特許第5764483号(P5764483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三井ハイテックの特許一覧

特許5764483積層鉄心の製造方法及びこれによって発生する打ち抜き滓の形状
<>
  • 特許5764483-積層鉄心の製造方法及びこれによって発生する打ち抜き滓の形状 図000002
  • 特許5764483-積層鉄心の製造方法及びこれによって発生する打ち抜き滓の形状 図000003
  • 特許5764483-積層鉄心の製造方法及びこれによって発生する打ち抜き滓の形状 図000004
  • 特許5764483-積層鉄心の製造方法及びこれによって発生する打ち抜き滓の形状 図000005
  • 特許5764483-積層鉄心の製造方法及びこれによって発生する打ち抜き滓の形状 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764483
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法及びこれによって発生する打ち抜き滓の形状
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20150730BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20150730BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   H02K15/02 E
   B21D28/02 B
   B21D28/02 Z
   H02K1/18 B
【請求項の数】13
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-266031(P2011-266031)
(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公開番号】特開2013-118789(P2013-118789A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】梅田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】泉 雅宏
【審査官】 安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−215778(JP,A)
【文献】 実開平6−29717(JP,U)
【文献】 実公昭62−17133(JP,Y2)
【文献】 特開平6−142785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
B21D 28/02
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板条材をプレス打ち抜きしてモータコアを製造する積層鉄心の製造方法において、
前記モータコアの鉄心片の打ち抜き滓が抜き落とされる前に、該打ち抜き滓に、該打ち抜き滓を複数の領域に区画し、該打ち抜き滓の周縁部とはそれぞれ第1の幅細連結部を介して一端が連結された複数の区画孔を形成することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記打ち抜き滓の中央部に中央孔を形成し、前記区画孔の他端と前記中央孔とを第2の幅細連結部によって連結することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の積層鉄心の製造方法において、前記区画孔で区分された領域には、複数枚の前記打ち抜き滓を積層固定可能なかしめ部が形成されていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造方法において、前記打ち抜き滓は円形であって、前記複数の区画孔は半径方向に沿って均等角度で形成されていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
薄板条材をプレス打ち抜きしてモータコアを製造するときに発生する打ち抜き滓の形状であって、
前記打ち抜き滓を複数の領域に区画し、該打ち抜き滓の周縁部とはそれぞれ第1の幅細連結部を介して一端が連結された複数の区画孔を有することを特徴とする打ち抜き滓形状。
【請求項6】
請求項5記載の打ち抜き滓形状において、前記打ち抜き滓の中央部には中央孔が形成され、前記区画孔の他端と前記中央孔とは第2の幅細連結部によって連結されていることを特徴とする打ち抜き滓形状。
【請求項7】
請求項5又は6記載の打ち抜き滓形状において、前記区画孔で区分された領域には、複数枚の前記打ち抜き滓を積層固定可能なかしめ部が形成されていることを特徴とする打ち抜き滓形状。
【請求項8】
請求項7記載の打ち抜き滓形状において、前記かしめ部は、該打ち抜き滓の周縁部の近傍に形成されていることを特徴とする打ち抜き滓形状。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の打ち抜き滓形状において、前記打ち抜き滓は直径が200mm以上の円形で、厚みが0.3mm以下となっていることを特徴とする打ち抜き滓形状。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の打ち抜き滓形状において、前記打ち抜き滓は、前記区画孔によって均等に前記複数の領域に区分されていることを特徴とする打ち抜き滓形状。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれか1項に記載の打ち抜き滓形状において、前記区画孔は少なくと3個有することを特徴とする打ち抜き滓形状。
【請求項12】
請求項5〜11のいずれか1項に記載の打ち抜き滓形状において、前記幅細連結部の幅は、該打ち抜き滓の板厚の1〜7倍の範囲にあることを特徴とする打ち抜き滓形状。
【請求項13】
請求項5〜12のいずれか1項に記載の打ち抜き滓形状において、前記区画孔の幅は、前記幅細連結部の幅の3倍以上であることを特徴とする打ち抜き滓形状。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層鉄心の製造方法に係り、特に、大径で薄板の鉄心片(コア片)を打ち抜き積層する際に滓浮き(滓上がり)が発生しない積層鉄心(モータコア)の製造方法及びこの製造方法によって発生する打ち抜き滓の形状に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷への低減から、電気自動車やハイブリッド自動車など、モータを主動力として用いる車両が急速に増加しており、これに合わせてモータの主要部品であるモータコア(積層鉄心)の生産量も増加している。車両用の動力モータに用いるモータコアの場合、普通乗用車用であっても直径が300mmを超え、板厚が0.50mm以下となりつつあるが、モータコアの大径化、薄板化は打ち抜き積層における技術的な難易度を高くすることになり、現状の技術だけでは対応できない。特に、内側に大径の空間部がある固定子鉄心片の製造においては、滓上がりの対策に窮しているのが現状である。
【0003】
この固定子鉄心の製造は、例えば、図4に示すように、薄板条材50を金型装置に順次供給して、中央の円孔51を形成するステーションa、磁極部52の側端を形成するスロット53を打ち抜くステーションb、c、かしめ部54を形成するステーションd、及び製造された固定子鉄心片56をダイス内に抜き落とすステーションeを備えている。そして、円孔51の部分が滓片57となり、前記した滓上がりの問題が生じる。
【0004】
一般的な滓上がりは、パンチと打ち抜き滓の減圧による吸着、油による吸着、材料の圧着などが原因となって発生する。滓上がりの対策として、従来使用される技術としては、パンチ上面の異形状化、ダイ側面のテーパー形状、ダイの形状、キッカーピン、エアブロー、バキュームなどがある(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06−029717号公報
【特許文献2】実公昭62−017133号公報
【特許文献3】特開平06−142785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、モータコアの大径化と同時に薄板化が進むにつれ、図5(A)に示すような一体物のステータコア片(固定子鉄心片)60の場合、内形抜きされる滓片(打ち抜き滓)61の直径が200mm以上で、板厚が0.30mm以下というものもある。
このような直径の滓片61も、通常他のモータの鉄心片に使用される一般的な板厚(例えば、0.3〜0.5mm程度)であれば、材料の剛性(強度)が高いため、打ち抜かれた滓片61は図5(B)のようにダイ63及びスクイズリング64の内周面に強固に保持されているが、図5(C)に示すように、滓片61の板厚が薄い(具体的には0.3mm以下)と材料の剛性が低いため、ダイ内面の側圧によりうねった状態で保持される。このとき、滓片61がスプリングバックによりダイ上面から突出する滓浮きが発生し、金型65やステータコア片60に疵や破損を生じさせる問題がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、薄板のコア片(鉄心片)を打ち抜き積層する際に、滓浮きが発生しない積層鉄心の製造方法及びこれによって形成される打ち抜き滓の形状を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る積層鉄心の製造方法は、薄板条材をプレス打ち抜きしてモータコアを製造する積層鉄心の製造方法において、
前記モータコアの鉄心片の打ち抜き滓が抜き落とされる前に、該打ち抜き滓に、該打ち抜き滓を複数の領域に区画し、該打ち抜き滓の周縁部とはそれぞれ第1の幅細連結部を介して一端が連結された複数の区画孔を形成する。
【0009】
第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記打ち抜き滓の中央部に中央孔を形成し、前記区画孔の他端と前記中央孔とを第2の幅細連結部によって連結する。
【0010】
第3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記区画孔で区分された領域には、複数枚の前記打ち抜き滓を積層固定可能なかしめ部が形成されている。
【0011】
第4の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1〜第3の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記打ち抜き滓は円形であって、前記複数の区画孔は半径方向に沿って均等角度で形成されている。
【0012】
第5の発明に係る打ち抜き滓形状は、薄板条材をプレス打ち抜きしてモータコアを製造するときに発生する打ち抜き滓の形状であって、
前記打ち抜き滓を複数の領域に区画し、該打ち抜き滓の周縁部とはそれぞれ第1の幅細連結部を介して一端が連結された複数の区画孔を有する。
【0013】
第6の発明に係る打ち抜き滓形状は、第5の発明に係る打ち抜き滓形状において、前記打ち抜き滓の中央部には中央孔が形成され、前記区画孔の他端と前記中央孔とは第2の幅細連結部によって連結されている。
【0014】
第7の発明に係る打ち抜き滓形状は、第5、第6の発明に係る打ち抜き滓形状において、前記区画孔で区分された領域には、複数枚の前記打ち抜き滓を積層固定可能なかしめ部が形成されている。
【0015】
第8の発明に係る打ち抜き滓形状は、第7の発明に係る打ち抜き滓形状において、前記かしめ部は、該打ち抜き滓の周縁部の近傍に形成されている。
【0016】
第9の発明に係る打ち抜き滓形状は、第5〜第8の発明に係る打ち抜き滓形状において、前記打ち抜き滓は直径が200mm以上の円形で、厚みが0.3mm以下となっている。
【0017】
第10の発明に係る打ち抜き滓形状は、第5〜第9の発明に係る打ち抜き滓形状において、前記打ち抜き滓は、前記区画孔によって均等に前記複数の領域に区分されている。
【0018】
第11の発明に係る打ち抜き滓形状は、第5〜第10の発明に係る打ち抜き滓形状において、前記区画孔は少なくと3個有する。
【0019】
第12の発明に係る打ち抜き滓形状は、第5〜第11の発明に係る打ち抜き滓形状において、前記幅細連結部の幅は、該打ち抜き滓の板厚の1〜7倍の範囲にある。
【0020】
そして、第13の発明に係る打ち抜き滓形状は、第5〜第12の発明に係る打ち抜き滓形状において、前記区画孔の幅は、前記幅細連結部の幅の3倍以上である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る積層鉄心の製造方法及びこれによって打ち抜かれた打ち抜き滓の形状は以下のような作用効果を有する。
(1)打ち抜き滓に複数の区画孔を形成して打ち抜き滓を複数の領域に区分し、区画孔の一端と打ち抜き滓の周縁部の間に第1の幅細連結部を形成することで、第1の幅細連結部及び区画孔にうねりを吸収させ、スプリングバックを防止でき、大径かつ薄板の打ち抜きが可能となる。
(2)特に、打ち抜き滓にかしめ部を形成することで、ダイの中で打ち抜き滓を連結させることができ、スプリングバックを防止でき、大径、薄板の打ち抜きが可能となる。
(3)そして、第1、第2の幅細連結部とかしめ部を打ち抜き滓に同時に形成することでスプリングバック防止の効果がより大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図2図1におけるA部の部分拡大図である。
図3】本発明の他の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図4】固定子鉄心の製造方法を示す説明図である。
図5】(A)〜(C)はそれぞれ従来例に係る積層鉄心の製造方法の問題点の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。まず、図1図2に示す打ち抜き滓10(の形状)について説明する。
図1に示すように、打ち抜き滓10は固定子鉄心片11の内側に円形に形成され、中央に正方形の中央孔12を有している。中央孔12の側辺13と打ち抜き滓10の周縁部14との間には、長方形の4つの区画孔15が形成されている。
【0024】
隣り合う区画孔15は打ち抜き滓10の中心を基準にして90度の角度で配置され、中央孔12を中心にして軸対称かつ放射状に(即ち、半径方向に沿って)形成されている。区画孔15の一端と周縁部14との間には第1の幅細連結部17が、区画孔15の他端と中央孔12との間には第2の幅細連結部18が形成されている。
【0025】
打ち抜き滓10の直径はこの実施の形態では200mmで、板厚は0.25mmであるが、直径は200mm以上で、板厚は0mmを超え、0.3mm以下であれば適用可能である。中央にある正方形の中央孔12の一辺(即ち、側辺13)の長さは、打ち抜き滓10の直径の0.1〜0.3倍程度が適当であるが、本発明はこの数字には限定されない。
【0026】
第1、第2の幅細連結部17、18の幅wは、この打ち抜き滓10の板厚の1〜7倍の範囲に入るのが好ましく、更に好ましくは、板厚の3〜5倍の範囲である。また、第1、第2の幅細連結部17、18の長さは、区画孔15の幅aと同一となっている。区画孔15の幅aは第1、第2の幅細連結部17、18の幅wの3倍以上となっているが、3〜10倍程度とするのが好ましい。また、この実施の形態では、区画孔15の数は4であるが、均等角度で3以上8以下とするのがよい。なお、第1、第2の幅細連結部17、18はうねりを吸収させて、スプリングバックを防止する作用を有し、その幅が狭すぎると、打ち抜きによる応力によって破断し、大きすぎるとダイの側圧による応力を吸収しないため、上記の範囲で設定されるのが好ましい。
【0027】
図1に示すように、区画孔15で複数に分割される領域20には、それぞれ表側に凹部、裏側に凸部を有するかしめ部21が形成されている。かしめ部21は扇型の各領域20の中央で半径方向外側(即ち、周縁部14の近傍)に1つ設けるのが好ましいが、それぞれの領域20に複数のかしめ部を均等に設け、複数枚の打ち抜き滓10を積層固定することができる。かしめ部21は、半抜きかしめ、Vかしめ等があるが、いずれでも適用可能である。
【0028】
従って、この打ち抜き滓10を用いて固定子鉄心片11を形成する場合、適当ピッチで薄板条材にパイロット孔を形成して、金型装置に順次送り、かしめ部21、中央孔12、区画孔15をプレス打ち抜きして形成し、打ち抜き滓10を抜き落とす。このとき打ち抜き滓10に応力が発生するが、第1、第2の幅細連結部17、18及び区画孔15によって吸収され、打ち抜き滓10は平面状態を保ち、滓上がりが発生しない。この後、通常の工程によって固定子鉄心片11を形成し、金型内に抜き落として積層鉄心(モータコア)を形成する。
【0029】
図3は、打ち抜き滓23に、中央孔、区画孔を設けないで、かしめ部24のみを形成した他の実施の形態を示す。かしめ部24は複数箇所(3以上が好ましい)、均等に打ち抜き滓23に形成されている。なお、固定子鉄心片25、及びこれを用いた積層鉄心の製造は、上記した実施の形態と同様である。
【0030】
このかしめ部24のみでも、打ち抜き滓23の滓上がり、スプリングバックを防止することはできるが、更に、打ち抜き滓10のように、第1、第2の幅細連結部17、18を両側に有する区画孔15を形成することによって、打ち抜き滓23の滓上がりを確実に防止できる。
なお、これらの実施の形態において、中央孔12が形成されない場合でも、滓上がりを防止する効果があることが確認された。
【0031】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成(例えば、形状、寸法)を変更することもできる。
【符号の説明】
【0032】
10:打ち抜き滓、11:固定子鉄心片、12:中央孔、13:側辺、14:周縁部、15:区画孔、17:第1の幅細連結部、18:第2の幅細連結部、20:領域、21:かしめ部、23:打ち抜き滓、24:かしめ部、25:固定子鉄心片
図1
図2
図3
図4
図5