つ放熱先側導熱部材23と、接触している。
図1では互いの凸部が接触している状態を示す。
熱発電素子20は、例えばペルチェ素子や熱電対などからなり、熱源側導熱部材21と放熱先側導熱部材23によって挟み込まれるようにして保持されている。熱源側導熱部材21は例えば銅などにより板状に形成され、裏蓋14の内面側に配置されている。
熱変形部19は温度によって長さが変化する金属製の板であり、長さが変化することで導熱性可動部材22を図中左右方向に沿って移動させる。
【0023】
図3は熱変形部19に押されて導熱性可動部材22が移動した結果、導熱性可動部材22下面の凸部と放熱先側導熱部材23上面の凸部が離間した状態を示す。このように、熱変形部19の温度によって、導熱性可動部材22と放熱先側導熱部材23との接触と離間が切り替わる。熱源である生体からの熱流1は
図1と3の矢印で示すように、裏蓋14から熱源側導熱部材21、熱発電素子20、放熱先側導熱部材23、導熱性可動部材22、保持部材15、筐体11、を経由して外気に放熱される。このとき放熱先側導熱部材23と導熱性可動部材22が直接接触して伝熱する場合(
図1)と、途中に保持部材15内部の雰囲気(空気など)を経由して伝熱する場合(
図3)とが切り替わる。
【0024】
図4は、上記構成の熱発電携帯機器10に適用した熱抵抗モデルを示す。裏蓋14に接触する熱源である生体と、熱発電携帯機器10外部の雰囲気などの放熱先との間において、裏蓋14および熱源側導熱部材21からなる領域の熱抵抗R6と、熱発電素子20の熱抵抗R4と、熱発電素子20内部の雰囲気(空気など)からなる領域の熱抵抗R5と、放熱先側導熱部材23の熱抵抗R3と、導熱性可動部材22と放熱側導熱部材23の間の熱抵抗R2と、筐体11および保持部材15からなる領域の熱抵抗R1と、に対して、各熱抵抗R1,R2,R3、R5、R6は直列に接続され、熱抵抗R4は熱抵抗R5に並列に接続されている。そして、熱発電素子20は、熱源である生体の温度(熱源温度Tc)と熱発電携帯機器10外部の雰囲気などの放熱先の温度(雰囲気温度Ta)との温度差に起因して熱発電素子20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)の大きさに応じた発電電圧を出力する。
【0025】
本実施の形態による熱発電携帯機器10は上記構成を備えており、次に、この熱発電携帯機器10の動作について説明する。
まず、熱発電携帯機器10外部の雰囲気の温度(雰囲気温度)Taに比べて、より高い温度(熱源温度)Tcを有する熱源である生体に対して、熱発電携帯機器10が生体に装着されて裏蓋14が生体に接触すると、裏蓋14および熱源側導熱部材21からなる領域を経由して、熱源から熱発電素子20の熱源側位置に熱流が伝達される。
【0026】
この熱的過渡状態において、熱発電素子20の熱源側位置の温度Tp2が上昇し、例えば
図5に示すように、熱発電素子20の熱源側位置の温度Tp2と放熱先側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電素子20の発電電圧が極大値に向かい増大する。そして、熱発電素子20および放熱先側導熱部材23、導熱性可動部材22、保持部材15、筐体11を経由して熱流が伝達されることに伴い、温度差ΔTpが極大値から低下傾向に変化し、熱発電携帯機器10全体の温度が飽和する熱的定常状態、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の全体に亘って配分されることで局所的な温度勾配が小さくなる熱的定常状態が形成される。このような熱発電携帯機器10全体の温度が飽和する熱的定常状態が維持されると、温度差ΔTpおよび発電電圧が低下した状態が維持されることになる。熱発電携帯機器10は
図2で説明したように、熱発電素子20が発生させた電力を所定の電圧まで昇圧する昇圧部33を持つが、昇圧をするためには所定の最低昇圧可能電圧を超えた電圧を発生させる必要があり、そのために必要な最小ΔTpが存在する。
図5ではこれをΔTthとして示す。時間の経過とともにΔTpが減少してΔTthを下回ると昇圧が停止する。このときの熱電素子20の放熱先側位置の温度Tp1は、熱源温度Tcに近い値となっている。
【0027】
図6は本実施形態における導熱性可動部材22と放熱側導熱部材23の間の熱抵抗R2と、ΔTpの時間変化を示す。時間t2においてΔTpが減少してΔTthに接近したときに、熱変形部19が変形して
図3に示すように導熱性可動部材22を移動させて、放熱先側導熱部材23との接触が断たれて両者は離間する。これにより熱抵抗R2はそれまでの値R2aから、より大きな値R2bに変化する。放熱先側導熱部材23は導熱性可動部材22に向けて放熱しにくくなり、温度が上昇する。これによりΔTpは急激に低下して昇圧は停止する。一方、導熱性可動部材22から保持部材に向けての熱移動は継続するため、所定時間後には導熱性可動部材22の温度は低下し、熱変形部19の温度も低下する。熱変形部19の温度が低下すると熱変形部19が変形して導熱性可動部材22を移動させて、再び
図1に示すように導熱性可動部材22と放熱先側導熱部材23が接触する。これにより熱抵抗R2はそれまでの値R2bから、もとの値R2aに減少する。放熱先側導熱部材23から導熱性可動部材22に向けて急激な熱移動が発生し、放熱先側導熱部材23の温度Tp1は低下する。これにより時刻t3においてΔTpが急激に増加して、昇圧が再開する。この過渡的な応答による発電は定常状態における発電量に比べて極めて大きいため、全時間を通した発電量は、発電を停止していた時間を含めたとしても定常状態における発電量に比べて極めて大きい。
【0028】
このように、本実施形態による熱発電携帯機器10によれば、導熱性可動部材22の移動に応じて、導熱性可動部材22の熱抵抗R2が変更されることにより、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)に対して、一時的に熱発電素子20の熱源側位置と放熱先側位置との間で温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)を増大させることができ、発電電圧を増大させて所望の発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態に係る熱発電携帯機器のうち、導熱性可動部材22の一部と熱変形部19の一部、及びムーブメント18の一部の断面を示す図である。本実施形態では
図7に示した部分以外は第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0030】
本実施形態では、導熱性可動部材22の上面がドーム状の可動部材突起41を持っており、ムーブメント18の下面は同様の突起であるムーブメント第一突起42、ムーブメント第二突起43を持っている。
図7(a)は熱発電携帯機器10が生体に装着された直後の状態を示す。このとき熱変形部19はまだ大気温度とほぼ同じであり、直線形状である。
図7(b)は、装着数分後の状態を示す。このとき熱変形部19は生体からの熱流入のため温度が上昇して伸びようとしているが、可動部材突起41がムーブメント第一突起42に突き当たって動けないため湾曲している。熱変形部19は力F1でムーブメント第一突起42を押し、同じ大きさの反作用で押し戻されている。
図7(c)はさらに数分後の状態を示す。可動部材突起41はムーブメント第一突起42を乗り越えて、ムーブメント第二突起43に突き当たっている。熱変形部19は導熱性可動部材22が移動した距離だけ伸長するため位置エネルギーが減少し、ムーブメント第二突起43を押す力F2はF1より小さくなっている。導熱性可動部材22が移動することにより、第1の実施形態で説明したように導熱性可動部材22と放熱先側導熱部材23とのあいだの熱抵抗が急激に増加して、熱発電素子20は発電を停止する。次に、
図7(d)はさらに数分後の状態を示す。このとき熱変形部19の温度が低下したために熱変形部19は収縮しようとして、可動部材突起41はムーブメント第二突起43を離れて、ムーブメント第一突起42に接触して力F3でムーブメント第一突起42を押す。熱変形部19の温度が更に低下すると、可動部材突起41はムーブメント第一突起42を乗り越えて元の状態である
図7(a)に戻り、これらの動作を初めから繰り返す。
【0031】
このような構造にすることにより、導熱性可動部材22とムーブメント18の相対位置は2種類に限定される。熱抵抗R2の取りうる値も2種類に限定されるが、それを上述のR2aとR2bに設定することで、熱抵抗R2がR2aとR2bのあいだを瞬時に切り替わる動作が可能となる。これによりΔTpが一時的に大きな値を取ることができ、大きな発電ができる。この一時的な発電はエネルギー効率が極めて高いため、全時間を通した発電量は、発電を停止していた時間を含めたとしても定常状態における発電量に比べて極めて大きい。この構造は本実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態と組み合わせることで同様の効果を実現できる。
【0032】
(第3の実施形態)
図8は本発明の第3の実施形態に係る熱発電携帯機器のうち、熱源側導熱部材21から導熱性可動部材22の一部とその周辺部の断面を示す図である。本実施形態では
図8に示した部分以外は第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0033】
本実施形態では温度に依存して変形する部分が、熱源側熱変形部51と放熱先側熱変形部52の2ヶ所あり、その間は変形部間接続部53によって接続されている。変形部間接続部53は内部に中空部54を持ち、プラスチックなどの熱伝導率の低い材料から成る。
図8(a)は生体に装着した直後の状態を示す。熱源側熱変形部51は生体の温度に近い温度になっているが、放熱先側熱変形部52は大気の温度に近い温度になっている。導熱性可動部材22と放熱先側導熱部材23は互いに対向する面内の凸状部が接触することで、生体からの熱流1が大きい。
図8(b)は生体に装着してから数分後の状態を示す。熱源側熱変形部51の温度はほぼ変化なく生体の温度に近い値を維持しているため、変形はほとんど無い。放熱先側熱変形部52の温度は上述の熱流1の流入のために上昇するので大きく伸長する。熱源側熱変形部51の伸び55と放熱先側熱変形部52の伸び56の差だけ、導熱性可動部材22は放熱先側導熱部材23に対して移動し、結果として導熱性可動部材22と放熱先側導熱部材23は互いに対向する面内の凸状部が離反する。これにより熱抵抗R2が増加して放熱先側導熱部材23の温度が上昇し、発電が停止する。数分が経過すると導熱性可動部材22の温度が低下して
図8(a)の状態に戻ってこの動作を初めから繰り返す。
【0034】
このとき導熱性可動部材22とムーブメント18は、第2の実施形態と同様の突起を持たせることも可能であり、そうすることで熱抵抗R2が取りうる値が2種類に限定できる。本実施形態においては、導熱性可動部材22と放熱先側導熱部材23の相対位置が、生体の温度や大気の温度そのものではなく、両者の温度差によって規定される。熱発電素子20はその両側の温度差ΔTpによって発電効率が決まるため、温度差ΔTpに対応した制御をすることで、発電効率の最大化が可能となる。
【0035】
(第4の実施形態)
図9と
図10は本発明の第4の実施形態に係る熱発電携帯機器60の構造を示す。第1の実施形態と同一の部分には同一符号を与えて説明を省略する。
図9、
図10ともに(a)が熱発電携帯機器60の断面図、(b)が導熱性可動部材61の平面図である。本実施形態では導熱性可動部材61は熱伝導性を持つ材質から成る点は第1の実施形態と同様であるが、
図9,
図10の下に示すように平面視楕円の板形状であり、中心軸61aの周りに回転可能になっている。
図9では導熱性可動部材61は放熱先側導熱部材23の直上に配置した状態、
図10では導熱性可動部材61は
図9から中心軸61aの周りに90度回転した状態を示す。導熱性可動部材61はバイメタルぜんまい62に固定されており、バイメタルぜんまい62の変形によって中心軸61aの周りに回転する。バイメタルぜんまい62は2種類の金属を貼り合わせた材料から成るぜんまいであり、温度変化によって変形することでそれに固定された導熱性可動部材61を回転させる。所定の温度におけるバイメタルぜんまい62の形状によって導熱性可動部材61は
図9と
図10のいずれかに示される位置に配向される。
【0036】
すなわち、ある温度において導熱性可動部材61が
図9に示される位置に配向すると、放熱先側導熱部材23と導熱性可動部材61は接触し、熱流1はその接触部を通過して筐体11から大気に向けて放出される。温度が変化してバイメタルぜんまい62が変形して導熱性可動部材61が
図10に示される位置に配向すると、放熱先側導熱部材23と導熱性可動部材61は離反し、熱流1は外部に放出されにくくなる。熱発電素子20の放熱先側の温度が上昇して両側の温度差ΔTpが小さくなったときには自動的にバイメタルぜんまい62が変形して導熱性可動部材61が回転し、発電は停止するものの生体からの放熱量も一旦低下する。放熱先側の温度が低下すると導熱性可動部材61が回転し、放熱先側導熱部材23から急速に放熱が始まるので、熱発電素子20の両側の温度差ΔTpが一時的に大きくなるため発電量が増加する。この一時的な発電はエネルギー効率が極めて高いため、全時間を通した発電量は、発電を停止していた時間を含めたとしても定常状態における発電量に比べて極めて大きい。
【0037】
(第5の実施形態)
図11と
図12は本発明の第5の実施形態に係る熱発電携帯機器70の構造を示す。第4の実施形態と同一の部分には同一符号を与えて説明を省略する。
図11、
図12ともに(a)が熱発電携帯機器70の断面図、(b)が導熱性可動部材71の平面図である。本実施形態では導熱性可動部材71は熱伝導性を持つ材質から成り、平面視楕円の板形状である点は第4の実施形態と同様であるが、
図11、
図12の下に示すように、中心軸72が導熱性可動部材71の重心から所定距離だけずれて位置している。
【0038】
このような構造を持つ熱発電携帯機器70は、生体に装着している間に重力方向に対する姿勢が変化した際に、導熱性可動部材71が回転して、
図11と
図12のいずれかに示される位置に配向される。生体が動作することによって自動的に放熱先側導熱部材23と導熱性可動部材71が接触と離反を繰り返すため、シンプルな構造のみで動力も使うことなく一時的に発電効率を非常に大きくすることができ、全時間を平均した発電量も大きくすることができる。
【0039】
(第6の実施形態)
図13は本発明の第6の実施形態に係る熱発電携帯機器80の構造を示す。第1の実施形態と同一の部分には同一符号を与えて説明を省略する。第1の実施形態との相違点は、第1の実施形態での熱変形部19の代わりに気体封止部81を持つ点である。気体封止部81は略直方体形状であり、注射器のように2個の円筒が図中の左右方向にスライドすることにより、内部の気体が温度によって体積変化した際に導熱性可動部材22を移動させる。これにより第1の実施形態と同様の効果を実現できる。
【0040】
(第7の実施形態)
図14は本発明の第7の実施形態に係る熱発電携帯機器90の構造を示す。第1の実施形態と同一の部分には同一符号を与えて説明を省略する。本実施形態においては、熱源側導熱部材21に接触するように熱源側バイメタルぜんまい93が配置され、ムーブメント18に接触するように放熱先側バイメタルぜんまい92が配置されている。この2つのバイメタルぜんまいは変形部間接続部94によって接続され、温度変化によって回転する方向が互いに反対になるように巻かれている。変形部間接続部94はプラスチックなどの熱伝導率の低い材質から成り、内部に中空部95を持つ。導熱性可動部材91は放熱先側バイメタルぜんまい92と変形部間接続部94に挟まれて配置される。熱源側バイメタルぜんまい93は生体の温度によって決まる角度になるように変形部間接続部94を回転する力をかけるが、放熱先側バイメタルぜんまい92は大気の温度によって決まる角度になるように変形部間接続部94を反対方向に回転する力をかける。これにより両者の力が均衡した位置に変形部間接続部94は停止する。この位置は生体と大気それぞれの温度ではなく、生体と大気の温度差によって決まる。この温度差が大きいときに導熱性可動部材91が放熱先側導熱部材23に接触し、温度差が小さくなってくると離反するように両者を配置していることにより、高効率で発電できる時間は発電を行い、効率が低下すると一旦発電を停止させて内部の温度差が大きくなった時点で再度発電させる、という上述の実施形態と同様の効果を実現できる。
【0041】
(第8の実施形態)
図15は本発明の第8の実施形態に係る熱発電携帯機器のうち、導熱性可動部材100から熱源側導熱部材103までの構造を示す。第7の実施形態と同様に、熱源側バイメタルぜんまい101と放熱先側バイメタルぜんまい102を持ち、両者は温度変化によって回転する方向が互いに反対になるように巻かれているが、以下が異なる。固定されている場所をfixと示した。熱源側バイメタルぜんまい101は熱源側導熱部材103に固定され、生体の温度によって所定の角度Rot101だけ回転する。熱源側バイメタルぜんまい101は熱源側回転軸104に固定されているため、熱源側回転軸104は熱源側導熱部材103に対して同じ角度Rot104だけ回転する。放熱先側バイメタルぜんまい102は熱源側回転軸104に固定されているが、大気の温度によって所定の角度Rot102だけ反対方向に回転するため、その差分だけ熱源側導熱部材103に対して回転する。放熱先側回転軸105は放熱先側バイメタルぜんまい102に固定されているため、同じ角度Rot105だけ回転する。導熱性可動部材100は放熱先側回転軸105に固定されているため、結果として、導熱性可動部材100は熱源側導熱部材103に対して、生体と大気の温度差に対応した角度だけ回転する。このような構成にすることにより、2個のぜんまいは常にその時の温度における平衡位置、すなわち位置エネルギーが最小の位置を維持するために力がかかることが無い。また、熱源側回転軸104に円盤を固定して、それに放熱先側バイメタルぜんまい102を固定することで、円盤と導熱性可動部材100が独立に回転するという、装飾的な効果も実現できる。